資料1 今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議(第1回)議事要旨(案)

日時

平成26年3月18日(火曜日)13時30分から15時30分

場所

文部科学省旧文部省庁舎2階 第2会議室

出席者

(協力者)伊香賀俊治、小林英嗣、佐藤勝彦、杉山武彦(主査)、土井美和子、中西茂、古山正雄、佛淵孝夫、本間さと、山重慎二(敬称略)
(オブザーバー)上野日本建築学会都市計画委員会大学・地域デザイン小委員会主査
(事務局)関文教施設企画部長、新保技術参事官、平井計画課長、森計画課整備計画室長、山川参事官、生川会計課長、牛尾専門教育課長、吉田国立大学法人支援課企画官、小山企画評価課長、木村学術機関課長 他

議事要旨

○事務局から配付資料の確認、協力者を紹介し、主査として杉山委員、副主査として平野委員を指名。

(1)国立大学法人等施設整備に係るこれまでの取組と今後の課題について

○事務局から、資料3-1~3-4に基づき国立大学法人等施設整備に係るこれまでの取組と今後の課題について、資料4-1、4-2に基づき国立大学改革プランなどについて説明があった。
○続いて、上野日本建築学会都市計画委員会大学・地域デザイン小委員会主査から、これからの大学キャンパスについて(資料5)に基づいて説明があり、その後意見交換。
<上野日本建築学会都市計画委員会大学・地域デザイン小委員会主査発表内容>
○これまでなぜ我が国に魅力あるキャンパスが多くないのか。1つは、安全を確保するための耐震改修が最重要の課題であり、これが重点的に行われたためである。27年度末ぐらいには、耐震改修というのはほぼ目標に近いところまで達成されるようなので、その次はどうするかというのが問題。次に、研究の高度化に伴い、実験設備やそれぞれの研究者のスペースといった私的空間の要望に応えてきたため、みんなで共用する公的な空間、共用スペースやラーニングコモン、あるいは外部の環境、そういったものに十分な配慮がされてこなかったことがあげられる。
これからは、いわゆるパブリックな部分、みんなで共有できるという公的な空間は、キャンパスのインフラと考えるべき。キャンパスをまちのように計画することにより、美しいキャンパス、あるいは交流とか活発な出会いが生まれる。こういうことができれば、同窓生、あるいは地域企業からの寄附への動機付け、地域資産として周りに愛されることにもつながるのではないか。また、持続可能な社会というものをキャンパス自体が実践していくということで、教材というようなことにもなるのではないか。
施設整備の基本視点として、、(1)キャンパスマスタープランとの整合、(2)パブリックスペースの充実、(3)可変性のある空間の確保、(4)環境配慮型建築への転換、(5)安全・安心への配慮をきっちりとやりながら、持続可能な大学施設、キャンパスの設計というものを考える必要がある。
海外の大学では新築でなく改修整備によって、魅力的なパブリックスペースを創出しているという事例がある。デルフト工科大学の建築学部は、古い建物の中庭に屋根を架け、共同利用スペースや、プレゼンテーションスペースを作った。オックスフォード・ブルックス大学は、よくある大学の施設の平面プランの建物に並行して建物を増築し、その間の空間をアトリウムにして新しい空間を生み出している。イギリスのブラッドフォード大学は、既存の建物の中庭に屋根をかけて内部化し、学生のためのラウンジにした。
アジアの大学にはグローバル化に対応して、留学生寮の整備や新しい学修環境創出が進んでいる事例がある。シンガポール国立大学では、学生寮入っている学生は、一、二年生次の間は留学生と国内の学生が一緒になって、共通のラーニングコモンで勉強している。香港大学は、既存の浄水場を使い研究棟を作り、それの下層階に6,000平方メートルのラーニングコモンを作っており、全ての学部学生が24時間自由に使うことができる。香港科技大学でも、24時間利用可能なラーニングコモンを作っている。
2008年のG8大学サミットでの札幌サステイナブル宣言にあるように、キャンパスを活用して、実験の場と同時に理想的な教材として次世代の社会作りに貢献する視点も重要。また、こうした視点で地域との関係を考えてキャンパスを計画していくことが必要ではないか。
大学の使命、経営、キャンパスという環境のバランスをとりながら、公共性の高い環境から順番に整備投資を行うことや、良好な維持管理を継続的に行えるよう施設の規模を設定することが重要ではないか。
アメリカでは気候変動に関する大学の学長の組織があり、大学が主導しながら、国、あるいは州のエネルギー施策、あるいは環境政策をリードする取組が行われている。日本においても学長のリーダーシップで環境対策をリードするような取組も重要ではないか。
海外の大学では新しく建物を建てる場合には、そこに必要なエネルギーを、既存建物の省エネ改修によって、同じエネルギー分を削減するというような、大学キャンパスにおけるエネルギー消費量を一定に保つというような取組をしている。こういったことを考えながら、キャンパスを学生たちにとって、あるいは地域の人たちにとっての生きた実験場としてとらえ、キャンパスと地域の関係を考えながら、今後大学のキャンパスを計画していく必要があるのではないか。


<主な意見等>(○:協力者、オブザーバー、●:事務局)
○これまでの施設整備は、面積を数値目標として設定し、それを達成していくという仕組みになっている。今後、質的向上となると目標の設定が難しい。各大学の取組が抽象的になり平準化してしまうと、大学の個性が失われてしまう。施設整備については、建物への支援だけでなくオープンスペースにも支援できるようにするなど整備費をもう少し使い勝手のよいものにしてはどうか。
○サステイナブルキャンパスの取組について、企業においてもスマートコミュニティということで、CO2削減、エネルギーマネジメントをやっている。大学でも同様の観点は重要。運営費交付金が減っている中で、喫緊の課題として電気料金の高騰や消費税率の引き上げにより光熱水費が増加しており、キャンパス全体でどうしていくか考えていく必要があるかと思うが、どのように論点の中に盛り込むことができるのか。
●震災以降、エネルギー問題というのは大きな課題となっている。東京大学では、建物面積が増加してエネルギー消費量が増えた分、老朽化した設備の更新によるエネルギー消費量の削減でバランスを取ってきた。今後、建物をつくることとエネルギーを減らすことを一緒に考えていく仕組みが必要ではないか。
○大学の研究力強化が強く求められている。そのためのキーポイントはグローバル化。しかし外国人の研究員を呼ぼうとしても十分な受入れ施設がなく民間施設に委託するしかなく、多額の費用を要する。優秀な研究者を呼ぶときは、家族でまで含めると50、60平方メートルでは難しくなかなか呼び寄せることができない問題がある。
留学生は明らかに不足しており数を増やすことも課題。長いスケールでグローバリゼーションを進めていく必要がある。建物だけが課題ではないが、1つのネックとなっていることは確かである。是非グローバル化に対応するような施設整備を推進して欲しい。
○上野先生の説明にあったキャンパスは実験の場、理想的な教材に関する海外の事例について、同様の取組が日本で行われているのか。
○東京大学では、既にサステイナブルキャンパスプロジェクト室を設置して、産学連携を図りながらエネルギー削減に取り組んでいる。
○キャンパスマスタープランついては、20年前に作っている大学はほとんどゼロであったが、現在では各大学がキャンパスマスタープランを作っており、ステップアップしてきている。
大学が次の社会モデルを想定しながらチャレンジするという姿勢が必要。例えば、スマートキャンパスなどにチャレンジしている大学に対してきちんとサポートする施設があっていいのではないか。
大学の保有施設を補修のみの投資ではなく、グリーンキャンパス、スマートキャンパスといった新しい価値に組み替えていくことを前提にして投資することが必要ではないか。それが創造的再生という考え方だと理解している。
国内外を比較しながら見ると、キャンパス全体を見通しながら次のキャンパスの有り様をデザインできる建築家が残念ながら日本には非常に少ない。そういう人材育成についても考えるべき。
○今後、日本の人口がどんどん減少していく中においては、留学生の数を増やして、海外で学ぶ意欲のある人たちをたくさん招いて、日本の大学や専門学校等で学んでもらい、日本に定着してもらう社会を目指していくのがいいのではないかと思っている。
外国から日本に多くの留学生が来ることにより、多くの日本人の学生が国際化ということを肌身をもって知るということが非常に大事である。
留学生は英語しか話せないと一般のアパート等で生活することは難しい面がある。国際的な学生を受け入れる宿舎を充実させて欲しい。例えば中国では、キャンパスの中に非常に充実した宿舎があって、留学生はキャンパス内に生活し勉強もできる環境が用意されている。このような環境を充実させていくことで、日本社会がサステイナブルな状況になっていくのではないか。
○これから達成していくべき姿の中には、例えばグローバル化があり、それとは少しベルな軸でサステイナブルという言葉があるが、その中でフレキシビリティとは、そういった言葉との関連でいくと、どういうことを念頭に置いて、何を考えたらよいか。
○フレキシビリティというのは、いろいろな用途に使えるということ。例えば、大きな実験設備を入れて、そのプロジェクトが終わった後に、そこが使えないというような状況をできるだけ避けていく必要がある。特に理系の大学ではこういった問題が多く起きている。設計時において、構造や階高の設定にゆとりを持つことが必要ではないか。また、フレキシビリティを確保するということは、サステイナビリティや長寿命化にもつながると考える。
○パブリックスペースについて、学生たちがお互いに交流して、あるいは自学自習を進めていくという学部生のためだけでなく、最先端の研究を行っている大学院生やポスドクに対しても交流を深めるということが重要であると感じている。最先端のことをやっている人たちは色々なプレッシャーの中でタコツボ的になっている。学生同士の情報交換、異分野との交流などができるオープンな場の整備を進めていけば、研究不正の問題、ハラスメントの問題の改善にもつながるのではないか。
大学附属病院の機能強化について説明があったが、次の5か年計画においては具体的に何を目指しているのか。
●大学病院については検討会で約一年間検討してきており、その報告書を今月中に公表予定。今後、本報告書を活用し、個々の附属病院の機能や役割を踏まえ、フレキシビリティを確保しながら再開発を行い、長期に渡って継続して使っていくということを手引的にまとめているところである。
●附属病院の施設は、財投の資金を9割、1割は国の施設整備費補助金という形で、計画的に整備しており、再開発事業を長年にわたってそれぞれの大学の状況に合わせながら進めてきている経緯がある。附属病院の中には、過去に行った再開発整備から20年たち、次の段階の再開発に入るところも出てきている。その中で、今後の医療制度の改革や、地域の中での位置付け、各附属病院の特色や機能を踏まえながら、今後の施設の在り方を検討いただいた。また、整備前のマスタープラン等の検討、策定及び見直し等を一貫して担うことができる永続した組織体制づくりも含めて御提言をまとめているところである。そういったことを踏まえて、本会議では次期計画について御議論いただきたい。
○全体を空間的に時間的に俯瞰して考える人がなかなかいないと思う。まず大学の理念、ミッションがあって、そこを踏まえてマスタープランができるが、その評価ができていない。
スペースを作っても使わなければ何もならない。経営資源としていかに上手く回るか考えていくことが、サステイナビリティにもなるのではないか。長期的な視点でPDCAサイクルで回しながら、不具合が生じたらいくらでも軌道修正できるように考えていくべきである。次期5か年計画については、50年後を見据えて、当面の5年を考えて欲しい。
○民間の研究所、オフィスは、知的生産性や知識創造性をいかに高めるかについて色々な提案が行われており、それが施設の魅力につながっていると思う。単に老朽解消にとどまらずに、海外から来たくなるようなキャンパスにしていくための予算措置が必要でないか。
IPCC第5次のWGのレポートにおいて、建築的な配慮によって低炭素化を進めると、それに付随して知的生産性の向上や居住者の健康状態がよくなるという高ベネフィットがあり、その高ベネフィットを見えるようにすると気候変動の緩和にもつながるという趣旨が盛り込まれる予定。キャンパスの議論の際に入れてはどうか。
○2020年までに留学生を14万人から30人に増やすという目標に向けて、これをどのように達成するかが非常に大事である。これまでに、どういう要因があれば留学生に来てもらえるのか過去に調査したものはないのか。個人的には、学生寮がしっかりしていれば、留学生の間で日本へ行けば充実した生活ができるということが評判となって、留学生の誘因にもなるのではないかと考えている。
●調査の有無について確認する。
○施設の問題への対応は長期的な視点が必要であり、その中でサステイナビリティが密接に関わってくる。各大学が長期的な視点の下で施設のことを検討できるように、国においても考えてほしい。

(2)各国立大学法人等へのアンケートについて

○事務局から、資料6に基づき各国立大学法人等へのアンケートについて説明し、了承。

(3)その他

○事務局から、資料7に基づき当面のスケジュールについて。

お問合せ先

大臣官房文教施設企画部計画課整備計画室

(大臣官房文教施設企画部計画課整備計画室)