資料2-5 地域の緊急避難場所や避難所となる学校施設づくりの在り方に関する論点整理

地域の緊急避難場所や避難所となる学校施設づくりの在り方に関する論点整理
(これまでの議論及び現地調査を踏まえた主な論点)

(※は参考とした資料等)

 学校設置者は、学校施設が地域の緊急避難場所や避難所となる場合には、以下の考えに基づき学校施設の整備を実施することが望ましい。

(1)基本的な考え方

・災害の発生時に備え、多くの場合において、地域住民にとって身近であり、一定の広さのある学校が地域の緊急避難場所や避難所に指定されている。一方で、災害が発生してから施設の防災機能を充実させることは困難が伴う。そのため、地域の緊急避難場所や避難所となる学校施設の整備に当たっては、学校は教育活動の場であり、早期に学校機能を再開させることが重要であることを認識の上、想定される避難者数(地域住民、帰宅困難者など)や、起こりうる災害種別のリスク等を十分に考慮し、あらかじめ学校設置者と市町村の防災担当部局との間で、お互いの役割を明確にしながら、緊急避難場所や避難所として必要な諸機能を備えておくことが必要である。

・また、教育活動エリアと避難所エリアのゾーン分けの際には、避難者の人数が、災害の程度や時間の経過によって増減することを踏まえ、避難者に優先的に開放するスペースの順序を定め、段階的な開放または縮小が可能となる計画を立てておくことが重要である。

・災害の発生から学校機能の再開までに、学校施設として求められる機能は、大きく分けて以下の三つである。
1.災害から安全に児童生徒及び避難してきた地域住民が一時的に難を逃れるための緊急避難場所としての機能
2.地域の避難所としての機能
3.学校機能再開に必要な機能

・災害の発生から学校機能の再開までのプロセスについては、災害の規模や程度により異なるが、発災以降の各段階(フェーズ)において、必要と考えられる機能は異なってくることから、以下では、四つの段階(フェーズ)に分けて、必要な機能を整理している。
1.救命避難期(~避難直後)
 安全な場所(緊急避難場所)に避難するまでのフェーズであり、災害から緊急的に身を守ることができることが求められる。
2.生命確保期(避難直後~数日程度)
 避難後、避難所に支援物資が届き始めるまでのフェーズであり、
 a.津波の場合の高台等、緊急避難場所が避難所を兼ねていない場合における、緊急避難場所から避難所への移動(搬送)までの生命確保
 b.避難所における、必要最低限の避難生活の確保が求められる。
 (a.については、第1部参照。)
3.生活確保期(発災数日後~数週間程度)
 救援物資等が届き始めてから、教育活動を再開するまでのフェーズであり、炊き出しの実施など、比較的快適な避難生活を送るための対策が求められる。
4.学校機能再開期(発災数週間後~数ヶ月間程度)
 教育活動を再開してから、避難所としての役割が解消されるまでのフェーズであり、避難所機能が継続する中で、教育活動を円滑に行うための対策が求められる。

・災害時の避難や、避難所での生活にあたっては、住民間のつながりが大切であるという指摘がある。そのため、地域コミュニティを強化することを目的とし、学校を地域コミュニティの拠点として整備することが重要である。(例:複合化、施設の地域開放)

・また、学校施設の防災機能強化は、可能な限り普段からの利用を想定した上で行うことが望ましい。少なくとも、教育施設としての機能を阻害しないよう、動線などに配慮すべきである。

・整備した防災機能の確認や防災意識の向上のため、市町村の防災部局と学校が連携して、避難訓練や避難所開設訓練の実施等のソフト対策を行うことが重要である。

(2)地域の緊急避難場所や避難所となる学校施設に必要な機能

a.救命避難期から必要な機能
1.施設の安全性

・緊急避難場所や避難所となる学校施設は、災害発生時も安全に生徒・教職員が避難するため、また、その後避難所として利用するため、耐震性・耐火性に加え、天井等の非構造部材の耐震対策を図り、災害により重大な被害が及ばないことが望ましい。
 ※避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針(内閣府)
  (津波避難については、第1部参照。)

2.情報通信(公務)
・緊急避難場所や避難所となる学校施設においては、災害時に必要となる以下の情報通信機能について、必要な機能及びイニシャルコスト、ランニングコストを十分に検討した上で、導入を検討することが望ましい。

(a)災害情報の入手
(b)外部への連絡

(a)災害情報の入手
・救命避難期においては、的確に情報を入手し、迅速な避難行動につなげることが重要であるため、防災行政無線の受信設備や携帯型ラジオを備えておくことが重要である。
 ※携帯ラジオ:歌津中学校ヒアリング
 ※その他:緊急提言

(b)外部への連絡
・生命確保期においては、被災状況や救援要請を、役場等の外部機関に連絡できることが重要である。また、生活確保期においては、必要な支援物資や、学校機能再開に向けた役場との連絡などが必要となる。

・固定電話や携帯電話は災害発生時にはつながりにくくなることが想定されるため、役場との相互通信が可能な防災無線や、災害時優先電話の設置が有効である。また、外部(役場を含む)との連絡手段としては、MCA無線や、衛星電話の活用も有効である。
 ※緊急提言

(※) 災害時優先電話:災害時に通信が集中し通信制限を実施する場合においても、発信については通信制限を受けない固定電話。
(※) MCA無線:マルチチャンネルアクセス無線の略称。相互通信や一斉発信が可能な業務用無線サービスであり、災害時には自治体が優先で通話することが可能。

3.緊急避難場所(又は避難所)への避難のための進入
・緊急避難場所や避難場所となる学校施設は、休日等の学校に教職員がいない時間帯に災害が発生した場合を想定して、学校施設のうち、緊急避難場所又は避難所となる部分(例:グラウンド、屋内運動場等)に地域住民が避難のために進入する方法を確保しておく必要がある。

・進入にあたり鍵の解錠が必要な場合は、災害発生に備え、鍵を地域住民に預けておくか、地震発生の際に自動で開くキーボックスや、パニックオープンの仕組みを導入する必要がある。なお、鍵を地域住民に預けておくことは、地域住民に一定の負担がかかることに留意が必要である。
 ※第3回質疑より

b.生命確保期から必要な機能
4.トイレ
(基本的事項)
 清潔で快適なトイレの確保は、避難所機能の向上に非常に重要である。災害時に求められるのは、
(a)トイレの数の確保
(b)快適に使用できる便器
(c)便器の洗浄機能の確保
(d)照明の確保
である。

(a)トイレの数の確保
・避難所となる学校施設は、想定される多数の避難者にも対応できるだけのトイレの数を確保することが必要である。そのため、十分な数のトイレを施設として整備しておく必要がある。

・しかし、生命確保期において、平時の利用回数を避難所としての利用時の利用回数が大幅に上回ると見込まれる場合には、災害時のみに利用するマンホールトイレの整備や、備蓄した簡易トイレ・携帯トイレにより対応することも考えられる。
 ※緊急提言、先進事例(多数)

・また、生活確保期以降は支援物資等により仮設トイレを確保することにより対応することも考えられる。なお、仮設トイレの確保を検討する場合は、設置するためのスペースも併せて検討することが望ましい。

・なお、災害により一部のトイレが利用できなくなる可能性も考慮し、一つの対策で対応するのではなく、複数の対策を組合せ柔軟な対応を行うことが考えられる。そのため、様々な施設面の対策をした場合も、携帯トイレ・簡易トイレは備蓄しておくことが望ましい。
 ※緊急提言

(b)快適に利用できる便器
・避難所となる学校施設には、高齢者や障害者のみならず、誰にも使いやすいトイレを確保する必要がある。

・特に高齢者や障害者は、和式便器を使いづらいことから、洋式便器を整備する必要がある。
 ※緊急提言、被災地(多数)

・障害者のためには、多機能型トイレを確保する必要がある。また、多機能型のトイレを、障害者でない避難者が使用することで本来多機能型トイレの利用を必要とする障害者が使いづらくならないよう運用する必要がある。
 ※緊急提言、先進事例(多数)

・また、男女別のトイレを設ける必要がある。男女別のトイレの設置比率については、女性用トイレの方が混みやすいことを踏まえ、その比率を調整することが望ましい。
 ※男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針(内閣府)

(c)便器の洗浄機能の確保
・避難所となる学校施設のトイレには、災害が発生し、断水が発生しても汚物を流せる洗浄水及び排水経路を確保することが必要である。

・断水時の洗浄水については、耐震性貯水槽やプールの水の利用、防災井戸の整備や雨水・中水の利用により、詰まらず流せるようにする必要がある。このため、プールの水や雨水貯留水を、施設内のトイレやマンホールトイレに直接流せるように配管を整備しておくことが望ましいが、可搬式のポンプにより対応することも考えられる。
 ※緊急提言、松江小学校、十条富士見中学校

・洗浄水として、耐震性貯水槽の水を使用することも考えられる。この場合は、飲料水の確保を別途行う必要があることに留意する必要がある。
 ※汐入東小

・また、洗浄水を確保しても、下水処理場の被災や下水管の被災によって、下水管が詰まりトイレが使用できなくなることもあることから、周辺下水道の耐震化や、一定期間分の汚水を貯めておくことができる汚水貯留槽の学校敷地内への設置などの対策が必要である。
 ※緊急提言、汐入東小(周辺下水道耐震化)

(d)照明の確保
・特に女性や子供は、夜に真っ暗なトイレ行きにくいため、停電時の夜でもトイレに行きやすくするためにトイレの照明が必要である。非常用発電機やランタン、懐中電灯等による対応が考えられる。(詳細は「5.照明」を参照。)
 ※緊急提言、被災地ヒアリング(多数)
 
(その他留意すべき事項)
・微生物が排泄物を分解する方式のトイレ(バイオトイレ)は断水時にも利用可能であり、また、臭気が発生しにくいというメリットがある。処理能力に限界があることや、維持にコストがかかるということも踏まえ、設置を検討することが考えられる。
 ※緊急提言

・感染症患者が発生した場合には、拡散防止のため、専用のトイレを設けることが望ましい。
 ※山下中学校ヒアリング

・支援物資が届き始めるまでに、トイレットペーパーがなくならないよう、十分に備蓄しておくことが重要である。

5.照明
(基本的事項)
・被災により避難者が心細くなっている中、真っ暗になってしまうと、避難者が移動するうえで危険である上、精神的にも心細くなってしまうことから、避難所となる学校施設は、停電時でも一定の照明を確保できることが求められる。

・このため、蓄電機能付きの太陽光発電設備や自家用発電機により、学校施設内で発電することで、照明を確保することが考えられる。(詳細は「7.電源、熱源」参照)

・この場合において、発電した電気で、普段から使用している屋内照明を点灯させるため、配線の工夫や、可搬式発電機の取り付け口の整備を行うことが望ましい。
 ※十条富士見中、松江小

・このような対応を取ることができない場合は、支援物資が届くまで利用できるだけの十分な量の懐中電灯やランタンおよび電池を備蓄しておく必要がある。
 ※石巻支援学校ヒアリング

(その他留意すべき事項)
・夜間の災害時に避難所の場所が一定程度離れている場所からも認識できるよう、投光器等の照明を準備しておくことも考えられる。
 ※歌津中ヒアリング、十条富士見中

・避難所の照明は、夜に明るすぎて眠れないということがないよう、調光機能付きの照明とすることが望ましい。
 ※緊急提言、松江小

6.情報通信(避難者)
 災害時において、被災者が求める情報通信機能は、
(a)相互通信による安否確認
(b)情報収集
の二つである。

(a)相互通信による安否確認
・避難者が、電話やインターネットなどによる外部との情報通信により、安否確認等を行うことができるよう、避難所としても環境を整備することが望ましい。

・特に生命確保期においては、携帯電話等による通話は回線の輻輳が発生しやすいことから、発信時には優先的に回線を利用することができる災害時特設公衆電話をあらかじめ設置しておくことが望ましい。
 ※先進事例(多数)

・また、電話ではなく、輻輳が起こりにくいインターネット通信により外部との通信を行うことが想定される。
この場合において、携帯電話等基地局の通信容量も超過する場合もあることから、携帯電話等基地局を通さずにインターネット通信を行うことができる無線LANのアクセスポイントをあらかじめ設置しておくことが考えられる。
 ※先進事例(多数)

(b)情報収集
・避難所は、被災者にとって情報収集・交換の場となることから、避難所におけるテレビやインターネット環境の提供が可能になるよう、配線等を整備しておくことが望ましい。
なお、非常時において校内のコンピュータ等を学校関係者以外の者が使用できるようにするためには、ライセンス等についてあらかじめ確認をし、必要な対策を講じておく必要がある。
 ※緊急提言

7.電力・ガス
(基本的事項)
 避難生活に電力や熱源は必要であるが、災害時には電気やガスの供給が止まる可能性が高い。

(a)電力の確保
・避難所においては、生命確保期から、照明の確保や携帯電話の充電等が必要となる。このため、可搬式または据付式の発電機と、発電用の燃料を備蓄しておく必要がある。
 ※避難所(多数)、先進事例(多数)

・可搬式の発電機の中でも、カセットボンベ式のものは、燃料が備蓄しやすいという特長がある。また、出力は大きくないものの、ガソリン式の発電機と比較すると避難所内部でも安全・静音で使いやすい製品がある。
 ※西新井小学校事例

・また、据付型の発電機は、普段からの利用やコストも踏まえて整備を検討することが望ましい。
 ※緊急提言

・特に、太陽光発電を整備する場合は、停電時も自立運転が可能としておくとともに、蓄電池に充電して夜にも使えるようにしておくことが望ましい。
 ※緊急提言

(b)ガス等による熱源の確保
・避難所となる学校施設においては、生命確保期から乳幼児の粉ミルク用の温水の確保のため、熱源の確保が必要である。また、熱源を確保することにより、寒い時期であっても要支援者等に暖かい食事や飲み物を提供することも可能となる。

・そのため、ガスの供給停止に備え、カセットコンロ及びカセットボンベを備蓄しておく必要がある。
 ※先進事例(多数)、被災地ヒアリング(多数)

・なお、敷地内で設備が完結するLPガスは、広域的にパイプラインによりガスを供給する都市ガスに比べ、機器が故障しなければ利用可能な場合が多い。
 ※石巻支援学校ヒアリング

・そのため、都市ガスの供給地域においては、LPガスを利用可能なガスコンロや、普段使用しているガスコンロをLPガスでも利用できるようにする変換器のどちらかを備蓄しておくことが望ましい。
 ※緊急提言

(その他留意すべき事項)
・生活確保期に入り、電気が復旧すると、照明や携帯電話の充電に加え、冷暖房や洗濯機、電気ポットの設置など、様々な電気器具を使用することとなるため、必要なコンセント数や電気容量を確保できるよう整備を検討することが望ましい。
 ※緊急提言、六郷中ヒアリング

・ガスによる熱源の代替手段として、普段はベンチとして使用し、非常時にはかまどともなるかまどベンチを整備することも考えられる。
 ※先進事例(多数)

8.食料・飲料
・避難所となる学校施設は、避難者の生命維持に必要な分の飲食を確保するため、ほとんどの地域で支援物資が届くまでの3日程度の食料を備蓄などにより確保する必要がある。

・災害時には、断水となる可能性が高いことから、飲料水についても、ペットボトルによる備蓄や、耐震性貯水槽、プールの水の浄水装置などにより確保する必要がある。
 ※緊急提言

・アレルギーを持っている人が備蓄食料を食べられないということがないよう、アレルギー対応の食料を準備しておく必要がある。
 ※内閣府避難所指針

・また、高齢者にも対応できるよう、乾パンなどの固いものだけでなく、おかゆなどの食べやすいものも備蓄しておく必要がある。この場合において、スプーン等の食器についても確保することが望ましい。
 ※食器:緊急提言

9.衣料
・生命確保期には、大雨の中の避難などにより、汚れてしまった場合の着替えが必要となる場合があることから、避難所となる学校施設には、衣料や下着などを一定程度備蓄することが望ましい。
 ※被災地ヒアリング(多数)

・生活確保期からは、避難者が定期的な洗濯及び着替えが必要となる。このため、洗濯機置き場や、男女別の洗濯干し場及び着替えスペースを確保することを検討する必要がある。
 ※内閣府避難所指針

10.衛生
・避難所においては、衛生的な環境の下で避難所生活が送れるよう、避難所を清潔な環境に保つ必要がある。

・一方で、多くの人が密集し感染症が発生すると急速に広がりやすいことから、感染症患者が発生した場合には、感染症患者専用のスペースを設けることが必要である。また、感染症患者専用のトイレも設けることが望ましい。
 ※緊急提言、被災地ヒアリング(多数)

・また、避難所となる学校施設には、風呂やシャワーの設備が必要である。生命確保期には、少なくとも避難所にたどり着くまでに汚れてしまった人がシャワーを使えるよう、シャワー設備の設置を検討する必要がある。
 ※緊急提言、被災地ヒアリング(多数)

・生活確保期からは、定期的に風呂やシャワーを浴びられるよう、仮設の風呂やシャワーを設置することとなるため、あらかじめ設置スペースを検討しておくことが望ましい。
 ※被災地ヒアリング(多数)

11.寝床・寒さ対策
(基本的事項)
・避難所となる学校施設においては、多くの避難者のための居住スペースを確保することとなるが、居住スペースは比較的快適に寝られるような環境とすることが必要である。このため、まず毛布の備蓄をしておく必要がある。
 ※被災地ヒアリング(多数)

・また、固い床で寝ずに済む環境が必要であることから、可能な限り畳、マット、じゅうたん、段ボールなど、固い床で寝ずに済む環境を用意することが重要である。なお、柔らかく、断熱性が高く、かさばらないエアマット等を備蓄しておくことが有効である。
 ※被災地ヒアリング(多数)

・特に高齢者には、畳やマットなどの比較的柔らかく、断熱性の高い寝床を確保することが望ましい。
 ※緊急提言

・特に寒冷地においては、据え置き型の暖房の設置または暖房機器の備蓄が有効である。この場合において、停電時にも運転可能なものを備えておくことが望ましい。
 ※据置型の暖房:緊急提言

(その他留意すべき事項)
・床等の断熱性能を確保することは、寒さ対策に有効である。
 ※仙台市ヒアリング、緊急提言

・特に寒冷地においては、風除室を設け避難所の扉を二重にすることにより、避難所に入ってくる冷気を防ぐことが可能となる。
 ※六郷中ヒアリング

・天井の高い屋内運動場よりも、教室の方が寒さ対策においては優れている。ただし、教室の利用については、避難者との連絡体制や、学校機能の再開等についても考慮に入れ、総合的に判断することが望ましい。
 ※石巻支援学校ヒアリング(前半)

12.暑さ対策
・夏場の災害の場合は、避難所の暑さ対策が必要となる。窓の開放による風通しの確保のため、通風を考慮した避難所の配置や、窓を開放しても虫が入ってこないための網戸の設置を検討することが望ましい。
 ※六郷中ヒアリング

・また、日射による熱を防ぐために、日よけ用のカーテンの設置や、避難所となる屋内運動場の屋根に遮熱性塗料を塗布することなどを検討することが望ましい。
 ※王子小・王子桜中ヒアリング

13.バリアフリー
・車いすでも自力で移動可能となるよう、また、高齢者が安全に移動できるよう、避難所となる学校施設はバリアフリー化されている必要がある。

・このため、あらかじめバリアフリー化を進めるとともに、災害が発生した場合には仮設のスロープの設置などにより、車いすでも移動できるようにすることが重要である。
 ※内閣府避難所指針

14.要配慮者への対応
(基本的事項)
・生命確保期に必要な乳幼児、女性向けの以下の物資を、避難所となる学校施設に備蓄しておく必要がある。

(a)乳幼児に必要な紙おむつ、おしりふき、粉ミルク(アレルギー対応のものも含む)、ほ乳瓶
(b)粉ミルク用の温水を確保するためのカセットコンロ、カセットボンベ及び鍋
(c)生理用品
 ※内閣府避難所指針

・必要な場合に要介護高齢者、乳幼児世帯、障害者世帯等が個室に入所できるよう、あらかじめ福祉避難室用のスペースについて考慮しておく必要がある。

(その他留意すべき事項)
・多目的スペースを、災害時には乳幼児世帯用の専用スペースとすることも想定し、あらかじめじゅうたん敷きにしておくことも有効である。
 ※緊急提言

・また、女性のための授乳スペースや着替えスペースを確保することが望ましい。
 ※緊急提言

・女性用の物資の配布は女性が担当することが望ましい。
 ※内閣府避難所指針

15.医療
・避難所となる学校施設からは、重傷の患者を救急搬送することが考えられるため、避難所として利用する際は救急車両の進入ルートを確保することが必要である。
 ※緊急提言

・また、救護のためのスペースは、必要に応じて広いスペースが利用できるよう、あらかじめ場所を確保することが望ましい。
 ※緊急提言

c.生活確保期から必要な機能
16.プライバシー
・生活確保期からは、家族ごとに、一定のプライバシーを保てるよう、仕切りを設けるようにすることが望ましい。場所に余裕がある場合は、避難所内にテントを設置することで対応することも考えられる。ただし、仕切りやテントを設置した場合、風通しが悪くなることに留意する必要がある。
 ※内閣府避難所指針

17. 子供
・生活確保期からは、子供の遊び場や学習スペースを確保することが望ましい。
 ※内閣府避難所指針

18.ペット
・避難所となる学校施設は、ペットと共に避難してくる者がいることに、あらかじめ留意する必要がある。

・ペットを避難所に持ち込むと、鳴き声や臭いなどで他の避難者に負担をかける可能性が高いことから、ペット連れ専用スペースや、ペット置き場の確保を検討することが望ましい。
 ※環境省ペット避難ガイドライン

19.相談・交流
・生活確保期からは、相談所が開設されることから、相談窓口を設置するためのスペースを確保することが望ましい。
 ※内閣府避難所指針

・生活確保期からは、避難が長期化した場合にも心身の健康を確保していくため、喫茶、足湯、集会場等の交流の場を設けることを検討することが望ましい。
 ※内閣府避難所指針

d.各種機能を確保するために必要な機能等
20.備蓄スペース
・上記のとおり、特に生命確保期を乗り切るためには、様々な物資を備蓄しておくことが必要であることから、避難所となる学校施設には、物資の内容や量に応じて、備蓄スペースを確保する必要がある。
 ※緊急提言

・備蓄物資が水害により流されたりしないよう、備蓄スペースは、想定される災害に対して安全な位置に配置することが重要である。
 ※緊急提言、松江小・汐入東小

・備蓄の量は市町村が算定する想定避難者数及び在宅避難者数に応じて確保する必要がある。
 ※緊急提言

・なお、スーパーマーケット等との協定締結により、備蓄によらず物資を確保できるようにすることも考えられる。
 ※名古屋市、山下中ヒアリング等

21.運営のためのスペース
・避難所の運営に当たっては、職員やボランティアの執務スペースや打ち合わせのスペースを確保する必要がある。
 ※緊急提言、被災地ヒアリング、先進事例(多数)

・また、生活確保期からは、様々な支援物資が配送されてくることから、搬入、仕分け、保管、配給のためのスペースを確保する必要がある。
 ※緊急提言、被災地ヒアリング、先進事例(多数)

(3)地域コミュニティの拠点としての施設整備

・学校、特に公立の小・中学校は、将来を担う子供たちの大切な学習の場であるとともに、地域住民にとっても身近な公共施設である。このため、地域住民が日頃から学びやスポーツに親しむことのできる施設、異世代間の交流を深める場、地域の祭りや行事の舞台など、防災機能だけでなく地域のニーズに応じて様々な機能を発揮することが期待されている。
 ※緊急提言

・そのため、平時においても学校が地域コミュニティの拠点、命を守る防災拠点としての役割を果たすなど、地域の様々なニーズに柔軟に対応した学校施設の整備を進めていくことが望ましい。特に、地域コミュニティの強化は、地域の防災力の強化にもつながることから、地域コミュニティの拠点としての整備は重要である。
 ※緊急提言

・例えば、地域の図書館や公民館等との複合化や、地域開放の積極的な実施により、子供のいない世帯や子供が独立した高齢者世帯にとっても、普段から学校に行く機会を作ることが重要である。
 ※第3回質疑より

・なお、防災機能を一か所に集約させた場合、万が一当該施設が被災した際に地域の防災機能が失われることや、地域によっては施設への避難距離が長くなり、避難に困難が生じる可能性があること等についても考慮し、地域の状況に応じ、機能を分散して整備することを検討することも必要である。
 ※緊急提言

・地域の公民館との複合化による畳スペースの設置や、屋内運動場の地域開放のためのシャワーの設置など、避難所としての機能の向上も併せて行うことが望ましい。

(4)避難所としての学校施設利用計画の策定

a.基本的な考え方
・円滑な避難者の誘導や施設の効果的な活用のためには、災害時に学校施設を避難所としてどのように利用するかを定めた学校施設利用計画を作成する必要がある。

・学校施設利用計画には、校舎、屋内運動場、グラウンド等について、避難者の生活や避難所運営に必要なスペース等を設定し、開放の順序づけなどを具体的に定めることが望ましい。

・学校施設利用計画は、避難所となる学校施設の運営方法を定めた避難所運営マニュアルとともに作成し、関係機関の担当者のみならず、教職員や地域住民にも十分に周知しておくことが望ましい。

b.避難所として使用するスペース等の設定
・避難者が寝起きする居住スペースは、一般的には屋内運動場、また、必要に応じて普通教室、特別教室等の利用が想定される。特別教室の利用を検討する際には、転倒や落下の危険性のある家具や備品がないことを確認する必要がある。

・居住スペースの設定に当たっては、避難者一人当たりの必要な広さ(人が横になるスペースと荷物を保管する場所:おおむね2~3m2程度)と室内の通路を確保できるよう計画し、各室における避難者の受け入れ可能人数を把握しておくことが望ましい。

・居住スペースとなる部屋の家具(机、椅子)は、数か所にまとめて保管することが効率的であり、保管のための部屋を想定しておくことが望ましい。

・避難者の日常生活に必要な、洗面、トイレ、更衣、シャワー、炊事、洗濯等については、既存施設の災害時における使用の可否を検討する必要がある。また、必要に応じ、これらを仮設するための場所を想定しておくことが望ましい。

・運営本部やミーティング、救護等のための運営スペースとしては、事務室、職員室、保健室などの管理関係所室や会議室等の利用が想定される。運営スペースは、可能な限りまとまったエリアに設定し、避難者の生活エリアとは可能な限り明確に区分することが望ましい。

・救援物資の配給のためのスペースや情報伝達のための掲示・連絡スペースは、ロビーや屋内運動場の入り口、ピロティーなど在宅避難者の利用も考慮した一に設置することが望ましい。また、避難者と在宅避難者の動線を分けることは、物資の配給自答の混乱を避ける効果がある。

・グラウンドの利用に関しては、仮設設備、炊き出し等に必要なスペースや支援物資の搬入車両・緊急車両の校舎への経路を確保した上で、地域住民に開放する範囲を設定することが望ましい。

 ※以上、学校施設の防災機能の向上のために(国立教育政策研究所)

(5)ソフト施策との連携

a.避難計画、避難訓練
・学校施設は災害の種類・規模に応じて、想定される被害の部位、損傷の程度等が異なることになる。そのため、災害の種類・規模に応じて、避難方法や避難時の動線等の避難計画を策定するとともに、想定される災害に対応した避難訓練を、普段から定期的に行うことが望ましい。
 ※緊急提言

b.防災教育
・災害発生時に、自ら危険を予測し、回避するための「主体的に行動する態度」を育成し、支援者となる視点から安全で安心な社会づくりに貢献する「共助・公助」の精神を育成する防災教育が重要である。
 ※「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」最終報告

c.避難所運営マニュアル
・災害時の避難所運営を円滑に行うためには、関係機関等が十分な協議を行い、運営体制、運営方法、連絡・参集体制、自主防災組織やボランティア組織との連携方法等を具体的に定めた実践的な避難所運営マニュアルを作成しておくことが必要である。特に、災害発生直後の初動期や避難所開設が長期化した場合の具体的な運営方法や役割分担についても十分な取り決めを行い、マニュアルに盛り込んでおくことが望ましい。

・学校機能の早期再開のためには、教職員が授業再開準備業務に専念できる体制への移行が必要であり、その際の避難所運営方法や役割分担について、事前に関係機関等で協議を行い、避難所運営マニュアルに位置づけておくことが望ましい。

d.避難所開設訓練
・作成した避難所運営マニュアルに基づき、関係機関等が連携して定期的な避難所運営訓練を実施し、必要に応じ避難所運営マニュアルの見直しを行うことが望ましい。

 ※以上、学校施設の防災機能の向上のために(国立教育政策研究所)

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大臣官房文教施設企画部施設企画課

指導第一係
電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2291)、03-6734-2291(直通)

(大臣官房文教施設企画部施設企画課)