橋渡し研究戦略的推進プログラム中間評価委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成31年3月28日(木曜日) 10時00分~12時10分

2.場所

文部科学省17階 研究振興局会議室

3.議題

  1. 本委員会について
  2. 橋渡し研究プログラム戦略的推進プログラムの取組状況及び国内外の状況について
  3. 総合討論
  4. その他

4.出席者

委員

金倉主査、池野委員、稲葉委員、井上委員、澤田委員、髙橋委員

文部科学省

磯谷局長、仙波課長、遠藤課長補佐、砂専門官

オブザーバー

猿田PD(慶應義塾大学 名誉教授)
岩﨑PS/PO(山梨大学 副学長)
楠岡PS/PO(国立病院機構 理事長)
稲垣PO(日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 運営委員)
渡邉PO(浜松医科大学 理事・副学長)
北島課題評価委員長(国際医療福祉大学 副理事長・名誉学長)
井本部長(日本医療研究開発機構 臨床研究・治験基盤事業部)

【発表者】
福島センター長(神戸医療産業都市推進機構医療イノベーション推進センター(TRI))
島津ユニットリーダー(科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)ライフサイエンス・臨床医学ユニット)
川口課長(日本医療研究開発機構(AMED)臨床研究・治験基盤事業部)
小夫シニアマネージャー(デロイトトーマツグループ有限責任監査法人トーマツ)

5.議事録

議題

(1) 本委員会について
(2) 橋渡し研究プログラム戦略的推進プログラムの取組状況及び国内外の状況について
      ・これまでの国内での橋渡し研究支援の推進状況- 2 -
      ・海外での橋渡し研究支援の推進状況
      ・橋渡し研究戦略的推進プログラムの概要
      ・橋渡し研究戦略的推進プログラムにおける諸課題
(3) 総合討論
(4) その他



【仙波課長】 定刻になりましたので、ただいまより第1回橋渡し研究推進プログラム中間評価委員会を開会させていただきます。
 本委員会は、研究振興局に設置する会議で、本日は初回でございますので、お手元の委員名簿に従って、委員の先生方を御紹介させていただこうと思います。委員名簿は資料の2枚おめくりいただいた裏面になります。
 まず上から順番に行きますと、国立成育医療研究センターの五十嵐委員ですが、本日は御欠席をされておりますが、委員として着任しております。
 それから、スタンフォード大学の池野委員。
【池野委員】 よろしくお願いします。
【仙波課長】 それから、レミジェス・ベンチャーズ株式会社の稲葉委員。
【稲葉委員】 よろしくお願いします。
【仙波課長】 それから、山梨大学の井上委員。
【井上委員】 よろしくお願いします。
【仙波課長】 それから、大阪大学の金倉委員。
【金倉委員】 金倉です。どうぞよろしくお願いいたします。
【仙波課長】 それからまた、本日御欠席ですが、理化学研究所の小安委員。それから、塩野義製薬の澤田委員。
【澤田委員】 澤田です。よろしくお願いいたします。
【仙波課長】 それからまた、本日御欠席でございますが、東京理科大学の鹿野委員。それから、京都大学の髙橋委員。
【髙橋委員】 髙橋と申します。よろしくお願いします。
【仙波課長】 現在、9名の委員中6名の委員に御出席をいただいておりますので、定足数である過半数には達しておりますことを御報告させていただきます。
 また、本日は、日本医療研究開発機構(AMED)より、革新的医療技術創出拠点プロジェクトの猿田プログラムディレクター、それから、岩﨑プログラムスーパーバイザー、楠岡プログラムスーパーバイザー、それから、稲垣プログラムオフィサー、渡邉プログラムオフィサー、それから、北島課題評価委員長、それから、臨床研究・治験基盤事業部から井本部長、川口臨床研究課長にオブザーバーとして御出席いただいております。
 さらに、本日、発表者として、神戸医療産業都市推進機構の福島先生。
【福島TRIセンター長】 福島です。よろしくお願いします。
【仙波課長】 科学技術振興機構の島津ユニットリーダー。
【島津JSTユニットリーダー】 島津と申します。よろしくお願いいたします。
【仙波課長】 デロイトトーマツの小夫シニアマネージャーにお越しいただいております。
【小夫デロイトトーマツシニアマネージャー】 小夫でございます。どうぞよろしくお願いします。
【仙波課長】 議事に先立ち、設置者である研究振興局長の磯谷より御挨拶をさせていただきます。
【磯谷局長】 研究振興局長の磯谷でございます。先生方におかれましては、本当に大変御多忙のところ、橋渡し研究戦略的推進プログラム第1回中間評価委員会に御参画をいただきまして、誠にありがとうございます。また、日頃から、PD、PS、POの先生方、それから、評価委員長の北島先生、本当にお世話になっております。本日はありがとうございます。
 このプログラムでございますが、皆さん御存知のとおり、平成19年に開始をされております橋渡し研究支援推進プログラム、それから、24年に開始されました橋渡し研究加速ネットワークプログラムに続く第3期の5年事業として平成29年に開始をいたしまして、中間年に当たります平成31年度に中間評価を行うこととなっております。少し早いのですけれども、本日第1回目を開催させていただきました。
 この橋渡し研究戦略的推進プログラムは、医療法上の臨床研究中核病院との密接な連携の下で橋渡し研究支援拠点によりアカデミア発の基礎研究の成果を実用化につないで、革新的な医療品、医薬品を創出することを目標としてございます。それで、この事業では既に、全日本、オールジャパンでの推進体制というのは着実に構築をされているところでございますけれども、一方で、シーズの早期導出に資する産学連携の強化とか、あるいは拠点の自立化、それから、支援人材の育成といったような課題があるわけでございます。さらに、この3期15年の本事業が終了した後にどうしていくかという方向性についても、今から早めに議論をしていただく必要があるということがございます。
 そうしたことから、この委員会を設置させていただきました。文部科学省といたしましても、今回の中間評価を基にこのプログラムをさらに推進して、我が国の橋渡し研究をさらに充実させてまいりたいと考えてございます。本日御出席、御参画の先生方におかれましては、これらの課題についてどう考えていくべきかについて是非御指導、御助言を頂きたいと考えてございます。また、今日は説明者としても御参画をいただきまして、どうもありがとうございます。
 以上、簡単ですが、私からの冒頭の挨拶とさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。
【仙波課長】 それでは、以降の議事進行は、設置要領の規定に従いまして、あらかじめ主査に指名させていただいてございます金倉先生にお願いをしたいと考えております。よろしくお願いいたします。
【金倉主査】 それでは、以降、私の方で議事の進行をさせていただきます。
 事務局から、本日の議事及び配付資料についての御確認をお願いします。
【砂専門官】 それでは、議事次第を御覧ください。本日の議事及び配付資料につきましては、お手元の議事次第のとおりでございます。なお、資料2-1から資料3までの資料はペーパーレスとしておりまして、メーンテーブルのみお手元の端末に既に開いてございますので、そちらを御覧ください。
 なお、オブザーバー以外の発表者の方、先生方は、議題(2)が終了次第御退出をいただくことも可能でございますし、そのままお残りいただくことも可能でございます。
 また、オブザーバー及び発表者の方の御発言は、原則、委員からの発表への御質問や意見伺い等があった場合に主査の指示に基づいて行うようお願いいたします。
 事務局からの説明は以上となります。
【金倉主査】 ありがとうございました。それでは、議題(1)に入ります。事務局から説明をお願いします。
【砂専門官】 本委員会の設置要綱は、資料1-1のとおりでございます。
 なお、規定に従い、金倉主査より事前に、副主査として小安委員を指名する旨を伺っており、御同意いただけることを確認しておりますので、御報告いたします。
 次に、本委員会の進め方ですが、資料1-2を御覧ください。本委員会では、AMEDで実施いたします各拠点の中間評価の結果を踏まえ、事業全体の中間評価を行う予定としております。また、今後の橋渡し研究支援の在り方についても検討いたします。
 スケジュールについては多少の変更の可能性はございますが、御覧のとおりとなっております。
 事務局からの説明は以上となります。
【金倉主査】 ありがとうございました。
 それでは、議題(2)に移ります。今回は、橋渡し研究戦略的推進プログラムの取組状況及び国内外の状況に関し4件の御発表を予定しております。
 まず初めに、神戸医療産業都市推進機構の福島先生に最初の発表をいただきます。資料2-1を御覧いただけますでしょうか。
 では、福島先生、20分を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
【福島TRIセンター長】 福島でございます。それでは、始めさせていただきます。
 そもそもこの橋渡しプログラムが始まって今年で12年になります。その12年のものすごいスピードの歴史を20分で先生方に理解していただくというのは相当難しい。ですから、先生方には膨大な参考資料をお送りしました。まとめました『疾病征圧への道』、それから、それぞれの節目のチャプターも、臨床評価誌別刷りとしてお配りしました。2007年から始まったわけですけれども、その時点でこの橋渡しプログラムのビジョンを明確にしたものもお配りしてあります。ですから、それを読んでいただかないと、実際この間に日本がどのようにして医療イノベーションに取り組んできたかは到底想像だにできないことだと思います。
 私が、京大に着任して実際にトランスレーショナルリサーチの推進に関わるようになってから既に18年です。その時点で文科省は、東大医科研と京大に日本で初めて、あるいはむしろ世界で初めてと言っていいと思いますが、トランスレーショナルリサーチセンターを設置しました。そこから全てが始まったと言っていいと思います。
 初めは、橋渡し研究という言葉もなくて、トランスレーショナルリサーチとは何ぞやという質問や議論がありましたが、また今日も、なぜ必要か、という根本的なところが繰り返されているようで、私、正直、愕然としました。本当に積み木崩しだな、と思ったわけです。私が1年前に手を引いてから、どんどんどんどん崩れていくんじゃないかという焦燥感に今駆られています。文科省の橋渡しプログラムが始まった2007年から2017年の11年間の実績を今日お話ししますが、まずそれをベースに考えないと積み木崩しになるということを最初に言っておきたいと思います。
 我々の目標は何かというと、疾病の克服と予後の絶対的向上です。
 『疾病征圧への道』という本をまとめました。これは後世にきちっと思いを託して、思想、哲学、実践の方法論の全てを相続していただきたいという思いからです。今重要なのは、知恵を結集してシナジー効果を得るような、より強力なプロジェクトマネジメントです。ですから、AMEDが発足した時に末松誠理事長はじめAMEDの皆さんにも言ったのは、AMEDのミッションは、研究開発法人として科学経営学を研究し、実践することであるということです。明確な目的を持った研究開発事業ですから、個人の研究を推進すれば何とかなるという安易なものではありません。
 私が勤めている医療イノベーション推進センター(TRI)(旧 臨床研究情報センター)は、2002年に文科省の補正予算と神戸市の予算によってつくられました。井村裕夫先生の構想によってつくられ、臨床研究の情報を統合し、革新する拠点にしたいということでしたが、まさにトランスレーショナルリサーチの日本のハブとしてサービスを提供するというミッションのもとに私どもはやってきました。
初めは数人で始めたわけですけれども、今は100名を擁する研究所になっていて、これをさらに二つの研究所に分離しようとしている。昨年医療イノベーション推進センターという研究所の名前に変えました。あと2年後にはここに、ヘルスデータサイエンスセンターという強力なデータサイエンスの研究所をつくります。この二つに分ける。
 15年たって、この双葉のところから、今は成果を収穫する時期に来た。難病克服事業で予算があてられたものですが、痙攣性発生障害(dysphonia)に対する画期的な手術器具が先駆け審査指定制度の第1号として承認を取りました。これは企業のコントリビューションはほとんどミニマムです。全て熊本大学での医師主導治験でやったものです。世の中にとんでもない誤解をもっている人がいるわけですね。大学で治験やったって、また企業でやり直さんならん、なんて、そういうデマゴーグにだまされて議論を進めてはならないということが第一です。
 私どもが開発を進めてきた鼓膜再生は今、承認審査中です。今度調査を受けて、オーケーなら承認になる。もう一つは、神経の再生、ステミラックは承認されました。これは神経疾患に対する大きなブレークスルーです。だから、再生医療は今や第2ラウンドに入った。第1ラウンドは終了です。セルプロセシングセンターフリー、セルフリーのワンステップのアイソレーション技術の開発が今、大きな競争になっている。こういうふうに次々と成果が出てきている。特に文科省が力を入れてきた再生医療に関しては、世界のトップを走っている。もう既に実用段階で、御承知のとおりです。
 我々TRIが15年間でやって来たことを、各大学も2007年から同じようにやってきた。TRIは2004年のがんTR事業から支援を始めました。ここで復習すると、がんTRの2004年からの4年間で、幾つかの治験案件が出てくる見込みになった。実際には1つ完全に治験に入った。この成果を受けて、文科省は橋渡し研究支援推進プログラムを2007年にスタートしたわけです。そういう歴史的な経過がある。
 ここでやったのはプロジェクトマネジメントの適用です。がんTRのときには全面適用はできなかった。10億円を1課題1億円ずつで、10課題ありました。各研究者に年に3回から多いものでは5回TRIに来ていただいて進捗管理をしたわけです。この進捗管理を全面的に適用するというのがこの橋渡し研究支援推進プログラムで実現しました。
 ここに全体像が書いてありますが、2007年から5年間、そして、2012年から5年間、この間厚労省は、なぜ文科省が治験にまで手を出すんだといって、それで、厚労省は2011年から早期・探索的臨床試験拠点整備事業を、2012年から臨床研究中核病院整備事業を開始した。このときにはまだ文科省・厚労省の間に齟齬がありました。だから、PDの猿田先生に御相談して、もう統一しないといけないねということで、2014年からこれを統一的に管理するようになって、そして、AMEDにつなげることができたということです。だから、各省庁ばらばらでやっていたのがここで統一されて、医療イノベーション推進のプロジェクトとしてハーモナイズされたということになります。こういう歴史的な経過があります。AMEDがせっかく出来たのですから、これを戻してはなりません。
 初めは、がんTRのときには、KPIというのはなかったんです。だけどここで、治験が1件実際に開始された。こうして2007年にスタートするときには、仕様書である募集要項の中にきちっと目標を、KPIとして治験開始2件、と明記することができたわけです。そして、2期のときには治験を3件開始とさらにグレードアップできた。このときには目標は治験開始ではなく、承認何件取れるかだよねという議論になったわけです。2012年に始まるときには、各拠点は自立化させないとだめだということを言いましたが、厚労省とのやり取りの中で実現できなかった。だから、第3期で、自立はマストであるということを指示していただいたわけです。
 がんTRの成果は何か?この中にまさに北島先生が橋渡し事業第2期の中間評価のときに指示されたDisruptive Innovationがあるのです。まさにこのときにがんTRでインキュベーションしてきた当時講師だった東大の藤堂教授のウイルス療法が、ようやく先駆け審査指定になった途端に第一三共さんがとりますということでとってくれて、今、これが申請に入るところです。これはまさにDisruptive Innovationで、本庶先生の免疫チェックポイント阻害薬の次に来るブレークスルー医薬品です。
 がんTRで分かったことは、アカデミアにおける創薬、臨床開発に本格的投資をしたということです。文科省が初めてそれを意識してやったということです。この事業の途中から、プロジェクトマネジメントを適用して厳格に進捗管理すべきであると、強硬に私が、それをしないとだめだ、成果にならないよ、と言って、のんでくれたんです。アカデミアでトランスレーショナルリサーチを明確に定義して、その進め方を明らかにしました。
トランスレーショナルリサーチとは、基礎研究の成果を臨床に適用するステップの研究、つまり、First-in-Human Trialです。だから、薬機法に基づかない限り、そんなものはナンセンスだということになります。製品にならない限り、イノベーションではない。あるいは、保険に収載されない限り、日本では意味がないということです。ここをよくよく周知する必要があるということをこのときに文科省と話をしたわけです。だけど、それをマインドセットするのは大変だということもよく知っていました。
 R&D振興に必要な要件、言い換えれば医師主導治験をできるようにするにはどうすればよいかを明らかにした。知財戦略の策定、知財管理、それから試験物の製造。再生医療等製品はGMPでつくるということです。この時にもう意識したんです。薬事の専門家を雇用してもらい、それでPMDAと相談しながら話を進めるように指示したのです。
 だから、マインドセットを最初に要求したんです。R&Dは、個人の自由な研究じゃないですよと。法律に基づいて行う法的プロセスであって、薬機法外の臨床研究が通用する世界ではないと最初から言明してきました。
 それで、三つポイントがあるとお話ししました。特許、製造、治験です。全て法律です。だから、法に基づくサイエンスの推進ということになります。ポイントは、ドキュメンテーションとクオリティコントロール。事業として実施するから、マネジメントが必要です。強力なマネジメント。だから、みんな、経営学を勉強しないといかん。経営学を文系の学問だなんて定義しとる限りはナンセンスです。サイエンスなんだから。経営学は英語でmanagement scienceというのです。だから、文科省はよくよく気を付けて、文系・理系の枠組みを外さないとだめです。
 それまで場当たりだった。憲法に保障されている学問の自由だなんて称していいかげんなことを勝手にやって、報告書に関係のない論文まで入れて数を増やして、今ではインパクトファクターいくつのジャーナルに出したとか自慢している。論文の価値や開発には決してインパクトファクターは関係ない。実際にサイテーションがどれだけあるかでしょう。その論文がインパクトファクターを上げるようになっているのか、下げるようになっているのか、ちゃんと評価しなきゃだめでしょう。それから、大学の国際ランキングも上げていかないと、中国にどんどん追い上げられている。評価の基準が手前みそで勝手なことをやっていたら通用しないということです。
 だから、マネジメントを適用して、場当たり的から計画的・科学的、これを橋渡しの中でやりましょうということにして、最終的に現在は戦略的にやれることまで実証しました。だから、最初の募集要項が一番大事です。これが原点です。
 薬機法に基づく試験物製造、GMPのCPCを作りましょう、そして、データセンターを整備して、薬事の専門家も入れて、PMDAと相談できるようにしましょう。それを全体でサポートする体制を整備しましょう。それをTRIがやってきたわけです。お配りした資料に全部そのディスクリプションしてるわけ。だから、これについてもう一回議論し直すなんてナンセンスです。今や薬機法に基づいて承認取っていくのは当然で、次々とあるんですよ。だからその承認を取ったものが一体どういう国民利益になっているかを検証する段階に入っているんです。だから、議論を巻き戻して積み木崩ししないでください。
 橋渡し事業第1期の時に2件ずつ薬機法に基づく治験に移行せよと言っていましたが、当時は、企業から見たら、できるわけないでしょう、大学は何にも知らないんだからというのが、おおよその世間の評価だったと思うんです。だけど、募集要項で明確に何と何をしないといけないと定義したんだから、今これをさかのぼってもう一度見直すなんてナンセンスです。この中間評価のとき、本当に天啓だと思った。本当にうれしかった。北島先生が治験2件はマストですよと言ってくれた。このときに、各大学は、それは難しいんじゃないかとかいろいろ言ってきた。だけど、それを振り切って、治験2件マストとしたのが成功につながったんです。
 拠点サポートの具体的方策は二つある。基盤の整備、そして、シーズの開発。治験を実施して初めて動作確認ができ、整備が出来たということが分かる。あとは大学をネットワーク化して、各大学の閉鎖的な体質を改善しないといけない。だから、橋渡しプログラムは、ある意味では大学の根本的な改造計画だったんです。
 プログラム終了の方向性のポイントは三つあって、知財戦略、これがサイエンスと一体でなくてはだめです。だから、サイエンスは勝手気ままに論文を書けばいいということをやっていたらだめで、知財戦略を持っていないと、サイエンスは成立しないということです。スポンサー機能とデータセンターをきちっとつくって自立化させましょう、ネットワーク化しましょう、ということも言ってきました。
これは2009年、今から10年前の中間評価委員会のスライドです。このときにTRを進めると、風景が全部変わる、TRを進めて、世界最先端になると、今度はリバースTRを進めて世界は追随できなくなる、と言いました。そして、シナジー効果を出せば、もう全く世界が追随できないレベルに我々は突入するんだと。
そして、国民利益が何か、アウトカムリサーチをきちっとやっていきましょう、そこへも支援しましょうと言ってきた。そして、国民利益、Impove Survival、マキシマムのベネフィット/リスクを実現すると。そのためには、EDCのシステムを完全に各大学に整備しましょうと言ってきたわけです。
 そこで、どことどこに予算を入れないといけないか。当然、薬機法上のステージA、ステージB、ステージC、GLP、GMP、GCPにお金を入れないといけない。これを2011年に論文にしてみんなに周知したわけです。そしてこれをいち早く取り入れたのが厚労省の難病事業でした。ステップ1とステップ2に分けて、そこで、ステップ1ではGMP製造、GLPのデータ取り、そして、ステップ2では治験と定めた。もうそれ以外には予算を回すなと言って厳命してきたわけです。私は今POをやっているけれども、POである限りは徹底します。
 第1期の中間評価が終わって、北島先生から、じゃあ橋渡しの将来像はどうなんだ、日本の橋渡し、トランスレーショナルリサーチの実現した像は何か示せ、と言われました。R&Dのパイプラインは確立しています、日本全体の疾患に対するポートフォリオも確立しています、ネットワークも確立します、そして、大学で知財管理経営ができるようになります、だからROI(Return On Investiment)の算出も可能になります、スポンサー機能・データセンター機能は各大学にセットアップできます、そして、それを次の世代に教育できますと、これだけを2011年の事後評価のときに示しました。
 第1期、2011年のパイプラインがこれです。このときに既に原初的なパイプラインは各拠点に出来上がった。だからこの第1期の支援プログラムで、国としてアカデミアのR&Dパイプラインを俯瞰して、国民利益の大きな開発に戦略的に投資することが可能になったということです。
 今、国民利益で一番の関心は、政府も国民も関心があるのは、ソーシャルバーデンの低減です。ソーシャルバーデンはうなぎ上りというか、急激に上がってきている。これを何とか早く手を打たないといけない。景気をよくしないといけないからお金をたくさん入れているけど、オリンピック終わったら悲惨なことになるんじゃないかと思いますよ。だから、今のうちに手を打って、大学が完全に自立的にできるようにしないといけない。新たなマインドセットが必要です。
拠点は出来上がった。こういう調子でサイトビジットのときにはかなり過酷なことを言ってきたんです。そんなことやってちゃだめだと。ちゃんとPMDAに相談に行ってねじを巻き直しなさいということまで言ってきたんです。
それで、1期が終わって第2期になったときに、阪大に戻った彦惣先生が、治験開始3件で行きましょう、ということを電話で言ってきた。3件ってなかなか大変だけど、やってみたら良いということで2期プログラムがスタートしたんです。次は国際基準に完全にマッチするようにQMSを作らせないといけないねという話もしていたんです。このときに自立化をもっと強力に進めないとだめだと言ったけれども、厚労省は中核拠点を今から作るところだからなかなかそこまで行かないね、という話でした。
 第2期平成24年度の成果報告会で、イノベーション創出/大学改革5か条というのを発表しました。五箇条の御誓文じゃないけれども、特許なくしてイノベーションなし、薬機法に基づかずして承認なし、マネジメントなくして開発なし、経済的自立なくして発展なし、グローバル化なくして将来なし、ということを言ったわけです。
 そしたら、日本再興戦略で同じことが出てきたわけです。ここが次の原点になります。健康寿命の延伸、これを一つの大きい柱とします。そのためには、戦略的に市場創造をプランニングしましょう、それで、特に医療に関しては、医療関連産業を活性化して、世界の最先端を行くような医療を受けられる社会に日本をしましょうと。そのためには、AROをつくりましょう。日本版NIH、AMEDをつくりましょうという話になったわけです。このときに本格的に日本国の大綱の中にAROにという言葉が出てきて、日本版NIHというのもブーイングだったものだからAMEDになったわけですけれども、いずれにしてもまともにちゃんと予算を管理できるようになったことは確かです。この大綱というのがすごく重要なんです。ここが原点です。
 だから、今、国民寿命の、健康寿命の延伸に大学がどのように貢献できるかが問われている。ソーシャルバーデンをどのように減らすかが問われているのであって、橋渡しの人材どうのこうのなんていう議論はもうとっくに終わった。それは東大の長村先生がつくった「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に全部書いてあるわけです。
 AROの機能もここで定義した。研究、診療、教育、この三位一体の機能にスポンサー機能。製薬企業と同じだけの能力を備えさせる。日本の製薬企業はものすごく脆弱です。ものすごく脆弱。だから、マーケティングもろくろくうまくいかない。基本ができていない。大学にはCROの機能もSMOの機能も備えさせて、グローバルのアライアンスもきちっと大学に全部集中してやれるようにする。これが日本のモデルです。
 ここで再興戦略をまた出しますが、PDCAサイクルを回さないとだめだ。ここにこれだけ書かれている。
公募要項は仕様書です。研究者に勝手に書かせではだめで、成果物は何と何と何というふうに、PDMAに提出する資料のように作らせるんです。そして、最終的にはPD、PS、POも監査の対象だということです。評価しないとだめだ、ここまで言いました。これらは全部ITソリューションで管理することができる。
 日本再興戦略に戻ると、日本版NIHの創設のところで、マージャン用語である一気通貫なんて政府の文章に書いてあった。
 第2期の中間評価で、北島先生から、Disruptive Innovationを生み出さないといけない、パイプラインは出来た、量はいいよ、とこういう天啓があったわけです。早速、皆さんに、クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』を読んでくださいねと言ったわけです。
2期で2016年のパイプラインは、トータル943のシーズがあって、22件が承認を取った。
 そして、この中からDisruptive Innovationが続々出てきた。チタンブリッジ、そして、先般承認を取った神経再生のステミラッック、承認申請に入るヘルペスウイルスの遺伝子改変型、さらに、CD34。重症下肢虚血はもう解決できる病気。偽関節も解決できる病気。以上は全て厚労省の先駆け審査制度の指定を受けている。企業にやれるわけがない。大学でしかできないです。これが財務省に対する答えです。企業に任せていたらだめ。それがポイントです。
 キーワードは、研究の棚卸。基礎、開発、臨床、全ての研究を棚卸して、疾病征圧を明確に意識してポートフォリオとしてマッピングした上で、どこに集中投資するか、どういうマネジメントをするかを考えましょう、大学間の壁は取り払って、一旦臨床試験や治験をスタートさせたら、一気に1年以内に症例登録が完了するようにみんながチームを組みましょう、と。それで万事オーケー。あとここまでやれば、シナジー効果とリバースTRでどんどんどんどん行けるのです。
 AMEDも出来た、AROも出来た。そして、患者さんの問題点を解決する仕組みとして歯車が回るようになった。今までは歯車がいっぱいあってばらばらだった。AMEDが出来る前は三つの省庁でやってばらばら。AROが出来る前は各大学もばらばらだった。疾病征圧に向けて英知を結集する。この思想が大事なんです。
 あとは、グローバル展開と国民利益の確保。ソーシャルバーデンを減らす、つまり要介護率の低下です。そして検証。Disruptive Innovationの創出。これを定量的に継続的にやれるようにするというのが次の課題です。それはノークエスチョンです。議論の余地はない。
 第3期の公募要領での目標を、新規シーズ6件以上の治験に引き上げた。じゃあ、今度はどれだけ承認を取ったんだ、それがどれだけ国民利益につながっているか、それを評価しましょう、ということで、これは必然の帰結でしょう。
 私が最終的にまとめたパイプラインは、2017年8月末のものです。開発シーズ計1,260のR&Dパイプラインになった。各大学のパイプラインはビッグファーマをしのぐところまできている。北島先生おっしゃるように、Disruptive Innovationがどれだけあるか。イノベーションとマーケティングは経営の両論です。だから今度は、マーケティングがどれだけやれるかです。すなわちアカデミア発の新しい医療の国際普及ということ。それも企業に任せていたらだめだ。
 例えばALS(筋萎縮性側索硬化症)についても、全世界でも仰天するようなパイプラインが出来ているんです。ロボットスーツHALは承認されました。それから、遺伝子治療も近々治験開始となる。ビタミンB12の大量投与も今治験が走っています。こういうふうにパイプラインが出来ている。
 私が集計したときに、向こう5年間に154のシーズが承認申請入ると予測した。これが本当に実現するかどうかが鼎の軽重が問われるということです。ちゃんとマネジメントしているかどうかです。それがきちっとできてなかったら、やめた方がいい。
 これを通常の投資家の使う式によってコンサバティブに計算すると、2021年にトップの大学拠点は6億円を超える稼ぎがあるはずです。稼ぎがないなら、大学の当事者能力がないということになる。1億円稼ぐことができない大学もある。こういうところはサボっているか、知財管理について勉強していないということになります。2026年にはトータルして40億円を突破するはず。2018年から2027年まで合計すれば300億円ぐらいには行くはずです。これはコンサバティブに見積もってです。
 私が橋渡し事業で最後にレクチャーしたときに、2007年から2017年までの11年間の達成として、26件承認・認証し、7件が承認申請中であり、2021年までの承認申請見込みは累積して180件にのぼることが3期の成果の核心であると申し上げました。
 大学には当事者能力を持っていただきたい。自立化してくれということです。ROIを、お金の面と国民利益の面できちっと出して国民の前に示してください、ということです。
今まさに大学の経営、企画・管理能力が問われているんです。今はもう知財は本当にぼろぼろです。個人に戻してみたりなんかしている。はっきり言って、知財管理経営ができないと日本の将来はないです。国民の血税から大学に回そうかなんて、もうないんです、この国は。ちゃんと自覚してもらわないといけません。だから、もう自分の足でよって立つということです。知財管理の専任教授がいないのなら、すぐに配置すべきです。
グローバル展開ではAROのネットワークが出来た。これで日本は世界と一緒にやっていける。特にアジアはみんな日本の方を向いているんです。
 今やROIを問う段階にきた。基礎研究から研究開発をアカデミアで主導して、市販にもっていく。そしてリターンをきちんと取っていく。そうすれば基金が形成できます。大学が300億円稼ぐようになれば10億円をAMEDないし文科省に納めて、10億円の基金が出来るわけです。企業に任せていたらこういう世界はできない。
 これが臨床科学のセントラルドグマです。これを熟知していれば一つ一つここから演繹することができる。今やリアルワールドデータというのはみんな猫も杓子も言っている。だけど、これを実際に使うのは並大抵じゃない。これをどうやって解決するかで世界はしのぎを削っているんです。
今日のスコープから外れるけど、キーワードを言っておきます。ラーニングヘルスケアシステムの確立ということです。AIが主導することになる。
 グローバルAROネットワークのグランドデザインは出来ています。既にアジアのネットワーク化はできた。これを今、ECRINとNCATSとを結んで、全世界をネットワーク化するという構想です。そのためには、ECRINのデータセンターの認証を取らないといけない。アジアで初めて、TRIと、それから、名古屋医療センターがECRINのデータセンターの認証を取るという手続をして監査を受けました。米国はまだです。我が国のARO拠点はほぼ全てCDISCスタンダードで標準化できている。あと、TASが出来てないから、アカデミア主導でTASを作る。そしてDisease-specificに全世界のコンソーシアムを作る。我々の考えているのは、今後こういう方向で行くということです。
 ROIは、医の論理と資本の論理では根本的に異なっている。ここを峻別しておかないといけない。大学を企業化してはならないんです。
最後、オルテガ・イ・ガゼットのスライドは、何回も使ってきました。科学は大学の魂です。世界の中で働き、世界に携わること。これがこれからの大学、ネクストジェネレーションに求められることです。だから、今、現役の我々の世代がしっかりして、次の世代に何をするべきか、何をなすべきか、使命は何かというのをたたき込まないといけません。私たちは時代の理念の高さに生きないといけない。こういうことをオルテガも言っている。時代の理念の高さとは何か、です。
 激しく言いましたけれども、こういう調子でやってきたんです。並大抵のことじゃない。我々は疾病を征圧しようとしているんです。それが射程に入ってきた。脊損(脊髄損傷)は征圧できます。アルツハイマー病も征圧できる。脊損が征圧できるというのはどうしてかというと、それは橋渡し事業のシーズの中から、その治療法、神経再生医療が人類ではじめて成功した、承認を取ったからです。この自己骨髄間葉系幹細胞を用いて、脳梗塞にもアルツハイマー病に対しても治験が行われているんです。アルツハイマー病は、次々アミロイドβが出来て、タウが出来てアタックされる。そこをどうやってシャットダウンするかももう分かっている。潰瘍性大腸炎も、肝硬変もどうしたらよいかかわりつつある。脊損も、完全に断裂したものをつなげることができる。上手につながることが分かった。そこまで言っておきます。あえて最先端がどこまで来ているか、ここまで言っておきます。
今、大革命の時代にあるんです。再生医療が実用化したことで、今までの創薬概念はほとんど通用しません。
 このイノベーションを推進してきたのは、文科省の橋渡し研究に対する投資と、大学の努力、血のにじむ努力をしたと思いますよ。治験をやるなんて大変だった。私も当初みんなに言うのは過酷だと思った。だけど、心を鬼にしてやってきました、猿田先生と。
ということです。御清聴ありがとうございました。
【金倉主査】  ありがとうございました。御質問等は後ほどまとめて時間を取りたいと思います。
 続きまして、科学技術振興機構の島津様に御発表いただきたいと思います。資料2-2でございます。では、島津様、10分で御発表お願いします。
【島津JSTユニットリーダー】  それでは、早速、資料2-2に基づいて御説明したいと思います。
 初めに、アメリカの動向について。NIH、National Institutes of Healthの中に国立先進トランスレーショナル科学センターというセンターがございます。NIHの27の研究所のうちの一つでございますけれども、年間予算700億円程度でございます。これの設立の背景としましては、医学研究におけるPhDの割合が急速に増加してきているということ、もう一つは、データ駆動型の医学研究への対応の遅れということ、2点がございます。こういったことがありまして、2012年にNIHのNCATS、National Center for Advancing Translational Sciencesが設立されております。
 2ページ目でございます。NCATSの中では、臨床・橋渡し科学資金、CTSAプログラムが一番メーンのプログラムとなってございます。これはNCATSが出来る前の2006年から開始しておりましたけれども、ちょうど2012年にNIHの組織見直しがありまして、そこでこの事業も大幅に見直しを受けました。
 それに基づき五つのイニシアチブがスタートしております。1番目と3番目が、マルチサイトの臨床試験のための単一審査プラットフォームとか、マルチサイトで共同研究を促すような仕組みを進めていくというようなことでございます。4番目が、センター間で評価の基準といいますか、KPIがばらばらでしたので、それを統一していこうという取組です。あとは、五つ目として、データエコシステムを構築するためのセンター。2番目が、一番のメーンであります、各拠点への投資。左側、図ですけれども、今、全米で58のセンターが動いております。それぞれのセンターに年間約3億円から20億円投資されまして、5年間の事業が継続していく。その中身としましては、大学院の教育、それから、人材育成、また、産学連携のコーディネーター・イノベーターの育成、あとは、情報基盤の整備等の非常に多岐にわたる中身となっております。また、2016年から複数拠点連携型の予算が新しく作られているといった状況でございます。
 3ページ目に移ります。一つ、データ連携の具体的な例としまして、ACT Networkというものが作られておりまして、今、32の機関で匿名化された患者情報を共有しましょうという取組が進んでおります。これによって、マルチサイト間の共同研究を促す、あるいは特定の研究者が広く患者情報を使って研究を促進するといったようなことが進められているといったような状況にあります。これが米国の橋渡し拠点の中心になってございます。
 次、英国でございます。英国におきましては、MRCという医学研究会議、日本の科研費に近いところがありますけれども、そういった組織と、もう一つ出口側に、NIHRという、日本の厚労省のような組織が所管している国立健康研究所という、この二つが協力して、生物医学研究、バイオメディカル研究が推進されております。MRCの方は、発見からアーリーな橋渡しまで、NIHRが、橋渡しとか基盤整備をやっております。あと、もう一つ、産学連携は、イノベートUKというファンディングエージェンシーが所管しております。下の図に示しておりますように、MRCがディスカバリーのところをやって、それ以降の橋渡しのところはNIHRが主に請け負うということであります。
 次のページに、それぞれの所管している事業の内容をまとめております。MRCは、主には基礎研究なんですけれども、一部、MRC所管の国研において橋渡し研究を推進しております。
 NIHRの方が橋渡しのメーンでして、四つの事業で推進されておりますけれども、そのうちの三つ目、一番メーンの部分が研究インフラの整備となっております。ここに言う研究インフラには、拠点の整備とか、橋渡しの体制の整備も含まれますけれども、予算の大部分がここに使われておりまして、下の青字で表示しているところが大体、体制整備とかインフラ整備に使われているということでございます。今回の文科省さんの事業に一番近いところは、一番上にある医科学研究拠点というところに近いと思いますけれども、大学と大学病院・大規模病院がパートナーとなって新規治療法を探索、そこから出口までつなげていくというような取組が行われております。
 次に移りまして、イノベートUKというファンディングエージェンシー、日本でいうと、NEDOさんに相当するような組織ですけれども、そこが橋渡しとか技術移転を所管しております。生命科学分野が4分の1ぐらいを占めておりますけれども、そこで優先領域として、創薬とか先進医療の普及、あるいはプレシジョン・メディシンといったことが行われております。イノベートUKの所管するプログラムの一つにカタパルト・プログラムがございます。ロンドンでセルセラピー、腎セラピーの拠点が出来ていて、ここで基礎研究からきちんと出口まで双方向でつないでいくような仕組み全体を構築しようという拠点が出来ております。
 もう一つ、イギリスの特徴的なのは、チャリティがかなりの存在感を発揮しているということです。ウエルカムトラストとキャンサー・リサーチUKが、UKRIというのは、先ほどのMRCとかイノベートUKの親組織ですけれども、そういったところと一体となって研究を支援しております。特にキャンサー・リサーチUKにおいては、がんに特化して基礎研究から出口まで支援していくということで、この中に14のトランスレーショナルリサーチセンターのネットワークを推進しております。イギリスでは、例えば、ケンブリッジのバイオメディカルキャンパスの中に、ケンブリッジ大学のほか、こういったCRUKの拠点とか大きな企業さんとかいろんな組織が相乗りして、このキャンパス内で橋渡しができるというような体制を構築しております。
 次に参りまして、ドイツです。ドイツの一般的な仕組みとしましては、大学は教育を、研究は国研でということが基礎になっております。なので、マックスプランクとかヘルムホルツといったところが研究の中心にあるわけですけれども、ただ、ヘルムホルツやマックスプランクは病院を持っておりませんので、大学の医学部医学研究科と、マックスプランク、ヘルムホルツ傘下の研究所が同じキャンパス内で研究をして、橋渡しするといったような仕組みが全国で共通して作られております。
 これはベルリンのシャリテ医科大学と、ヘルムホルツ協会の下にあるマックス・デルブルック分子医学センターの共同での拠点を作りましたという話ですけれども、そこできちんと橋渡しの体制を整備していきましょうという形になってございます。これはこれ以外の、例えばハイデルベルクでも一緒で、ハイデルベルクにあるドイツがん研究センターとハイデルベルクの大学病院でも同じように共同センターを作って推進していくと。体制整備としてはこういった形になってございます。
 あとは、六つの疾患ごとにトランスレーショナルの仕組みを作っておりまして、これはオールドイツできちんと疾患ごとにネットワークを作って橋渡しができるようにしていきましょうという仕組み、この2段構成になっております。
 後半ですけれども、少し話が変わりまして、そもそも日本と欧米では、バイオメディカルといいますか、医学研究のプラットフォームが大きく異なりますよということで、少し日本も大学病院と医学研究の在り方、ここを欧米のように変えていく部分もあってもいいんじゃないかということを問題意識として持っております。
 一番大きな点は、大学と病院の在り方。今、日本は医学部附属病院になっているわけですけれども、アメリカもドイツもイギリスも、大学と病院は、財務的にも経営的にも独立している部分が多いということで、そういったことによって研究の自由度、まさに先ほどあったように経営ですね、きちんと経営をして研究の自由度を高めていこうということができるのではないかということを今回調査して、報告書としてまとめております。特にそうすることによって、医師・研究者の人事制度上の課題とか、PhDとMDがうまく研究をしていくというような体制が出来るのではないかということをまとめております。
 最後、まとめですけれども、病院、MD、PhD、産学官が連携する研究プラットフォームを作っていくということが非常に大事なわけですけれども、少し土壌の方の見直しと併せてやっていくことがより効率的にできるような体制になっていくんじゃないかということでまとめさせていただいております。
 以上でございます。
【金倉主査】  ありがとうございました。
 続きまして、AMEDの臨床研究・治験基盤事業部臨床研究課の川口課長、それから、現在の成果活用支援事業の受託業者であるデロイトトーマツの小夫様に御発表をいただきたいと思います。資料は2-3でございます。それでは、川口課長、小夫様と合わせて15分で御発表をお願いしたいと思います。
【川口AMED課長】  御紹介ありがとうございます。では、AMEDの川口の方から説明させていただきたいと思います。
 まず一つめくっていただきまして、先ほど福島先生からのお話にもありましたように、橋渡し研究戦略的推進プログラムが橋渡し研究支援拠点に関わる事業の第3期目というふうになってございます。こちらに示しますように、1期の方で、先ほどの福島先生のお話にありましたので簡単に御説明しますけれども、こういった達成目標の上で行い、2期については、ネットワークプログラムというところでこういった目標の下に事業を行って、平成29年から橋渡し研究戦略的推進プログラムとして、5年後、プログラムが終わるところの達成目標としてこのようなものを掲げて始めさせていただいているところでございます。
 本日はこの橋渡し研究戦略的推進プログラムの中間評価委員会ということで、委員の先生の皆様方におかれまして内容を理解していただくために、私の方からは、具体的なデータの方を示させていただきたいと思っております。
 この橋渡し研究戦略的推進プログラムのところは、先ほど最初の方に御紹介いただきましたように、プログラム自体は、AMEDの中では、事業にPSを1名置くことになっております。AMEDの中に9本ある各プロジェクトごとにPDを1名置くことになっておりまして、この橋渡しを含むプロジェクトであります革新的医療技術創出拠点プロジェクトのPDとして猿田先生、橋渡し事業系のPSとして岩﨑先生、また、厚生労働省系の事業をこのプロジェクトの中は含んでおりますので、そのPSとして楠岡先生に入っていただき、たすき掛け的にPOをこのような先生方にお願いしているということになっております。
 平成29年度はこの皆さんにお願いしておりましたが、平成30年度は、景山先生が抜けられまして、このような体制で今年度は実施しているところであります。
 全体として、橋渡し研究戦略的推進プログラムで行っていることとしましては、平成29年にまず橋渡し研究支援拠点を公募しまして、10拠点を新たに選び直しています。そこで初めて決まった後、臨床研究中核病院の拠点と合わせたプロジェクトの全体会議を2回開催しまして、年度末には成果を公開ということで外向けのイベントを行っています。また、今年度は、全体会議は1回しか開催していないですけれども、その代わり、PD・PS・POが集まる会議を頻回行いまして、密な拠点のサポートを行っております。また、後ほど詳しく説明しますけれども、私どもの方でもこの事業の中間評価委員会を実施する予定にしています。その第1回を3月14日に開催しています。
 この橋渡し研究戦略的推進プログラムの具体的な中身としましては、簡単に申しますと、黒丸の3点あります。恒久的な拠点体制の構築というところで、目標としては事業期間での自立化が該当しますけれども、いわゆる10拠点の整備で、拠点を介したいろいろな研究の支援、サポートを行うという体制の構築になります。二つ目が、この中で研究費の配分も行っていまして、上の拠点でサポートするシーズの中の一部の研究費を直接配分することと、必ずしも研究費が配分されてはいない、シーズの育成を行うという機能。そして、最後が拠点間ネットワークの強化ということで、第2期においては各拠点全てに横並びなネットワークの再生・構築を行ってきたんですけれども、3期におきましては、各拠点の特徴化ということもありますので、必ずしも全ての拠点が参加するというわけではない形でのネットワークの構築を進めております。具体的にはまた後ほど説明させていただきます。
 先ほど福島先生のお話の中にもありましたように、1期、2期、3期と、結果的に3期におきましても、2期まで支援してきた九つの大学に加えまして筑波大学が入った10機関が拠点となっています。それぞれテーマとしては、ここに示したような研究課題名で採択させていただいています。
 拠点全体としてこの課題を管理するに当たって、一番メーンといいますか、大きなところで行っていますのが拠点調査会議。先ほど福島先生のお話の中にもサイトビジットという名称で出てきたものはこちらになります。毎年内容は更新しておりますので例になりますけれども、今年度平成30年度に行ったものだと例えばこういう形になります。整備状況ということで、これらの内容を事前に調査票を提出いただきまして、それについて御発表いただくと。拠点側としましては、機関との契約になっていますので、代表者が学長とかの関係もありまして、学長、副学長はじめ、病院長とか、そういった先生方がいらしています。こちら側も、今来ていただいているPD以下の体制で臨んでいます。その中で拠点状況について御説明いただき、質疑をして拠点の進捗状況を確認する。また、昨今、シーズの状況についても、私どもが研究費を配っているシーズ以外のシーズについてもここで御発表いただいて、シーズの育成はどう行っているかという具体的な内容を見聞きすることも行っています。
 実績としましては、平成29年についてはこのような形で、各拠点は半日ぐらいですけれども、10拠点全てにおいて平成29、30年度と行っているということになります。これが具体的に拠点について行っている取組の一つになります。
 シーズの育成の強化の方につきましては、シーズパッケージ制度を設けております。シーズAという、2年以内に関連特許出願を目指す基礎的な研究課題につきましては、各拠点へ交付している補助金の中で行っていただいていますが、シーズB、シーズCという、3年以内に非臨床POCを取得する課題や3年以内に臨床POCを取得する課題については、私どもAMEDの方でまとめて評価をさせていただいています。また、そちらで課題管理を行っているところです。その委員長として本日北島先生に来ていただいております。
 具体的な取組としましては、これもデータだけなので、簡単に御紹介します。平成29年、最初の採択分としてはこのような形で公募を行って、こういう課題、これだけの課題数を採択し、また、翌年度に続けるための継続ヒアリングもきちんと行いまして、また年度に終わるものについては事後評価を行い、今年度におきましては、2年目に入っておりますので、中間評価を行った。また、問題のある課題については、追加の中間評価ヒアリングも行って実施しています。平成30年度に新たに採択した課題についても同様です。また、現在は、来年度行う平成31年度の採択課題についてもほぼ決まって、4月1日から開始する準備が整っているところです。
 また、これら研究シーズを含めて、それ以外の各拠点がサポートしているシーズの状況については、後ほどトーマツの方から報告していただきます。
 三つ目になりますけれども、拠点間ネットワークとして取り組んでいる内容としましては、主にモニタリングに関する取組で、東北大を事務局とした研修会の実施等と、東大を事務局とした監査に関わる取組、こちらも監査の担当者の研修というところに加えまして、人材育成に関わる取組として、こういった三つの取組を今行っています。先ほどちょっと御紹介しましたように、実際に行っているのは、これらの全ての大学ではなくて、一部の拠点の方が中心になって行っていただいているところになります。後ほどもうちょっと詳しくお話しさせていただきます。
 まずモニタリングの方は、事務局的にこのようなワーキンググループを開催しています。また、監査については、こういったワーキンググループを2年間で開催しています。先ほどの説明に入っていなかったですけれども、一番下の方に実務者ミーティングというのがございます。これは各拠点の方にアンケートを取ったところ、先ほど御説明した拠点調査会議等は、病院長とか偉い先生方のコミュニケーションは取れるんですけれども、各拠点間の実際やっている方々の横のつながりがないという御不満がありましたので、産学連携・知財担当だけ集まっている会議とか、PMの会議を今開催して、実務者レベルでの横のつながりも発展させていこうとしているところになります。
 また、研修会の実績としてはこのような感じで、モニターの研修会はこれだけ開催して、受講者はこれだけいます。監査の方の講習会もこれだけ参加している方がいらっしゃるという状況になっています。
 こちらがもう一つ、最後の方に三つ示していた取組それぞれになります。ジャパン・バイオデザインプログラムというのが、こちらの3大学が中心になっていただいています。基本的には、医療機器等を開発する方を人材育成するというプログラムになってございます。また、TSMTPというのは、九州大学を中心に、東大、北海道大学と一緒になってやっている人材育成のプログラムになりまして、創薬研究を推進するような人を育成するプログラム。また、こちらのResearch Studioの方については、筑波大学を中心に慶應大学と一緒にやっていただきまして、アカデミア発の医薬品等、アントレプレナーを作るプログラムを実施しているところになります。
 本日そういった事実だけをお伝えしておりますけれども、先ほど最初の方に申し上げましたように、現在、拠点体制の拠点部分と、各課題については毎年評価を行っておりますので、拠点体制の構築とネットワーク部分について中間評価を実施中であります。ポイントとしましては、最初の方の福島先生の方でもありましたように、公募要領に書いてあるように、必要性、有効性、効率性を中心に、AMEDの方でこういったスケジュール観で中間評価を行い、その評価結果につきましては、こちらの委員会の方で、第4回の予定にしておりますけれども、成果として報告させていただきたいと思っております。
 一応、来年度、来週からはまた引き続き、厚生労働省と共にこのプログラムを一体的な革新的医療技術創出拠点プロジェクトの運営を目指して進めていくところになります。
 それでは、次からは、シーズについての全体のプロファイルについて、トーマツの方から報告してもらいます。
【小夫デロイトトーマツシニアマネージャー】  デロイトトーマツの小夫でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私の方からは、AMEDの方々から御依頼いただきましたところのR&Dパイプラインのパートのみ、この場ではファクト中心に御説明をさせていただければと思います。
 まず今回の統計視点でございますけれども、記載ございますとおり、全国10拠点、北海道、東北、筑波、東京、慶應義塾、名古屋、京都、大阪、岡山、九州、この10拠点におきましてそれぞれシーズがどのフェーズまで進んでいるのか、モダリティ分類とは何なのか、疾患分類とは何なのか、リエゾンの進捗状況はどうなのか、この4点について整理をしましたので、それぞれ御説明の方をさせていただければと思います。
 まずアカデミアシーズの研究開発状況でございます。ちょっと字が小さくて恐縮でございます。全体のシーズ総数と致しまして1,254のシーズがデータベースにはございました。そのうちに、いわゆるシーズA、主要特許出願のシーズが全体の622、これは全体の49.6%を占めているというような状況でございます。また、シーズBに関しましては22.6%を示しているという状況でございました。そういうところから、全体シーズの約半数がシーズAの状況、応用段階であるということでございます。したがいまして、実用化に至るまでには継続的な資金供与、これを求められているシーズが非常に多数含まれているということが私見として考えられるかと感じております。
 次のページでございます。疾患分類別にそれぞれのシーズ状況を整理させていただきました。左側の表の方がそれぞれの疾患分類の、これはシェアランキングでございます。上から順にシェアが多い疾患ということで順位付けをしている状況でございます。ポイントと致しましては、最も多い疾患ががんでございました。全体の22.2%を占めている。上位5疾患はがん、神経、消化器、循環器、筋・骨格、この上位5疾患でございますけれども、全体の54.7%を占めているということでございました。
 恐らくこれは民間の製薬企業の開発パイプラインも、このような形でランキングを取ると、非常に近いランキング結果になるのかなということを考えております。そのときに、恐らく民間のミッション・使命と、アカデミアの目的と異なる部分も多々あるのかと思いますけれども、いかにして日本国の医薬品開発パイプラインを最適化していくのか、レベルアップしていくのか、いかにして患者さんに届けていくのか、そのためにアカデミアと民間はどのような形で相乗効果、シナジーを持つべきなのか、この辺りに関しては今後議論のポイントになるのではなかろうかと、このように感じているところでございます。
 次に、製品種別というところで整理をさせていただきました。こちらの方は、ほぼ市場の状況と類似の形の構成比、おおよそ仮説ベースどおりなのかという認識をしております。全体の半数程度が医薬品、20%強が医療機器、それで全体の4分の3程度を占めているというところでございます。次いで、再生医療等製品、体外診断用医薬品という順位付けでございました。
 次に、シーズのリエゾンの進捗状況でございます。シーズAの段階、シーズBの段階、シーズCの段階でそれぞれリエゾンの進捗がどうなっているのか、それを整理したものでございます。左から、決定、交渉中、検討・選定中、未定・無回答でございます。当然ながら、シーズのステージが進むにつれて、リエゾン先候補が決定しているシーズが非常に増えているというポイントが1つございます。
 もう一つのポイントでございますけれども、シーズCに至っているにもかかわらず未定なものが4割弱あるということをどう捉えるかということも一方では検討の余地があるのかと思っております。本当にシーズ自体に問題があるのではないか、あるいはシーズをいかにして企業に届ける。そこにはどうしてもビジネス力が必要になってきますので、例えば企業に対する交渉の在り方をどうするのか、あるいはプレゼンテーションの在り方をどうするのか、作成する資料のまとめ方をどうするのか。まだまだシーズCに関しても、非常に良質なシーズであるにもかかわらず、掛けるビジネス力というところで若干なりとも不足点があるのかな、そこがいまだ40%に近い数字で未定という状況になっている一つの所以、背景としてあるのではなかろうかと、このように感じているところでございます。
 以降のページでございます。こちらのページに関しましては、先ほど私の方で申し上げた集計結果、こちらの方を全国10拠点別に集計をさせていただいたところでございます。こちらの方に関しましては、元のデータ等になりますので、後ほど確認いただければと思います。
 私の方からは以上でございます。
【金倉主査】  ありがとうございました。
 それでは最後に、本事業のプログラムスーパーバイザーを務めていらっしゃいます岩﨑先生に御発表を頂きたいと思います。資料は2-4でございます。それでは、岩﨑先生、10分で御発表をお願いいたします。
【岩﨑PS/PO】  それでは、岩﨑の方から発表させていただきます。この題は、橋渡し研究に関してPS、それから革新事業創出拠点のプロジェクトのPOとして務めさせていただいて感じていることをメーンにしてお話ししようと思いますので、余り役に立つようなデータが出てくるわけじゃなくて、この事業はどういうものかということを分かっていただければ、我々がどういう感じでいるかということを分かっていただければと思います。
 この辺はもう端折りますけれども、前世紀の後半ぐらいにもういろいろな医療技術の革新をもって、製薬企業といえども、全部をやるというよりは、それぞれ分担してやるんだということは、これはJuergen DrewsというロッシュのCEOですか、2000年ぐらいに本に書いていらっしゃいますけれども、その中でアカデミアは、いいシーズのプロバイダーとしての役割が大きくなると。
 現実的にFDAのデータですけれども、特にプライオリティレビュー、優先審査を受けているものに関してのアカデミア発のものが非常に高くなって、これは2007年までなので、現在はもっと多くなっていると思います。
 こういうものを受けて、先ほど来いろいろとお話があるように、こういう事業が行われてきたわけです。
 そういう事業の中でPS/POと携わらせていただいて感じることを、このような四つの観点から私なりの意見を発表させていただければと思います。基本的にこの事業は、始まりは、日本の優れた基礎研究の成果をいかにして日本の力で世界に発信するか、このシステムを日本に作ろうというところがベースだと思いますので、そういう面でこの事業があるということで私どもは理解していたつもりです。
 まずハード面といいましょうか、アカデミア、この事業は、拠点という大学・病院を作りまして、そこにいわゆるAROをとしての機能を示すように整備してくださいという事業から始まりました。その中でそういう事業を通じて出てきたのは、一つはやっぱり体制が非常に整備されてきた。毎年、先ほどありましたように、サイトビジットといって、猿田先生のような包括的な指導と福島先生の非常に厳しい指導が相まって、毎年、拠点と言われる大学の体制が非常によく整備されてきたというのは事実だと思います。最初は本当に臨床研究センター的な、何となく支援センター的なもので発足したのが多いと思いますけれども、最近はもう100人を超えるような人員を擁して体制を整備して、それも非常に多方面に渡って基盤を整備していただいている。
 これは拠点の先生方にお願いした、こういう項目で整備してくださいという項目の一覧ですけれども、このようなベースにして整備していただいたというところがあります。この中で今見えてきた課題というのは、シーズはこのように評価・選定する、それから、臨床試験を行うという体制はかなり整ってきたのではないかと思いますけれども、育成のシステムがまだまだ不十分なところがあるのかもしれないと。それから、施設も各施設で本当に整備していただいたんですけれども、果たしてそれが効率的に動いているかどうかということに関してはかなり疑問な点もあるというのが正直な感じです。ですので、施設の効率的な運用、共同利用的なことで効率的な運用を図るというのも今後の問題じゃないかと感じています。
 これが点数でいうと、基盤整備力、これだけ点数が整備されていたんですけれども、果たしてこれが今後続けていけるかというのが一番、こういう問題では、ハードの面では非常に大きな問題。
 いわゆる自立化で100人規模の、これは幾つかの拠点の具体的な人員の構成を示したものですけれども、これだけの方々がこの事業に、AROの事業に関わってらっしゃいます。この事業は、継続的な事業とすべきという点がありますので、これをどのように確保していくのか。それから、こういう人材をどのように育成して、それから、ここで頑張っていただいている方々のキャリアアップのシステムを考えないと、なかなかいい方は来ていただけないんじゃないかということが見えてきた課題じゃないかと思います。
 それから、拠点を中心として研究者のマインドセットがかなり変わってきたんじゃないかという感じも私は受けております。
 これはシーズA、B、Cというのが、それぞれAは特許を目指して、Bは非臨床のPOCを目指すもの、Cが臨床のPOCを目指すものというものと分けられております。Aは拠点にある程度予算を分配して拠点の中で使っていただくということですけれども、B、Cは、応募していただいて、それを評価しているわけですけれども、応募の内容が非常に成熟してきた。書き方が上手になってきた。実用化に向けての必要な事項がいろいろと記載されるようになってきたということがあろうと思います。それから、知財に対する理解の進展も非常に進んだろうと。それと同時に、そういうものをもたらすベースとしての基礎研究の大事さも研究者の先生は感じてきたんじゃないかと感じています。
 ただ、特許に関しては、取れ取れという感じでやっておりましたら、最近は、取ればいいというもんじゃないだろうと。量より質への転換が必要だろうということと、それから、知財は戦略的な考え方が必要だろうというようなこと、それから、各大学、知財は経費が掛かりますので、そういう問題もあるということが指摘されておりまして、こういうものも今後の問題だろうと思います。
 それから、拠点がまずAROとしての十分な機能を発揮していただくようにお願いしましたけれども、やっぱり拠点だけが頑張っても困る。拠点外でもいい研究をされている先生がいらっしゃるので、そういう先生もちゃんと拾い上げる仕組みをこの事業の中ではもたらすことが必要だろうということで、拠点外の大学・研究施設の先生方にも参画を呼び掛けて、現在、これはかなり広がってきていると思います。これは拠点外/内のシーズの支援数の一覧ですけれども、このようにかなり拠点外、青ですけれども、そういうシーズを拠点の先生方が面倒を見ていただいているということもあります。
 ただ、やっぱりシーズを適切に評価するシステム、それを育成するシステムはまだまだ必要なところだろうと思いますし、それから、拠点の先生方にとっては、拠点内の支援もなかなか大変なのに、拠点外までは具体的な支援がなかなか回らないという現実的な問題もありますので、このようなところを今後どういうふうに解決していくかが課題だろうと感じています。
 これはA、B、Cに分けたところです。Aは、先ほど言ったように拠点内で分配していますから別ですけれども、B、Cは、支援の数、それから、採択されたものが青い色で分けておりますけれども、簡単に言うと、採択率が年々そんなに高くないんですね。もう少しいいシーズには十分な支援ができるような予算措置が必要だろうと感じています。それから、これを全く全部国の支援で行うのか、ある程度なったときにはやはり企業との戦略的な連携が必要だろうと。そういうところをもっと進めて実用化につなげる試みがもっと必要だろうと感じているところもあります。
 それから、拠点外シーズの支援を通して、拠点だけじゃなくて、拠点間もそうですけれども、拠点外の大学とも多くのネットワークが出てきたというところがあります。これも一つの成果だろうと思いますので、こういう広がりを持ってシーズをベースに、プロジェクトをベースにした連携をもたらすということが非常にいいところじゃないかと。単なる大学間ネットワークというのは、昔からよく言われていますけれども、名前だけで実態が伴わないというのが多くあるんですけれども、こういうようにプロジェクトをベースにした広がりを持っていくと、具体的な広がり、支援の仕組みが出来てくるんだろうと思います。
 最後に、大学の社会的使命に対する理解がまたこういう事業を通じて変わってきたんじゃないかと私は感じます。これは大学の今与えられている、今、第3期の中期目標という期間に当たりますけれども、いろいろなことが大学の改革も含めて大学には要求されているところであります。大学の責務として、社会の発展に寄与するとか、それから、大学が大学だけの研究にとどまらず、社会に提供して社会の発展に寄与する、そういう存在になる必要があるということが声高に言われているところです。この橋渡し事業、革新的医療技術創出拠点プロジェクトというのは、こういう大学の社会的使命を果たすということにも非常に意味があるんじゃないかなと思います。
 ただ、それにはやはりこういう事業が必要だという意識の更なる向上、それから、国立大学がどのように内部留保のお金を持てるかというようなことに関してルール的なものの整備が必要だろうと思います。それから、何にもまして、こういう事業が非常に意味がある、国にとって意味があるということに対しての社会的な理解が必要だろうと思いますので、この事業の成果をできるだけ社会的に発信して社会的な理解を頂くということがもっと必要だろうと思います。
 以上、PS/POとしてこの事業に携わらせていただいて感じたことを述べさせていただきました。橋渡し研究というのはやっぱり必要なものだろうと。特徴あるアカデミア拠点の形成が必要だろうと思いますし、アカデミアというのはやはり新規の医療技術の創出には非常にアドバンテージを持っている。そのアドバンテージを生かして課題の克服に当たる。これがこの事業の求められているところであろうと思いますし、その道を今たどりつつあるというふうに感じております。
 以上です。
【金倉主査】  ありがとうございました。以上四つの御発表を頂きましたが、短い質問がございましたらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、議題(3)に移りたいと思います。議題(3)は、議題(2)を踏まえました総合討論でございます。総合討論に入る前に、事務局より資料3について御説明をいただきたいと思います。
【砂専門官】  資料3を御覧ください。議論のポイントと致しまして、まず1としまして橋渡し研究を行う意義、2としまして体制整備の問題、3としましてシーズ研究、4としまして人材といったポイントを踏まえまして、今後の橋渡し研究支援の在り方を検討できればと考えております。
 本日は、1枚目の橋渡し研究を行う意義につきまして討論いただきまして、残りにつきましては、第2回、第3回以降で検討いただければと考えております。
 これから、五十嵐先生、小安先生のコメントを代読させていただきます。
 まず、五十嵐先生からのコメントでございます。
 【五十嵐委員コメント】________
これまで長い間、アカデミアを中心としました健康・医療分野の研究者の多くは、疾患の発症メカニズムや遺伝子レベルでの原因の研究に重きを置いてきました。しかしながら、成果が得られたとしても、治療に役立つ医薬品や医療機器の開発に結び付けることは実際には大変難しいため、研究者は医薬品や医療機器の開発を視野に入れた研究姿勢を取ることが難しい状況にありました。
 近年、AMED、文部科学省、厚生労働省などの競争的研究資金の提供側が創薬や医療機器の開発を支援する研究費の枠組みが整備され、さらにアカデミアにおける特許申請などの知財支援体制も構築され、患者データベースの構築も進むことにより、現在でも不十分な面は残されておりますが、医薬品や医療機器の開発を目指す姿勢を取ることがアカデミアに所属する研究者にとっても可能になりつつあります。すなわち、健康・医療分野での実用化研究が欧米に比べ後れてはいるものの、ようやく学問として成立する時代になりつつあります。
 このような状況の中で、アカデミアに所属する研究者のマインドも、医薬品や医療機器の開発を目指す方向性に少しずつシフトしてきました。患者を実際に診療し、病気の病態生理の解明や遺伝子レベルでの原因究明に臨むアカデミアの研究者は、臨床や研究面で様々な気付き・発見に出会う機会が多く、それが研究推進の点で最大のメリットであります。さらに、アカデミアに所属する研究者は、基礎医学の研究者との立ち位置も近いこともメリットと考えられます。広い視野を持って研究することが可能なアカデミアに所属する研究者は、実用化研究に果たすことができるポテンシャルを持っていると言えるでしょう。
 一方、大学病院における研修制度の最近の大きな変化は、アカデミアにおける基礎研究者の新規の参入を大きく阻害しています。さらに、臨床部門の研究者の研究に使用する時間が制限されつつあります。このような状況は、大学病院における研究者の仕事面で臨床と研究のこれまでのバランスを大きく変え、その結果、我が国の臨床部門での研究力を損なう危険性をはらんでいます。
 こうした状況の中で大学に橋渡し研究支援拠点を置いて支援することは極めて重要です。今後、研究費が研究者の複数年度の人件費をカバーするなど比較的自由な研究費の使用が認められると、人的資源が枯渇しつつある大学での研究支援に大きな助けになります。検討していただきたい案件と考えます。
_______________
 これが五十嵐先生からのコメントでございます。
 次に、小安先生からのコメントを代読させていただきます。
 【小安先生コメント】_____
 健康・医療分野の実用化研究の特徴の一つは、掛かる時間の長さと思われます。また、エビデンスの取り方に多様性があり、一様性ではない点も特徴と思われます。アカデミアの重要な使命には、シーズや新しい技術の提供という基礎的な部分と、治験という最も出口に近い場を提供する部分という幅の広さがあります。この中間を産業界が取り組むことが理想でございますが、実際には年々アカデミアが取り組む部分が増えてきております。そこに橋渡し研究支援の意義があります。
 大学自身が橋渡し研究支援に取り組む意義・必要性には幾つかあります。例えば希少疾患などの企業が取り組まないあるいは取り組めない疾患を対象にできることや、細胞医療などの企業の取組が後れている分野に関して迅速な取組が可能なことなどが挙げられます。しかし、大学での橋渡し研究支援には限界があり、それゆえに国による橋渡し研究戦略的推進プログラムの存在意義があります。
 規制当局対応、企業とのライセンス交渉、特許の強化アドバイスなどは大学と国とが協力して行う必要がありますが、GLP試験やGMP試験物製造などの支援は大学単独では困難な場合が多いと思われます。
 さらに、大学では、プロジェクトマネジャーや橋渡し研究を支える技術員などの支援人材の不足が深刻です。これらはアカデミアの中できちんとキャリアパスとする取組が必要ではないかと思われます。このようなキャリアパスを形成して人材育成を行うことも大学に橋渡し研究支援拠点を置く意義ではないでしょうか。橋渡し研究戦略的推進プログラムを文部科学省が推進する意義としても、人材育成を重視すべきではないでしょうか。
 最後に、実用化研究全体を考えた場合、シーズの掘り起こしから非臨床試験までを文部科学省を支援するにしても、臨床試験に入る段階以降は厚生労働省が引き取って支援するのが本来の姿であると考えます。
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 以上が小安先生からのコメントでございます。
 私からは以上でございます。
【金倉主査】  ありがとうございました。本日御欠席の五十嵐先生と小安先生からの御意見も頂きました。
 では、この資料3の論点を参考にしつつ、総合討論に入っていこうと思いますが、委員の皆様いかがでしょうか。こういう問題で議論するということでよろしゅうございましょうか。
【福島TRIセンター長】  疑義があるんですよ。先ほど申し上げたように、ファクツをきちんと押さえておかないとだめですよ。あのパイプラインはパイプラインの提示になっていない。何件承認取ったか分かるでしょう。2018年度にどれだけ承認申請してどれだけ承認取ったか、その内容が何で、今までの全体から比べてその進捗がどうなのか、それから、次に後続のパイプラインがちゃんと流れているか、それを示さないとだめですよ。そのファクツがない限り、こんな議論ふやけてる、はっきり言って。
 橋渡しが始まったときの議論に戻してどうなるんですか。営々と今まで12年やってきたのを積み木崩ししちゃだめですよ。ここから議論しないと。今何を議論するべきか、ファクツで何が足りないかを議論するべきですよ。これに沿ってやったら、もうぼろぼろになる。この国はもう本当に国難なんです。ソーシャルバーデンをどうやって減らすかということを突き付けられている、大学に。そのことを真剣に考えないとだめだよ。それじゃないと予算も取れませんよ。景気は後退します、確実に。だから、あんな生ぬるいことやってちゃだめ。
 私、厳しく言っているけど、それは本当に深刻に次の世代のことを考えざるを得ないからだ。子供や孫のことをね。もっと真面目にやろう。こんな10年前に議論が終わっているようなことやっちゃだめ。Disruptive Innovationがどれだけこれからできる可能性があるか、基礎研究をどうやって強化する必要があるか、もっと議論しないとだめです。こんな、橋渡し研究とは何ぞや、何で必要かなんて、こんなことからやってちゃだめだ、もう一回、ファクツをきちっと出してもらわなあかん。
【金倉主査】  福島先生、お怒りは十分理解しました。ただ、やはり福島先生言われるように、当初の橋渡し研究から見ると、ある程度の成果が上がってきたと。それはもう重々分かっておりますが、委員の先生方まだリニューアルしたということもあって、一から何回かにわたって議論を重ねて、次の段階に……。
【福島TRIセンター長】  それが問題だって言っているんだ、私はね。
【金倉主査】  次の段階にちょっと行けない……。
【福島TRIセンター長】  ゼロからもう一度やり直すようなことをやってちゃ、いつまでたったって積み上がらない。だから、積み木崩しって言うんですよ。
【金倉主査】  だから、先生……。
【福島TRIセンター長】  だから、資料のここだけ見ても、このクエスチョンでは全然次の問題へスムーズに移行できないということは分かるでしょう。ファクツが出てないんだから。どれだけのファクツがあったかということ。26承認取って、市場に出ました。例えばロボットスーツHAL、アカデミア発ですよ。それ以外にもたくさんある。どれだけこれが今、国民利益につながっているか調査して、それを更にエクスパンドするにはどうしたらいいか。きちっとやろうよ。
【仙波課長】  今、並行してAMEDの方で中間評価に向けて、事実のファクトをまとめつつあります。そのまとめた資料はこの委員会でもどこかの段階できちんと発表する予定になっておりますので、それまとまってからでもよかったのですが、並行して議論を進めていきたいというふうに思いましたので、今回は準備させて……。
【福島TRIセンター長】  それがあるならいい。きちっとしたものを次にやるということならいい。
【岩﨑PS/PO】  福島先生がこう言うのが、こういう質問が出るということ自体が、やっぱりこの事業をどのように中間評価の先生方が理解されているかということを示していただきたいんです。これだけの事実があれば、これはもう確認でいいんだと。これは重要なのかというところをちゃんと示していただければいいわけで、別にこれをちゃぶ台返しでこれからやるというわけじゃない。だから、これまでの発表を受けて先生方がどのようにこの事業を評価しているというのを確認するということでよろしいと思います。
【猿田PD】  一言言わせていただいていいですか。私がこの事業を受けた一番は、2007年にスタートしたわけですけれども、2006年に、ライフサイエンス課の委員やっていたんです。そのときに皆さん方のいろいろな、これから日本の研究どうしようか、いろいろなことを議論したときに私が一番感じましたことは、日本の研究がみんなペーパーだけで終わっていっている。全く実用化されていない。
 実は私、今から50年前、1970年にアメリカへ行って、リサーチフェロー・アンド・クリニカルフェローをやったんです。向こうで治験もやったんです。そのときにはアメリカでもそういった実用化ということは全く出てなかった。ただ、ペーパー。だから、私も一生懸命、2年間でペーパー8枚ぐらい書いたんです。
 それやってきて帰ってきて感じたことは、やはり実用化させなきゃいけない。ということで、2006年のライフサイエンス課の委員会のときに、やはりどうしても実用化させるように動かなきゃいけないだろうということで、国の方から、橋渡し研究というものをやってみようと。それはアメリカでそれよりも数年前からやっていましたので。それで、そのためにはどうしたらいいだろうかということで、私、それでこの事業を受けたというのがあります。ともかく、ですから、いかに、今お話あったように、実用化させるかということが一番重要なことで、それだけを考えている。
 もう一つ、その事業をやっていくことにおいて、大学の教育とか全部かなり変わりますから、私が言ったことは、大学の本当の初めの学生が入ったときからそういうことを教えていかなきゃいけないだろうということで、文部科学省の方々にもそういう形を作ってくれということで、一応、組織で研究を5年間始めてもらったんですけれども、残念ながら途中で切れてしまったということで、そこから全部、全体的に変えていかなければ無理だということで。ともかく実用化ということが物すごく重要でございまして、それをやったということ。
【金倉主査】  ありがとうございます。
【澤田委員】  ちょっとだけよろしいですか。橋渡し研究をされた結果として非常に大きな成果が上がっているということに関しては、それは異議はないと思います。ただ、企業の立場として、海外も含めていろいろな逆風を受けている立場からしますと、成果が出るのは分かったと。ただ、なぜ国が、アカデミアがここまでやらないといけないのかという質問は必ず財務省などからは問われてくる話なので、そこに対する回答は多分少し欲しいときっと思っておられるんだろうなというのがきっとこの最初の質問なんだろうと……。
【福島TRIセンター長】  それは簡単ですよ。企業の能力がそれだけないからです。レプチンについて企業はなかなか決断できなかったし、きちんと販売されていますか?そこですよ。もうはっきりしているんだ。そういうことは、ちゃんとエビデンスを見た上で言ってもらいたい。
【澤田委員】  レプチンは導入が成立しない限り、会社として話をできるものではありませんでしたので、ここで議論すべきものではないと。
【福島TRIセンター長】  だから、そういうことは企業がやろうとしているかららだめで、アカデミアでないと患者さんは救えないんだ。企業は利潤追求だから。だから、利潤がもたらされないとなったら、そんなものは要りませんとなるに決まっているから、企業、とってくれるわけないよ。
【澤田委員】  ビジネスの議論をここでするのはいかがかと。
【岩﨑PS/PO】  その議論にしちゃうとちょっと違う話になるので。この橋渡し研究自体の価値を見ていただきたい。
【金倉主査】  福島先生、今日は、委員の先生方の御意見を聞く機会なので。
【福島TRIセンター長】  もちろんそうです。それはそうです。
【金倉主査】  disruptive innovatorとしての意見は極めて重要だとは思うんですが、委員の先生方の御意見も聞きながら。確かに橋渡し研究は重要な役割を果たしてきて多くの成果を得てきたと思うんですけれども、これから永続的に自立してやれるかということになると、先生、それは無理なんですね。
【福島TRIセンター長】  私はそうは思わない。うち、完全に自立しているから。自立してやってきているから。
【金倉主査】  それは先生のところだけですよ。
【福島TRIセンター長】  違う違う。そこのところがね……。
【金倉主査】  いや、それを先生、みんな……。
【福島TRIセンター長】  やっぱりファクツを……。
【岩﨑PS/PO】  まずこれは橋渡し研究をどのように中間評価の委員の先生方が評価されているかをまず伺いましょうよ。
【金倉主査】  聞く機会ですので。
【岩﨑PS/PO】  具体的なのばっかりになっちゃうと。
【福島TRIセンター長】  だから、今、成果は十分上がっていると言うけど……。
【岩﨑PS/PO】  だから、福島先生、ちょっと黙ってなさい。まず先生の意見を聞きましょうよ。
【福島TRIセンター長】  その成果が何かというのをきちっと提示していただかないと、評価委員の先生は分からない。成果は十分上げてきたと言ったって、財務省から、どんな成果だ、国民利益は何だ、というふうに問われるに決まっているわけだから。
【岩﨑PS/PO】  いや、そうなのか、どうなのかを中間評価の委員の先生に聞きましょうよ。その辺が足りないところとかね。
【金倉主査】  順番にお聞きしていきたいと思います。順番に、池野先生から。
【池野委員】  福島先生、弟子入りさせてください。感動しました。日本国民として誇りに思います。本当にありがとうございます。すばらしいです。僕は19年前にアメリカに移ったときに、当時、日本にこのようなシステムがなかったのを今でも記憶しています。医者は論文を書くのが全てであると。アメリカに行ってカルチャーショックを受けるわけですよね。まさに商業化しないといけないと。つまり、患者さんに使ってもらわないと意味がないので、それには商業化していかなきゃいけないんだと。
 シリコンバレーは、ラッキーなことにいろいろなエコシステムがあるので、ベンチャーを作りましょうと。企業もやはり、先ほど日本の製薬会社は弱小とおっしゃいましたけれども、それはそうですよね。やっぱりファイザーなりメルクさんに資本力でかなうわけがないわけなので、そういう意味では、なかなかベンチャーを作っても、売却先がどうなるかというのは、日本国内で完結するのは非常に難しいと思いますので、そういう意味では、やはり先生が作られてきた、アカデミアでかなりのアーリーステージでデリスクして、それである程度後半につなげていくというシステムは非常に重要だと思います。
 ただ、このプログラムには、あと、教育という一面もやっぱりありまして、スタンダードでも、我々、先ほどの、N……。
【福島TRIセンター長】  NCATS。
【池野委員】  NCATSとかで僕も教育プログラムを受けて、お金払わなくても結構学ばせてもらったりした者なんですけれども、それは多分、教育ということはなかなかお金に還元できないんですけれども、例えば何人の人間をこのプログラムで育てたのか、育った人のキャリアパス、どうなったのか。落ちぶれたのか、英雄になったのか。そういうところも含めて、これが一つの教育のアウトプットだと思いますが、それが重要。
 先ほど言いましたように、薬というのは、医療機器は上市するまで6年掛かると言われていますけれども、薬は12年とか掛かりますけれども、実際に治験を通ったものがあるのならば、それによって社会にどれだけ還元したか、一番はどれだけの患者さんが恩恵を受けたかですね。つまり、そういう患者さんにインパクト。あと、どれだけの新規雇用を生んだかと。つまり、経済的効果の指標として、雇用をどれぐらい新規に生んだかとか、どれだけの外貨を稼ぐ又は内貨を稼ぐ、そこですよね。それがやっぱり国民に説明する責任としてはすごく重要で、これは非常にシビアに多分言われると思います。
 それで、今、拠点は10か所ありますよね。これ、本当にペイするのかなというのを僕は思いまして、10か所も本当に必要なのかなと。教育という意味では必要かもしれないけれども、自立するには収入はどうやって得るんですかという話ですね。確かにTRIさんは完結して自力でできる。つまり、稼いでいるわけですよね。
【福島TRIセンター長】  稼いでいる。
【池野委員】  サービスとして稼いでいるんだと思います。恐らく大学は、サービスと、あとは、知財で、ロイヤルティで稼ぐことができるんですけれども、実際に、バーンレートというか、やっぱりこれだけの人を雇ってやったら、相当、自立していくのって、物すごい稼がなきゃいけなくて、多分カニバると思うんです。
 アメリカでも、実際、いわゆるAROでやっているのは、デュークのDCRIとハーバードのHCRIですかね、あそこは確かにペイしています、物すごい。みんな、多分そこに集中しているんですね。スタンフォードはARO持ってないです。何でかと言ったらペイしないからです。無理です。だから、そういう巨大なやつは全部、デュークとかハーバードに任せましょうというふうに割り切っているわけですね。だから、本当に日本に10か所、いわゆるペイするものが、サステナブルで独立してできるものが10か所もあって本当にできるのかなというのがすごくある。
 そうすると、人が雇えなくなるので、すごく兵糧攻めに遭うというわけです。気合さえあれば日本人は何でもできるので、気合とやっていれば何とかなるかもしれないんですけれども、だから、そういう意味で僕はそこはやっぱりこれから議論していかなきゃいけなくて、1つの、今日は問題提示として福島先生が強調いただいたことで、非常に皆さん、多分ベクトルが一致したと思うんですね。
 やはりこれから日本は、申し訳ないけれども、落ちます、このまま行ったら。それを何とかして今生きている人間たちが引込戻さなきゃいけないので、そのための一つの医療領域のこれは重要なプロジェクトで、未来永劫やっていかなきゃいけないのかなということを改めて確認させていただきました。ありがとうございます。
【金倉主査】  ありがとうございました。
 順番に、稲葉委員から。
【稲葉委員】  ありがとうございます。私はここ15年ほどベンチャーキャピタル業という仕事をやらせていただいていまして、今は5年前に立ち上げた、日米のクロスボーダーVCということで、ボストンと東京に拠点を持ってやっています。1つの戦略は、グローバルにリードポジションを取れる投資家になるということで、米国、欧州、イスラエルの案件でリード投資家としての役割を果たして、シーズAというある程度出来上がったステージで我々が投資をシンジケーションを組んでやっていく。
 もう一つは、日本のアカデミア発の企業を自分たちで作ってしまう。誰か起業家が作って、そこに投資家として入るのではなくて、最初から我々がアカデミアと一緒に会社を作るという、そういう仕事をさせていただいていまして、その立場でコメントさせていただきたいと思います。
 それで、福島先生たちがやられていたお仕事というのは、我々の仕事とちょっとタブっているところがあるんです。何かというと、要は、アカデミアのシーズを最初は誰も信じないので、信じてもらえるように手助けすることなんです。最初に新しいビジョンを先生方が研究の現場で持たれて、こういうアプローチでやっていくとこの病気が治るということを考えるわけなんですけれども、そんなの誰も信じないんですね。多分1,000人に一人とかぐらいしか信じないレベルから始まるんです。最終的にベンチャーキャピタルが投資するとか言い出すのは、多分100人に一人とか10人に一人ぐらいがイエスと言うステージだと思うんです。最終的にファーマさん、製薬企業さんがこれは導入したいと言うステージって、多分10人に5人とか10人に8人の専門家が見たときに、これは行けるという、そういうステージなんです。その間にすごいギャップがあるんですね。1,000人に一人から10人に5人はイエスと言うようなこのギャップをどうやって解消するのかというのがベンチャーキャピタルの仕事であり、TRIさんのお仕事だったんだと思うんです。
 それで、やって見せないと、人って信じないんですね。最初、「ファーマオンコロジーのデータが出ましたと。でも、それの毒性はどうなんですか」と。「毒性のデータ出ました。で、PKが」。今度は、「動物は分かったけど、ヒトはどうなんですか」という、一つ一つやってみて初めて納得するものになっていくわけなんです。ほっておくと、誰もやらないんです。先生方は多分そこを実証できないし、ベンチャーキャピタルが興味を持つステージに行くまでもまだギャップがある。そこをずっとやってこられて承認というところまで持っていかれているというのは、そういうことをアカデミアがやればできるということを見せたということがすごい意味があるんだと思うんです。誰かがやってできたことは私もできるというふうになりますので。
 あとは、よく日本で何でファーマベンチャーみたいなのが育たないのかというと、成功例がないからだってみんな言うんです。近くに成功した人がいないので、なかなか自分もやろうという気にならないと。だから、2件でも3件でも成功例を見せられたということの意義はすごく大きくて、次は、じゃ、どうやってこれを拡大していくのか、ほかの先生方もできるようにしていくのかということを進めていくということではないのかなというふうに思います。
【福島TRIセンター長】  AMEDが集計したのは、私も先ほど言ったように90件。この拠点のプロジェクトでもう30件は軽く超えてます。その中には、先ほど何回も繰り返し言ったDisruptive Innovationがあります。医療を完全に変えるものが。そこをきちっと把握しましょうということを私、申し上げている。
 そこでなぜ、例えばもっと典型的な例、神経再生のSTR01の自己骨髄間葉系幹細胞、それから、藤堂先生のヘルペスウイルス改変型は第2世代で、第1世代はアムジェンが先に上市した。それで、ようやく日本の企業は慌てた。日本の企業はみんな最初は門前払いです。そもそもクリゾチニブも日本の企業は門前払い。
【岩﨑PS/PO】  福島先生、その話になっちゃうと……。
【福島TRIセンター長】  いやいや、ポイントだからですよ。そういう話は言わなかったらだめ。
【岩﨑PS/PO】  いや、ポイントだって、先生方分かっている。
【福島TRIセンター長】  ポイントだから。当時、ここに予算投入してて大丈夫ですか、って複数の文科省の課長が言いましたよ。だけど、まかりならんと。絶対にこれをやらないと日本の明日はありませんと言い切ってやってきた。GMPを大学で、CPCをつくるなんてとんでもないのではないですか、という声もあった。そこなんですよ。まさにそこそこがポイントなんだから。そこを外しちゃだめ。何回も言っている。サイエンスなんてまだ分からないことがいっぱいあるわけ。そこで一歩先に進むと、先ほどのリバースで一気に新しい世界が開く。
【金倉主査】  分かりました、先生。個別的なことはまたどちらで……。
【福島TRIセンター長】  だから、この場できちっと重要なことは押さえておかないとだめです。
【金倉主査】  分かりました。次に進みたいと。井上委員から。
【井上委員】  山梨大学の井上と申します。私は半径5メートルで起こった極めて個人的な経験からの感想しか述べられないんですけれども、2006年に血小板上にCLEC-2という新しい受容体を英国の大学と共同で見つけまして、翌年、そのリガンドがボトプラニンというがん細胞などに発現する膜たんぱくであることを同定しました。そして、この両者が結合することでがんの血行性転移が促進されるというようなことを見出したり、また、この受容体をブロックしますと、血栓の形成が抑制されるけれども出血傾向が少ないというようなことを見つけておりまして、がんの抗転移薬や抗血栓薬として利用できるのではないかと何の知識もないところでちょっと思ったものでした。
 それで、大学の中でも特許を取ったり、あるいはいろいろな産業界の方々がいらしているところでプレゼンテーションをしたりしたんですけれども、なかなか興味を持ってくださるところはありませんでした。それで、個別の製薬企業の方にも当たってみたんですけれども、やはりこの論文が出たときから注目はしていたけれども、抗血栓薬というのは臨床研究が大変なので弊社としては手を出さないというふうなことを言われて、そのようなことが2件ぐらいありました。やはり会社は利益に結び付かなければなかなか手が出せないという、そういう仕組みになっているのだなということを強く感じました。
 そのようなときにAMEDの創薬ブースターの方でこのプロジェクトを拾っていただきまして、現在実行中でございます。ただ、そこでもやっぱり抗転移薬、抗血栓薬というアプリケーションではないのですが、今現在拾っていただいて、こういう利益を度外視した実用化研究を進めていくというのは、やはり国が主導していただかないとなかなか成り立たないのではないかと感じておりました。
 また、創薬というのは、本当にこんな地方の弱小大学の一研究者ができるものではなくて、雲の上の人がやるものだというような感覚をずっと持っておりましたが、橋渡し研究のシーズA、B、Cというものの募集が来て、そして、大学でもいろいろな知財コーディネーターとかURAの方とかそういう方々がこんな地方の弱小大学にまで配属されるようになって、この辺は私たちがやってもいいところなんだというような感慨を強く持ちまして、やはり頑張っていこうというふうに勇気をもらった次第でございます。
【金倉主査】  またAMEDの成果を見ながらまた御意見を頂きたいと思います。
 それでは、澤田委員の方から。
【澤田委員】  医療分野の実用化研究と他分野の違いといいますと、先に出ていますが、期間が極めて長いということと、早期段階では最終的な成功確率が極めて低い、この二つが多分ほかの領域と決定的に違うところだとは考えています。
 今、ほかの領域分野とも協働で仕事をすることが結構多いのですが、他分野ではある程度ひな形が出来てしまうと、そこからすぐトライアンドエラーをして、改良をどんどん加えていって市場のニーズに合わせて進化させることができる。ただ、医薬品の場合ですと、最初に物があると、製剤工夫とか、投与法の工夫とかはできても、物自体の性質を変えていくことはできないという点で、そこが結構大きな違いになっており、本当に行けそうだという確信を一定の人が持つまでに、相当ののデータ、通常は臨床におけるPOCデータが必要になってきます。
 そのデータをどういうふうに組み立てていけばいいかということを普通の研究者の先生方一人一人が御存じかというと、それも絶対御存じではないということから考えますと、やはりそれをある一定のパッケージに組み立てていくための組織というのは当然研究者側の方にないと、その研究が本当に最終的に実用化して国の役に立てるということができなくなるので、その意味でもここは絶対必要だろうと思っております。
 特に健康・医療分野に関して、企業側はどうしても患者さんとダイレクトコンタクトはできませんので、患者さんのデータあるいは患者さんの試料、そういうものを常に横に置いて研究できるのはやはりアカデミアであり、病院の先生方ということになりますので、そこの先生方の疾患に対するベースの知識なしに実は疾患研究も病因研究も、当然ながら治療法の研究も、診断法もとても研究としては進められないという事実がありますので、そこをベースとしてやはりアカデミアがきちんとできるようにするということは必要だと考えています。
 ただ、そのときに自立して稼げるようにするためには、最終的なゴールならびにそこに到達するためのクライテリアが何かという議論をきちっとできるようにしていく必要があり、そこに関しては確かに企業側もある程度御協力はできるだろうと思っておりますので、る程度分担をきちんとお互いに認識した上で、ここは企業側からのインプットが欲しい、ここはやはりアカデミアがきちんと貢献できるというようなことが動き出すと非常に良いかなと思っています。
 実際に基礎研究から臨床にどんどん進めていきますと当然ながら想定外のことも多々起きてきますので、それをフィードバックすることによってまた基礎研究に貢献できますし、また疾患研究において治療薬候補が出てきますと、実はその疾患の研究は大きく進歩するということがありますので、その意味ではやはり治療薬の開発と疾患研究というのは両方あって初めて成立するというふうに考えていますので、実用化研究をすることによって基礎研究へのフィードバックが非常に大きいと考えております。
 一方、橋渡し研究拠点に関して、10か所全てが全ての機能を持つ必要は、これは絶対ないだろうなと思っています。特に知財とかになりますと、10年前と比べますと、知財を出してもいないのに発表するような先生方はほんとにいらっしゃらなくなったんですが、知財を出してしまうと、通常1年間はその知財を強化するための期間としていろいろなデータを取っていく期間が必要なんですが、そんなことは考えないで、「もう知財出したからいいよね」とぽんと発表されてしまうと、それが公開情報になってしまって、いろいろな人がその周辺をやり始めて、強化しようと思うときには知財の強化ができなくなるというような事例も発生しています。
 そうすると、知財は成立するけれども、競合を排除できるかというと、排除はすごくしにくい状況になって、最終的な国益ということを考えると、その知財の価値は非常に低下してしまいます。知財について、海外の訴訟事例なども踏まえて本当に詳しい方もそんなに大勢おられるわけではないものですから、そういう方はやはり本当は1か所に集めて、全拠点の知財を管理してどう強化していくかみたいなことを考える方が本当は効率的なんだろうと思いますし、非臨床試験なども実際に企業ですら最近は外にほとんど出しているという状況を考えると、これもかなり限定して持ってもいいだろうなと思いますので、拠点間でいろいろなファンクションの分担みたいなことはお考えいただいても良いのではないかとは思います。
【福島TRIセンター長】  大学は一つずつが独立した法人なんです。その法人が自立してやっていくには、そこで知財管理経営が必要なのは一目瞭然です。TLOを作っても余り機能しない。なぜか。それは大学の執行部が一つ一つの知財についての当事者能力を持ってないからだ。経営者としての能力がないからですよ。
【仙波課長】  そうなってくると、86の国立大学が多いか少ないかとかそういう議論にもなってくるので、ちょっとまたそれは……。
【福島TRIセンター長】  いやいや、それとは違いますよ。地方にはすごく光るいいシーズがいっぱいある。先駆け審査指定第1号の承認取ったのは熊本大学です。拠点でも何でもない。支援してやればできる。地方にいいものがある。それも取りこぼししないようにしないといかん。
【金倉主査】  おっしゃるとおりだと。それはもう合意。
【福島TRIセンター長】  拠点だけ整備すればいいなんていうのは古い考えです。日本は地方がもう完全に疲弊しているんだから。そこの若者が全部、東京や大阪に来て、どうなるんだ、この国は。
【仙波課長】  それはまた別の機会で少し議論しましょう。
【福島TRIセンター長】  いや、そこもそういうジェネラルな大枠で考えんとだめ。グローバルにも地政学的にどうなるか。10年後なんてもうがらっと変わるから。アメリカやヨーロッパだけを見習っていたらいいなんてそんな時代はもうとっくに過去ですよ。よく考えないとだめだ、そこのところを。そういう流れの中で大学での開発というのがあるのであって、矮小化したらだめですよ、議論は。矮小化したらだめ。
【金倉主査】  最後に髙橋委員、お願いします。
【髙橋委員】  参考にまず背景を少しだけ申しますと、私は京都大学でパーキンソン病に対する細胞移植治療をやっています。御存じの方も多いかもしれませんけれども、再生医療についてはかなり国からの支援がございまして、実用化プロジェクトが、文科省と厚労省と経産省と3省に支えられながら進めてまいりました。そういう意味では、本日伺っていても恵まれていたのかなと思います。
 それから、ようやく去年治験まで行ったんですけれども、その時点で京都大学でいざ治験しましょうといったときに、もう京都大学では既に治験を受け入れる体制が整っていた。それはこの橋渡しでそういうものが整備されていたというのが本日伺ってもよく分かったので、その辺ちょうど両輪がうまく重なったというのを思います。そう思うと、今日福島先生いろいろ言われましたけれども、我々京都大学は、あれがもう当たり前というか、みんなそんな感じなので、そういう中で自分たちは育ってきたんだというのは本日実感したところであります。
 それで、再生のプロジェクトで考えると、再生が新しいというのもあるんですけれども、非常に早い段階から企業も、それから、PMDAとか、産官学が非常にまだプリミティブな状態からもうディスカッションを始めてきたので、そこまで企業を排除する必要もないのかなという気はします。
 それと、あと、実用化プロジェクトの中で実感したのは、情報というのは大事なんですね。それぞれのシーズが縦にあるんですけれども、僕たちがよく言われたのは、プロジェクト間の情報交換をすごくさせられました。あるいは、協力し合うとか、それから、企業とのいろいろなマッチングとか、そういう横のつながり、情報交換というのはすごく役に立ったかなというのがございます。そういったようなところも評価できると。
 あとは、それこそ、確かにファクトに基づいて考える、これ、意義があるかというのは、意義があるというのは当然だと思いますので、ファクトに基づいて、しかもサイエンス、それから、ビジネスも、そういった両方の面で検証していく。検証というのはちょっと言葉上目ですけれども、考えていくというのが今後大事かなと思います。
【澤田委員】  1点だけ。日本の医師主導治験のメリットとして、海外の医師主導治験は通常、企業がテコ入れをしなければ申請仕様として使えません。例えばレプチンは、NIHで21例先に医師主導でトライアルをやっており、FDAはそのデータで申請することを認めましたが、そのデータをまとめるのに実はアミリン社は1年余にわたる努力を続け、一方、京都のデータはそのまま使用できましたので、最終的には日本が最初にレプチンの承認を取得した国ということになりました。
【福島TRIセンター長】  おっしゃるとおりです。
【澤田委員】  というように、医師主導治験成績をそのまま申請に使用できるのは現在日本の特徴になっています。
【福島TRIセンター長】  だから、日本の薬機法を改正して、医師主導で企業と同じレベルでエビデンスの質を求めると。GMP、GLPも全てマンダトリーにしたというのがブレークスルーです。それは薬機法を改正して医師主導治験ができるようになったときに、当時の筆頭理事だった土井脩さんが言った。トランスレーショナルリサーチが日本を強くする切り札だと言い切った。それは目からうろこだったですね。それで、レプチンはもう全面医師主導治験でやるという。
【髙橋委員】  ですけど、医師主導をやるときでももうそこで終わりじゃなくて、ちゃんと出口も考えて、企業とちゃんといろいろなことを契約しながらやって。それで考えると、僕たちも今治験をやっているときに、iACTという京都大学病院の中の臨床研究総合センターというのがあって、そこがかなり支援してくださっているんですけれども、そこにもそれなりの対価をお支払いしてやっていますので、今日も途中でちょっとお話が出てきましたけれども、拠点が出来てそこで治験が回り出すと、ロイヤルティだけじゃなくて、治験の対価、CRO機能の対価としてお金を入れるという形で回り出すことも可能だと。
【福島TRIセンター長】  おっしゃるとおり、データセンターとして稼ぐことができるので一番オーソドックスなのは、デュークやハーバードのようなデータセンター。しかしそれは通常のCROです。CRO inアカデミア。そうじゃなくて、大学発のシーズで稼ぐことができる。しかも大学で医師主導治験をやれば、そのパッケージを企業さんに売ることができるわけです。
【池野委員】  よろしいですか、一つ。一つだけ追加で。
【金倉主査】  はい。簡単に短くお願いします。
【池野委員】  文科省に聞きたいんですけれども、オールジャパンとよく言いますけれども、海外の企業は絶対入ってきてはいけないんですか。海外の企業が欲しいと言っても、あなたは日本人ではないから出ていってくださいというふうになるんですか。
【仙波課長】  いや、ないです。
【福島TRIセンター長】  ノーノー。今はもう全部オープンですよ。
【池野委員】  それを考えた場合、そうしないと、多分絶対だめだと思う。さっきも言いましたように、何で国産だけにこだわるのかなというのがちょっと。
【福島TRIセンター長】  いやいや、国産にこだわらない。だから、グローバルなAROのネットワークを作って、パイプラインを共有して、一気に開発を進めようという構想で行っている。
【池野委員】  ですよね。その割にはマーケティングが貧弱だと思うんです。あと、特許戦略がむちゃくちゃ貧弱。
【福島TRIセンター長】  おっしゃるとおり。先生、ありがとうございます。イノベーションの次はマーケティングのフェーズなんですよ。だから、国際展開をどうするかで、日本はものすごく縮こまっているから……。
【岩﨑PS/PO】  今、池野先生がおっしゃったのは、こういうプラクティスを通じて我々が認識してきた弱点なんです。そういうところは、特許の戦略にしても、それから、マーケティング戦略、それから、グローバルに対してどう持っていくかと。これもやっぱりこういう事業を通じて研究者の先生が学んできた。基本的には私は福島先生と同意見なんですけれども、だから、やっぱりこの事業は戦略的に非常に意味がある。大学の研究者にとって、自分の研究を実用化。
 だから、この火を絶やしちゃいけないというのは私は基本的には思うんです。それをより多くの人に分かっていただく。社会として、日本の国として分かっていただくような、そういう仕組み、そういうプロセスを是非講じていただきたい。中間評価だから、こっちから余り言っちゃいけないんだけれども。
【福島TRIセンター長】  やっぱりディスカッションが大事だと思います。
【岩﨑PS/PO】  そういう思いはやっぱり強い。
【福島TRIセンター長】  ディスカッションの中から生まれるので。
【北島AMED課題評価委員】  今日久しぶりに福島さんの非常に檄を聞いて元気が僕も出ました。僕は2004年、豊島先生が委員長のがんのTRから参加させてもらっています。そのとき、福島さんの情熱をすごく感じて、ああ、橋渡しってこういうことなのかということでずっと見てきました。それから、6拠点選ぶときも参加させてもらった。
 そういうときに実はつくづく感じていたのは、日本の研究者は、自分もそうだったんですけれども、自分の技量すごいというサステイニングイノベーションしかやっていなかったんです。それが2012年モントリオールで、僕ずっとやっていた『New England Journal of Medicine』の編集委員会、そこで初めてDisruptive Innovationという議論があったんです。Disruptive Innovationというのはこんなものなのか。例えばアメリカは市場に馬車で運んでいたけど、そこにフォードが車を作った。高級車で誰も買わない。だけど、ジュニアがベルトコンベアで大量生産したらみんな買い出して、それがDisruptive Innovationとそのときに教わったんです。
 日本に帰ってきて、橋渡し事業のライフサイエンス課の若い担当者に、「こういうことがコンセプトだよ、アメリカは」と言ったら、「日本にも、ディスラプティブという言葉は使わないけれども、それと同じようなことを言っている人がいます」「誰だそれは」と言ったら、テルモの中尾社長だった、当時。ハートシート作っているじゃないですか。だから、そういうコンセプトをそのときテルモの中尾社長は言っていたと。
 僕は、橋渡し事業の中に、それから同時にAMEDの未来医療機器事業とか、そういうところにやはり日本の今後は、患者さんの手元に届いて初めてTRなりAMEDの研究が評価されるんだ、それを是非やってほしいと。そしたら、文科省の若い担当者が、「先生、私、Disruptive Innovationを財務省に、今後はこうだよ」と言ってきましたとすごくうれしそうに言ってくれたんですね。
 よくよく今そういうことが、福島さんが声を大きく言っていただいたので、いわゆる内閣府のImPACTの次のムーンショット、これのプロジェクトにもうはっきりDisruptive Innovationじゃなきゃだめだと書いてある。だから、どうやって今後は、橋渡しもそうだけど、患者さんの手元に物が、プロダクトが届くかと、ここをやっぱり集中しなきゃいけないということ。
 それから、これ、僕見ていて、医療分野の、他分野と比べてということで、比べてはいけないんですよ。もう医工産学連携、これが基本コンセプトなの。比べようがないんです。医学と工学が融合しないといいものはできないんです。これはもう僕は、MDHとMITで成果を出しているのを現実に若い頃見ていたんです。だから、やっぱり比べるんじゃなくて融合。企業もそう。工学も医学も全部融合です。だから、そういうコンセプトでTRもやらないといけない。だから、これがずっと見てフォローアップしてきた感想です。
【金倉主査】  ありがとうございました。極めてホットな議論が続きまして、議論も尽きないところでございますが、時間になりましたので、続きは、何回か行いますので、次回とさせていただきたいと思います。
 最後に、今年度末にプログラムディレクターを退任されます猿田先生、一言お願いできますでしょうか。
【猿田PD】  大変お忙しいところを私どものこのプロジェクトに本当に中間評価として御参加いただき、どうもありがとうございました。
 私の方から一言だけ一番言いたいのは、この橋渡し研究を福島先生と一緒にやってきまして、一番は、各拠点が、先生方が本当に頑張ってくださった。私が一番言いたいのは、この……。最初は神戸TRIが入りましたけれども、大学は6拠点。その後、神戸が外れて、名古屋大学が入った。それから、その後、もう少し発展させようということで、岡山大学と慶應大学が入った。そして、最後、筑波大学が入りましたけれども、各拠点が本当に頑張ってくれた。
 それで、大切なこともう一つ。私、12年間全部の拠点に毎年回って歩きまして一番感じましたことは、やっぱり大学というところは、先生のところと少し違うところなんですね。やっぱり教育ということと……、もちろん研究が1番です。研究があって、診療があって、教育と、この三つをいかにうまくやっていかなきゃいけない、どうしても大学は。
 それを各拠点へ行って見たときに、それぞれこのいわゆる橋渡しをどのぐらい考えているか。各大学はみんな関心の度が違いました。今見ていても、非常に強いところがある。例を出しちゃいけませんけれども、大阪大学は一番早くから一番よくやった。そういう形でやってくれたということで、各大学によって差がありますから、そのところもよく見ていただいて、常に研究と臨床と教育と、この三つが合わさって進んでいかないといけない。
 私がお願いしたいのは、このプロジェクト、私はやっぱり、最初受けた12年前から比べて本当に、特に北島先生は私と実はずっと同じなんです。一緒にずっとやって、私のときにも病院長やってもらっていて、その後、医学部長受けていただいて、ずっと一緒にやっていただいて、実は評価委員会も、豊島先生のときに、もう体が弱くなったからといって、今度は北島先生にずっと今までもやっていただいたんです。北島先生は非常によく状況が分かっております。そういった形で各大学のいかに頑張り方ということを知っていただいて、そして伸ばしていった。
 それからもう一つ、私は、やはり全国的に厚労省、文部科学省両方合わせなきゃいけないということで、全国的なことを考えて一応拠点を選んでいる。そのときにどうしても琉球は選べなかったんですね。そこもやっぱり考えていただいて、やっぱりオールジャパンで行ければ、できるだけ励ましてやっていただくと。そのうちの10拠点がずっとやっていくかどうかって、今の10拠点がやっていくかどうか、これはもう皆様方に決めていただくことですね。ただ、そういうことだけ知っておいていただきたい。
 本当にどうもありがとうございました。(拍手)
【金倉主査】  猿田先生、感銘いたしました。これまで長らくこの事業を牽引していただき、大変ありがとうございました。先生のお気持ちもこの任務をしっかり受け止めながら、引き継ぎながら、本委員会を進めていきたいと思います。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
 本日予定しておりました議題は以上でございますが、議題4として、事務局より連絡事項についての説明をお願いします。
【砂専門官】  本日は長時間にわたりまして大変有益な御議論をいただきまして、誠にありがとうございます。事務局よりお礼を申し上げます。
 また、猿田先生、これまで多大な御尽力を賜りまして、誠にありがとうございました。事務局と致しましても、しっかりと本事業を進めてまいりたいと思います。
 さて、本日の資料につきましては、会議終了後、ホームページに掲載いたします。また、本日の議事録につきましても、事務局にて案を作成しまして、委員の皆様にお諮りしまして、主査の確認を経た後にホームページで公開いたします。
 次回第2回は、4月16日14時から16時に文部科学省にて行う予定としております。委員の皆様におかれましては、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 以上です。
【金倉主査】  それでは、本日の中間評価委員会はこれで閉会させていただきます。どうもありがとうございました。


―― 了 ――


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