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第5章   詳細設計


第1   基本的事項
  安全性を重視した設計
  (1)    教育の場として,地震,暴風,降雨,積雪,落雷等の災害や火災,事故,事件等に対し,十分な安全性と防災・防犯性を確保するよう設計することが重要である。
  (2)    幼児の活動や園具,遊具等の移動を考慮し,床,壁等は必要な強度と弾力性を備えた材質,工法とすることが重要である。
  (3)    幼児の転落,転倒,衝突,切傷,火傷,挟まれ事故防止のために,柱や壁のコーナーの面取り,手すりや扉のストッパーの設置,突起物や足掛け部分の除去等の工夫を行うことが重要である。また,幼児の多様な行動に対し十分な安全性を確保するため,サイン等により注意喚起を行うことも有効である。
  (4)    地震,暴風時等における家具の転倒,落下や経年,老朽化による仕上げ材の落下を防止するため,適切な仕様,工法とするとともに,必要に応じて家具等を配置する部分の補強,確実な固定措置を講じるよう設計することが重要である。

  機能性に配慮した設計
  (1)    幼児期の発達段階に留意しつつ,人体寸法,動作寸法,行動特性等に配慮して設計することが重要である。
  (2)    3歳児や障害のある幼児のために特別な仕様とする場合は,これらの幼児が有している運動・動作,認知等の能力を最大限発揮させ,その発達を促すよう配慮することが望ましい。
  (3)    障害のある幼児,教職員及び幼稚園開放時の高齢者,身体障害者等の利用を考慮し設計することが重要である。
  (4)    各室や空間に求められる機能や環境条件に応じて,材質や色彩・形状等の意匠を,設備や家具の導入計画も併せて一体的に設計することが重要である。

  快適性に配慮した設計
  (1)    日照,採光,換気,通風,保温,音響等による良好な環境条件の確保に留意しつつ,ゆとりと潤いを感じられる設計とすることが重要である。
  (2)    屋内の熱の損失,結露等外気の影響を低減し,居住性を高めるために,外壁,屋上,最下階の床等の各部を断熱化することも有効である。
  (3)    色彩の視覚面や心理面での効果,材質や仕上げの感触面での効果を十分に検討し,設計することが重要である。
  (4)    柔らかで温かみのある教育環境づくりを行うことが重要である。

  耐用性に配慮した設計
  (1)    当該地域の気候的条件を考慮し,必要な耐候性と耐久性を備えるよう設計することが重要である。
  (2)    幼児の多様な行動,頻繁な使用に対し,十分な耐用性を確保するよう設計することが重要である。
  (3)    十分な防汚性を備えるよう設計することが望ましい。
  (4)    上階部の外部に面した窓拭き,換気扇の清掃等の日常的なメンテナンスの方法を考慮し計画することが重要である。

第2   内部仕上げ
  共通事項
  (1)    必要とされる環境,性能等を適確に実現することができるよう下地及び表面の仕上げを一体的に設計することが重要である。
  (2)    設備及び家具の導入計画に留意しつつ,意匠,材質,色彩等を総合的に設計することが重要である。
  (3)    幼児の活発な活動,家具,教育機器等の頻繁な移動を考慮し,十分な安全性,強度及び吸音性を持つ材質,工法とすることが重要である。
  (4)    家具,設備等について,明確な配置計画を策定し,必要に応じ配置予定部分に確実に固定するための措置を講ずる設計とすることが重要である。
  (5)    地域の特色ある意匠,材質等を活かした総合的な設計をすることが重要である。

  材質
  (1)    燃えにくい材質のものを使用することが望ましい。特に,火気使用室,暖房器具の周辺の天井,壁等の内装は,十分な防火性のある材質のものを使用することが重要である。
  (2)    床には滑りやすい材質のものの使用を避けることが重要である。特に,水を使用する部分及び雨等が持ち込まれる部分の内装には,耐水性,耐湿性及び耐食性に優れ,かつ,濡れても滑りにくい材質のものを使用することが重要である。
  (3)    調理室については,雑菌等の発生を抑制するドライ方式とすることが重要である。また,便所については,ドライ方式とすることも有効である。
  (4)    適度に吸音性のある材質のものを使用し,適切に施工することが重要である。特に,面積の広い室・空間,大きな騒音の発生が予想される室・空間については,十分な吸音性をもつ材質のものを使用することが重要である
  (5)    汚れにくく,清掃がしやすい材質のものを使用することが望ましい。特に,食物を扱う室・空間,便所,洗面所,昇降口等の内装は,十分な耐汚性をもち,日常的に清掃がしやすい材質のものを使用することが重要である。
  (6)    壁,床等には,適度の強度と弾力性をもち,十分な耐久性のある材質のものを使用することが重要である。特に,運動を行う空間の床は,不陸(ふりく)や表面の荒れなどを生じにくい材質のものを使用することが重要である。
  (7)    幼児の心を和ませ,また,保育空間に家庭的な雰囲気を醸し出すため,柔らかな手触りや温かみの感じられる木質材料,畳等の素材を適宜使用することが望ましい。
  (8)    再生資源を利用した材料等の使用についても検討することが望ましい。
  (9)    幼児の健康と快適性を確保するため,室内空気を汚染する化学物質の発生のない,若しくは少ない建材を採用するとともに,施工手順・方法に配慮することが重要である。

  天井,壁等
  (1)    剥落するおそれのない工法を計画することが重要である。
  (2)    壁には,幼児の日常の活動において危険を及ぼす突起物は設けないことが重要である。なお,掛け具を設ける場合には,危険防止に留意して設計することが重要である。
  (3)    運動を行う空間の天井及び壁は,必要な強度と弾力を備え,危険な突起等のない形状とし,必要な設備・用具を取り付けることが可能な仕様とすることが重要である。
  (4)    音の発生する室・空間及び一定の静寂さを必要とする室・空間の壁,天井等は,適度の遮音性をもつ仕様とすることが重要である。
  (5)    建物の外気に面する壁,最上階の天井等を断熱化することも有効である。
  (6)    幼児の作品の掲示等を行うことのできる仕様として計画することも有効である。その際,幼児の目の高さに留意して計画することが望ましい。
  (7)    遊具の収納空間や,多様なコーナー,アルコーブ,デンを設けるなど,幼児の遊びを生み出す場として壁を活用することも有効である。
  (8)    移動・可動間仕切等を導入する場合は,必要に応じ,防音性のある材質のものを使用することが望ましい。

 
  (1)    幼児の通行する部分においては,幼児等が気が付かずにつまずくような危険な段差をつくらないことが重要である。
  (2)    障害のある幼児,教職員及び幼稚園開放時の高齢者,身体障害者等が支障なく活動ができるよう,床には障害となる段差等を設けないことが重要である。
  (3)    床は,幼児が這う,寝転ぶ,座る等の行動に対して,安全な仕上げとすることが重要である。
  (4)    必要に応じ,結露防止を考慮し最下階の床を断熱化することが望ましい。なお,居住性を高める上でも,最下階の床を断熱化することも有効である。
  (5) 運動を行う空間の床は,必要な強度と弾力を備え,危険な突起のない形状とし,必要な設備・用具を取り付けることが可能な仕様とすることが重要である。
  (6)    活発な活動を行う空間を上階に計画する場合は,振動及び騒音の伝播の防止を考慮した仕様とすることが重要である。

第3   開口部
  共通事項
  (1)    採光,通風,換気等を効果的に行うことのできる配置,大きさ,形式等とすることが重要である。
  (2)    幼児の日常の活動において事故が発生することなく円滑に移動を行うことができ,また,地震,暴風等に対し破壊,脱落することのないよう十分安全でかつ利用しやすい構造,形式等とすることが重要である。
  (3)    遮音,断熱等が必要な室・空間の開口部については,建具本体,建具本体と枠との取り合い部分に十分な気密性を確保した仕様とすることが重要である。なお,必要に応じ断熱仕様の建具とすることも有効である。
  (4)    奥行きの深い空間や面積の広い空間は,採光,換気,保温等の環境条件の確保に特に留意し開口部の位置,面積,仕様等を設計することが重要である。
  (5)    ガラスは,人体及びボール等の衝撃や,地震,暴風等の災害に対し破損しにくく,又は破損しても事故につながらないよう,ガラスの安全性能を生かし,使用場所及び使用目的に適したものを選択することが重要である。また,錯覚して衝突しないように,ガラスが認識できる工夫をすることも重要である。

 
  (1)    利用内容等に応じ,適当な量及び質の光を確保することができるよう窓の位置,面積,形式等を適切に設定することが重要である。また,清掃等が容易に行える計画とすることが望ましい。
  (2)    教育の場となる室・空間の窓は,必要かつ十分な面積を確保し,幼児の目の高さに留意した適切な位置に設計することが重要である。
  (3)    日射の強さや方向,室内の活動の状況に応じ日照を調節することのできるよう庇の形状,ガラスの選定等について検討することが望ましい。
  (4)    教育内容に応じ室内を暗くすることが必要な室・空間の窓には,外部からの光を適宜遮断することのできる設備等を設けることが望ましい。
  (5)    窓による自然換気を計画する場合には,位置,開閉の方法等に留意し,有効な開口面積を確保することのできる形式とすることが重要である。
  (6)    外部に面した窓は,幼児の目の高さに留意し,腰壁の高さを適切に設定することが重要である。また,窓下には足掛りとなるものを設置しないことを原則とし,幼児の転落防止等のために,必要に応じ,窓面への手すりの設置や開閉方式について検討することが重要である。
  (7)    低層階の外部に面する窓は,防犯性能の高いものとすることが望ましい。
  (8)    天窓については,夏季における温度の上昇,地震時の破損・落下等について留意して計画するとともに,その周囲に防護フェンス等を設置し,幼児が近づかない配慮を行うことが望ましい。

  出入口
  (1)    非常時の幼児の避難等も考慮し,必要かつ十分な幅を確保した上で,扉等は操作しやすく安全な形式とすることが重要である。
  (2)    出入口の建具は,引戸とすることが望ましい。なお,開き戸を設ける場合は,開閉時の安全性に配慮した形式とすることが重要である。
  (3)    出入口の敷居は,出入りの支障となる段差を生じないよう設計することが重要である。
  (4)    屋外への出入口は,上部からの落下物等による危険を防止することができる設計とすることが重要である。
  (5)    障害のある幼児,教職員及び幼稚園開放時の高齢者,身体障害者等も支障なく活動ができるよう,出入口は幅及び高さを十分確保し,操作しやすい建具を使用することが重要である。
  (6)    防火戸など重量のある扉等については,開閉時の安全性に配慮した形状とすることが重要である。特に,防火シャッターについては,注意喚起装置や危害防止機構等の危害防止対策を備えたものとすることも有効である。

  換気口等
  (1)    必要に応じ,換気口を各室・空間に適宜設けることが望ましい。なお,臭気,湿気等の発生しやすい室・空間や室内空気汚染の低減のためには,恒常的に自然換気が得られるよう換気口を設けることが重要である。
  (2)    給気及び排気孔は,必要かつ十分な開口面積を確保し,適切な設置位置,開閉形式等とすることが重要である。
  (3)    日常使用しない床下点検口等の扉は,簡単に開かない仕様とすることが重要である。

第4   外部仕上げ
  共通事項
  (1)    環境条件による影響に対し,十分な耐性のある設計とすることが重要である。
  (2)    幼児の遊びや生活の場としてふさわしく,幼稚園や地域の歴史及び伝統,地域の景観,風土等と調和し,かつ,地域社会の核としての風格を備えるよう設計することが重要である。

  材質
  (1)    気候的な条件や経年に対し,汚れにくく,変容しにくい材質のものを使用することが重要である。
  (2)    幼稚園周辺の状況に応じ,燃えにくい材質のものを使用することが望ましい。
  (3)    地域のそれぞれの環境条件に応じて,構造体を保護することができる材質を使用することも有効である。
  (4)    再生資源を利用した材料等の使用についても検討することが望ましい。

  屋根,外壁等
  (1)    剥落するおそれのない工法とすることが重要である。
  (2)    幼児の保育空間に面する部分は,幼児の活発な活動に対し十分安全な形状とすることが重要である。
  (3)    建物全体の調和を保ちながら,芸術的,文化的な要素を取り入れた計画とすることも有効である。
  (4)    屋内の熱の損失及び外気の影響等を低減し居住性を高める上で,外壁,屋上等の各部を必要に応じ断熱化することも有効である。
  (5)    雨樋は,落葉等による詰まりや冬期の凍結に留意した計画とすることが望ましい。

第5   家具・遊具
    (1)    書棚,可動式物入れ等が地震時や幼児の衝突による力で転倒や落下しないようにすることが重要である。
  (2)    幼児の多様な行動,頻繁な使用に対し,十分な耐用性及び安全性が確保されるとともに,幼児の人体寸法にあった家具や遊具等について計画することが重要である。
  (3)    幼児の健康と快適性を確保するため,室内空気を汚染する化学物質の発生のない,若しくは少ない材料を採用することが重要である。
  (4)    各室や空間に求められる機能や環境条件に応じ,温かみのある材質や色彩・形状の家具や遊具等を導入することが重要である。
  (5)    地場産材等を生かした木製家具等について計画することも有効である。

第6   手すり・屋上
  (1)    階段,バルコニー,屋上,吹抜け等には,円滑な移動と転落防止のために,適切な高さと十分な強度の手すりを設けることが重要である。また,障害のある幼児等の利用も考慮して,廊下,階段の両側,便所等に,手すりを設置することが望ましい。
  (2)    手すりは,十分な強度を有し,幼児が握りやすい材質,形状とするとともに,足を掛けることのできる仕様は避ける等の幼児の乗り越え,通り抜け,滑り降り等を防止できる寸法,形状等とすることが重要である。
  (3)    屋上を計画する場合は,保守点検を行いやすい計画とするとともに,地域特性や環境条件を考慮しつつ,必要に応じ太陽光パネルの設置や屋上緑化を計画することも有効である。

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