参考4 災害対策基本法等の一部を改正する法律について(内閣府・消防庁・厚生労働省局長級通知)

府政防第558号
消防災第245号
社援発0621第1号
平成25年6月21日

各都道府県知事 殿

内閣府政策統括官(防災担当)

消防庁次長

厚生労働省社会・援護局長


災害対策基本法等の一部を改正する法律について


 本日、災害対策基本法等の一部を改正する法律(平成25年法律第54号。以下「改正法」という。)が公布され、一部の規定を除き、本日から施行されました。また、改正法の施行にあわせて、災害対策基本法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成25年政令第187号。以下「整備令」という。)及び災害対策基本法施行規則の一部を改正する内閣府令(平成25年内閣府令第38号)が公布、施行されました。
 貴職におかれましては、下記の改正内容を御理解の上、今後の防災対策の推進に万全を期するとともに、貴都道府県内の市町村に対しても周知いただきますようお願いします。
 なお、下記中の条文番号は特に断りがない限り、改正法による改正後の災害対策基本法(昭和36年法律第223号。以下「法」という。)又は整備令による改正後の災害対策基本法施行令(昭和37年政令第288号。以下「令」という。)のものです。

第一 法改正の経緯

 今般の法改正は、東日本大震災の教訓を今後に生かし、今後の防災対策を充実・強化するための災害対策法制の見直しの一環として、昨年6月に行った災害対策基本法の一部を改正する法律(平成24年法律第41号。以下「平成24年改正法」という。)に引き続き、さらなる法制上の措置を講ずるものである。
 具体的には、平成24年改正法の附則第2条において「政府は、東日本大震災(略)から得られた教訓を今後に生かすため、東日本大震災に対してとられた措置の実施の状況を引き続き検証し、防災上の配慮を要する者に係る個人情報の取扱いの在り方、災害からの復興の枠組み等を含め、防災に関する制度の在り方について所要の法改正を含む全般的な検討を加え、その結果に基づいて、速やかに必要な措置を講ずるものとする。」とされたほか、衆参両院の附帯決議においても、「現行法のあらゆる問題点について迅速に検討を進め、必要な法案を策定し、提出すること」とされたことから、中央防災会議の防災対策推進検討会議最終報告(平成24年7月31日決定。以下「検討会議最終報告」という。)において法制上の措置が必要とされた事項を中心に、今般の法改正を行うに至ったものである。

第二 改正法の趣旨及び主な内容

1.大規模広域な災害に対する即応力の強化等

(1)災害緊急事態への対処の拡充
 非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合に、必要に応じて内閣総理大臣が発することができる「災害緊急事態の布告」があったときの対処について、現行法が定めるもののほか、以下を追加することとしたものである。なお、ここでいう「国の経済及び公共の福祉に重大な影響が及ぶ」とは、法第28条の2に規定する緊急災害対策本部が設置されるような異常かつ激甚な非常災害の発生により、国の経済の秩序が乱れ、国民生活や国民経済に重大な影響が及ぶことをいうものである。

一.対処基本方針の作成による政府の一体性の確保(法第108条及び第105条関係)
 災害緊急事態の布告があったときは、対処基本方針(被災者の救助等の災害応急対策、全国的な国民生活や経済活動の維持・安定のための措置等の重要事項に関する政府の基本的な方針をいう。)を閣議決定し、これに基づき、内閣総理大臣の指揮監督の下、政
府が一体となって対処することとしたものである。あわせて、災害緊急事態の布告の要件についても、これに合わせた形に改め、災害応急対策を推進し、国の経済の秩序を維持し、その他当該災害に係る重要な課題に対応するため特別な必要があると認めるときに、内閣総理大臣が災害緊急事態の布告を発することができることとしたものである。

二.国民への協力の要求(法第108条の3関係)
 物資不足・物価高騰等を未然に防止する等のため、内閣総理大臣は、物資の買占めの自粛等について、国民に協力を要請できることとし、この要請を受けた国民は必要な協力をするよう努めることとしたものである。

(2)国による被災地方公共団体の支援強化(法第74条の3、第78条の2及び第86条の13関係)
 災害の発生により地方公共団体がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなった場合に、被災者の救助・救援活動等を維持するため、国が地方公共団体の災害応急対策を広範に応援し、又は応急措置のうち救助・救援活動の妨げとなる障害物の除去等特に急を要する措置及び広域一時滞在に係る協議を代行できるようにするなど、被災地方公共団体の機能補完の仕組みを充実・強化することとしたものである。

(3)法律に基づく規制の特例(法第86条の2から第86条の5まで等関係)
 著しく異常かつ激甚な非常災害が発生し、避難所又は応急仮設住宅が著しく不足し、被災者に対して住居を迅速に提供することが特に必要と認められるもの等として当該災害を政令で指定したときは、避難所等に関する特例、臨時の医療施設に関する特例、埋葬及び火葬の特例、廃棄物処理の特例の4つの特例を必要な範囲で講ずることができるよう、所定の規定を設けたものである。なお、災害緊急事態の布告があったときは、政令が定められたものとみなして、これらの特例措置を自動的に適用できることとしたものである。

2.住民等の円滑かつ安全な避難の確保

(1)指定緊急避難場所の指定(法第49条の4から第49条の6まで等関係)
 従来、切迫した災害の危険から逃れるための避難場所と、避難生活を送るための避難所が必ずしも明確に区別されておらず、東日本大震災では被害拡大の一因ともなったところである。
 このため、災害時における緊急の避難場所と、一定期間滞在して避難生活をする学校、公民館等の避難所とを区別するため、市町村長は、防災施設の整備の状況、地形、地質その他の状況を総合的に勘案して、洪水や津波など異常な現象の種類ごとに安全性等の
一定の基準を満たす施設又は場所を指定緊急避難場所としてあらかじめ指定するとともに、その内容を住民に周知しなければならないこととしたものである。

(2)避難行動要支援者名簿の作成(法第49条の10から第49条の13まで関係)
 東日本大震災においては、多くの高齢者、障害者等の命が失われたが、避難行動の支援に際し有効となる名簿の作成については、個人情報保護の制約等から、必ずしも十分に進んでいない状況にある。
 このため、市町村長は、当該市町村に居住する要配慮者(高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者をいう。以下「要配慮者」という。)のうち、災害発生時に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの(以下「避難行動要支援者」という。)についての避難支援等を実施する基礎とするための避難行動要支援者名簿を作成しなければならないこととし、原則として、避難行動要支援者本人の同意を得て、消防機関、自主防災組織、民生委員等の関係者にあらかじめ名簿情報を提供するとともに、当該名簿の作成に必要な範囲で、要配慮者に関する個人情報を活用できることとしたものである。

(3)避難指示等の具体性と迅速性の確保(法第60条から第61条の3まで関係)
 改正前の災害対策基本法において、市町村長は「避難のための立退き」を勧告又は指示することができると規定されているが、内水氾濫や小規模河川の洪水など浸水の深さは深刻にならないような災害や、竜巻のように、災害の性質や発災時の状況によっては、
屋外を移動して立ち退くことによりかえって人の生命又は身体に危険が及ぶおそれがあることから、従来の「避難のための立退き」に加え、屋内での待避その他の屋内における避難のための安全確保に関する措置についても指示できることとしたものである。
 また、避難指示等の発令に当たっては、専門的・技術的な知見が必要となるケースがしばしばあることから、市町村長から指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長(地方気象台長等)又は都道府県知事に対し、当該避難指示等に関する事項について、必要な助言を求めることができることとし、助言を求められた指定行政機関の長等に対して応答義務を課すこととしたものである。

(4)防災マップの作成(法第49条の9関係)
 市町村長は、指定緊急避難場所、避難路その他住民の円滑な避難のための立退きを確保する上で必要な事項を住民に周知させるため、これらを記載した防災マップなどの印刷物の作成に努めるとともに、その配布等の必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととしたものである。

3.被災者保護対策の改善

(1)指定避難所の基準の明確化(法第49条の7等関係)
 市町村長は、災害の発生時における被災者の滞在先となるべき適切な施設の円滑な確保を図るため、想定される災害の状況、人口の状況等を勘案して、一定の基準を満たす施設を、指定避難所としてあらかじめ指定しなければならないこととしたものである。

(2) 被災者支援のための情報基盤の整備
一.安否情報の提供(法第86条の15関係)
 災害発生時に家族等が被災者の安否を知ることができるよう、市町村長又は都道府県知事は、安否情報の照会があったときは、当該地方公共団体の個人情報保護条例の規定にかかわらず、被災者又は第三者の権利利益を不当に害するおそれがないと認められる範囲内で、照会をした家族等に安否情報を回答できることとしたものである。

二.罹災証明書の交付(法第90条の2関係)
 災害発生後に、個々の被災者がその被害の程度等に応じた適切な支援が迅速に受けられるよう、これまで法律上の根拠によらない市町村の自治事務として行われていた罹災証明書の交付を法的に位置付け、市町村長は、遅滞なく、被災者に対して罹災証明書を交付しなければならないこととしたものである。

三.被災者台帳の作成(法第90条の3及び第90条の4関係)
 災害発生時に、個々の被災者の置かれた状況に応じた総合的かつ効果的な支援の実施を図るため、市町村長は、被災者の被害の程度や支援の実施記録等を一元的に整理した被災者台帳を作成することができるものとし、この場合において、市町村長は、当該台帳作成に必要な範囲で、被災者に関する個人情報を活用できることとしたものである。

(3)被災者の広域避難のための運送の支援(法第86条の14関係)
 広域的な避難を行う必要がある場合に備え、都道府県知事は、被災者の保護の実施のため緊急の必要があると認めるときは、運送事業者である指定公共機関等に対して、被災者の運送を要請することができ、正当な理由なしに要請に応じないときは指示することができることとしたものである。

(4)災害救助法の一部改正
 災害救助法(昭和22年法律第118号)について、救助の応援に要した費用を国が一時的に立て替える仕組みを創設するとともに、条文番号の整理、用語の現代化等を行ったものである。

(5)内閣府設置法及び厚生労働省設置法の一部改正
 検討会議最終報告を踏まえ、被災者支援の実施の一元化のため、災害救助法及び災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号)並びに武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)の一部の所管を、厚生労働省から内閣府に移管するため、両府省の設置法を改正することとしたものである。

4.平素からの防災への取組の強化

(1)基本理念の明確化(法第2条の2関係)
 災害対策の一般法である本法には、これまで各主体の責務は規定されていたが、基本理念が定められていなかった。しかしながら、我が国では今後、南海トラフ巨大地震や首都直下地震等の発生が懸念されており、これらの大規模広域災害への対策の充実・強化が喫緊の課題であることから、同法に「減災」の考え方や、「自助」「共助」「公助」等の基本理念を明記することで、災害対策に関する基本的な考え方を広く共有し、関係者が一体となって災害対策に取り組む体制を整えようとしたものである。

(2)各主体の役割の明確化
一.市町村の責務(法第5条関係)
 基本理念に盛り込んだ「共助」の観点から、住民に最も近い基礎自治体である市町村が市町村の地区内の住民や自主防災組織等が行う自発的な防災活動を一層促進する責務を有する旨を明らかにしたものである。

二.民間事業者の責務等(法第7条第2項及び第49条の3等関係)
 東日本大震災では、災害応急対策等に関し多くの民間事業者の協力があったが、本法に基づく指定公共機関等以外の民間事業者は、これまで法律上、住民としての責務を有するに過ぎなかった。このため、災害応急対策等に関する事業者の責務として、災害時における事業活動の継続的実施並びに国及び地方公共団体が実施する防災に関する施策への協力に努めることを規定し、官民が一体となって災害対策に取り組むことを明らかにしたものである。
 また、国及び地方公共団体等は、災害応急対策又は災害復旧についての協力を得ることを必要とする事態に備え、物資供給事業者等(災害応急対策又は災害復旧に必要な物資若しくは資材又は役務の提供を業とする者その他災害応急対策又は災害復旧に関する活動を行う民間の団体をいう。)との協定の締結その他必要な措置を講ずるよう努めることとしたものである。

三.住民の責務(法第7条第3項関係)
 基本理念に盛り込んだ「自助」の観点から、住民の責務の例示として、食品、飲料水その他の生活必需品の備蓄や防災訓練への参加を明記することとしたものである。四.ボランティアとの連携(法第5条の2関係)
 災害時におけるボランティアが果たす役割の大きさを踏まえ、国及び地方公共団体は、ボランティアとの連携に努めなければならないことを規定したものである。

(3)地区防災計画(法第42条及び第42条の2関係)
 「自助・共助」による自発的な防災活動を促進し、ボトムアップ型で地域における防災力を高めるため、市町村の一定の地区内の居住者及び事業者は、当該地区における防災活動に関する計画(以下「地区防災計画」という。)を市町村地域防災計画に定めることを市町村防災会議に提案することができることとし、提案を受けた市町村防災会議は、必要に応じ、市町村地域防災計画に当該地区防災計画の内容について定めなければならないこととしたものである。

5.その他

(1)災害の定義の見直し(法第2条関係)
 現行法の災害の定義においては、暴風、豪雨など相当程度の被害をもたらす自然現象を例示しているところ、「崖崩れ」「土石流」「地滑り」といった土砂災害はいずれも、これまで豪雨、豪雪、地震等の既存の例示ないし「その他の異常な自然現象」に含まれるものとして解されてきたところである。
 改正法では、異常な現象ごとに指定緊急避難場所を指定する(2.(1)参照)こととしたことを踏まえ、異常な自然現象の例示として、我が国において年間約1,000件発生している「崖崩れ」「土石流」「地滑り」を追加し、災害の定義を明確化することとしたものである。

(2)市町村災害対策本部員の構成(法第23条の2関係)
 市町村災害対策本部の本部員については、これまで市町村の職員のうちから任命することとされていたが、一部事務組合、事務委託又は広域連合の方式により消防事務を処理している市町村においては、一部事務組合等の方式により消防事務を処理している市町村が全市町村の大半を占めているという実態に照らし、その区域を管轄する消防長等も、併任の発令なしに、本部員の対象となるよう見直しを行ったものである。

(3)災害応急対策従事者の安全確保(法第50条第2項関係)
 東日本大震災では、災害応急対策に従事する者(以下「災害応急対策従事者」という。)の献身的な活動により多くの人命を救えた一方、災害現場では少なくない数の者が犠牲となったが、災害対策の一般法である本法においては、これまで災害応急対策従事者の安全確保に係る規定がなかったところである。
 災害応急対策従事者の安全確保については、これまでも様々な形で対策が講じられてきたところであるが、東日本大震災の教訓を踏まえ、今後発生が予想される大規模広域な災害等に備えるため、本法においても規定することとしたものである。

(4)歳入欠かん等債の見直し
一.発行可能年度の見直し(法第102条第1項関係)
 東日本大震災のような甚大な被害が発生する災害の場合には、歳入欠かん等債(法第102条第1項の規定による地方債をいう。以下同じ。)を災害の発生した日の属する年度の翌年度以降の年度にも発行できるよう、歳入欠かん等債の発行可能年度に、災害の発生した日の属する年度の翌年度以降の年度で政令で定める年度を加えることとしたものである。

二.発行対象団体の要件の見直し(令第43条第2項関係)
 1月から3月までに発生した災害について歳入欠かん等債の発行対象団体を決定することができるようにするため、法第102条第1項の政令で定める地方公共団体を決定する際に用いる標準税収入額を災害の発生した日の属する会計年度のものとすることとしたものである。

三.発行対象団体の要件の特例の創設(令第43条第3項関係)
 東日本大震災のような甚大な被害が発生する災害の場合には、令第43条第1項の要件を満たすことが見込まれるにもかかわらず、その要件を満たすかどうかを速やかに確認することができないことから、著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合には、歳入欠かん等債の発行対象団体を総務大臣が指定できる特例を設けることとしたものである。

(5)特定非常災害法の一部改正
 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置法(平成8年法律第85号)において、特定非常災害の被災者である相続人について、その相続に係る熟慮期間を、一年を超えない範囲内において政令で定める日まで伸長できるよう、民法の特例を設けることとしたものである。

6.施行期日

 改正法の施行期日は、公布の日(平成25年6月21日)である。
ただし、一部の規定は、地方公共団体への周知・準備期間の確保等のため、以下の日から施行することとしている。

・公布の日から6ヶ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行
3.(2)一.安否情報の提供
    三.被災者台帳の作成
(4)災害救助法の一部改正
(5)内閣府設置法及び厚生労働省設置法の一部改正

・公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行
2.(1)指定緊急避難場所の指定
 (2)避難行動要支援者名簿の作成
 (3)避難指示等の具体性と迅速性の確保
3.(1)指定避難所の基準の明確化
4.(3)地区防災計画

 なお、これらの規定に係る事項は、政省令事項等の詳細が定まり次第、別途、当該規定に係る施行通知を発出する予定である。

以上

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