競争的研究費改革に関する検討会(第5回) 議事録

1.日時

平成27年4月28日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

霞が関コモンゲート西館37階 霞山会館「霞山の間」

3.議題

  1. 研究活動の国際展開の促進について
  2. 競争的研究費における現代的要請への対応について
  3. その他

4.出席者

委員

濵口主査、大垣主査代理、有信委員、井関委員、上山委員、甲斐委員、小安委員、角南委員、竹山委員、橋本委員、藤巻委員、若山委員

文部科学省

常磐研究振興局長、安藤大臣官房審議官(研究振興局担当)、村田科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官、松尾振興企画課長、豊岡高等教育局国立大学法人支援課長、行松基礎研究振興課長、鈴木学術研究助成課長、瀬戸学術機関課学術研究調整官、中野振興企画課学術企画室長、髙山振興企画課競争的資金調整室長、岩渕基礎研究振興課基礎研究推進室長、前澤学術研究助成課企画室長、荒川科学技術・学術政策局政策課国際戦略室企画官

オブザーバー

日本学術振興会渡邊理事、科学技術振興機構外村理事、科学技術振興機構笹月戦略研究推進部長

5.議事録

【濵口主査】
 それでは、おそろいとなりましたので、競争的研究費改革に関する検討会を開催させていただきます。委員の先生方におかれましては、御多用中大変恐縮でございます。本日も御出席いただきましてありがとうございます。
 まず最初に、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【松尾振興企画課長】
 冒頭、一番上に議事次第を乗せさせていただいておりますけれども、議事次第の後ろから申し上げます。A4縦1枚紙で資料1、それからA4横で資料2、資料3。A4縦で資料4、資料5。そこから先は参考資料になりますけれども、A4縦型で参考資料1。2が1枚紙でございますが、参考資料2、A4縦。それから、A3縦の参考資料3。そしてA3横の参考資料4、5。そしてそこから先、1枚紙が2つございますけれども、参考資料6と7となっております。落ちがございましたら、お申し付けいただければと思います。以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。それでは、これまで示されてきた論点整理の検討状況について、まずお諮りしたいと思います。資料1により、事務局から説明をお願いします。

【松尾振興企画課長】
 資料1の御説明を申し上げます。A4縦の1枚紙でございます。前々回、第3回の資料をもとに加筆をさせていただいたという形のものでございまして、これまで論点1のところに書いてございますけれども、ここの論点につきましては、前回にまず1回目の御議論をいただいたということでございます。
 論点2、これは人材育成、若手育成のところが主なところでございますが、基本的には次回以降に御審議、御検討いただきたいと思っておりますが、ただこの箱の中の一番下、科研費から大型研究費に云々というここのところにつきましては、本日御議論いただければなと思っております。
 それから論点3といいますか、その他、今後整理が必要な項目という一番下の箱でございますが、基本的には今回御議論いただきたい、御検討いただきたいと思っておりますけれども、上の2つの白丸でございますが、設備の共用の話と、それから持続可能なシステム改革の在り方につきましては、次回以降御議論、御検討いただければということでございます。下の方、本日御議論いただきたいということを書いてございますけれども、ここにつきまして、この文言にとらわれず、国際性、そして融合性といいますか、現代的要請への対応につきましては、もう少し幅広くといいますか、大きな視点から御議論いただきたいなということで、今日の議題設定をさせていただいたということでございます。以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。今、事務局から説明していただいたとおり、今回は研究活動の国際展開の促進、それから競争的研究における現代的要請への対応、この2点について深く掘り下げていきたいと思います。
 まず、研究活動の国際展開の促進について、日本学術振興会と科学技術振興機構からのプレゼンテーションをしていただくこととなっております。続けてお話をいただき、その後事務局から論点について説明をいただいた上で、質疑応答、議論を行いたいと思います。
 それでは、大変恐縮です。短い時間でありますが、15分ずつということで、まず日本学術振興会からお話をお願いしたいと思います。

【渡邊理事】
 学術振興会の渡邊と申します。資料2で説明をさせていただきたいと思います。
 題名といたしまして、研究活動の国際化ということで整理をさせていただきました。1枚おめくりいただきまして、本日は振興会の事業の説明というよりも、研究活動を国際化するに当たってどういったところを注意してやっているかという、考え方と課題等について御説明をさせていただきたいと思います。
 まず整理してみますと、4つぐらいの柱があるのではないかと思っております。1番目が人の問題であります。まず、日本人の若い人を中心にして海外に送り出す、あるいは外国人を招聘する、その頭脳循環、そういった人の問題。2つ目が、お金の問題であります。そのための研究費をどう支援していくか。3つ目がネットワークということで、人を循環させるということとも関連いたしますけれども、やはり国際共同研究においてはネットワークというのが非常に重要になってきている。それと日本の大学等の研究環境を国際化する、そういった4つの考え方で整理できるのではないかということでございます。
 めくっていただきまして、まず1番の人の問題でありますけれども、振興会の事業規模でいいますと、海外に人を送るという関係では、年間5,000名ぐらいを送っております。これは数日間という短期のものも含めてでございます。比較的長く人を育てるような形で送るという事業では、海外特別研究員という、ポスドクを海外の研究機関に2年間送るという事業をしております。これは予算20億しかございませんので、250人が2年間行くというような事業規模であります。
 大学に限りますと、研究者の1年齢当たりの数というのが、大雑把に言って5,000名ぐらいであろうかと思っておりますので、250名送っているので5%ぐらいかなというふうに思っております。NISTEPさんの調査で、35から44歳までの海外経験のある教員10%ということなので、ある程度寄与しているのかなというふうには思っております。これとは別に、日本人の日本にいる特別研究員という制度がございますけれども、その方々も海外に是非行きなさいということを推奨しておりまして、こういった方々が年間700人ぐらい。これは期間はいろいろですが、行っているということがございます。
 2つ目が、外国人を招聘するということですけれども、いろいろな事業で4,000名ぐらいやっておりますけれども、長く招聘するという意味では、外国人特別研究員。これが450人ぐらいの方を2年間、そういった規模でやっております。
 その他、特徴的な事業もございますけれども、課題といたしましては、その人数が少ないということ。特に外国人特別研究員というのは、採択率10%ぐらいでありまして、日本に来たいという希望はありますけれども、なかなか応えられていないということ。それと2年間だとちょっと短いというようなことがございます。この辺は全て予算に左右されるということかと思います。
 めくっていただきまして、次にお金の話でございます。JSPSの中で国際共同研究をやっている国際プログラム系のお金というのは10億、6億ということで、ある意味わずかでございます。むしろ科研費が2,200億予算があるわけですけれども、こういったものを全体としてどう使っていくかということの方が非常に重要なのではないかと思っております。
 27年度予算では、そういった国際共同研究を加速するという趣旨で、100億ほどの基金というのが創設されておりますけれども、それだけに限らず、全体をどううまく使うかということが重要ではないかと思っております。あわせまして、やはり論文というものをより国際的に目立つというか、発信していくということも重要であろうということで、今年度からオープンアクセス化ということを進めております。
 まず課題の1番でありますけれども、お金そのものに関しまして、例えば海外に日本人が行ったときに使いにくい。これは海外で物を買うということは可能ですけれども、実際問題なかなかそれをきちんと管理できるかというようなところが引っかかりますので、使いにくくなっているという話があります。これは今のいろいろな制度が、日本の中で使うということを想定しておりますので、もう少しその辺の現実的な会計管理というものを考えていかなければならないのではないか。
 もう一つが、日本に来ている外国人にとって、日本の研究費が使いにくいということ。これは御承知のとおり会計年度の問題でありまして、これは日本の研究者にとっても同じですけれども、外国人研究者を日本にインバイトしていろいろな政策で呼んでいますが、日本に来たら研究費がアメリカと違うなというようなことではいけないのではないかということで、基金化というのをやっております。しかしながら500万円までに限られておりますので、もう少し大型のものもやるということが必要ではないかということであります。
 次のページでございますけれども、ここではそもそもそのインプットが少ない。これも予算の問題でありまして、なかなか簡単ではないですけれども、そういった現実もあるということです。この下の表は、以前当会の安西理事長が審議会の方で説明させていただいた表と同じものでございますけれども、この10年間の諸外国の、日本を含む国のトップ10%論文のシェアがどれだけ落ちているか、あるいは増えているか。中国、韓国は増えているけれども、先進国は全部落ちている。日本は一番落ちているということでありますけれども、インプット、お金、あるいは研究者数、大学部門の研究費、こういったものを見ますと、日本は非常に芳しくない。アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスなどは、例えば大学の研究費を非常に伸ばしているけれども、論文シェアは落ちているというようなことであります。これはマクロ的な話でありますけれども、国際共同研究をやるに当たっては非常にお金がかかるということがございますので、そういったところも見ていかないとなかなか難しいのではないかということであります。
 それと、その他の課題のところで書いておきましたけれども、今年度からオープンアクセス化を推奨していると申しましたけれども、例えば投稿料のかかるオープンアクセスの方法がございます。APC1件当たり20万円ぐらいと聞いておりますけれども、そういった費用をかけてでもオープンアクセスにすることで、より国際発信力が高まって、それによって国際共同研究につながるというような政策効果があるのであれば、そういったことも考えていく必要があるのかなという問題提起でございます。
 次のページがネットワークの強化ということでありまして、米国のNSF等を含めたいろいろな海外の学術振興機関がございまして、それらとのネットワークを構築しております。そういった中で、例えば2のところに書いてありますけれども、欧州研究会議との交流と書いてありますが、これなどは、JSPSとERCが協定を結びまして、ERCが研究プログラムを約1,000以上実施しておりますが、そういった中で日本人の若手研究者をポスドクとして呼びたいというプログラムに手を挙げていただいて、それに日本人の研究者が行きやすくする、そういったことをこの機関間のネットワークを通じてやっていくということがあります。
 もう一つは、人のネットワークということでありまして、JSPS事業に何らか関わっていた、例えば外国人特別研究員として来ていた、あるいはプログラムで参加した、そういった方の同窓会のようなネットワークを作っておりますけれども、現在は14か国にとどまっていると。課題としては、2万人ほど外国人事業経験者がいますけれども、全部をネットワーク化しきれていないということ。あるいは、海外にいる日本人研究者のネットワーク、これはそれぞれの国で自主的にネットワークを組んでいますけれども、なかなかそれの世話ができていない、あるいは網羅的に把握できていない、そういったところの、地味ですけれども、やはり人のネットワークというものをきちんと作っていくということが重要だというふうに思っております。
 最後のページでございますけれども、大学等の研究環境を国際化するということであります。これにつきましては、どちらかというと文部科学省の事業、WPIでありますとかスーパーグローバル、そういった事業が走っておりまして、その審査等のお手伝いをしているということでありますけれども、既に先生方御承知のように、いろいろ成果は出ている。WPIなどを見ますと、やはり外国人が来ても、何ら違和感のない研究環境。英語で何でも通じると、事務も含めてですね、そういったものをやることでありますとか、あるいは研究者を呼ぶに当たって、家族への支援とか、そういったものもやらなきゃいけないということで、いろいろな取組がなされているということだろうと思います。
 あえて課題として挙げておきましたけれども、先ほど研究費が使いにくいというお話をしましたけれども、来日した外国人にとって、研究しやすい環境というものを提供できているかということであります。それはすなわち、日本人にとっても研究しやすい環境ということだと思いますけれども。先ほど既に問題意識として、共用設備の話が出ておりましたけれども、やはりそういったものをきちんと備えて、そこに研究支援者を配置してというベースがあれば、外国人が来て、初めのお金があればすぐに研究が始められるということでありますけれども、日本でありますと、個々の研究室で購入した設備を動かすのは院生であるというような場合、外国人が日本人の院生を使って研究することはなかなか難しいですから、やはりそういったきちんとした整った環境を整備していく。
 そのために、本日は競争的資金の会議でございますので、競争的資金をどういうふうに活用するかということになりますが、科研費では24年度から、個々の科研費について共用設備を購入するということに使ってもいいですよとしています。ですから、皆さんが研究費から出し合って共用設備を買っていい。そのかわり、そこで浮いた運営費交付金を、例えば研究支援者を雇うのに使ってくれ。そういったことをやっておりますけれども、そういったことをもう少しいろいろなところで広めていく。そういった部分の改革も必要なのではないかと思っております。以上でございます。ありがとうございました。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 それでは続いて、科学技術振興機構からお願いします。同じく15分ということで、恐縮ですがよろしくお願いします。

【外村理事】
 JSTの外村でございます。資料3を御説明させていただきます。
 本日は、JSTのSICORPとかSATREPSという国際共同研究ではなくて、戦略的創造研究推進事業の国際化の取組事例について御説明させていただきます。
 2ページ目に、私どもが行っております戦略的創造研究推進事業の主要プログラムを書かせていただいております。チームがネットワークを形成するCREST、それから卓越したリーダーによる独創的研究課題達成型のERATO。それから、個人がネットワークを形成するさきがけ。それから、これら戦略的創造研究推進事業の中から出てきた優れた成果を産業界、あるいは産業化に向けた次の研究プログラムにつなぐためのPOCを確立するACCEL、こういったものがございます。これらは全て戦略目標、研究領域を達成するために、戦略的な基礎研究を推進しているというものでございます。
 次のページに、それらの事業におけるグローバル化の例を御説明しております。3ページでございますが、1には、日本国内の外国人研究者の支援でございます。平成25年から始めておりますが、毎年数か所で説明会を実施させていただいております。平成26年度は、そこに書いておりますように、さきがけで2人の研究者の採択がございます。それから、2に書いてございますのは、外国機関に所属する日本人研究者の支援。これはさきがけで行っておりまして、さきがけの領域の研究構想を実現する上で必要性の高い、必要不可欠なものについて研究総括が承認されて実施するということになってございます。さきがけでは数%が海外機関に所属されている日本人の方が活躍されているということで、例として、ワシントン大学教授の鳥居先生を書かせていただいております。
 それから、4ページ目でございますが、こういった戦略創造研究推進事業と、海外のファンディングとの組み合わせによる国際共同研究の取組の例でございます。一番上に書いてございますのはCRESTの「ポストペタ」領域でございますが、これはドイツのDFGが実施しておりますエクサスケール向けソフトウェア研究開発プログラム「SPPEXA」で公募しているものに対して、フランスのANRとCRESTの「ポストペタ」領域が参加するということで、日独仏の共同研究の推進を目指しております。これは2016年1月に採択が判明する予定でございます。
 その下は、CRESTの「エネルギーマネジメント」領域で、ここでは海外のファンディングエージェンシーであります、米国のNSF、それからドイツのDFG、それと今年からノルウェーのRCNと一緒になって共同でワークショップを開催しておりまして、エネルギーマネジメントシステム領域の研究ネットワークの形成等を行っておりまして、またこの中から共同研究というものが生まれてくるということを期待してございます。今年は4月にワシントンでワークショップを行ってございます。
 その下は、CRESTとさきがけの領域でございますが、米国NSFの国際プログラムでありますPIREに採択された場合には、CREST・さきがけの研究者につきましては、JSTが追加的に予算を支援するというもので、これにつきましては今年の7月頃に採択が決まる予定になってございます。
 一番下でございますが、これはCRESTの「エピゲノム」領域でございますが、国際的なエピゲノムコンソーシアム(IHEC)に参加いたしまして、各国が協調して進めているという状況でございます。
 それから次、5ページ目でございますが、ここに書いてございますのは、私どもが進めております、先ほどちょっと申し上げましたが、国際共同研究と戦略事業とをうまく関連付けたような取組というのを行っております。これは私どもJSTの国際共同研究事業でありますSICORPの研究総括に、CREST領域の総括が就任して、さきがけ・CRESTの研究者に是非にと奨励して、SICORP、海外との共同研究を促すというものでございまして、そこに書いてございますように、CRESTの分子技術の領域、山本総括の領域。ここで山本総括がSICORPの総括も兼ねられております。もう一つは喜連川先生でございますが、CREST・さきがけの総括をしていただいておりますが、SICORPのPOも兼ねて、こういったことを推進しております。
 それから、6ページ目でございますが、これまで御説明してまいりましたように、1、2に書いてございますように、戦略目標達成に必要不可欠な国際共同研究ということで推進してまいりましたし、また海外のファンディングエージェンシーとうまく関係を持って、戦略創造研究の国際化を推進するということを御説明しておりましたが、3に書いてございますのは、これから是非こういったことも進めていきたいということで、海外の有力研究者を日本へ招聘いたしまして、国際ネットワークを強化するということです。そういう仕組みというものを、今後検討していきたいというふうに考えておりまして、今、準備を進めているところでございます。
 そのようにいたしまして、戦略目標をより高いレベルで達成するために、国際的な共同研究を行う。また、国際的に活躍する若手研究者の育成を行って、頭脳循環を促進していく。また、世界の国際研究のネットワークにおいて、我が国の研究機関がハブ化を達成していくといったことを目的として、戦略創造事業の国際化ということを進めております。
 最後の7ページ目でございますが、いろいろこういった国際化の取組を進める上での実務作業面での注意事項等を書かせていただいております。共同研究をする際には、共同研究契約を作成して行いますが、その際に、一応私どものひな型で交渉を進めますが、いろいろ海外の研究機関とは交渉が長引き、難航するということもございます。特に知的財産の取扱い等については慎重に進めているところでございます。また、会計年度の差等もございましてやりにくい面もございますが、さきがけ等では複数年度契約ということで、その辺を少し緩和させて運営しているところでございます。知的財産は、先ほど申し上げましたけれども一番重要な部分でございまして、ここでは交渉に時間をかけて進めるということもございます。
 それから、来日される研究者のサポートですとか、通関・査証手続のサポート。国内の研究者にはない部分というものも発生する場合がございます。
 以上、戦略創造研究の国際化について説明させていただきましたが、最後に参考ということでつけさせていただいております。これがもともと本来、JSTの国際共同研究開発推進事業でございまして、SICORPという戦略的な国際共同研究プログラム。これは海外のファンディングエージェンシーとMOUを締結して、お互いの国で共同研究するのにふさわしい領域を設定して、お互いが公募して、それぞれのファンディングエージェンシーがそれぞれの国の研究者に支援するというものでございます。
 それから、SATREPSにつきましては、JICAと一緒になりまして、主に発展途上国に対して、その国が抱えている研究課題、社会的な課題の解決及び研究開発の推進ということで、日本の研究者に対してはJSTが支援いたしまして、海外の研究機関に対してはJICA様の方から支援するといった事業を、国際研究開発事業として行っておりますので、ちょっと参考として申し添えました。以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 それでは、この点について、事務局に論点をまとめた資料を作成していただきましたので、その説明をいただいた後、質疑応答と議論を行いたいと思います。資料4について、事務局から説明をお願いいたします。

【松尾振興企画課長】
 それでは、資料4の御説明を申し上げます。タイトルが、研究活動の国際展開の促進について~競争的研究費改革の観点から~ということでまとめさせていただいております。
 まず1.現状分析でございますが、NISTEP、これは報告書発表当時の旧名がここには書いてありますけれども、現在は科学技術学術政策研究所ですけれども、NISTEPの報告書によりますと、アメリカ、イギリス、ドイツというところが国際共著論文の相手としている国を、2000年近辺のところと2010年近辺のところで10年の経年変化を見ている調査レポートがございまして、アメリカの相手としての日本は、4位から7位に低下していると。イギリスの相手としての日本も9位から10位、トップ10から外に出てしまっている。ドイツも同じだという状況ですが、他方で中国は、ここに書いてあるように、順位を大きく上げているということであります。
 「また」というところですが、トップ10%の論文につきましても、国内の論文数は日本は他国とそんなに大きな数的に差はないんですけれども、国際共著論文ということになりますと、そこに書いてあるように、数的に大きな差があるということであります。
 2つ目の白丸、「さらに」ということですが、OECDの調査によりますと、他国との間で移動している研究者の平均数というものが、そこに書いてある数字のとおり、日本はかなり少ないという現状がございます。
 3つ目の白丸ですが、研究活動の国際展開につきましては、先ほど資料1で申し上げましたが、ここに書いてあるような論点を御提示いただいたわけでございますけれども、もう少し幅広く国際展開の促進についての論点をまとめてみますと、下の方の四角で囲ってありますとおり、学術分科会でございますとか、総合政策特別委員会のレポートから抜粋しますと、そこの4つにまとめておりますけれども、こういうことが指摘をされているということでございます。
 1つ目が、国際的な研究者コミュニティにおけるネットワーク形成。2つ目が、研究者の海外派遣や海外研究者の招聘の促進。3つ目が、研究者コミュニティを国際的にリードすることによる日本のプレゼンスの維持・向上。4つ目が、ある意味手段なのかもしれませんが、海外研究者の共同研究への支援ということであります。
 次のページにまいりまして、最初の白丸、「また」ですけれども、国際共同研究支援をされている機関の実務者レベルからの声といたしまして、次のような指摘がなされているということで、幾つかまとめてございます。1つ目の丸ですが、戦略創造事業、JSTプログラムということが分かってしまいますけれども、戦略創造事業につきましては、研究領域の設定に当たっての国際連携・共同研究という視点が、必ずしも今まで十分ではなかったということの反省が少しあるようでございます。それから、四角の中の2つ目の白丸ですけれども、海外の研究者を招聘するときに、国際的な水準のサポート体制が必要だということがずっと前から言われておりますけれども、改めて言われています。それから、四角の中の3つ目の白丸。国際共同研究につきましては、アワードイヤーや会計処理規則などが異なることなど、かなり手続が煩雑でありますので、研究者が所属する研究機関に高い事務遂行能力が求められるということであります。
 大きな2つ目の白丸ですけれども、「なお」ということで、国際共同研究についての海外との交渉につきましては、例えばWPIの事例でも極めて多くのリソースを使わざるを得ないといいますか、使っているという状況がございます。
 2.これまでの取組ですけれども、文科省におきましては、国際的な人材・研究ネットワークの強化でありますとか、地球規模の課題への解決の貢献でありますとか、そういうことに取り組んできているということで、以下2つほど白丸で書いてありますけれども、JSPS、JSTの取組が書いてありますが、ここは先ほど渡邊理事、外村理事から御紹介、御説明がございましたので飛ばさせていただきます。
 2ページ目の一番下の白丸でございますが、科研費につきましてもまとめておりますけれども、ここも国際共同研究加速基金のことも含めまして、渡邊理事から先ほど御紹介ございましたので、これも飛ばさせていただきます。
 次のページにまいりまして、3ページ目の一番上の白丸、「また」で始まっているところでございますが、戦略創造事業におけます、例えば国際的な合同ワークショップを開催していますとかいうお話も、先ほど外村理事から御紹介がありましたので、この白丸も飛ばさせていただきまして、2つ目の白丸、「WPIでは」というところですけれども、WPIの多くの拠点が海外研究機関と共同研究を行っておりますけれども、例えばということで東北大学の拠点では以下の取組が行われているということで、2つの黒ポツで書いてございますが、共同研究に当たっての事務手続として、拠点の事務部門であります国際ユニットというところが集中的に交渉を行う体制を整備されて、ノウハウも蓄積されていると。2つ目の黒ポツですが、今後WPI拠点の機能は、全学組織の方に発展的に引き継がれていくということで、そういう東北大学全体としての体制が整備されていくということになると聞いております。
 3.今後の改革の方向性の案でございますけれども、1つ目の白丸、主に科学技術外交の観点からの戦略的取組につきましては、科学技術・学術審議会の国際戦略委員会で既にずっとこれまでも今後も検討はされるとされておりますし、今後も検討されるということでございますので、ここでは学術研究でございますとか基礎研究がメーンになります競争的研究費において、国際展開促進を全体的な横串キーワードの1つとして位置付けるべく、以下のように考えてはどうかという観点でまとめております。
 丸の1つ目、大きく2つに分けてまとめておりますけれども、1つ目がファンディングプログラムに関してであります。1つ目の白丸、科研費につきましては、この基金を活用した取組というのを推進するとともに、新たな方策、括弧で書いてございますが、海外の優秀な外国人研究者を日本に招聘して、国際共同研究の中核とするための方策などの可能性を検討してはどうかと考えてございます。また、研究者の海外派遣につきましては採択後に実際に渡航するまでの準備期間は、これを各種いろいろな現在の所属機関とか行き先の機関の調整をするために準備期間を設けたりでありますとか、それから渡航中の代替要員――要員の員がちょっと違いまして申し訳ございません。誤字ですけれども。代替要員の確保をすることを支援するなどの仕組みを取り入れているところでありまして、今後とも現場ニーズというものを十分に踏まえた運用改善を行っていくことが必要であると考えてございます。
 次、4ページ目でございますけれども、戦略創造におきましては、戦略目標の策定過程において、当初から国際展開の観点を十分に踏まえるということに一層力を入れる必要があるかなということのほかに、スタートしてからも国際共同研究が推進されるような運営。例えば、研究者が研究期間中に国外に異動する場合に引き続き研究を推進できるようにすることなど、そういったことをスタートしてからも工夫できるようにしていってはどうかというふうに考えております。
 2つ目の白丸、「また」のところでございますけれども、戦略創造事業につきまして、先ほど外村理事からもお話がございましたけれども、分野・領域の特性に応じて、外国人研究者を研究代表者として我が国に招聘して実施するプロジェクトに重点支援をするということの可能性を検討してはどうかと思っています。この白丸の最後の方ですが、なお先ほど指摘もございましたけれども、招聘に当たっては、外国人研究者に対する国際的な水準でのサポート体制というものを考えていかなければならないかなと思っております。
 3つ目の白丸でございますが、アワードイヤーギャップへの対応につきましては、先ほどお話がございましたけれども、JSTの複数年にわたる委託契約というものはなかなかいい取組、かなりこの面での有効策の1つだというふうに思いますので、他の研究費配分機関にもグッドプラクティスとして推奨していくことが考えられるのではないかなと思っております。それから、「また」と書いてございますが、科研費の基金などのこういった基金化のメリットについても、今後も留意していくことが必要かなと思っております。
 それから、2つ目、2でございますけれども、研究機関の対応の側面に重点を置いたという意味ですけれども、いわゆる環境整備という言葉でまとめていますが、環境整備に関して幾つか書いてございます。先ほど申し上げましたWPI、東北大の事例を申し上げましたけれども、こういったようなグッドプラクティスでもあり、積み上げられたノウハウというものを収集して、好事例集として作成配布を行うということは考えられるのではないかということが1つ目。
 それから、「なお」ということで2つ目の白丸ですけれども、こういった国際共同研究を支援するということは、研究機関にとって業務量が極めて大きいということなんですけれども、こういった業務につきましては、まさに前回御議論いただきました間接経費等によって組織的に充実されるべきものではないかというふうに考えられます。したがいまして、間接経費に関する検討内容と相まって、研究機関の組織的取組を促進することが必要ではないかというふうに考えております。
 最後、同じような関係でもう一つ申し上げますけれども、4ページ目の一番最後の白丸ですが、国際共同研究をするに当たっては、次のページの上の方に書いてありますが、いわゆる外為法に基づきます、経産省の言葉でいう安全保障輸出管理という仕組みに対応することが必要となっておりまして、こういうことにつきましても、流れは経産大臣の許可が必要なわけなんですけれども、こういったスキームを学内にちゃんと取り入れて、研究者に余り負担にならないように学内でこのスキームを回していくということについても、やっぱりリソースが必要となっておりますので、こういったことにつきましても間接経費の対象として考えていかなければならないのではないかなと思っております。以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございました。以上、ここまでの説明に基づいて、30分ほど時間をとって質疑応答、議論を行いたいと思います。JST、JSPSの現状の分析をいただいたところで、いろいろまた感じられることがあるかと思いますし、それから事務局でまとめていただいた文章で、特に3.の今後の改革方向性案、これはかなり踏み込んだ御意見を出していただいております、ストレートに。ここら辺はしっかり消化して、キーワードについてもまだ初めて目に見るようなキーワードもあるかと思いますので、しっかり消化してこの会としてのはっきりした方針を出せるようにしていきたいと思いますので、御意見いただければと思います。どうぞ、御自由に発言いただければと思います。いかがでしょうか。
 それでは、お願いします。

【橋本委員】
 国際化の話はすごく難しいというか、なかなか私も実は頭の中できちっとまとまっていないといった状況です。今お伺いして、JSTもJSPSもいろいろなプログラムにおいて国際化するための様々な努力をされているということが十分感じ取れます。予算が十分取れるのであれば、このままのそういう取組で、みんなで努力していくということでいいのだと思います。しかしながら、今お話を伺っていて予算が厳しい中でどういうふうにやるかとなると、全体的な戦略を考える必要かあるのではないかと思いました。
 例えば、自分の経験で申し上げますと、欧米との付き合い方と中国との付き合い方とは全然違いますね。戦略も全然違うべきです。たとえば、欧米、特にアメリカの研究者は、日本に来るときに自分たちでお金を持ってくるという発想がないですよね。全部相手先のお金で来るという発想です。そして日本は、実際にお金を出すわけです。こちらで学びたいといって来るわけですから、自分のお金で来いって何回か言ったことがありますが、そういうファンドがほとんどないらしいのですね。逆に言えば米国などはそれでもやれる国なわけです。
 一方で中国はどんどん自国のお金で来るので、日本側からすれば受け入れるという立場でつき合えるわけです。中国に投資しようなどという発想はなかなか浮かばない。でも、ドイツの中国に対する戦略はずいぶん違うようです。ドイツのお金で中国にどんどん人をおくり、また中国から人を招くことも積極的に行って、長期的な視点でかなり戦略的に付き合っているようです。我が国は、そういう戦略性に欠けていますね。
もちろん資金が十分にあれば、我が国もどんどん海外から人を呼び、また人を出すということをすればよいのですが、実際はそういうわけにはいかない。この場の議論を超える内容かもしれませんが、たとえば競争的資金の何割ぐらいがそういう海外との交流目的に使われるべきなのかといったことを戦略的に検討していく必要がある。やはりどこかできちっと議論する必要があるのではないでしょうか。
 それからもう1点、細かいところで、現場の教授としての経験からなのですが、国際的な研究者を育成するのに有効なのは、優秀なモチベーションの高い大学院生を数か月でもよいから海外に派遣することだと思います。ほとんどの場合学生は驚くほど成長して戻ってきます。かつ予想以上に人的ネットワークを作ってくるというようなことがとても多いのです。ところがそういうことに使える予算はほとんどなくて、大学院のリーディングプログラムに入っていると、そのお金で行けるぐらいなのですね。このように、二、三か月でよいから大学院生が海外に行くというのは、とても効果があるのですが、そのための施策が不十分に思います。
 一方で、海外での学会に行く大学院生が日本はすごく多いですが、ただ行って発表、あるいはポスター発表して帰ってくるといった、無駄に予算が使われていると思わざるを得ないようなケースが多いように思えます。昔は学生が海外の学会に出席する資金を得ることが極めて難しくて、これはこれでとても問題でしたが、今のようにあまりにも簡単に海外出張させることができるというのも問題ではないでしょうか。

【濵口主査】
 ありがとうございます。国際化に関して、研究費で何割ぐらい投資すべきかというのは、JST、JSPSの基本的なお考えがありますでしょうか、そこら辺は。まだまだ厳しいとは思うんですけれども。そういう議論は中ではされておられますか。どのぐらい投資をすべきかとか。

【外村理事】
 現実はそんなに多くにはなっていないと思うのですけれども、どのぐらいが望ましいかという議論は、それほどはしていません。ただ、橋本先生がおっしゃったことは非常に重要な部分だと思うのですけれども、海外の共同研究についても、お互いの国でどういう領域の研究をすることが、それぞれの国にとって、科学技術にとってメリットになるかということで、JSTは日本の研究者に支援いたしますし、先ほど申し上げました国際化の取組につきましても、戦略目標を達成する上で必要不可欠な研究部分について、共同研究とかを実施するというレベルでございまして、国内の産業競争力強化とか、そういう部分にほとんど使われていると思います。
 ただ、それを達成する上で、多くの海外の研究者と情報交換するということは非常に有効だというふうに考えておりまして、いろいろな機会でワークショップを開いたり、シンポジウムを開催したりして、国際的なレベルをそれぞれで情報交換するという、そういうところを中心に今、進めているところでございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。どうぞ。

【笹月戦略研究推進部長】
 一言補足させていただきますと、外村が今申し上げましたのは、先ほどの私どもの資料でいきますと4ページ、5ページ目になります。海外のファンディングエージェンシーと一緒になっていくというところに最近力を入れておりまして、ここは競争的資金、我々の予算が限られた中で、いかに効果的に成果を上げていくかというところで、共同研究の相手方には海外のファンディングエージェンシーのお金を現地で使っていただきながら、共同研究をより有効なものにしていくという観点であります。以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。小安先生、じゃあお願いします。

【小安委員】
 いろいろな問題は、今回の資料に随分入れていただいているような気がします。アワードイヤーギャップにどう対応するか、会計処理規則のかたさをどうするかなどもはっきりとここに書かれていて、これを何とかすべきと書かれています。例えば、基金化を進める、規則を柔軟に運用するとかいうことで、解決できるものがたくさんあるということは、皆さん分かっていて、ここにも書かれている訳ですから、あとはやるしかないと、いうのが、今回の資料を見ていて強く感じることでした。なぜそれができないかというあたりを追及していった方が、良いのではないかという気がします。
 実際それらが障害になってできない共同研究がものすごくたくさんあるというのは、現場ではみんなが知っていることです。やはりそこを解決していただくのがまずは第一であって、しっかりとやっていただきたいというのが、私が今回この資料を見せていただいた上で、強く感じたところです。

【濵口主査】
 ありがとうございます。有信先生。

【有信委員】
 国際化が重要だというのは、様々な状況証拠が並べられていて、したがって国際化が重要だという議論になっているわけですね。つまり、何ゆえに国際化が重要かという議論がはっきりやられていない。そこの部分が、橋本委員が言われた、戦略性を議論すべきではないかという話にもつながっていくと思うんですよね。具体的な手段に関しては、今挙げられたように、小安委員が言われたように様々な制約があって、これを取っ払うというのが国際化にとって重要だというのは分かっているんだけど、じゃあ国際化を、それこそお金が十分にあれば何でもどんどんやればいいんだけど、戦略的に進めなければいけないということになると、1つは、外交的に外交戦略としてどうやっていくかという部分があって、これはここでの議論ではないのでそれを除くと、いわば研究的に見て、戦略的にどうやっていくかという話になると思うんですよね。
 そうすると、具体的には、これもかなり議論は必要だと思うんですけれども、結局必要な人を集めなければ研究成果として大きくならない。つまり、クリティカルマスが必要な研究領域というのはあるわけですよね。一定程度の研究者がそこに集積しなければ、大きな研究成果にならない。それがあちこちにいわばコアとしてそれぞれ研究の、大小ありますけれども、研究のメッカとしてあちこちにあるということになっていて、戦略的に国際化を図るとしたら、ある意味でWPIは日本の中にそういうメッカを作ろうという試みなわけで、日本に強い研究者がいればそういうところに集めて、ある程度のクリティカルマスを超える研究者が集められる。だけど、弱い分野に外国から研究者を呼ぼうといったって、普通来ませんよね。やっぱりそのときには、強いところに研究者を送って、これは時間スパンで戦略的に考えなければいけない話で、それを強化しながら戻してきて、日本として強化する。
 だとすると、日本の戦略目標は何かという話になる。結局科学技術政策という話になるわけで。その中で、イノベーションにつながるような戦略的な投資をどういうふうにやっていくかという観点の中で、グローバル化をどういうふうに考えるか。例えばJSTでやっている戦略的な基礎研究の話で、どういうふうにやっていくか。それから、JSPSのいわば学術的な基礎研究の部分でどうやるか、考え方がそういう意味では違うはずなんですよね。
 だから、そこを分けて考えるという話と、それからもう一つ、そういうものをやっていく上で一番重要なものに、コミュニケーションという部分があると思いますけれども、これについてJSTで、いわば関係者の同窓会を作っておられるということで、この試みは非常にいいと思うんだけれども、こういう地道な試みで、なおかつ効果的にそれを運用していくようなことを続ける。同窓会ということで名簿を作ってディストリビュートして、その程度で終わっていたのでは、多分機能しないわけですよね。
 例えば外務省だと、日本に来た留学生を年に1回ずつ、全員ではありませんけれども、招待をして、またお互いのコミュニケーションを図るようなことをやっていますけれども、それでもまだ十分に効果が出ていないような気もしますので、そういうような形でのネットワークをもっと積極的に作ることにも資金を入れる。しかしこれ、全然資金の手当のしようがないんですよね、研究費側から資金手当しようとすると。ということも重要だと思いますので、ちょっととりとめもなくなってしまいましたが、そういう点を是非配慮する必要があると思います。

【濵口主査】
 先生の最初に言われた、強い部分を強化するというのは、WPIがそうだと思うんですけれども、残念ながらWPIは今後、援助はほとんどなくなっていきますね。WPIは非常にパフォーマンスいいと思うんですけれども、やっぱり予算がないということが前提にあるのでしょうか。

【有信委員】
 そこはもちろんそのとおりだと思います。ただそのときに、それこそお金がふんだんにあるわけではないので、やはり身を切る部分も裏腹に主張しないといけない。やっぱり大学の中で、うっかり選択と集中なんて言葉使えないんですが、戦略的にある部分は縮小する。やっぱり日本として、全てに札を張れるわけではないというか、もちろん学術研究の部分は可能な限り札を張ればいいと思いますけれども、いわゆる戦略的な取捨選択……。

【濵口主査】
 オールラウンドは無理ですね。

【有信委員】
 ことになると、やっぱりそこは戦略的に札を張っていかなきゃいけないので、そうすると裏腹になる部分があるということは、やっぱりくっつけるべきだと思いますね。

【濵口主査】
 上山先生、どうぞ。
【上山委員】
 いろいろな論点があると思いますけれども、私は1つだけ。JSPSの発表の中の3ページ目にあります、海外での研究費の使い勝手と会計制度の問題ということだけについてお話をします。この話はいろいろなところで聞くわけですよね。海外でなかなか日本の研究費は使えないとか、あるいは会計制度、あるいは規制の仕方が違うために非常に使いにくいという話は、日本の研究者、あるいは海外の研究者からも聞くわけです。そして、資料4のところにも出てきていますけれども、この問題というのはアワードイヤーの課題と関係していると思います。つまり、会計年度をまたぐ形で研究費を使うことができるか、そのシステムをどのように日本でも取り入れていけるかということです。いろいろな形で基金制度を入れたりして改革をしてきているわけですが、まだまだそれは不十分だと。
 研究費は、どんどんどの国においても先細りというか、非常に競争が激しくなってきて、研究費をどのように効率的に、かつ不正が発生しない形で使っていくかというシステムを、ずっといろいろなところでやってきているわけですね。アメリカにおいてもNSF、NIH、それぞれのところが80年代ぐらいから会計の年度をまたいだり、あるいはいろいろな使用の目的に関しても規制を緩めていくという政策をやってきています。例えば、NSFでは、研究者がプロジェクトのスターティングのデートを、どの時点で自分の研究を始めるかの希望を研究者に聞いて、それを始めることができる。かつ複数年にわたって基金を使うことができる。自分の研究がいつ終わるかということもあらかじめ明示した上で、その基金を効率的に使うという体制を作ってきているし、NIHの場合は1年ごとの会計でチェックが入るわけですが、キャリーオーバーが非常にやりやすくする形をとってきているわけです。
 こういうことを積み重ねることによって、より効率的な資金の使い方ということをやってきたわけですが、非常におもしろいのは、フェデラル・デモンストレーション・パートナーシップというシステム、80年代半ばぐらいに入ったと思いますけれども、それは各基金、あるいはファンディングエージェンシーですね、様々な。もちろんあそこですとNSF、あるいはDOD、いろいろなところがあるわけですが、そのファンディングエージェンシーと各大学との間での基金の使用の仕方についてのパートナーシップを政府主導で作っていくというやり方でしょうか。ここの中にちゃんとアグリーメントとして入っていくと、その大学は非常に厳密な使用のされ方がしているし、信用がおけると認められて、例えばキャリーオーバーに関して、全くレギュレーションなしに行うことができるというシステムを作っていっているわけです。
 それは要するに、お金を出す側と受け手の側との間の信頼関係を、ある種のパートナーシップの形で完全に一致させていくという努力を行政当局が目指しているということだと思います。ファンディングエージェンシー側にも、果たして大学の研究者が正しい研究費の使用をしているかについての、一々調査をすることはできませんから、各大学における内部の研究費の使用についての調査といいますか、評価ということが必要になるわけです。ということは、大学の側の、例えば大学でいけば研究支援の部局みたいなものでしょうか。そういう部門が受け取った資金を効率的に使っているかということについての専門的な知識をもって、各ファンディングエージェンシー側のアグリーメントに臨まなければいけないということですから、大学の側の研究支援の体制にも非常に専門的な知識が要求されていくことになるわけです。ということは、そういう部門の人材が非常に必要になってくるということです。
 そういう意味では、ファンディングエージェンシー側と研究を受け取る側との間のアグリーメントをきちんと交わしていくような体制を行政的に主導していくということは、両方の面にとっても人材を作り出していくことになるでしょうし、それによって、例えば海外の研究機関に人を送る場合にはどのような問題が起こっているかについてさえ、大学の内部の中でちゃんと把握していくような体制ができ上がってくるんだと思いますね。そういうような目標を少し入れて、この問題をやがて海外的な展開につなげていく、一助にすればいいじゃないかなと思ったりしております。以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。先生の言われるキャリーオーバーを、日本的な制度でやろうとしたのが基金化だと思うんですね。基金化はちょっと今、後退しているように思えるんですけれども。これは文部科学省の政策の問題ではなくて、私、別に敵視するわけではないんですけれども、財務省の規制のもとで進められない。単年度会計が超えられないという問題があるんだと思うんですね。これを我々としてはどう打ち出して、どう変えていくかと。

【上山委員】
 だから、要するに、この問題がどれほど研究の現場に大きなダメージを与えているかについて、そのデータとか、あるいは根拠の提示がまだまだ薄いと思います。我々の日常的な経験で、これが大きな問題だということは分かるんですけれども、実際にこのことがどのような問題を引き起こしたかということを積み上げることによって、財務当局との交渉ということが起こってくると思うんですよね。そこの努力がちょっと足りないということと、JSTでも委託研究で実はキャリーオーバーを何年か認めているのですけれども、中期目標期間をまたぐ計画は不可ということになっているんですよね。だから、中期のところに目標期間があったときに、そこの近いところだと、やっぱり複数契約はなかなかできない。長期化できないという形に、どうしてもなってしまう。このこともやっぱりもう少し調査をしていき、先ほど言いましたように、これがどれほど大きな問題をはらんでいるかということを、財政当局なりに訴えていく必要があるんじゃないかなと思いますね。

【濵口主査】
 ほかは。どうぞ、角南先生。

【角南委員】
 ここの論点ペーパーで1つ私は重要な点が欠けていると思っているのは、人口減少が既に起きている我が国において、外国のトップの研究者がより多く日本で活躍するための制度改革を研究費の面からもしっかり行うことを明記することが必要ではないでしょうか

【濵口主査】
 ありがとうございます。竹山先生。

【竹山委員】
 制度的な仕組みのことで少し教えていただきたいところがあります。さっき話に出ました、外国に数か月留学させるというプログラムは、今までいくつもあったかと思います。例えば博士課程後期の学生を1年間海外に行かせるというプログラムも記憶にあります。また、リーディング大学院というプログラムの中で、学生を海外に送ることができたかと思います。ただ、組織レベルでのプログラムだと、そのメンバーであるか、そのプログラムに合っているか、という観点で行わなければなりません。研究者というのは、組織のプログラムで動くよりも、個々の研究をベースに活動しているので、学生を必要に応じて外国に留学させたいと思っています。
 例えば、個別研究として科研費がありますが、それに参画している博士課程の学生を共同研究先に留学させるにあたって、マッチングでもよいので補助してもらう制度があれば、と思います。どうしても組織レベルのプログラムだと、プログラム期間中は、約束した通りに学生を海外に送り出しますが、計画を消化することに注力するばかりで本当の意味での成果につながっているのかどうか疑問です。やはり研究に即した学生の育成を考えた送り方も必要かと思います。海外先で共同研究をし、そしてそこからの成果がリターンしてくるというような方法はないのかなと思うのですが、いかがでしょうか。

【濵口主査】
 ファンディングプログラムの今後の課題のところになってくると思いますね。学生を送るというところですね。ここへもう少し文言を追加するかどうかという、3.のところということだと思いますが、ちょっと相談させていただきたいと思います。
 藤巻先生、それから若山先生お願いします。

【藤巻委員】
 幾つか既に議論がありましたように、最初に国際展開の必要性がなぜ必要かということを、しっかり考えなければいけないんだろうと思います。私も、いわゆるトップ100に大学が入るために何をすべきかを検討する材料を見つけるために、いろいろな分析をしてまいりました。その中に、論文の国際共著率も当然あるわけですが、我々が抱えている問題を国際共著率で論じるのは少し矮小化されているように思います。今のファンディング形態を考えれば、ヨーロッパの国々が国際共著率が高いのは、ある意味当たり前ですよね。では、米国はどうかというと、思ったほど高くないんです。ですから、これだけを持ち出して、日本の国際性は低いですよと言われても、ちょっとそれはおかしな話かなという気はいたします。
 それともう一つ、トップ100の項目で日本のポイントが低いのはサイテーションの部分でなんです。でもこれは日本人研究者が少し努力をすれば、十分回復できるだろうと思っております。ただ、そうはいっても日本のプレゼンスが相対的に下がっているということ自身は、認めなきゃいけないだろうと思います。そのために論文の国際共著率を上げていくということであれば、必要であれば制度としても何か変える必要があるだろうと思っています。
 一番単純な方法として、例えばアメリカのプログラムなんかは、代表者はアメリカ人でなければいけないんですが、分担者は外国籍でも構わない。しかも研究は外国の研究機関でやっても構わないというような形になっています。今のいろいろな日本の支援制度が同じように実施できれば、もちろん知財などのことはありますけれども、比較的簡単に共著率というのは上がっていくんじゃないかなと思っております。外国人が外国の研究機関に所属したまま、日本のプロジェクトの推進を手助けするというようなことがもっと簡単にできれば、共著率自身は上がるだろうと思います。

【若山委員】
 ちょっと話が、最初の橋本先生とか有信先生のおっしゃっていた、戦略性ということに関連すると思うんですけれども、やはり研究領域というのは、少しアプリシエートして考えていかないといけないというふうな認識があります。例えば、私のように数学ですと、研究費は確かに必要ですけれども、そう大きな研究費は必要ではない。一方で、やはりここにいらっしゃる先生方の中には、大きな研究費が必要な分野もあるように、それは学問に応じて変わってくると思うんですね。実際日本の労働統計というのはちょっとよく分からないんですけれども、アメリカの労働統計なんかは毎年インターネットである程度調べることができて、それを拝見していると、いろいろな職業が書いてあります。
 その中で、研究者、研究職というのもずっと書いてあります。分野も書いてあります。そのときに、例えば数学者というのがあれば、バイオケミストもあれば、コンピューターサイエンティストもあります。そうしたときに、必要な学位とか年間の所得なんかも書いてあります。それから、今後この先10年間の職業の伸び率ですね。例えば、そこでのマセマティシィアンとあるマスとしては数学者ですが、大学の先生以外の数学研究者というのが3,600ぐらいおりまして、一方で例えばバイオケミストリーだとそれの10倍ぐらい。統計も10倍ぐらいとあります。それぞれは、例えば今後10年間、二十五、六%伸びるだろうというアメリカの予測があります。職業別に見ると平均的には、大体10%の伸び率だとのことです。
 そういうところも考えていきますと、結局日本が生み出していく研究者の方向ですね。これは大学院充足率にも関係してくるかと思うんですけれども、そういうところも含めてやはり考えていかないと、競争的資金で若手を雇用するといったときも、そこで途切れてしまっていっては優秀な人の人生がもったいないことになりますし、社会的にも無駄です。先ほどもお話があった人口減少で、日本の研究者が足りないという状況を考えたときに、改めて新しい問題が起きてくるんじゃないかと思っています。
 一方、ここのファンディングプログラムに関してというところで、例えば渡航中の教授・准教授等を厳選して領域外で出して代替要員をというようなこともお書きになっているわけですけれども、この代替要員も、ある意味では都会部だと、少なくとも人の手当、ふさわしい方がいると思うんですけれども、少し地方に行きますと、必ずしも分野によってはそう簡単ではない。そういうこともうまくすると、ある種のポジションを確保できるということにもつながってくるのかなと思いまして、そこも観点の中に入れていただければというふうに思う次第です。以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。はい。

【甲斐委員】
 国際共著論文が少ないからという理由で非難されるのは、ちょっと意味が分からないというご意見には同意しております。ただ、国際共同研究を増やそうという観点はよいと思います。それで現在のファンディングをよく見直して、何とか全体的に考えようというのは、当然一つの考え方ですが、それでどこかを減らしてどっちかへ移すとか、そういう議論を細かいところを見ながらやっても、あまり大きな展望が開けるとは思えないんですね。どう考えても資料にあったように、インプットが低い。諸外国はものすごい勢いで増えているのに対して、我が国はインプットをあげないままで、それと匹敵するような結果を出せという。このままの金額で何とか中を動かして、同じ成果を出させましょうというのはそもそも無理な議論だと思うんですよ。
 それだったら、科学における予算を獲得しようと考えていくというのが良い方向性だと思うんですけれども、そうすると日本の経済状況が悪いからそんなの無理だと言われる。そういう議論って、何かちょっと寂しいですよね。本当に科学が国力の源で、イノベーションの源で、資源だと考えているのだったら、少しずつでもいいから支援をしていこうというふうに思わせるというような案を考えたらいいんじゃないかなと思いました。
 それで、新たに打って出るとして、何から始めたらいいかを考えていました。短期間学生を送ったり、ポスドクを送ったりというのは、確かに若い人達に刺激を与える効果があるので、それは良いと思うんですけれども、現在でも結構ありますよね。それから、数か月学生を送るのも、現在のファンディングでやろうと思えばできます。実際にかなり多数行われていると思います。現在の制度で何がないかなと考えてみると、実は国際共同研究をしている先生方というのは結構いるんですよ。ただ、それのための特化した研究費というのが、すごく少ないと感じます。JSPSに2国間というのがあるんですけれども、かなりこれは限定されていて使いにくいです。いろいろな制約があって。実際に申請してみようと思うと、非常にやりにくくてできないんですね。それから、JSTの方にあるSICORPとSATREPSですか、これはいいと思うんですけれども、少ないですね。領域とかもいろいろと限られているんですよ。

【濵口主査】
 JICAとあわせるとか。

【甲斐委員】
 そうなんです。様々な制約があるのです。実は、多方面の領域で国際研究を実際に行っている研究者はたくさんいるんですが、その資金に苦労しています。国際共同研究支援の申請可能なグラントがほとんどない。だから、科研費のわずかなものを集めたり、運営費交付金や大学が持っているプロジェクトにかみ合わせたりとか、いろいろ工夫してわずかなお金でやっているんですけれども、継続してやっていくことは本当に難しいんですよ。どうして国際共同研究支援のグラントがないのかなと。これを例えば、SICORPとSATREPSをもっとうんと広げて自由にして、数を何倍増にでもしていただけると、これだけでも、実際に共同研究をやっている人たちがすぐにでも申請すると思いますし、成果はついてくると思います。
JSPSのやられている2国間ももっともっと緩やかにして、余り制約なくして、あとは件数をうんと上げていただくとか、そうしたら申請が増加すると思います。そういう改良はもちろん行うとして、広い国際共同研究を支援する研究費がないから、新たに立ち上げるとして要求案をつくれば、それは財務省というか、政府にもアピール性があるんじゃないかなと思うんです。それだけで、現在国際共同研究をやって困っているたくさんの先生方を支援できて、国際共著論文も一気に増えるんじゃないかなと思います。1つの提案です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。かなりポイントを。はい、井関先生。

【井関委員】
 ありがとうございます。今、甲斐委員のおっしゃったことは本当にそうだなと思っています。となると、先ほどの話ですが、国際共著論文が少ないということは、そんなことは関係ないんだと。ヨーロッパではあれだけ近距離なんだから、たくさんあって当然ということはそれでいいと思います。
 ただし、先ほど藤巻委員のおっしゃった、やっぱり国際的にプレゼンスが高くなく低いと。じゃ、これは何に起因しているというか、どうあれば日本はプレゼンスが高くなるのかということを考える必要があると思います。先ほど、多くの国際共同研究しているけれども、続けられないというお話がありました。では、その国際共同研究が続けば、それこそ国際共著論文も出て、国際プレゼンスが上がるのかということです。根本的に、どうしたら日本は国際的にプレゼンスが高くなるのかというところを考えるべきかと思うのですが。

【濵口主査】
 トップ10%の論文に入らないといけないですね。

【井関委員】
 トップ10%に入らないとということですか。

【濵口主査】
 クオリティの高いものをやらないと、だらだらとしたものを幾ら増やしたって、プレゼンスは上がらない。そういう意味では、WPIは正しかったんですよ。非常に正しい政策だった。

【井関委員】
 じゃ、そこの部分を何らかの形で継続していただくとか。あとは、それだけでなく、基盤も整えなきゃいけないですよね。基盤の部分をどのようにすれば、もちろんある部分は無駄になることを考慮に入れて、効率的に進めることができるかということも、少し考えていかなければならないのかなという気はいたします。

【濵口主査】
 済みません、お時間押しておりますので、大変申し訳ない、議長が下手で。3.のところ、よろしいですかね、方向性。改めて確認いたしますが。全体としては、1つはいろいろな意味で間接経費というのが重要であるということが、この方向でも分かると思います。研究者の、特に国際研究をやる場合の外国人の様々なサポートのためのシステム、資金というのは、科研費では補えない部分があります。家族のサポート等も含めてですね。そういう意味で、もう少し融通性のある、研究機関が組織的に研究環境の整備をできる資金というのが必要なのではないかと。
 それから、もう一つ全体として、この3.のところで強調されているのは、アワードイヤー、あるいは基金化の問題でありますが、これはこの委員会のレベルでは、JST、JSPSに今後検討をしっかりお願いするということだと思います。研究開発法人として、アワードイヤーをしっかり設定していただくということをお願いしたいなと。それから基金化も、文部科学省、あるいは研究者と連携しながら、財務省にしっかり働きかけることをさらに今後強化するということをお願いしたいなと思います。
 あと、よろしいでしょうか。外為法とかになってきますと、かなりまた複雑な課題になってきますが。
 ちょっとお時間押しておりますので、もう一つの論題、競争的研究における現代的要請への対応に議論を移したいと思います。

【松尾振興企画課長】
 申し訳ございません、事務局からでございますが、実は今日、参考資料3で、私が御説明申し上げた資料4の中にも一言お名前が出てくるんですけれども、科学技術・学術審議会の国際戦略委員会が昨年まとめたレポートを、参考資料3として配付をさせていただいておりまして、ここにある意味、科学技術外交というのにかなり重点、軸足を置いているんですけれども、その観点から全体の投資も含めて強化をしていくべきだという、ある意味国際戦略というのがここにまとまっております。今回は済みません、誤解を与えてしまったのかもしれませんが、この中から競争的研究費に関する論点というのを少しひねり出してこっちでまとめてしまったので、何となく戦略か欠けているように見えてしまったのかもしれませんが……。

【濵口主査】
 大本の議論がですね。

【松尾振興企画課長】
 はい。よく担当とも相談をしながら、戦略性が見えるように、こちらの方の検討会の材料も整理をしていきたいなと思います。申し訳ございません。

【濵口主査】
 ありがとうございます。国際性というのは、去年大分議論をいただいた点でありますが、もう一つの重要な点は、現代的要請への対応。これも去年かなり学術審議会で議論があったところでありますが、資料5に基づいて、事務局からまず説明をお願いしたいと思います。

【松尾振興企画課長】
 済みません、それでは簡単に御説明申し上げます。資料5でございます。競争的研究費における現代的要請への対応についてでございます。後で出てまいります現代的要請というのは、主に学術分科会で御指摘いただいた要望をそのままいただいております。
 1.各種報告書等における指摘ということで、繰り返しになりますので飛ばしながらいきますけれども、先ほど申し上げた資料1のところの論点を引きずって書いているということと、2つ目、3つ目、4つ目の白丸は、学術分科会や総合政策特別委員会での指摘。2つ目の白丸の上から3行目あたりに出てきますけれども、挑戦性、総合性、融合性、国際性というキーワードをお示しいただいておるところであります。
 次のページにまいりまして、これまでの取組ということで、実はこの紙では、先ほど申し上げた国際性、挑戦性、総合性、融合性という4つのキーワードの中で、国際性につきましては、先ほどの資料4で御議論をいただいております。そして挑戦性につきましては、いろいろな観点があるんですけれども、主に若手育成、人材育成という観点から、次以降での御議論に集約してやっていただければなというふうに思いますので、今回この資料5では、総合性、融合性というものの論点に主に絞って整理をさせていただいております。それが(1)に書いてあるわけなんですけれども、1つ目の白丸、科研費につきましては、分科細目の大括り化の検討開始でありますとか、特設分野研究というものを新たに実施して、この分野融合というのを引き出す新たな審査方式というものの導入に入っているということです。
 2つ目の白丸、戦略創造につきましては、そもそもがこの取組が組織・分野の枠を超えたバーチャル・ネットワーク型研究所というのを時限的に立ち上げてやるということでありまして、その立ち上げるときならず、立ち上げた後、運用中も多様な研究の融合というのを推進しながらやっていただいているというところであります。
 後で御質問があればお答えをしますけれども、ちょっと御紹介だけしますけれども、戦略創造の別メニューで、ALCAという先端的低炭素化技術開発というものがあるんですが、実は橋本先生に取りまとめ役をしていただいているプログラムなんですけれども、ここで先生に御主導いただいて、今までは一つ一つのテーマが最長10年走ってイノベーションに結び付けていくという基本的な性格だったものを、基本的に5年間見て、企業との共同研究、企業とのマッチングに育てていけるというものを目指して、一つ一つ単品で走らせるのではなくて、基本3つぐらい束ねて融合して、それで企業とのマッチングを図っていこうと。そういうふうに育つものについては大きな投資をして、取組を加速していこう。で、イノベーションに結び付けるという考え方を、まさに今年度から導入をしたということであります。
 それから、大学共同利用機関法人のことが4つ目の白丸に書いてございますけれども、そもそもそういう性格でございますし、自然機構でありますとか情報機構のセンターにおきまして、異分野融合の取組を実施している。それから、さらに平成20年に創設をいたしまして、今95拠点指定をさせていただいておりますけれども、国交省を通じた共同利用・共同研究拠点においても、そのような取組をやらせていただいているということであります。
 (2)事業間のシームレスな連携等に関してということなんですが、まず科研費につきましては、先ほどから出てまいります一部事業の基金化でございますとか、経費の合算利用、それから科研費のデータベースによる情報の公開ということに取り組むとともに、他のファンディングエージェンシーとの連携も徐々に進めてきているということであります。
 次に戦略創造につきましては、主に科研費からの移行というものを念頭に置いて、科研費の終了前であっても応募できるようにしているというような取組をさせていただいているということであります。
 3ページ目にまいりまして、さらにまた戦略創造でございますけれども、26年度、昨年度から科研費との連携強化を主に視野に入れて、戦略目標の策定手法を新しいやり方で導入をするということをやったところであります。戦略創造でさらにということなんですけれども、下流側といいますか出口側に向けて、産業展開に向けてということなんですが、NEDO等との対話でありますとか、産業革新機構と協力協定を締結して、研究成果から投資案件を検討していただくみたいな、そういうような取組を積極的にやっているというところであります。
 3.今後の改革の方向性案ということでございますけれども、1つ目がまず、現代的要請への対応、4つのキーワードのうちの総合性、融合性に関してでございますが、2つ目の白丸にまいりますけれども、総合性、融合性というものを促進するために、今後は専門的なディシプリンの深化をしていく、深めていくということのみならず、そのディシプリンの上に立って付加価値の高い新たな学際的・分野融合的な研究を促して、科研費だけでなく、競争的研究費の制度の枠を超えて、学際的、分野融合的な研究を促してイノベーションを追求していくということを広げて、基本的考え方にしてはどうかということであります。
 もともとの出発点でございます科研費につきましては、3つ目の白丸に書いてございますけれども、既に着手をしていただいているところでありますので、その実施方針・工程表を策定の上で総合的な取組を加速しながら取り組んでいくということかなと思っております。
 そして、戦略創造につきましては、科研費との連携をよくするために、今、ファンディング・マネジメント・データベース(FMDB)というものを新たに構築しようとしているわけなんですけれども、そういったものやNISTEPによるサイエンスマップといったものを活用して、それらを分析して、分野にとらわれない戦略目標・研究領域の設定でありますとか、異なる分野の領域アドバイザーの設定を行うでありますとか、スタート後も定期的な領域会議の実施を進めるとかいうことによって、進行中においても常に新たな融合、それから産業界との連携を段階的に進めていく、イノベーションに向けて具体的に一歩一歩進んでいくというような仕組みを強化することを考えていってはどうかということであります。
 4ページ目にまいりまして、また、間接経費の基本になるわけなんですけれども、こういった学際的・分野融合的な研究というのは、多くの場合組織の枠を超えた共同研究で行われることが多かろうということなので、研究者の所属する研究機関が組織の枠を超えた共同研究を組織的に支援するということが強化されることは極めて大事だろうと思いますので、間接経費の検討と相まって、そのような取組を促進していくことが必要ではないかと考えております。
 それから、(2)が事業間のシームレスな連携等に関してということなんですけれども、1つ目の白丸、研究費の全体を俯瞰して、それぞれの研究費制度の政策目的や役割を明確にした上で、連携であるとか可視化というものを進めていくことが大事かなと思っています。
 2つ目の白丸、まず戦略創造につきましては、先ほど申し上げましたデータベースを使った戦略目標の設定でありますとか、戦略創造事業というもののそもそもの性格に根差した具体的事業の進め方というPDCAサイクルを、科学技術・学術審議会の担当委員会で透明性のあるところでのPDCAサイクルを回していくことによって、他のプログラムとのシームレスな連携に関して具体的に改善策が積み上がってことができるかなというふうに思っております。
 3つ目の白丸、「また」ということで、戦略創造のうちのCRESTでございますけれども、4行目にスモールスタート方式という言葉が出てまいりますが、この検討会での御議論を踏まえて、小さなグループといいますか、いきなりCRESTの大きなところから始まるのではなく、もう少し資金的に抑えた小さなグループで開始をしてみて、目途ですけれども、3年後ぐらいに次のステップに進めるかどうかを評価しながら、そういうものであれば、イノベーションにつながるそういういい取組であれば、さらに大きくして加速化していくと。ある意味、ALCAのような取組イメージですけれども、そういったものを導入してはどうかということと、この丸の一番最後の方に書いてありますけれども、さらに成果を出口というものにつなげるための仕組みの強化というのを引き続きやっていかなければならないかなと思っています。
 それから、下から2つ目の白丸ですけれども、JSPS、JSTをはじめとしたファンディングエージェンシーによる情報交換は活発化しなければならないかなということと、それからJSPSとJSTは今、連携を順次率先して深めているところでありますけれども、さらにAMEDやNEDOなども含めて、ファンディングエージェンシー全体でつながりをよくする、連携をよくする仕組みを具体的に広げていくといいますか、導入していく必要があるかなと思っております。
 それから、最後の白丸、このページの一番下の白丸ですけれども、いわゆる研究費マップ、あくまで仮称ですけれども、こういったものを作成することによって、研究現場からの通覧性を高めるということと、将来的なファンディングの企画・運営をしやすくするということと、過度な集中を排除できる審査。この研究費はこういう性格なんだから、こういう審査の方針がいいんだなというふうに審査員で思っていただけるというようなことに資することが考えられるかなということでございまして、最後5ページ目でございますが、後でちょっと申し上げますけれども、文科省の競争的研究費をとりあえずプロットしてみたたたき台、研究費マップのたたき台というものも作ってみました。この検討会はもちろんですけれども、これをスタートにして検討を深めていただきたいということとともに、こういう方向性、こういうものを作っていくという方向性がよければ、例えばCSTIにお願いすることも含めて、政府全体でこういった取組を広げていくということも一案かなと思っております。
 その研究費マップの素案、試案たたき台でございますけれども、7ページ目にA4横で、研究費マップ試案(たたき台)というものをつけさせていただいております。まだ粗々なものでございまして、あくまでもイメージなんですけれども、例の3掛ける3のマップに、横軸が基礎、応用、開発、縦軸が学術、戦略、要請という、そういう3掛ける3のマップで1つプロットしてみるというのが分かりやすい1つのやり方かなということで、今日のところはそういう試案を作ってみました。学術のところに科研費があって、戦略研究のところに戦略創造、それから産業界とマッチングをしながらイノベーションをやっていくようなプログラムを含めた研究成果展開事業でありますとか、先ほど御議論いただきました国際科学技術共同研究推進事業というのが戦略研究にあって、例えば宇宙とか原子力とかAMED、ライフサイエンス関係、医療関係といいますか、そういったものを推進するものが国家課題対応型研究開発推進事業というふうにひとまとめにして、要請研究のところに入っている。議論のスタートにしていただければなということで、たたき台を作ってみました。あくまでもこれは位置を示しているだけでございまして、この箱の大きさとかいうことには余り意味はございませんので、その点は誤解をなさらないでいただければというふうに思います。
 済みません、御説明は以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございました。それでは、今の説明を踏まえて、御議論をお願いしたいと思います。どうぞ。

【有信委員】
 融合性、総合性というのは非常に重要な概念なんですけれども、ちょっと注意深く議論する必要があります。1つは十二、三年前にブタペスト会議でブタペスト宣言というのが出ていますよね。あの中で社会における科学、社会のための科学ということで、そこで言われたのは、基本的には個別のディシプリンでどんどんどんどん細分化されながら、知識そのものがどんどん先鋭化をしてきて、様々な科学的な知識を獲得した。しかし、社会における科学、社会のための科学という意味では、そういう先鋭化された知識を逆に社会に対して再構成をしていく。つまり、構成的に新しい知識を作り出すというサイエンスが重要であるというのは、ブタペスト宣言を踏まえて学術会議の中でずっと議論されてきたことです。
 つまり、サイエンスレベルで、いわば構成的に知識を作り出すことの重要性の部分と、それから、イノベーションという意味で総合的、融合的に知識を作り出すという部分と、これがごちゃごちゃになると、ある意味で多少入り組んでいるので全く無関係ではないんだけれども、そこの部分の議論を余りごっちゃにしてしまうと、議論が混乱する恐れがある。
 例えば、イノベーションを目的として、トップダウン的に目的が設定されて、それに必要な科学的知識をどう構成していくかというような観点で考えると、従来のように似た領域というか、ある意味でバウンドできる領域の分野が多少違うものを総合する、融合するというようなことでは追いつかない。全く違う分野の科学、あるいは技術を持っていきながら、新しい技術革新を起こしていかないと、イノベーションに結び付かないので、そこの部分のマネジメントの仕方はちょっと違ってくるんですね。ただし、逆に目的設定ができないと、融合性、総合性を考えなくていいかというとそんなことはなくて、やはりそれはボトムアップ的に物事を進めていく中で、新しい想像力としてこれが社会に対してどういう形で役に立っていくかという形でそれぞれの研究の方向性、ベクトルを決めないといけない。
 そのときに融合性、総合性というのが、いわば社会のためにとか、社会におけるとかいう観点の中で、例えばディシプリンベースで研究をやる場合には、そのディシプリンのいわばエクストラポレーションといいますか外挿で、この知識の行き着く先がどこになるか。あるいは、これを細かく細分していけば、どういう先鋭的な知識が得られるかということで研究が進むわけだけど、これとは違う方向にいく必要がある。今のディシプリンの延長上で、これを2倍、3倍にすればいいとか、ここの部分の分解能を2分の1、3分の1にすればいいとかそういう方向ではなくて、違う向きに研究が向かなければいけないというのがあるので、それはボトムアップベースでの融合性、総合性の観点は非常に重要なんだけど、それをいわばイノベーションレベルでの総合性、融合性とどういう形で折り合わせていくかという議論が必要です。これはもちろんファンディングをどうやるかということにもかかってくるわけですけれども、従来のようにシームレスにファンディングをやればいいというぐらいの単純な話でもないと思いますので、そこの議論を少し詰める必要があると思っています。

【濵口主査】
 ありがとうございます。では、どうぞ。

【大垣主査代理】
 ここの現代的要請のうち、国際も実は入りますし、それから融合という問題がありますけれども、それで最初のたたき台としての研究費マップ試案が出ておりますけれども、これ、全体ちょっと感じますのは、研究主体として大学がありますね、通常の。そのほか国立研究所がありますし、共同利用施設の研究機関。それから、もちろん産業界の研究セクターもあるわけですので、何かそういう国全体の研究主体を視野に入れたような形のマッピングが必要かなという気がちょっとします。もちろん書き込んではあるんですが。そのほか研究の内容にいきますと、地球規模での環境問題みたいな、国際的な約束の課題とか、それからこれはサテラップがやっていますけれども、ODA的な開発途上国援助型の形とか、国全体として国際的な問題で、かつ融合的な課題というのを抱えているわけです。そこがこの競争的資金の対象としても出てきていて、研究者もそこに興味を持つという人たちもいるわけですので、そこを意識した、ちょっと書き加え方がないかなと。
 その先には、競争的資金の中に融合や、産業界と融合するための制度上の設計ですとか、先ほどから出ている国際的な海外との資金の使いやすさとか、そういうことが出てくるのではないかと。マッピングにもうちょっと、まだこれは第1次ですけれども、日本全体が入るといいなと思いました。以上です。

【濵口主査】
 マッピングを3次元にしないとだめですね。はい、橋本先生。

【橋本委員】
 時間がないので、簡単に3点申し上げます。まず最初に、融合性等々については全くこのとおりだと思いますので、有信委員が言われたことも含めまして、是非それを促進するような方向にしっかり検討していただきたいと思います。
 それから、シームレスな連携に関してですが、このスモールスタート方式ですけれども、これは大変重要だと思うのですが、その上で、課題の採択数が多くなるということが重要なんですね。ですから、スモールスタートだけでは言葉が足りなくて、最初の採択数を増やすということと併せて行うということです。申請するほうから言えばもちろん資金を得られる確率が上がるからうれしいですし、一方、審査する側からみても、学術研究から次の段階へつながる初期の段階の審査というのは実は大変困難なわけです。ですので、最初は額は少なく、しかし採択数は多くといった形でスタートし、ある程度研究の進捗を見て数を絞り、額を増やすということのほうが確実です。是非このような考え方はメッセージとして重要なので、しっかり書きこんでいただければと思います。
 それから、マップに関してですが、研究資金の位置付けをあらわす上で極めて重要で、しかもよくできていると思います。ここに今入っているのが、このまま正しいかどうかは別として、分け方ですね。これは研究資金について、研究者に研究資金の位置付けを示すという意味においては極めて有効なものだと思います。近年、文科省が作った整理の中で、最高のヒット作じゃないかなと私は思います。是非これをしっかりと詰めていただいて、
 それから最後に、今日出なかったことですが、ちょっとだけ述べさせてください。間接経費の件ですけれども、これについて今、前回も少し述べましたが、他省庁とか産業界とこの問題について話をしていると、誤解を受けている部分があると感じます。すなわち、運営費交付金が減額されているので、その部分を間接経費、要するに競争的資金で埋めようと考えているんじゃないかという誤解が蔓延しています。そうじゃないのだということをしっかり伝える必要があります。すなわちこれは、研究環境を向上させることによって、直接経費がより効果的に使えるようになるものであるということと、もう一つは、やはり研究環境を向上して先ほど言われたような新しい分野等々に投資するような、そういうことを大学なり国研等々の執行部が考えていくための資金になる、ということですね。運営費交付金の埋め合わせといった安易な考えとは全く異なるということの論理をしっかり積み上げていただく必要があると思うのです。あわせて、この制度を導入することに関しての文科省の本気度です。これをやっぱり文科省が省を挙げて本当に本気でやるのだという意思を明確に示していただかないと、他省庁とか産業界に理解していただけませんので、そのための財源をどうするかということも含めて、しっかりと議論を続けてほしいと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。では、小安先生お願いします。

【小安委員】
 この総合性、融合性ということに関して、JSTにちょっとお願いしたいことがあります。私はかつてCRDSでフェローしていたことがあって、戦略目標などの策定に関わったこともあるのですが、翻って見るとそのときには余り社会科学的な観点がなかったと思います。先ほど有信委員がおっしゃったようなことを考えると、実は戦略目標を立てていくときに、それがどのように社会との関わりがあるかということは、かなり重要なことだと思います。そういう意味でいうと、CRDSでは自然科学分野の人間だけで議論していた記憶があるのですが、そこに社会科学的な観点を入れるような、そういう工夫をしていただくと、戦略目標が生きてくるのでないかなということを感じましたので、それをお願いしたいと思います。

【濵口主査】
 どうぞ、上山委員。

【上山委員】
 今の小安先生のお話を引き取る形で、前から考えていることなんですけれども、まず最初に申し上げたいのは、この4ページに書いてあるような、融合を促進するのは、大学のような、あるいはインスティテューションの組織的な取組がなければならないという考え方は本当に正しいと思います。なぜかというと、上から見てこういう分野とこういう分野が融合するなんていうことは実際のところは絵に描いた餅で、本当はその先端の研究者が一番よく知っているわけですね。どういう分野が融合していく可能性があるかということを。そこに一番近いのは、実は大学のような組織であるという、その視点を出さなければいけないと。そこから出てくるものが、本当の意味での融合性の高い分野ということになってきて。
 このキックオフのときにお示ししましたけれども、アメリカの大学の財務の中に、ディジグネーテッドファンドという特定の人が明確に規定されていなくて、大学の目的で使われる資金というのが70年代半ばぐらいから始まって、80年代に非常に大きくなっている。その動きを見ていると、マルチディシプリナリーなファンドのところに非常に大きく大学が資金を動かしているという実態が分かります。つまり、それはやっぱり融合性というものが今後の科学研究に非常に重要だということがあり、それへの研究費配分のディシジョンメイキングを大学が自ら行ってきているのですね。その結果として、融合分野が成長し、そこに大きな公的ファンディングがついてきたということもあるわけです。そういう意味では、大学のマネジメントが非常に重要だということを申し上げたいということと、もう一つは今、小安先生がおっしゃったみたいに、社会科学、人文科学の視点が非常に欠けているなと思います。
 多くの自然科学者と話していると、彼らが口をそろえて言うのは、実は社会科学、人文科学に対する期待なんですね。というのは、自然科学系の研究者にすれば、科学的な意味で正しいオプションを提供することができる、しかし、これが社会的にフィージブルがあるかどうかということは分からないとおっしゃる研究者が多い。つまり、彼らは自分たちがやっているところ以外のどのような変数があるか。どの変数を入れれば、自分の研究の問題が解けるかということが最も難しいのだと。これは単に自分のファンディングを取れるかどうかだけではなくて、まさに自分がやっている研究が最終的に社会でどのように帰着するかの解を求めているわけです。いくら研究をやったところで、社会的に帰着しなければ意味がないと。そのときの変数が我々には分からないのだという、非常に強い期待感があるんです。
 残念ながら、人文科学、社会科学はそれに応えていないと思います。経済学者も、実は科学研究に関して非常に関心が薄いんですね。自分の論文を書くことに必死ですから。それは確かに自分が論文を書いて名声を獲得したいって当然なんですけれども。こういう面でいうと、すぐにでも手をつけられる分野って幾つもあって。例えば、ライフサイエンス系でいうと、法律との共同的な学位をとることができるようなプログラムですね。とりわけライフサイエンス系でいうと、法的な側面というのはとても重要で、研究不正もありますし、ガイドラインもありますし、それから利益相反もありますし。ですから、アメリカでよくあるように、MDA、Ph.D.から、かつJDみたいなのを持っている人材を作り出すようなプログラムが、日本には非常に欠けている。大学はそういうようなことを提供していないと思います。
 それからエンジニアでいうと、これは明らかに経済学とビジネスですよね。だから、エンジニアの研究でPh.D.取っている人が、経済学、あるいはビジネスのところの問題もちゃんと勉強できるようなそういうプログラムが、まさに分野横断型のプログラムが実はないんですね。両方のディグリーを持っている人材がどんどん輩出してくるということがやっぱり重要です。そういう分野を超えたような部局の在り方を考えるきっかけになるというのも、融合性ということであって、そこにどのような形でファンディングをつけていくかということは、非常に重要なことではないかと常に思っています。それがあると、社会科学の側も、もう少し本気でこの問題に関わってくると考えています。
 それは恐らく、自然科学系の人たちにとっては、今本当に求めていることだということを実感として感じるんですね。そのことを、融合性ということに関して申し上げたいと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。競争的資金の改革は大学改革ですね。
 藤巻委員、どうぞ。

【藤巻委員】
 この資料5の1ページ目の四角の中の2つ目に、学術研究・戦略的基礎研究への現代的要請・社会的要請に応える研究をどのように支援するかということが挙げられているわけですが、これに関連して1つお話をしたいと思います。
 実は科研費もそうですし、それからCREST、さきがけ等々いろいろな競争的資金ございますが、そのときの審査は、もちろん採否を決めるというのが最も大きな仕事になるわけです。ただ、実は相当大きなエネルギーを審査員も払って審査しているということを考えると、ちょっと視点を変えて、応募してきた研究者の方を育てるといった視点をもっと強く導入するべきではないかなという気がしております。
 どういうことかというと、この社会的要請・現代的要請というようなものが、あなたの提案はちょっとここが足りないですよというようなことをしっかりと提案者に伝えて、再チャレンジできるような制度をもっと考えても良いのではないかと思います。例えば、先ほど橋本委員からお話があったように、まずは小さな金額から始めてその代わり件数はたくさん採択して、1年、あるいは2年実施してもらう。その結果、可能性が高ければ少し金額を増やしていくというような、幾つかの育てる方法があるのではないかなという気がします。ですから、審査員と提案する研究者側が一体になって、新しいものを目指すというような視点をもう少し取り入れてもいいんじゃないかなという気がしております。
 実はこの思想は、科研費の中の特設分野研究のところでは少し入っているかと思いますが、もう少し踏み込んで制度をほかのところにも展開しても良いのではという気がしております。以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。アメリカのスタディセクションがまさにそうですね。点数が出て、評価書に実際書いてあることは、実験やったことがあるかというぐらい踏み込んだ問題点の指摘がありました。大分そこは厳しいなといつも思っていたんですけれども。
 ほか、いかがでしょうか。よろしいですか。言い尽くしましたでしょうか。資料5に関しては、基本的に合意はあるということでよろしいでしょうか。
 それでは、これまでの意見をいただきながら、もう少し資料4、5のところは事務局と相談してまとめさせていただきたいと思います。よろしいですか松尾さん。発言ないですか。

【松尾振興企画課長】
 はい。ありがとうございました。

【濵口主査】
 それでは最後に、参考情報として、総合科学技術イノベーション会議における最近の検討状況を、参考資料1及び参考資料2により、事務局から報告をお願いします。

【松尾振興企画課長】
 参考資料1と2を御用意いただければと思います。前回、この検討会の場で、総合科学技術イノベーション会議の基本計画専門調査会での事務方が出した資料というのを御紹介申し上げて、この検討会で御議論いただいている論点と、方向性を密にして御検討いただいていますということを御報告申し上げたんですが、その専門調査会で中間取りまとめの素案というものが出されて御議論いただいていますので、その状況につきまして御報告申し上げたいと思います。
 参考資料1が専門調査会で配付された、中間取りまとめの素案であります。詳細は申し上げませんけれども、6のところに基盤的な力の育成・強化とありまして、人材とか学術基礎研究とかここで出てまいります。それから、7.のところで科学技術イノベーションシステムにおける人材、知、資金の好循環の誘導のところで、(2)で大学改革と研究資金改革の一体的推進という項目が出てまいります。ここのところだけちょっと触れながら、中身を御紹介申し上げたいと思います。
 まず、9ページ目をおあけいただきたいんですけれども、6、基盤的な力の育成・強化ということで、めくっていただきますと10ページ目、人材のお話が(1)として始まっております。詳細は省きますけれども、ここの検討会での共通すべき論点といたしまして、下から2つ目のパラグラフ、「(優秀な若手研究者の育成、確保、活躍促進)」というパラグラフですけれども、そこの下から3行目、4行目のところに、競争的資金等の研究代表者への人件費措置を検討するという項目が、ここのところで触れられていると。微にいった報告で大変恐縮なんでございますけれども、その論点がここで触れられております。
 それから、12ページにちょっと飛んでいただきまして、この6番の(2)が知の基盤の涵養というのが12ページにございます。この中で、言葉の御報告なんですけれども、一番下のパラグラフ、「(イノベーションの源泉としての)」というところなんですが、ここにCSTIとして基礎研究のほかに学術研究という言葉が入っております。学術研究の説明は、このパラグラフの下の方から実際に始まっております。
 それから、16ページにちょっといっていただきまして、これが先ほど申し上げた7の中の(2)大学改革と研究資金改革の一体的推進と、16ページの真ん中辺にございます。この文脈の中で、具体的には17ページ目の上の方に書いてありますけれども、上から3行目あたりから、大学に求めることとして、財務状況の可視化とかガバナンス強化とか、組織の新陳代謝促進とか、財源の多様化とか、そういった改革を推進することを大学に求めるとした上で、「あわせて」のところの数行後に書いてありますけれども、適切な間接経費の措置でありますとか、使い勝手の改善でありますとか、この前ここでも御紹介申し上げましたけれども、民間資金に対する間接経費については柔軟に対応、そういった論点がここのところに書かれておりまして、繰り返しになりますけれども、この検討会で御検討いただいている論点と方向性を一にしながら、今、御検討が進んでいるかなと思っております。引き続き連携をとりながら、方向性ができるだけずれないようにやっていきたいと思っております。以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。橋本先生に大分努力していただきました。橋本先生、御発言ありませんか。

【橋本委員】
 いえいえ、特に。ただ、まだこれはこれからも議論いたしますので、是非いろいろとまた御意見をいただければと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。それでは、お時間となりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。JST、JSPSの皆さん、どうもありがとうございました。
 それでは、最後に事務局から、第6回会議の予定について連絡をお願いします。

【松尾振興企画課長】
 一番最後、参考資料7というもので、1枚紙で今後のスケジュール(見込み)というのを配らせていただいております。次回の検討会は、5月22日の1時から3時ということでお願いを申し上げたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございました。それでは、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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