天井落下防止対策等検討ワーキンググループにおける検討状況報告

1.これまでの検討経過

  • 5月30日の第1回協力者会議を踏まえ、関係委員による事前打ち合わせを複数回実施。
  • 6月28日に第1回ワーキンググループ(以下「WG」という。)を開催し、東日本大震災における学校施設等の被害状況及び中間まとめ(骨子案)等について検討。
  • 7月6日の第2回協力者会議を踏まえ、7月26日に第2回WG、7月31日に第3回WG、8月8日に第4回WGを開催し論点整理を行うとともに、中間まとめ(案)について検討。

2.東日本大震災における被害状況    

※中間まとめ(案)の2ページ~4ページに反映

(構造体・非構造部材全体の被害状況)

  • 今回の震災においては、昭和56年の新耐震基準導入以前に建築された未補強の学校施設では、柱や壁の崩壊等構造体に大きな被害が発生している例があったが、新耐震基準以降に建築された学校施設及び補強された学校施設はおおむね小規模な被害あるいは無被害。
  • 一方、鉄骨造の屋内運動場等では、新耐震基準以降の施設でも、鉄筋コンクリート造柱と鉄骨造屋根の接合部のコンクリート剥落やターンバックルブレースの早期破断等により避難場所として使用できない事態が発生。
  • 非構造部材の被害については、多くの学校施設で天井材、照明器具、外装材の落下などが発生。非構造部材の被害については、現在、詳細に分析中。
  • これらの中には、新耐震基準以降の施設あるいは構造体の損傷が軽微な場合でも大きな被害が生じたものがあり、非構造部材の落下により児童生徒が負傷する人的被害や、学校施設が応急避難場所として使用できない事態も発生。

(屋内運動場等の天井等の被害の特徴)

  • 東日本大震災に関する各種調査によると、被害の範囲については、全面的に落下した事象や部分的に落下した事象、さらに、余震により落下の範囲が拡大した事象が発生。
  • 部分的な落下被害は、天井端部や中央部、段差部などの箇所で発生。
  • 天井部材の破損箇所については、野縁と野縁受けを接合するクリップの外れ、野縁受けと吊りボルトを接合するハンガーの開き、天井仕上げ材のみの落下などの状況が確認。
  • 昭和56年以前の旧耐震基準で設計されていて未補強である屋内運動場とそれ以降のいわゆる新耐震基準で設計されている屋内運動場とでは被害の傾向に大きな差はないが、比較的大きな被害の割合は新耐震基準の方がやや多く、また、Is値が比較的大きくても非構造部材の被害が大きい場合あり。
  • 屋内運動場等の天井等の被害状況については、構造体との関係が必ずしも明確でないことから、今後、詳細な調査・分析が必要な状況。

3.主な論点の整理 

※中間まとめ(案)に反映(以下は主な論点をピックアップ)

全体的なこと 

  • 2年かけて屋内運動場の天井だけでなく非構造部材全体を検討していくことを明確化。
  • 天井については体育館とホールとで対策が同一の部分もあるため、活用を促すことが可能。
  • 非構造部材、天井等、天井という言葉の定義を明確に整理。

学校施設が備えるべき耐震性能の考え方

  • 学校施設の特性から、児童生徒の安全を確保し、避難所として利用可能なレベルとすべき。
  • 耐震性能レベルとして、大地震動後でも重度の損傷を起こさないレベルが必要。
  • 屋内運動場の構造性能と非構造の性能とを一体的に検証していく必要。
  • 構造の耐震性を確保しても、非構造部材の耐震性が確保されているわけではない。
  • 天井等のメカニズムは必ずしもすべてがわかっていないが、現在判明している知見等を元に、大地震動後でも大規模な落下を起こさないようにすべき。

屋内運動場等の天井等落下防止対策の必要性と基本的な考え方

(天井落下防止対策の必要性) 

  • 致命的な事故につながる恐れの大きい屋内運動場については、天井を中心としつつ、照明や壁、バスケットゴールなどの点検・対策の実施を、緊急性をもって促す必要。
  •  対象となるすべての施設の総点検を実施するよう強く打ち出すとともに、今後取るべき対策の考え方を示すことが必要。

(屋内運動場等に求められる機能・性能の整理)

  • 天井が学校の屋内運動場に不可欠な要素なのか、安全面を踏まえた十分な検討が必要。
  • 屋内運動場としてどのような機能を要求するか。避難所や地域コミュニティの場として、「居住性」という視点にも配慮が必要。
  • 天井に求められる環境条件(断熱、音響、空調・換気、照度など)を整理し、安全面での課題と両面を総合的に検討することが必要。
  • 天井を撤去した後に防音対策を講じるなど、環境条件に配慮した一定の対策が必要。

屋内運動場等の天井等落下防止のための緊急に講ずべき措置

(総点検の実施)

  • 設計図書でわかること、下から目視してわかること、点検口にのぼってわかること、足場を組んで天井裏まで目視してわかること、段階に応じて判断できることを整理する必要。
  • 国土交通省において基準原案が発表されている状況を踏まえた点検方法を検討。
  • 東日本大震災を踏まえ、構造体の点検・対策も実施する必要。コンクリート破片の落下防止対策、水平ブレースの耐震対策は点検・対策の内容に盛り込むこと。

(対策優先度の総合的な判断)

  • 各施設の危険度や対策の優先度について、以下の諸条件等から整理することとし、今後、判断に資する資料を作成する必要。
    (建設年代、構造形態、架構種別、層間変形角、天井面積、天井単位面積質量など) 
  • 危険性が高く対策の優先度の高いものを示すことが必要。
    (主なもの)
    ・そもそも耐震性が確保されていない施設は最優先。
    ・RC架構に鉄骨屋根がのったタイプの施設はコンクリート破片の落下危険性あり。
    ・天井に段差や凸凹があるもの、天井の形状に勾配・曲面があるもの、天井の質量が大きいものなども 危険度が高い。

(天井等落下防止対策の実施)

  • 国土交通省の技術原案を踏まえて対策の選択肢を提示。
    (天井の補強による耐震化、天井の撤去・再設置、落下防止ネットに加え、天井撤去も)
  • 構造体については、まずは耐震診断を実施した結果を踏まえ、耐震化を。
  • 今回の東日本大震災の被害を踏まえ、Rタイプの施設については定着部下コンクリートの破壊・落下防止対策を求めること、加えて、屋根構面が変形しないよう、水平ブレースの耐震対策も施すことを盛り込むことを示した方がよい。
  • 応急危険度判定制度と連携し、余震に備えた緊急点検項目等を検討し示すことが必要。
  • ギャラリー下への避難など利用上の注意も示すことが必要。

天井等落下防止対策を推進するための方策

  • 本中間まとめも踏まえつつ、早急に学校設置者の参考になる天井等落下防止対策の手引きを策定し示していくことが必要。
  • その中で、総点検の結果を踏まえて対策の優先度を決定する際の参考となる資料や、余震に備えた緊急点検に資する資料を盛り込んでいくとよい。

4.今後のWGの検討課題

(被害状況の分析)

  • 非構造部材全体の被害状況について、教育委員会から文部科学省に報告された被害報告を詳細に分析。
  • 非構造部材の被害と構造との相関など、一層の分析が必要なものは、関係機関と連携しつつ更に分析。(必要に応じ現地調査等も実施)

(手引きの作成)

  • 対策の優先度を判断する際の参考となる資料の作成、余震に備えた緊急点検に資する資料について9月以降検討する必要。
  • 天井落下防止対策の手引きを作成し、わかりやすく対策の方法等を示すことが必要。上記2つの資料についてはこの手引きにも盛り込むこと。

(耐震化ガイドブック等の見直し)

  • 耐震化ガイドブックや耐震対策事例集については、新たに示された技術原案等も踏まえた適切な工法事例を盛り込んだものに改善・充実を図ることとし、学校設置者にとってわかりやすいものにしていくことが必要。

 

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大臣官房文教施設企画部施設企画課防災推進室

防災推進係
電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2235)、03-6734-2290(直通)

(大臣官房文教施設企画部施設企画課防災推進室)