協力者会議におけるこれまでの主な指摘事項

(第1回・第2回のまとめ)

※下線部分が第2回(7月6日)会議における指摘事項

【本会議の検討範囲について】

  •  今回の検討は屋内運動場の天井を優先するということだが、照明や壁、エアコン等の設備の落下も被害が報告されている。他の非構造部材も検討対象とすべきではないか。
  • まずは緊急的に屋内運動場の天井を優先して検討し、その後、他の非構造部材についても検討していく進め方としたい。
  • 吊り天井がない体育館でも照明が落下する危険性はあるし、バスケットゴールも金具が外れて落下したりすると、避難所として使用できない状況になる。是非、天井以外の非構造部材についても加えて検討してもらいたい。
  • 教室と比べて体育館はすべての時間活用されているわけではない。天井がある学校も2割以下と少ない。屋内運動場の議論をどこまで深め、どこまでの耐震化を実施すべきか。
  • 福島市では屋内運動場は天井をはっておらず落下被害はなかったが、校舎の天井は落下しシステム天井はほとんどアウト。校舎の天井も議論すべきで被害の実態も把握すべき。
  • 当面の検討対象は屋内運動場の天井に限定するとして、避難所以外はよいか、天井以外の非構造部材はよいかという議論もあり、一つひとつ検証する必要。
  • 屋内運動場の天井以外の非構造部材の対策も必要である旨を報告の前文に記載しよう。

【学校施設以外の文教施設の扱いについて】

  • 東日本大震災では私立学校や文化センター、社会教育施設などでも被害が多かった。検討の対象範囲について、縦割りにせず、幅広く文教施設を検討範囲に含めてはどうか。
  • 昨年7月の緊急提言では、学校に地域防災センターの機能など、様々な機能を複合化・集約化していくことが議論された。従来の学校の計画でなく、複合化した施設として大スパンの建物が整備されることにも注意する必要がある。

【東日本大震災における天井落下被害状況について】

  • 岩手・宮城内陸地震では、見た目では被害がなさそうに見えても内部の吊り材や枠材などが被害を受けていた。天井は見えない部分の被害がある。
  • 栗原市では複数の体育館で天井材が全面的に崩落した。復旧方法については、天井材を張り直しても再び落下する危険性があると判断し、全面撤去した。また、市役所の議場の天井落下への対策として軽量素材となるガラス繊維幕工法を採用。
  • 今回の被害では、振れ止めをつけていても被害が生じたものがあった。対策の方法が間違っていたのか、想像以上に揺れたのか、原因は不明。
  • 3分の1の天井が落下した施設で、そのまま放置していたらもう3分の1の天井が落下した例がある。被災後に確実に使用できる状況なのか、天井の対策状況について緊急点検することも考えるべき。
  • 今回の震災の被害状況をみると、天井だけが落下しているものもあれば、照明だけが落下しているもの、設備と天井の取り合い部で天井が落下しているもの、様々。

【天井材の必要性について】

  • 映画館や音楽ホールのように学校施設にも天井材は必要か。天井材を設けると、固有の周期が発生し地震の影響を受けてしまう。果たして学校施設に天井が必要か検討すべき。撤去以外にも天井膜や蓄光膜など(軽量な材料)を使うという視点もある。
  • 多くの学校で天井を設けている地域と、そうでない地域があり、地域差がある。
  • 天井について「ないものは落ちない」。安全性を考えた時に、学校施設に天井は必要か。

【屋内運動場が保有すべき機能、天井の機能】

  • 講堂兼用の場合、避難所として使用する場合には音響や断熱への配慮が必要。
  • 体育で怪我をしないよう短時間でウォーミングアップするためには通風・換気等も大切。
  • 小中学校ではステージにすら反響板もなく音響はそれほど重視しているとは思えない。窓の開放時には騒音があるが、それほど現場で天井が重要視されているとは思えない。
  • 断熱性能を目的として天井を設けているという回答が多くあったが、必ずしも寒い地域、暑い地域に傾向が出ているわけではない。
  • 体育館は避難場所としての機能が期待されている。暑い地方で断熱性がないと極めて厳しい環境になるし、寒い地域も同様で、今回の震災でも過酷な環境で避難生活を送った。体育館は常に、体育の機能、集会の機能、避難施設の機能をセットで考えていく必要。
  • 暑さ、寒さ対策は空調で対応していけるのではないか。
  • 空調は一つの方法だが、その場合でも断熱性を高めエネルギーロスを少なくすることが重要。断熱を高めた屋根材を施工するなどの工夫があってもよい。
  • 地震が発生する地域こそ避難所の機能が求められるが、構造上の課題がある中で、天井があって点検しにくいことが足かせになる。機能としてあった方がよい面と、あるがために役に立たない面と両面。避難施設として天井を設けた方がよいと簡単には言えない。
  • 天井材を設けている施設は設けていない施設と比して、断熱等の性能を天井材に依存している可能性がある。単純に撤去すればよいという結論にならないよう工夫してほしい。
  • 川崎市内で天井をはっている学校はいずれもロックウールボード。吸音性・断熱性を考えてはってある。それを改修し撤去するとなると断熱性や吸音性を確保しなければならなくなる。天井を改修する際、断熱性や吸音性が確保できる工法も提示してほしい。

【点検・対策の実施主体について】

  • 耐震点検の実施主体が曖昧。点検未実施の理由として緊急性が低いなどの理由が挙げられているが、そもそも意識が十分でないのではないか。文部科学省からガイドブックや様々な資料がきても、教育委員会が当事者として受け止めていないのではないか。
  • 点検・対策の主体が誰で何をするのかが大事。点検しているのが学校の教職員だったり専門家だったり様々。誰がどんな点検をするのかをしっかりと整理すべき。
  • 構造と非構造と一体的な点検できればよいが、専門性が必要で、どんな人ならそうした点検ができるかも含めて考えていかなければならない。

【天井落下の危険性の判断等について】

  • 天井だけでなく、天井の裏に隠れている構造も含めて、現行の性能は無被害に留める設計・診断ではなく、多少の被害は許容されたもの。天井を施工する元の部分の性能がどうなのか、天井だけでなく内側の構造部分も含めて検討する必要があるのではないか。
  • 震災で被害を受けていた施設の中には安全対策を施していた施設もある。対策の信頼性が低かった被害事例もあり、どんな診断方法が有効なのか、限定的に見直すことも必要なのではないかと思う。
  • これまでは構造設計事務所、天井メーカーのいずれも天井の耐震チェックを行ってこなかった。誰が責任をもってこの施設は耐震性がある施設だと判断するか、明確にしていくことが大切。
  • 構造体に関するIs値のような天井向けの指標をつくり、危ないものから補強するという流れになればよいが、メカニズムがわかっていないことが問題。

【屋内運動場等の天井等に関する実態調査について】

  • 設置者、現場の技術者に、実態としてどんな対策が可能か、工法としてどんなアイデアがありうるか、現場のアイデアを吸い上げてみてはどうか。
  • 吊り天井だけでなく直天井も含めた調査にした方がよい。
  • 日頃から天井の点検を十分に実施し対策を講じていたため落下しなかった例を集められないか。被害のあった事例は集まるが、大丈夫だったデータは少ない。
  • 点検して対策を講じていたのに落ちた例もあれば、危ないと思っていたのに落ちていないという例もあり理由がわからない。大丈夫だった例は少ないと感じている。

【今後の被害状況の分析について】

  • 体育館だけでなく校舎も含め、全体の非構造部材の調査にしてしまってはどうか。どこでどのような被害があったのかという情報も広く集めるような調査も実施できればよい。
  • 学会の調査で体育館を担当したが、構造被害は多数みられるものの、天井が吊られていた件数は少なく、調査対象としてカバーできているものは限られている。また、被害状況についても目視による調査にとどまっており、詳細なものをあらためて調べないといけない。照明器具やバスケットゴール等の被害状況は広く浅くだが情報はある。すでに各種調査で調べているものを取り込んでいく必要がある。

【非構造部材の点検・対策への支援について】

  • 地方自治体においては建築専門家が不足しており点検等は外部の業者に委託している状況。また、全施設の点検調査・対策を検討するには多大な事業費が課題。これまで以上に国や県等の技術支援や補助制度の拡大が必要。
  • 学校に校医が必ずいるように、建築についても校医が配置され専門家によるバックアップができるとよい。

【余震等に備えた緊急点検の実施】

  • 地震後に先生方が危険性を診断するのは困難。構造体の危険性、落下物の危険性をしっかりと判断していく必要があり、応急危険度の仕組みを是非活用すべき。
  • 天井の落下防止の視点については、応急危険度のシステムを補強するような形で議論していけるとよい。
  • 応急危険度判定士でも天井の診断は難しいという声を聞いたことがある。体育館の天井となるともう少し専門的な人が必要。天井が設置されている学校は13%。対象となる学校があるところに専門的な人を集中的に配置していく制度をつくっていければよい。
  • どの程度なら使用可能と示すことは難しいが、こういう症状が出たら危険で近づかないよう現場の方が判断できる簡易なものを示すことは可能。応急危険度判定の判断基準と整合をとりながら用意できればよい。

【地震被害からの危険回避】

  • 体育館で天井が落ちた時に隠れる場所がないことが課題。ギャラリーがあればその下に隠れられるが、落下時にどうやって子どもが危機を回避できるか対策を考える必要。

【被害発生のメカニズムの研究】
 

  • 天井等の地震発生被害のメカニズムが明確でない中でどうやって対策を講じていくのか。とことんE-ディフェンスを活用して被害のメカニズムについて調査すべきで、そこから得られた知見を踏まえ対策を講じるべきではないか。
  • 防災科研では学校施設の構造体の実験もかなり進めており、教室の内部の家具等も含めて地震に伴う挙動特性も研究している。長周期の地震動における高層建物、非構造部材の研究も進んでいる。実際の体育館を再現して、天井や照明がどういう挙動を示すのか、被害発生のメカニズムを大きく解明していく研究をすべき。
  • 天井の被害発生の要因はあまりにも多様。構造体の動きに対応して天井は二次的に動く。落下したものの原因をすべて解明することは困難で、なかなか再現もできていないのが実態。ここ数年の地震被害からある程度までは解明しているものの、十分ではない。
  • 被害発生のメカニズムがわからなくても、こうした対策を取れば安全だという知見は出てるし、今後補強すべき方向も見えてきている。解明されていないことを追求するよりも、先をみていく書き方を工夫してもらいたい。

【天井等落下防止対策を推進するための方策】

  • 非構造部材の耐震対策を進めるためには、実行できるだけの予算を確保することが必要。
  • なかなか対策が進んでいない現状を踏まえ、財政的にも技術的にも支援策を講じる必要。
  • 非構造部材の被害発生メカニズムについて、もっと関心を高くもって研究を進めてもらいたい。一流の研究者による研究が進んでいけば解明は進む。
  • 既存施設を中心に落下防止対策の妥当性を点検することが必要で、誰が点検するか、その予算をどう確保するか課題。
  • これからは断熱性能とかエコ的な部分での改修が必要だし、防災拠点としての機能も必要。今後、エコ的な改修と防災機能、非構造の耐震対策の合わせ技で、既存体育館の機能をあげていくために、体育館独自の3つあわせた補助メニューがあるとよい。

【クレセントの効果】

  • クレセントをかけていれば窓の被害はないのか。知見の整合性、効果の妥当性は一体誰がどのように検証したのか。学校の生活実態と離れてはいないか。
  • 教室の窓はほとんどがひき違いの窓が多く、学校施設の引き違い窓はある程度の耐震性がある。クレセントが開いているとがたがた揺れて危険度が高くなる。本当に安全かどうかは窓枠のクリアランスの設計による。
  • クレセントがかかっている場合は脱落を防止する効果があるので、特段の必要がない限りはクレセントをかけておいた方がよい。
  • はめ殺しの窓は極端に耐震性が低くなるため、クリアランスがどの程度確保されているかに左右される。体育館でははめ殺しの窓が使用されており、どの地震でも割れている。

【その他】

  • 今回の震災で初めて天井が落下したわけではなく、これまでの震災でも落下被害はある。
  • 「東日本大震災も含む近年の大震災では」としてはどうか。
  • 市町村教育委員会となっているが、区も入れるべき。
  • 「屋内運動場等」の「等」とは何なのか、明確にすべき。
  • 学校の新築整備の際に注意すべきことを既存施設とはわけて書いておいた方がよい。

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