国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議 技術設計報告書(TDR)検証作業部会(平成30年1月~)(第1回) 議事録

1.日時

平成30年1月30日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 本作業部会の議事運営等について
  2. 前回からのILC計画を巡る状況について
  3. ILC計画の見直し(国際リニアコライダー加速器のステージングに関する報告書2017)について(一部非公開)
  4. その他(非公開)

4.出席者

委員

横溝座長、熊谷座長代理、大町委員、加藤委員、上垣外委員、北村委員、小磯委員、佐々木委員、田中委員、近久委員、内藤委員、野田委員

文部科学省

磯谷研究振興局長、板倉大臣官房審議官(研究振興局担当)、渡辺振興企画課長、岸本基礎研究振興課長、轟素粒子・原子核研究推進室長、吉居加速器科学専門官、三原科学官

オブザーバー

高エネルギー加速器研究機構 道園教授、高エネルギー加速器研究機構 宮原特別技術専門職

5.議事録

【吉居加速器科学専門官】  それでは、時間となりましたので、始めさせていただきます。
これから国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議、技術設計報告書(TDR)検証作業部会を開催させていただきます。本日は第1回でございますので、まず事務局からご説明させていただきます。
まず本日の会議の前半は公開です。冒頭のみカメラ撮影を行いますので、ご承知おきください。撮影希望の方はお願いいたします。
本日は、お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。先月12月5日に開催されました第8回国際リニアコライダーに関する有識者会議におきまして本作業部会の設置が決定されました。本日はその第1回となりますが、まず開会に先立ちまして、事務局より2つ連絡事項がございます。
1つ目、本会議の座長につきましては、さきの有識者会議で座長より指名された総合科学研究機構、横溝先生にお願いしております。前回のTDR部会から引き続きとなりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
2つ目、後ほど本会議の議事運営でも会議の公開と非公開につきましてはご説明させていただきますが、座長とも事前に相談させていただきまして、本日の会議は議題の3の1までを公開とし、それ以降は非公開とさせていただきます。
それでは、横溝座長に進行をお渡しいたしますので、よろしくお願いいたします。

【横溝座長】  それでは、国際リニアコライダーに関する有識者会議、技術設計報告書(TDR)検証作業部会(第1回)を開催いたします。
本日はご多忙のところ、お集まりいただき、誠にありがとうございます。本会の座長を指名されました横溝でございます。前回も座長をやった経緯で頼まれたと考えておりますけれども、前回よりは時間が経過していて、見直しをしているというところで大きな責任を感じております。そういうことで、しっかりした部会となりますように皆さまのご協力をよろしくお願い申し上げます。
それでは、カメラ撮影ですけれども、よろしいでしょうか。ここまでとさせていただくということでお願いいたします。
続いて、本日御出席いただいております委員と文部科学省からの出席者について事務局より紹介いただきたいと思います。第1回ですので、委員の方は、紹介されましたら、簡単に一言ずつ御挨拶をお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  それでは、本日御出席いただいております委員の皆様を、資料2に委員の名簿がございますので、併せて御覧いただければと思います。資料2の名簿の上から、大町委員から御紹介をさせていただきます。一般財団法人ダム技術センター、大町委員でございます。

【大町委員】  大町でございます。出身は土木の分野でございまして、特に地震工学、あるいは耐震工学、そういった分野を専門としております。どうぞよろしくお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  日本アドバンストテクノロジー株式会社、加藤委員でございます。

【加藤委員】  加藤でございます。よろしくお願いいたします。以前は超伝導マグネット、J-PARC等の建設に関与させていただきましたので、その経験を生かして参加させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  理化学研究所、上垣外委員でございます。

【上垣外委員】  理化学研究所の上垣外でございます。和光にある理研でRIビームファクトリーという重イオンの加速器をやっております。よろしくお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  北海道大学、北村委員でございます。

【北村委員】  北村でございます。よろしくお願いいたします。昨年の2月まで野村総合研究所に勤務しておりまして、その際にいろいろなILC関係の調査に携わらせていただきました。4月以降、北海道大学の今のこの学院に奉職しているということでございます。よろしくお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  公益財団法人高輝度光科学研究センター、熊谷委員でございます。

【熊谷委員】  熊谷です。私は加速器全般、電子、ハドロンも含めて、いろんな経験をしてきておりますので、そういう意味で参加させていただいているものだと思っております。よろしくお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  高エネルギー加速器研究機構、小磯委員でございます。

【小磯委員】  KEKの小磯でございます。よろしくお願いいたします。私は電子陽電子リングコライダーSuperKEKB加速器に携わっております。ちょうど今、エントランスのところでSuperKEKBの展示を行っておりますので、お時間ございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  同じく高エネルギー加速器研究機構の小関委員は本日所用で御欠席でございます。続きまして、上海科技大学、佐々木委員でございます。

【佐々木委員】  実は私、広島大学を定年して、昨年の12月から上海科技大学に赴任しました。今やっている仕事は、というか、始まったばかりですけれども、X線のFELを中国にも作ろうというプロジェクトがちょうど始まったところで、若手の指導も含めて、上海科技大学でプロジェクトを始めるところでございます。よろしくお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  理化学研究所、田中委員でございます。

【田中委員】  理研の田中です。よろしくお願いいたします。私は理研の播磨キャンパスで光源加速器をずっとやってきておりまして、今回のこの作業部会でも今までの経験が生かせればと思います。

【吉居加速器科学専門官】  株式会社地盤システム研究所、近久委員でございます。

【近久委員】  近久です。よろしくお願いいたします。私、山口大学退任後、小さな会社を作っていくつかの会社や組織の技術指導をしております。専門は岩盤空洞の計画や設計、特に大きな空洞や、一般の人が常時入るような空洞の設計や計画を幾つか実施してきました。よろしくお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  高エネルギー加速器研究機構、内藤委員でございます。

【内藤委員】  高エネ研の内藤です。よろしくお願いします。私は東海村でJ-PARCの方をやっていまして、直接的に電子の加速器は担当していないんですけれども、大きな加速器をやっているということで力になれればと思っております。よろしくお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  放射線医学総合研究所、野田委員でございます。

【野田委員】  放医研の野田でございます。私は放射線、重粒子線がん治療装置に関わる加速器の開発をやってまいりました。今後ともよろしくお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  ありがとうございます。本日は12名の委員に出席いただいており、定足数の7名を満たしておりますので、会議は有効に成立しております。
また、素粒子物理分野の文部科学省科学官・高エネルギー加速器研究機構教授の三原先生、それから、本日御発表いただくリニアコライダー・コラボレーション、ILC研究グループリーダーを務めておられます高エネルギー加速器研究機構教授の道園先生、同じく、高エネルギー加速器研究機構特別技術専門職の宮原先生にも御出席いただいておりますので、紹介させていただきます。
続きまして、文部科学省からの出席者を紹介いたします。研究振興局長の磯谷は用務の関係から、本日の会議は、後半からの出席となります。会議の終わりに一言挨拶をさせていただければと思います。研究振興局担当大臣官房審議官、板倉でございます。

【板倉大臣官房審議官】  板倉でございます。よろしくお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  振興企画課長、渡辺でございます。

【渡辺振興企画課長】  渡辺です。よろしくお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  基礎研究振興課長の岸本は少し遅れております。基礎研究振興課素粒子・原子核研究推進室長、轟でございます。

【轟素粒子・原子核研究推進室長】  轟です。どうぞよろしくお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  私は専門官の吉居と申します。どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

【横溝座長】  どうもありがとうございました。それでは、続いて、事務局より配付資料の確認をお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  お手元の資料を御覧ください。資料1は、本作業部会、TDR検証作業部会の設置について、資料2が委員名簿、資料3が議事運営規則(案)、資料4が、束ですが、「前回からのILC計画を巡る状況について」、資料5が、本日御発表いただきます道園先生の資料で、TDR及びステージングに関する報告書概要、それから、資料6でございますが、「作業部会における守秘義務について」、資料7がまた道園先生の御発表資料で、コストの概要、資料8が、道園先生の資料で、「前回のTDR作業部会の指摘事項について」、資料9が「今後のスケジュール」となっております。
参考資料は1から9がございまして、英文資料には日本語訳を付けております。詳しくは後ほど議題2で御説明させていただきます。
また、机上資料としまして、ドッチファイルを置いております。これまでの関連資料をとじておりますので、適宜御覧いただければと思います。
本日は、議題の3の2から会議を非公開にいたしますので、一般傍聴の方には資料5までと参考資料の1から9を配付しております。
以上、不足の資料がございましたらお知らせ願います。以上でございます。

【横溝座長】  ありがとうございました。それでは、議事に入ります。議題1として、本会議の公開の在り方など、議事運営の方法等について事務局から説明をお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  御説明させていただきます。資料1を御覧ください。本作業部会の設置についてという資料でございます。短い文章ですので、読み上げます。
「1.趣旨。国際リニアコライダー(ILC)計画の実施の可否を判断するに当たり課題とされているコストや技術的な性能の確保などについて、専門的見地から検討を行うため、国際リニアコライダーに関する有識者会議の下に『技術設計報告書(TDR)検証作業部会』を設置する。」
ここまでは前回と同文でございます。ここからが新しく足された分ですが、「平成29年11月に国際研究者コミュニティから公表されたILC計画の見直しについて、特にコストや技術的フィージビリティ等について検証し、留意すべき点について専門的見地から検討を行う。」
「2.業務」としまして、「平成29年11月に公表されたILC計画の見直しにおけるコストや技術的フィージビリティ等」「その他関連する事項」となってございます。
以上が資料1でございます。
続きまして、資料3、本作業部会の運営規則(案)を御覧いただければと思います。この規定の中で大事なところだけピックアップして読みたいと思います。
第2条第3項、「座長が作業部会に出席できない場合は、あらかじめ座長の指名する委員が、その職務を代理する。」
第3条、「作業部会は、作業部会委員の過半数が出席しなければ、作業部会を開くことはできない。」
それから第5条、作業部会は原則として公開する。ただし、座長が会議を公開しないことが適当であるとしたときは、この限りではない。」
第6条、「座長は、作業部会における審議の内容等を、議事概要の公表その他の適当な方法により公表する」となってございます。
以上が本作業部会の運営規則(案)でございます。以上でございます。

【横溝座長】  ありがとうございました。これまでのところで何か御意見、御質問ありましたら、お願いします。
特にないようでしたら、本会の議事運営につきましては、資料3のとおり決定させていただきます。
座長代理につきましては、運営規則第2条第3項に基づき座長が指名することになっておりますので、私としては熊谷委員に座長代理をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
では、こちらにお移りください。
本日の会議の議題3の2からは具体的なコストを含む議論となりますので、運営規則第5条に基づいて非公開とさせていただきたいと思います。傍聴の方は議題3の1が終了した時点で御退席を頂きますよう、お願いいたします。
それでは、次の議題に参ります。本作業部会は平成26年度に計6回開催され、報告書をまとめました。その後、現在までの有識者会議、海外の研究者コミュニティ等の状況について、事務局より説明をお願いします。それでは、事務局、よろしくお願いします。

【轟素粒子・原子核研究推進室長】  御説明いたします。前回の当作業部会を含め、ILC計画を巡る状況について御説明します。
資料4に沿って時系列で御説明しながら、適宜参考資料の内容も御紹介させていただきたいと思います。まず平成25年5月に文部科学省から日本学術会議へILCに関する審議を依頼しました。同年9月にその回答がありましたが、それが参考資料1、1ページです。その中では、ILC計画の我が国における本格実施を現時点、平成25年時点において認めることは時期尚早であり、ILC計画の実施の可否判断に向けた諸課題の調査・検討を政府においても進めることを提言されました。
これを受けまして、平成26年5月に文部科学省に有識者会議を設置しました。参考2の3ページをごらんください。学術会議によって示された重要課題について、専門的な観点から検討を行うため、まず、技術設計報告書(TDR)検証作業部会、本部会と素粒子・原子核物理作業部会を立ち上げて御議論を頂き、それぞれ作業部会として報告を取りまとめした。
参考3、5ページを御覧ください。これが前回の本部会において取りまとめいただいた報告です。簡単に振り返りますと、1ポツでILC計画の見積もりの概要、2ポツでTDR上のコストのリスク要因や技術上の課題、3ポツで実施の可否判断における留意点をお示しいただいております。
この本部会からの報告と素粒子・原子核物理作業部会からの報告を踏まえて、平成27年6月の有識者会議において、これまでの議論のまとめが報告書として取りまとめられました。その提言部分を抜粋したものが参考資料の4、11ページになります。このうち、特に本部会に直接関わるのは、提言2の後段、技術面での課題の解決やコスト面でのリスクの低減について明確にすることが必要という部分、それから、提言2の下の2つ目の丸、作業部会等で指摘された技術面及びコスト面での課題については、その解決に向けた取り組みにより、より明確な見通しを得ることが必要であるというところになろうかと思います。
今回再設置された作業部会においては、これらの報告や提言を十分に踏まえて再検証を進めていただく必要があると思いますので、この点、御留意いただければと思います。
さて、その後、有識者会議においては、平成28年7月に「人材の確保・育成方策の検証に関する報告書」を、平成29年7月には「体制及びマネジメントの在り方の検証に関する報告書」を取りまとめて公表しております。
続きまして、参考5、13ページを御覧ください。有識者会議における検討とは別に、平成28年5月より、米国エネルギー省と文部科学省による日米ディスカッショングループを設置しております。これまでの意見交換により、ILC計画の実現可能性を高めるためにも大幅なコスト削減が重要との共通認識の下、KEKとフェルミ国立加速器研究所の間でコスト削減に向けた日米共同研究を開始しております。
行政のレベルではこうした検討を行ってきた中で、研究者コミュニティにおいては、昨年11月にカナダで開催されたリニアコライダー国際推進委員会LCBと国際将来加速器委員会ICFAが開催され、ILC計画の見直しが公表されました。この計画の見直しに関する資料は大部ですので、今の資料4とは別途、右肩に参考資料と表記された資料の中で整理しております。簡単に資料の御紹介をいたします。
一番最後にある参考資料9を横に置いて御覧になりながらお聞きいただければと思います。今回、研究者組織のLCC、リニアコライダー・コラボレーションでILC計画の見直し案がまとめられました。見直し案は科学的意義と装置の2部から構成されています。参考資料3が科学的意義、参考資料4が装置となっています。それぞれ参考として日本語訳を付けております。
その2部のレポートから構成される見直し案がLCCから上位のLCBにおいて審議され、更に上位のICFAに諮られた後、公表されております。その際、LCB、ICFAからそれぞれ声明が発表されており、参考資料1がLCBからの声明、参考資料2がICFAからの声明となります。
以上の資料のうち、特に参考資料1、LCBの声明が重要となりますので、概要を御紹介します。参考資料1の裏面にある日本語訳を御覧ください。LCBの声明では、第1段落で、LCC等の検討結果はヒッグス・ファクトリーとして250GeVのILCを建設することには十分な物理的意義があることを示しているとし、第2段落で、当初提案された500GeVのILCと比較して、加速器のコストが最大40パーセント低下すると推定され、これらの理由からLCBは、250GeVのILCを日本に建設することを強く支持し、日本政府が当該提案を本格的に検討していただけるよう推奨するとしています。
また、第3段落で、最近の同様の国際プロジェクトの例では、ホスト国が主要な費用負担を行っており、加速器をホストすることが明確に意思表示されれば、日本と国際的なパートナーとの交渉が開始され、また、他国の関係者も可能な貢献について自国政府と有意義な議論を開始することが可能知なると述べられています。
その下の脚注1にILCと近い分野の最近の例として、ドイツにある欧州XFELとFAIRの記述がありますが、これについては、参考資料6と7を御覧ください。まず参考資料6のXFELは、建設コストが約1,640億円で、費用分担はドイツが58パーセント、参考資料7のFAIRは、建設コストが約1,700億円で、費用分担はドイツが約75パーセントとなっており、いずれもホスト国が主要な費用負担を行うプロジェクトがILCと近いプロジェクトとして例示されています。
以上が今般の研究者コミュニティにおけるILC計画の見直しの概要ですが、これを受けて、先月、第8回有識者会議が開催され、TDR検証作業部会、本部会と素粒子・原子核物理作業部会の再設置が決定されました。本部会においては、本日この後、今般のILC計画の見直しのうち、装置のレポートを中心に道園先生から御説明を頂き、委員の皆様に専門的見地からの検証をお願いするものです。どうぞよろしくお願いいたします。

【横溝座長】  どうもありがとうございました。いろいろな資料があって、ちょっと分かりにくいところがあったかと思いますが、これは議論しないで次に進めたいと思います。よろしくお願いします。
それでは、次の議題に参ります。議題3はILC計画の見直しについて、まず1として、特に変更ありませんが、前提となるTDRをもう一度概観し、続いて、今回11月に公表された「国際リニアコライダー加速器のステージングに関する報告書2017」の概要について、取りまとめに参加されました道園先生より説明いただきたいと思います。
それでは、道園先生、よろしくお願いします。

【道園教授】  道園です。では、簡単に、TDR及びILCのステージングに関する報告書2017の概要ということで御説明させていただきます。
まず、TDR概要をご説明します。これは模式図ですけれども、全長が大体33.5キロメートル、それから、重要な技術としては、ナノビーム技術ですね。衝突点付近で大体6ナノメートルに絞ると。それから、長い直線加速器の部分での超伝導を使った技術、これが大きな技術で、31.5メガボルト/メートルの電界で加速します。
これは国際リニアコライダーの組織構造の模式図ですけれども、ICFAの下にLCBがあって、その下にLCCがあります。このディレクターはリン・エバンスさん、副ディレクターは村山さんです。私はILCの研究グループのリーダーを務めております。
超伝導の将来のもう少し高いエネルギーのリニアコライダーについて、CLICと呼ばれるものがCERNで研究されておりますけれども、そのグループリーダーがスタイナー・スタップネスさん。それから、物理・測定器のグループリーダーがジム・ブラウさん。こういう形です。
ILCのまた模式図ですが、中心部に物理測定器がありまして、片側16キロメートルずつのトンネルで、超伝導の加速技術を使って電子と陽電子を加速して衝突実験を行っております。山の中に、地下に作られるということを想定しております。
これが一番長い部分の主線形加速器のトンネルの断面図です。右側にクライオモジュールが、左側にはいわゆるアクティブな素子、高周波源でありますとか、電源関係、こういったものが配置されます。
合計1万6,000個の超伝導空洞を作ります。クライオモジュールと呼ばれる低温容器中にこの超伝導空洞を収めて、2ケルビンですね、マイナス271度の低温状態で高周波を投入して電子や陽電子を加速します。
世界の超伝導加速器ですけれども、XFEL、これがドイツのハンブルクに建設されております。2017年よりビーム運転が開始されておりまして、800個の空洞を使っております。ILCと同じパルス運転で17.5GeVのエネルギーです。
それから、もう一つ、SLACで建設しているLCLS-2というものがあります。ここでは大体280個の空洞を使って4GeV、こちらはCWですけれども、の運転を目指すというものです。
いずれも、高周波の周波数で1.3ギガヘルツの9セル空洞を使うという意味で、ILCと共通した技術となっていて、ILCの超伝導加速技術というのは、こういった加速器でかなり熟成してきていると考えています。
それから、ILCの建設費用の見積もりですけれども、こちら、有識者会議の配付資料からの抜粋ですが、ILCではILCユニットという仮想通貨を用いて見積もりを行っております。こちら、円に直すときには、1ユーロ115円、1ドル100円を仮定して換算しておりますけれども、このとき土木と加速器本体で合計8,309億円、その他労務費、あと、測定器本体というのがありますけれども、今回のコストの検討では、加速器本体の建設コストに対する削減を評価しているということで、8,300億円に対する割合となっております。
その他、付属経費の中で、TDR未記載項目でありますとか、見積もりの不確定性についてのもの、それから年間運転経費、こういったことが有識者会議の配付資料に記載されております。
次に、ステージングですけれども、加速器と物理に関するステージングのレポートが昨年10月にリニアコライダー・コラボレーションに提出されました。こちらはいずれも公開文書としてインターネットで参照することができるものです。
これを受けて、LCBとICFAで審議が行われまして、このうちのLCBの部分ですけれども、抜粋いたしますと、ILCの加速技術はドイツ・ハンブルク市にあるヨーロッパX線自由電子レーザーの建設成功により得られた経験のおかげで今や確立されています。リニアコライダー独特の特徴の1つは、加速器技術の改善やトンネル長の延長により衝突エネルギーを向上することができるという点です。こういった声明が出されております。
ステージングについてですけれども、ステージングとしては、簡単に言いますと、ILCの500GeVを250GeVから始めるということで、コンパクト化して、線形加速器の部分を短縮してコスト削減いたします。
それから、TDR後にトンネルの大きさも変更するということを検討されておりまして、11メートルかける5.5メートルのトンネルを9.5かける5.5メートルに縮小し、トンネルの小型化によるコスト削減も図っております。
3つのオプションについて検討を行っております。1つは、全長250GeVの衝突エネルギーの加速器を持っていて、トンネルの長さも加速器本体と同じ、最小のサイズのものです。それをOption Aと呼んでいます。
Option Bというのは、この加速器の上流部に350GeVの衝突エネルギーに対応するような簡素なトンネルを先に付けておくというものです。
それから、Option Cというのは、500GeVに対応する簡素なトンネルを最初から作っておくというものです。
それから、Aプライム、Bプライム、Cプライムは、それぞれのA、B、Cに、後で申し上げますけれども、日米ILCコスト削減R&Dの成果を反映させているものです。これ、簡単にまとめたものですけれども、TDRが33.5キロでしたが、Option Aという一番短いものですと20.5キロになります。Option Bですと27キロ、Option Cだと33.5キロです。Aプライム、Bプライム、Cプライムは、R&Dが成功するというのを仮定して、例えば電界が10パーセント上がっていると、こういったものになっております。
コスト削減R&Dですけれども、技術革新によるコスト削減を目指しているので、日米ディスカッショングループ、米国エネルギー省と文科省において、米国フェルミ研究所とKEKの提案について着手することを合意して、2019年までのR&Dを行う予定です。R&Dとしては、コストの中身を見ますと、主線形加速器の部分が加速器全体の3分の2を占めますので、ここの部分に着目して、1つは超伝導ニオブ材料の低価格化ですね。材料コストの削減を目指します。もう一つは、フェルミ研究所で開発された新技術による空洞の高効率化、これは使用空洞数の低減、削減につながります。こういったものをR&Dとして挙げているところです。
ステージングのコスト費用ですけれども、コストの見積もりはTDRと同じようにILCユニットで行われております。これは2012年1月の時点でのUSドルです。高周波1ユニット当たりのコストなど、ユニットコストをTDRから算出して、そのユニット数からTDRと比較して加速器のコストを計算するというものです。2012年からの物価変動や数が減ることのコストへの影響はここには含まれておりません。
TDRでは7,980ミリオンILCユニット、MILCUと呼んでいますけれども、これが8,300億円、日本円で換算するとなりますというお話をしましたけれども、一番安いものは、Option Aプライムですね。トンネル長が一番短くて、かつ、R&Dが成功したと仮定した場合、この場合は4,780MILCUになりまして、当時の換算をそのまま適用しますと5,000億円弱になるということになります。
以上です。

【横溝座長】  どうもありがとうございました。これに関しまして、質問なりコメントありましたら、お願いします。

【内藤委員】  トンネルの寸法なんですけれども、これは仮に将来延長した場合でも、その寸法でオーケーだということですか。シールド等は別に問題なく。シールドというか、放射線。

【道園教授】  放射線シールドに関しては、これは遮蔽壁を3.5メートルから1.5メートルに狭くしたんですけど、3.5メートルのときは、加速器ビーム運転中にも、(高周波電源サイドに)アクセスできるということを考えていました。1.5メートルにしたときには、加速器のビーム運転中は入らないという前提に変えております。したがって、加速器ビーム運転中に入らないという前提の下では、エネルギーを高くしたときにも、このまま使えると思っております。

【内藤委員】  作業上の問題だと。

【道園教授】  作業上の問題というのは……。

【内藤委員】  もともとメンテナンスがしやすいように運転中も入っていられると。

【道園教授】  その辺はアベイラビリティの問題だと思うんですけれども、多分機器の性能向上によってダウン時間が、一応スタンバイのユニットというのがありますので、幸い、電子加速器というのは、スタンバイを切り換えることで当面エネルギーを保持することはできますので、そういった形で運転の継続はできると考えていて、メンテナンス上も問題ないと考えて、一応厚さを1.5メートルメートルに下げたという経緯があります。

【内藤委員】  分かりました。

【熊谷座長代理】  ちょっといいですか。以前の建設コストの評価のときには、アメリカがあまり表には出ていなかったと思うんですが、今回、平成28年に日米で協定の下にいろんな活動がされているわけですよね。アメリカが入ってきたことで、物を作る上でのコスト削減効果が考えられるものというのはかなりあるんですか。

【道園教授】  日米のディスカッショングループでは、まずある意味のブレークスルーによるコスト削減というのを目指したR&Dです。もともとは、1つのきっかけだと私が思っているのは、フェルミ研究所で新しく見出された、我々、High-Q・High-Gradientとか、ナイトロジェン・インフュージョンとか呼んでいますけれども、新しいプロセス方法を採用することで、空洞の性能を上げるという、そういった技術ですね。ですから、アメリカというよりは、むしろそういったR&Dが進んでいて、それを更にILCに適用することでコスト削減ができるかという、そういうような技術的な話です。

【熊谷座長代理】  特段何か新しい技術があって、それが今回の日米の協定というのか、ディスカッションで表に出てきて、削減効果に対して非常に大きなエフェクトがあるというようなものはないと。

【道園教授】  一番大きいものはやはりこれですね。これは電界が10パーセント上がると期待しています。電界が10パーセント上がるということはどういうことかというと、主線形加速器の部分で空洞の数が1割減るということになります。ステージングですと、主線形加速器の部分は小さくなるんですけれども、それでもやはり1万6,000個をもともと使う予定であったものが8,000個インストールわけですけれども、1割の予備を含めて9,000個作りますが、それが10パーセント下がるということは、1,000個クラスの空洞が削減できると。1,000個クラスの空洞というのは、まさにXFELと同じぐらいのレベルであって、それは削減効果としては小さなものではないと思っております。

【小磯委員】  不勉強で申し訳ないんですが、XFELの経験ということで、XFELでの加速電界は幾つですか、ILCの31.5に対して、実際には……。

【道園教授】  24です。

【小磯委員】  24ですか。

【道園教授】  はい。彼らのところでテストしているものは、グラディエント高いところまでテストしていて、アドミニストレーションリミットというのがあって、要するに、機器のリミットはあるんですけれども、縦測定レベルでは、例えば40メガボルト/メートルを超えるものがあるとかいうのは、このXFELの空洞のテストの段階で出てきたものです。ですので、運転電界自身はILCよりもちょっと低いんですけれども、それでも、空洞単体の評価のレベルでは、かなりILCの参考になっているということです。

【横溝座長】  まだまだ質問あるかと思いますが、また後ほどコストのところで議論できると思いますので、ここはとりあえずこれで終わらせていただいて次に進めさせていただきます。
どうもありがとうございました。
それでは、ここからは非公開の会議となりますので、傍聴の方は退席していただきますようにお願いします。


―― 了 ――

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