資料4-3 競争的研究費改革に関する論点整理(案)(3)

論点1)競争的研究費に関する総論(間接経費の今後の改善方策)について

(1)現状分析

○ 過去、競争的経費は、大学や独立行政法人等の研究機関(以下、「大学等」)における基盤的経費により用意される基礎的研究環境を活用することを前提としてきたが、競争的経費の拡大や基盤的経費の抑制等を背景に、このような考え方は実態に合わなくなってきたことから、「デュアルサポートシステムを前提として、基盤的研究資金を維持する観点からも、競争的研究資金から必要なオーバーヘッドを徴収する制度の導入は喫緊の課題」(「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について-『知的存在感のある国』を目指して-(答申)」(平成11年6月29日 学術審議会)等の指摘がなされてきた。

○ このような状況を踏まえ、第2期科学技術基本計画(平成13年3月30日 閣議決定)において、競争的資金をより効果的・効率的に活用するために、間接経費の導入が決定された。その際、間接経費の比率については、米国における例等を参考とし、30%程度を目安とされ、実施状況を見ながら必要に応じ見直しを図ることとされた。

○ 間接経費の役割としては、研究の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費を手当するとともに、競争的資金を獲得した研究者の研究開発環境の改善や研究機関全体の機能の向上に活用し、効率的かつ柔軟な使用を認めることで、研究機関間の競争を促し、研究の質を高めるものとされた。

(間接経費導入の趣旨)
  ・競争的資金による研究の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費を、直接経費に対する一定比率で手当
  ・間接経費を、競争的資金を獲得した研究者の研究開発環境の改善や研究機関全体の機能の向上に活用

(米国の例)
  NIHのグラントにおける間接経費支出は約30%(1990年~1999年度)
  ※ただし、直接経費から設備備品経費等を控除した補正額を基に算定

○ 間接経費の制度が導入されてから10年以上経過するが、昨今の厳しい財政状況の中、基盤的経費は継続的に減少するとともに、平成22年度の競争的資金の要件厳格化も伴い、競争的資金についても平成21年度をピークに減少し、近年横ばい傾向となっている。加えて、間接経費は本来、大学等が外部からプロジェクトを受けて持続的に経営していくために必要な経費として、あらゆるプロジェクトに適用されるべきところ、現在の内閣府のルールでは対象が競争的資金に限定されていることも背景に間接経費30%が措置されない各府省所管の研究費制度も多く見られるようになった。結果として、間接経費で行われるべき研究の質を高めるための活動を、基盤的経費により行わざるを得なくなったことから、基盤的経費及び外部研究費の双方の取組がともに効果を十分発揮できなくなっている。

○ このため、間接経費の意義・必要性について改めて確認するとともに、研究者と所属機関の効果的かつ適切な関係の観点も踏まえ、間接経費の本来の役割を果たすことができるよう、以下、具体的な改革方策を実行していくことが必要である。

(2)今後の改革方策(案)

1)間接経費の意義・必要性の再確認・徹底
○ 間接経費の本来の役割を再確認し、大学等及び所属する教員等への周知・徹底を図る。その際、大学等においては、外部資金による各研究を実施するに当たり発生する必要経費を透明化し、所属する教員等への周知に努めることが必要である。加えて、間接経費は研究の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費であることについて、産業界等に対しても一層の理解を求めていくことが必要である。また、このことを通じ、大学等とステークホルダーが対話を深めていくという観点も重要である。

2)間接経費の措置対象経費の拡大
○ (1)で確認したとおり、現状においては、文部科学省の研究費等だけではなく、他府省や民間企業の研究費等においても、間接経費が十分に措置されていないものが多くあり、これらについて、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)や経済団体等に提案を行い、間接経費の措置対象となる経費を拡げていくことが必要である。

○ なおこの際、以下のような論点については引き続き検討が必要ではないか。
  ・間接経費の使用に当たっての機関としてのガバナンスの発揮方法と、説明責任を果たすための使途の透明化や使用実績の公表の在り方(大学の財務会計の在り方を含む)はどのようなものか。間接経費の使用に係るグッドプラクティスを抽出し各機関に奨励することが重要ではないか。
  ・研究現場の創意工夫を促し研究の質を継続的に高めていくうえで、研究者と所属機関の適切な関係はどうあるべきか。
  ・外部研究費以外の経費を含め、間接経費の措置対象経費の範囲はどのようにすべきか。
  ・間接経費の措置対象経費の拡大に際して必要となる財源をセットで考えるべきではないか。

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科学技術・学術政策局研究環境課競争的研究費調整室

(科学技術・学術政策局研究環境課競争的研究費調整室)