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はじめに

   地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、熱帯林減少、有害廃棄物拡散、海洋汚染、生物多様性の減少など、さまざまな地球規模の環境問題が世界共通の課題として大きく取り上げられている。
   これを受け、我が国でも地球環境保全を目的とした国内関連法の整備が進んでおり、1988年5月に「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律（オゾン層保護法）」が、1993年11月には我が国における環境政策の基本となる法律「環境基本法」が制定されている。1994年12月には環境基本法第15条を受けて、「環境基本計画」が閣議決定されており、さらに1995年6月には「環境基本計画」に基づき「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取り組みのための行動計画（率先実行計画）」が閣議決定された。
   1998年6月には、京都議定書で合意した温室効果ガス削減目標（6％）を達成するために、地球温暖化対策推進大綱が策定された。さらに、気候変動枠組条約を受けて「地球温暖化対策の推進に関する法律（地球温暖化対策推進法）」が1998年10月に公布され、1999年4月から施行された。
   建築分野に直接、関連する国内法としては、1999年3月における「エネルギーの使用の合理化に関する法律（省エネ法）」の基準強化や、1999年10月における「建築解体廃棄物リサイクルプログラム」策定等がある。また、2000年5月には「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律（建設リサイクル法）」が公布され、2002年6月には全面施行される予定であり、2000年5月には「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律（グリーン購入法）」が公布され、2001年4月から全面施行された。これらの法律の大本となる循環型社会形成推進基本法は2000年6月に制定されており、矢継ぎ早に関連法規の整備が行われていると言えよう。
   以上のように、これからの建築物の計画・建設に当たっては、地球環境保全を設計コンセプトの中の重要な項目として取り上げなければならない社会情勢である。
   文部科学省では、このような背景の下、1994年11月から「環境を考慮した学校施設に関する調査研究」に着手し、1996年3月に調査研究成果をとりまとめ、「環境を考慮した学校施設（エコスクール）の整備について」と題した小冊子を、全国都道府県市町村教育委員会宛に通知している。
   しかしながら、上述のように1996年当時と比較して、地球環境保全に関わる建築物関連法規の整備が大幅に進み、今後の学校施設の整備、維持管理に際しては、これら法体系に則った施設建設、維持管理を余儀なくされている。
   そこで、本調査研究の第１編では、「環境を考慮した学校施設（エコスクール）」整備に対する社会的要請、重要性を明らかにすることを目的に、以下のような調査研究を行った。まず、我が国の二酸化炭素排出量に占める建築分野の割合、学校教育活動に伴う二酸化炭素排出量における学校施設の占める割合等に基づいて、学校施設における環境負荷低減の必要性を明らかにした。また、地球環境保全に向けた国際的な取り組み、地球環境保全に関わる建築物関連法規の整理、分類、概説を行うと共に、環境負荷低減を目的とした学校施設整備の際に参考となる「建築物の環境負荷削減に関する設計指針類」に関する文献調査を行った。さらに、地球環境問題に関する文部科学省のこれまでの取り組み、学協会における取り組み等の紹介を行うと共に、「環境を考慮した学校施設（エコスクール）」建設に関わる公的補助制度に関する資料を整備した。
   第２編は、より具体的な「環境を考慮した学校施設（エコスクール）」の全体像を明らかにするために実施した「環境を考慮した学校施設（エコスクール）」として計画・設計された学校施設全国12校を対象とした現地調査結果の報告であり、各学校施設で採用した「環境を考慮した学校施設（エコスクール）整備の内容」の項目、整備内容の具現例、計画を進める上での体制、施設の維持運営上の問題点等を明らかにした。
   第１編で述べた地球環境保全に関わる建築物関連法規等を参照すれば、国際的・社会的使命としての「環境を考慮した学校施設（エコスクール）」整備の必要性・重要性の行政的・合理的説明が可能と考えられ、また、第２編では「環境を考慮した学校施設（エコスクール）」に取り入れられるべき要素技術個々の紹介を避け、多数の実例を数多くの写真を伴って紹介しているので、今後、「環境を考慮した学校施設（エコスクール）」の計画・建設を予定している教育委員会等にとって、有用な資料となったと自負している。
本調査研究が環境を考慮した２１世紀の社会の核となる良質な学校施設建設に貢献できることを願っている。


平成１３年３月
環境を考慮した学校施設に関する調査研究協力者会議
主 査   佐藤   譲






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