資料5-1 「検討の方向性・課題の整理」(取りまとめイメージ)

1.背景

文部科学省では、国立大学法人等の人材養成や学術研究、高度先進医療の推進等を実現するため、平成13年から3次にわたり、科学技術基本計画を受けた国立大学法人等施設整備5か年計画を策定し、計画的・重点的に施設整備を推進。 
しかしながら、国立大学等の施設は、依然として安全性・機能性の不足や老朽化の更なる進行などの課題や、教育研究活動の高度化・多様化、国際競争力の強化、産学官連携の推進等に必要な施設面の課題など、更なる課題が存在。
これら様々な課題に対応していくためには、長期的な視点に立って、その充実に向けて計画的かつ重点的な施設整備を行うことが不可欠であることから、国として、国立大学法人等全体の5か年計画(以下、「5か年計画」という。)を策定し、安定的、継続的な整備が可能となるよう支援の充実を図っていくことが必要。
○現在は、第3次5か年計画(平成23年度~27年度)の期間の終盤に差し掛かっている。次期5か年計画策定に向け、これまでの全国の整備状況を踏まえつつ、教育研究、成長戦略等に関わる施策の動向を注視しながら、今後の検討の進め方等について議論していくことが必要。
○また、次期5か年計画の開始時期は、次期科学技術基本計画及び次期中期目標・中期計画期間と同時期(平成28年度~)となることから、両計画の策定に向けた検討と歩調を合わせていくことが必要。また、第2期教育振興基本計画(平成25年度~平成29年度)※を踏まえたものとすることが必要。

※ 教育振興基本計画(平成25年6月14日 閣議決定)(一部抜粋)

第2部今後5年間に実施すべき教育上の方策
基本施策18 学生の主体的な学びの確立に向けた大学教育の質的転換
基本施策15 大学院の機能強化等による卓越した教育研究拠点の形成,大学等の研究力強化の促進
基本施策16 外国語教育,双方向の留学生交流・国際交流,大学等の国際化など,グローバル人材育成に向けた取組の強化
基本施策19 教育研究環境の整備や安全に関する教育の充実など学校における児童生徒等の安全の確保
基本施策21 地域社会の中核となる高等教育機関(COC構想)の推進
基本施策27 大学等の個性・特色の明確化とそれに基づく機能の強化(機能別分化)の推進
基本施策28 大学等の財政基盤の確立と個性・特色に応じた施設整備

○以上のことから、次期5か年計画の策定に向け、調査研究協力者会議において本年8月時点での中間的な取りまとめとして、検討の方向性・課題の整理を行うもの。

2.現行5か年計画について

○現行の第3次5か年計画においては、「2. 基本的考え方」の中で以下の視点からの施設整備を一体的に実現することを掲示。
(1)質的向上への戦略的整備-Strategy

  • 卓越した教育研究拠点の形成
  • 個性や特色を発揮して教育研究を活性化する環境の整備
  • 先端医療・地域医療に対応した大学附属病院の計画的な整備

(2)地球環境に配慮した教育研究環境の実現-Sustainability
(3)安全な教育研究環境の確保-Safety
○また、現行5か年計画は、(1)老朽改善整備(約400万㎡)、(2)狭隘解消整備(約80万㎡)及び(3)大学附属病院の再生(約70万㎡)の3本の柱を掲示。同様の柱立てをしていた前期の第2次5か年計画(平成18~22年度)を継続・発展させた計画。
○平成26年度当初予算に係る事業の完了後は、上記3本柱全体としては事業量ベースでの進捗率は約65%(多様な財源を活用したものを含む。)となる見込み、うち(1)老朽改善整備分は約56%、(2)狭隘解消整備分は約89%、(3)大学附属病院の再生分は約87%となる見込み。老朽改善整備に著しい遅れが出ている状況。
 ※前5か年計画における同時期の事業量ベースでの全体進捗率は69%
○構造体の耐震化については、Is値0.4以下の建物について原則として当初2年間で完了、続いて、平成27年度までの耐震化完了を目標として取り組み、平成26年度当初予算に係る事業の完了後は、耐震化率は約96%となる見込み。

3.国立大学等施設整備をめぐる環境の変化-現行計画策定時からの変化

○国立大学法人等は、国立大学改革プランやミッション再定義を踏まえて、グローバル人材の育成やイノベーションの創出、学生の主体的な学びの創出、地域再生・活性化への貢献などの課題に対応していくことが求められており、これに応じた施設面での対応が必要。
○平成27年度末までに耐震化はおおむね完了する見込みであるが、学生等の安全確保や、地域住民の緊急避難場所となること、災害発生直後から大学附属病院で医療活動を行うこと等の観点から、また、東日本大震災の経験等を踏まえ、非構造部材の耐震対策や防災機能強化を更に推進していくことが必要。
○現行計画期間中に耐震化中心の整備を行った影響から、前述のとおり老朽改善整備に著しい遅れが発生。今後、老朽化が原因で電気設備やガス設備の故障や事故が増加し、教育研究活動の中断や学生等の怪我などが頻発することが危惧。
○法人化後、施設整備費補助金を用いない「財源の多様化」が進展し、特に、自己収入を得られる宿舎や福利施設について長期借入金等による整備が増加。それら先行事例を収集し、普及を図っていくことが必要。

4.基本的な考え方-検討の方向性

○上記「3.」で述べた環境の変化を考慮すれば、次期5か年計画を通じ、(1)国立大学改革プランを踏まえ国立大学施設がグローバル人材の育成やイノベーションの創出の基盤として役割を果たせるよう積極的に施設の機能改善等を図る大学を支援していくこと、(2)耐震対策や防災機能強化を一層推進していくこと、(3)老朽改善整備を促進していくこと、などが重要であり、以下の課題について検討していくことが必要。

(国立大学改革プランへの対応等)
○国立大学改革プランを踏まえた、国際的に通用する国立大学キャンパスづくりを、厳しい財政状況の中で、着実に推進。
(具体的方策)

  • ミッションの再定義や各大学の機能強化の方向性を踏まえた、改革に資する特色のある施設整備の推進(機能強化の方向性: 世界最高の教育研究の展開拠点、全国的な教育研究拠点、地域活性化の中核的拠点)。

○グローバル人材の育成やイノベーションの創出のための、先端的な教育研究の拠点となる施設整備を重点的に推進。
 (具体的方策)

  • グローバル人材の育成やイノベーションの創出に向けた、先端的な教育研究の拠点となる施設整備の推進(例 世界トップレベルの教育研究拠点、海外大学のユニット誘致、国際共同大学院の創設、グローバル人材育成のための学修拠点、先端的研究成果の実用化拠点)。
  • 国際競争力強化のための、外国人研究者・留学生にとって魅力あるキャンパスとなる施設面の取組の推進(例 ラボ環境、教育環境、宿舎環境、屋外空間・景観等の改善)。

(耐震対策、防災機能強化の一層の推進)
○耐震対策や防災機能強化について、学生や教職員の安全確保はもとより国土強靱化の要請等を踏まえた一層の推進。
 (具体的方策)

  • 非構造部材の耐震対策や防災機能強化等の計画的な推進(電気・ガス設備等の耐震対策、BCP対応を含む)。

(老朽改善整備・環境対策の推進)
○老朽化した膨大な既存施設について、長寿命化によるトータルコスト縮減と予算の平準化を図る、改修中心の整備の計画的な推進。
 (具体的方策)

  • 長寿命化改修や予防的修繕の計画的な推進(例 各大学における中長期的な改修・修繕計画の策定を支援)。

○地球環境への配慮の観点から、省エネや維持コスト削減に取り組む大学等を重点的に支援。
 (具体的方策)

  • 地球温暖化対策のための、国立大学等に相応しい施設の省エネ仕様などを設定し積極的な取組を支援。
  • 省エネや維持コスト削減を見据え保有面積抑制を意図した改築や、教育研究機能活性化等に資する改築について、推進していく条件を整理(例 連携等による施設の共同化、分散した低層実験施設の集約化、形状等不適合建築物、先端的な実験研究施設、避難通路沿いの危険建物)。

(財源の確保)
○健全な施設機能の維持のための、財源の安定的な確保に向けた制度等の改善。
 (具体的方策)

  • 国立大学等施設整備をめぐる環境の変化等を踏まえた、システム改革の重点的な推進(例 財源の多様化、総合的なマネジメント)。
  • 財源の多様化に関する事例収集・普及啓発。

 

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