国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議 人材の確保・育成方策検証作業部会(第4回) 議事録

1.日時

平成28年4月20日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. これまでの主な意見について
  2. 国際大型プロジェクトにおける建設及び人材の確保等について
  3. その他

4.出席者

委員

中野座長、小関座長代理、池田委員、大熊委員、岡本委員、中家委員、山本委員、横溝委員、横山委員

文部科学省

三原科学官、渡辺基礎研究振興課長、萩原素粒子・原子核研究推進室長、吉居加速器科学専門官

オブザーバー

(説明補助者)
エバンス前LHC加速器最高責任者

5.議事録

【吉居加速器科学専門官】  それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきたいと思います。開会に先立ちまして、事務局より御連絡をいたします。本日の会議は公開でございます。本日はプレス1社から撮影の希望がございましたので、冒頭の撮影を許可したいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【吉居加速器科学専門官】  それでは、撮影希望の方はお願いいたします。
よろしいでしょうか。それでは、中野座長、よろしくお願いいたします。

【中野座長】  それでは、国際リニアコライダーに関する有識者会議、人材の確保・育成方策検証作業部会第4回を開会いたします。本日は御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。
では、本日の出席状況について、事務局から報告をお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  本日の出席状況についてお知らせいたします。浅井委員、熊田委員におかれましては、所用により御欠席でございます。出席は9名でございまして、当作業部会の定足数は6名ですので、会議は有効に成立しております。
また、本日の出席者につきまして、本日は国際大型プロジェクトにおける建設及び人材の確保等について、山本委員からCERNのLHCについて御発表いただきますが、その説明補助者といたしまして、前LHC加速器最高責任者のリン・エバンスさんに御出席いただいておりますので、御紹介をいたします。
事務局からは以上でございます。

【中野座長】  それでは、続いて、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  配付資料の確認をいたします。お手元の資料をご覧ください。資料の1点目がこれまでの主な意見案、それから、2点目が本日御発表いただく山本委員の資料でございます。3点目が今後のスケジュール予定でございます。前回の会議が非公開でしたので、今回、議事録は付けてございません。このほか、机上には参考としていつものドッチファイルを置いておりますので、適宜ご覧いただければと思います。
以上、不足がございましたらお知らせ願います。

【中野座長】  ありがとうございます。それでは、議事に入ります。議題1について、前回の会議の主な意見を資料1にまとめておりますので、これについて事務局から説明をお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  御説明いたします。資料1の3ページ、4以下にまとめてございますので、ご覧ください。
前回の会議では、ILCの建設に想定される企業における構成部品の製造、建設、人材確保等に係る課題についてという議題で議論をいたしました。その主な御意見を紹介いたします。
1つ目でございますが、量産が進むにつれて、設計作業としては大人数を必要としないが、エンジニアは想定外の問題が発生した際などに原因究明や対応策の立案を行うことが主要業務になるという御意見。
それから、企業においては、いつごろからどのような作業を行うかの工程が明確にならないと人材の確保やプロジェクト終了後の人材活用等の計画が立てにくい。それから、新卒の採用については、技術の伝承などから継続的に採用することが重要という御意見がございました。
4ページに参ります。それに対しまして、加速器研究者の知見の伝承につきましては、日本の場合は、トリスタンで団塊の世代の研究者が育ち、KEKBを作り出したが、現在は徐々に代替わりが進んでいるという御意見。
それから、これまで国内では加速器プロジェクトが続いてきたが、SuperKEKB以降の大型プロジェクトの展望が見えないため、数年前から海外の複数の加速器プロジェクトに参加して仕事量の確保と技術の維持を図っているという御意見。
それから、3つ目、中小型の加速器は、医療用のニーズが出てきたので、国のプロジェクトで培った人材や技術がそこに生かされており、うまく回っているという御意見。
製造の現場では、量産を経験すると、効率化、品質管理等を工夫するようになり、量産効果が出てくるという御意見。
それから、加速器は広範な要素技術が必要で、一通り経験させると、企業にとっても人材育成のよいトレーニングになるという御意見。
それから、最後でございますが、企業では加速器だけを専門にしている人材は限られているので、繁忙に応じた人員の融通は類似技術分野の部門との間で行き来させることで対応しているという御意見がございました。
以上でございます。

【中野座長】  ただいまの説明について何か御質問ありますでしょうか。山本先生。

【山本委員】  意見ではないんですけれども、一応もう一度丁寧に読ませていただいて、また気がついた点について次の委員会までの間に後日コメントさせていただける機会をいただけるとありがたくと思います。

【中野座長】  はい。結構だと思います。
よろしいですか。それでは、次の議題に入ります。議題2は、国際大型プロジェクトにおける建設及び人材の確保等についてです。本日は、欧州合同原子核研究機関CERNが設置する大型ハドロン衝突型加速器LHCの建設や、それに係る人材の確保等について山本委員から御発表いただき、質疑応答の部分ではリン・エバンスさんにも適宜御発言いただきたいと考えております。それでは早速ですが、山本委員お願いいたします。

【山本委員】  ありがとうございます。着席した状態でよろしいでしょうか。

【中野座長】  はい、結構です。

【山本委員】  本日用意しております資料に沿って報告をさせていただきます。また、英語版も用意しておりますので、今日協力いただくリンさんにも、内容については御理解いただけるようになっております。
CERNの大型ハドロンコライダー、またはラージハドロンコライダーと言いますが、その中の計画における加速器の建設と人材についてという題で今回はお話をさせていただきます。この資料につきましては、リン・エバンスさんと私と共同で準備をさせていただきました。
最初に簡単に、CERNがどういうものであるかということの復習になりますが、簡単に述べさせていただきます。それから後半の議論が本日最も大切だと考えておりますが、その節々でいろいろテクニカルなことを引用させていただくことがありますので、初めの18ページのところまではそのイントロダクションということで、非常に大まかなことを全体の流れとしてお話をさせていただきますので、御了解いただきたいと思います。
CERNは1954年に12カ国のメンバーによってスタートしておりますが、もともとこれは第2次世界大戦後のユネスコと御尽力によって世界の平和のための科学ということで設立されたところであります。現在は、2016年現在で21カ国のメンバーシップにもなっておりますが、そのほか、オブザーバー国、それからアソシエートといった形で、そのグローバル化が図られております。
正職員はほぼ2,300人、そのほかに、給与をCERNから支給しているという形でのスタッフが1,400人。後ほどもう少し詳しくその内容についてお話しいたします。そのほか、全世界から1万2,000人強の方々が参加されている研究機関でありまして、年間予算が約1,000ミリオンスイスフランということで、大体1,000億円、ないしは日本円に直しますと更に1割強高い額になります。
ここに示しましたのは、CERNで研究に参加する、または加速器の建設・研究に参加する方々全員の分布を見たものでありますので、今日の加速器という観点でいいますと、これは全てではないのですが、そのブレークダウンについては、私どもの手元にはちょっとアベイラブルでないので、見ていただきたいんですけれども、全体としてこういう大きな60年経った研究所でありますが、年齢的な若さを保っているという点が大きな特徴かと思います。非常にアクティブであるということにもなるかと思います。
また、後ほど議題にもなってくるかと思いますが、そういった方々がどのような方向に進んでいらっしゃるかということで、多くの方々が産業化に羽ばたいていかれますし、そして、大学、研究所というところにそれぞれ羽ばたいていかれます。
それから、技術的な分野でいきますと、科学技術、特に計算科学、そして技術に対して多くの方が出ていかれるということと、それからもちろんここのCERNとしての本業の物理、それから、加速器を含める技術という形で、多くの方々が育っていらっしゃるというものであります。
CERNにおける加速器の歴史の中で、LHCがどういうところに位置づけるかということでこの表を用意いたしました。1954年に設立されてから、一番最初にプロトン・シンクロトロン、この部分で示している小さな部分ですが、この部分から始まって、その次にSPS、そして、大きなLEPという、最初は電子と陽電子を衝突させる加速器。その上で、その役目を終えたところに陽子・陽子の衝突加速器としてのラージハドロンコライダーが、1994年にその建設が決定され、約14年間かけて完成するというところに至っております。その間にどういった人材が求められたかということについては後ほど御報告をさせていただきます。
皆様御承知のように、2010年から本格的な実験が始まりまして、2012年にはヒッグス粒子を発見するという大きな偉業を打ち立てられ、2015年からは、すいません、Tが抜けてしまいました、13TeVの物理実験がスタートしております。
LHC全体のスケールを理解していただくことが後々の議論の中で役に立つかと思いますが、直径約9キロメートルのリング状のもので、周長27キロメートルの大きさを持った加速器で、ここのところに、上のほうに白く見えている部分が4キロメートルある飛行場でありますので、おおよそ皆さん、スケールを感じていただけるかと思います。
また、主たる技術といたしましては、この大きなリングのところにビームを加速をしながら回していくということで、超伝導磁石の技術によって、軌道を決めながら、またそのフォーカシング、ビーム制御をしていく。そして、そこに超伝導加速度技術を使って加速を定期的に行って、シンクロナイズさせながら加速をしていくというものです。トンネルの中は、このように地下100メートルのところにトンネルがありまして、ここに約1,700ぐらいに及ぶ主たる二極の磁石と四極の磁石が含み込まれております。そのほかのいろいろな補正する磁石を加えますと、約7,000台程度の規模になります。その中の幾つかの勘どころとなります各実験装置のところでのビームを絞り込むということについては、日本がアメリカと協力をして貢献をさせていただいています。
LHCにおけるCERNの役割というのを一応明確にすることによって、そこにまたどれだけの人材が必要であったかということのスケーリングをかけていくことができるかと思います。加速器の建設に対しては当然全体として責任を持ったということ。それから、この地下100メートルのトンネルを含める土木建築全般について、それから、測定器についても、そのために組み込みに必要なインフラストラクチャーについては全面的にCERNが責任を持ちました。
一方、測定器自身は、これは研究所の組織とは一歩おいた独立な組織の世界的な自主的な組織として運営されておりまして、その中の20%程度をCERNがその責任を持ってサポートしています。例えば実験室の測定器の全体の枠組みでありますとか、超伝導磁石の主要な部分でありますとか、そういったところがCERNがサポートしていったものになります。
土木としましては、地下100メートルのところに27キロのトンネルがあるわけですが、そこに基本的には縦シャフトによって大きな装置を組み込んでいくと。これは加速器本体の超伝導磁石もそうですし、測定器もそういった縦シャフトから組み込むという技術を使っています。
よくある質問といたしまして、CERNは大きな超伝導磁石を使った加速器というものをシステマティックにはそれまで作ってはきていませんでしたが、それがどうしてCERNでこんなに成功に至ったのかという質問をよく伺います。そのための1つの答えとして、対応として用意したのがこのページでありまして、高エネルギー加速器の世界では、世界的な協力、リンクが非常に強く、大変すばらしい形で実務を進められております。超伝導磁石を使った大きな加速器システムを最初にシステマティックに立ち上げ、大きな成功を収めたのは、やはり何といってもアメリカのフェルミラボだと思います。その上で、DESYのHERA、そしてもう一つの東海岸のほうにあるブルックヘブン国立研究所からのRHIC、そういったところで一つ一つ積み上げられた技術が、次の計画のときに、そこで蓄えた力を皆さんが協力をして次の計画に主役を交代しながらトランスファーしていったというのが何といってもこの分野の非常に大きな特色であります。そのことによって、それまで加速器としては超伝導技術を採用してこなかったCERNがいきなりこれだけの大きな技術を世界の協力を得て作ることができたというふうになるということで、そこに至る磁石の設計の変遷や歴史をこのように書かせていただきました。約40年間に渡ってその歴史が積み上げられ、LHCが日の目を見たということを御理解いただければと思います。
それから、LHC自身の中で、では一気に超伝導磁石の技術が加速器へと成り立ったかといいますと、これもやはりきちんとした歴史を持っております。1985年にLHCというものが構想されたときから基礎開発が進んでおりまして、約10年間の基礎開発。このときにはショートモデルといって、断面は同じだけれども、長さが短いものを機構内、所内できちんと作っていくということをして技術を確立した後、会社との協力にできる限り早く移っていくと。そして、会社との協力によってプロトタイプを開発し、技術を検証して、その時点で建設にゴーサインが出たという形になります。そのことによって、その後は、インダストリー、工業界との協力によってこれだけの磁石が、準備期間約4年間、それから、建設期間約10年間という形で完成に至ったということでございます。
簡単に規模を一応理解いただくために全体の流れを御紹介します。コイルの巻き線があった後、ここにそれぞれの磁石を、外側に鉄のヨークを組み込んで、コイルの巻き線をした後に、カラーという、電磁的に力がかかったときにコイルの変形をきちんとコントロールするという意味での非磁性のカラー構造、それから、その周りには磁場を閉じ込めるというヨーク構造というものを組み上げていきます。そういった技術が重ねられておりまして、全体として、建設が始まってから約3年間は工業化、量産化をするとき、必ずどの計画でもこのようなカーブになっておりますが、様々な試行錯誤を繰り返しながら、基礎開発の段階で出た性能を量産的なフルスケールのものでも出すという努力が続けられて、その後は、全体としてスムーズに予定したカーブによって立ち上がっていくということで、約6年間で二極マグネットとしては約1,200台。そのほかに、レンズの役割をする四極マグネットを合わせて約1,700台の磁石が予定どおり製作され、会社で製作をお願い、ビルト・トゥ・プリントという形で、性能についてはCERNが責任を持ちながら、できる限り工業界にその情報を全てトランスファーして、製造しています。それを全てCERNに持ち寄り性能試験を行ってから、いっとき、1,000台以上の磁石が地上にストレージされるということになりましたけれども、それをトンネルの中に組み込んでいくということになります。
ここで1つ、国際協力として短期に必要な人員をきちんと手当てをしていくという中で、インドが約150人の人たちを、後で紹介するプロジェクト・アソシエートという形で人材を派遣しておりまして、その方々が日夜24時間の作業でこの試験をずっと続けられるという形で、ピーク時に必要になる良質な人材を確保していったということを報告いたします。
その上で出来上がった磁石は約1,700台が大柄なものとしてありますが、約2年間でトンネルの中にきちんと組み込まれています。これも1つのシャフトから、できる限り夜間に組み込み、昼間は様々な、接続作業という非常に地味な作業がございますが、これも約1万以上のジョイント、配管、配線がありますけれども、それが順調に組み込まれました。
そういった磁石を最終的にきちんと冷やし込むのがこの冷却システムで、後でその苦労が紹介されますけれども、このリングのところに、トンネルの外側のところに完全にもう一つの独立の配管系がございます。これは2Kの超流動ヘリウムも全体に分配するためのシステムで、それの各4カ所のところに、各1カ所に2つずつの冷凍機、合計8台で全体を冷やすという大型のシステムが組み込まれております。
ここでは、その心臓部となるタービンといいまして、熱を奪って冷やすところの心臓部になりますが、そのタービン系の技術的な開発において日本の企業が最もよい成績を収めるという記録も出されました。
超伝導磁石の国際的な分担、大きな要素が超伝導磁石でありますが、その分担としましては、もちろん欧州のCERNを中心とした機関の協力とともに、米国、インド、日本が協力をして全体のシステムを作り上げております。
日本は、特にその中の各実験装置の直近に来る、最終的にビームを本当に強く絞り込むという、その絞り込み磁石をアメリカとの協力で責任を持って開発し、製造するということをしておりますが、やはりKEKの中で、短い磁石を5台実際に試作をして、その性能の再現性というものを全て検証した上で量産化を図っています。ここにおいては、日本の企業の方々、古河電工さん、東芝さん、新日鉄さん、川崎製鉄さん、有沢工業さん等からも協力をいただいております。
そういった形で、ほかにもメンバー国以外からも協力を得ていったということが、後で御紹介できるかもしれませんが、様々な、ヨーロッパを中心としたところだけではなくて、協力いただけるメンバー国以外の方々からの貢献をいただいてきた。こういう中には、カナダやインド、それからロシアといった国々も含まれております。全体としては90の国際的な調達が全世界に広がっているのですけれども、ここでも実は基本は国際入札によって最も品質が保証できると判断された場合においては、最も廉価なところが担当することになりますけれども、ここには国際機関としていかに貢献いただいたものをきちんと経済的にもお返しできるかという様々な工夫が、そういった2つの非常に二律背反するようなことをきちんとうまくマネージしていくということが、こういった研究所の中での1つの大切なノウハウになっているかと思います。
そういう形で、LHC計画は、入射器系のそれまで存在していた加速器を最大限に活用しながら、LEPであったトンネルに陽子の加速器を組み込み、最終的に完成に至ったということになります。そして、ヒッグスの発見に至ったということになります。
ここからが後半になりますが、今日の本題ということでございます。CERNからLHCへの人材がどのように手当てをされてきたかということについて、できる限り詳しくお話をしたいと思います。
まず労務についてはどのように分類されるかということでありますが、最初にお話ししたように、加速器全体はもちろん、それから、実験エリア自身に対してのインフラストラクチャー、研究開発、それから準備というところか必ずありますので、そういった人材。それから、建設中にいろんなものが完成していきますと、それを立ち上げていくという作業が当然入ってきます。そのための予備運転に対する人材。そして、御紹介したように、LHCの場合は、そのもとに入射器となる加速器群がございますので、そこに対する方々も一部含まれるということになります。
そして、ここでは、これからお話しする数字の中では、外部からのインカインドによる貢献や、外部協力者というものはここでは数には入れておりませんので、実際にはそれ以上の方々が実質的に協力をしているということになります。
それから、契約によって業務を委託しているという形のものも物件費のほうに入っていきますので、ここの人材の数には含まれていないということをお含みおきください。
そういうことで、全体のスコープを見ますと、人件費と物件費の割合が大体1対3ぐらいになっておりますが、物件費のところをまず見ますと、CERNとして手当てをしたものが約3,800ミリオンですから、3,800億円ぐらいでしょうか。それから、そのほかに、インカインドで貢献しているというものが、ここの数字のテーブルには入っておりませんが、そこの下に書いてありますように、1割強ございまして、全体として2008年度ベースでいきますと4,200億円ぐらいの計画であったということをつかんでいただきたいと思います。
そして、そこには、LHCの場合においては、LEPのときに作った大きな27キロのトンネルが存在していますので、それはこの物件費の中に入ってこないということになります。
あと、人件費のほうですが、1,224という数字がございますけれども、それに対する内訳が次のページになります。LHCの場合も当然準備期間というものが必要で、1994年に建設が決定されたわけですが、それから様々な超伝導システム等の量産に向けた準備が約4年間行われておりまして、それから本格的な建設。これが約10年間ということで、準備期間に対しての本期間の割合というのが大体4倍強ということになりますでしょうか、4倍から5倍という形になります。
ここでは、加速器と、それから実験エリアに対する労務の集計が行われておりまして、これから御説明する外部から特に新たな人材としてお願いしていったプロジェクト・アソシエートという数字は含んでおりません。それから、先ほど申し上げましたように、業務委託等については含んでおりません。
どういう人たちがその比率の中にいるかというのは、いわゆるアプライドサイエンティスト、それからエンジニアといった方々が約4割。それから、テクニシャンと呼ばれる技能者の方等々、そして管理運営。クラフトマンというのは、更に現場の作業者という方々が、比較的少ない数値で入っておりますが、これは業務委託でお願いする部分がほかにあるということによって御理解をいただけると思います。
更にそれを分解していきますと、LHC加速器、実験エリア、開発準備、予備運転、入射器系という形で数値がございます。細かい数字はここでは御報告を割愛させていただきますが、また後ほど御参照いただき、御質問があればお受けできれば幸いです。
じゃあ、こういった人たちがどういうふうにしてCERNの中で手当てをされてきたかということですが、ここのところに少しだけ挿絵を加えさせていただきました。より分かりやすくなるようにと思って挿絵を発表には加えさせていただきましたことをお許しください。
CERNとしては、Director Generalという、いわば機構長、所長に相当する方がおられるもとに、リン・エバンスさんがそこに所属する形でプロジェクトリーダーを務められているわけですけれども、その下に加速器やそれから物理といったところのグループが、デパートメントが存在していました。その当時、LHCの建設当時におきましては、その中のSLというのは、SPSとLEPということで、LHCが出来る前に出来上がった加速器の特にビームを扱う部門と、それから加速器のテクノロジーを扱う部門が協力をして、約700名になりますが、この方々が当たったと。
それから、テクニカルサービスと言っていますけれども、フランス語だとSTになるので、最初お渡ししたものはSTになってしまったんですが、その3つのデパートメントが協力をして、約800名の方々がCERNの中で、このLHCの計画が進展する中であてがわれたということになります。
もちろんLHCの建設が始まったときにもまだLEPは動いておりますので、そのときには両方、SPS、LEPの運転責任を持つとともに、設計に対しても兼務をする形で進められて、LHCの建設中もSPSは運転が更に続いておりますので、取り出しビームとして続いておりますので、そういったことを兼務している方々が200人ぐらいはいたという形になります。
では、どういう人たちがいろんな形で職員としているかということでありますが、CERNの構造といたしましては、最初に分かりやすくするために、フェローやアソシエートのほうから御説明いたしますけれども、例えばPhDを取られた方々が、まず最初に関門を潜るところはフェロー、ないしはまたアソシエートというところで、これは大体任期2年ということになります。ここでフェローになることができた人の約8分の1から10分の1ぐらいの方はこの次の任期付きのところで採用される可能性があると、そういった比率になっています。
そして、その上で、更に任期付きで、5年間が基本的な任期でありますが、プロジェクトの進捗によっては8年までは延長可能ということなのですけれども、重要な原則がCERNにありまして、任期付きの中の半数以下の人しかパーマネントには採用しないという非常に重要な原則があって、全体として非常に厳しい選択をされています。その選択をされた方々がまさにコアとなって、リーダーとなってプロジェクトを進め、また、運転に対して安定な核となる人材を供給していくというのがCERNのシステムになっているということです。
LHCを進められるときに、どういうふうにしてピークとなる人数をきちんとした形で確保していくかという中で、1994年に新たなシステムが導入されました。これがプロジェクト・アソシエートというもので、これは職員ではない。アペンディックスにそのときのカウンシルの記録が付けてございますけれども、特にLHCをスタッズするに当たってこういったシステムを導入することが大切であるということになったということでございます。
そのための約束は、これはあくまでも企業の方々から来ていただくというための枠ではなくて、いわゆるいろんなメンバー国もあるし、メンバー国でなくてもよいということですけれども、そこから給与は母体となる研究所が保証して、滞在費をCERNがきちんと手当てをするという形で、ピークとなる一定期間、その方々がCERNに滞在して専心できるという条件を作り出した。これが非常にダイナミックに人をピークとなるときにどのように手当てできたかということに対する大きなお答えになると思います。
そして、繰り返しになりますが、非常に重要なので、ここでもう一度書かせていただいておりますが、任期なしのスタッフへの雇用というのは、任期付きのスタッフの50%以下、実質的には40%とお聞きしておりますが、そのことによって人が動きます。では、その人たちはどうなるのというところで、CERNに働いていくことによって、いろんなところへの展開がまた図られているということを次に少し述べさせていただきます。
こういった形でのダイナミックな運用があるということと、今お話ししたプロジェクト・アソシエートがあると。それプラス、更にメンバー国以外からの協力を募るということで、機構長、所長が自ら世界を回って各国に呼びかけられたわけですが、その中で、日本が筆頭となってオブザーバー国となりつつ、資金に貢献するということもされ、そのことによって、どういう協力をするかということの話し合いが行われて、母国に帰ってくる中で、母国の研究所の方々がまたLHCに対して実質的に人材となって貢献していると。これは数字にはなかなか表れないですけれども、そういう形で更に充足されるということができています。
それから、もう一つは、オブザーバー国からの資金があった場合に、そのオブザーバー国の資金に対する発注が満額になるまでは、LHCのプロジェクトに対する国際入札には参加できるという、そういったまた新しい道を開かれて、そのことによって企業に先端的な技術に対する製造が発注されると。これも更に見えないところになりますが、そのことによって企業の優秀な人材の方々がこの計画に貢献されるという道が生まれています。これが循環ということでございます。
リーダーシップは一体どこにあるのということになりますが、ここだけ少し挿絵を加えさせていただきました。Director Generalがいて、現在は更に部の上に更にまとめる形でセクターというのがあって、その方々がエグゼクティブディレクターになられて、DGをサポートされているわけですが、何百人という部があって、それからグループがあって、セクションがあると。大体グループは30名から100名ぐらい、セクションは10名から20名ぐらいの方で、私たちが実質的なリーダーシップとして重視するべき人材の育成というのはこの部分に当たると思いますが、そういった方々がこういう比率でCERNの場合育成されてきたということになります。
ここから1つのコメントでございますが、コアとなる人材はどんな人なのかということがよく御質問にあるわけなんですけれども、これは例えば日本、KEKで実際に建設、開発が進められてきたトリスタンでもあり、またKEKB、JPARCといったところでの人材構成と大きく変わることはないはずで、非常に同様なものではないかと、リンさんと私自身、考えております。ただ、もちろんスケールが違うということで、そういった意味での人材が、どういうふうに、皆さん、リーダーシップをとるべき人が必要かということについては、私たち自身もある程度理解しているものであると。
また、もちろん若き優秀な人材を育てることは大変重要なわけですが、それはコアの人材の方々がしっかりとある比率の中でいることによって育っていくということ。それから、これは実際にLHCを建設された立場からの言葉になりますけれども、やはり実際に非常に時間がかかって、忍耐強く育てなければいけない部分について、LHCからの経験は、クライオジェニクスや電力技術、特に高周波ということだと思いますが、そういったところに留意していく必要があるということであります。
ここから下が任期のある方で、ここから上が任期のない方ということになります。
キャリアパスでありますが、これは本当に分野、年齢、経験によって多様なものでありますので、一概にはなかなか言えないわけですけれども、一番最初のところの2ページ目、3ページ目のところでお示ししましたように、産業界、大学、研究所という形で、CERNに入った方々を固定しているわけではなく、非常にダイナミックに人が動いています。
どういうところに出ていくのかというのをもうちょっと見ますと、CERNの場合は、ヨーロッパにおける中心の国際機関ということで、その他の、実際に私が協力させていただいた方々でも何人も出入りをされておりますけれども、例えばITERプロジェクトに行かれ、また、5年たってからCERNに戻られるというような形での交流が実際に行われ、そこの中でその方々の責任も上がっていくということが行われています。それから、ヨーロッパのシンクロトン・ラディエーション・ソース、それから、近年ではヨーロピアン・スパレーション・ソース、ここにはテクニカルディレクターにCERNから人が移っていくということも起きておりまして、そういった形でまさにキャリアパスが生まれていると。それから、ヨーロッパのESAからCERNに来られているという方もおられるという形で、そういった交流も進められていますけれども、もちろんCERNとしての次の計画、HiLumi-LHC (高輝度LHC)や、それから将来に対してのコアになっていくということが1つのキャリアパスにもなりますが、先ほど言いましたように、そこに全ての人が進むわけでもない。そういう中で、CERNの1つの重要な強みは、各国の大学、研究所に人が行ったり来たりということがしっかりと行われているということだと思います。
それから、ここから議論の中でより深めていただくことが適切かと思います。今日の会議は公開でありますので、予期せぬ困難、予期せぬトラブル、それから、想定外のことについて、何があるでしょうかというのは、皆さんのもちろんお聞きいただくことになることなんですけれども、公開の文書として文書とできる点というのは非常にどうしても気をつけなきゃいけないところがあるので、問題を起こした方々、というか、そういう方々を攻撃するようなことは余りすべきではないので、マイルドな書き方については御了解いただいて、質疑の中で是非お聞きいただければと思います。
例えばその代表例だけここにリストしました。先に図を見ていただいたほうが感覚がつかめると思いますので、次のページにある表を説明しますが、まず技術的に一番本当に大きな壁にぶつかったのが、クライオラインと言っておりますが、トンネルの中の超伝導磁石の横に超流動の液体ヘリウムを分配している、周長、同じだけ、27キロある輸送管というのがございます。その製造が途中でストップしてしまったと。よくそれを調べていくと、実は使っている部品がCERNが指定したものと合っていなかった。そのことによってそれがいわば割れてしまうようなことが起きて、熱応力集中等に対して耐えられないようなものが起きたと。そういったことに対して対応されています。それは後で文書のほうで説明します。
それから、この磁石の青い部分と白い部分があって、長い15メートルの二極の曲げる磁石に対して、3台に1台、レンズに働きをする四極磁石が入っています。この製造は会社に任せてよいというふうに一旦考えられたのですが、やってみたところ、実は会社が非常に運営上の問題を起こしてしまった。これは、なかなか言葉で公的な文書に残しにくいことですが、会社が前へ進まなくなったと。それをどうするのかということで、そのときにやはり考えられたことは、部品を全部引き取って、そして、その契約をし直して、返していただくというか、お金は逆に払えないものは払えないとして、その上でCERNの中でラインを構築して、CERNの人が一緒になって組み立てのところ、部品としては受け取るけれども、組み立ては全部CERNで行うというようなことをして克服をしました。
それから、シビルエンジニアリングのところでは、特にCMSという実験装置のところについて、ジュラ山からの水脈に想定外以上の水量としてぶつかってしまって、掘り進められなくなってしまった。これは技術的な解決法で、地面を、この18メートルのピットですけれども、その地上から液体窒素を注入して、周りを全部凍らせて掘り進めたと。そういうようなことによって解決したり、それから、地域住民との御苦労で、いかに環境を保全するかということで様々な工夫をされたといった御苦労がございます。
前に戻りまして、あとは読んでいただくとよろしいのですが、ヘリウムの冷媒分解管については、CERNのスタッフが本当にこれは原因を特定したということの貢献をされているということです。そのときに、そのままでは間に合わないということで、会社での製造も続ける一方、半分はCERNで組み立てられるようにしましょうということで、ラインを構築されて、直接指導、協力をすることによって、品質の向上と遅れを回復。
それから超伝導磁石の四極につきましては、先ほど言ったように、全く前に進まなくなってしまった状態の中で、組立工程をCERNがホストしました。スペースを用意して、そこに工場を構築するということですけれども、そういうことをして直接指導して、一緒に働いて解決したました。
それから、土木は、今言ったような技術で解決をした。
それから、環境に対しては、地域との粘り強い協議をした上で、地域の意向をできる限り取り入れる工事をしていった。そういった御苦労。
それから、国際協力における御苦労は、やはりどうやって開発、建設を分配するかということももちろん大変な御苦労があったわけですが、そのときに特に特筆すべき克服した内容といたしましては、やはりプロジェクト・アソシエートを創設されて、必要なピークになるものを、研究所がパーマネントな形で人を抱えてしまうということではなく、きちんとプロジェクトがピークとして成り立つような手立てを考えられたと。
こういったことをCERNのトップマネジメントがしっかりとサポートして、各システムの責任において困難を克服されたということでございます。
まとめでありますが、LHCの加速器建設は、科学における国際協力の非常に際立った一例と考えていただいてよいのではないかと。
国際協力、そして、産業界との協力、これは契約に基づくことになりますが、そこにおいて注意深く人材を管理し、雇用し、建設を成功させたと。
それから、重要な認識としましては、コアとなる人材はやはり非常に限られた形できちんと育てつつ、一方で比率は絞るということによって、ダイナミックに任用できる道を一方で切り開いて、ピークに対する対応をきちんととっています。
それから、最後に、LHC加速器の建設というのは、どのようにして将来の国際計画を、協力計画を効率的に推進し、成功に導くか、1つのモデルとして捉えていただくことができるのではないかと考えます。
以上でございます。

【中野座長】  ありがとうございました。それでは、議論をお願いしたいと思います。御質問、御意見ありましたら、挙手をお願いいたします。

【横溝委員】  非常に分かりやすい説明でよかったのですが、最初のところで、各国が提供したのが20%、測定器建設への部分貢献。これは、インカインドのことを言っていると思っていいのでしょうか。

【山本委員】  もう少しここは足します。実験はまず基本的にはCERNの大きな計画の外枠で作る。ただし、その中の20%(をCERN が分担)。

【横溝委員】  それ以外のことを聞きたかったのですが。だから、それ以外に関しては、全部CERNがいろんな参加国からお金を集めて、CERNの責任で発注してもろもろ作ったというふうに思っていていいのでしょうか。

【山本委員】  測定器に関しては……。

【横溝委員】  測定器以外のこと。

【山本委員】  以外はそうです。以外は、もともとCERNが協定によって、キャッシュで毎年メンバー国からの参加費を得ているというところが非常に強くて、ほぼ8割から9割ぐらいのものはCERNの発注によっていくということですから。

【横溝委員】  だから、全部お金を集めて……。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  これはもう高エネルギーの物理の世界では国際的に受け入れられているモデルになっています。例えば測定器、ディテクターですけれども、ホスト国が20%、そして外部が80%の貢献というのがモデルになっています。この場合、キャッシュではなくて、インカインドのコントリビューションになります。

【山本委員】  一応、横溝先生の御質問の趣旨は、それ以外の、メーンのところはCERNが実際発注で出されたのですね、ということに対しては、そのとおりですと。

【横溝委員】  いや、それで、うまくいっていない例というのを感じると、インカインドでいろいろな国がそれぞれの国の責任で発注しているというところにいろいろな問題があって、CERNはそうではなくて、1つの機関として、1つの意思で、いろんな発注、ものづくりができたというのが大きな違いかなと感じました。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  ディテクター、測定器に関しては80%と申し上げましたけれども、それ以外に関しての機械は、10%強が外部からのコントリビューションでございました。つまり、90%近くの機器、これがCERNの責任で発注されて作られたということです。
それから、外部からの機器のコントリビューションですけれども、協力をしている国々が、製造、それから人材、そして作られたものの品質に関して全面的に責任を負うという形になっております。これが非常にうまく機能いたしました。

【中家委員】  少し話はずれるのですが、CERNの成功例というのは、今回見ていても、やはり中央集権というか、コアが非常にしっかりしていたことによっていろいろな問題を克服したと。前回のときに大型プロジェクトでいろんなリスクが出てくるときに、そこがぼやけてしまっているとか、先ほどのインカインドのケースもそうですけれども、はっきりしていないことによって問題が起こっていたと。きょうの議論で、これをILCとつなげるときに、ILCのメインというのはCERNを目指すわけではないですよね、初回、1回、2回目の話をしたときに。どの部分を最も参考にし、どの部分はやはり日本においての国際研究所を作るチャレンジになるのかというのを教えてもらえれば。

【山本委員】  そこについては多分私からまず答えたほうがよいかと思います。その上でリンさんにまたコメントがあればいただきたいと思います。もちろんCERNのような、我々から見た理想の形が作れれば、それが一番よろしいと私自身、研究の立場から思いますが、その後の世界情勢からいうと、CERNが条約によって毎年拠出金を、10年以上縛るような形できちんと、一気に抜けられない約束を全部して、それだけ強い約束で運営されていることがこれからの計画で作れるかというと、それは難しいでしょうということが一般的に言われているので、CERNのやり方で私たちはそのまま邁進しますとは言えないという状態があります。だから、いかにインカインドが増えた状態でもできるようなシステムを成り立たせるかというのが我々に課された大きな課題。これは私たちの先陣がITER計画の中でも経験されていることなので、ITER計画をただフォローすればできるということではなくて、逆にそこから学んで、私たちが改良できるところをいかにしなければいけないかというのは非常に大切な課題だと思っています。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  しかしながら、やはり強い中核となるラボラトリーというものは絶対に必要だと思います。それはKEKがその役割を果たすということが必要になってくると思います。つまり、そこに全て必要な能力が備わっていると思います。必ずしも人をたくさん用意するということではないけれども、必要な能力をそこで全部カバーをしていくと。それから、姉妹ラボラトリーとアグリーメント、協定を結んで、誰が何を作るかということをはっきりと定めていくということが重要だと思います。

【大熊委員】  今の議論というのは非常にポイントだと思います。それで、山本先生がおっしゃったように、CERNのまま、そのままやるのは難しいだろうと。インカインドが増えたところで、ITERに学んだり、いろいろなことをして、独自のやり方を考えていかなきゃいけないんだとおっしゃっているのですが、問題はそこなんですね。それが今どういう状況まで分析できているのかと、で、どうしようとしているのかと、そういう議論は一体どこで行われているのかというのが、私は余りはっきり認識ができないんですけれども、もし具体的なことがあったら教えていただければありがたいです。

【山本委員】  ここでは、私の私見ということで、一委員としての発言として捉えていただくほうがよろしいかと思いますが、日夜そのことはもちろん考えているわけであります。このソサエティが、非常に高エネルギー加速器を中心としたソサエティのすばらしさというのは、途中で説明させていただいたこの図になりますが、前のプロジェクトで培われたことが、次の国の主体が変わっても、みんなで協力をして、それをサポートしているという歴史を3つ4つ繰り返してきています。この間、一気に全部CERNのような形があったかというと、もちろんそうではないわけです。それぞれがやっぱり自国の中心となった計画であったけれども、総体としてこの40年間を見てみますと、全体として次の計画に対して貢献していってあげるということをしていったことがあるので、このソサエティのチームワークをもってすると、CERNが培ってくださったいろんなノウハウを参考にしながら、ITERの場合、逆に言うと強みではないところとあえて言いますけれども、この分野に比べるとそういった絆は違いがあるのだと思います。
そういった点で、インカインドを増やしていかなければいけないのは、今の各国の情勢、または政府の方々のお考え等によるので、私たちが勝手に言えないことであり、非常に難しいのですが、私としては、客観的な見方をしたとして、恐らくインカインドを増やさなければいけない。そのときには、先ほどリン・エバンスさんがおっしゃったように、あらかじめこの共同体の中でよく話し合って、分業をきちんとすれば、それはインカインドであっても分割できる。それから、加速器の場合の1つの技術的にありがたい点は、比較的ユニットは小さくて、それが非常に数が多いので、あらかじめ開発の段階でお互いに協力をして技術をしっかりと持ち合っておくと、その後、それをインカインドの形でお渡ししても、きちんとしたものが入ってくるということがより望める。そのことを本当ですかと言われたら、では、これを見てくださいとなる。実際にそういうことをやってきたし、それから、ILCの場合でいうと、European XFELの中のいろいろな技術の開発のときに、各国はやっぱり協力をしている。いい点もいっぱいほかのところが取り込んで、力を蓄えているということがあるので、インカインドが増えたときにも、この分野としてはやっていく力がほかの分野以上にあると考えています。それ以上は、政府のお考えというのがあって、私たちがそれに沿って動いていくので、これ以上はなかなか言いにくいかなと思っています。もしリンさん、何かコメントがあれば。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  私のほうからも加えて申し上げさせていただきます。KEKに実際インプリメンテーションプランという文書が存在しています。その中で、様々なハブ、どういう能力を持っているかということが特定されています。例えばアメリカのハブラボラトリーはどこであり、どういう能力を持っているか。ヨーロッパに関してもそのようなことがもう既に特定されています。アジアに関しましては、日本以外ではまだ特定はされておりませんけれども、そういったものがあります。いずれにせよ、コアとなる中核ラボラトリーというのが非常に重要となります。

【岡本委員】  その辺の話に関しては全く異論はありませんし、先ほどからの山本さんの話にも同意するものなので、全然個人的にはオーケーです。KEKが中核になるということに関しては、当然そうなるでしょうし、そうなるべきだと私も思います。
ただ、これは人材育成の検証部会なので、その点に関して少し引っかかるところがあります。例えば、先ほどの資料の中で、SLとATで700人がLHCに従事したという点。それに加えて、STからも100人の協力があったということですけれども、中核になるKEKで加速器を専門としていらっしゃるエキスパートは現状で300人ぐらいだったのではないかと思います。

【小関座長代理】  200人。

【岡本委員】  200人ですかね。ということは3倍以上なので、どこかよそから足りない分を持ってこないといけないわけですよね。加えて、このSLとATの700人というのが、そもそも完全にLHCの建設に没頭していい立場にいたのかどうかですけれども。

【山本委員】  そうではないですね。運転もしながら建設をしています。

【岡本委員】  でも、基本的に100%ではないにしても、一応LHCの作業に従事していいという立場にいる方がこれだけいらっしゃったわけですよね。だから、その辺の差額をILCの場合はどこかから持ってこなければいけないということです。この点が少し気になるので、もし明確にできるのであれば、教えていただけるとありがたいですが。

【山本委員】  まず、私のほうからお答えできるところですが、KEKの場合ですと、今、小関さんがおっしゃったように、KEKの加速器のスタッフという形で正職員で勘定できる人数が200人です。ところが、日本は、研究所が出来た過程から、小さい政府の中の小さい人数で研究所を運営するという基本方針に沿ってやっています。それは何を示しているかということは、業務委託として出せるところは出して成り立つ形をとっていくということなのです。実際に今、加速器として業務委託の方を入れると、280人とか、そういった数字になるはずです。およそ300です。だから、まずそこでファクター1.5違います。
それから第2点の重要な点は、ILCは最初から国際協力全体として作りましょうと言っているのであって、CERNのときのように、CERNの80%、90%見ましょうというモデルではないということは少なくとも研究者の間では合意していることなのです。ですから、そこで、向こうから下りてくる数字がファクター2ぐらい違います。

【岡本委員】  ただ、300近くがKEKの中にいるとしても、KEKでやっているプロジェクトはILCだけではもちろんないわけです。Bがあり、JPARCがあり、いろんなところでいろいろな分野の研究者の方々がいい仕事をしていらっしゃるので、それをサポートする義務があるということですよね。

【山本委員】  そうです。

【岡本委員】  なので、実質的に使える人間は、コアラボとしてKEKを位置づけるとしても、200、300よりはかなり少ない数になるのではないかと思います。ファクター1.5というのは、純粋な数ではそうかもしれないですけれども、実際にILCに没頭できる方の数ということになると、かなり少なくなる可能性が高いのではないでしょうか。

【山本委員】  ですから、私たちは今の現在のKEKの人数でできるということは言っていなくて、これは是非増やしていただく必要がありますということも第1回目、第2回目の中の人材のプランの中で述べさせていただいています。そして、その中で平均的に約1,100人の人が全世界で必要ですと言っていて、日本がモデルをしたときには、そのうちの3分の1ぐらいは外注の方々、業務委託を勘定するので、800人ぐらい。その中で、加速器の中でまた専門化する人はどのくらいの比率かという議論をしなければいけない。そのときに、この中のどこかに入っておりますけれども、加速器の専門家として必要な数字というのは300プラスマイナス幾つという数字をお話をさせていただいております。これは例えば管理局もきちんと入れているわけです。管理局というか、事務的な方々。この方が大体どの研究所を見ても20%です。ですから、1,100人いうと、900人の人たちが技術的なことを行う。そういう中で、大体300人の人が必要で、そのほかについては世界に分散していていいわけです、建設のときに。もともとモデルが各国のハブラボラトリーで責任を持って性能試験までしたものを要素として持ってきてくださいと言っているので、日本にみんな集まらなきゃいけない研究所ではなくて、最終的に完成した段階でどうなるかというモデルはまたありますけれども、建設段階のモデルを考えますと、職員は世界に分散しているんです。

【岡本委員】  それは存じています。そういうお話は以前からあったので、理解はしているつもりですが、具体的に本当にそうなるかどうかに関しての確信がちょっとまだ持てないんですね。


【山本委員】  それは本当に私たちとしても、必要な人数を、産業界の方々にも協力を得つつ、業務委託という形でもお願いしつつですね。

【岡本委員】  何だかんだ言っても、LHCの場合は700いたわけです。その差がこの部会で検討すべき非常に大きな問題の1つになっているので、具体的なビジョンみたいなものがもっとはっきり見えてくるといいのですが。

【山本委員】  バックアップのところに少しそういったことは残っておりますので、後でもしよろしければ紹介したいと思います。

【小関座長代理】  日本の研究者だけでなくて、外国のラボの人たちにも非常に大きな貢献をしていただくというスキームを考えるときに、このプロジェクト・アソシエートという仕組みはすごく参考になると思うんです。LHCをやったときに、プロジェクト・アソシエートとして参加された方たちのスキルというのはどういう段階の人たちだったのかというのを聞きたいのですが。例えば我々がILCを考えるときに、今、山本さんがおっしゃった300人のコアのメンバーとして考えることができるような人たちなのかどうか。

【山本委員】  そういう人たちが、私の理解として、例えばインドからの貢献でフィールドメジャメントしたというのがございますが、150人、その中にはいわゆるグループリーダー的な方々がアソシエートとして入っていて、そこにやはりそういった階層の方がみんな入っていらっしゃったというのが私の理解ですが、リン・エバンスさんにそこを正確にお話しいただいたほうがいいかなと思います。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  当然ながら建設の段階で人間の数というのがピークに達するわけです。ですから、若い人たちをリクルートする必要がありますが、CERNにおきましては、意識的にいわゆる無期限の任期なしの職員の採用というのはなるべく絞って、そして任期付きの職員の採用にいたしました。そして、この任期付きの職員で、任期なしの職員になれるのは50%未満ということです。つまり、50%未満の人がコアスタッフになっていくというような仕組みにいたしました。LHCの承認を受けてから一番最初にやりましたのが、このプロジェクト・アソシエートというレベルの人の、そういった仕組みを作りました。これは、新しい人材カテゴリーで新しく作ったわけですけれども、関係研究機関のほうから人を出向させていただくわけです。出向してもらって、プロジェクトに携わって、プロジェクトが完了した段階で去っていただくということです。これはとても成功を収めまして、先ほど山本さんからもお話ありましたけれども、インドからも150人、磁石の測定に関わってくれました。ほかにもたくさんの事例があります。メンバー国、それ以外の国においては、インド、アメリカ、ロシア、日本も参加していらっしゃいます。
ですから、こういうようなプロジェクトをする際には、契約、コントラクトのストラクチャーというのを慎重に考え抜いて、その作業が終わったときにその人たちに出ていってもらえるようにしておくということがとても重要だと思います。

【中家委員】  この今のプロジェクト・アソシエートについてもう少し理解したいのですが、インドの例はよく分かりましたが、例えば日本人でこれを活用しているということもたくさんあるのでしょうか。

【山本委員】  日本からはむしろオブザーバー国として責任を持ったQマグネットと、それからあと、実験の磁石がありますけれども、そういったものに対しては、日本側が持った責任の中で行いまして、プロジェクト・アソシエートというステータスは実はもらわなかったですね。ただ、実際に部分的に向こうの、ケース・バイ・ケースで滞在をサポートしていただくとかということはありましたけれども、インドのような形でチームとして出かけていって、そこにリーダーもいれば、作業者もいれば、中堅の人もいるというような形でプロジェクト・アソシエートのチームを日本から送り出したという形には日本の場合にはなっていません。それは正直なところ、そうです。その前の段階で日本としては何とかやりくりしたと。だから、実際にKEKで開発をして試験をするというところに、人材が実はKEKの中にいますけれども、それはKEKの中で処理されているので、プロジェクト・アソシエートという形では出ていきませんでした。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  国によりましては、幾つかの国の例があります。インドもそうですが、インカインドのコントリビューションの一部としてプロジェクト・アソシエートという形をとったという国もございます。インドがその一例です。

【岡本委員】  さっき山本さんもおっしゃっていますが、人間の流動性があるというのは非常にいいことで、それがあると本当にプロジェクトの建設が終わった後もいろいろ問題を減らせると思うんですよ。実際建設のピークでは1,000人を超える人が要るけれども、建設が終わって、マシーンが定常的に走り出したらそんなに要らないわけですから、その差額分をどういうふうに吐き出すかというのは重要な問題です。今のお話によれば、CERNでは、一定の短い期間で出ていってもらうことになったり、あと、任期付きの職員も50%いて、彼らは早晩プロジェクトを離れなければならない。CERNの例では、そういう最終的にプロジェクトを離れることになった人たちの行き先が十分確保されていたということなのですよね、多分。

【山本委員】  CERNはもともとそういうダイナミックなシステムを持っていた上にプロジェクト・アソシエートをさらにダイナミックにしたので、全体としてはそのピークをうまく乗り越える形ができた。今まで日本のモデルの中ではそれが比較的少ないので、ILCをやるには、それを導入しないといけないですねという問題提起になるのです。

【岡本委員】  あったらいいと思うんですが…。そういうことは、企業の方とかのほうがビジョンをお持ちなのかなとか思ったりしますが。

【山本委員】  そういった点では、ポイントになるところなので、最初の御説明としては、LHCは何かというのが今回の主題なので、ILCとして比較がどうなのかということについてはできるだけ私たちのほうからは申し上げないという立場で資料を用意しましたが、そういった御質問は出るかと思ったので、バックアップのところの34ページに1ページだけ、いろいろなことを比較してみたものを作りました。それで、ここで6,553という数字がございます。これは、最初700とか800と言っているのは、幾つかの御質問の中にあったのですが、FTEじゃなくて、本当の人数はどうなっていたのという質問は一方であるんです。そうすると、人数が膨れてくる。膨れた数字を今度御報告すると、比率が3倍も違うじゃないかということにまたすぐなってしまうので、そういうことでできる限りFTEで我々としては話を通すようにしてきていますけれども、CERNの場合に、出来上がった後に、ヒューマンリソースの方々がFTEベースでどのくらいの人が実際かかったかというのをまとめたのがこの表で、これは10年間で6,500人なので、平均すれば年間当たり650人ということになるのでしょう。
では、それがILCの場合どうなのかという、今度は計画になりますけれども、今の6,500という数字は覚えていていただけると思いますが、ここにある数字です。これがLHCの場合。ここには業務委託を含まずと書いてある。ILCの場合は、組み込みのところはもともと別に考えていますので、ピークとして非常に外注が多い。それ以外で私たちが9年間として申し上げている数字はこの1万117。ただ、ここにはもともとモデルとして、日本が請け負った場合においては、3分の1程度は業務委託になりますよということを申し上げた数字がこれなんです。
ですから、この2つを比較をしていただくときに、例えば3分の1を除いていただきますと、これが大体7,000という数字になります。だから、7,000と6,500で、そんなにずれていないのだとわかります。ファクター3とかという話とは違います。実績と計画が、これはたまたま偶然で、私たちが揃えたわけではありません。この6,500という数字は、今回準備をするに当たってリンさんが出してきてくださった数字を初めて私は見ていますので、たまたまこれは近い数字になったというだけのことですけれども、ただ、検討が何倍も違っていることではないということについては御理解いただけないかなと思います。

【横溝委員】  先ほど見せていただいた棒グラフで、最後のほうになると人が半分くらいに減っているわけで、そうすると、今、ILCの場合のピークに対して半分に減らせるのは日本のメカニズムとしてどういうのが考えられますかと、そういうことになってくるのかなと思います。

【山本委員】  これはCERNの場合も同じことですけれども、キャリアパスとしてどうなのかという御質問、LHCに対してもあって、同じことが起きるのです。それに対して答えたのがこれになります。じゃあ、ILCの場合これに相当するものは何かと。

【横溝委員】  パーマネントの雇用ではないのを考えよう。こういうふうにどこかに出ていってもらうことを考える。

【山本委員】  もちろんそれはあると思います。それから、もう一つは、ILCの場合も、全て店を畳んで終わるということではなくて、次に1TeVということが物理の進展によって可能性としては考えなければいけないわけですから、そこに幾らかのパーセンテージの方々はやっぱり当たっていくという形で、本当にすとんと落ちてそのまま定常的になるというのは考えにくいわけです。これはどの研究所の計画の中でも皆さんそういうことはお持ちだと思うので、ある程度はそこに吸収されるというのは考えていただきたいし、やっぱりこの超伝導SRFの技術が出来上がったことによって、より産業界に応用が広がったときに、産業界のほうでもこういった人材を必要としてくださるということはきっとあるだろうと思います。
それから、日本が本当にこの国際機関を作った場合においては、ヨーロッパでそうであるように、ITERやESRやESSというところに実際にCERNの人たちが出ていっているわけです。そういったすそ野の広がりというのは、今は見えないかもしれないけれども、私たちは日本が次世代に対して国際機関を用意して、それが更にここをベースにしたのが広がっていくということは、やはり構想の中には入っているべきだと思います。それができるかどうかは、もちろん私たちが勝手に言えることではないので、保証しますなんて絶対言えないことだけれども、スコープを考えれば、かなりの部分がそういった形で展開されていくということは、この委員でおられる方々は皆さんそういったことを自身の中でお持ちの方だと思うので、御理解いただけるのではないかと思います。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  この先ほどの数字ですが、大半の人たちはリサーチャーというよりは、応用科学者、エンジニア、テクニシャンという人たちです。このような巨大な国際プロジェクトに五、六年仕事をして、たくさんの経験を積んでいきます。そうなりますと、産業界からも引く手あまたというのが私たちの経験です。ですから、これが終わった後に仕事を探すのが大変というような問題は決して発生をしていないというのがこのところの経験です。

【中野座長】  LHCとILCの一番の大きな違いに、やっぱりILCはグリーンフィールドというか、全く新しいところに作るけれども、LHCにはLEPがあった。やはり人材移行のプロファイルを見ても、LEPがあったということが非常に人材を集める上でも、それから引き付ける上でも、多分それからその後、解消していく上でも、役に立ったと思います。もし全くLEPがない場所に新たにLHCを作るとしたら、これだけの人材で進んだのか、あるいは、人材を集めるときにこんなに簡単に集めることができたのかというのが1つの疑問。同時に、ILCのときのやっぱり危惧になります。

【山本委員】  そういった点で、これも私の私見として申し上げる以外にないかと思いますが、それだけに日本が、ILCの特質からどうしてもグリーンフィールドに作らざるを得ないというのはこれはもうやむを得ないことなので、組織としての考え方は、先ほどリン・エバンスさんもおっしゃいましたけれども、やはり日本にあるコアの研究所であるKEKがしっかりとしてそれに対する橋渡しをしていく。
例えば具体的にどういうことかと言いますと、超伝導を主体とした加速器の建設というのは、本当に最初は、例えば世界で作っていってもいいように、日本の中ではKEKをベースとしてそのハブラボラトリーの役割を果たしていても、それは十分に機能するはずなんですね。それは最終的なところでグリーンフィールドに持っていくということはあるけれども、いきなり最初から全てをゼロからグリーンフィールドに作り上げるんじゃなくて、段階的にKEKの計画もやっぱりマネージしながら、KEKの将来のことも考えながら、高エネルギーの分野についてはリニアコライダーのほうに徐々にそれが移行していくという中で、段階的な移行ができるのではないかと思います。

【大熊委員】  今の話について質問ですが、この表の中に準備期間4年、建設期間9年と書いてありますけれど、今山本さんのおっしゃったKEKが主体になってやっていって移行するというのは、この年数でいくとどこに当たるのですか。準備期間の中なのか、建設期間の中なのか。

【山本委員】  これも私一人が言えることじゃないけれども、私自身が描いていることは、最初の4年はもちろんです。しかし、恐らく9年間のうちの半分以上は、ないしは少なくとも半分までは、KEKに例えばハブラボラトリーの機能を持って、そこでコンポーネントがきちんと準備されていくというものがあって、現地では土木、建築が進んでいるというのが1つの姿だと思っている。そうすれば、その移行はあり得るし、いずれそれはメンテナンスを現地でやれる体制を作らなければいけないから、全体でいうと10年かけて現地でもできる形を作っていくということが必要なのだと思っています。それは私たちはSSC計画のいろいろなことも学んできて、私たちの世代は、いきなりやって、それが必ずつまずくことが多くなるというのもたくさん学んできていますから、そういったことは。ただ、KEKのベースはあるし、だからこそ国際協力で、もう今から、というか、過去十何年、外国の研究所と、特に超伝導に関しては、しょっちゅう人の行き来や、それから物の行き来をさせて、お互いの技術を切磋琢磨していくということをやってきているので、そういう意味ではKEKが頑張れば、そこは繋いでいけるのではないかと私は思うのです。小関さんにむしろお聞きしたほうがいいかもしれません。

【小関座長代理】  僕も、今おっしゃったようなイメージだと思います。そうでないと現実的ではないですね。徐々に移行して、コンストラクションが終了したときに完全に移行が終わるということではないでしょうか。

【中家委員】  今のは非常にはっきりとしたイメージでよかったと思います。今までのILC計画の国際ラボの話を聞いていると、本当に今のようことは全然念頭になく、いきなりインターナショナルラボで三極分極でという形にどうしても感じてしまっていたので、僕に関しては、初めてはっきりと言われた感じで、確かに現実的にはそうでないとできないと思っていました。

【中野座長】  今日のお話とか質疑応答のお答えとか聞いて、人を集めるということも大変だけれども、それ以上に、役目の終わった人に去っていっていただくという、そこを大変よく考えられていたという印象を持ちました。やっぱりそれが一番大事なのかということ、ピークの人を集めるという場合に。

【山本委員】  そうですね。

【中野座長】  それと、そういうことはちゃんとILCの場合に考えられているのか。それを公にした場合でも人が集まるのかというところが知りたいところです。

【山本委員】  このプロジェクト・アソシエートがうまくいったというのは、私自身も今回の報告の準備の中で、新たに学んだことです。

【中野座長】  いや、プロジェクト・アソシエートだけじゃなくて、パーマネントに雇用する人材が50%、40%ですか。だから、60%の人が残れないわけですね。そういうのをはっきりさせた上でも人が集まってきているというのがやっぱりインプレッシブなんですね。だから、そういうところなのですが。それが日本でもやっぱりうまく働くのか。

【山本委員】  働くようにしないといけないということですよね。これはもともとILCラボが国際ラボとして作るというのが大前提なので、今までの日本の文化や法律とかというものに縛られての構想ではないと。だから、今言ったようなことを、LHCでの経験を学びながら、よいところは取り入れたILCラボという国際研究所を作り、そこで運営する。これは日本だけで決められるものではない。最初からそういうことが前提ですから、当然LHCでの経験というものを踏まえながら、任期というものに対しての考え方を厳しく持って、人がダイナミックに動くということを導入していかなければいけないのではないかと私自身思います。

【横山委員】  関連しての質問です。3ページに人材の年代の分布がございます。これはLHCが今動いていて、PhDがどんどん生まれているという現状において、20代の後半にピークが来ていると理解できます。CERNではLEPの時代から次々とプロジェクトが続いており、若い人材が供給されているという現状があると思います。しかしILCのように、何もないグリーンフィールドに新しい研究所を作るという際には、供給される人材がおりません。もちろん国内のプロジェクトから人が入ってくるような現状があればよいですが、サイエンスの結果が出るときでないと、PhDは集まらず、つまりILCの場合は人材供給も非常に難しいような印象を受けます。このあたりについて、何かお考えがあればお聞かせいただきたいと思いました。

【中野座長】  どなたに答えていただきたいですか。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  ここにありますPhDというのは、CERNで実験をしながらPhDを獲得した人たちでありますので、PhDを持ってきた人たちではありません。ですから、そういう意味では、ILCでPhDが生まれるのは何年か後ということになるでしょう。

【横山委員】  やはりそういうことで若い人を集めることも非常に難しい現状があるというのは変わりないのかなという印象は持ちます。なので、人に去っていただくことはもちろん大事ですけれども、人材を獲得するというところも非常に厳しいし、何か工夫をしないといけないのかなという印象は持ちました。

【中家委員】  印象ですけれども、3ページのこのグラフのプロットと、実はT2K、日本のJ-PARCでのニュートリノ実験の500人ぐらいいるコラボレーションも、これに近いような構造に今なっていると思います。ただし、日本人だけをとるとこうはなっていない。

【山本委員】  そうですね。

【中家委員】  T2Kは500人いて、400人が外国人ですけれども、そのうちの百何十人ぐらい学生がいるので、ニュートリノ実験の構造もこれに近いとは思います。もう1回注意すると、日本がそうはなっていないです。

【山本委員】  これはそういった学生の方々によって20代にピークがあるのは明らかですが、ただ、それだけで書いたものではなくて、そうでなければ60とかという人が存在しないので、CERN全体としてのものだと受けとめていただきたいのですが、私はこれを見たときに、逆に印象は、60年たってもこれだけのプロファイルを持てるというのはすごいことだなと思っています。60年たって、今言ったように、研究所の旬が過ぎてしまって、高齢化が進んでしまってという状態にCERNはなっていない。それはやっぱりILCの科学としてそういう魅力があるんですか、それから、ILCの科学の発展性はどうなんですかという議論にいってしまうことになると思いますが、少なくともそれはここの部会の議題ではないと思うのですが、サイエンスのほうの部会の中ではそういったことに対する展望を持った議論をしていただいていると私は思っています。

【岡本委員】  今、山本さんがおっしゃったことは、PhD取得直後の話ではないですよね。

【山本委員】  PhDの学生を含んだものがこの表。

【岡本委員】  PhDは別にいいんです。そこでPhDを取って、その直後の行き先は大概どこかに見つかるのでしょうか。

【山本委員】  この右の下にあるように、計算科学にものすごく出ているというふうに。

【岡本委員】  ただ、PhD取得後例えばILCに関わって、3年、4年、5年が経ち、30歳を過ぎた人が首をパッと切られたときに行き場があるかと言われると、今の日本ではなかなか難しい。そこまで流動性がこの国にはまだ備わっていないというイメージが個人的にはあるので。

【山本委員】  だから、そこはやっぱり私たちが日本という枠の中でそれを全部解決しようとしてしまうこと自体だとすれば、それはそこに問題があって、ILCは国際ラボなのですから、そこで終わった人は、日本だけではなくて、外国へも飛んで出ていくと。メンバー国、みんな出ていくんだというスケールで議論しなければいけないのではないかなと。

【岡本委員】  ここで言うのは簡単ですけれども、当事者の立場で考えて欲しい。実際に何百人かそういう若い人がいて、「君たちILCに入ったのだから外へ出ていけ」とかと言われたときに、彼らの再就職先がすぐ見つかり、あちこち流動して国際的に活躍できるんですかね。できるとしたらすばらしいですけど。

【山本委員】  例えばCERNの場合でも、各国から学生さんが来ているわけですね。そして、PhDを取り、またポスドクをした方々は、やっぱり母国に帰ってどうなんだということをいつも考えて、母国の人たちも、呼び返す人は、呼び返すという形で全体が動いているわけ。だから、ぽっと出ていけではなくて、そこに送り出した人たちがどうまた迎えに行くかというようなことでこの話全体が成り立つのではないでしょうか。

【岡本委員】  ヨーロッパの中での話なので、何かちょっと。

【大熊委員】  おっしゃることはよく分かるんです。確かに国際ラボなので、例えばここに書いてある産業界にキャリアパスで行く人が多いというのももちろん、世界的レベルで見て、CERNの場合もあったのだろうと。ILCもそうでなければいけないという議論は非常によく分かりますが、例えばやはり先ほど日本の中でも何人ぐらい足りないとか、業務委託でどうのこうのとおっしゃっているわけですよね。それは日本の中でキャリアパスがある程度ないと、やっぱりそれは難しいんだろうと思います。それが十分あるのか、ないのかという議論を多分しているのだと思うんですね。

【岡本委員】  その通りです。感覚的にはちょっとその分欠けているような気がします。

【大熊委員】  確かに桁が違うような話をなさっているんじゃないというのはよく分かるんです。ただ、やはり母数が大きいですから、引き算したときに、やはり100人とか、そういう人数がぼんと生まれてきてしまうわけですよね、今までと違って。それはやっぱりそこのところは慎重に人材の確保、それから、キャリアパスというところで慎重に議論するべきなんだろうと思うんですね。そういう意見だと思います。私もそれは同感です。

【山本委員】  よく分かりました。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  CERNの場合は、人が採用されたときには、どういう契約の内容かというのはもう分かった上で来ていただいています。つまり、不定期で、ずっと残れる可能性は低いというのは分かりながら来ていただいています。ただ、これは国際的なプロジェクトでありまして、先ほども申し上げましたけれども、若い人、何年か過ごした後でも、産業界から非常に引く手あまたであります。といいますのも、そのプロジェクトの中でものすごく経験を積んでいるからです。ですから、去った後のこの人たちの暮らしの心配というのは全く心配をしていません。

【岡本委員】  日本でも同じでしょうか。僕らが若いころはそうではなかったので、どうしてもその経験が頭にあるんですよね。いわゆるOD問題がありましたし、高エネルギーの業界で職を得ようとしたが叶わず、いろいろ苦労した挙げ句別の仕事を今している友達がたくさんいるんですね。今は大分変わっているのでしょうか。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  ただ、ここで言っているこの人たちというのは、リサーチャーではなくて、真空であるとか、サーフェス、表面であったり、電気エンジニアリングであったり、コンピューティングであったり、こういった分野をやる人たちでありますから、これらの分野というのはハイテク産業によって今もう本当に必死に人を確保する、どうしてもこういう分野の人が欲しいと言われている分野で仕事をしている人たちです。

【中野座長】  きっとそうできると思いますが、今の日本の現状は、加速器物理をやっている人がそれを全部やっている、ある程度。普通だったら人に任せてしまうようなところも全部やって、キャリアを積んでいっているという印象が強いです。加速器分野でパーマネントな職についている人。KEKの加速器部の場合、非常に若いときにパーマネントとして雇用して、その人を大事に育てていって、何でもできる人に育てていっている。そういう文化があると思うのですが、ILCでは全く違った人材の集め方、使い方をしなければいけないというふうに印象を受けたのですが、それで正しいですか。

【山本委員】  多分両方なんだというのが正しい解だと思います。やっぱり残って何でもワイドに見れる人は、比率は少ないと思うのですが、やっぱり必要なんだと思うんですね。それは日本のいいところではあるので、日本にホストする以上は、数は少ないけれども、そういう人たちは必要だと思う。それはKEKを見ても、その人が適切な比率かと言われると、ちょっと小関さんと私がお互いにうんと言えるかはありますけど、それはやっぱり大切にしていいと思う。ただ、比率は減らさなければいけなくて、ダイナミックに動く人を増やさなければいけないことだけは多分確かだと思う。

【中野座長】  そういう構造、人の雇用の構造を変えるといったときに、セクションリーダーとかグループリーダーとかの役割は、今の日本の加速器のグループと似ているとおっしゃいましたけれども、かなり変わってくるんじゃないかと思いますが、そうではないんですか。

【山本委員】  多分これはリン・エバンスさんにお聞きしたほうがいいと思います。彼自身は同じに見えるという御意見なので。

【中野座長】  山本さんはどう思われますか。

【山本委員】  基本的な構造は私は同じだと思います。あとは比率だけの問題だと。私もそれはそう思います。スケールが違うのは確かでね。

【中野座長】  いや、スケールとその役割がちょっと違うのかなと。だから、非常に広範な範囲を担当している人のまとめ役なのか、それとも、本当に真空だったら真空だけをまとめている人なのかという違いがあるような気がするのですが、そうではないんですか。

【山本委員】  そこは私は本当にCERNの中にもその役割、リーダーシップの役割分担があって、本当に真空なら真空の専門としてのリーダーシップをテクニカルにとる人と、それから、そのもう一つ上にいて、マネジメントとして、真空も見れるけれども高周波も見れるというような人たちがいて、その上のリーダーになるわけですね。

【中野座長】  そこは一緒だと思います。その下のレベル。

【山本委員】  下は、日本のほうが、1人の人のカバーするのが広くて、逆に悪く言えば専門性が低くなってしまいますが、でも、少なくともどちらかと言われれば、それは日本のいいほうに働いてきたと。非常に少ない人数の中で、研究所を成り立たせて、本当に専門的に逆に育てるときには、業務委託の人にとってもそれを適用してきたわけです。つまり、業務委託だから1年で辞めてもらいますというふうには実際にはなっていなくて、実は10年、20年いて、本当に現場の作業はその人がなくてはならないというところを実は日本はより業務委託にお願いしているところがあると思います。そうですよね、小関さん。

【小関座長代理】  そうです。

【山本委員】  それによって、日本の場合は、外国との違いが、業務委託という形で見えなくなっているところはあるかもしれないけれども、そこも入れると、実は近いというふうに思います。

【小関座長代理】  多分KEKのKEKBとかJ-PARCの規模になると、比較的グループリーダー、セクションリーダーという構造に近いと思いますね。セクションというのは、例えば真空グループとか、電磁石グループとか、専門性の高いグループ分けになっていて、もちろん日本の場合はそれだけやっていればいいというわけにはなかなかいかないけれども、主たる担当はそこであるという、そういう区分けはできると思います。そうやって見れば、そんなにLHCの場合と違わないのかなという感じはしますね。

【大熊委員】  補足すると、私も今の意見に賛成ですけれども、多分これはILCになるとまたもっと変わっていくんだろうと思うんですね。

【山本委員】  そうですね。

【大熊委員】  日本の中でも歴史的に見るとやはり変わっているわけです。小関さんも私も加速器を始めたのが田無のSOR-RINGというところですけれども、そこでは専門も何もあったものじゃなくて、何だってやらなければいけないわけです。分かろうが、分かるまいがやらなければいけないのです。
昔の日本の加速器の研究施設というのはそれで、ほとんどの人が真空担当と言うけど、真空の担当の人は専門家ではなくて、みんなの協力を得て計画をするだけであって、RF担当というのは、RFの必ずしも専門家ではなくて、計画をして、みんなで寄ってたかってやると。寄ってたかってといったって、3人とか4人ぐらいでやるわけですね。それが多分KEKになってきて、こういう専門性が大分出てきたと。だから、ILCになれば、またもっと違ったスタイルが出てくるのは、それはそれで、私はいいのだろうと思うんですね。
ただ、問題は、そういうニーズが集められるか。先ほどから言っているように、建設期に集まった人たちのキャリアパスが構築できるかと。そこが一番問題なので、それをどうするかというのは、ここの部会の中で、何をしていかなければいけないということを提言しなければいけないんだろうと、私はそういうところだと思っています。

【山本委員】  そうですね。私はまさにそこを提言していただけるということは大変ありがたいことで、私自身も核研のESから出発をして、KEKのPSのときは、例えばビームラインというところをやっていましたけれども、ビームライン1本、あなたが全てやるんだよと。磁石も、電源も、真空も、モニターも、全部やるんです。ビームラインが何本あったら、何人しかいないという。放射光でも多分KEKの場合は起きていると思うんですけれども。それがトリスタンになり、KEKBになっていく中で、やっぱり質が変わらざるを得なくなってきて、変わってきていると思うんですよ。我々はそれにアダプトしてきた。
だから、ILCのようなものが出来た場合には、更にLHCのような経験も勉強させてもらって、新たな形を作らなければいけないということだけは本当におっしゃるとおりだと思いますので、是非作業部会としてそういう提言をしていただけるとありがたいと思います。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  実際日本でどのような労働契約の条件が付けられているのかということを、具体的に知りませんので、詳しくは申し上げられないですけれども、我々CERNでもできるだけ産業界からのサポートを得ようと努力をしてまいりました。先ほどのチャートで、科学者と、それからエンジニアとテクニシャンと、それからアドミニストレーション、管理担当の人と、それプラス、クラフストマンというのがありました。クラフストマンの人数がとても少なくなっていました。30年前はそういう状況ではありませんでしたが、今、このクラフストマンというカテゴリーに入るのが、いわゆる外注というか、アウトソーシング、業界からの、産業界からのサポートという形になっています。そういう意味では、日本はここの部分を増やす用意が十分できている国であると思います。
ですから、日本の法律や日本の慣行に従った形で、また新しくストラクチャーを作っていけばいいのだと思います。
ただ、私がきょうここに参りましたのは、LHCをどのように作ったかという話をするのであり、これからのプロジェクトをどのように作りなさいというふうに言うために参ったわけではありません。

【中野座長】  質問をそこに戻します。予期せぬ困難な事象の克服というところ、非常に興味深くお聞きしたのですが、これは、4例出ていますけれども、それぞれの事例についてどのレベルの人たちが解決したのかという点。その人たちは、LHCで初めてこの業界に入った人なのか、それともLEPで十分な経験を積んでいて、こういう解決につながったのかということが知りたい。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  それでは、例を申し上げたいと思います。まずこの問題ですけれども、ヨーロッパの産業界の無能さによって発生した問題というふうに申し上げたいと思います。このような問題は日本では決して発生しません。日本にたくさんのコントラクトを出していますけれども、日本の産業界の能力欠如で発生した問題というのは1件もございません。
ある具体的な事例におきましては、クライオラインでの問題でした。フォルトがあったわけです。亀裂がありました。CERNが、なぜこういうことになったのかということを調べて、企業に入っていって、何を発見したかといいますと、その企業は我々に情報を伝えることなく違った部品を使っていたということが分かりました。我々にそれを教えずに、ずっと欠陥のある部品を使って作り続けていたということです。私たちは問題があるというのが分かりまして、しかし、それは何か特別な方法で問題を発見したわけではなく、あくまでもこのクライオラインを分解して見つけたということです。つまり、この企業がずるをしていたという問題でした。
それから、もう一つの問題。これは、いつもヨーロッパの土着的な問題というふうにも言えるのですが、長いプロジェクトがあると企業が破綻をするという問題があります。これは四極磁石の製品を作っていたケースですけれども、それを作っている長いプロジェクトの中で企業が破綻したらどうしたらいいのか。通常私たちは、ダブルソーシングというのをしています。1社だけに発注するんじゃなくて、2社発注をすることによって、バックアップをとろうとしていますが、この場合はしていませんでした。ですので、破綻をしたときにどうしたかといいますと、このコントラクトを全部CERNに持ってきて、作業場も提供して、産業界からのサポートの人たちにやらせたわけです。
ですから、私の経験から申し上げますと、日本の企業というのは、欧州の企業、アメリカの企業と比べた場合にずっと信頼できる企業であると。欧州やアメリカの場合は、きちっと監督をしていないとだめだということです。
そこで、それらの企業を監督をする責任はどこにあるかといった場合に、欧州やアメリカの企業の監督は、そこのハブラボラトリーに責任があります。つまり、KEK、日本におかれるホスト国のラボラトリーではありません。

【池田委員】  今の話でいくと、ベンダーの問題だというところが一番大きいということだと思うのですけれども、日本では起こらないという話は別にして、やはりクオリティアシュアランス(QA:品質保証)とかクオリティコントロール(QC:品質管理)というのをきちんとやらないと、伝達ミスであるとか、思い込みとか、そういうことでもトラブルは起こりますので、ベンダーのスキルだけではなくて、そういう面で、LHCのときにどの程度の人数の方が、このQA、QCに関わっていたのか、それと、先ほどインカインドはそれぞれのハブラボラトリーの責任だという話だったのですが、それぞれのラボへどういう形でQA、QCを統一するような伝達をされていたのか。量産になってくると、品質をそろえて作るというのが非常に大事になってきますし、ビッグプロジェクトになればなるほど、そこで手戻りがあると、工程が大幅に遅れる、あるいは予算を大幅にオーバーするということになるので、エンジニアリング以上に品質管理というのが非常に大事だと思うのですが、LHCでどういうコントロールをされていたかというのをお聞きしたいです。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  それこそ本当に正しい重要なポイントでございます。特にILCの場合は、エンジニアリングのレベルというのは既に成熟をしておりますので、クオリティコントロール、品質管理というのが中心的なものになると思います。
何人が品質管理、品質保証に当たっていたかという質問に関しましては、ちょっと手元に数字がないので、すぐにお答えすることはできませんけれども、後で調べてお答えすることは可能かと思います。
我々の場合、クオリティプランというのがきちっとありまして、明確にこのクオリティプランというのをフォローしなければいけないことになっていました。ただ、いわゆるインカインドコントリビューションする、拠出をする国はそれぞれその国のクオリティプランというのがありますので、その国でのクオリティプランを守っていただくということになります。
ヨーロッパというのがそういう性質を持った地域でございますので、我々は工場に人を派遣して、実際に製作されている現場で人がそれを、監視とまでは言いませんけれども、監督をしなければいけないような状況でありました。厳しくそのようになっておりました。

【池田委員】  もう一つお聞きしたいのは、品質を監督する方というのは、リサーチャーなのでしょうか。むしろ、リサーチャーよりは産業界出身の人というか、物を作るときにどこをチェックしなきゃいけないかという視点を持った人が品質管理をするというのが望ましいのではないかなと思うのですが、そのあたりはどうお考えでしょうか。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  おっしゃるとおりでございます。企業と我々、契約をしまして、そのサービスを提供する企業が人をそのような工場に派遣をして品質管理を行っていたということです。つまり、CERNの人間ではないということです。当然ながら、そのような産業界でそういうような経験を積んだ人のほうが監督をするのはよりふさわしいわけですので。リサーチャーというふうにおっしゃいましたけれども、我々CERNではリサーチャーとは呼んでいなくて、エンジニアと呼んでいるんですけれども、実際に工場に送り込まれた人たちは、クオリティコントロールを専門にする企業から派遣された担当者、専門の人たちです。
ただ、先ほど申し上げましたクライオラインのあの問題のときは、この会社は独立した品質保証の担当者が現場に入ることを許してくれていなかったんです。問題が発生するまでは立ち入りが認められていませんでした。彼らの言い分というのは、自分たちが専門家で、その品質は保証するからというふうに言っていたんですけれども、問題が発生して、実際我々が人を送り込んで、監督をさせました。

【山本委員】  加速器の場合、特にその中でも、今回のプロジェクトの中で一番量的にも質的にも究極的なクオリティコントロールは磁石の磁場精度。ここはさすがに、申し訳ないけど、リンさんのおっしゃったところだけではなくて、所の中にフィールドのコントロール、磁場の精度を管理するグループがグループとしてきちんとあって、それが年がら年中、試験は委託することがある。ただし、出てきた結果を解析をして、それがこのLHCという加速器のマシーンを動かすのにふさわしいものかどうかということのチェックは、さすがにこれはアカデミックなことでもあって、所員の人がかなり一生懸命やっていたと思います。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  それから、私ども、ウェブベースのインフォマティクスツールというのも提供していました。トラベラーという名前ですけれども、これは製造の段階、それぞれの工程の段階においてモニタリングがされて、その中のデータがトラベラーというウェブベースのツールの中に入ってきます。そこでCERNがオンラインでチェックをすることができると。それからトレーシングも可能です。過去起きたことに関しても、今日でも遡ってトレーシングをすることが可能です。

【山本委員】  これも、もう一つ。ここは非常に重要だと思います。CERNはそういう形でウェブで情報を企業の方と、もちろん企業として守るべきものはパスワードかけて守るようにして、ただ、少なくとも1社とCERNの間では情報が完全に共有される、図面も含めて、そういうことを非常にきちんとされています。これはやっぱり1つの成功のもとだと思っていますが、日本ではそこはなかなか進んでいません。。池田さんにコメントいただきたいけど、そこは我々は乗り越えていく必要があるところだと思うのです。次の大きな計画のときには、何か問題があったときには、早期に発見をしてお互いに助け合えることになるのではないかと思って、学ぶべきことだなと思っています。

【池田委員】  今の御意見は、私、全く同感でして、前回も少し申し上げたように、単に加速器を作るというだけではなくて、超伝導空洞の場合は、冷やして測定するまで本当の性能がよく分からないというのが実態です。デグレード(性能低下)している場合に、いろいろ要因があるのだけど、何がメジャーファクターかというのは、製造過程をいろいろとたどって手繰っていかなければいけない。そういうところを、今言われたようにデータベースにして、最近、IoTということも話としては出てきていますので、データベースで傾向をちゃんと分析しながら、それを生産にフィードバックするとか、そういう新しいものづくりというのをこのILCの中で是非やるべきだろうと思っています。
先ほど人材の流動化の話がありましたけれども、私から見ると、CERNはビッグネームなので、CERNのプロジェクトに行きたいというモチベーションのある若者はたぶんたくさんいる。CERNに行って5年仕事したぞというと、やっぱりそれはかなりの箔があるということなんでしょうが、グリーンフィールドに作る研究所ではたぶん最初からそういうわけにはいかない。そのかわり、既にメジャーな名前のところではないんだけれども、非常に新しいことができる。ただ単に加速器を建設するだけではなくて、例えば企業側から見れば、マニュファクチャリングですごくチャレンジングなことができるというような要素がないと、なかなか人材の流動化や、若い人を呼び込むというのは難しいのではないかと思います。単に加速器を作りますではなくて、もっと違う要素を含めた複合的な、建設自体でも非常に魅力があるというようなプロジェクトにすべきではないかなと。そういうところで経験をしてくると、企業側でも、加速器の経験に加えて難しいものだけど、大量生産をこういう管理をしてやったとか、そういうスキルを認めるということもあり得るのではないかなと思います。私見ですけど。

【中野座長】  大体時間となりましたので、よろしいですか。どうしても質問しておきたいこととかありませんか。いいですか。
それでは、このあたりで議論を終わらせていただきます。本日の御議論いただいた内容については、資料1のこれまでの主な意見を更新して、次回お配りしたいと思います。
以上で本日の議題は終了となります。最後に事務局から連絡事項があります。

【吉居加速器科学専門官】  事務連絡でございます。本日の議事録につきましては、前回同様、出席委員の皆様にメールにてお送りをいたしますので、御確認をお願いいたします。
今後の日程につきましては、資料の3をご覧いただければと思います。5月25日と6月20日を今後予定してございます。次回は、現在のLHCのおける研究の状況について御報告いただきますとともに、報告書案の骨子案について議論することを予定しております。6月の第6回を最終回としまして、報告書をまとめる予定でおりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。

【中野座長】  それでは、本日の会合を終了いたします。ありがとうございました。

【エバンス前LHC加速器最高責任者】  私にも出席の機会を与えていただきましたことを感謝申し上げます。


―― 了 ――

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