国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議 体制及びマネジメントの在り方検証作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成29年4月24日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 周辺環境の整備について
  2. 大型国際共同プロジェクト等の国際協力事例について
  3. その他

4.出席者

委員

観山座長、徳宿座長代理、伊地知委員、市川委員、川越委員、北村委員、佐藤委員、高津委員、田中委員、中野委員、永宮委員、山本(明)委員、横山委員

文部科学省

関研究振興局長、板倉大臣官房審議官(研究振興局担当)、岸本基礎研究振興課長、轟素粒子・原子核研究推進室長、吉居加速器科学専門官
三原科学官

オブザーバー

株式会社野村総合研究所 矢島上級コンサルタント、株式会社野村総合研究所 布施副主任コンサルタント

5.議事録

【吉居加速器科学専門官】  それでは、定刻少し前ですが、そろわれましたので、始めさせていただきたいと思います。横山先生が冒頭、少し遅れるという御連絡がございました。
 それでは、開会に先立ちまして、事務局より御連絡をさせていただきます。
 本日の会議は公開としております。本日はプレス1社から撮影の希望がございましたので、冒頭の撮影を許可したいと思いますが、よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、撮影希望の方はお願いいたします。
 よろしいでしょうか。それでは、撮影についてはここまでとさせていただきます。
 それでは、観山座長、よろしくお願いいたします。

【観山座長】  それでは、国際リニアコライダーに関する有識者会議体制及びマネジメントの在り方検証作業部会第3回を開会いたします。本日はお忙しいところお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
 では、本日の出席者の状況等について事務局から報告をお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  御報告します。
 本日は、飯嶋委員、山本均委員が御欠席でございまして、定足数8名を満たしておりますので、会議は有効に成立しております。
 また、本日御発表いただくため、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院の北村教授と株式会社野村総合研究所の矢島上級コンサルタント、布施副主任コンサルタントにも御出席をいただいております。
 事務局からは以上でございます。

【観山座長】  続きまして、ただいま紹介のありました北海道大学の北村教授には、今回から委員として本作業部会に参画いただきたいと考えております。これにつきまして事務局より説明をお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  資料1に委員名簿がございますので、御覧いただきたいと思います。
 本日御出席いただいております北村教授におかれましては、ILC計画について、この後御説明いただく周辺環境整備含めました調査をはじめ、これまで様々な調査・分析に携わってこられました。また、CERNをはじめ海外の関係研究機関への調査経験も豊富であり、本作業部会における今後の比較検証に当たって、これまでの知見を活かしていただきたく、今回、座長に御相談して委員として御参画いただくことといたしました。
 本日は、これまでの御経験から、この後、国際研究機関の在り方を踏まえた周辺環境の整備に関する検証として御発表いただきます。
 事務局からは以上です。

【観山座長】  そういうことで、事務局から説明がありましたように、北村先生には委員として次回以降も御参画いただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、続いて事務局より配付資料の確認をお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  お手元の資料を御覧ください。本日、資料1が、今ほど御覧いただきました委員名簿、資料2が御発表いただく北村委員の資料。資料3は3つございまして、資料3-1が野村総研から出していただいた資料、3-2が委託調査の報告書の概要、3-3が研究者コミュニティにおいて想定されているILCの概要。それから、資料4が今後のスケジュール。その後ろに参考資料としまして、本作業部会の設置要綱を付けてございます。
 出席委員の皆様には、資料3-2で御紹介しました委託調査の報告書の本体、白い冊子でございますが、机上に置かせていただいております。このほか、関連資料としまして机上にドッチファイルを置いておりますので、適宜御覧いただければと思います。
 以上、不足がありましたら、お知らせ願います。
 また、併せまして1点、御連絡でございますが、会議の進行に当たりまして、議論の時間を十分確保するため、発表者におかれましては事前に御連絡しました時間内に御発表を収めていただけますよう、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上です。

【観山座長】  前回、3人の方の発表がありまして、議論の時間が随分窮屈でございましたので、今日はどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議題に入ります。
 お手元の資料の最後に付いていると思いますけれども、参考資料として本作業部会の設置要綱がございますので、御覧ください。
 2の検討事項の(1)の国際研究機関の体制及びマネジメントの在り方に関することについては、第1回、東京大学の駒宮先生と高エネ研の山内先生より御発表いただきまして議論いたしました。
 それから、検討事項(3)の「国際研究機関を我が国に設置する場合の国内における実施体制に関すること」については、前回、国際研究機関への共同参画の在り方として、川越委員、飯嶋委員、三原科学官より御発表いただき、議論いたしました。
 本日は、検討事項(2)「国際研究の在り方を踏まえた周辺環境の整備に関すること」について、議題1で周辺環境の事項として、文部科学省の平成28年度委託事業である「大型国際共同プロジェクト等の国際協力事例に関する調査分析」について御発表いただき、それを基に議論したいと思います。
 そして、まず議題1として、北村委員より、「国際研究機関の在り方を踏まえた周辺環境の整備に関する検証」として御発表いただき、議論したいと思いますので、それでは、まず北村委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【北村委員】  北村でございます。先ほど御紹介にあずかりましたように北大の教授をやっております。今年の2月までは野村総合研究所に勤務しておりまして、野村総研を退職し、今は北大の教員として奉職しておるということでございます。
 野村総研在職時代に、数多くのILC関連の調査・研究に携わらせていただきました。今、立場は北大ということですが、調査そのものは野村総研時代にやったものを、私がほぼ全部の調査に関与しているということもあって、一番熟知しているということから、今日は、私の方から過去の調査について御報告させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、始めます。資料はパワーポイントにしようと思いましたが、貼り込む図表が非常に大きくて、ちょっとパワポにはそぐわないことから、大変恐縮ですが、お手元にA4縦の資料をお配りさせていただいております。ハンドアウトということで御説明させていただければと思います。図表等については、適宜、正面の画面で補足させていただくこともあろうかと思いますが、基本は紙で御説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
 1枚おめくりいただきまして、目次は、今日御報告させていただく内容です。人口の話、周辺環境に求められる生活環境要件と社会基盤要件、それと、若干、費用を算定した結果を情報として御提示させていただくということになります。本資料の出典につきましては、ページの下に記述している調査報告書A、Bの2つを主に参照しています。
 報告書Aにつきましては、「国際リニアコライダープロジェクト立地に関わる調査検討報告書」です。これはKEKと野村総合研究所、それから福山コンサルタントが共同で実施したものです。お金の流れとしては、KEKから当社及び福山コンサルタントが受託したということですが、内容的には共同で実施したということになっております。
 もう一つの調査報告書B、これは、盛岡市から野村総合研究所と福山コンサルタント共同企業体が受託したものです。一応、ILCが北上に立地するということを前提とした調査ですが、ただ、調査内容につきましては住宅等の立地や建設費などをいろいろ試算していますけれども、それは別に北上だからというローカルな条件の下での試算ではなくて、日本の中でどこに立地しても、こういうものが必要であるという視点からこの報告書はできているということになります。
 大きくは、このA、Bの報告書から非常に基本となる部分を抜粋するような形で、本日の資料は作られているというふうに御理解いただければと思います。
 早速ですが、1ページでは、まず、これまでのILCの国際コミュニティの中で、周辺環境整備等に関連してどういったポイントがどのぐらいのレベルで検討されてきたかということを、本当にエッセンス中のエッセンスですけれども、イメージとして、これぐらいのことがこれまでは一応やられてきたということを示しています。
 一番上の方は、生活環境及び社会基盤関連の要件についてということです。これの出典は、Revised ILC Project Implementation Planning、通称PIPというふうに呼ばれているものです。
 細かな説明はいたしませんけれども、ある程度、PIPでも生活環境関連では、多様な住宅、教育施設、それから宿泊・滞在施設等、こういうものが必要ですということが提示されております。
 加えて社会基盤としては、情報通信ネットワーク、それからユーティリティ・インフラの各種基盤が必要になってくるということが記述されております。
 ただ、数値とか細かな具体の内容は余り提示されていないことから、出典となっている調査では、そこをもう少し具体に展開してみようという趣旨で行ったということです。
 一方で、ILC関連の人口想定につきましては、TDR及び先ほどのPIPにおきまして、数字のイメージが若干示されています。例えばTDRでは、ILCの今後できるであろう国際研究所には、おおむね1,000名程度の人員が必要になるというふうに記述されています。
 それから、PIPにおいては、国際研究所の職員及びその家族を含めた全人口としておおむね1万人規模、小さな町ができるぐらいの感じでILC及びその周辺に人口が張り付く、そういうようなイメージが記述されています。ただ、これも前提や試算の根拠等は示されておりませんので、出典の調査では、この辺を詳しく積算したということになります。
 次に2ページです。まず、人口規模に関する想定につきまして示しています。一番大元になりますのは、ILCの国際研究所の職員及びILCで実験をされるときに世界から大量に来られる実験参加研究者の方々です。そのあたりの人数をコアの部分として想定したというのが、図表の1です。
 ILC国際研究所職員につきましては、建設時に、ILCを建設するということから職員の方が大量に雇用されるということで、ピーク時で1,600人。それから、建設後の運用時につきましては、若干、建設時から人数が減るわけですけれども、定常的に1,200人程度ということになります。
 一方、ILCで予定されているILD、SiDという2つの検出器での実験に参加する実験参加研究者というのは、建設時は検出器がまだ稼働していないことから、若干少ない500人ですけれども、ILCが稼働してからは700、800、1,000人というふうに増えていく、そういう想定になっております。
 全体として、建設ピーク時で2,400人、ILC運用後の建設時から20年目のほぼ定常時になったときには2,700人ぐらいのコアの部分の人数が想定されることになります。それを基にして、家族等を含めた全人口がどうなるかを推計した結果が、細かな説明は省くといたしまして、4ページの表になります。
 一番上の折れ線グラフを見ていただければ、全人口の推移を明確に理解いただけると思います。太い点線につきましては、ILCの職員、研究者等がどう推移していくかを示しています。建設開始から運用開始後10年目ぐらい、すなわち建設スタート時から20年目ぐらいを見たときの人口の変化を示しております。
 細かな点線につきましては、工事・保守運用従業者を示しています。建設開始時3年目ぐらいが3,700人ということでピークになって、建設が進むにつれて、工事関係者そのものはどんどん減っていくということになります。運用がスタートすれば、保守要員以外はほぼ必要がなくなるということになっています。
 人口プラス家族の人員数も含めて推計し、全体としてどうなるかという推移を見たのが太い実線の部分になります。最も断面人口として多くなるのが、建設スタート時から7年目ぐらい、建設のピークに当たる時期で、7,700人ぐらいということになります。
 冒頭のPIPの記述では、1万人ぐらいの規模の町ができるというような前提でしたけれども、少し精査してみると、やはり外国人の人数というのは、予想していたよりも少ない感じになることから7,700人、1万人を少し下回るぐらいの規模になるということです。
 あとは、建設が終わるとぐっと減って、運用開始後は徐々に増えていく、そういうことになります。
 併せて、5ページですが、外国人は、そのうちどれぐらいなのかということも推計しています。それが図表3になります。運用開始後10年、建設スタート時から20年目ぐらいで、3,140人程度というのが外国人の人口です。
 続きまして、今申し上げました7,700人ぐらいの人口が張り付いた地域においていろいろなサービスなり、機能を提供していかなくてはいけない。それは具体的には何なのかということを、CERNやITER、それから、日本の中では沖縄の国際科学技術大学院大学等の事例を踏まえて、何が必要かということを調べた結果が6ページからになります。
 ここも非常に細かいので、細かな点は省略いたしますけれども、6ページでは、まずは何はともあれ居住・住宅というサービスが必要になると言っています。
 それから、7ページ、次に重要なのが恐らくは育児・教育。国際学校というものは必須のものとして必要になってくるのではないかということです。
 それから医療、生活支援。生活支援については、大量に外国人の研究者及び家族が来られますので、どうしてもウェルカムオフィスとか、ユーザーオフィスというふうに言われているような、地域でもって生活面でのサポートをする機能は非常に重要です。
 8ページに行きまして、特に生活交通、大規模な高速道路とか鉄道を新たに建設するということは、当然、想定していません。既存のものを使うのですが、既存の新幹線駅なり、高速道路のインターチェンジからILCのサイトまで、いかに研究者が円滑に通勤できるかという視点から、主にソフト面での公共交通サービスが非常に重要になってくるということです。
 さらに、買い物・飲食、文化・娯楽、それからビザの問題、配偶者がいかに日本の中で就労できるかというような点も重要になってきます。
 なお、外国人研究者の配偶者の就労を可能にするビザ発給というのは、CERNなどでは非常に課題になっていたということですが、最近、日本は、出入国管理上の緩和措置によって、一定の条件を満たすことによって高度人材の配偶者については就労活動が認められるようになっていることから日本は少しCERNとは事情が異なっているというふうに思います。
 次の9ページ以降では、生活環境要件の中でも特に重要であると考えられます住宅、それから育児・教育につきまして、少し各論的にポイントを整理しています。
 9ページは住宅です。日本の中で供給される住宅を、そのまま外国人の方に使っていただくことになると、ちょっとサイズとか、サービスの面で満足いただけない部分が出てくるということから、外国人、特に家族を附帯されるような方については、戸建てタイプのちょっと広めの住宅というのが、やはり一流の研究者を世界から呼んでくるとなると非常に重要になってくる。
 ただし、外国人研究者の方が全員、家族を連れてくるということにはなりませんので、そういった方々に対しての短期滞在用の住宅も含め、集合住宅とか、少し小ぶりの住宅などを多様に用意することが重要になってくるということになります。
 それから、10ページは育児・教育です。特に保育施設をどこに作って、それが家族持ちの外国人研究者に対して質の高い育児サービスを提供できるかというのが1つポイント。それと、初等・中等・高等教育の面で国際学校、インターナショナルスクールを何らかの形で整備していくのが1つ大きな課題になってくると考えられます。
 特に国際学校につきましては、11ページですけれども、フランスのITERにつきましては、ITERというのは国際熱核融合実験炉のプロジェクトですけれども、これは、地元がITERのために国際学校を設立し、ITERに勤務する職員や研究者の子弟の教育に資するということが設立協定で決まっており、これがホスト国のフランス及びITERが設置されている周辺の自治体の責務になっていて、こういう国際学校が設立されたという事例です。
 続きまして、12ページは社会基盤要件になります。社会基盤要件につきましては、立地のサイトが決まって、いろいろな条件を勘案していかないと何が必要かというのは、なかなか出てこないのですけれども、当然、空港、港湾、広域の幹線道路、それとサイトへのアクセスなどの基本的な交通基盤。あと、情報通信基盤につきましては、相当のトラフィックが発生しますので、ブロードバンドの通信網の整備が非常に重要になります。
 今の国内の学術情報ネットワークは、SINET4だと思いますが、今は新しくなっているか分からないですけど、このSINET4でILCから発生する膨大な情報トラフィック量が処理できるかというあたりも、少し検証が必要かなというふうに考えます。
 さらに供給処理基盤ということで、電力、給排水、廃棄物処理の基盤が必要になります。
 こういった社会基盤につきましては、13ページですけれども、ITERの場合には、サイト以外の部分の社会基盤については、ITERの設立協定の附属書において、地元のホスト国やホスト地域が、必要な社会基盤のかなりの部分を整備するという取り決めになっています。実際、ITER周辺の地方自治体が、13ページの図表10になりますけれども、かなりの部分を共同で負担して基盤整備しているということです。
14ページからは最後のポイントになります。国際研究機関及び周辺環境整備の費用に関する検証です。ここではILCの本体、すなわち加速器、検出器、トンネル、それに附帯するコアとなる設備、それらをILCの本体というふうに考えたときに、そこから派生する建設費として周辺整備に関わるものにはどのようなものが発生するのかということを、本当に概算中の概算で、全てを網羅しているわけではないですが検証しています。
主なものとして、14ページの図表11に示すとおり、ILCの中央キャンパスと、先ほど重要だと申し上げました主に外国人の研究者を対象とした住宅について、キャンパス外に造られるものはどれぐらいのボリュームと費用になるかということを検証しました。
 15ページは、中央キャンパスの建設費を推計した結果です。一応、TDRでも検証されておりますけれども、調査報告書Bでは、少し詳細にどういうものが必要かということを延べ床面積ベースで積み上げました。そうすると概ね12万平米程度が必要ということになります。
 それをもとに、16ページになりますが、敷地をコンパクトにするタイプ、やや広めのタイプ、かなりゆとりを持った敷地で展開するタイプの3パターンを想定しました。理想的には、敷地80ヘクタールのゆったり型が一番望ましいのですが、そうはいっても、敷地80ヘクタールの開発は日本国内では相当しんどいだろうということから、32とか42ヘクタールのケースも想定しました。
 32ヘクタールになると、相当高層型の建物にしないと、この敷地の中には収まらない。そういうケーススタディをした結果、何か工業団地みたいな感じになってしまうのですけれども、こんなイメージになりますということです。
 次は住宅です。多様な住宅が必要ということで、いろいろなタイプに分けて、17ページの上ですけれども、どれぐらい必要かということを推計した結果、おおむね1,900戸程度はキャンパス外に必要ということになりました。住宅タイプごとに建設費を試算した結果が、17ページの下図表15です。
 最後、18ページでございます。ILCより派生する建設費ということで、中央キャンパス建設費は高層型ケース、用地費を除く、12万平米を何とか敷地に収めるとしたときには大体602億円ということになります。それから、住宅につきましては652億円、合わせて1,254億円ということを一応、調査報告書Bの試算として出しております。
 ただし、この調査報告書Bというのは、TDRの試算とは全く独立したものということですので、これまでTDRをベースにしたILCの建設投資額が一応出ていますけれども、それに602億円がオンされるということでは決してないということを御留意いただければと思います。TDRベースでの建設費の試算の部分とかなり重複している部分がありますので、その辺は御留意いただければと思います。
 一方、住宅につきましても、本当は既存住宅の活用ということも当然あるわけですが、ここでの前提は、1,900戸を全部新設ということで試算すると、これぐらいの建設費が必要になるということになります。
 以上でございます。ありがとうございます。

【観山座長】  どうもありがとうございます。
 それでは、今の御発表、御報告に関して議論をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。はい、どうぞ。

【山本(明)委員】  報告書Aにつきましては、野村総研さんとKEKの共同で作業させていただいておりまして、そのことに関連して一言だけコメントさせていただきます。
 最後のところで、メインキャンパスの費用と、それから周辺の住宅関係について派生するという言葉で書かれているので、誤解がないようにということだけでありますが、TDRの中でメインキャンパスは、より質素な形ではありますが、含まれておりますので、北村先生もおっしゃってくださったように、これが全てILCのコストにオンされていくというものではありませんので、一部、より質素な形で含まれているということを御理解いただければありがたいと思います。
 以上です。

【観山座長】  はい。

【永宮委員】  細かい質問かもしれませんけど、国際化にするときに、今示されているような閉じたキャンパスを作るのではなくて、特に家族の人もやってやってくるときは、かなり分散してスキャッターして、日本の村なんかに入り込む方が良しとする人が沢山いるんです。そういうときに、地元の役場とか、そういうところをいかにインターナショナライズさせるかというのは非常に重要な課題になってきます。その点はどういうふうにお考えなのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
 僕らの細かい経験ですけども、我々が東海村で施設を作ったときは、村長さんにCERNとかいろんな場所に行ってもらって、その周辺環境を調べていただいたりしたのですが、そういうことが必要ではないかと思います。

【観山座長】  当然、そういうこともあり得ましょうね。

【北村委員】  今、先生の御指摘の点につきましては、調査の過程でかなり議論した部分です。その結果といたしまして、やはり研究のコアになる部分については、CERNのメイラン地区、先生方は御存じかと思いますけれども、やはり研究のコア部分は、集積していないと研究者同士の交流や施設的な効率性という面で、それが分散してしまうとコスト的にも相当無駄になる部分があるということから、研究のコア集積部分についてはコンパクトに、中央キャンパスという形でまとめるということを想定しました。
 ただし、その中に人が住まないということではなくて、先ほど多様な住宅が必要だということを申し上げました中には、短期の滞在者向け居住施設が含まれ、恐らくKEKの中にもありますとおり、短期滞在者用の宿泊施設と、飲食、物販、その他もろもろのサービスは、ワンセット揃うような形で中央キャンパスにも想定するということにしました。
 それから、家族を連れてきた外国人研究者がどこに住むかという点については、住宅を住宅団地のような形でまとめて、外国人のための住宅団地をつくるという発想は必ずしもしておりません。住む場所については、本当に地域のコミュニティの中に溶け込む形で住んでいただく方がやはり理想的であろうということで、前提は、そうしています。
 ただし、個別の住宅一戸一戸そのものが今の日本のILCの周辺地域で全部供給できるかというと、決してそうではなくて、古民家を望む外国人の研究者の方もおられますけれども、やはり家族が来て一緒に住んで、働いて、学校へ行ってとなると、相当きちんとした住宅を欲するということが、調査ではそのようなニーズがあるということが分かりました。それを前提にして、住宅そのものは外国人仕様の新しいものをどんどん供給していかなくてはいけないということです。
 ただし、住宅の立地場所は、疎開地のようにまとめるのではなくて、コミュニティ分散型にしようと、そういう発想で、一応、この調査でのプランニングはしております。よろしいでしょうか。

【観山座長】  ちょっと私から。私の経験では、研究者というのは、住居に関しては余り関心がなくて、実験とか、そういうところに集中するんですが、欧米の研究施設、国際施設を見ると、立派な施設で、日本から言うと結構ぜいたくな施設を造られているということなので、海外の研究者とか職員がたくさん来られるような環境も作ってあげないと、なかなか対応できないんじゃないかということ。
 ただ、住居だけじゃなくて、ここに書かれているような、例えば学校だとか、それから生活に必要な、いろんな施設が必要ですよね。それは、この試算としての1,254の中には入っていない。これは、自治体とか、そういうところの期待が大きいというところなわけでよすね。

【北村委員】  そうです。

【観山座長】  だから、特に英語教育だとか、外国語教育を受けるということになると、ある程度集約しておかないと、立地の場所にそういう施設が結構ある場所であれば問題ないかもしれないけれども、そういうものがないところであれば、作っていかなければならないということになるので、ある程度の集約性も必要かもしれませんね。

【北村委員】  そういうことです。

【観山座長】  いかがでしょうか。はい、佐藤委員から。

【佐藤委員】  2点質問があるんですが、1つは、土木建築の人員が2,000名規模、建築時には入ってくるんですけれども、これらの方の宿泊施設というのは、既にあるホテルや宿を想定していらっしゃるということでよろしいでしょうか。

【北村委員】  そうです。

【佐藤委員】  場所によってはなかなか厳しい場合もあると思うんですけれども、遠隔から通わなければならなくなる場合もあると思うんですが、現状、この検討では、そういう想定であるということですね。

【北村委員】  想定では、一時的な建設労働者の方の居住施設は一切見ておりません。

【佐藤委員】  分かりました。

【北村委員】  恐らく建設関係の居住者は、家族連れという方はほとんどなく、単身赴任で来られて、場合によってはゼネコン会社がプレハブ的な宿舎を提供するなどのことが想定されるので、今回の推計の対象には一切含めていないということになります。
 ただ、仮設的な一時利用の住宅は必要であるというふうには考えます。

【佐藤委員】  あと、2点目の質問なんですが、建設というのは、あくまで装置は別の場所で作って持ってきて据え付けるということを考えていて、現地に製造工場、集約的な製造工場を作るということは、ここでは想定していらっしゃらない。

【北村委員】  製造工場というのは、ちょっとすみません。

【佐藤委員】  具体的には、例えば超伝導キャビティ……。

【山本(明)委員】  助けていいですか。

【佐藤委員】  はい。

【山本(明)委員】  それは、ここには入れていない。当然、そういうこともオプションの1つとしてあるので、それはダイナミックな、こういう状況が生まれてきたときに議論されるべき課題としては残っていると思いますが、例えば本当に大きな機械部品や加速器部品はもちろんそうですけども、大規模建設では大変多くの方がいらっしゃるはずですが、そこまで想定し出すと、ちょっと私たちの範疇を超えてしまう。もっと大きな計画が見えた段階では、大規模にそういうことを考えると、これにも大きな数値が。当然、短期的には建設業者の方々の生活環境が必要になってくると思います。

【佐藤委員】  分かりました。ITER等では、現地で大型のポロイダルコイルを作る等もやっているので、それほど大きなものはILCではないかもしれませんけども、可能性としては……。

【山本(明)委員】  野村総研さんのお仕事の中にはなかったわけですが、TDRの検討段階において、例えば可能性としてはクライオモジュールというものの組み立て工場等が現地の近くにあるというオプションもあり得ると。
 ただ、それをここで余り議論し過ぎるわけにもいかないので入っていないけれども、ダイナミックには、検討した結果、それが経済的であり、効果的であれば、当然、そういうことは浮上してくるものだと思います。

【佐藤委員】  分かりました。ありがとうございます。

【観山座長】  中野委員。

【中野委員】  ここでいろいろと考えられている環境整備の中で、大幅な規制緩和、何か特区化しないと実現できないようなことはあるでしょうか。例えば医療の面で、海外で医師免許を取られた方が日本で診療、診察するというのは、そのままでは難しいような気がするんですが、そういうことはないでしょうか。

【北村委員】  先ほどの生活環境要件の細かな点を見ていくと、そういう部分が出てくるところはあります。御指摘のとおり、外国人の医者が日本において診療ということになると、それは、いまだにできないということはあります。また、先ほど指摘したビザの問題も、調査の時点におきましては、外国人研究者の配偶者が日本の国内で就労するということに対しては、就労ビザが発給されないということもありました。ただし、ビザについては、緩和される方向にあるので、クリアできている部分もあるかなということになります。
 それから、規制となりますと、ILC本体建設に関わるものがいくつかあります。たとえば、高圧ガス保安法の規制や土木工事に伴う環境アセスなど、そちらの方がメインになり、本日御説明申し上げました生活環境のサービスや基盤につきましては、日本人が必要とするサービスと同じようなものを外国人に提供することになりますので、大きな規制とか、法的にクリアしなければならない部分というのは、それほど多くないと思います。
 ILC本体につきましては、私よりは山本先生やILCの方々がよく御存じかと思いますので。

【観山座長】  では、川越委員。

【川越委員】  最後のページのILC研究者用住宅建設費ですが、私は、これについては、ベースとしては民間資本によるものと考えていまして、それでよろしいでしょうか。

【北村委員】  この建設費の試算につきましては、誰がこれを負担するのかについては一切検討しておりません。公共でやるのか、民間でやるのかということには一切触れていませんし、前提は置いていません。
 ただ、誰が造るにしても、良質の住宅を供給しなくては世界から優秀な研究者が来ないということから、これぐらいの数と金額の住宅は必要ですということを申し上げているということになります。
 ということから、それは民間でやる可能性も当然ありますし、一部は公共、ITERのように地元の公共側が用意するという部分も出てくるのではないかと思います。

【観山座長】  はい、どうぞ。

【市川委員】  民間でというのが、ちょっとよく分からなかったのですけど、民間の人がお金を出すという……。

【川越委員】  いや、普通にアパートを造って貸すということです。

【市川委員】  その場合、家賃に必要費用が移るだけですよね。

【観山座長】  だから、建設費は掛からないけれども、後の運営費は掛かる。

【市川委員】  余分に掛かるのかな。

【観山座長】  費用の点は、先ほどからもTDRの中に一部入っているとか、入っていないとかという話があって、いろいろ不明な点もあるので、これは、ここというよりは、多分、親委員会である時期、少し整理して、最近はアメリカでもヨーロッパでも小さく産んで大きく育てるなんていうのは絶対やめようということがありますので、委員会としてコストに関してもブレークダウンして、一応、我々の認識というか、報告ということにしたいと思います。
 ここでは役目ではないと思いますけれども、親委員会には是非そういうことは伝えて、コストに関しても、全体どれだけ掛かって、この部分は誰がどう払ってとか、国際分担でどうするかというのは、やっぱりある時期、しっかり整理しておく必要があると思いますけれども、今日は環境に関しての1つの試算であるということですね。

【中野委員】  もう一ついいですか。

【観山座長】  はい、どうぞ。

【中野委員】  人口推移のグラフですが、定常で実験が始まってから微増しているんですけれど、何となくそうはならないんじゃないか、減るんじゃないかというのが実験している方の感覚で、これは、どういう基準に基づいて算定されたのでしょうか。何となく走り始めたら少なくなっていく。今、建設に関わる人数が実験によってだんだん大きくなってきていますけど、実験が始まったときにシフトを取る人というのは、そんなに増えていない。全共同実験者の中で現場にいる人の割合というのはどんどん下がっていく傾向にあるので、そんなに増えないんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。

【北村委員】  数字としては、恐らく本日の資料の2ページの図表1、ILC国際研究所職員及び実験参加研究者等の人数想定で、国際研究所の職員そのものはILCが稼働して以降は定常的で増えない。増えるのは実験参加研究者ということです。
 結局、実験参加研究者というのは、ILCで想定されている検出器の実験のILDとSiDが稼働したときからどんどん実験のレベルが上がってきたときに、それに伴って実験の規模といいますか、質といいますかが上がってきたときに、それに伴って実験研究者の方が増える、そういう数字の想定になっているということです。ただ、これについてはKEKの山本先生のほうで想定していただいた部分ですので、山本先生に補足をお願いいたします。

【山本(明)委員】  いいですか。先にあれば、どうぞ。

【観山座長】  いや、関連でどうぞ。

【山本(明)委員】  一緒に調査をさせていただいた中で、幾つかモデルがあります。もちろん素粒子物理実験というピュアなところだけを見たら、シフトで定常になっていけば減るじゃないかという考えもあるかもしれませんが、どんどん応用展開がされていって、その周辺が固まっていってユーザーが増えてくるというのは考えられることと、それから、サクレーとかCERNという状況を見たときに実際に人が増えていっているわけですね。そういったことを考えて、減るという想定は多分ないんじゃないかというふうに考えています。これは、本当にモデルですから、高エネルギー物理実験のシフト者だけを出しなさいと言われたら、そういう数字。

【中野委員】  シフト者だけというわけじゃないんですが、多分、滞在している人がそんなに増えないんじゃないかなという感覚です。

【市川委員】  このILCは、今のところ、シングルパーパスに近い研究所なので、本当にそのままだとどんと減るというのが私の予想です。特にネットワークも発達して、世界中どこにいても解析できるようになるので、建設が終わったらがくんと減るという可能性があると思います。
 だから、本当にこうやって大きくしていこうと思うと、それ以外の分野をどんどん広げていくような、そういう構想じゃないとあり得ないんじゃないかなというふうに思います。

【山本(明)委員】  そういうモデルをここに入れるのが正しいか、本当にこういう研究所を作ったときに、その周辺を含めてどう発展していくかというふうに考えるかという考え方の違いだと思います。実際にサクレーなどの場合は、50年か60年ぐらいの歴史があるんですけど、本当に田舎の中にぽつんと作った研究所が、今、一種の研究学園都市のような状態になって、多くの方々がスピンアウトの技術もあるし、サクレーとの共同研究を目指して、いろんな民間の方が来ることもあるというのは事実としてあるんですね。
 だから、自分たちの分野のシフトだけのことを考えた数字をここに出すことが果たして正しいでしょうかという問題提起になります。どちらが実際に起きているかと考えたときには、こういった研究所や先端基礎科学の研究所が非常に新しいところにできた場合に、より発展して人口が増えているという現実の方が多いとは思うんですね。そこのところは考えていただいてもいいんじゃないかなと思いますけど。

【永宮委員】  ちょっといいですか。

【観山座長】  はい。

【永宮委員】  それに関係してですが、例えばCERNの場合は、確かに集合住宅メイランみたいなのがありますが、あれは、ジュネーブという大きな町があって、そこにCERNの研究所ができました。今の場合、町にくっ付くかそうでないかというのは、やっぱり重要なファクターです。町にくっ付くとすれば、町の国際化が必要で、バスのナンバーを作るとか、ライセンスも英語で取れるようにするとか、そういう問題もいろいろ町の問題としてやっていかなきゃいかん。これは、町と隔別された場所として考えておられるんですか。

【北村委員】  ILCの立地場所については一切想定なしで、日本国内のどこかにつくるという前提です。あるいはどこに立地するにしても、こうした機能やサービスが最低限必要になってくるというような、そういう前提を置いています。

【山本(明)委員】  正直なところ、どういうモデルを考えるかじゃないかなと思いますが、例えば高エネルギー研、つくば自身を見ていただいてもそうだと思うんですけど、高エネルギー研を最初にあそこに作ったときに、高エネルギー加速器研究機構の素粒子物理の研究、ないしは放射光も含めていいかもしれませんけれども、それだけだったときに、どれだけ縮小していったかと見ると、そうではなかったと思うんですね。やっぱり、それは発展していっているんですよね。
 だから、高エネルギー研との間のいろんな共同研究を期待される方々が周辺にも集まってこられているという事実はあると思います。同様なことが、サクレーはより顕著にあります。
 それから、CERNは、もちろんジュネーブという町があって、ジュネーブとのタイアップで発展したというのはありますけど、CERN自身のユーザー数がどんどん増えていっているということも事実ですよね。だから、CERNの実験が定常になったら、シフトでどんどん減っていっているかというと、そうなっていないと思うんですよ、実際に増えている。すばらしい成果が出たということもあると思いますけどね。でも、そういうことは、こういう新しい計画を考えるときには、モデルとしては考えておくべきことじゃないかなと思うんですけど、違いますか。

【市川委員】  CERNは1つのパーパスじゃなくて、いろんな複合施設で発展していったと思うんですよ。だから、そういうことも想定して次の研究所を作るなら、それはそれでいいんですけれど、ちょっとそこが……。

【山本(明)委員】  でも、CERNが高エネルギー研以上にシングルパーパスといっていいぐらいのパーティクル フィジクス(粒子物理)の研究所でありながら、その周辺が広がっていっているということではないんですか。CERNと違うとは思わないんだけど。

【永宮委員】  CERNは、ちょっと違うのはジュネーブという土地を選んで、そこでやったのであって、CERNがあったからジュネーブという町ができたわけではないわけです。

【山本(明)委員】  私、ジュネーブの町のことを言っているんじゃなくて、CERNの周辺環境のことを言っているんですけど、CERNが加速器として発達していって、特にLEP、LSCというのを建設する中で、本当に周辺の人口が増えていって、その周辺にまた新たな共同研究、ないしは開発を期待される方が集まってきていることは事実だと思う。私は、ジュネーブを言っているんじゃないですよ。

【観山座長】  今の点、結構重要な点で、実際建設、それから、初期段階から非常に多数の研究者が、具体的な今のILCを作る意味でたくさんの方が必要だということは分かるんだけど、その後もある程度の人口が継続して必要だというか、住居とか、いろんな環境が必要だというようなプランを立てておかないと、あるところでピークになっていて、あとは要らないというものを造ってもしようがないので、そこら辺は、今、具体的にあるかどうかという問題はあるかもしれませんけれども、将来的な、これだけのものを造るんだとすれば、そういうものも考えてプランを立てなきゃいけないでしょうね。

【山本(明)委員】  おっしゃるとおりだと思うんです。

【観山座長】  はい、どうぞ。

【伊地知委員】  全然別ですけれども、これ拝見していて、土地利用計画上の観点というのはどうなるんでしょうか。つまり、何かしら周辺にこのようなことを整備しようとした場合には、何らかの変更が伴うのであれば、地方公共団体等がそれなりのアクションをとらなければいけないと思うのですが、例えば、そういう可能性としてどういうものがあるのか。
 それから、そういうことをしようとした場合に、時間的にどれぐらいを要するのか、そういった要素というのはどのような感じになるんでしょうか。

【北村委員】  調査では、ILCのサイトがどこかということは、一切、前提として置いていませんので、架空の場所にこういうものを作るということになります。したがいまして、敷地、すなわち用地についてはどういう調達の仕方をするのか、また誰がどう供給するのかについては何の前提も置いていないわけです。
 ただ、実際問題としては、恐らく一団地の用地が必要になりますので、自治体が持っている土地、それも遊休地や、例えば既存の工業団地で埋まっていないようなところを活用するということが現実的ではないかというふうに思います。
 いずれにしても、中央キャンパスの建設費につきましても土地の買収費は一切入れておりません。恐らく土地の買収から入ってしまうと、建設費は膨大になってしまいますので、そこは地元の自治体などが無償供与なり、購入資金の低利子の融資とか、そういう形で土地が供給されるということに現実的にはなるのではないかと思います。

【観山座長】  はい、どうぞ。

【高津委員】  ありがとうございます。北村委員の資料は、非常に総合的にまとめていただいているので、私自身、ITER計画の経験から今ずっと見ているんですけども、気付く範囲ではもう全ての項目は入れていただいているのかなというふうに感じました。
 その中で、コメントとしては、やはりやるべきことは漏れなく書いていただいているんですけども、それがホストする側の行政サイドでやるべきことなのか、それから、ホストする側の地方自治体で対応すべきことなのか、あるいは参加国全員がシェアしてすべきことなのかというところの区分けを、今すぐしなきゃいけないかどうか分からないんですけど、いずれ、そういうことが必要になってくると思います。
 そのときにITERの場合には4つのサイトが出てきて、言葉は悪いですけど、人気投票になってしまって、魅力あります、魅力ありますということで、結果的によかったと思うんですけど、どんどんホストがすべきことが増えていったという事実があります。今、北村委員のまとめていただいたところに、かなりホストがサポートするようになっているんですけども、ILCの場合、ちょっと分かりませんけど、もし日本でやってくれということになると、ホストがやるべきことと参加国がやるべき貢献、例えば極端に言うとお金を出すということの関係をどのようにリードしていったらいいのかというのが、少し議論して考えていかなきゃいけない項目だと思います。
 それにしても、ホストと、ホストの中でも行政機関、地方自治体、それから実施部隊、おのおのがこの中の項目のどれをやっていくべきか。地方自治体と行政サイドが準備するということは、参加国はお金を払わなくていいんですねと、そういうふうな区分けをやっていく必要があるのかなというふうに感じました。

【観山座長】  ありがとうございます。大変重要な指摘だと思います。
 他にいかがでしょうか。はい。

【横山委員】  恐れ入ります。今の区分けのお話にも少し関連することなんですが、地元コミュニティとの共生といいますか、ともに発展するというような意味においては、早い段階での地元コミュニティとの接触というのが非常に重要になると思います。既にいろんな形で行われていると思いますが、研究者集団も地方自体も、ここに例えばILCが来たときにどういうふうに共生していくのかという議論は、様々な点でいいことばかりではなく、負担として負うべきことも多くなってくると思います。
 私は、例えば核融合研であるとか、あるいは熊取の原子炉の地元のことというのはよく耳にしているんですけれども、素粒子の実験所というふうに発展していった場合でも、先々に放射性物質なりをそれなりの量、扱うようになってくると原子力施設として認知される施設になることをも排除できません。地元の方々は、宇宙を知るための施設と思っていたのに違うのかと、不安・不満に思うことも出てくるかもしれません。
 なるべく、こういう場合は時々刻々にオープンに話すということが鉄則であって、しかも初期段階から、アップストリームから議論に地元に参加していただくということが、信頼関係を結んでいく上での圧倒的な条件になってきます。
研究所の将来構想についてはマルチパーパスの場合、どのような研究所にしていくのか、地元とのコミュニケーションに齟齬のないようにと願っております。
 以上です。

【観山座長】  ありがとうございます。重要な御指摘だと思います。
 そのほかどうでしょうか。
 私も、そんなに多くの経験があるわけではないですが、外国人というか、その場合に研究者と同時に配偶者の意見も非常に強い。その中で、やっぱり大きなポイントとして、ここにも挙げられていますけども、教育というものが非常に強い関心があって、配偶者もついて行った場合に子供たちにどういう教育が受けられるのか、それが国際的に認められた初等・中等教育が受けられるのかどうかということは非常に強い関心で、そういう面で言うと、なかなか大変ではないかなと。
 大体、30%ぐらいが外国人というようなことで試算されていますよね。1万人だとすると3,000人、その試算がどれぐらい正しいのかあれですけれども、3,000人というと、それだけで1つのコミュニティができるような状況で、そういう中で初等・中等というのは、どこに行くか分かりませんけども、自治体との非常に強い連携がないとなかなかあれですし、教育だけではなくて、いろんな環境に関してのニーズもたくさんあろうかと思いますので、それはまだ具体的に場所が決まっていませんので、今ここでは議論されませんけれども、たくさんの研究者が家族とともに来て、基盤的に働いていただくという環境を作るというのは、もちろんつくばでも東海村でもたくさんの経験がありますので、そこら辺も活用しないといけないところだと思いますけどね。
 どうぞ。

【高津委員】  今の委員長のお言葉で思い出しましたが、ITERの場合、サイトの候補については、いろんな面で批判を受けることが多かったんです。その中の大きな項目が配偶者の問題で、教育と医療は地元と自治体とか、行政の方もサポートいただいて、こういうふうにやりますというんで、ある程度説得できても、配偶者のジョブ・オポチュニティはどういうものがあるんだというのを出せと言われて、かなり苦しかった経験があります。あと、文化的なイベントに参加しようとすると、どういうことがあるんだというのも、我々の候補地の場合には大変だったという記憶があります。
 それは、多分、二次的な問題だろうと思いますけど、やはり魅力を増すという意味で、そういった点にも配慮が要ると思いますし、あとは空港からのアクセス。ハブ空港から、なるべくなら1回のフライトですぐに行けるところがいいという、ぜいたくな意見を言うところが多くて、そういうものが場所の選定の際には1つの投票の要因になったと思われます。今回の場合、多分、強いリーダーシップでサイト、ホストできると思いますので、望むらくはホストの義務を少なくして、コントリビュータがみんな平等で負担しようやというスキームにもっていくのがいいのかなというふうに思っております。

【観山座長】  今の関連の配偶者のことというのは、要するに、そこに行くかどうかというのは配偶者の意見も非常に強い、ちょっと日本と違う。日本もだんだんそうなってきていますけれども、その部分がありますので、たくさんの優秀な研究者並びに技術者に来てもらうためには、家族の同意というのは非常に重要なので、そこは、そんなに軽んじることはできません。
 すいません、永宮委員。

【永宮委員】  20年ぐらい前ですけども、つくばで国際化というのを進めるときに直面したまず第一の問題は、つくばには女性の働く方が多いんですね。そのため、働く女性の子息は預かるけれども、働かない人の子息は預からないというような幼稚園があるんです。そうすると、外国から来られた方の奥さんというのはビザの関係で働けないので、そうすると行けないということになって、非常に困ったことがあるんです。そういう、特にビザの問題というのは大きな問題だと思います。
 僕、もう一つちょっと分からなくなったのは、この村の全体のディメンションはどれぐらいなんですか。

【観山座長】  スケールはどれぐらい。

【永宮委員】  要するにILCというのは、30キロとか40キロあるわけですね。それで、30キロ先か何か知りませんが、リニアックを調整に行くというのは大変な話なので、どういうふうに考えられておられるのか、そこら辺、僕はよく分かっていないんですけど。

【観山座長】  この絵は、どこかにまとまった……。

【北村委員】  そうです。先ほどの資料の14ページ、本当にポンチ絵ですけれども、要するに空間的にどういう構成を想定したかということですが、要はILC、この図で言うと、一番上に点々と、これがILCの本体、超伝導加速空洞及びトンネルがこうあって、衝突点というのがあるわけですね。日本の場合、例えば北上山地など、山岳地帯のILCを想定していますので、衝突点の上では余り平面での用地がとれないというようなことがあります。欧米で想定するILCは平地を想定していますので衝突点の上にもかなり大規模な研究所の集積などが可能ということですが、日本でやる場合には衝突点の上には必要最小限の施設は可能ですけれども、研究所が集積する本体空間というのは、衝突点の上ではちょっと難しいということです。ただし、距離が余りあると、研究者や技術者は行き来しますので、余り距離があっても駄目だということから、その折衷案といいますか、足して2で割るような、そういうイメージを具現化する形で、中央キャンパスを衝突点から2、3キロのところに建設し、主な研究者はそこで働くというイメージを想定しています。
 先ほどの図というのは、その中央キャンパスのイメージということになります。

【観山座長】  ありがとうございます。サイトがまだどこかというのが決まっているわけじゃないので、あれなんですが、それでは、議論もありましょうが、次の議題にまいりたいと思います。
 議題2は大型国際共同プロジェクト等の国際協力事例についてであります。これは、先ほど参考資料で、検討事項でありましたけれども、今までは(3)のことをやったんですが、これは(1)、(2)、(3)に関わる割と重要な議論かと思いますけども、文部科学省では、国際的な協力に基づく複数の大型プロジェクトについて、合意形成や推進体制、プロジェクトを実現する上での課題の解決等について、昨年度、外部委託調査を行われたようです。
 本日、その調査を実施された野村総合研究所から内容を報告いただきまして、それに基づいて議論したいと思います。
 それでは、野村総研の矢島上級コンサルタント、よろしくお願いいたします。時間は、20分程度でよろしくお願いします。

【矢島上級コンサルタント】  御紹介いただきました野村総合研究所の矢島と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、お手元に資料を3つ、用意させて頂きました。資料3-1、資料3-2、資料3-3です。本日は資料3-1を使って説明します。資料3-2は報告書の概要版になっています。目次の後に業務の概要があり、ページをめくっていただきますと、今回調査させていただいた内容が記述されています。
 今回、6つのプロジェクトを対象にして調査を行いました。「2、調査対象プロジェクトのまとめ」として、各プロジェクトについて表側にプロジェクトの概要、予算規模、プロジェクトの参画準備等としてまとめました。
 資料3-3は、事務局の方で用意いただいた研究者コミュニティにおいて想定されるILCの概要について、資料3-2の表側と項目を合わせています。ですから、今回、大型プロジェクト、6つ対象にしましたが、ILCとの対比で考えているところがあります。資料3-3は、今回の対象のプロジェクトと比較して見られるような形でまとめました。
 資料3-1に沿って説明させていただきます。資料3-1、パワーポイントになります。
 一番初め、調査の目的等あるかと思います。大型プロジェクトをひもといて、ILC等の大型プロジェクトのレッスンをすることを目的にしています。
 調査項目については、事業開始前、意思決定の時期、合意形成の時期、国際分担の時期のそれぞれについてまとめました。
 今回の調査の対象としたプロジェクトになります。抽出条件で2つに分かれておりますが、抽出条件1の方は日本を含む10か国以上が参加しているもの、文科省が参加していないもの、施設・予算規模がある程度大きいもの、こういったもので、抽出結果として、CERN、ICGC、IACというプロジェクトを選びました。
 抽出条件2では、文科省が中心となって実施しているプロジェクトも対象とする、ということで、ITER、ISS、ALMA、こういった3つを対象にして、計6つを対象としました。
 次のページに対象としたプロジェクトの概要を掲載しています。
 CERNは、素粒子の基本法則や現象を加速器により研究する研究所で、LHCは具体的な1つのプロジェクトになります。
 ITERは、核融合実験炉を実現しようとする超大型国際プロジェクト、ALMAは、チリに超高性能な電波望遠鏡を設置して運用するプロジェクト、ISSは、地上から400キロ上空に建設された有人の実験施設で実験をするというもの、国際がんゲノムコンソーシアムは、臨床的に重要ながんを選定して、そのゲノム異常の包括的なカタログを作成しましょうというプロジェクト、アボガドロ国際プロジェクトは、アボガドロ定数を決めるためのプロジェクトでキログラム原器を作るといったようなプロジェクトです。
 予算規模を見ると、10兆円から数億円のレベルと多岐に亘っています。
 4ページ目は、資料3-3との対比で、例えば合意形成という面で分類したときに何かレッスンが得られるか、推進体制とか費用分担という観点からプロジェクトを分類したときに何かレッスンが得られるか、設備分担について大型プロジェクトからレッスンが得られるものがあるか、この3つの観点からプロジェクトを整理して、ILC等の大型プロジェクトへのレッスンを導き出しました。
 ILCは、合意形成について条約等を締結して、特権を持った機関を作り、まずは多国籍ラボ、Pre-labを作って、4年間実施検討を行い、8年間建設をして、20年間運転するといったところが現在考えられている姿です。
 推進体制については、評議会という最終意思決定機関を作って、所長に経営責任を持たせて、土木、インフラは、ホスト国に負担を求める。加速器、測定器につきましては参加国がIn-Kindで物納するといったことを検討していることかと思います。運転経費はホスト国の負担、それから、不確実性への対応のために予備費をある程度、確保するといった形が、現在検討されている推進体制及び費用分担の姿と理解しています。
 設備分担については、In-Kindというような仕組みを現在検討されています。
 では、こういった仕組みを採用した場合にどんなレッスンが、これまでの大型プロジェクトから得られるか、というのを次のページ以降まとめています。5ページ目、合意形成、6ページ目、推進体制と費用分担、7ページ目、設備分担ということで、先ほどの3つの分類ごとに、それぞれのプロジェクトを分類、そこから得られるレッスンをまとめています。
 ただ、分類を厳密に行うことは難しいことから、ある程度の分類としています。
 まず、合意形成に係る分につきましては、分類は3つに分かれると考えています。政府レベルでかなり厳しい条約、協定等を結ぶもの、機関レベルで結ぶもの、それから、機関レベルで、特に協定等は結ばず、届出とか参加意思を認めると、そういった緩い形態があります。
 プロジェクトを見ていただくと、CERNの本体とLHCは分けて分類しており、CERNの本体自体は機関になるので、プロジェクトではないので、分けた検討をしています。
 ILCは、分類1に近い形が想定されます。いろいろな手続が国レベルでの手続として必要になってくるとすると、かなり長い手続き期間、プロセスが必要になってくると考えています。
 ただ、国家レベルですから、かなり強いコミットメントを得ることができる。長い期間掛かる手続に比べては、きちんとした拘束力を得ることができるというのが、メリット、デメリットとしては整理できると考えています。
 推進体制と費用分担については、大きく4つに分けられると考えております。1つが、CERN本体になりますが、国際機関を設置するもの。ITERのように国際機関を作った上でプロジェクトを進めていこうというもの。それから、分類3としては、新たな国際機関は設置しないが、プロジェクトを組成する。それから、4つ目は、特に国際機関等は設置せず、それぞれが持ち寄りでプロジェクトを推進するという、大きく4つの分類に分かれると考えています。
 ILCは、分類2、国際機関を作って、その上で共通設備を作っていこうという形になると考えています。特徴として専任制ということになります。意思決定とか業務、それに専任に携わる人がいるわけですから、迅速性が保てると考えています。
 一方で、1兆円規模の設備を作って、年400億円のお金を回すとなると、企業で言うと大体500人~1,000人規模の人を動かす組織になるので、そういった面では、大きな会社を1個作るようなイメージになります。この分野で、それだけの人を集めてくることが必要となってきます。それは直接的な研究者プラス、間接部門、リスクアセスメントのプロとか、スケジュール管理のプロとか、いろんな方を集めてくる必要がある、となると、このオフィスや間接を含めた人材の追加的確保というのが、デメリットになる可能性があるとして、まとめています。
 3つ目、設備分担に関わる特徴として大きく3つぐらいに分かれると考えており、Cashを調達して、そのCashで購入するというパターン、設備・データの調達をIn-Kindで実施するパターン、特に拠出はさせず、それぞれ自分たちがリソースを確保して自ら研究等を実施し、その研究成果だけを持ち寄るという、3つの分類があります。
 ILCは、分類2に当てはまるかと思っており、In-Kindということになるので、メリットとして、In-Kindで責任自体も当該国に課させることで、例えば当該国で物価が上がったとしても、その国は確実にそれを作らなければならないことになりますので、不確実性のリスクは、参加国に分けることができる。
 それから、拠出国の裨益ということで、Cashとなると、例えば一番安く作れる国とか、技術的に非常に優れた国に発注が偏ってしまう可能性もありますが、割り当てに応じた自国産業への発注が期待されるというということが考えられます。
 デメリットという部分ですが、In-Kindを成立させるインターフェイスを作るところの取組というのが非常に重要になってくる。ある意味、ここが肝になっているというところが、ひとつチャレンジかなというように考えています。
 2つ目が設備導入等に係る工程管理。ある国で例えば紛争が起きた、ある国で政治が変わった、そういった理由で、工程管理、製造が遅れる可能性がある。そういったところをきちんと管理していく機能が必要になってくる。これは、世界的な管理が必要になってくるということで、実際にそれが可能かということも踏まえ、デメリットとして考えられます。
 3つ目ですが、作っていく段階で、「実は技術的にこういうふうに変えた方がもっとよかった」というのが出てきてしまった場合に、仕様変更が途中でできない可能性がある。技術的にこっちの方がよかったなと後から思っても、技術的変更がしにくい可能性があるというところ、こういったところがデメリットとして掲げられるのかなと思っております。
 今回は、良い悪いということではなくて、あくまでもレッスンとして、こういったところを我々は、これから頭に入れた上で大型プロジェクトを検討していくことが重要なのではないか、ということをまとめています。
 8ページ目にまとめを作成しており、合意形成については、国家間の合意ということで、非常に拘束力が強く、途中脱退をある意味、縛ることも可能だが、合意形成プロセスが長期化してしまう可能性があるだろうといったところ、推進体制については、国際機関を作り迅速性が保てる一方で、人材の追加的確保が必要になってくるという点、設備分担については、In-Kind方式というのが非常にいい面もあるが、やはりインターフェイスの作り込みですとか、工程管理、技術的な柔軟性、こういったところに留意する必要があると考えています。
 9ページを見ていただくと、国内における政策・意思決定時という期間、10ページに、国内の合意形成が終わった後、国際的な合意形成になったときにどんな課題があって、どんな解決策があったのか、11ページは、国際分担が議論されると、どんな課題と解決策があったのか。12ページが、プロジェクトを推進するときにどんな課題と解決策があったのか、そういったところを、トピック的にまとめています。
 特徴的な例として、国際的な合意形成では途中脱退を防ぐ仕組みというのが重要になってくるという点で、国際的な条約等の締結が重要となる、これが機関同士ですと、機関がやめてしまったら、あとは誰も知らないということになりますので、こういった大型プロジェクトについては、やはり国際的な協定等を結ぶ必要があると考えています。
 11ページの“モノ”に関わる課題というところで、In-Kind方式に係るインターフェイスに係る合意が上手に機能せず、結果的にコストアップになったという事例があります。また、インターフェイスの整合を進めても、不確実性対応のための予備的確保が重要と成ってくる。In-Kindなので、基本的には物納ですが、物納を補う意味である程度お金を取っておく。コンテンジェンシーという言い方をしますが、ある程度お金を取っておいて蓄えておく。そういった仕組みというのが、途中のインターフェイスの変更への対応策として考えられます。
 コンテンジェンシーという話は、次のプロジェクト推進時の課題、解決策の検討、12ページになりますが、ここでも少し役に立つものがあります。例えば12ページ、プロジェクト推進時の課題の左下になります。例えばプロジェクトによっては建設工事のベンダーの倒産があり、別のところに発注しなきゃいけない。こういった面では、例えばCERNですと、予備費から資金を拠出することができて、次の発注先を探すことができたとか、それから、12ページの真ん中、地下に岩盤が見つかり、再設計を実施しなければいけないという部分についても、こういった予備的な費用というものがあれば対応できるのかなといったところになっております。
 それから、先ほど国際機関を作るという面で、12ページの右上、推進体制の人材不足という中ではLHCの計画の推進に当たっては、CERNのみでは体制構築が不可能になってしまったというときに、各国の研究機関が雇用を維持したまま派遣することができたという事例があります。
 ただ、LHC計画ですと、研究者間の処遇のばらつき、結局、出向を認めると、出向元の処遇に福利厚生を含めて依存してしまうということで、出向者間で格差が生じる可能性もあります。こういったところも、考慮に入れながら、人材確保を進めていかなければいけない。
 それほど微に細に入ったレッスンというのは得られていないところですが、こういった大型プロジェクトをひもとくことによって、一部、これから進めるILCを含めた大型プロジェクトに使えるだろうというレッスンが得られたと考えています。

【観山座長】  どうもありがとうございました。非常に多岐にわたって詳しく検討されて、この作業部会でマネジメントに関して議論するための非常に貴重な資料が得られたのではないかと思います。数々の国際プロジェクトがあり、それの課題とか問題点とか、どういうマネジメントシステムにしたらいいのかというのも、ベスト回答があるかどうかというのはなかなか難しいところでありますけども、非常に議論の参考になる資料が得られたと思っておりますので、今後ともこの資料は時期を見て活用していきたいと思いますが、いかがでしょうか、どうぞ御議論、御質問、御意見をお願いしたいと思います。
 では、私の方から。4ページに各ポイントが書かれていますが、1つ、我々としても非常に重要な観点としては、税金が掛からないような特権、これは、私どもが参加しているものでも税金対策というのは非常に重要で、そのサイトの国の形態によっていろいろ税金対策をしているという面があるんですが、こういう特権が得られるのかどうかということとか、それから、コンテンジェンシー、日本語に直すと予備費というと非常に難しい、こういうのは財務省がなかなか認めてくれないだろうなと思うけども、例えば建設10年掛かるような計画であれば、途中に、もちろんお金がすごく余る場合もありますが、予想できないような、例えば通貨のレートの変更なんかも1つの例ですけれども、そういうものがあって、コンテンジェンシーというのは国際プロジェクトの中で非常に重要なパートですが、日本ではなかなか、少なくとも文部科学省の予算の中ではコンテンジェンシーというのは非常に難しいという状況があります。
 そこら辺はどうなんですか。こういう特権だとかコンテンジェンシーに関しては、プロジェクトを推進しようとされているところとしては割と楽観視されているんでしょうか。誰も答えはない、難しいということですね。

【徳宿座長代理】  よろしいですか。

【観山座長】  はい。

【徳宿座長代理】  多分、ここで示されていることは、基本的にはIn-Kindの形だとしても、In-Kindの物納だけでは成り立たないということですよね。その中で2つあって、コンテンジェンシーという形での予備費も大事であるし、それとともに、やっぱり物納だけで研究所ができるわけではなく、かつ残りは全部、ホストの国がやるというわけにはいかないので、コモンファンドというのはきちんと出さなくてはいけなくて、だから、コンテンジェンシーだけではなくて、コモンファンドと両方合わせた形で、100%In-Kindでもないし、100コモンファンドでもないけれども、そこのバランスをどこで落ちつかせるかというのが一番重要な交渉のポイントなのではないかと思います。

【観山座長】  プロジェクトマネジメントの非常に重要なパートですけれどもね。
 ちょっと私が分からないのは、この前も少し疑問なのは、評議会というものがあって参加国、CERNでも参加国は基本的にヨーロッパの諸国で、なおかつコントリビューションというのは経済状況の指標によって、多分、参加国の割合やパーセンテージが決まっていると思うんですが、例えばILCとか、ほかのプロジェクトで参加国と参加国でないコントリビュータとの違いというのは何が決めているんですか。それは、調査では何か分かりませんでしたでしょうか。

【矢島上級コンサルタント】  概要版の方のプロジェクト、先ほど開いていただいた3ページ、4ページ目というところ。

【観山座長】  資料番号で言うと何番でしょうか。

【矢島上級コンサルタント】  資料番号で言いますと資料3-2になります。

【観山座長】  3-2ですか。

【矢島上級コンサルタント】  5/6と振ってあるところの左下、プロジェクト実施に係る費用分担の初期費と運営費と分かれておりまして、それぞれのプロジェクト、分担があるものについては分担の比率も書かせていただいておりますが、基本的には参加国が応分、プロジェクトに参加するに足る便益に応じて、それぞれがディスカッションで決まるというものもありますが、例えばALMAというプロジェクトは、実はチリはホスト国でありながらお金を出さない、土地だけを出す、場所を提供するというところで、例えば10%の割り当てを得るという形になっており、これは望遠鏡の使用時間になります。
 実際には、何か決まったやり方があるのではなくて、そのプロジェクトの裨益、裨益というのは2つあって、プロジェクトによる直接的な裨益と、プロジェクトがもたらす社会的費用、社会的な影響、そういった間接的なものを加味すると、やはりプロジェクトごとに変わってくるので、ILCがどういった社会的便益、若しくは研究的便益を生むのかというところでいろいろ決まってくるのかなと思います。

【観山座長】  そうなんでしょうけども、具体的に……。

【徳宿座長代理】  よろしいですか。

【観山座長】  はい。

【徳宿座長代理】  やっぱり加速器をプロジェクトとして作る母体というのが、集まってくるメンバーが国のメンバーで、それが評議会というのを作るのだと。そこでやる実験、ILDを使った国際実験に関しましては、最初のときに駒宮さんの方からもありましたように、基本的には世界じゅうの研究者を受け入れるという形になりますので、ILCができたときに、それを建設するという主体になる国たちが集まったのが評議会だと思います。そこに来る人たちに対しては、比較的自由に参加できるという形になるのではないかと思います。

【観山座長】  多分、参加国というのは、野村総研さんが調べられたもので言うと、基本的に国際条約というか、これぐらいの規模になるので、国際的な裏打ちをするような国だと思うんですが、それは、例えば費用的な面での何かスレッショルドがあるのか、同じですけど、人的なIn-Kindとしてのスレッショルドがあるのか。それは、まだ具体的には議論されていないんですか。

【徳宿座長代理】  山本さんの方が詳しいかもしれませんけど、その辺は政府で交渉するところでいろんなオプションがあるだろうということがPIPに書いてある止まりになっているのだと思います。今、具体的にどういう形で分担をするかというのは議論されていないのではないかと思いますが、山本さんの方が。

【山本(明)委員】  そのとおりだと思います。例としてCERNの場合というのが1つのモデルになるわけですけど、何かお金のスレッショルドでメンバーが決まっているわけではなくて、その国の持っている経済力の何%という形で出せば、その比率によってメンバーシップを得ると。一旦、メンバーシップを得れば、1票は1票として勘定される。
 そのほかに最近、CERNがさらにグローバル化を図る上で広げようとしているのがアソシエートという新しいシステムを作って、その場合はさらに比率が10分の1でもアソシエートメンバーになれる。10分の1だったかどうか確かじゃないんですけど、そういった形によってアソシエートになれば、また一定の権利が生まれる。
 それから、もう一つはプロジェクトによって参加するというのがアメリカや日本のような場合で、LHCに対してお金を拠出して参加していることによって、理事会においてのオブザーバーといった点の権利が生まれている。この辺は徳宿さんがより詳しいと思うんですけど。合っていますよね、今の。

【観山座長】  いや、私も知らないわけじゃなくて、ヨーロッパの場合には、ある程度、高エネルギーだけじゃなくて宇宙でもスペースでも国際機関を作っていて、それは同じようなレベルで経済的な状況に見合って参加分担して、でも、ボードは1票ずつとか2票ずつもらっているというのは1つの歴史というか、1つのあれですが、ただ、ILCとか、アメリカが加わったようなもので言うと、そう簡単ではない。要するに参加国はどういう権利を持っていて、あくまでも参加国と参加国でないのは立場的に非常に違いますし、責任も全然違うし、そういう部分がちょっと聞きたかったんで、そこはまだ確定的ではないわけですね。

【永宮委員】  ちょっと僕も分からなくなったことは、4ページのところに「運転経費はホスト国の負担」と書いてありますよね。これは、ここで議論するべき問題ではないかもしれませんけれども、先回、DESY型というのを、例えば75%ドイツが出すとすれば25%そのほかの国が持ち、運転経費も込みで、そういうふうになっているわけです。そういうタイプを、例えば30%、30%、30%で各国がILCを支えるとしたときに、やっぱり重大な問題になると思います。この場でそれが機論すべきかどうか分からないので、単なる質問なんですけど。

【徳宿座長代理】  よろしいでしょうか。多分、この書き方が少しミスリーディングなんだと思います。ホスト国というのがちゃんと定義されていないというか、2つの意味でみんな使うんですよね。だから、普通にここで言っているとき、「運転経費はホスト国の負担が基本であるが」というホスト国という意味は、その施設を運営している母体がということだと思います。
 例えばCERNは、先ほどありました現在22カ国のメンバー国がいて、さらにホスト国といった場合にはスイスとフランスですが、スイスとフランスが運転経費を払っているわけではない。その場合、ICFAの文章は「運転経費はCERNの負担が基本であるが」と読みますので、そういう意味でILCの研究所が日本にできたときに、日本が運転経費を全部払うのが基本であると読むべきではなくて、ILC研究所がどうやってできるか、国際機関としてできるのであれば、その国際分担した母体が運転費を払うべきだと読むべきだと思います。(事務局注:委員御指摘を踏まえ、ホームページには修正した資料を掲載。)

【観山座長】  要するに参加国というか、カウンシルに参加している者が、パーセンテージはどうか知らないけれども、それぞれの応分で支払うのが……。

【徳宿座長代理】  基本であると読む。

【観山座長】  基本だろうということですね。

【徳宿座長代理】  はい。

【観山座長】  どうぞ、中野委員。

【中野委員】  今のを聞いて非常に安心したんですが……。

【観山座長】  安心した人が多いですよ。

【中野委員】  加えて質問ですけど、やっぱりこれぐらいの規模になると合意形成に時間が掛かっても条約を結ぶべきだ、国と国との約束で建設して運営すべきだということが一番大きなメッセージだと思うんですが、条約を結んだときのメリットでCERN並みのメリットが得られるか。やっぱりCERN、LHCが非常に成功したのは予算が前借りできたということとコンテンジェンシー、予備費といっても、毎年の予算が確保できるという裏付けの下でこういうことが認められていると思うんですね。それが日本で可能になるか。
 だから、建設時、年によって予算が突出する年とかいろいろありますけど、そういうことの平準化のために合意形成に時間を掛けて条約を結べば、予算の前借りや予備費の確保につながるような方便はあるのかというところが非常に興味あります。それについてはどういう可能性があるでしょうか。

【矢島上級コンサルタント】  おっしゃったように、リスクをいかに事前にアイデンティファイするかということに関して、リスクの専門家や金融の専門家、要するにリスクを金額として見積もることができ、そのリスクが何%の確率で発生することから、よって、コンテンジェンシーはこれでいい、それをみんなに説得させるという人が実は一番大変で、もちろん研究者の方が集まって物を作れるが、おっしゃったようにCERNがなぜできているかというと、そこの説得性があるからではないかと。説得性を持たせなければというところで、日本人にそのノウハウがあるかというと、残念ながら持ち得ていない、このあたりも、これから学んでいかなければいけないのかなと思っております。

【中野委員】  とにかく建設のときにいろいろとお金を出していただくということを条約で約束していただくというのも非常にハードルは高いと思うんですけれど、一方、そういうふうに約束した国々から見たら、一番のリスクは、お金を出したけど走らないということだと思うんですよね。お金を出したけど、途中で計画が止まってしまうとか、アメリカでありましたが、それとか、走らないというリスクを避けるというところでうまく説得して、長期のコミットメントというのを初めから得られないか。その長期のコミットメントというものを得た上で、予算の平準化であるとか、突発的に思ってもいないことが起こったときに対応するというのを可能にすることができないかというふうに思うんですが。

【永宮委員】  そうすると、ホスト国というのは、お金を出して参加している国がホスト国であるとすれば、先ほどの住宅環境という問題は、これは日本が全部やるんですか、それともホスト国が全部でシェアして出すんですか。何か僕、そこまで分からなくなって、CERNの場合はそうやっていたわけですけども。

【観山座長】  そうやっていたというのは。

【永宮委員】  要するにいろんな国のコントリビューションを勘案して、議論の末メイランという集合住宅を作ったわけですが、僕は、このILCというのはDESY型ではないかなとまだ思っているんです。建設に関しては何%というフラクションで各国が負担するけども、それ以外の建設に関しては日本が出すという仮定で考えているんですけど、それはどういうふうにお考えなんですか。

【観山座長】  野村総研さんに聞いてもしようがないんですが。

【山本(明)委員】  それがいろんなモデルとしてPIPに書いてあって、これから、これが議論され固まっていくべきものだということであって、決まったものはまだない。
 多分、先ほどの徳宿さんがおっしゃったのは、メンバー国がと訳すと物事、非常に分かりやすいのかなと。メンバー国が負担するというのと、ホストはホスト国だとすれば、ホストというのはメンバー国という意味でも使われたというふうに読めばいいんじゃないかと思うんです。

【観山座長】  だから、それはちょっと、さっきもここでやることかどうかあれだけども、メンバー国がどういう部分をコントリビューション、例えば運営費をコントリビューションするということなのか。それから、例えば今、住宅だとか、実験装置そのものについてホスト国が50%に近いのか、メンバー国が近いのかといったら、さっき言われたのはホスト国のことを言われているんですよね。

【山本(明)委員】  ホスト国が50%といった場合は、要するにホームカントリーというか、その国がということだと思いますが、それこそ、そういうモデルが幾つか実際書いてあって、出発点は50%というと分かりやすい例がほかにあるので、そこからスタートするとは思いますけれども、何%かというのは、我々自身が語ることは許されていないことであって、これから高いレベルで議論されて決まっていくべきことだと思うんです。
 それから、条約の場合の大きな要素として、私が理解しているのは条約を結んでメンバー制をとった場合というのは、そこから抜けられない。例えばやめるといってから10年間は抜けられない。逆に言うと会費は払い続けてくださいというような縛りがあって、それが非常に強く、みんな、簡単にはやめないというものになっているんじゃないかなと思うんですけど、ITERの場合、それがどうなっているのかというのは私もよく知らないんですけれども、もし、その例があれば教えていただけるとありがたいんですけど。

【観山座長】  今、簡単に答えられたら。

【高津委員】  ITERも建設期は抜けられないという協定になっていて、今おっしゃったような仕組みになっています。でも、トランプ政権になってどうなるか分かりませんけどね。

【観山座長】  運営時期には、ある約束の下に抜けられることもできるということですか。

【高津委員】  その場合、必要となるお金を全部払ってやめると。そこは、やや心配な国がありますが、やめることはないと思うんですけど。

【観山座長】  では、どうぞ。

【伊地知委員】  議論が違う方向になるかもしれませんが……。

【観山座長】  結構です。

【伊地知委員】  議論を伺っていて、条約に関する部分について、どういうふうにこのプロジェクトを行うかということと、ホスト国としてこれをどうするかということを、多少切り分けた方がいいのかもしれない。条約の場合だと、例えばITERのための協定の例があると思いますが、もしホスト国として行うとなると前例としては、これは第1回目で申し上げたかもしれませんけれども、国連大学に関する国連と日本国との協定というところがあって、ここに書かれている幾つかの条項の中で今挙がっていない論点があるとすれば、それについて、このILCをもしホストするとした場合にはどうしたらいいのかというようなことを検討する必要があろうかと思います。
 一般的には、上の方から、条文の題目のところを読み上げますと、まずは定義だとか本部施設、本部施設の法的地位、本部施設の保護、本部施設に対する公共サービス、これはユーリティテーズに関することですけど。それから、入ってきていないと思われるのは、通信及び出版。それから、これは先ほどの資料の4ページにありましたけど、課税の免除。それから財政的便益。それから、これはもしかしたらあまり明示的ではないかもしれないんですけれども、社会保障。それから、通信及び滞在、これは短期的に入るような場合に対する、それなりの便宜を図るということかと思います。
 それから、学問の自由。あと、職員に関する事項と専門家に関すること。あと、これは一般的なことかもしれませんけど、紛争の解決。それから一般規定ということになっています。ですので、例えば資料の3-2に挙がっていないアイテムで、既に国連大学と日本国との間の協定に関することで挙がっているようなアイテムがあるとすれば、それがさらにもう少し検討しておく事項になるのではないかと思ったところです。

【観山座長】  ありがとうございます。
 はい、どうぞ。

【横山委員】  恐れ入ります。ちょっと条約のことに関連するかなと思いまして発言させていただきます。ISS、宇宙ステーションについてもお調べいただきました。ISSは政治的状況や外交的な意味合がILCなど基礎科学を目的とするプロジェクトとは随分と違うことにご留意いただければと思います。
ILCやCERN、ALMAというのは、サイエンスの成果をもってペイするというのが基本的な考え方ですけれども、ISSのようなものは、むしろ参加して宇宙でのプレゼンスをソフトパワーとして発揮することによるペイというのが非常に大きい。だから、参加することの意味合いというのが随分と違うので、そこは単純に交ぜない方がいいなというふうに感じております。
 ソフトパワーやハードパワーやコモディティというようなことに言われるように、様々な側面でのペイがあって、それによって年間400億ほどの支出を国としても決定しているという状況だと思うので、条約の在り方にも当然異なる影響が見込まれていると思います。どういうペイを目指すプロジェクトなのかという意味では、やはりCERNやALMAというところが一番近いんだなというふうに拝見しており、コメントします。

【観山座長】  ありがとうございます。
 はい、どうぞ。

【佐藤委員】  7ページで設備分担に係るプロジェクトの特徴に応じた分類で、In-Kindの方式の場合、メリットに割り当てに応じた自国産業への発注が期待されるという言葉で書いてあるんですけども、これは、条約的には特に縛ることはなくて、自然にそうなるだろう、期待されるということなのでしょうか。

【山本(明)委員】  これは、CERNの場合はすごくはっきりしていますよね。参加国が払ったお金に応じたものが、その国への発注として返るというのは大原則になって、そのための公平な入札をしつつそうなるという非常に巧みな、いや、本当に巧みなシステムが作られていて、そこは学ぶべきところが多いんですね。
 いろんなルールがあって、日本と一番違うところは、1番札とったところが100%とるというのは決まっていない。2番札の人に交渉して、同じ札だったら、そこにも、一部(発注を分割し)持っていけるということが最初から規則化されていることによって、そういうことが全部調整されて、払った分のお金は自国に返るというのが基本になっています。それにはあらゆるものを使う。机もそうだし、いろんな入札があって、そういうものを全部合わせたときに、そうなるように努力して、しかも単年度でならなければ、3年間ぐらい掛けてならされるように努力するとか、いろんな努力目標が決められているので、多分、ILCの場合ももしそうなれば、そういったことは大変参考にしていくべきことではないかと思いますし、それは、ある意味でフェアなやり方ではないかと思います。

【佐藤委員】  分かりました。ヨーロッパは、そういうやり方は非常に巧みというか、得意だなと私も感じているんですけど、それが日本でうまく機能できるようにいろいろ考えなければいけないと思います。

【山本(明)委員】  多分、それは入札の方法、それこそ特区というか、国際研究所であるがゆえに、こういうことが許されるような特別な法律といいますか、そういったものも必要になってくる。これは、まさにPIPの中できちんと決められることではないかなと思います。

【観山座長】  はい、どうぞ。

【北村委員】  先ほど来から、運営経費や建設費用の話がでていますが、結局、誰が何に対してどれだけ払うかの根本的な前提というのは、恐らく私が知り得る限りにおいて言うならば、誘致合戦、結局、誘致をする競争になったときに、誘致主体側が提示するいろいろな優遇措置や良い条件に依存すると思います。誘致競争では、世界各国の交渉の中において、合理的な面で言うと、相対的に良い条件を出したところに決定されることになります。
 ITERの誘致競争で、日本はフランスと争いました。フランスは接受国――ホスト国を接受国という日本語に訳していますけれども――の負担ということで、国際学校から始まり、インフラ、それから、あらゆる生活上のサービスや通勤バスの運営など、そういうものは全てITERサイトの周辺自治体が供給する、そういうことを設立協定の附属書に明記しているわけです。結局、その大元というのは、誘致で日本と争ったときにフランス政府なり、フランスの自治体が、そういう有利な条件をどんどん出したということであると思います。
 ということは、ILCについて、日本が本当にそれを誘致したいと心底思うのであれば、良い条件をがんがん出して、たとえば、先ほど出てきた税の優遇措置、それから、重要なのは外交官特権のような治外法権をどこまでその研究所に与えるかとかなど、そうした優遇措置などの良い条件を出せば、誘致に有利に働くと思います。ただ、ILCに対する日本のスタンスがITERのときのように、是が非でも誘致という、まだそこまでは熟していないということですので、そういう誘致に向けた有利な条件は、誰がどう決めるのかというと、放っておくと何も決まらないのではないかと思います。先ほどの住宅にしても、良い条件を出そうとするならば、ホスト国である日本なり、ホスト地域である自治体が住宅を供給しますと言えば、非常に有利な条件として誘致に効くわけです。
 しかし、是が非でも誘致したいと思わないならば、そういう条件は出さないわけですよね。そうすると、住宅を誰が供給するのかということは、今度はどこの場で議論されるのかよく分からなくなります。結局、そういうことなのではないかなと。
 要するに、現時点ではアプリオリに住宅はホスト国が供給するなどの条件が決まるメカニズムには当然なっていないのではないかと思います。ということから、誰が何に対してどれだけ払うかの議論は、今後、日本がILC誘致の意思決定を仮にした場合に、どこまで有利な条件を出すかに依存するのではないかというふうに思います。

【観山座長】  それは、ILCを日本以外のところが誘致したいというところがあれば、そういう話になるでしょうけども、多分、今のところ、ないんですよね。日本の中でどこに作るかという問題はあるかもしれませんけども、どこに誘致したいとかいう問題はあるかもしれない。
 だから、ITERの場合とは、そこの部分は割と違う。ただ、いい研究所を作ろうと思うと、いい研究者、優秀な技術者を集めなきゃいけないというところで、どういうサービスを提供できるかというのは大きな観点だと思いますけど、この場合ね。
 はい、どうぞ。

【高津委員】  今の北村委員の御意見とも似ているんですけども、ILCの場合には、私の理解するところ、サイト、候補地は日本に絞られているということになれば、ホスト国が受け持つ部分と参加国がみんなで見る部分という綱引きは、かなり有利に展開できるんじゃないかというふうに思います。従って、ITERのようにやる必要はなく、逆にコントリビュータとホストとの間のどこに線を引くかですので、なるべく日本の負担が小さくなるような方向にもっていける可能性はあるんじゃないかと思います。
 その中の1つとして、大変勝手な意見かもしれませんけど、物納というのはITERで本当に苦労しています。所期の目的は、当然、核融合の先端技術を国内に根付かせるということと税金を使って作るお金が国内の産業界に戻ってくるという2つの目的があって、文科省さん、そのように頑張っていただいて、いい方向には行ったんですけど、実施してみると、やはりインターフェイスが非常にややこしい。7極もあるということで、難しい問題がいっぱい出てきて、今、工程の遅延とか、コストの増大のかなりの要因が物納システムをとったことによるんじゃないかと内心反省をしております。
 ILCの場合には、今までお話を伺ってくる限り技術の国内蓄積というウエートは、それほど大きくないんじゃないかと思われます。あとは、税金を使うためには国内の産業界に戻ってこなきゃいけないという、先ほどのフェアリターンのことがあるんだろうと思いますけど、もっと大きな目でフェアリターンを見れば、科学技術的な成果を出すことがフェアリターンだと思えば、国からコントリビュートしていたお金をILCの国際組織にまとめてもらって、そこが一括責任を持って発注するシステムがもしとれるんであれば、いろんな面で合理化されてコスト増の要因も少ないし、期間の延びも少なくなってくるというメリットがあると思います。そういう御検討は今までされたことが、パートナーと相談されていれば、絶対そんな意見は言わないと思うんですけど、こちらからは少なくとも言い出せるジャスティフィケーションはあると思うんですけども。

【観山座長】  マネジメントを少なくしようと思うと、In-Kindが少なくて、in cashで、中央でベストなものをスケジュールに合うように出してもらってというのが一番理想ですよね。
 ただ、財務的にとかタスクペアに対する説明として、それが本当に可能かどうかというのはいろいろな大きな問題はあると思いますね。同感ですね。
 あと、二、三。すいません、はい。

【川越委員】  今の部分について、山本さんが一番詳しいと思うのですが、加速器のメインの部分である超伝導加速空洞に関しては、世界で作るということを前提として、今の計画が組まれていると思います。いかがでしょうか。

【山本(明)委員】  そうですね。基本的には、この件については、どこも皆さん、参加されたいと積極的に思っていらっしゃるので、お金との相談なんですけれども、全体で分担していくというコンセンサスです。

【観山座長】  はい、どうぞ。

【市川委員】  ちょっと別な話になるのですが、純粋に質問なんですけれど、この想定されている形の中で検出器というか、実験グループは完全に別なんですか。

【山本(明)委員】  この間、川越さん等のお話もあったかと思うんですけど、基本的には、実験コミュニティは実験コミュニティとしてのガバナンスを持つと。ただし、ホストするILC研究所は、本当の骨格となる部分、土台となる部分で、(他の機関が)どこも非常に扱いにくい部分が、これまでの実績から言うと20%ぐらいはあって、それは研究所の方でサポートするけれども、実験グループの意思を決めていくのは実験グループが別に持つというのは、高エネルギー物理の伝統としてあって、それが機能しているので、ILCの場合も現在は同じように考えていくというのは大きなコンセンサスだと思うんですけど。
 これは川越さんの方がいいかな。

【市川委員】  それについて、どういうふうに実験グループを作っていくかというのは、こういう場ではなくて、もう研究者のコミュニティで決めるということですか。

【川越委員】  そうだと思います。もちろん、それを監督するとか、あるいは実験を選んで、それを監督する義務というのが研究所にはありますけども、実験グループを作るのはやっぱりコミュニティだと思います。

【観山座長】  ちょっとそれも……はい、どうぞ。

【中野委員】  1つだけ最後に質問したいんですが、体制とかマネジメントというのは条約を結ぶ前に大体分かっていて、それから条約を結んだんでしょうか。それとも、条約を結んでから、そういうものが決まったんでしょうか、大抵の場合は。

【矢島上級コンサルタント】  この調査範囲につきましてはほぼボトムアップといいますか、かなり体制を作ってから最後に条約を結ぶという方法が採用されていると考えられます。

【中野委員】  だから、条約を結べるかどうかというのはどういう体制、どういうマネジメントをするかということが……。

【矢島上級コンサルタント】  決まってから。

【中野委員】  決まっていないと条約を結べないということですね。

【矢島上級コンサルタント】  はい。

【観山座長】  ちょっと時間が来てしまいましたけど、ちょっと最後言いたい。7ページ、資料3-1で、ここに設備分担ということがあって、さっき市川委員から質問あったもの。ちょっとうまく切り分けしないと、この設備というものは何なのか。つまり、加速器本体の部分を多分、設備というふうに表しているんでしょうけども、加速器というのは、それだけじゃ何もなくて、それにあと、実験設備というか、実験装置みたいなものが、今言われたコミュニティが作るとかというのがあって、そこをうまく切り分けしないと、私も初め分かっていなかったですが、外部にさらすときに、コミュニティの方は分かっていても、それを読む人は分かっていない部分が結構大きいので、加速器本体とか、そういう基本的な部分をどういうふうに作って、どういうふうに分担で、どういうふうなマネジメントにするのか。
 それから、それだけでは足らない装置の方ですね。実験装置の方は、またコミュニティでどういうポリシーで、それは前回聞いたと思っているんですけれども、そこら辺の切り分けをもうちょっと今後していかなきゃいけないし、コストに関しても親委員会で適切なときに、そこら辺の分類もはっきりさせながらやらないと。ホストとメンバーとの兼ね合いもありますけども、そういう部分もちょっと、同じ共有したマインドの下に議論しないとなかなか、違うことをしているかもしれませんけれども。
 ちょっと司会の不手際で時間が来てしまいました。前回よりは少し議論ができたのではないかと思っておりますけれども、ありがとうございます。これで3回目の議題は終了になりました。
 最後に、事務局から連絡事項がありますので、お願いします。

【吉居加速器科学専門官】  ありがとうございます。本日の議事録につきましては、後日、出席委員の皆様にメールにて確認をお送りさせていただきます。御了承の後、文科省のホームページにて公表させていただきます。
 次回は、資料4の通り、5月23日火曜日の13時から省内の会議室の予定でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 次回と次々回につきましては、今日の議論の延長でもございますが、海外の事業を個別に取り上げて、もう少し議論を深めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。

【観山座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、本日の会合を終了いたしたいと思います。皆さん、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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