資料1 議論のポイント(案)

国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議 素粒子原子核物理作業部会 議論のポイント(案)

はじめに

  • 再検討することとなった経緯

1. 欧州合同原子核研究機関(CERN)における実験結果について

  • 前回報告書及び「これまでの議論のまとめ」において、ILCの性能・成果はCERN LHCにおける2期実験結果に基づき見極めることが必要とされていること。
  • 2期実験は2018年末まで延長されているが、2017年末までの結果として、新粒子・新現象の兆候は捉えられていないこと。
  • 前回報告書のシナリオについては(3)となること。ただし、250GeVILCは、当初計画の500GeVILCから衝突エネルギーが半減したことから、内容については修正を要する。(4.参照)
    (3)13TeVLHCで新粒子や新現象が観測されない場合

2. 250GeVILCの科学的意義について

  • 前回報告書では、ILCの目指す科学的意義を以下のとおり整理。

(1)ヒッグス粒子やトップクォークの詳細研究によるヒッグス機構の全容解明で標準理論を超える物理を探索
(2)超対称性粒子などの新物理の探索、及び発見された場合その詳細研究
(3)その他(暗黒物質や余剰次元)

  • (2)について、LHCにおける実験結果から、当初計画の500GeVILCでも到達可能なエネルギー領域で新粒子を発見できる可能性は低く、見直し後の250GeVILCでは、新粒子の発見は非常に困難である。
  • (1)について、250GeVILCではトップクォークは生成できないが、ヒッグス粒子の生成断面積が最大化されることと、13TeVLHCで新粒子の兆候が観測されず250GeVILCでのヒッグス粒子の精密測定に有効場理論が利用できることが明らかになったことから、ヒッグス粒子の精密測定の実現可能性が明確になったこと。
  • 250GeVILCにおける最重要課題は、ヒッグス粒子と素粒子の結合定数の精密測定であり、新しい物理の性質に関する情報を得られる可能性があること。その結果が今後の素粒子物理学が進む方向性に示唆を与えることが期待されるということ。
  • (3)については、質量欠損法という間接的な探索方法をとるため、250GeVILCにおいてもその意義は変わらないこと。
  • 新粒子探索は、衝突エネルギー1TeVを超えるエネルギー範囲での探索を必要とするため、新しい技術開発も視野に入れるべきこと。

3. 欧州XFEL、FAIRの実例(次回ヒアリング予定)

  • 平成29年11月のLCB声明において、欧州XFEL及びFAIRが例示として取り上げられたこと。
  • 欧州XFELのホスト負担と国際協力について
  • FAIRのホスト負担と国際協力について

4. 250GeVILCのシナリオ(13TeVLHCの結果を踏まえて)

前回報告書における13TeVLHCの成果を踏まえたILC等のシナリオ(抜粋)

(3)13TeVLHC で新粒子や新現象が観測されない場合
方針:ヒッグス粒子やトップクォークの精密測定から標準理論を超える物理(超対称性理論、複合ヒッグス理論等)を探索する。またILCはLHCでは検出が困難なタイプの新粒子にも感度があるため、これらの新粒子の探索も行う。LHCで未発見の原因を精査し、ILCで発見できる新粒子を探索するとともに、将来のエネルギーアップグレードの必要性を検討する。
効果:標準理論からのズレが観測された場合は、そのズレの大きさとパターンから、標準理論を超える物理の方向性と関連する新物理のエネルギースケールが明らかになる。新粒子が発見された場合にも、大きな研究の進展が期待される。

  • 13TeVLHCの成果を考慮に入れた当作業部会の議論を踏まえ、前回報告書のシナリオ(3)は、今般の250GeVILCにおいては、以下のように修正される。
    方針:ヒッグス粒子の精密測定から標準理論を超える物理の解明の端緒となる事象を観測し、その結果が今後の素粒子物理学進む方向性に示唆を与えることが期待される。LHCの結果から、新粒子直接探索による発見についての見通しは得られなかった。また、トップクォークの精密測定を行うためには350GeV以上の電子・陽電子衝突エネルギーが必要であり、250GeVILCでは実施できない。
    効果:標準理論からのズレが観測された場合は、そのズレの大きさとパターンから、標準理論を超える物理の方向性と関連する新物理のエネルギースケールが明らかになる。


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