特定高速電子計算機施設(スーパーコンピュータ「京」)に係る評価委員会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成28年3月9日(水曜日)13時00分~18時00分

2.場所

フクラシア東京ステーション6G会議室

3.出席者

委員

(委員)
髙井主査,伊藤委員,田中委員,辻委員,西島委員,福山委員,藤井委員,横山委員,吉田委員
(説明者)
理化学研究所計算科学研究機構(AICS) 平尾機構長,宇川副機構長,庄司運用部門長
高度情報科学技術研究機構(RIST) 関理事長,平山センター長
HPCI戦略プログラム推進委員会 土居プログラムマネージャー
HPCI戦略プログラム 柳田分野1統括責任者,常行分野2統括責任者,今脇分野3統括責任者,加藤分野4統括責任者,柴田分野5副拠点長

文部科学省

生川審議官,榎本参事官,工藤計算科学技術推進室長,阿部参事官補佐

4.議事要旨

事務局より資料0-1,資料0-2,資料0-3に基づき説明。
「京」の総合的な中間検証に係る実施要領(案)について,修正案にて決定。
(1)「京」の運営について
事務局より資料1-1,資料1-4に基づき説明。続いて,理化学研究所より資料1-2に基づき説明。続いてRISTより資料1-3に基づき説明。質疑応答は以下の通り。

【西島委員】  大変コンパクトに御回答いただいたんですけど,「京」でしかできないことについてということなんですが,全くその通りだと思うんですね。ここにいらっしゃる方は,私も含めて,スパコンの有用性についてはある程度分かっているし,こういう資料を読んでいるうちに,だんだん頭がそっちの方に行ってしまうので,いいんですけれども。一般の方がもし捉えたら,「京」でしかできないようなことは,それは当然だと感じるでしょう。問題は,それの波及効果なり恩恵というものがもう少し分かりやすく記載すべきとの印象です。
例えば,UT-Heartで心臓が動くことは大変すばらしい。それでは,以前にご支援したファーストプログラムでは,小児科の心臓の奇形とか,そういうときは,過去の非常に少ない事例を参照する,たとえば手術時の血液の流れとか,その情報を持って,執刀前に頭の中でシミュレーションしてくるという。そういう外科医とかの感想を踏まえて,臨床現場に対して非常に貢献するということをもっと強調すべきでしょう。もしそうであるならば,「京」でしかできないことについて,なるほど,臨床現場でそういう声が集まってきたならば,それを聞くと,「京」でしかできなかったことで患者の命を救う要因となったということで,その意義は高く評価されるであろう。そこのところを示さないと,国民はなかなか分かりづらいんじゃないかなと。その点はいかがでしょうか。
【平尾機構長】  今,例が出たUT-Heartとか,ヒトの心臓のシミュレータでございますが,これまでは1心拍するのに1年ぐらいかかっていたものが,「京」が出てきて,1心拍1日で十分できるようになって,精緻な計算をしますと,どこを少し近似してもいいかということが分かってきて,今,それぞれの患者さんのヒトの心臓をある意味で再現できるようになっています。ですから,もし心臓に何か問題がある患者さんがあったら,それがどこに問題があるのか。これはUT-Heartというのは,細胞レベルから順次積み上げてきたものですので,全部分かるようになっています。
それから,先ほどお話のありました外科手術,特にお子さんの心疾患,特に心臓に生まれつき小さな穴が開いているというお子さんなんかの手術をするのに,UT-Heartを使って,いろんなオプションがあったときに,どのオプションを選べば一番いいかと。それは患者さんに負担をかけるだけじゃなくて,これから先,その患者さんは,実際は2歳とか3歳というようなお子さんですので,長い年月生きていかれるので,そのときに最も負担の小さいのはどれかということも分かるようになっています。既にもう3例成功例がありますし,4例目,5例目も今やっています。
それから,今のUT-Heartは,薬の副作用,特に不整脈に対して非常に有効であるということが分かってまいりまして,これは今のところは分かっているものしかやっていませんけれども,これまで問題があるような,例えば,不整脈を起こすような薬だと,UT-Heartを使いますと,それが本当にきれいに出てまいります。ですから,これから先,そういう形でも使われていくでしょうし,いろんな形で医療機器としても使われるだろうと思いますし,私たちもそういうことをできるだけ国民に訴えて,「京」によってこういうことができるようになりました,こういうことがありますよということをお話ししていきたいと思っています。
これは単にUT-Heartだけであって,それと同じようなことはたくさんあります。たくさんありますが,今日は時間がありませんので,お話しできませんけれども,いろんなところに成果が上がっているということです。
【西島委員】  多分,そうだと思うんです。そういうふうにして,つまり,国民に分かりやすくして,人の生命を救うとか,臨床現場で役立っていることを具体的に明示すべきでしょう。ただし,スパコン「京」ではまだまだ能力が足りない,スピード感がない,だから,救える者を救えなかったこともある。それで,例えば,エクサに向かっていくべきであると。こういう説明なら分かりやすいんですが,「京」になったから今までのものが良くなったというのは,もう当然なんでね。
創薬もそうだと思うんです。あまり創薬を僕が言うと,専門過ぎちゃって,言い方が少し難しいんですが。私自身は合成だったんですけれども,学位をコンピュータ支援で取ったんですが,コンピュータで標的タンパク質の3次元構造を見たとき,なるほどすごいと思って,自分で画面を動かしてみて,ここに活性ポケットがあるのかと感動した。その体験が新鮮でした。当社クラスの中堅会社でコンピュータ支援が進んだのは,要するに,合成現場からコンピュータ支援は価値ありと言ったことが良かったと記憶しています。だから,そういう声,つまり,メディシナルケミストがスパコン京をどう捉えているか。本当に創薬の加速化だったとか。つまり,今まで,ドッキングスタディが3日かかったのが3時間でできるというのを,計算機の方じゃなくて,計算機の専門じゃないメディシナルケミスト,薬学の合成の分野の人が,なるほど,そういうコンピュータ支援によるドラックデザインを実践してみたいとか、実践して役だったとか。そういう声を集めてきて言えば,もっと説得性がある。
そういう方向から持っていかないと,これはなかなか1,300億を投じるのに,国民がイエスと言わない。ここにいる方は皆さん,はっきり言えば,ほとんど応援団みたいな方ですが。結論から言っちゃうと。
【福山委員】  今の西島さんのコメント,御質問と関係することになるんだろうと思うんですけど。要するに,そういう研究の成果,知的なシーズ,それと社会のニーズ,それがうまく対応してサイクルが回る。それで,研究も,新しい,いいテーマが見つかる,と同時に社会が納得するという。このサイクルがどのぐらいできているかという,そういう観点で。前回お聞きして,今日の御説明でも理解できないので,繰り返しになるかもしれませんけど。要するに,この大きな施設を,今のような視点で有効にマネージしていくという,その仕組みがどこにあるかがなかなか見えない。あるとすれば,HPCIコンソーシアムだろうと。そこには全てが入っているはず。それの成り立ちがよく分からない。成り立ちと,そこでどういうことが議論されて,どういう研究戦略策定のマネジメントがされているか,それがうまくよく回れば,今のような西島さんのようなコメントは日常的にそこで議論されて,研究テーマのフォーカシングもできる。
コンソーシアムの中の運営の仕方がどうなっているのか。例えば,さっき平尾さんの御説明で,研究者の負担軽減云々とあって,利用者とのミーティングって,これ,いろいろあるんだけれども,これはどなたが,どういう権限で。
【工藤計算科学技術推進室長】  すみません,国がコンソーシアムについて答えるのが正しいかどうかというのはあるんですけれども。今回,参考資料を付けさせていただいておりまして,挟んでいただいている資料,参考資料1-2に,スーパーコンピュータ「京」の運用の体制図というのを配付させていただいております。
今,福山先生から御質問いただいたのは,コンソーシアム内部での運用体系のお話になるので,その点については,また次回以降の宿題事項にさせていただければと思いますが。
実際,コンソーシアムが,我々文科省とか,それから,運営機関である理研に対して,どういう形でものを持ってくるかというのを,この体制図で,参考資料1-2の中にございます。
コンソーシアムの中の運用そのものは,またコンソーシアムの中の組織がございまして,実は,今ここにいらっしゃる中にも何人か関係者がいらっしゃるので,その点については,また整理して御紹介させていただきたいというのは,先ほど申し上げたばかりなんですけれども。
基本的に,ユーザのニーズについては,まず有望なユーザ団体であるところのHPCIコンソーシアム,それから,産業界の主たる団体であるところのスーパーコンピューティング技術産業応用協議会,それから,製薬協,ほかにも自動車工業会,こういった団体がございます。こういったところからまとまった意見が,基本は文部科学省に頂き,そのほかにも,理研,それから,RISTさんにも提言が頂けるという仕組みになっております。
現実に,理研さんとRISTさんとの間においては,連携推進会議というのを年に4回ほど開催してございまして,この中で,それぞれの役割の中のより良い分担であるとか,連携であるとか,こういったものについて話合いが行われています。
実際,今後,このHPCIコンソーシアムから頂いた意見につきましては,この委員会とは別に,HPCI計画推進委員会,今日はそこの委員長である土居先生もいらしているんですけれども,HPCI計画推進委員会において,このHPCIコンソーシアム等から頂いた意見を踏まえて,次の政策等を議論させていただいていると,そういうものでございます。
【阿部参事官補佐】  1つ補足させてください。資料1-4,「京」の運営に係る質問事項及び回答等一覧という資料1-4の5ページ目を御覧ください。
前回もコンソーシアムの関係で御質問いただいていたことに対する回答が資料1-4でございます。
HPCIはスーパーコンピュータを利用する機関等からなるコンソーシアムが主導して構築し,世界最高水準の成果創出と成果の社会還元を推進する基盤となることをその趣旨としておりまして,HPCIコンソーシアムにおいては,HPCIの整備の在り方を議論する中で,特定先端大型研究施設,「京」のことですけれども,その共用の促進についても検討を重ね,その検討結果を踏まえまして,特定先端大型研究施設の共用に関する法律というものができておりまして,その法律の第4条第1項のところに規定がございまして,そこに,この共用施設を推進するに当たっての基本的な方針,これは大臣決定になるものですが,そういったものを定めております。この中で基本的な方向としまして,施設設置者であります理化学研究所と登録機関(RIST)は,HPCIコンソーシアムと連携・協力し,一体となって役割を果たすことが重要とされております。
HPCIコンソーシアムにおきましては,毎年,文部科学省に対して提言を提出いただいておりまして,こうした提言を踏まえながら,「京」の運営の推進といったことを図っているということが,今の現状と仕組みの大きな枠組みでございます。
【藤井委員】  HPCIコンソーシアム理事長より一言だけ。
まず,コンソーシアム,国から予算を頂いているわけではありません。まず,そこを御理解ください。
ボトムアップで公募して,応募されたアプリというか,利用者側の機関代表,それから,システムを提供する側の機関代表,これらが集まってできている組織です。会員の会費によって運営されています。おおよそ現在50程度。アソシエートというのも含めて,50程度の会員からなっていて,先ほど御説明があったように,文科省と,例えば,利用の割合はこういうのが望ましいとか,いろいろなコメントを出させていただいています。
ただ,福山先生がさっき言われた,大きな意味でのサイクルを回すというのは,多分,これからきちっと考えていかなければいけない宿題で,理研さんも,多分,RISTさんも,私たちも,やっていかなければいけないテーマだと思います。とてもいいことを言っていただいたと思います。なかなか時間がなくて,そこまで議論できてないんですけど。
【福山委員】  ちょっと補足いいですか。
大分事情が分かりました。確かに,重要なことがすぐできるとは思わないんですけど,そういう方向に向かって動いていると。
ですけど,先ほどから,前回もそうですけど,この組織的な形を見ると,連携推進会議というのは,AICSとRISTと5戦略機関に閉じているように見える。ユーザはもっといろいろある。そのニーズというか,活動が,どうやって全体でぐるぐる回るかと見たとき,これ,何か切れ目が入っているように見えてしょうがない。本当の現場のアクティビティとは別にグルーピングがされているというふうに,素人には見えてしまうんですが,それは誤解でしょうかね。
【髙井主査】  なかなか答えが難しいかと思うんですけれども。参考資料1-2というのが,非常に全体像が分かりやすく1枚にまとまっていると思うんですけれども。一番下に,利用者の幅広い層があって,そこからいろんな意見,要望が上がってきますけれども,それをHPCIコンソーシアムという形で拾うという形になるんですね。
【藤井委員】  もちろん,直接に拾われているところもあると思いますが。
【髙井主査】  ええ,あります。そこで,いろんな提言という形で具体的に上がっていって,それを踏まえて,連携推進会議が動く。その中で具体的には,こういう方向に行きましょうということが決まりますと,2つの実施機関で,RISTとAICSで動いていくという,そういう大きな枠組みになっているということですよね。
それで,本委員会の評価の対象はというと,このポンチ絵全体ではなくて,連携推進会議の下にあります理化学研究所とRISTが実際に「京」の運用という観点で,きっちり方針に従って動いているかどうかという,その観点であって,もともとの大枠がどうであったかということまで発展してしまうと,ちょっとビッグピクチャーになり過ぎるかなと思いますので,その点に少し絞った形で議論が進めればと思います。よろしいでしょうか。
それでは,ほかに御意見等,御質問,どうぞ。
【吉田委員】  今の成果評価のところで,少し重ねての質問なんですけれども。よく事業仕分とか行政事業レビューでも議論になりましたけれども,いわゆるステレオタイプ的な質問とか批判があるんですね。産業に役立っているかどうか,それから,経済効果はどうなんだ,それを定量的に測定できるのかと。それは1つの視点ではあるけれども,それだけで成果評価にはならないと思っています。特にこういう科学研究分野では,別のインディケータが要るだろうと。ただ,なかなかそれが,別に文科省に限らずなんですが,各省庁の研究分野のレビューをする中で,具体的なインディケータが今のところないんですね。例えば,公共性とか社会性,それから,学術的なインパクトとか,そういう大きさを測るものなり,希少性を測るものというのはなかなか出てきていないということなんです。
そういう前提の下での今の福山先生のお話なんですが,多分,我々,ビジネスの世界ではマーケットインと言うんですけれども,市場のニーズに応じて我々がデベロップをしているということなんですが。具体的ニーズがどういうものがあって,それに対してこれだけ「京」が必要なんだ,若しくは,ポスト「京」が必要なんだというところの説明ができれば,実は成果評価に近い、必要性の説明にはなるのだろうと思うのです。。そのニーズに対して,失敗もあるかもしれないけれども,先ほど言ったような医学分野やシミュレーション分野で成果が出るわけです。つまり、科学研究の場合は,もうニーズの把握の時点である程度、成果なり、事業効果が見えるわけですよね。だから,京を利用した研究課題の募集をした段階で,こういうニーズがたくさんあるということがわかれば、それは京の開発成果であると言えるのではないかと考えます。その応募案件をどういう基準でセレクトして,こういう案件で利用したという情報の発信ができれば,京の必要性、効果を示すものとして、非常に重要な指標になるんだろうと思います。
だから,やはりニーズインの開発であるというところを前面に出して,理解を求めていくということが大事なんですね。実際に計算機を動かして,その後の結果,産業化につながったというのは非常にめでたしなんですが,そこが全てではない。まずニーズのところで,必要性があるということをしっかり打ち出す必要があるんだろうと思っています。
国民は,こういう研究のために,こういうツールが要るんだということは,ある程度は理解できるはずなんですね。もちろん,専門の計算分野だけのものを我々がどれだけ理解できるかといったら別ですけれども。ただ,それでも,こういう学術研究のためにこれだけのツールが必要なんだというところはしっかり出さないといけないと思っています。これは,この「京」のとき,初めてという事もあったのかもしれないけれども,ポスト「京」に関しては,是非,その部分を先に先行して打ち出して,当然,「京」の評価も含めて,それを上乗せして,こういうニーズがあるということを出された方がいいんじゃないかと思っています。
それから,もう一つ,有償化に関して回答が書いてあるんですが,若干疑問なのは,アンケート結果にも少し載っていましたけど,今のニーズとも関連するんですけど,全てを有償化していいのかどうかというのが1つ疑問と,もう一つは,計算規模,容量が大きいほど値段が高くなるというのは,「京」の本来目的からすると逆行するんじゃないかと。要するに,「京」でないといけないことをやるためには,お金がたくさん要るということになるわけですよね。もちろん,コストパフォーマンスの話と,もう一つは,運用側のコストに少しでも収入をということだとは思うんですが,できるだけ「京」の本来目的を阻害しないような形で,定額化みたいな意見も出ていましたけれども,少し有償化の方法に関しては考えていただきたい。
特に産業界からの利用ということになると,今,産業界のアンケート結果を見ると,よほどの大規模計算でない限り,ほかでできますよという回答が中心なんですが。では,いざとなると,すごい資金がかかるということになると,やっぱり敬遠しちゃうということになるので,そこはうまく阻害要因にならないような有償化を考えてほしいと考えています。
【工藤計算科学技術推進室長】  先にマーケットインのお話を伺いました。我々も,ポスト「京」の話になると,この委員会の本来のスコープから若干外れてしまうんですけれども,ポスト「京」を始めるに当たり,どういったことを行うのが必要かということについては,文科省の中で議論いたしまして,委員会を作って議論をして,その中で,9つの重点課題と4つの萌芽的課題という,こういうものを設定……。
【吉田委員】  文科省の中だけで。
【工藤計算科学技術推進室長】  いや,文科省の中だけというより,有識者の委員を集めまして,議論させていただきました。そのときに,それがどこまで国民全体の声を反映したものかというのは,多少そういう面はございますけれども,少なくとも我々として,この分野について非常に造詣の深い方々に集まっていただきまして,議論を深めまして,その際に,今後必要になるだろうと思われる研究内容と,これは社会にインパクトがあるであろうということは既にまとめて御紹介させていただき,それに応える形でのアプリケーション開発というのを重点課題として採用しています。
【吉田委員】  そういう,レビューのときも,その話は,それで,資料も出してもらったんですが,もう一つ説得力がないですよね。こういうニーズがありますというのは,一般的には分かるんだけど,だから「京」がという,ポスト「京」がというところ,飛び過ぎなんで,そこをもうちょっと分かりやすく,今の「京」だとこうなんだけども,ポスト「京」だとこうなんだというところをもっと分かりやすくやらないと,なかなか理解は得られない。
分かりやすくというのは,単純にポンチ絵にすればいいという話ではなくて,ニーズの必要性がある。そのためには,こういうことで今困っているので,これをソリューションするためにこいつが必要ですよって,2ステップ,3ステップ踏んだものにしないと,多分,あの説明では納得できないんじゃないですかね。
【工藤計算科学技術推進室長】  ありがとうございます。
【平尾機構長】  よろしいですか。実は,「京」にしろ,ポスト「京」にしろ,サイエンスドリブンのシステムなんですね。御存じのように,スーパーコンピュータというのは,ある特定の分野ではなくて,あらゆる分野に実は使えるものです。「京」で科学技術の基盤技術としての地位を獲得したんですが,ポスト「京」では,もっと,それだけではなくて,社会の基盤技術として使えるだろうという形で,ポスト「京」を開発するときに,「京」のときもそうですが,2年間,フィージビリティスタディをやりました。これは全国の主に若手の方に,いろんな分野の方に集まっていただいて,例えば,5年後,10年後に日本が抱える社会的な課題,科学的課題はどこにあるのかというようなところで,実は2年間かけて議論していただいて,その中から抽出されたものが,実は先ほど出てきた小宮山委員会というところで,こういう課題を重点課題としてやりましょうという形の,トップダウン的な課題設定になっているわけですね。
ですから,我々としては,十分そういうニーズ,単に大学だけ,アカデミアだけではなくて,産業界も含めたところのニーズを拾い上げて,そして,これは確かにこれからの社会にとってインパクトのある課題であるという形で拾い上げて,それをやろうとしているところでございます。それがちょっと宣伝が足りないと言われれば,そうかもしれませんが。
【吉田委員】  余り産業界ばかり意識されても困るなと思っていて,もう少しアカデミアの分野でも,胸を張って,こういうニーズがあると。そこをいかに分かりやすく言えるかどうかが勝負なんですよ。産業界産業界とおっしゃって,どうしてもレビューのときも,資料がそっちに特化しちゃうんですよ。それだと,実は,それが理解を得られると思っていらっしゃると思うんですが,大臣もああいう発言をされていましたしね。そうなんでしょうけど,そうじゃなくて,アカデミアの分野でこういう研究に挑んでいて,そのツールの一つとして,これが加速するんだというところをいかに国民に分からせるかって,結構勝負どころだと思っているんですね。産業利用の方は,当然そのままで非常に分かりやすい話になるんですけど,もう少しアカデミアの分野の方に力を入れて,分かりやすくしていただきたいというふうには思います。
【平尾機構長】  分かりました。そのこと,十分気を付けてやりたいと思うんですが。
今,スパコンの利用を世界の潮流で見ますと,例えば,トップ500という,トップのマシンから500位までのスパコンがどの国にあるか,あるいは,どういうところで使われているかというのを見たときに,半数以上が,実は企業で使われているんですよ。ところが,日本は,40台近くトップ500にエントリーされていますけれども,多分,数台しか産業界は持っていないです。日本は,そういう意味では,スパコンの産業利用というのは若干遅れ気味なんです。これは国際競争力を付ける,あるいは高めるという意味でもゆゆしきことで,我々はアカデミアの科学的な上げるために,もちろんスパコンを活用しますけれども,同時に,もう少し日本の産業界,スパコンに目を向けていただいて,使っていただくのもいいんじゃないかという形で,そういう産業界でのスパコン利用の申請がもっと活発になるように,いろんな形でやっているというところでございます。
【吉田委員】  日本の産業界,別に私が代表しているわけじゃないですけど,研究開発の分野に関しては,やはり縮み思考で来て,非常に後れを取っているという実感はしています。ただ,やはり産業分野であっても,基礎研究の部分というのは非常に重要で,そこの部分での遅れというのが結構致命傷になっているんですね。だから,多分,今回のニーズも,そういったものが多いんです。
ただ,やはり周りの批判に対して,どうしても分かりやすい,車のデザインに使いましたとか,そういうものになっちゃうとは思うんですが,そこも意識して,そうじゃなくて,もっと基礎研究分野でインパクトのあるものがあるんだと。そこで日本が後れを取っているということも含めて,訴えられたらいいかなと思います。
【伊藤委員】  スーパーコンピューティング技術産業応用協議会の伊藤でございます。
いつもお世話になっておりますが,平尾機構長がお話になった「京」の共用の継続のところ,ここのところは非常に重要だと考えておりまして,「京」と情報基盤センターのセンターマシンというのは,設置の根拠となる法律が違ってございますので,いかにシームレスにそちらの方に,一時的にしろ,シフトできるかということはすごく重要だと我々は考えております。それこそ,産業界としては,いわゆる基盤技術,あるいは基礎といったところに対して,アカデミックなアウトプットに対しても非常に期待するところでございますが,産業構造全体としてコンピュータ活用にシフトしていく。製造業であれば,なるべく試作回数を減らすというのは,これは至上命令でございまして,そっちの方に進みたい。
となると,この機に,RISTさんの説明で,資料1-3の18ページに,「京」及びHPCIの提供可能資源量というグラフがございまして,確実に,今の「京」で持っているような資源であれば,基盤センターに分配しても十分だということになってくるわけですね。ポスト「京」は,またここから何十倍だ,100倍ということになると思うんですが。そうなると,各地域において,産業界がこの基盤センターのものを十分に活用していくと。そうすると,総量でもって計算資源を活用していっているんだなという形が,1つは産業構造というものを強化していくということになるのではないかと思っております。よろしくお願いいたします。
【髙井主査】  どうぞ。
【横山委員】   先ほど,国民にいかに理解していただくかという話において,アカデミアの実績を,あるいは,ニーズをもっと打ち出すべきだという御発言がございました。私もこれに非常に強く賛同しております。と言いますのは,この数年,私の方は大型サイエンス,いろんな分野に関わっておりますものですから,私自身の社会と科学の研究分野として,国民がどういう観点を気にしているかという調査研究を行いました。その結果,幾つかの項目を調査したんですが,最も国民が気にするのは,研究者合意であるという結果が出ました。要するに,研究者の間で,これが最も今のサイエンスで重要であるということが,国民も最も支持するポイントであるということが分かっております。
反対に,6項目ほど調べているんですが,国民の支援というポイントについては,国民自身が一番評価点を低くつけております。これは,国民自身が,もちろん自分たちの声を聞いてほしい,自分たちの税金を使っているんだからちゃんとしてほしいという気持ちはあるにしても,科学という専門性の高いものを進めていただく上において,国民自身が専門家の判断に一定度委ねざるを得ないところを,信頼という関係性を持って支援しているという形がある程度見えているということを示していると思います。
もちろん,産業界の活用は非常に重要ですし,広く支援を頂くにおいては,政治家の皆さんにもしっかりと理解をしていただかなければいけないとは思うんですけれども,学術界として,非常に成果の高いものを,出しているんだということをまず第一に大事にしていただくことが,国民にとっても非常に重要だと思います。
この数年の御活動を拝見しておりまして,様々に広報活動を展開されて,こんなような本も出ると。黒ラブ教授という芸人さんが中に入って,この手の本としては,もう格段にやわらかい,面白い本になっているかと思います。こういう取組が,これまで多分,ほかではなかなかなかったと思います。HPCIのコンソーシアムができて初めてできたような活動だと思いますので,やっぱりこういう活動をどんどんと伸ばしていっていただいて,そして,学術成果が胸を張れるというアピールをしていくと良いと思います。国民自身は,例えば,ニュートリノでノーベル賞が出ましたというときに,100億円何に使っていたんだなんていうことは申しません。数倍スケールが違うかもしれませんけれども,やはり日本は,基礎科学や純粋科学の尊さを感じ非常に応援する雰囲気を持っていると感じております。研究者はそこに甘えては決していけないと思いますけれども,高いレベルの成果をだしそれを広報していくことが重要であると思っております。
以上です。
【髙井主査】  その他,どうぞ。
【田中委員】  御説明にはなかったのですが,資料1-2の13ページに,待ち時間を減らすなど運用の工夫の例があるということで,これは「京」コンピュータを効率よく使って,その能力を最大的に引き出すと。そういう意味では,持っているノード全てが100%動くということが望ましいわけですよね。実際,いろいろと工夫されている中で,この絵があるんですけれども,大きなジョブが終わった後は,中くらいのジョブで埋めていく。空いているところを埋めていく。小さなジョブで,更に小さなところを埋めていく。そうされるだろうと思うんですね。
そうしますと,どうしても使えない領域というのが出てきて,これは,フラグメンテーションが起こるわけですよね。そのフラグメンテーションが,どうしてもジョブの充填率を下げてしまうという。そういう意味では,このジョブの充填率というのは,どれぐらいの割合に今なっているんでしょうか。
【庄司運用技術部門長】  多分,前回の資料にお示ししたんですけれども。年度ごとで平均すると,大体75%動くぐらい。ピークで見ると,90%以上のときもございます。月に1回,大規模なジョブが流れる,3日間あるんですが,それを除くと,大体80%ぐらいで。
【田中委員】  このジョブ充填率80%,平均だということなんですけれども,先ほどの「京」の稼働率というんですか,90%ですという御報告だったんですが。それは,このジョブ充填率というのは,かかった数字なんでしょうか,それとも,計画運転時間に対して,実運転時間の割り算になっているんでしょうか。どちら?
【庄司運用技術部門長】  そういう意味で言うと,かかってない方です。
【田中委員】  かかってないんですね。分かりました。
【髙井主査】  ほかに何か御意見等ございますか。
【辻委員】  AICSさんの説明資料の中で,電力に関する御説明があったんですけれども,電力の方に関して申しますと,結局,使えば使うほど電力は使われる,なおかつ,電気代に左右されるというところで,こちらの方のスライドの6ですとか7ですとかのところには,電気料金,予算額として記載がされているんですけれども,願わくは,電気の使用量,使用した実際のボリュームと,それから,それが成り行きでやっていたらこうなるんだけれども,それに対して,こういう工夫を今施しているから,例えば,電力が下がっているとか,いろいろ工夫をされているというような,そういう御説明を頂けると,恐らく,いろいろと御苦労されながら運営されているんだなというのが非常に分かるのではないかなと感じました。
以上でございます。
【平尾機構長】  「京」は,1日24時間,1年365日,フルに動いております。全ノードが動いているわけですね。それで,大体電気としては,14から16メガワットというのをコンスタントで使っております。ただ,機構の方は,コジェネシステムというので,ガスタービンで電気を発生する,そういう作り出す,そういうものを使っておりますので,電気代とガス代をうまくコンビネーションを取りながら,最も経費が少なくて済むようにという形で工夫をしながら実際に運転しているというところでございます。
いつもコンスタントに使っておりますので,朝昼晩,もう本当にコンスタントに使っていますので,そういう意味では,ここを少し削ったらいいというようなことはなかなかなくて,いつもジョブが四六時中流れていますので,電気代もそれだけかかるということでございます。
【庄司運用技術部門長】  少し補足させていただきます。
資料1-2の6ページの資料で,一番下にユーティリティ利用料45%増加とありますが,右側に削減努力として4つほどございます。これ,具体的にちょっと数字を御紹介したいと思うんですけれども。
大体電気とガスで,28年度で30億近くになってございます。それに対して,電気とコージェネレーションシステムによるガス発電の効率的な運転というのは,ガスの方が相対的に高くなってきたことを受けて,少し電気の方にシフトしたという意味なんですけれども,これが大体年間7,000万ぐらい,それぐらいのボリュームです。
2番目の空調設備の最適化を行ったんですが,これで大体年間1億とか,あと,3番目の電力超過の話は,契約電力を超えたとき,ペナルティがかかるんですが,これ,超過したケースで言うと,大体年度当たり400万ぐらい,それが抑止できましたということです。
あと,利用料収入の話については,今,手元にございませんので,また改めてと思います。
以上です。
【髙井主査】  そろそろ時間なので,最後に。
【福山委員】  これほど大きな予算を使って,国税を使ってオペレートする。だけど,同時に先端科学の研究の施設。そのときに,産業利用云々ということが今日もいろいろ議論になりました。産業利用ということと,基礎科学の先端研究というのを,しばしば切れ目を入れて別のアクションだと議論されることが多いんですけど,それは基本的に適切ではなくて,現場のニーズにある背後の非常に重要なサイエンティフィックなテーマ,これは絶えずある。だから,それを区別するのは適切じゃない。絶えず同じウエートで,どういう切り口で研究しているかということで,いいことをやっているかどうか,それに尽きている。
産業利用というのは,そういう意味で,基礎科学の先端と同じもの,そういう意識,そういう視点で,インダストリーの現場から重要な科学的なテーマを引っ張り出すようなスキームがあるかどうかということがずっと前回から気になって,いろいろ言葉を換えて御質問させていただいた。つまり,そういう情報,相互理解,相互の刺激し合うスキームが,この大きな組織の中に組み込まれているかどうかというのは,これからのこの施設の活動,研究の活動の先端であると同時に,社会からの認知度の大きさ,それが区別なく進むかどうかという決め手になると思うので,そのスキームがきちっと組織の運営に,マネジメントの体制に入っているという,それがやっぱりこれから,特にポスト「京」を議論するときには,それは避けられないだろうと。
繰り返しになりますけど,応用と基礎というのに区別はない。応用の先端は基礎科学の先端だと。少なくとも物質材料はそうです。J-PARC,SPring-8で,元素戦略で具体的に研究展開されているのは,まさにそれが行われている。この「京」でも,是非。
【平尾機構長】  この後,各戦略分野の方が成果を御報告いただけると思うんですが,各戦略分野の方のは,もちろん,そういう区別なしに,産学連携等も含めて,産業界からのニーズも自然に入るような形で最先端のことをやっていると。
我々,「京」を使っていただくときのポリシーとしては,少なくともその課題が,サイエンティフィックにエクセレンスがあるかどうかということ,それから,社会に対してどんなインパクトがあるかということ,それから,もちろん,「京」という非常に大規模な並列マシンですので,そういう並列マシンをちゃんと使わないといけない,あるいは,「京」を使わないといけないような課題なのか,そういう観点でいつもやっているわけですね。そこには,ある意味では,サイエンスの最先端と,それから,産業界の最先端,あるいは,産業界のニーズというのは区別はなく,そういう観点で,さっき言った3つの観点で選んでいるということですので,なるべくそれは通していきたいと私も思っております。
【土居プログラムマネージャー】
「京」のときにも,福山先生,御記憶かな,矢川委員会ができて,それで,この先,我が国として,どういうようなことをやるべきであるか,やった方がいいというようなテーマをずっと広くあげつらっていただいた上で,絞り絞り込んで5分野にしたのが戦略プログラムなんです。残り半分は,これはボトムアップの,RISTで管理していただいているテーマが出てくるんですね。ですから,そちらに関しては,広く皆さん方,研究者の方々,産業界の方々も含めまして,上がってくる。ですから,ボトムアップとそのトップダウンですが,トップダウンのときの,今度はテーマの立て方なんですが,これはちょっとシンボリックなもので,ものづくりだとか,物質材料だとか,そういうようなテーマになっておりますが,それぞれのところでは,福山先生御心配の向きようなことに関しましては,少しずつ少しずつではありますけど,皆さん考えていらっしゃいますし,具体的には,さっきおっしゃったようなJ-PARCだとか,KEKだとか,そういうところとつるんでやっていらっしゃる,あるいは,SPring-8。
ですから,それは,要は,初めてこういう汎用のマシンが我が国としてもできたというようなこともありますので,そんなことでやっておりますが。ただ,ポスト「京」に対しては,今度は,矢川委員会よりもっと大きな小宮山委員会――大きなというのは,皆さん方,集まっていただいた数の問題を言っているんですが,そこでまた検討していただいた,そのネタは,先ほど平尾機構長の方から話がありましたが,2年間の研究を経て,どういう題材があるか,どんなことをやった方がいいかというのを取りまとめてもらったものがありまして,それをインプットしてもらって,それ以外のものもたたき込んで,今度決めていって,9分野と,萌芽的というのが4分野あるんですが,そういうようなものに決めたというのがあります。
それから,お二方の御心配いただいたというか,大変力強い応援を頂いたと思っているんですが,このところのあれを見ましても,ニュートリノはノーベル賞が2つと,亡くなられた戸塚先生の啓蒙書といいますか,等々もありますから,専門家がきっちり書かれたようなものがありますが,例えば,重力波なんていうのが,この間,一般紙なんかも取り上げていただいているんですが,失礼な言い方になってしまうかもしれませんが,要するに,読む方も書く方もお互い知らない同士なのが何となく分かるような分からないような不思議な状況ですが,かなりの面積書いてくださるんですね。そこで,そういうようなことがあるものですから,第5分野の大将の青木先生なんかには,これ,当初からなんですが,ちゃんと皆さんに分かるように,そうやっていきましょうよということで,実は,いろんなものの分野から,できるだけ早く結果が出て,国民に分かりやすく,あるいは,議員諸公にも分かりやすく,そういうようなものを加速するような工夫までしたんです。
ところが,一番最初に上がってきたのが,ゴードン・ベル賞を取ったダークマターなんです。さて,ダークマター,どうやって解説するかというようなことで,青木先生以下,皆さん方にも考えていただいたんですが。それなりの面積では書かれたと思うんですが,あれだけじゃ少々情けないなというような形で,少なくとも基礎科学といいますか,そういう面に関しての成果は,あそこは天体だとか地学の面ですけれども,そういうようなことを書いていただくことができるような方向に持っていってくださいというようなことで進めては,お願いしてはおります。あっちは,トランプみたいなカードを作ったり,なかなかいろんなことをなさっていたりします。
【髙井主査】  どうもありがとうございました。今,土居先生にうまくまとめていただいた感があります。ありがとうございました。

(10分間休憩)
(2) HPCI戦略プログラムについて
土居プログラムマネージャーより資料2-1に基づき説明。続いて柳田分野1統括責任者より資料2-2に基づき説明。質疑応答は以下の通り。

【西島委員】
多分,国民に対して,最先端科学としてどのような分野への貢献を期待するかと尋ねたならば,どういう質問形式でも,6割,7割は,「医療・新薬への貢献を目指してほしい」という回答でしょう。逆に,最も期待されていても,短期間で明確な結果を示せないのも,実はこの分野なんですよね。例えば,スパコンの成果として、ここで新薬の姿を見せることは難しい。
今,すごくいいところまで研究が進んできたんですが,先生,多分,御苦労があると思うんですけれども,先生が先導する研究がうまくいけばいくほど,やがて企業がすっと,結論を開示しなくなる。そこから先は非公開という形になると思うんですね。私なんかは,便りがないのはいい便りと思ってくれと公的評価委員会で回答します。つまり、その分だけ,成果専有で企業は国庫に追加使用料を別納しているから,これだけ企業は払っているという数字を見せればいいというのがSPring-8方式で,一応私はそれで今までずっと国と折衝してきたんですが。そうは言っても,いつまでもそうもいかないと思うんです。
そこで,企業として最低限公開しないという部分というのは,やっぱり最初の連携時点である程度企業と合意しておくとか,もう1点は,今,AMEDかなにかでアカデミック創薬というのを随分支援されていて,ここまでやればというんで,国から支援をもらえるテーマが幾つか選ばれています。逆に言うと,そういう中で,スパコンがここの部分については,シミュレーションとか,あるいは,ビックデータ解析に役立てるんだということで連携することは十分可能と思います。当然,そういういうAMED支援テーマは,やがて企業の方に紹介されるという筋道になっていますので,そういうものに対してスパコンが支援してやがて成果が公開された時にスパコンの貢献も評価されるでしょう。そうすると,国としてのいわゆる資金がうまく連動しているという,その創薬の一躍を担うという形でのスパコンの見せ方も重要かな重要かなと思ったんです。
【柳田分野1統括責任者】  ありがとうございました。
もう御存じのように,製薬会社と一緒にやるというのは非常に難しいですね。とにかくターゲットタンパクは教えてくれない,とにかく計算だけしてというところへ行きますので,非常に難しいのは,先生おっしゃるように確かです。
あと,HPCIは,何故僕がプログラムディレクターになっているかというと,どうしてもコンピュータサイエンスに偏り過ぎなので,実験現場もブリッジする必要があるということで,創薬に関しては,まさに、それが必要になります。
あと,医療現場に関しても,今,手弁当でやっている部分が多いのですが,やはりいろいろなお医者さんなど興味を持たれている人も多いので,やはり興味を持っていただくためには,かなりのアクセスを僕らからしないといけません。それをするとしたら,ものすごく興味を持ってくださるんです。そういうシステムも作っていただくと,榎本参事官,うれしいのですが,いかがなものでしょう。
【福山委員】  それはとても重要だと思います。
【福山委員】  今おっしゃったお立場,実験ということを強調されて。このシミュレーションの結果,出てくるのはいいんですけど,それが本当に正しいかどうか,そのチェックはやっぱり実験じゃないかと。
【柳田分野1統括責任者】  その通りです。
【福山委員】  例えば,最初におっしゃった課題1のこれ,そういう観点で,出てきた結果が本当に真実,信用できるかどうかというのは,チェックはどうされるんですか。
【柳田分野1統括責任者】  課題1ですと,例えば,理研の生命システム研究センター、QBiCの人なのですが,そこでは最先端分子計測をやっています。そのデータと合わせながらでないと,階層が上がってくると,非常に沢山のパラメータを使ってシミュレーションしますので,3つパラメータがあったら何でもできるという世界に対して答えていかないといけないので,先生おっしゃるように,もう実験・シミュレーション,実験・シミュレーションで,このようにやっていかないと,とても研究を進めることができません。。
【福山委員】  この杉田さんはそれをなさって。
【柳田分野1統括責任者】  といいますか,私,細胞の中の分子計測などをやっております。
【福山委員】  だから,そこは,この出てきた結果は,そういうチェックを経て,信用できると。
【柳田分野1統括責任者】  そのようにやっております。
【福山委員】  分かりました。
【柳田分野1統括責任者】  今のところ,先鞭をつけることができたところです。でも,それができると,実験屋さんも,それをベースに,パラメータをちょっと変えてみて,細胞がどうなるかというのはできるので,やはりそういう循環がもう必須ですね。もうコンピュータだけとか,実験だけという時代は全く生命科学の分野でもなくなってきている。「京」コンピュータ,このプログラムのおかげだと思います。

常行分野2統括責任者より資料2-3に基づき説明。質疑応答は以下の通り。
【伊藤委員】  我々のスーパーコンピュータ技術産業応用協議会の方では,分野2に関連した企業が大変多うございまして,お世話になっております。分子研の一部とは,セミナーを共催させていただいたりして,交流を深めているところでございます。
特に人材育成,産業界から見ますと,まだまだプリコンペティティブな領域でございまして,人材育成に関しては,産業界の中では抱えきれないような人材を輩出していただいているというふうに感謝しております。
ただ,企業の実態を申しますと,代替指標でもって中小規模の計算をやって,それでデザインをしていくというようなケースも多くて,そのモデル化をオーダーリダクションといいますか,こういったところとこういう高度な計算とどういうふうにマッチングさせるかとかいうようなところについても,少し御指導いただければなと思うところがあります。それが普及の鍵だと思っています。
それから,もう一つは,個別のコードについては,本当に高度なことをやられていて,企業としては,こんなこともできるようになったということで,安心感を覚えるわけなんですが。今日お話しいただいたように,一方で,俯瞰的に,それをシステム化していくという作業が大変でございまして,個別のことは個別の人間が知っているけれども,全体像がつかめないというようなことがよくありまして,何から手を着けていいか分からないというようなところもございますので,そのあたりについて,また御指導とか研究の方を進めていただければなと思います。よろしくお願いいたします。
【常行分野2統括責任者】  ありがとうございます。
よろしいですかね。
【髙井主査】  どうぞ。
【常行分野2統括責任者】  まず,我々の拠点では,「京」を使う研究者,「京」のレベルの研究だけが研究だという意識は全くなくて,これは物質科学ですので,本当にパソコンから「京」まで,その中で,それぞれのテーマに合わせて最適な計算機があって,それをその場その場で使うというふうになっています。
実際に我々の拠点は,「京」を実際に使っている方たちはごく一部ですが,それ以外の研究者が,この拠点の活動に協力,参加いただいていて,その中で,このテーマに関しては「京」が使いたいというような人たちは,我々がサポートして,プログラムの高度化をお手伝いして,その方が「京」の一般利用に応募して使うと,そういうプロセスもでき上がっています。そういうことで,36件だったと思いますが,「京」の一般利用に採択されています。
それから,俯瞰的に眺めて,例えば,産業界でこういう問題があって,そのためにはどういうシミュレーションをやればいいかと,そういう質問もたくさん受けることがございまして,個別に今はお答えできるところをお答えしている感じでございますが,是非それは,残念ながら,この戦略機関としてはもうなくなってしまいますので,何かしらのコンシェルジュのような機能を持ったものがどこかに用意されると,こういう分野は非常に進むのではないかと考えています。
以上です。
【伊藤委員】  ありがとうございます。

今脇分野3統括責任者より資料2-4に基づき説明。質疑応答は以下の通り。
【福山委員】  よろしいですか。短く。
行政事業レビュー「公開プロセス」(1)のところに書いてある予測可能時間というキーワードに関連してなんですけど,研究成果の冒頭でおっしゃった全球レベル0.87キロの格子で2日間を再現したという意味は,予測ではない。2日間予測したということではない。
【今脇分野3統括責任者】  予測ですけれども,それが実社会にすぐに役立つようなものではありません。あれはサイエンスの話です。
【福山委員】  だから,天気予報が2日間全球でできたということとは全然違うんですね。
【今脇分野3統括責任者】  それは,瞬間的にはできたんですけれども,実用にはなりませんね。昔の……。
【福山委員】  それが行政レビューのコメントの予測可能時間云々のところとつながっていると理解してよろしいですか。
【今脇分野3統括責任者】  全球で1キロ以下でやったというのとは別なテーマです。,たとえば集中豪雨とか。
【福山委員】  もっと局所的な。
【今脇分野3統括責任者】  局所的な気象現象です。日本の例を示しましたけど,そっちの方は,今すぐにでも,計算機があれば使える。
【福山委員】  そうすると,元の2日間を再現したという言葉の意味は何だったんですか。
【今脇分野3統括責任者】  それは,全球の大気をああいう細かい格子で計算するというのは,世界のどこでもやっていないことなんです。雲をちゃんと表現しようと思うと,細かい格子でやらないといけないんで。
【福山委員】  その2日間という意味は。
【今脇分野3統括責任者】  2日間しかできなかったということです。計算資源があれば,もっとどんどんやれるんですけれども,あれをやるのに,「京」の4分の1で9日間かかりますから,それ以上はなかなか資源がもらえなかったんで,2日でやめざるを得なかった。2日間は目標ではありません。
【福山委員】  ただ,このメッシュ0.87で全球で2日間回したということで,それが現実とどうかは関係ない。つながってない。
【今脇分野3統括責任者】  いや,現実を再現はしていますけれども,今の天気予報には,あのままでは使えないということです。ローカルな気象現象については,250メーターとか,細かい格子で計算できていますけれども,あれはもう地球全体をやったので,実用とはかなり別の話です。ごめんなさい。2つ大きな課題がありますので。
【福山委員】  確かに,全球,地球全体で気象はつながって,それをどこまでメッシュで,どれだけのタイムスケールで理解できるか,これは大きなチャレンジだと思うんですけど,ここに最初にお書きになった言葉の意味が,後にある予測の問題と――シミュレーションで一番大事なのは,出てきた結果をもとにプレディクションがどこまでできるかという切り口は絶えずあるわけで,その考え方と,最初に表現されていたこの文言が,整合性がよく分からなかったので。
【今脇分野3統括責任者】  実用的な予測という意味では,今のサブキロメーターの計算というのは,ほとんど意味がないと思います。これはサイエンスの話です。
【福山委員】  ともかくやってみたと。できたと。
【今脇分野3統括責任者】  そうです。とにかくできましたという話です。すみません。
【福山委員】  分かりました。

加藤分野4統括責任者より資料2-5に基づき説明。質疑応答は以下の通り。

【伊藤委員】  加藤先生には,いつもお世話になっております。産業応用協議会の伊藤ですが。
特に,最後のページの方にありますけれども,HPC次世代ものづくりワークショップとか,HPC産業利用スクールを通じまして,非常に手厚い御指導を頂いております。ものづくりワークショップは,今回,特に実際のものを試作してみて,それとシミュレーションとどう合ってくるかというようなことを,産業界の枠を超えてやろうとしていますので,そういったこともやらせていただいていると。
それで,あとは,先ほどの100倍という話がありましたけれども,今後,5年,10年かけたときに,どんなことが産業の基盤となるソフトとなる――今はないという前提ですが,そういったものが実用化されると,あるいは,そういうことができるといいかなというようなことを検討しておる段階なんですが,その際も,加藤先生にはいつも出席していただいて,率直なお話をさせていただいているというところですので,今後ともよろしくお願いいたします。
【加藤分野4統括責任者】  ちょっと言及すると,さっき申し上げたように,みんなで一緒にやったコンソーシアムが金出してやった,できることは分かった,使うだろうと思ったら,やっぱりすぐには使わないんですね。そんなに簡単にはソフトウェアを乗り換えないということが分かって,じゃ,効果が足りないのか,あるいは,コストが高いのかと分析したら,やっぱりまだコストがちょっと高すぎるということが明確になったので,じゃ,そのコストを下げるために,100倍をやろうということでやっています。さらに,更に別なやり方で100倍で,1万倍を今達成しようとしていて,ここまでやったら絶対にほかはできないから,もう否が応でも使うだろうとは思っているんです。
特に,いろんな観点で,本当に使われるかということを検証しながらやらないと駄目だということを,今回のプロジェクトで実感した次第ですね。

柴田分野5副拠点長より資料2-6に基づき説明。

(全体質疑)

【吉田委員】  では,お願いします。3点ほどあるんですが。
コストパフォーマンスの問題は,今の全体の話なんですけど,追加の質問で回答資料は頂いているんですが,基本的には,評価としては,今回,運用を開始してからいろいろ努力はされているのはよく分かりました。ただ問題は,開発時点で,「京」そのものに関するコストパフォーマンスに関しての意識は,やはり意外と低かったのかなというのが実感です。
現在,グリーン500の資料も頂きましたけど,240以内だったと思いますが,やはりこれはもう今更どうのこうのというのは,ランニングコストも資料を頂きましたが,なかなか難しい部分もあるので,基本的には,ポスト「京」に向けて,もう少しスーパーコンピュータそのもののコストパフォーマンスを上げるということも技術開発の一つだということで,今回,回答にもそういう認識を書かれておりましたので,是非,そこは努力すべき反省課題かなというふうには考えております。
特に,科学研究の分野って,やはり未知の分野への冒険で,挑戦だと思うんですね。ただ,やっぱりそれが下手すると暴走になりかねない部分と紙一重なので,そういう意味では,我々,民間ですと,株主,出資者に対しての,事業投資者に対しての説明責任とか,コストパフォーマンスに対するオブリゲーションというのはあるんですけど,いわゆる公共の資金を投資したプロジェクトなわけですから,そこが暴走にならないための歯止めでもあるので,技術開発の一つとしてもそうだし,もう一つは,リスクマネジメントの一つとしても,コストパフォーマンスを意識した開発につなげていただければと思っています。
それから,2点目は,アンケート調査の結果は非常に参考になりましたが,やっぱり産業界だけではなくて,研究者からも,まだアプローチのハザードが幾つか残っているんだろうなというふうな読み取り方もできました。簡単に言うと,官がかんでいるらしいなと思いましたけど,手続が煩雑であるとか,それから,スパコンなのに書類手続が煩雑というところがちょっと面白かったんですが。それから,まだやっぱりフォローアップとかサポートの部分。今,先生方の話を聞いて,やはり「京」を動かしているのは人間だなというのがよく分かりましたので,その人間のところの,例えば,募集が来て落選したものに対してどういうフォローをしているのかとか,それから,もう一つは,前段階で福山先生の話もありましたけれども,研究シーズ,若しくはニーズが来たときに,それをうまくシームレスに,フラッグシップシステムである「京」から,その下の方の裾野の広いコンピュータにうまく配る,配分していく,いわゆるニーズを配分していく,そういうシステムができているかどうかとか,それから,もう一つは,先ほどから産業界の方からの意見としていろいろありましたけど,こういった一つ一つのコンソーシアムを作ったり,そういう御努力は実っていくんだろうと思うんですが,これを全体の組織マップの中で,どう落とし込んで分かりやすくするかと。あ,そういうふうに回してくれるんだと,だから,「京」が使えなくてもこう行けるんだとか,「京」で失敗したことのフィードバックもあるんだとか,そういったことが分かるようなシステムを見せてあげるということが非常に重要ではないかと。それは,今のところ,皆さんの努力のおかげでどんどん改善はされていますけど,やはり今回の「京」に関しては,最初からそれは用意しきれてなかったというのは評価せざるを得ないのかなというふうには思っています。
それから,もう一つ,ニーズとフィードバックをうまく回転させるというシステムを今後作ってほしいわけですが。実用化のところで,これは意見ですが,先ほどもこちらで雑談で言ったんですが,100円ショップの商品の中にも深遠な科学を見ることはできるんですよね。宇宙ロケットの上で実験した結果できた100円ショップの商品だってあるかもしれない。ただ,非常にインパクトのある研究が全て実用化されるかというと,されないと思います。先ほど話にもありましたけど,申し訳ないけど,研究ニーズとマーケットニーズは違います。一緒の場合もありますが,違う場合も多々ある。それは100年という時系列で実用化するかもしれないし,全く違う地域で実用化するかもしれない。だから,マーケットニーズと,皆さんに上がってくる研究ニーズとは,全てイコールではない。この前提で,我々,評価する側も,評価しなくちゃいけない。ここは,逆に,運用する側も,はっきり分かった上で回答しないと,非常に誤解を生む。
これは産業界に身を置いている人間として,こういうインパクトがあって,こういう成果が,リザルトがあったので,これを商品化したい,ビジネス化したいと思っても,それはマーケットに受け入れられるかどうかというのは別の話なんですね。だから,産業界との交流はどんどんやってほしいとは思いますが,シームレスな世界ですからね。ただ,それが実用化という言葉を使うときは,すごく気を付けていただきたい。それは誤解を生むと。実用化しなければ意味がないということになっちゃうんですが,僕はそうではないと思っています。いずれ実用化される,どこかで実用化されるかもしれないけれども,それは即どうのこうのというものではないというふうに考えています。
以上3点です。
【髙井主査】  今,コメントということでよろしいですかね。
【吉田委員】  ええ。質問ではないです。
【髙井主査】  そうですね。明確に,今頂いたことって,御回答を言葉で頂くのはなかなか難しいかなと思い,時間も限られているんですけど。
では,ほかの委員から何か。
【西島委員】  分野違いで,加藤先生のところのお話なんですけどね。あれほど産業界が一緒に入っていて,そして実証して,加藤先生の期待に入らなかったということで,今,そこから価格を安くするとか,100倍というんですけど,違う要因はないんですか。つまり,上層部の方には,古いものに固執して,そこのところでやるという,そこの信頼性が高まって,それをなかなか超えられないとか。
【加藤分野4統括責任者】  いろんな要素はありますよ。新しいことをやろうとすると,必ずコストはかかるんで,そのコストをかけたくないと。コストがかかったときに,どれだけのベネフィットがあるかもよく分からないからやりたくないとか。
【西島委員】  というのは,最初に企業が入るときに,現場じゃなくて,上の方はどのぐらいそこのところに期待を持っているかというのは,その辺は。
【加藤分野4統括責任者】  それもあります。
【西島委員】  つまり,いいものを上げていって,そこから先は現場の人が上に上げていくのを待つのか,上の方がそれを理解して加速していくというのがというのも結構大きいと思って。
【加藤分野4統括責任者】  実は,その点も何回も議論しているんですよね。マーケットニーズとリサーチニーズは違うというお話でしたけど。我々としては,何とかマーケットまで持っていきたいとは思っているんで,それをどうやってプロモーションできるかという意味で,例えば,トップダウンでいくのか,ボトムアップでいくのか,いろんな議論はしていますが,まだ形にはなってないという状況ですね。
それから,実用化という意味も,いろんな意味があって,使われてないという意味ではないんです。研究開発には,もういっぱい使われているんです。例えば,トヨタと一緒に空力開発も使っています。がんがん使っています。だから,それを実用化と言ってしまえば実用化なんですが,僕が言っているのは,マーケットのフロントエンドでの実用化を目指したいんだけど,まだそこまで入ってないという。バックエンドのリサーチは,結構もう使われているんです。いろんなシミュレーションは。という意味です。
【西島委員】  これで分野が,ライフサイエンス,グリーンイノベーションと言っても違いますし,硬いものとやわらかいものがあるんで,ある意味では,分野ごとの評価軸というのも少し対応して考えなければいけませんけどね。そういう意味でね。
【加藤分野4統括責任者】  結局,ちょっと長くなってあれなんですが,定量的評価をしなさいと言われているじゃないですか。じゃ,定量性って一体何なのということが常に疑問に残るわけですよ。我々がやっているのは,産業界で使われて初めて成果なんですよね。じゃ,どれだけのエクスペクテーションがあるかという意味で評価してもらうのがいいと。そういう意味で,確かにマーケットとリサーチは違うんですが,何とかリサーチ成果を,マーケット成果の少なくともエクスペクテーションにまでは持ち上げたいということを考えているという。
【髙井主査】  そろそろ予定の時間になってしまうんですが,ほかに何かコメント。どうぞ。
【福山委員】  強力なコンピュータの特徴の一つだという,大量のデータに対応できて,そこから時としてすごい意味のあるサイエンティフィックメッセージが取り出せるはず。そういう観点で,柳田さんと加藤さんにちょっとお伺いしたいんだけど。
まず加藤さんのところで,従来の設計を工夫して,随分メリットがありそうだといったときに,この背後にあるサイエンスは何だったんですか。何が肝心なものだったんですか。
【加藤分野4統括責任者】  数学的方法論です。
【福山委員】  データ処理。
【加藤分野4統括責任者】  簡単に言ってしまえば。ただ,何ていうんですかね……。
【福山委員】  いわゆるビッグデータの関連で。
【加藤分野4統括責任者】  ビッグデータとは違いますね。観測値があって,それをどうのこうのではなくて,数学的に最適なものを探索する方法論の進化,それがサイエンス。
藤井先生がしゃべりたがっているんで,僕じゃなくて。
【藤井委員】  4番目の課題に相当すると思うんですが。設計探査という言葉で私たちは言っているんですが,デザイン・エクスプロレーションと。あのプロセスを踏む中で,じゃ,どのパラメータがどこにどのぐらい効いているんだという情報を得て,それで一番いいものを見つけていく。一番いいものが出ても,それがものにつながるわけではないので,むしろ最適なものが出るというよりは,最適なものを見つける過程で設計情報を得ていく。そこがデータマイニングなんですけど,そこの技術を。基本はデータマイニング技術です。
【福山委員】  分かりました。
それと,ちょっと話は飛んで,柳田さんの創薬の問題。幾らコンピュータが進んだからといって,創薬を,丸々最初からゼロでいいタンパク質を見つけるなんて,それは幾らコンピュータが良くなっても,いいものはなかなか見つからないだろうと。だから,最初に何か条件を付加して,例えば,この穴ぼこに合う,こういう機能を持った薬を開発するとか,何かそういう初期のインプットの情報が必ずあるんだろうと。そうしないといけないと思うんだけど,それは違う学問の分野の情報が必要ですよね。例えば,分子の問題。ですから,具体的な対象から外れるかもしれないけど,そういう周辺のサイエンティフィックナレッジが非常に重要になる。それは,さっきの創薬のお話のときに,どういう状況になっていたんですか。
【柳田分野1統括責任者】  バイオロジー,タンパクの場合は,まだよく分かってないというか,物理や化学と比べて,余りよく分かってない分野であることは確かで,どういうメカニズムというのをベースに予測をして……。
【福山委員】  だけど,形状ぐらいはちゃんと情報を入れないと,創薬できない。
【柳田分野1統括責任者】  それは入れるのですが,一番の大きな問題は,結晶構造をベースに今やっているのですね。要するに,コンパクトに詰めた状態での構造からスタートしているのですが。
【福山委員】  そうすると,相手の薬として創る作用の場の方の情報は入らない。だから,いいものがなかなかできないんじゃないですか。
【柳田分野1統括責任者】  ええ。一番難しいところは,ここにポケットがあるから,そこに狙おうというのは,かなり外れてしまってそれは西島委員は良くご存知だと思いますが。え。
細胞の中に行くと,それとはかなり違うダイナミックな性質を持っているので,かなりの部分は,ここのポケットにこういうリガンドなのではないかいうと,大概外れてしまって,とんでもない理解,えっ,こんなのところに効いていたの,というのが結構あります。
【福山委員】  だけど,今までは外れるのがほとんど。だけど,「京」を使ったら,そこが乗り越えられて,意味のある創薬ができるんじゃないかという,そういう発想法はあってもいいんじゃないかと。つまり,状況を……。
【柳田分野1統括責任者】  そうですね。それは,多分,西島委員の方が一所懸命やっていらっしゃるので。
【西島委員】  僕がフォローしてはいけないのかもしれないから。
柳田先生,一般論として,今は,タンパク質と低分子の複合体構造をとるというのが,SPring-8で日常化しています。中堅規模の製薬企業でも,大体1つのタンパク質に40種類の化合物で1対1の複合体情報を取得します。ある情報では,つくばの大手企業研究所では,80種ぐらいの複合体情報を得るとのことです。そういう情報の中には,あえて活性が低いと予想される場合,不安定性を増すという結果は分かっていて,それに伴ってタンパクがどう動いていくかをシミュレーションに取り込んでいって,低分子薬物の設計に活かすとか・・・、これ以上語るところは,非常に企業秘密になってくるので。往々にしては,そういうことです。
【福山委員】  当然,それをやることと。
【西島委員】  もちろんです。柳田先生のグループの中の多くの先生方はその辺の経験を踏まえてスパコン利活用に臨んでいると思うんですけど。むしろ創薬の場合は,探索から先の,非臨床から臨床へのステージアップ,薬効と安全性に関わる薬物動態等のコントロールが難しいんですね。だから,コンピュータで創薬加速という部分について結果は出ているんですけれども,そこから簡単に新薬ができるという誤解は避けたい。しかし,創薬加速へのスパコンの貢献については、それなりの評価に耐えるだけの成果は蓄積されつつあると私は思っています。
【福山委員】  分かりました。そのとき,やっぱり分子・分子の相互作用の理解が最終的に必要になる。
【柳田分野1統括責任者】  それはもちろんですね。
【福山委員】  それで,今度,加藤さんに飛ぶんです。すみません。
さっきの流体のナローな領域でのダイナミックシミュレーション,これは非常に重要な意味,現場でも意味があって,例えば,大きな船がエネルギーをロスするというのは,流体との摩擦のせいで。
【加藤分野4統括責任者】  摩擦のせいです。
【福山委員】  そこにコーティングを工夫するということで,摩擦を大幅に。
【加藤分野4統括責任者】  コーティングとか,あと,バブルをふいていますね。今,三菱重工が,もう既に実用化していますけどね。
【福山委員】  そういうところ,専門じゃないんですが,そういう活動があるということは,私の本部の2課題の中でも理解しているんですけど。
そういう観点で,そこに踏み込んで,先ほどの量子流体の。
【加藤分野4統括責任者】  いけますよ。
【福山委員】  そこをやろうとすると,今度はどういう物質,例えば,コーティングのために,どういう物質。そういうことから,新しいサイエンス,現場にとって大事だと同時に,面白いサイエンスが出てくるんじゃないかと。
【加藤分野4統括責任者】  可能性は非常に高いですね。我々は全て解いているので,全ての情報を持っているんです。今までは全ての情報はなくて,あるところは推定した上で,その物質科学と結合していたんで,今は全ての情報があるんで。
【福山委員】  だから,今日の御説明だと,領域が別,分野が別になっているけれども,分野をまたいだところに,場合によっては,すごく面白い可能性はありますよね。
【加藤分野4統括責任者】  面白いことはいっぱいありますね。ただ,時間がないんですよね。
【福山委員】  そこはやっぱり選択をしなきゃいけない。フォーカスしなきゃいけない。そのために,やっぱり社会的なニーズがどこにあって,何ができそうかという,その議論が必要と。それが,今日のお話で,分野内ではいいかもしれないけど,ちょっと分野が違うところで,場合によっては非常に大事になるかもしれない,そういう仕組みが。
【加藤分野4統括責任者】  ちょっと時間を過ぎてあれなんですが,今,実は,そういう動きが徐々に起きています。例えば,我々のところで,さっき御質問になった設計探査の技術を,分野2,あるいは,重点課題で言うと,5と7の関連の,寺倉先生からちょっと紹介してくれという話があって,我々の分野でやっていた人が,そこで紹介したりとか,そういう動きがまさに,「京」からポスト「京」にかけて,みんな成果を言い始めたんで,ほかの分野の成果が分かってきたわけですよね。それで,そういう動きが出始めているという,そういう状況なので,これを加速していけばいいと思っているんです。
【福山委員】  そういう脈絡の中で,今日ずっと伺っていて,非常に不思議だったのは,いわゆるデータサイエンス,ビッグデータを軸にした,情報工学か何か知りませんけれども,数学も必要。多量なデータから,ごみのように見えるデータの中から重要な情報を取り出すという作業が至るところでされていますよね。それはコンピュータの非常に重要な使い方の一つのはず。それは,どこがどう対応されるんですか。
【加藤分野4統括責任者】  それは戦略の中にはない。一部はありますけれども,重点課題というか,萌芽的課題で今回。でも,そちらでありますか。
【今脇分野3統括責任者】  タイトルにも,観測ビッグデータを使って予報につなげようというのが気象の方でありまして,やっぱり観測データというのは,使おうと思ったら,ものすごい量ありますから,先生,今おっしゃったように,それを活用するというんで,データ同化という手法なんですけれども,この次,今もやっていますけれども,更にやろうとしています。
【福山委員】  このテーマは,分野が全然違うところでも共通の数学的・情報学的な問題がきっとあるだろうと。そういうことで,大くくりでそれにフォーカスするということは,国としてきっと必要になるんじゃないかと思うんですけど,どうなんでしょう。
【土居プログラムマネージャー】  今は,例えば,今ちょっとこそこそ話していたのは,柳田先生のところでは,最後のところに示された,宮野さんがやっているがんのやつなんか,あれはビッグデータをやっているんです。ですから,応用応用に応じてビッグデータを扱い,データマイニングをやっているというのは,個々に,個々の応用に適した形でやっているということでしかないと言ったら,先生怒られるかもしれないんですけど。
ただ,世の中がやはりそういうような向きで,必要になってきている分野が多くなってきますから,その意味では,まとめて,いろんなことをやるような,要するに,塊ができてしかるべきだと思っております。
【福山委員】  今チャンスじゃないかなと。
【土居プログラムマネージャー】  そう思っております。ありがとうございます。
それから,ついでに,吉田さんが先ほどいろいろとおっしゃっていただいたことの中の2つ,全部にというわけにはいかないんですが。
「京」が始まる当初は,要は,大学の計算センター,そこのところまでは少なくとも含み,もう一つ,変な話をしますと,当時は,トップのがありますと,規模的にも10分の1が大学で,そのまた10分の1が独法だとか,メーカーだとかと,こういう感じになっていたんですね。ですから,その辺の独法の辺まで企業が入ってくださるのは難しいだろうなというようなことで,それで,その辺をうまい具合に,要するに,みんなが「京」ではないんだからということで,使おうということで考えては当初からおります。
それを広くしたのがHPCIコンソーシアムで,もっと下まで行こうというようなことで,これは別の要因があったこともあるんですが,広げていったというようなことで,下からの問題に関しては,RISTにいろんなのが来ますと,それは「京」ではなくて,こっちでできるだろうというような振り分けはやっていただいているわけです。
もう一つ,暴走の件ですが,これは,こんな推進図があると思うんですが,さあ,これがみんながつるんだら暴走するんだろうと思うんですけれども,トップに我々が,HPCIのがおりまして,それから,分野の作業部会というのがあります。そこにやはり指導する方々にいていただいて,各分野も,さっき分野によっては示されましたけれども,要するに,運営委員会というのがありまして,それで,その分野をウオッチしているというようなことがありますので,階層的に一応ウオッチはしているつもりでございます。ただ,おもしろみが加わってきて,みんながそれをやろうとなったら,暴走する可能性はゼロではないのですが,一応歯止めになっているというようなことはございます。
【吉田委員】  すみません,言葉が過ぎました。暴走というのは,オリンピックをやるから,なんぼかけても競技場作ればいいという,そういう意味のことです。
コストパフォーマンスなんですよね。コスト削減ではないと思っているんですね。コストパフォーマンスを上げるということとコスト削減とはイコールではないので,そこは技術開発も含めて,それから,運用体制も含めて,是非,意識をしていただきたいなと思って言いました。
それから,もう一つ,実用化に関しての定量評価の件。加藤さん,ちょっとおっしゃいましたけど,多分,非常に難しいですけど,吸収するのは早いんですけど,これ,放出していくって,植物でもじわっと遅いものですから。だから,多分,本来は定量化しろと無理矢理言われたら,我々だと,ターゲットマーケットの規模って言っちゃうんですけど,多分,これだと,インパクトの与える分野ってすごく広いので,相当な規模にはなるんですね。
例えば,気象予測の話なんかは,実は,我々商社はすごい興味を持っていて,ビジネスに生かせると思っているわけですね。なぜかと言ったら,穀物投資の命運を握っているのは気象予測なんですよね。だから,そういうのは研究成果は,先ほど言いましたけど,横に広がるシナジーを結ぶと,ターゲット若しくはインパクトを与えるマーケットというのは広いので,その辺を,でも,単純に商品化してからという意味だけではなかなか説明しきれないだろうと。
【加藤分野4統括責任者】  ありがとうございます。
我々も,時々なんですけど,マーケットの規模とか,あるいは,例えば,CAEの規模とか,いろんな調査をします。ベンダーのソフトを変えたら幾らになるとか,どこらが幾らで売っているとか。
問題は,マーケットの規模もあるんですが,期待値なんですよ。要するに,期待値が1であれば,効果はイコールマーケットの規模なんですが,期待値がなんぼかという。だから,その期待値を何とか,定量化まではいかないにしても,少なくとも0点なんぼかの値にしたいから,だから,実用化を何とか進めたいという。おっしゃっていることはよく分かりますけど。
【土居プログラムマネージャー】  じゃ,もう一言,すみません。
コストパフォーマンスに関しましては重々承知しているつもりではありまして,今の世界のトップ争いというのは御存じだと思いますし,説明があったと思うんですが,物量作戦か,とんがっているものと。例えば,「京」ですと,計算コアが65万ある。今,トップをずっと取っているのは320万ぐらいあるんですね。ですから,それをもっと付けようとしているわけで,そこへアメリカ合衆国が,要は,核科学の計算に使っているということで,全部ストップしたんですが,まだ在庫があると言っていらっしゃるようですけれども。
いずれにせよ,そういうことをしてまでトップを取るかという必要が出てきますので,そこで省電力だとか使いやすさだとかといった面を強調してといいますか,考えて,今後ともは,要するに,ポスト「京」なんかは進めていこうというようなことで,そういう意味でのコストパフォーマンスは考えているつもりですが,またいろいろ教えていただければと思います。
【髙井主査】  最後に,榎本さん。
【榎本参事官】  失礼いたします。先ほど議論の中で,分野3で,地球全体を870メートル格子でやるというお話があって,これ,去年も公開プロセスで議論がありましたので,事務的に補足いたしますと,これは2012年8月25日から2日間にわたる雲の動きの様子の再現を発表したのが,この研究結果を発表した2013年9月です。ですから,1年間かけて分析いたしました。
目的は,将来の天気予報の,数値に基づく天気予報の精度向上でございました。どういうことかと申しますと,現在,気象庁のような実務におきましては,地球全体は20キロメートル四方で格子に分けています。それで天気予報を行っています。今回,分野3におきましては,20キロメートルでは余りにもざっくりしているので,3種類,3.5キロメートル四方,1.7キロメートル四方,0.8キロメートル四方,3種類でやってみたらどうなるかということをやって,3種類やりますと,2キロメートル以下の格子にしていかないと,積乱雲の対流が適切に表現されないと,そういうことが分かったということを発表しています。ですので,こういったことが積み重ねていきますと,将来の気象庁における天気予報や長期予報に非常に貢献できると思っています。そういった文脈の中で,分野3も研究しておりました。
事務的な補足です。
【髙井主査】  どうもありがとうございました。
(3)その他
・今後のスケジュール等について,事務局より説明。
髙井主査より閉会を宣言。

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