第2章 施設計画

第1節 校地計画

第1 校地環境

1 安全な環境

(1) 地震,洪水,高潮,津波,雪崩,地滑り,がけ崩れ,陥没,泥流等の自然災害に対し安全であることが重要である。

(2) 建物,屋外運動施設等を安全に設定できる地質及び地盤であるとともに,危険な埋蔵物や汚染のない土壌であることが重要である。

(3) 危険な高低差や池などが無い安全な地形であることが重要である。また,敷地を造成する場合は,できるだけ自然の地形を生かし,過大な造成を避けることが望ましい。

(4) 校地に接する道路の幅員,接する部分の長さ等を考慮し,緊急時の避難,緊急車両の進入等に支障のない敷地であることが重要である。

(5) 死角等が生じない,見通しの良い地形であることが望ましい。

2 健康で快適な環境

(1) 良好な日照及び空気を得ることができ,排水の便が良好であることが重要である。
 【病弱に対応した施設】:病気の種類等に配慮した日照及び空気を得られることが重要である。

(2) 見晴らしや景観等が良好で,近隣に緑地,公園,文化的な施設等があることも有効である。

(3) 幼稚部にあっては,幼児の活発な運動を促すような適当な地形の起伏,自然の樹木等があることが望ましい。

3 適正な面積及び形状

(1) 現在必要な学校施設を整備できる面積であることはもちろん,将来の施設需要に十分対応できる面積であることが望ましい。なお,他の特別支援学校等を同一敷地内に併置する場合は,それらの施設の整備との関連に十分留意し,必要な面積を確保することが重要である。

(2) 校舎,屋外運動施設等を適切に配置し,有効に利用できるまとまりのある適正な形状であることが望ましい。

第2 周辺環境

1 安全な環境

(1) 頻繁な車の出入りを伴う施設その他の危険な施設が立地していないことが重要である。

(2) 騒音,振動,臭気等を発生する工場その他の施設が立地していないことが重要である。

2 教育上ふさわしい環境

(1) 社会教育施設や社会体育施設などの共同利用を図ることのできる施設や,公園等に近接して立地することも有効である。

(2) 学校間の連携や地域施設とのネットワークを考慮し,立地を計画することも有効である。

(3) 関連ある医療機関,福祉施設等が連携しやすい位置に立地していることが有効である。

(4) 風俗営業等に関わる施設,射幸心を刺激する娯楽を目的として不特定多数の者が出入りする施設その他の教育上ふさわしくない施設が立地していないことが重要である。

第3 通学環境

1 通学区域・通学方法との関連

(1) 幼児児童生徒の居住分布,心身の発達,障害の状態や特性等を考慮し,通学方法との関連に留意しつつ,幼児児童生徒が疲労を感じない程度の通学距離,又は通学時間を設定できるように校地を選定することが望ましい。特に,保護者やスクールバス等による送迎等を考慮し,交通の利便性も考慮することが望ましい。

(2) 他の学校等との交流や関連施設との連携を考慮し,適切な移動経路・方法を設定できるように校地を選定することが望ましい。

2 通学経路

(1) 交通頻繁な道路,鉄道線路等との交差を避けるなど安全な通学路を確保できることが重要である。さらに,防犯上,死角が多い場所,人通りの少ない場所をできるだけ避けられる通学経路が確保できることが望ましい。
 【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:病院等に併置する場合は,病院等と学校との間の登下校の経路を適切に設定できることが重要である。

(2) 通学経路周辺の住民や関係機関等に対し,理解と協力を求めつつ,通学による周辺地域への影響等に配慮した通学路を確保できることが望ましい。

(3) 地域との連携の中で,標識や誘導設備など,通学に必要な施設環境の整備が進められることが望ましい。

第2節 配置計画

第1 全体配置

1 校地利用

(1) 各施設部分が機能的な連携を通じそれぞれの機能を十分に発揮することができるよう相互の配置関係に十分配慮して計画することが重要である。

(2) 学習や生活に弾力的に利用できるようなゆとりの空間を各施設廻り等に確保できるよう各施設部分を配置することが望ましい。

(3) 将来の各施設部分の施設機能,施設需要等の変動に応じ,増改築等のゾーニングの再編に柔軟に対応できるよう各施設を配置することが重要である。

(4) 施設等の開放を行う場合は,学校教育に支障を及ぼすことなく開放が円滑に行えるようアプローチを考慮しつつ各施設の配置を検討することが重要である。

(5) 地盤状況を的確に把握し,地震,台風その他の災害時や不同沈下等に対する安全を確保できるように各施設部分を配置することが重要である。

(6) 幼児児童生徒が自然環境に親しみやすくするため,自然の地形を有効に活用できるよう各施設部分を適切に配置することが望ましい。

(7) 複数の障害に対応した施設とする場合は,相互の交流を考慮した計画とすることが重要である。

2 配置構成

(1) 各施設部分は,相互の機能的な連携を通じそれぞれの施設機能を十分に発揮できるよう相互の位置関係に十分留意して配置することが重要である。
 複数の障害に対応した施設とする場合は,各々の障害の特性等に配慮し,相互の利用に支障のないよう各施設を適切に配置することが重要である。

(2) 幼児児童生徒及び訪問者の動線,学校開放時の利用者の動線,スクールバス,自家用車,サービス車両等の動線を合理的に設定できるよう校門や各施設部分を配置することが重要である。その際,訪問者の利便性に配慮することが重要である。また,救急車両が保健室周辺まで安全かつ円滑に到着できるよう動線を設定することが重要である。

(3) 避難時の動線の設定に十分留意して,幼児児童生徒にとってわかりやすく,かつ,記憶しやすいように各施設部分を配置することが重要である。

(4) 各施設部分で行われる活動の雰囲気づくりに配慮して配置することが重要である。

(5) 各施設部分について,それぞれに必要とされる機能,利用形態等に応じ,適切な日照,通風等の環境を確保できるよう配置することが重要である。
 【病弱に対応した施設】:病気の種類等に応じ自然環境を適切に制御できるように配置することが重要である。

(6) 施設全体の調和,周辺の町並みとの調和等に配慮した配置構成とすることが望ましい。

(7) 他の文教施設等との複合化を計画する場合は,施設間の相互利用・共同利用や管理運営が円滑に行われるよう各施設を適切に配置することが重要である。特に,誘導設備等の設置に関しては,施設全体として一貫性をもたせることが重要である。
 【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:併置する病院等との間の行き来において伝染経路を絶 つことができるような各施設の配置とすることが重要である。

(8) 幼稚部,小学部,中学部又は高等部のうち複数の部を有する場合は,全体のまとまりとともに各部の屋内外施設のまとまりを確保できる配置構成とすることが望ましい。
 また,複数の障害に対応した施設とする場合は,全体のまとまりとともに各障害に対応した施設の屋内外施設のまとまりを確保できる配置構成とすることも有効である。

(9) 同一敷地内に複数の特別支援学校を併置する場合は,施設間の相互利用・共同利用,管理運営や相互の交流等が円滑に行われるようそれぞれの学習・生活に必要な環境を確保しつつ,各施設を適切に配置することが重要である。

(10) 防犯及び事故防止の観点から,死角が生じないよう各施設の配置を計画することが重要である。

第2 校舎・屋内運動施設

1 建物位置

(1) 建物の敷地は,できる限り盛土部分を避け,異なる地質や地盤条件をもつ部分にまたがらず,かつ,土砂の流出するおそれのある部分に近接していないことが望ましい。

(2) 校舎は,外部騒音の影響を可能な限り避けることができるように配置することが重要である。

(3) 屋外運動施設への日照に支障を生じることのないような相互の位置関係に配慮した配置とすることが重要である。
 都市化の進展の中でやむを得ず高層とする場合,校地内外の施設への日照や電波障害等の影響等について留意の上計画することが重要である。

(4) 周辺住宅等との間で,日照やプライバシー,音等における相互の影響に配慮した配置とすることが重要である。

(5) 利用者にとってわかりやすく,安全かつ円滑に建物に至ることができるよう,建物の配置を計画することが重要である。

(6) 複数の障害に対応した施設とする場合は,各々の障害の特性に応じて歩行スピードや生活リズムの違い等に配慮し,建物の位置を計画することが重要である。

(7) 学校開放を実施する場合の地域の利用者の動線に留意し,外部から利用しやすいよう交流部分や開放部分の配置を考慮して計画することが望ましい。
 【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:病院等に併置する場合には,病院等からの利用も考慮して施設の配置を計画することが重要である。

(8) 社会教育施設や福祉施設等との複合化について計画する場合は,地域住民との交流が円滑かつ効果的に展開できるよう地域住民等の利用の動線や,住民等との交流の場についても考慮し,建物の位置を計画することが重要である。

(9) 屋内運動施設については,学習関係諸室からの動線等を考慮し,幼児児童生徒の円滑な利用が図られる位置に計画することが重要である。

(10) 寄宿舎を設ける場合は,校舎との連絡や良好な環境条件の確保などに十分配慮し,適切に配置することが重要である。
 各々の障害に応じて寄宿舎を計画することが望ましい。複数の障害に対応した寄宿舎とする場合は,各々の障害の特性等を考慮しつつ,建物の位置を計画することが重要である。

2 建物構成

(1) 校舎等は,できる限り低層の建物として計画することが重要である。

(2) 建物相互間において,必要な隣棟間隔を確保することが重要である。

(3) 校舎廻りの屋外空間を,安全管理面に十分留意しつつ積極的に取り入れた構成とすることが望ましい。

(4) 緊急時の避難,施設の維持修繕等に支障を生じないよう配慮して配置することが重要である。

(5) 複数の部を有する場合は,全体のまとまりとともに各部の独自性を確保することが望ましい。また,複数の障害に対応した施設とする場合は,全体のまとまりとともに各障害に対応した施設の独自性を確保できることも有効である。
 【視覚障害に対応した施設】:建物群の構成を直交を基本とするなど建物間の動線のわかりやすさに配慮することが重要である。
 【聴覚障害に対応した施設】:視覚的な空間のわかりやすさに配慮することが重要である。
 【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:各建物は,幼児児童生徒の多様な形態による建物間の円滑な移動に対応できるよう配置することが重要である。

第3 屋外運動施設

1 施設位置

(1) 屋外運動場,各種コート等は,方位に留意しつつ,災害時の安全性や良好な日照,通風等を確保できるとともに,校舎や周辺地区に砂塵,騒音等の悪影響を及ぼさないよう,また,周辺の住宅等の間で相互にプライバシー等に支障を生じないよう十分留意して配置することが重要である。

(2) 屋外プールは,良好な日照,通風等を確保できるとともに外部からの視線の防止に配慮し,また,校舎や更衣室との円滑な移動にも留意して配置することが重要である。

(3) 屋外運動場,各種コート等は,幼児児童生徒の円滑な利用が図られる位置に計画することが重要である。その際,各種の運動を支障なく行えることや,幼児児童生徒の移動,他の学習空間に及ぼす騒音等の影響を考慮することが重要である。なお,複数の障害に対応した施設とする場合は,共有する屋外運動施設を各々の幼児児童生徒にとって利用しやすい位置に計画することが重要である。
 【聴覚障害に対応した施設】:集団補聴システムの屋外利用を計画する場合には,周辺地区からの騒音や,住宅等との間における電波に関する相互の影響等に留意しつつ,集団補聴システムの利用範囲を適切に設定できるよう配置することが重要である。

(4) 保健室との連絡が良く,救急車両等が出入りしやすいよう配置することが重要である。

(5) 建物の出入口から屋外運動場へ至る通路には,できる限り段差を設けないように計画することが重要である。

(6) 各施設部分は,学校開放への要請に対応しやすいよう外部から利用しやすい位置に計画することが望ましい。
 【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:病院等に併置する場合には,病院等からの利用も考慮して配置を計画することが重要である。

(7) 屋外運動場については,災害時においても安全性を確保することのできる位置に配置することが重要である。

2 施設構成

(1) 各施設部分は,相互に近接したまとまりのある配置とすることが重要である。

(2) 校舎,屋内運動施設等との連絡のよい配置とすることが重要である。

(3) 観覧のための施設を計画することも有効である。

第4 屋外教育環境施設等

1 屋外教育環境施設

(1) 校舎,屋内運動施設,屋外運動施設等との関連及びこれらの活用を総合的に考慮して計画することが重要である。

(2) 校舎廻りの屋外空間,半屋外空間等との連携や役割分担に配慮し,これらの空間を含め計画することが重要である。

(3) 遊び庭,屋外の運動広場,学習園,自然体験広場,屋外作業スペース等は,屋内での学習活動との関連性等を考慮し,各部又は各障害に対応した施設からの移動を含め,利用しやすい位置に計画することが重要である。

(4) 屋外の集会施設は,日常の生活領域あるいは動線との関連に配慮して配置することが重要である。

(5) 幼稚部・小学部における遊び場,中学部・高等部における屋外の作業スペース等の設定を考慮して,各施設の配置を計画することが重要である。

2 緑地

(1) 緑地の効用を考慮し,維持管理に十分留意しつつ,積極的に緑地を導入することが望ましい。

(2) 建物,屋外運動施設などの規模,配置等との釣合や自然学習環境としての役割に留意し,校地内に均衡よく,それぞれにまとまりをもたせて配置することが重要である。

第5 その他の施設

1 門

(1) 幼児児童生徒の安全上及び教育上の支障がなく,周辺の地域住民の生活等に支障を及ぼさないような位置に配置することが重要である。

(2) 不審者の侵入防止や犯罪防止,事故防止等の観点から,職員室や事務室等の教職員の居場所から見通しがよく,死角とならない位置に門を設置することが重要である。

(3) 利用者が,校舎等の出入口の位置を認識しやすく,かつ,校舎等へ円滑に移動できる位置に配置することが望ましい。

2 囲障等:【知的障害に対応した施設】

 飛び出しを防止するため設置する囲障等については,安全対策に十分配慮して計画することが重要である。
 また,知的障害に限らず,情緒障害や自閉症,ADHD等の障害を併せ有する幼児児童生徒に対応する場合も,パニックや多動・衝動性等を十分考慮し,安全対策に十分配慮して計画することが重要である。

3 駐車場

(1) スクールバス,保護者等の車の駐車場は,乗降のための十分なスペースを確保できる規模で,昇降口との連絡のよい位置に,幼児児童生徒が建物に出入りしやすいよう計画することが重要である。また,通級による指導や教育相談などの来校者の利用状況等も考慮し,適切な規模,配置とすることが重要である。

(2) 学習活動や幼児児童生徒の安全及び健康への影響に十分配慮しつつ,各部又は各障害に対応した施設の利用状況等に応じた適切な規模,配置とすることが重要である。

4 サービス施設

(1) 訪問者の車,管理上の戸外作業や食材運搬等のためのサービス用車両等の一時駐車のためのサービスエリアを,必要に応じ,適切な位置に配置することが重要である。

(2) 設備系の諸室を別棟とする場合は,適切な位置に,安全性に十分配慮して配置することが重要である。

5 その他

 屋外倉庫,ごみ置き場などの施設及び設備は,利用しやすく,かつ,学習活動等に支障の生じない位置に配置することが重要である。特に,ごみ置き場等は,校舎,周辺地区に臭気等の悪影響を及ぼさないよう配慮して配置することが重要である。

お問合せ先

大臣官房文教施設企画部施設企画課

課長 長坂 潤一(内線2286) 課長補佐 瀬戸 信太郎(内線3181) 指導第一係長 野口 公伸(内線2291)
電話番号:03-5253-4111(内線2291)

(大臣官房文教施設企画部施設企画課)