学校施設における非構造部材の耐震対策の推進に関する調査研究(第2回) 議事要旨

1.日時

平成24年7月6日(水曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省庁舎 16F特別会議室

3.議題

  1. 東日本大震災における学校施設の非構造部材の被害状況について
  2. 学校施設の非構造部材の耐震対策について
  3. その他

4.出席者

委員

岡田主査、宇留間委員、壁谷澤委員、国崎委員、清家委員、矢崎委員、山田委員、齋藤委員

文部科学省

清木文教施設企画部長、長坂技術参事官、新保施設企画課長、瀧本施設助成課長、野口施設企画課企画調整官、廣田防災推進室専門官 佐藤安全教育調査官 

オブザーバー

長澤先生(東洋大学理工学部教授)

5.議事要旨

(1)ワーキンググループにおける検討状況について

  清家ワーキンググループ主査より報告
  山田委員から補足

(2)学校施設の屋内運動場等の天井等の実態調査結果について

  齋藤委員より説明

  • 天井材が落ちたことによって、人的被害というのは一体どのようなものでどのくらいあったのか、という調査はあるか。
     
  • 国交省のほうの調査で幾つかデータを集めている。学校等の体育館では死者は出ていないものの、かなりの天井が落ちており、過去や今回の震災で人的被害が少ないのは、運だけかもしれない。
     
  • 体育館は教室と比べ、すべての時間活用されているわけではない。天井がある学校も2割以下と少ない。屋内運動場の議論をどこまで深め、どこまでの耐震化を実施すべきか。
     
  • 確かに稼働率という意味で、教室と体育館との違いというのはあるが、現実に今回の震災においては天井落下の被害があったということと、非常に高いところから落ちてくる落下物に対して逃げる場所がない、そういう状況の中でこの体育館の天井をどうするかというようなことが、今回テーマとして挙げられている。
     
  • 体育館で天井が落ちた時に隠れる場所がないことが課題。ギャラリーがあればその下に隠れられるが、落下時にどうやって子どもが危機を回避できるか、対策を考える必要がある。

(3)長澤悟東洋大学教授からのヒアリング

(主な論点)

  1. 天井落下防止対策の目標は、まずは発災したときに人に危害を加えないこと、第2に避難所として使用できること、第3に避難した人が壊れかけた天井を見て負担感を感じるようなことがないこと、最後に災害がおさまった後の速やかな復旧ができること。
  2. 天井落下防止策として、構造や工法の工夫や、軽量な材料にして落ちても安全にすることなどがある。なくせばいいというだけでは済まない。
  3. 日本の体育館の歴史と機能について
  • 福島市では屋内運動場は天井をはっておらず落下被害はなかったが、校舎の天井は落下しシステム天井はほとんどだめになった。校舎の天井も議論すべきで、被害の実態も把握すべき。
     
  • 非構造部材の中で、まず緊急性を持って議論をするとすれば、致命的な事故が起こりやすい屋内運動場の天井材、あるいは照明器具等、高いところから落ちてくるものをまず議論すべきと考えており、それ以外の校舎の部分の対策についても、2年という検討スパンの中でどのように検討するかを含めて考えさせていただきたい
     
  • 当面の検討対象は屋内運動場に限定するとして、避難所以外はよいか、天井以外の非構造部材はよいかという議論もあり、一つひとつ検証する必要がある。
     
  • 屋内運動場の天井以外の非構造部材の対策も必要である旨を報告の前文に記載しよう。

(4) (1)~(3)を踏まえた論点整理

 学校現場の実態について矢﨑委員よりビデオの上映がある 

  • 地震後に先生方が危険性を診断するのは困難。構造体の危険性、落下物の危険性をしっかりと判断していく必要があり、応急危険度の仕組みを是非活用すべき。
     
  • 天井の落下防止の視点については、応急危険度のシステムを補強するような形で議論していけるとよい。
     
  • 応急危険度判定士でも天井の診断は難しいという声を聞いたことがある。体育館の天井となるともう少し専門的な人が必要。天井が設置されている学校は13%。対象となる学校があるところに専門的な人を集中的に配置していく制度をつくっていけばよい。
     
  • どの程度なら使用可能と示すことは難しいが、こういう症状が出たら危険で近づかないよう現場の方が判断できる簡易なものを示すことは可能。応急危険度判定の判断基準と整合をとりながら用意できればよい。
     
  • 講堂兼用の場合、避難所として使用する場合には音響や断熱への配慮が必要。
     
  • 体育で怪我をしないよう短時間でウォーミングアップするためには通風・換気等も大切。
     
  • 小中学校ではステージにすら反響板もなく音響はそれほど重視しているとは思えない。また、窓の開放時には騒音があるが、それほど現場で天井が重要視されているとは思えない。
     
  • 断熱性能を目的として天井を設けているという回答が多くあったが、必ずしも寒い地域、暑い地域に傾向が出ているわけではない。
     
  • 体育館は避難場所としての機能が期待されている。暑い地方で断熱性がないと極めて厳しい環境になるし、寒い地域も同様で、今回の震災でも過酷な環境で避難生活を送った。体育館は常に、体育の機能、集会の機能、避難施設の機能をセットで考えていく必要。
     
  • 暑さ、寒さ対策は空調で対応していけるのではないか。
     
  • 空調は一つの方法だが、その場合でも断熱性を高めエネルギーロスを少なくすることが重要。断熱を高めた屋根材を施工するなどの工夫があってもよい。また、学校の新築整備の際に注意すべきことを既存施設とはわけて書いておいた方がよい。

(5)中間まとめ(骨子案)の協議について

   事務局より説明

  • 東日本大震災では私立学校や文化センター、社会教育施設などでも被害が多かった。検討の対象範囲について、縦割りにせず、幅広く文教施設を検討範囲に含めてはどうか。昨年7月の緊急提言では、学校に地域防災センターの機能など、様々な機能を複合化・集約化していくことが議論された。従来の学校の計画でなく、複合化した施設として大スパンの建物が整備されることにも注意する必要がある。
     
  • 今回の震災で初めて天井が落下したわけではなく、これまでの震災でも落下被害はある。
     
  • 「東日本大震災も含む近年の大震災では」としてはどうか。また、市町村教育委員会となっているが、区も入れるべき。 
  • 「屋内運動場等」の「等」とは何なのか、明確にすべき。 
  • 天井等の地震発生被害のメカニズムが明確でない中でどうやって対策を講じていくのか。とことんE-ディフェンスを活用して被害のメカニズムについて調査すべきで、そこから得られた知見を踏まえ対策を講じるべきではないか。また、防災科研では学校施設の構造体の実験もかなり進めており、教室の内部の家具等も含めて地震に伴う挙動特性も研究している。長周期の地震動における高層建物、非構造部材の研究も進んでいる。実際の体育館を再現して、天井や照明がどういう挙動を示すのか、被害発生のメカニズムを大きく解明していく研究をすべき。
  • クレセントをかけていれば窓の被害はないのか。知見の整合性、効果の妥当性は一体誰がどのように検証したのか。学校の生活実態と離れてはいないか。
     
  • 天井の被害発生の要因はあまりにも多様。構造体の動きに対応して天井は二次的に動く。落下したものの原因をすべて解明することは困難で、なかなか再現もできていないのが実態。ここ数年の地震被害からある程度までは解明しているものの、十分ではない。また、被害発生のメカニズムがわからなくても、こうした対策を取れば安全だという知見は出ているし、今後補強すべき方向も見えてきている。解明されていないことを追求するよりも、先をみていく書き方を工夫してもらいたい。
     
  • なかなか対策が進んでいない現状を踏まえ、財政的にも技術的にも支援策を講じる必要がある。非構造部材の被害発生メカニズムについて、もっと関心を高くもって研究を進めてもらいたい。一流の研究者による研究が進んでいけば解明は進む。
     
  • 教室の窓はほとんどがひき違いの窓が多く、学校施設の引き違い窓はある程度の耐震性がある。クレセントが開いているとがたがた揺れて危険度が高くなる。本当に安全かどうかは窓枠のクリアランスの設計による。クレセントがかかっている場合は脱落を防止する効果があるので、特段の必要がない限りはクレセントをかけておいた方がよい。また、はめ殺しの窓は極端に耐震性が低くなるため、クリアランスがどの程度確保されているかに左右される。体育館でははめ殺しの窓が使用されており、どの地震でも割れている。
     
  • 非構造部材の耐震対策を進めるためには、実行できるだけの予算を確保することが必要。
     
  • 既存施設を中心に落下防止対策の妥当性を点検することが必要で、誰が点検するか、その予算をどう確保するか課題。天井材を設けている施設は設けていない施設と比して、断熱等の性能を天井材に依存している可能性がある。単純に撤去すればよいという結論にならないよう工夫してほしい。
     
  • 川崎市内で天井をはっている学校はいずれもロックウールボード。吸音性・断熱性を考えてはってある。それを改修し撤去するとなると断熱性や吸音性を確保しなければならなくなる。天井を改修する際、断熱性や吸音性が確保できる工法も提示してほしい。また、これからは断熱性能とかエコ的な部分での改修が必要だし、防災拠点としての機能も必要。今後、エコ的な改修と防災機能、非構造の耐震対策の合わせ技で、既存体育館の機能をあげていくために、体育館独自の3つあわせた補助メニューがあるとよい。
     
  • 今回、24年度に創設した防災機能強化の事業は、非構造部材の対策や避難所としての防災機能の強化するなど、安全性を高めていくためのメニューが1つのパッケージになっている。 エコは、老朽のエコのメニューが別にあるが、今のメニューのままでカバーできるのか、さらに工夫が要るのかは、内容によって変わる。

 (6)事務局より今後のスケジュールについて説明

 

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