今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループ(第23回) 議事録

1.日時

平成25年11月13日(水曜日)17時~19時

2.場所

文部科学省 3階 3F2特別会議室

3.出席者

委員

小柳主査,青木委員,秋山委員,天野委員,石川委員,宇川委員,加藤委員,小林委員,善甫委員,高田委員,常行委員,富田委員,中島委員,中村委員,平尾委員,松尾委員,村上委員,室井委員
(HPCI計画推進委員会委員)土居主査
(説明者)
神戸大学 賀谷学長補佐,
HPCI戦略プログラム分野2 下司准教授 

文部科学省

吉田研究振興局長,山脇審議官,生川振興企画課長,下間参事官,川口計算科学技術推進室長,遠藤参事官補佐

4.議事録

(1)人材育成について

 川口計算科学技術推進室長より資料1に基づいて説明。意見交換は以下の通り。

【秋山委員】  この論点整理の趣旨についてはこのとおりだと思っておりまして,特段反論等ございませんが,何度か繰り返される6分類が非常に重要になってくるので,この6分類について少し事務局の方で表現を変えていただけないかと思うことがございます。初めの2つは結構ですけれども,3番目の「支える人」は,「アプリケーションを最適化等」と書いてあります。アプリケーションの最適化だけでなくて,それやライブラリ開発というような言葉を補って,もう少し研究の深みみたいなものを入れていただけないかと思います。「つなげる人」は,最後に「コンサルティング人材」と書いてありますが,今の御説明を聞いていると,内部の人間がつなげるというところが産業界等の現場で必要になってくるので,コンサルタントではなく,「つなぐ人材」というようにまとめていただいた方がよいのではないかと思います。「まとめる人」のところは,助詞が変だと思います。「教える人」ですけれども,教育機関に限定せず,教育機関や産業界においてこれらのスキルを教えられる人材というように,広く取っていただいた方がよいと思います。
【善甫委員】  人材の論点整理として非常に分かりやすくまとめていただいていると思うのですが,まだ視点が産業界の方にないと思います。「産業界で求められるHPC人材に係わる課題と育成の方策」に産業界からの求められる人材や教育方法が書いてあります。確かにそうなのですけれども,求められる人材をどう育てるかということは,大学といった教育機関が行うというような感じに書かれていると思いますが,業種によっては教育機関とは全く違う文化を持っていますので,現場へ行ってみないと分からないことが多いと思います。私はそういった文化の違いを知るということが大事なことだと思います。そのためには,インターンシップに行く機会を増やし,それに伴うインセンティブを与える必要があると思います。少なくとも3か月以上に渡っていき,その業種,業界を知るということができると,帰ってからの大きな動機付けになるのではないかと思います。また,受け入れる側では,そういった機会があれば,6種類の人の像がありましたけれども,このどこが一番伸びそうかということを見ることができるのではないかと思います。そういった観点をもう少し強調して書いておいた方がいいのではないかなと思います。
【小柳主査】  大変貴重な提言ですが,どのように取り入れたらよいとお考えでしょうか。
【善甫委員】  「産業界で求められるHPC人材に係わる課題と育成の方策」を充実すればいいのかなというように考えています。教育する側の観点から中心に書かれているので,人材を受け入れる側の観点,それから産業界に行く学生側の観点という3つの観点で書かれるとまとまるのではないかなと思います。
【村上委員】  6つの類型化に関してなんですけれども,これは人という観点の類型化でいいのかなということを疑問に思いました。人というふうにしますと,どちらかというと排他的な形ですけれども,能力であれば,6つの能力のうちのどこかを伸ばした人材を育成するとか,少なくとも6つのうち3つぐらいは,ある基準以上である人を育てるということになると思います。また,もしこれが人ということであれば,アカデミアだけではなくて,企業内に対してのキャリアパスというものを考えておかないといけないと思います。
【小柳主査】  両方の面があると思います。ここでは人材という切り口で書いているので,人という言葉が出てきたのですが,一人の人が2つの面を持つとかいうことを否定しているわけではないです。おっしゃるように,キャリアパスを考えるということは,能力であっても同じ問題があると思います。キャリアパスはどこかに書いてあったと思います。
【村上委員】  業績評価が書いてあるところで,アカデミアについて書かれています。
【小柳主査】  そうですね。ですから,人というのは,人と能力と両方意味しているという理解だと思います。
【川口計算科学技術推進室長】  改めて関口(智)先生の資料を見ると,「人材」は,人でもあり,能力でもあるといった,幅広い概念だと思います。
【宇川委員】  人材育成のことはコンソーシアムでも,今日御欠席の関口(智)さんが中心になって議論されています。コンソーシアムの文書では,そのような人材の機能を踏まえて確実に育成していく必要があるというふうな書き方されていて,どちらかというと,機能,能力に重点を置かれた分類の仕方を考えているという文章になっています。
【中村委員】  善甫委員の意見にも関係するのですが,産業界の人材がアカデミアに戻って更に深い教育を受けられるような機会を作るとあります。機会を作ることは大事ですけれども,その本人にとってみると,単に技術を習得してまた戻りますというだけではなくて,何らかの資格であるとか,学位であるとか,個人のキャリアパスがモチベーションになると思います。ですから,そういう機会を作ることに加えて,学位や資格の取得などの動機付けを与えられる仕組みというような文言を付け加えてはどうかと思いました。
【高田委員】  これはまだ論点整理の段階ということですが,今後まとめていくときには,「誰が」「何のために」「どこで」「何をするか」ということを決めていくことが必要になると思います。「誰が」教えるかということで,6つの項目があった中で,教える人には産業界の人も入っていただかなければいけなくて,これは秋山さんがおっしゃったとおりだと思います。「何のために」というのは非常に大事なポイントで,ここには余り書いてないのですが,企業から見たときに,長期的な企業の戦略の中でこういう人材がやっぱり大事だということをトップに認識してもらう必要があります。そういう点では,海外の動向だとか,これからのものづくり技術を含めて,どういう科学技術が世の中で必要になってくるかということをやはり国のレベルでまとめていただいて,それをアカデミアの方と企業の方で共有できるようになりますと,そういう世の中の動向に対応できる人材を,時間がかかっても,戦略的に確保していかなければいけないだろうということになってくると思います。ですから,「何のために」というのはそういうことも含めて考えることだと思います。「何をするか」というのは,秋山さんおっしゃった話と同じで,誰が教えるかということと裏表になりますが,やっぱり大学の今までのカリキュラムの中でカバーできていない産業界の課題を解いていく,ということを理解していないといけないです。そのためには産業界の人が入って,そういうことを教えていく必要があるだろうと思います。そうすると,「どこで」という場所ですが,会社に入って問題意識を持った人がもう1回大学に戻って勉強することも必要でしょうが,できれば場所自身も,大学のカリキュラムの中に入ってしまうのではなく,ニュートラルな機関・場を新しく作るといった風に,今の既存の枠の中に押し込めなくてもいいのかなと思います。文章のどこを今直すということではないですが,今後の論点整理のところで是非考えていただきたい。
【中島委員】  産業界に入る前の学生に向けた教育の場合,大学に計算科学科があるところが幾つありますども,例えばマテリアルの場合,マテリアルな会社に行こうという人はマテリアルのシミュレーションをする人の可能性が非常に高いですが,マテリアルな学科の研究室で,例えば,計算シミュレーションをやってきたかという話になったときに,これは必ずしもイエスではないという話がある。つまり,潜在的にできる人というのはそれなりにたくさんいるのでしょうけれども,そこに対してどう網を絞って教育するかということは非常に難しいです。それに,例えば,たまたま先生にシミュレーションやれと言われてやるということはありますけれども,その子たちが学校を出たときに,会社に行ってシミュレーションをやるかという話もまた出てきます。一方,産業界の人材がアカデミアに戻って教育を受ける場合は非常に分かりやすいと思います。つまり,もう既に企業で課題を抱えている方に対して,何を学び取っていただいて,帰っていただくかというのは比較的分かりやすいと思います。大学の教育はジェネラルパーパスになりますので,例えばコンピュータ・サイエンスに来られると,帰っても役に立たないということはあると思います。コンピュータ・サイエンスはどうしてもコンピュータ・サイエンス産業に行く人材を輩出することを考えているので,産業界で計算機を使って何かをやるという人材を育てるという形にはなっていない。大学の工学系全般にシミュレーションぐらいやってこいよというのは一つの手だとは思いますけれども,現状ではそのようになっていないと思います。
【秋山委員】  今の中島先生の意見に全く賛成します。ドメインの知識を持っている人にツールになるような知識を教えるという方がはるかに人数的には多く教育すべきで,ただ,その逆のコンピュータ・サイエンスのすごい飛び道具を持っている人に入ってきてもらうということとのバランスをどの辺にするかというところは難しいと思います。
 それから,もう一言だけ。私は宇川先生と逆になりますけれども,人を意識した文書を出した方が,インパクトがあると思います。
【善甫委員】  中島先生の意見に一部は賛成ですけれども,半分は反対です。といいますのは,その分野の人を先端的に育てたいというのであればよいのですが,いろんな分野があって,それらの境界領域と言われたり,あるいはクロスオーバー領域と言われたりする領域の,いろんな知識を持った人がいろんな改革を起こしているんです。自分の基礎知識を持ってほかの分野へ入っていくとか,違う分野を新たに作る人が必要なので,もう少し幅広い能力を持った人材を育てることが重要だと思っています。つまり,ある自分の専門分野は確かに深くあるべきですが,それだけでなくて,T型といわれる人が必要だということです。いろんな経験をして,あそこに専門の人がいるなとか,あるいは,この分野だったら,例えば向こうに行けば分かるといった,入り口として使うことができる,そういった深くない知識も十分役に立つ可能性があります。そういう人がこれから必要とされるのではないかなと思います。
【小柳主査】  どうもありがとうございます。いろいろと議論があると思います。中島さんの一つのよくありそうなパターンと,そのドメインのサイエンティストないし開発,研究者に新しいツールを与えるということと,それから善甫さんの言った,そういう境界領域から何か新しいものを生み出すような人材を育てるということは,別にどっちだけでいいというようなものではないと思います。恐らくは,現場の人がやむにやまれずシミュレーションをやって問題解決するということが多いでしょうけれども,それだけで満足するという人材育成の考えではいけないと思います。
【中島委員】  よく御存じだと思いますが,大学で教養教育のレベルしか学んでいない学生を企業が採っていただけるのかという話は,大学にとっては大きな問題だと思います。

 賀谷学長補佐より資料1-2に基づいて説明。次いで,下司准教授より資料1-3に基づいて説明。質疑応答は以下の通り。

【中島委員】  賀谷先生に伺いたいのですけれども,こういうアクティビティーをやるに当たって,受講される方の身分をどうするかとかいった話があると思います。身分によっては,結構なお金を要求してしまうということがあって,受講される方にとって負担になる部分があることに関してどうされているということを,まずはお伺いしたい。
【賀谷学長補佐】  御質問は,企業の方の経費に関してということでよいですか。
【中島委員】  受講される方がどのようにされているかということです。
【賀谷学長補佐】  今回は科学技術振興調整費という経費を,補助金を頂いておりますので,負担は全てこちらでやっております。ですから,受講者に対して,受講料といったものを取っておりません。ただ,これは5年間,経費がある間だけでありまして,継続したいということで,学内の教育センターを立ち上げようと動いております。その中で,神戸大学の負担分を出して,なるべく企業さんからは経費を取らないようにということで算段をしております。
【中島委員】  プロジェクトが終わってから,そこを大学としてどう支えていくかということは,受講料ですとか,あるいは,どういう身分で来ていただくかというところにかかわってくるのではないかと思います。つまり,大学のビジネスとしてやる形にどう持っていくかというのが非常に課題かなと思います。
【賀谷学長補佐】  おっしゃるとおりだと思います。ですから,計算科学教育センターで今後どういう経費を要求していくか,それが受け入れられるかどうか,リーズナブルな価格なのか,そこを見極めてやらなくてはいけないと思っております。
【加藤委員】  プレゼンをされたお2人の話をお聞きしていて,ある意味非常に対照的だなと感じました。つまり,神戸大学は独自色を出したカリキュラムを組んでいる一方で,CMSIの方は,9大学が連携して効率的に教育をするとしています。それらのお話をお聞きしながら,この先一体どのようになっていくのかなと感じました。つまり,例えば,各大学では機械工学とか航空宇宙工学といった工学分野でそれぞれ独自色を出してカリキュラムを組んでいます。ところが,これがハイエンドの計算科学だからCMSIがやられているような取組が必要であるが,これは飽くまで過渡的なものであって,ある程度教育カリキュラムが確立されたら今度は各大学が独自色を出すようになるのか,全体的にこの分野の教育がどういうふうになっていくのかなということを感じながらお聞きしました。
【小柳主査】  中期的なことでしょうか。
【加藤委員】  他の専門分野と比較すると,何か非常に特殊だなと思うんです。ハイエンドの計算科学だからこういう議論がある。普通,例えば,機械工学を教えるのに10大学が連携してやるなんてまずないです。その辺,どういうふうに今後進んでいくとお考えなのかお聞きしたいと思って質問しました。
【下司特任准教授】  私のイメージとしては,第一原理計算なり,いろんな量子化学なり,そういう計算されている方は全国に散らばっています。そういった方たちがそれぞれで学生さんを育てるということでもよいのですけれども,同じことが行われているのであれば,コミュニティとして教育してもよいのではないかと思っています。
【加藤委員】  それは,まだボリューム(対象となる学生の数)が小さいから,ということになるのではないでしょうか。例えば,機械工学者を集めて,機械工学のコミュニティ,連携大学院で教えるといったことは,一部の大学ではやられていますけれども,一般的にはない話だと思います。
【下司特任准教授】  そうですね。HPCI戦略プログラム分野4に比べて,数としてはやはり少ないと思いますが,散らばっている学生や若手を効率的に教育するというシステムとしては,これが適しているのではないかと思います。
【賀谷学長補佐】  計算科学専攻を作るときも議論がありましたけれども,計算科学ということでやりますと,各分野での計算科学が今まで発展していて,学問横断型ということがないと思います。そもそも,計算科学として学問体系があるのかどうか,ディシプリンがあるのかどうかということが非常に問題だと思ったわけです。それで,大学院GPでもいろんな議論を通してやっていますけれども,結論的にはモデリングと,細部の解析やその理解が重要で,そこを中心的に教育したいというのが一つの結論なわけです。教育センターを立ち上げた一つの理由は,専門性を高めるということは各戦略分野といったところで教育が十分にされていると考えますので,裾野を広げたいということをモチベーションとしています。今までシミュレーション使ったことのない,例えば,中小企業の方々にも,シミュレーションを使うとプロダクトイノベーションができるよ,プロセスイノベーションができるよということを理解していただいて,活用していただき,産業界にその手段のプロセスイノベーションが起きればというような観点もありまして,いろんな分野の講義を配信したいと考えています。それで,HPCI戦略プログラム分野1やいろんな方とお話しして,テレビ会議システムも,どちらかというとPolycomとかを使うのではなくて,WebExという,パソコンを使って個人で,どこでも見ることができるというようなシステムを使いたい,作りたいということが我々の趣旨でございます。
【石川委員】  先ほどのCMSIの取組のまとめに情報基盤センターが出てきたのですが,基盤センターでもいろんな取組をしていて,いろんなアナウンスはしているのですけれども,なかなか情報が流れていないなということを改めて感じました。東大の場合,遠隔講義室があって,教育目的に使えます。それは,場合によっては土曜日にも対応したりしています。ほかのセンターも,そういったことをやっていると思います。ウェブでもそういった情報を流しているし,学内の広報誌にも出していますけれども,そういった情報が余り流れていないのだと思います。ですので,例えば,基盤センター群と戦略機関いった拠点との意見交換会をする等,幅広くできるといいのではないかなと思いました。そういうことをしていけば,情報が流れていないことによる誤解も解けるのではないかと思います。その辺は是非文科省の方で音頭を取っていただけると有り難いなという気はします。
【小柳主査】  音頭を取るというのは,情報の一元化といったことでしょうか。
【石川委員】  そのような情報をいただければ,こちらの方からアナウンスするということで構いませんけれども,そういうことをしていかないといつまでたっても話が前に進まないという気がしております。
【下司特任准教授】  我々は,東京大学の部屋を使わせていただいています。東大とか,一部のところはできていますけれど,大部分はないです。例えば,うちのサイバーメディアセンターはやってくれません。
【石川委員】  今月の月末にセンター長会議がありますので,それを緊急的に提案したいと思います。
【下司特任准教授】  よろしくお願いします。
【平尾委員】  戦略分野が立ち上がって,それぞれのところで人材育成を行っていますけれども,やはり全体的には統一した形に体系立って行っているわけではないです。先日分野1の方や,下司さんも加わって,ネット配信できる講義をきちんと用意しませんかということになって,できたら来年度からスタートしたいと思っています。これから作る理化学研究所計算科学研究機構のホームページの教育欄に来ていただければ,どういう科目があって,どういうカリキュラムになっているかということがわかるようにしようと思います。全体がそろってからやるのでは,これはいつまでたってもできないので,できるところからやりませんか,ということでやっていきたいと思っています。これはほかの戦略分野にも声をかけて,できるだけそれをやっていきたい。それから,機構には計算科学の優秀な方が集まっていますので,戦略分野ではできないようなところも,きちんとした形で講義を用意するというような形で,少しずつやっていきたいなと思っていますので,またいろいろ御協力いただきたいと思います。
【小柳主査】  文部科学省というレベルでは動きにくいので,平尾機構長からありましたが,ポータルみたいな感じで,情報を配信するというようなことが考えられるのではないかと思います。
【石川委員】  一度いろいろな御意見を聞く場を持った方がいいのではないかと思います。それで誤解も解けるのではないかと思います。知らなかったことに関して,あるいは,こちらがやらなければならないことに関しての意見交換を,オフラインでやらないといけないと思います。
【小柳主査】  そうですね。意思疎通をきちんとした上でのオンラインでやる。
【石川委員】  オンラインはオンラインで必要だと思います。
【小柳主査】  大変な重要なことで,これは関係者で進めていただきたいと思います。【村上委員】  論点整理のところで,人か,能力かという話をしましたけれども,先生方のお話も伺って,こういう教育を受けた人たちをどういうふうな人材に育てるのかといった,ロールモデルが何であるのかという疑問が出てきました。キャリアパスとも関係しますけれども,大学であれば計算科学の専門の先生が最終的なロールモデルになるかと思いますけれども,産業界に対してのロールモデルを抽出して,それを提示することが教育のときには非常に重要かなと思います。賀谷先生,下司先生のところではどういうロールモデルを学生さんたちに提示して,こういう教育を受けるとこのようになるということを示されるのかなということが気になったところです。もしありましたら教えていただければと思います。
【賀谷学長補佐】  社会人教育に関しましては,ケース・バイ・ケースなので,最初にテーラー相談を受けるときに達成目標を伺って,受講者が自分としてはここまでやりたいとか,ある会社ではシミュレーションの課を作りたいからそういう教育をしてほしいというような要請に合わせて,カリキュラムを設定して,それに向かってやっております。ある受講者はドクターまで行きたいという方もいらっしゃいましたが,ドクターに行くにはどうしたらいいか,教育者はどうしたらいいかということを提示してやっています。学生に関しては,計算科学専攻で,シミュレーション手法を理解したといった教育目標が明記されていますので,それに合ったカリキュラムということで設定しております。
【小柳主査】  神戸大の場合は非常にはっきりしているのですが,村上さんは,全体的なロールモデルを伺っているのだと思います。
【村上委員】  そうですね。一般教養的なレベルでの計算科学,シミュレーションで終えるのか。要するに,普通自動車免許程度なのか,それとも大型二種でもって,将来は大型トラックの運転手になる,というような,それを勉強することでどのような出口があるのかということをお聞かせいただきたい。
【下司特任准教授】  CMSIとして明確にこれということを示すことは難しいのではないかと,私自身は思っています。これは私の個人の意見ですけれども,府省を超えた連携がないと示していけていないのではないかと思っていますが,それがあると,将来のビジョンを描けますので,若い学生たちもそこに行こうとなると思います。
【小柳主査】  今の御意見を取り入れて最終報告に反映したいと思います。

(2)エクサスケール時代以降のフラッグシップシステムについて

 川口計算科学技術推進室長より資料2に基づいて説明。意見交換は以下の通り。

【小柳主査】  エクサでも大変なのに,その先はどうなるかということはなかなか大変な問題ですが,エクサスケール時代以降のフラッグシップシステムについて意見交換を行いたいと思います。
【加藤委員】  確認ですが,以降というのはどれぐらい以降を想定しているのでしょうか。例えば2020年の3年後なのか,それとも,10年後の2030年なのかによって違ってくると思います。
【川口計算科学技術推進室長】  3年後ぐらいと10年後ぐらいで,どこに大きな変化が出るのかということを,例えば,3年後の2023年だったら今の議論の延長なのか,10年後というとかなり変わるのかといったことを,我々としてもよく見極めたいと思っております。
【遠藤参事官補佐】  補足させていただきますと,地球シミュレータと「京」,それから,今まだいろいろ要求中でありますけれども,ポスト「京」というものを考えますと,7年から10年ぐらいのスパンで今我が国の開発が行われています。そのスパンがもっと短くなければいけないという議論もあるかもしれませんが,例えば7年から10年ぐらいを目途にエクサの次のというのも考えていただくのもいいのではないかと思います。
【小柳主査】  エクサが2020年ぐらいとすると,2020年から2020年代後半の数年間をどう見るかということだと思いますけれども,その辺にCMOS技術が限界に達するのではないかと一般的には言われておりますが,そのことも含めて何かございますでしょうか。
【宇川委員】  サイエンスの側からの観点,それに関係してアルゴリズムの観点と,それは密接に結びついていると思いますので,その観点からすると,2020年代であろうが,2030年代であろうが,サイエンスの方からのニーズはあり続けると思います。タイムレンジをそう設定するのであれば,それに対して,計算機技術として,それが2020年代の10年間でどう応えられていくのかというところが,鍵になると思います。ただし,そこはすごく難しいところだと思います。
【中島委員】  今のことの関連ですけれども,サイエンス側,アルゴリズム側として,例えば1兆並列あれば何とでもなるよという話なのですか。
【宇川委員】  そんな単純な話ではなくて,サイエンス自身,アルゴリズムというのはサイエンスの進歩によってどんどん変わっていくわけです。今持っているアルゴリズムはあるかもしれませんけれども,それを使ってあるところまで行き,システムがどう振る舞っているかというのが分かってくると,それを組み入れたアルゴリズムというものを考えるわけです。アルゴリズムはそのようにして発展してきているところがあると思います。
【中島委員】  CMOSテクノロジーの話がありましたけれども,今見えているのはそれしかなくて,その性能が飽和している可能性があります。そうすると,少なくともスピードの面ではもう飽和しているということになります。逆に今からマイナス15年すると,15年前から今までの間,変わったことは何もしていません。微細化して,たくさん詰め込んでということでやっています。その路線が飽和する前にいろんなところで飽和してくれていると,もしかしたらブレークスルーが起こるかもしれないです。
【加藤委員】  私も,今の延長では確実に飽和すると思っているので,この議論はなかなか難しくて,まず飽和した前提で技術革新がないときにフラッグシップはどうなっているか,飽和しないためにはここが一番クリティカルだから,こういうことをやっていけばこういうふうになる可能性が高い,そのときにアルゴリズムはどうするか,というように分けて考えないと,こういう類いの議論というのは何も出てこないという気がします。
【小林委員】  計算科学と計算機科学が,両輪で動いているわけですけれども,汎用で行っているうちはとにかく計算機が頑張っていいものを作って,それにアルゴリズムを合わせていくということだと思うのですけれど,そこがうまくいかなくなると,今度は計算の方が進化して,それに向けてシステムが専用化していくというような,ある意味どちらからもうまく引っ張り合うようなところがあって,タイミング的には難しい時期なのかなと思っております。汎用と専用の間で,振り子で振れているというのはありますけれども,そこら辺の見極めが大変かなと思います。
【小柳主査】  私もエクサあたりでは汎用というイメージは完全になくなるのではないかと一時思っていた時期もありますが,結果的にある程度汎用的なものを考えているようなわけで,この振り子は予測不可能なところだと思います。
【青木委員】  1兆並列という話が出ましたが,もし全系をやれと言われた場合,どれぐらい,何時間ぐらい故障なしに使えるのかとかいうことが問題になるユーザはいると思います。エクサでも全系で故障なしに動くかということが問題なのではないかと思います。
【中島委員】  今の観点に関しては,仮に1兆並列が計算として受け入れられるのであれば,あとは頑張りましょうということになると思います。1時間でこけるのではなくて,だましだましでも1週間,いろんなことは起こり得るけれども動かす,という方向の技術の進歩ということはできるのではなかと思います。けれども,そもそも1兆並列とか勘弁してよという話が起こる可能性もあるので,そこの見極めが大事だと思います。1兆並列というのは,今考えられるワーストケースの一つ上ぐらいにあるのか,ワーストケースは1兆並列に行かなくて,1,000万並列ぐらいで止まるのかわかりませんが,そうなったときに,今度はトランジスタが速くなってくれるのかという議論になって,微細化で電気代だけが安くなってくれる可能性というのはゼロではないと思いますけれども,そこは指数関数的にパワーエフィシェンシーが上がるということは多分考えられないので,自動車の燃費が10年間で3倍ぐらいよくなりましたぐらいの話かなと思ったりしています。汎用性の議論ですけれども,ショートレンジでは必ずそういう話が起こると思うのですけれども,物理法則を無視したようなCPUのつなぎがあるとか,メモリの読み方があるといった話があれば別ですけれども,そんなものはない可能性が高いと思います。
【平尾委員】  私も実はエクサの後はどうなるかということでいろんな方々と議論をし,それから,私の知っている,量子コンピュータを研究している専門家の方々とよく議論をするのですが,2020年にエクサスケールが出てきたとして,その10年後ぐらいに量子コンピュータが実用化されるのかというと,駄目だろうとのことです。更に数十年はかかるでしょうということが大体皆さんのお考えで,そう簡単に現在のシリコンのCMOSのテクノロジーに代わるようなものはすぐには実用化されないと思います。ただ,今後は,技術的にもいろんなところに問題が出てくるということは分かっているわけですので,完全に量子コンピュータに置きかえることはできなくても,ハイブリッドにするということは考えられます。技術的に問題があるところに関しては,何か別の形のブレークスルーを語るということは可能じゃないかということも多くの人が言っています。そういう意味では,計算機科学の人たちはできるだけ早くそういう人たちとの議論を深めていただいて,可能性を追求していただくことが必要ではないかと思いますし,次のシステムというのは今のシステムとは全く違う形になるのでしょうし,アルゴリズムそのものも今の延長には全く行かないと思いますので,もう一度根源的に問題を考える必要があるのではないかなという気がしております。
【小柳主査】  超伝導を使った0-1のコンピュータについては,村上さんも興味を持っていましたし,亡くなられた田中昭二先生も作っていらっしゃいましたけれども,これも一つの可能性だと思います。例えば90年代にペタを考えたときに,かの有名なHTMTという超伝導計算機で,小さいもので1ペタ行くというようなアイデアが一時もてはやされてまいりました。ただ,エクサのときには破壊的技術というのが出てこなくて,CMOSの延長だという議論一点張りでした。このときに分かっていることは,演算装置ができてもメモリがなかなかできないと言う問題があります。
【加藤委員】  アプリ側の人間からすると,ざっくばらんなところは,例えば,ハードがワーストケースでこうなるとか,あるいは何らかのブレークスルーがあるとこれぐらいのスペックになるという数字が出てくればいろいろ検討は始められると思います。
【小柳主査】  それはなかなか難しい。
【加藤委員】  今の延長ではどこがボトルネックになって,これぐらいまでしか行かないということはすぐに出てくるわけで,それに対して,例えばあるコンポーネントでこういうブレークスルーが実現できればこれぐらいまでは行くよという数字はある程度は出てくると思うので,その数字を出していただけないかと思います。
【中村委員】  私もアプリの方ですけれども,問題設定が,次世代フラッグシップシステムがあることが前提になっていますけれども,先ほどの平尾先生の話を伺うと,必ずしも汎用の次世代フラッグシステムというものはあり得ないかもしれないと感じます。そうすると,それぞれのサイエンスに特化した専用のものが日本の中にいろいろな専門ごとに複数あるような,そういう在り方だってあるわけで,それを全く考えないですぐ次世代フラッグシップシステムでいいのかということも気になります。
【小柳主査】  確かにそれは大変重要な御指摘だと思います。ただ,一つのモデルとしてそういうものをまず考えるということだと思います。
【小林委員】  私もそういうふうに思っております。まさにPCからタブレットに行ったように,だんだん上の方に右肩上がりにならなくなってくると,生産性のいいようなシステムを考えていくような時期に入ってくるのではないかと思っております。もちろん,とんがっていて専用的なものもあるかもしれませんけれども,もう少し裾野を広げるような技術を考えていく必要があるのではないかなと思います。
【宇川委員】  その議論というのは毎回毎回あるわけで,サイエンスなりテクノロジーで,これをやりたいというドライビングポイントがあって,それを実現するためにはという話と,それから各分野で幅広に,かつ多数の利用者も必要で,使いやすいものをどうやって供給していくかという話と,必ず両方あるわけです。どちらの視点で考えているかということですけれども,まずはとんがったシステムでどこまで行けるのかを考えてみようという視点だと思いますが,それでいいと思っています。そのときに難しいのが,テクノロジーのトレンドをどう見込めるかという話で,正直な話,次のシステムについて,テクノロジーのトレンドがどこまで見切れているかというと,これは今やろうとしているところなので必ずしもはっきりとしたことを言える人はいないわけです。その上に立って,2020年以降のテクノロジートレンドはこうなっていそうだからこういうふうな話ができるのではないかというのはすごく難しいのではないかと思います。それをやるのであれば,デバイスの方とか,そういう方も含めた,別のワーキンググループを立ててやらないといけないのではないかと思います。自由な意見交換は非常に重要だとは思いますけれども,突き詰めようと思うとそこまでやらないといけないのではないかと思います。
【秋山委員】  今,宇川先生から,デバイスの専門家とか,そういうテクノロジーの問題として語られましたけれども,少なくともこの30年ぐらい,専用か,汎用かとか,どのアーキテクチャかとかいう問題は,ほとんど経済学とか社会学的な問題として決着がつけられてきたと信じています。2027年には,一つだけの汎用システムを持つことにはならないとは思いますけれども,そんなに千差万別なものが百花りょう乱になるのではなくて,普通のシリコンの延長のものが,昔のグリッドみたいに日本中に置かれて,我々が今思っているものと同じようなものが2027年では使われていると個人的には思いますが,議論するとしたら,経済とか社会学的な見地から語れる人の方が当たるのではないかと思います。
【宇川委員】  経済学が非常に重要なのではないかということは,私も全く同意です。違うことをやれと言っているわけでは全くないです。
【小柳主査】  政策決定という問題も含めて議論しなければいけないと思います。
【平尾委員】  もちろん技術的な問題というのは見通すことは非常に難しい状況にあるということは,そのとおりだと思いますが,私はScience drivenだろうと思っています。サイエンスとして本当にインパクトのあるものはどういうものかとか,あるいは社会的に非常に影響力のある課題,我々が解決しないといけない課題というのが何かということを語り合って,解決しなければいけないよということになったら,それに向かって必死になるのではないかと思います。それを乗り越えてきたのが人間の英知なので,大きな目標をきちんと掲げて,それに向かってやれば,どこかに突破口が開けてくると思っています。
【富田委員】  Science drivenは根底にはあるのですけれども,それだけを最初に掲げて,計算機の動向がアプリの側から見えないととんでもない要求が出てくるわけです。基本的に計算科学屋さんは,自分のやりたい究極の目標があって,すごい計算機資源を要求するわけですが,現実的なところでどんなものかということが分かれば,それはそれでまた計画が立てやすい話になると思います。そう考えると,やはり難しいですけれども,2020年以降の技術トレンドを含めて,どのぐらいの計算機が,ばらつきを含めて,可能なのかというのが提示されれば,アプリ側としても,ある程度妥協しながら,計画が立てられるのではないかなという気がしております。
【小柳主査】  解くべき問題の話と,それを可能にする計算技術というものを,両面から議論しなければいけないと思います。今エクサを目指したシステムの絵を描いているわけですけれども,それが最終目的ではなくて,何らかの形で次の技術発展につながるようなものにしていきたいと思っています。
【土居計画推進委員会主査】  エクサスケール以降のところもきちんと考えておいていただかないと,継続的な考えもないのに1発ずつ打ち出しているのかという話になってしまう。ですので,きちんとその辺を打ち出していく必要がありますし,役所としてもそれがないと対応できないと思います。さかのぼって考えてみますと,アメリカでは,大統領府で大統領諮問委員会が政策的にマッシブパラレルで行こうとなり,今,その延長で動いているわけです。いろいろなケースを考えた上で,我が国としてどうするのが最適かという,当たらずとも遠からずのところを打ち出していただければと思います。そこのところに大転換点を迎えるというようなことがあってしかるべきだと思うので,そういうことを含めて,今後とも御検討願いたいということが一つです。
 もう一つ,エクサスケールができるまでをどうするかということです。「京」だけで行くわけにはいかないわけですから,エクサスケールができるまでの間をどのように乗り切っていくのが妥当なのかということを,どのように考えているのですか。
【小柳主査】  それは,各センターの将来計画の話が出まして,「京」を超えるような計算機を,各センターで,ある時期に準備するという計画が提示されています。
【土居計画推進委員会主査】  その個々の将来計画だけで行けばよいということが,ここのワーキンググループでの判断ですか。
【小柳主査】  それは別の問題です。そういう計画があって,「京」が日本のトップであることは,そんなに長い間ではないと思います。
【土居計画推進委員会主査】  個々の基盤センターが独自の判断でそれぞれがなさるということに関しては,全く異論はないです。一方で,理化学研究所計算科学研究機構は,どうするのですか。
【平尾委員】  これから数年後,どういう状況になるかということは分かっていますので,理化学研究所計算科学研究機構の中では「京」を増強するという案の検討をしております。それが技術的にどういうことが可能であるかということも含めて検討をしておりますし,案としては持っています。これは皆さんと一度どこかで議論をさせていただいて,それが必要であるということでしたら,国からも支援を頂いて,エクサに至るまでの期間は,増強ということも考えないといけないと思っております。
【土居計画推進委員会主査】  そのつなぎを考えた上で,先まで見通すということを最終的にこの場でまとめていただくのが筋ではないかと思います。
【平尾委員】  是非そうお願いしたいと思っております。
【小柳主査】  我々の最終報告にも,不連続に飛ぶという印象ではなくて,継続的な投資が重要であることは書いた方がいいと思います。
【土居計画推進委員会主査】  是非お願いいたします。

(3)その他

 遠藤参事官補佐より,今後の開催予定を報告。

 小柳主査より閉会発言

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