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第1章 学校施設の複合化及び高層化の計画・設計の策定
     
  第1節 都市化等の中で良好な学習環境を確保する計画の基本的考え方
       これまで,生涯学習社会における学校施設のあり方や学校と他の文教施設等との複合化については,文部省における調査研究協力者会議の報告「文教施設のインテリジェント化について−21世紀に向けた新たな学習環境の創造−(平成2年3月)」,「学校施設の複合化について(平成3年2月)」,あるいは,「小学校施設整備指針(平成4年3月)」「中学校施設整備指針(平成4年3月)」等において提示され,これらに基づき良好な学習環境を確保し,地域に開かれ,快適・安全な学校施設の整備の推進が図られてきた。
   しかし,近年,学校施設を巡る環境の都市化が急速に進む中で,学校と福祉施設等の様々な地域施設との複合化や,校舎,屋内運動場の重層化による校地の高度利用の一層の進展等について新たな対応が求められている。
   そのため,このような新たな状況を踏まえて,これまでに示された学校施設の基本的な計画・設計上の留意事項に加えて,地域の実状に応じ,学校と様々な地域施設等との複合化や学校建物の高層化に関し,良好な学習環境を確保するための問題点や課題を捉え,これらに対処するための計画・設計の基本的考え方について以下に述べる。
       学校施設の複合化……同一建物内又は同一敷地内に学校と社会教育施設その他の文教施設又は地域の福祉施設,集会施設,教育センター等の行政関係施設等を相互に機能的連携を保ちつつ平面的又は立体的に共存・融合させること。
       学校施設の高層化……4階,5階建規模の小学校,5階,6階建規模の中学校,又は5階建以上の小・中学校を主体とした複合施設を整備すること。
       
    (1) 都市化に伴う学校施設環境をめぐる諸課題の把握
         小・中学校の施設の計画・設計に際しては,「小学校施設整備指針」,「中学校施設整備指針」等に示された基本的な留意事項を踏まえ,各地域の実状に応じ,最もふさわしいものとなるよう計画することが重要である。
   特に,近年,都市化の著しい地域における学校施設をめぐる環境については,周辺建物の過密化,高層化や自然環境の減少や,教育上有害な諸施設の学校周辺への進出など良好な立地環境の確保が困難な状況,また,少子・高齢化傾向に加え,児童生徒を含む定住人口の減少が進む地域においては,学校規模の変動への対応や地域住民間の交流の希薄化が進む中での学校に対する新たなニーズへの対応が必要な状況,さらには,高齢社会の進行の中で,学校校区等における高齢者のための施設や,都心の一部においては,大規模な居住型の高齢者福祉施設との複合化なども試みられる状況にある。
   このような中で,学校施設の計画に際しては,地域社会の都市化に伴う諸課題について,十分にそれらの状況を把握し,良好な学習環境を確保するために,種々の対応を検討することが重要である。
       
    (2) 都市化等の中での学習環境として良好な施設・環境の確保
         児童生徒がそれぞれの心身の成長において重要な時期を過ごす学校施設は,地域社会の都市化等の進展する中でも良好な学習環境を確保して行くことが必要である。
   都市化の進展する地域においては,学校の立地環境としては,必ずしも恵まれているとは言えない状況にあるが,近年の建築分野における種々の技術の進展に鑑み,都市化に伴う諸課題に応じ,施設機能の向上や周辺からの悪影響を排除する配慮などを施しつつ,良好な施設・環境が得られるよう計画的配慮をすることが重要である。
   その際,自然環境の不足しがちな都市部の状況を考慮し,著しく人工的で無機質な環境とならないよう,また,環境への負荷の軽減にも留意し,自然光を得るためのトップライト,床や壁の仕上げへの木材の使用,屋上や校舎内への緑の導入など,都市部の状況に応じた「環境に配慮した学校施設づくり」の観点による計画的配慮も必要である。
       
    (3) 学校と地域社会との新たな連携に配慮した施設づくり
         学校は児童生徒の生活・学習の場のみならず,地域の生涯学習やまちづくりの核としての役割を果たす施設として整備することも重要であり,近年の市街地密度の一層の高まりの中で,調和のある市街地を再形成するため,機能的に関連ある複数の施設を一体的に整備することも要請される状況にある。
   特に,学校施設においては,その他の文教施設との複合化による地域の生涯学習の拠点づくりを中心とした複合施設の整備のみならず,新たな公共用地の確保難とも相まって,高齢者福祉施設等との交流なども含め,広く地域のコミュニティーの拠点を目指した複合施設の試みが進行している。
   これら学校と地域社会との新たな連携に対応し,学校施設のバリアフリー化の一層の充実や施設利用者間の交流活動に対応した施設の計画的配慮が重要である。

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