資料2 中間報告案の取りまとめに向けた検討用資料

はじめに

 スーパーコンピュータ(以下「スパコン」という。)によるシミュレーションは,理論,実験と並ぶ科学技術における第3の手法として,我が国の国際競争力を強化し,国民生活の安全・安心を確保していくために不可欠な基盤となっている。
 こうしたことから,文部科学省においては,従来より計算科学技術を積極的に振興してきている。平成18年度に,スーパーコンピュータ「京」の開発を開始するとともに,「京」を中核として,多様なユーザニーズに応える革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築とその活用による成果創出,社会への還元に向けた取組を推進してきている。
 一方,スパコンの性能は非常に速いスピードで進展しており,計算科学技術を巡る国内外の状況は常に変化している。既に「京」の計算能力を上回るスパコンが米国において開発整備されるとともに,米国,欧州等においては2020年頃に「京」の100倍の計算能力を持つエクサスケールコンピューティングの実現に向けた研究開発が進められている。また,従来我が国と米国のみが開発をしていたプロセッサについて,最近では中国においても自主開発を行うようになっている。さらに,米国においてはINCITE,欧州においてはPRACEなど,複数のスパコンを一つの研究基盤として研究者が効果的・効率的に利用するための枠組みが整備されてきている。
 このように,国際的にスパコンの整備・利用が大きく進んでいる中で,我が国が激しい国際競争を勝ち抜いていくためには,HPCIを構成するシステムを戦略的に高度化し,世界最高水準の計算環境の実現とその利用により新たなイノベーションを創出していく取組を強化していくことが重要となっている。
 このような状況を踏まえ,今後10年程度を見据えた我が国のHPCI計画の推進の在り方について新たな戦略を調査検討するため,文部科学省研究振興局では,平成24年2月にHPCI計画推進委員会のもとに「今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループ」(以下「ワーキンググループ」という。)を設置し調査検討を開始した。以降,本ワーキンググループでは15回にわたり議論を積み重ねてきたところである。
 また,この政策的な調査検討に加え,文部科学省においては5年から10年後におけるHPC技術等の技術的知見の獲得を目的として,平成24年度から「将来のHPCIシステムのあり方の調査研究」を開始し,この調査研究の内容についても適時・適切にワーキンググループの調査検討に反映してきた。
 本ワーキンググループでは,まず,スパコン利用の必要性,意義,重要性について産業界を含む有識者からのヒアリングや,HPC技術の動向に関する有識者からのヒアリングなどを行い,「今後の調査・検討課題」を平成24年5月にとりまとめ,引き続き,その調査・検討課題にしたがって議論を進め,委員の共通認識が得られたものや引き続き検討を行う必要があるものを整理し,本年3月に論点整理をとりまとめた。
 その後,検討項目とされた事項のうち,早急に方向性を示す必要がある「我が国における計算科学技術システムの在り方」や「研究開発の方向性」について重点的に議論を進め,今般とりまとめた。
 今後,残された検討課題である利用環境や産業利用促進等の利用の在り方,人材育成などについても本ワーキンググループで更に調査検討を進め,平成25年度末を目途にとりまとめる予定である。

第1章 計算科学技術を巡る状況

1.計算科学技術の意義

  計算科学技術は,情報処理に関する基礎理論とそのコンピュータ上への実装に関する学問(計算機科学),及びコンピュータを活用して科学技術上の問題を解決する学問(計算科学),並びにそれらに関係する技術の総体である。中でもスパコンを用いたシミュレーションは,理論,実験に並ぶ科学技術の第3の手法として,科学技術の様々な分野において不可欠な研究開発基盤となってきている。
 例えば,シミュレーションにより,気象・気候や地震・津波といった自然現象のように実際には実験できないような現象,高温・高圧・高速・微少スケールといった極限環境での現象,生命現象のような様々な要素が関わる複雑な現象,星や銀河の形成といった実時間では再現できない現象などを計算機上に再現することにより,その現象を支配する理論を理解したり,又は,未来や未知の状況を予測したりすることができる。最先端の科学研究では,こうした現象を取り扱うことが多くなっており,シミュレーションの活用により,新たな知の発見や創出が期待されている。
 また,最近の計算機の能力の進展に伴い,様々な物質における原子や分子の挙動,電子の状態などを量子力学などの基本的な法則(第一原理)をベースにシミュレーションすることが可能となりつつある。これにより新しい材料の性質や薬候補物質の効果などを詳細に予測する,いわゆる「予測の科学」が現実のものとなってきており,その活用により新たなイノベーションの創出などが期待されている。
 さらに,最近ではものづくりの現場において試作・試験・評価のプロセスをシミュレーションで代替することにより,効果的・効率的に新しい製品の開発を進めたり,また,地震や津波による被害をあらかじめシミュレーションを用いて予測することにより,国及び地方自治体等において効果的な防災・減災対策を講じたりすることができるようになっている。
 このように,スパコンを利用したシミュレーションは,科学技術の振興のみならず産業競争力の強化や安全・安心な国作りの観点からも重要な手法となっており,今後ますますその重要性は高まっていくと考えられる。

2.国際的な状況

  このように計算科学技術の重要性が増加している中で,国際的にもスパコンの開発・利用が積極的に進められている。2012年11月のTOP500スパコンランキングでは,1位から500位までのスパコンの総計算能力(ピーク値)は229.28ペタFLOPSで,この10年間で毎年約2倍になっている。また,同ランキングでは,27か国のスパコンがエントリされており,このうち1ペタFLOPS以上のスパコンが7か国に整備されている。

【米国の状況】
 各国の状況を見てみると,米国においては,1991年に策定されたHPC法(High Performance Computing Act)のもと国家的投資により計画的にスパコンの開発利用が進められ,世界のスパコンの総計算能力の約半分をコンスタントに米国のシステムが占めるようになっている。世界トップのシステムを数多く開発してきており,近年では,2012年にLLNL(Lawrence Livermore National Laboratory)のSequoia(20ペタFLOPS),ORNL(Oak Ridge National Laboratory)のTitan(27ペタFLOPS)など,20ペタFLOPSを超えるスパコンを世界に先駆けて開発・利用している。
 また,最近ではDOEを中心に,IBM,Intel,NVIDIA等の主要なスパコンベンダーを巻き込んで,2022年のエクサフロップスシステムの整備を目指して研究開発を進めている。
 さらに,最先端のスパコンを幅広い研究者が利用するための枠組みとして,超並列スーパーコンピュータ利用促進プログラム(INCITE)が実施されており,Titan,Mira等の計算資源を,地球気候変動,生命科学,新物質探求,代替エネルギーなどの課題に配分している。

【欧州の状況】
 欧州でも着実にスパコンの整備・利用が進められており,世界のスパコンの総計算能力に対する割合では日本を超える20%前後を常に確保している。2008年には,欧州各国のスパコンを欧州全体の計算基盤として利用する超並列スーパーコンピュータ利用促進プログラムPRACEを開始し,その枠組みの中で複数のペタフロップス級のスパコンについても整備を行っている。また,2020年頃のエクサスケールコンピューティング実現を目指し,FP7(The Seventh Framework Programme)によるMontBlanc,DEEP,CRESTAの三つのプロジェクトを開始しており,ハードウェアとソフトウェアの研究開発を実施している。さらに,FP8(2014~2020)ではHPC関連予算を倍増し,取組を強化することとされている。

【中国ほか各国の状況】
 中国は,近年急激にスパコンの整備・利用を進めており,世界のスパコンの総計算能力の10%程度を占めるとともに,2010年11月のTOP500では天河1Aが1位となっている。CPUの自主開発も進めており,既に申威1600 (Shenwei)や龍芯(Loongson)などが開発されている。中国の国家科学技術重大プロジェクト(第12次,第13次5か年計画:2011年から2020年)では,HPC関連に重点的な投資をし,2015年までに100ペタFLOPS級コンピュータを開発,2020年にはエクサスケールの実現に向けて計画的に研究開発を推進することが発表されている。
 また,ロシアやインドにおいてもスパコンの自主開発を含め,その整備・利用が積極的に進められている。また,韓国ではHPC法(National Supercomputing Promotion Act)を制定し,超高性能コンピュータを国家レベルで重点育成するための中長期計画(第1次国家最高性能コンピュータ育成基本計画)を策定している。

【その他の動向】
 このように各国がスパコンの整備・利用を強化している中で,国際協力の動きも拡大している。先に述べたように,欧州ではこれまで各国が個別にスパコンの整備・利用を行っていたが,各国の協力により欧州全体の計算基盤として整備・利用を行うPRACEプロジェクトを開始している。また,2009年からは,日米欧中の研究者によるIESP(International Exascale Software Project)が開始され(現在IESP2として継続),エクサスケールコンピューティングの実現に向けて,課題の抽出とロードマップの作成が行われている。

 このほか,世界的な技術動向としては,PCクラスタの普及などに見られるように,大型計算機の技術をコモディティに活用する流れから,市場の大きなコモディティの技術をスパコンの技術に統合・活用する流れ(スピン・アウトからスピン・インへ)がある。こうした流れの中で,従来からあるIBM,Cray,SGIといったシステムベンダから,Intel,NVIDIA,ARMなどのプロセッサベンダやプロセッサIPライセンサに,コンピュータ関連企業の中心プレーヤが変化してきている。
 一方,最先端のスパコンシステムでは,消費電力等の関係から,コモディティベースのCPUよりも,「京」やBlueGene/Qのようなスパコン専用のCPUを持つシステムや,GPUにより演算性能を向上させているシステムが多く見られるようになっている。

3.国内の状況

 我が国としても,計算科学技術の重要性や海外のスパコン整備・利用の動向を踏まえ,計算科学技術の振興を積極的に図ってきている。平成23年に策定された第4期科学技術基本計画においても,世界最高水準のハイパフォーマンスコンピューティング技術を国家安全保障・基幹技術と位置づけ,国として強力に推進していくこととされているとともに,シミュレーションを含む高度情報通信技術を科学技術の共通基盤として位置づけ,その研究開発を推進していくこととされている。
 文部科学省では,平成18年度から「京」の開発・整備と,「京」を中核としたHPCIの構築とその利用促進を図ってきた。「京」は平成23年11月に世界に先駆けてLinpack10ペタFLOPSを達成するとともに,計算速度のみならず優れた実行効率,信頼性等を有し,我が国の技術力を世界に発信したところである。既に「京」及びHPCIは平成24年9月末に運用を開始し,多くの研究者の利用が進んでいるところである。
 また,HPCIの構築により,世界最高水準のスパコンやその他の計算資源をユーザが容易に利用できる環境が構築されたことは,ユーザのニーズに応じたスパコンの利用システムとして重要である。

【国内の総計算能力の推移】
 こうした中で,我が国の総計算能力は着実に増加しており,平成24年10月時点では20ペタFLOPS超となっている。また,国内主要スパコンの計算資源の使用量もコンスタントに増加している。これまでの傾向として,システムの増強が行われるとそれに伴い使用量が急激に増加していることから,現在の計算能力は利用者のニーズを完全には満たしていないと考えられ,また,計算科学技術が今後ますます重要になってくるという状況を踏まえると,計算資源に対するニーズは引き続き増加していくものと考えられる。
 一方,世界の総計算能力に対する我が国の計算能力を見てみると,「地球シミュレータ」や「京」などの大規模システムが整備されると一時的に上昇するものの,長期的な傾向としては緩やかに減少してきている。特に,近年は状況が改善しつつあるものの,大学情報基盤センターにおけるスパコンの能力が世界に比較して相対的に低くなっていると考えられ,今後,我が国の計算環境を全体としてどのように維持・発展させていくかが重要な課題と考えられる。

【「京」の開発による効果】
 既に述べたように,我が国は平成18年度からスパコン「京」の開発・整備を進め,平成24年度にシステムが完成し,共用を開始したところである。
 この「京」は,10ペタFLOPSという高い演算性能のみならず,Linpackの計算において実行効率93%,また全CPUフル稼働時の連続実行時間が29時間以上を達成し,高い実行効率や信頼性を誇っており,世界のスパコンランキングで1位を獲得したほか,より多角的な性能指標であるHPCC Awardの4項目でも最高性能を達成するなどの成果をあげている。さらに,水冷システムや効率的なCPUにより,消費電力についても,汎用性の高いシステムとしては優れた性能を達成している。
 また, 「京」はハードウェアの成果のみならず,利用研究の面でも,戦略分野を中心に成果を上げつつあり,2年連続でゴードン・ベル賞を受けている。創薬,医療,ものづくりの分野においても,新たなアイディアに基づく新製品開発への貢献や開発コストの削減や開発期間の短縮,地震津波の被害予測などの成果が創出されつつあり,社会的課題解決やイノベーション創出による産業競争力の強化への貢献も期待されている。
 運用については,共用法に基づいて,施設の運転を独立行政法人理化学研究所が,利用者選定・支援を登録施設利用促進機関である一般財団法人高度情報科学技術研究機構が互いに協力しながら行っており,産業界を含め幅広い分野の研究者・技術者の利用が行われている。
 「京」を国内で開発したことの波及効果としては,高性能・低消費電力のCPUや,8万個以上のCPU間を相互に接続するネットワークについても,超並列システムを信頼性が高く効率的に運用できるTofuインターコネクト(6次元メッシュ/トーラス結合)といった最先端の技術を獲得するとともに,獲得した技術,人材,ノウハウ等をスパコンやサーバの新製品や,汎用半導体の設計・開発・製造に活用し,我が国の情報科学技術の発展や産業競争力の強化に貢献している。また,こうした「京」の開発実績によるブランド力向上を通して,外国における環境問題の解決へのICTの活用など,スパコンのみならずICTを活用した幅広いビジネスで諸外国のプロジェクトに参画するなどの波及効果も生じている。
 さらに,様々な分野の研究者が利用できる汎用性の高いシステムとして利用の枠組みを構築することにより,産業界も含め様々な分野の計算科学の研究者が「京」の開発・利用に参画することができ,我が国全体の計算科学技術の底上げに大きく貢献をしている。

【スパコン開発の動向】
 国内のスパコン関連企業を巡る状況も変化している。ポストペタスケールのスパコン開発に向けてCPUも含めた技術開発を継続する企業がある一方で,PCクラスタのようなコモディティの技術をベースにしたシステムが普及するにつれて,CPUの開発は行わずコモディティベースのシステムを開発する企業があるなど,異なった方向性での展開になりつつあると考えられる。また,国内資本による半導体製造については,ファブライト,ファブレス化が進展し,その結果最先端プロセスでの半導体の量産がほぼ不可能な状況であり,また,プロセスと一体となった設計能力の維持についても極めて困難になりつつある。
 一方,国際的には最先端のスパコンの開発を加速することにより,社会の発展に不可欠のインフラとなる研究開発基盤を構築するため,各国によりスパコンの自主開発が拡大してきており,社会的・科学的課題の解決と豊かで活力のある国づくりにおける今後の計算科学技術の重要性を踏まえると,我が国としても,「京」の開発により獲得した高性能なCPUやネットワーク,優れた省電力機構などの技術や,その開発を通じて蓄積された人材や経験を生かしながら,スパコンの開発に必要な技術を適切に維持・発展させていくことが重要である。

4.利用の状況

(1)自然科学分野
 自然科学分野においては,研究推進のために従来からスパコンの利用が盛んに行われており,物質科学,地震・津波,気象・気候,素粒子・宇宙,生命科学,医療・創薬といった様々な分野でシミュレーションが活用されてきている。

【HPCI戦略プログラムなどの状況】
 こうしたシミュレーションによる研究を高度化し,ペタスケールコンピューティングを実現するため,文部科学省においては,「京」の開発・利用と並行して,ナノテクノロジーやライフサイエンスの分野で「京」を利用する先導的なアプリケーション開発を行うグランドチャレンジアプリケーションの開発や,「京」を中核とするHPCIを最大限に活用し,画期的な成果の創出,人材の育成及び最先端のコンピューティング研究教育拠点の形成を目指したHPCI戦略プログラムを推進してきている。
 HPCI戦略プログラムでは,社会的・学術的に大きなブレークスルーが期待できる分野として,「予測する生命科学・医療及び創薬基盤」(戦略分野1),「新物質・エネルギー創成」(戦略分野2),「防災・減災に資する地球変動予測」(戦略分野3),「次世代ものづくり」(戦略分野4),「物質と宇宙の起源と構造」(戦略分野5)を選定し,グランドチャレンジなどで開発した最先端のアプリケーションソフトウェアを活用しつつ,戦略的な研究を推進している。
 これら戦略分野における研究では,「京」の能力をフルに活用することにより,以下のように,これまで困難であった世界初のシミュレーションを実現し,我が国発のイノベーション創出に貢献している。

・ 心臓の難病の一つである肥大型心筋症の病態をサルコメアタンパク質という分子レベルの変異から細胞,心臓の動きまでを計算して解析することに成功し,医療に貢献。
・ 数万原子からなるシリコンナノワイヤーの電子状態をまるごと計算。これにより,ワイヤー中電流分布の断面形状や結晶方位依存性を解明し,次世代半導体デバイスの性能向上に貢献(2011年のゴードン・ベル賞の最高性能賞を受賞)
・ 全球雲解像モデル(NICAM)を用いた熱帯季節内変動の延長予測実験において,現状は約2週間先が限界であったところ,約一か月先の有効な予測に成功。
・ 宇宙初期(約137億年前の宇宙誕生から約200万年後から1億年後まで)の数兆個に及ぶダークマター粒子の重力進化のシミュレーションにより,ダークマターの密度分布を計算。星や銀河の形成など,宇宙の構造形成過程に関する科学的成果の創出に貢献(2012年のゴードン・ベル賞を受賞)。
・ 産業応用という観点でも,創薬応用シミュレーションにおいては約300種類の新規化合物について,病気の原因となるタンパク質の働きを妨げる強さを高精度で計算し,新薬の候補となる可能性の高い化合物をその中から見いだすことに成功し,「京」を利用して初めて得られるスピード感で開発期間を大幅に短縮し,日本の医薬品開発の国際競争力強化に貢献。
・ ものづくりのシミュレーションでは,自動車,船舶,ターボ機械などについて,これまでにない精度でのシミュレーションを可能とし,風洞実験の補完という段階から,風洞実験では解析できない現象をシミュレーションにより解析可能にしつつあり,我が国の産業競争力の強化に貢献。

【シミュレーションにより解決が期待される社会的・科学的課題】
 このように「京」の利用によりイノベーション創出に向けた成果が創出されつつある一方で,「京」の能力をもってしても解決困難な社会的・科学的な課題が多く残されていることもまた事実である。具体的には,以下のような例が考えられる

○創薬・医療分野の例
 画期的な創薬・医療技術の創出のために,その基盤として人体等における生命現象の理解が不可欠である。しかしながら,生命現象は余りに多くの要素が絡む複雑な現象であり,新しい創薬や医療機器の開発のためには,人体に近い状況を再現した大規模な計算が必要となる。例えば,「京」では扱えない複雑な構造を持った標的タンパク質(病気の原因物質)に対する薬の設計を可能としたり,標的タンパク質以外のタンパク質と化合物の相互作用を調べることにより副作用の予測を可能としたりすることなどが期待されている。創薬スクリーニングにおける分子動力学シミュレーションによる標的タンパク質との結合強度の評価の計算では,1ケース5日間で終わらせるとしても,1エクサFLOPSの性能が必要となり,これを相当ケース行う必要がある。
 同様に,個人一人一人が自分自身のゲノム配列を知り,それに基づく医療(テーラーメイド医療)を行うためには,現在急速に発展を遂げている次世代シークエンサから得られる膨大なゲノムのビックデータの解析が必要とされており,2020年頃には2エクサFLOPS程度の性能のスパコンが求められている。特にストレージに関しての要求は高く,約2~20エクサbyteを必要としており,次世代シークエンサでのDNA解析を効率よく行うためには,これらに見合ったメモリバンド幅,IO性能が求められる。
○総合防災分野の例
 東日本大震災のような今後の災害に対し,様々なシナリオを通じて様々な被害想定をしておくことが必要である。このような被害想定は現在より高精度な構造物と都市全体のシミュレーションが必要であり,そのためには「京」を上回る計算能力のスパコンにより,「京」では別々に行っている地震の発生から被害予測,避難予測のシミュレーションを一気通貫に行い,シミュレーション結果を統合していく際の誤差を少なくして高精度のシミュレーションを行うことが必要である。具体的には,1シナリオあたり2時間以内に計算を終わらせるためには,BF値0.25として2エクサFLOPSの性能が必要となる。これを1000シナリオ行うことで,想定されうる大小の地震・津波災害のデータベースが構築でき,具体的な被害予測・避難予測が可能となる。
 同様に,ゲリラ豪雨に代表されるような集中豪雨の予測も現時点では極めて困難な課題であり,「京」を上回る計算能力のスパコンによる個別の積乱雲の予測に基づいた集中豪雨の予測システムの構築は,我が国の気象災害軽減に直接的に寄与することが期待される。
○クリーンエネルギー創出・環境問題解決分野の例
 クリーンなエネルギーとして自然エネルギーの積極利用,新しい太陽光発電デバイスの開発などが急務となっている。そのためには次世代二次電池や太陽電池の開発や光合成をモデルとした高効率な物質・エネルギー変換システムの開発によりエネルギー問題の解決に貢献することが期待される。そのためには,様々な配位や構成でシミュレーションを行う必要があり,現実的な時間でシミュレーションを行うためには1エクサFLOPS程度の性能が求められる。
 また,効率的にエネルギーを使用するための省エネルギーのものづくりも重要である。例えば,大量のエネルギーを消費する代表である航空機においては,高性能で高効率な航空機エンジンなどの設計の熱流体計算では,1ケースあたり150時間以内で計算を終わらせるには,BF比0.25想定において1.6エクサFLOPSの性能が必要とされている。
○ものづくり分野の例
 「京」では自動車やファンなどの渦の大きな製品については100マイクロメートルの解析メッシュのシミュレーションで解析が可能であるが,航空機やタービンなどの渦の小さい製品は解析できない。1エクサFLOPS程度の性能のスパコンを利用することにより,20マイクロメートルの解析メッシュのシミュレーションが可能となり,航空機やタービンなどの大半の工学的に重要な製品の解析が可能になると期待される。
○基礎科学分野の例
 素粒子物理学において,「京」を上回る計算能力のスパコンを利用し,これまで計算能力の制限から取り入れることが困難であったボトムクォークやトップクォーク,電弱相互作用の効果を取り入れた精密計算を実施することにより,スーパーKEKBやJ-PARCで行われる精密実験との比較が可能となり,新たな物理法則の発見,新理論の構築に貢献することが期待される。例えば,バリオン間相互作用の計算においては,メモリ容量は少ないものの実効性能500ペタFLOPSで約8000時間の計算が必要になる。効率が20%としても2.5エクサFLOPSの性能が必要である。
また,宇宙環境の理解においては,「京」では太陽の11年の黒点周期の磁場変化を行っているが,今後は100年以上の太陽活動の長周期変化のメカニズムと巨大フレアの発生条件を明らかにし,地球環境に影響を及ぼす宇宙環境の変動予測に貢献することが期待される。地球の磁場変化のシミュレーションにおいては,1エクサFLOPS程度の性能があれば十分な精度で計算が可能となり,宇宙天気予報の実用が視野に入ると考えられる。

 また,これらの様々な分野における成果を連携・融合させ,課題を社会現象や人間活動を含めたシステムとして理解し,持続的な社会,安全・安心な社会構築に貢献しイノベーション創出につなげていくことも今後の計算科学技術に求められている。例えば,地震津波の被害予測に基づく避難予測のシミュレーションに社会科学から推定される個々人の動きをシミュレーションに取り込むことにより,より現実に近い被害予測のシミュレーションが可能になると期待されている。
 このようなことを実現するためには,それぞれの分野で研究開発を進めていくのはもちろんのこと,それに加え,ビッグデータ処理技術,可視化技術,データ同化技術,知識処理といった共通基盤的な技術開発にも横断的に取り組むことも必要である。


(2)社会科学分野
 スパコンの利用は自然科学分野が先行してきたが,最近では自然科学以外の分野においても,スパコンが必要とされる場面が増えており,その利用が進んできている。例えば,社会科学分野では,人間が織りなす様々な社会現象についても,その再現,理解,予測を目指して研究が進められており,金融市場,伝染病の流行,交通流の研究がスパコンを用いて進められている。

【金融,流通等での利用】
 金融市場の分析では,為替市場について市場価格を統計学的に分析することにより,確率微分方程式によってモデル化し,様々な様相の変動を持つ現実の市場を的確に記述することが可能となっている。現在の為替市場はコンピュータ端末による自動取引が中心となっており,そのシステムにはミリセカンドオーダーでの取引に対応するためのリアルタイム性と,精度のよいリスク推定などを行う大規模計算の両面が求められている。
 一方,社会で発生する様々なデータを蓄積し,解析することも重要な社会科学の手法である。社会全体が電子化されたことにより,スーパーやコンビニの小売データの解析による需要予測シミュレーションや,ブログ上のデータを用いることにより1日ごとの景気判断を行うことも可能になりつつある。そのためには,膨大なデータを蓄積し解析できる大きなリソースが必要であり,このような分野でもスパコンの利用が進みつつある。

【社会システムのシミュレーション】
 SARSや鳥インフルエンザ等,伝染病は国境を越えた大規模な流行の拡大が懸念されており,国際的にも緊急かつ長期の取組が必要となっている。この伝染病の流行についても,伝染病流行の基礎モデルであるSIRモデル(S:未感染の個体数,I:感染した個体数,R:回復した個体数の時間発展を表した常微分方程式系)を基本として,スパコンによる解析により,伝染病の拡大予測や有効な拡散防止策の政策立案へ貢献が可能となりつつある。複雑な社会構造,空間構造,環境の時空間変動や,病原体の形質の進化などの要因を取り入れた伝染病研究はまだ緒についたばかりであり,今後,より高性能なスパコンの活用により更なる発展が期待される分野である。
 また長期的には,社会現象をその構成要素のふるまいのモデルに基づいてシミュレーションする統計物理学的モデルが,次世代のブレークスルーとして期待されている。例えば,個々の人間を基本最小要素としてモデル化したエージェントに基づいて社会システムをシミュレートすることにより,社会の多様な課題に柔軟に対応できるシステムの実現し,イノベーション創出に貢献することが期待されている。ここでは,社会システム全体を客観的に議論し,また寸秒を争う意志決定及び実現する手段を構築することも可能になると期待されている。
 このように,社会科学分野においては,自然科学分野で求められるものとは異なるスペック,例えば,浮動小数点演算性能以外のリアルタイム性や膨大なデータを処理するためのビッグデータの処理技術などが必要となる可能性があり,このような点にも留意しつつ,今後の我が国の計算科学技術システムの整備を進めていくことが必要である。


(3)産業利用
 産業界におけるスパコンの利用は,まさにイノベーション創出に直結しており,自動車のまるごとシミュレーションのような,より現実に近い状態での解析やものづくりにおける製品の設計など,大規模計算へのニーズや重要性は高まっているものと考えられる。
 例えば,民間企業では,航空機の設計にシミュレーションを用いることにより,YS-11以来2機目となる国産旅客機の開発に成功し,他の同じサイズの旅客機に比べ20%の燃費改善と圧倒的低騒音の実現にも貢献している。また,他の民間企業では,タイヤ用ゴム内部を大スケールで分子・ナノレベルで忠実に再現し解析する大規模分子シミュレーションが行われており,得られる成果を活用し,高性能・高品質タイヤの新材料開発技術を更に進化させ,新商品の開発につなげていくこととしている。
 そのほかにも先に述べたような「京」の利用により,高効率な二次電池・太陽電池や優れた強度・じん性,耐熱性をもつ構造新材料の設計や,ものづくりにおける自動車・船舶・飛行機などの開発・設計における製品試作をシミュレーションで代替することにより,これまでの実験では解析が困難であった領域の研究が可能となり,新たなアイディアに基づく新製品開発への貢献や,開発コストの削減や開発期間の短縮が期待されている。
 その一方,産業界でスパコンの利用を進めていくためには,幾つかの課題も明らかになっている。
 大企業ではシミュレーションそのものは普及しているものの,実際のものづくりの現場で活用できる企業はまだ少なく,特に中小の企業では人材の育成,技術やノウハウの継承が求められているのが現状である。
 また,産業界での利用は,高精度で時間のかかる計算よりも,パラメータサーベイのように多くのパターンで計算する要求もあり,大学・研究機関で大規模計算を行うユーザが使用するスパコンとはその在り方が異なっている。利用するソフトウェアに関しても,企業では商用ソフトウェアを利用することが多いため,利用したいソフトウェアがサポートされていることも利用の条件となる。
 さらに,同じ産業界でも,業種によりスパコンの利用状況やスパコンに対する要求が異なるとともに,研究開発部門で必要とされる用途とものづくりの現場とでは求めるものが異なるなど,様々な利用パターンが考えられる。
 このような多様な産業界のニーズに対応し,産業利用の裾野を広げ,促進を図り,イノベーション創出につなげていく上では,適切な利用料設定の在り方にも留意しつつ,利用環境整備や支援体制構築などの産業利用促進策が重要になると考えられる。

5.今後の方向性

 これまで述べてきたように,計算科学技術は現代の科学技術の発展,イノベーションの創出等を通じた産業競争力の強化や安全・安心の国づくりの実現に不可欠な国家の基幹技術となっている。
 実際に「京」及びこれを中核としたHPCIの活用により,戦略5分野に代表される科学技術の個々の課題を解明し,我が国の科学技術の進展と国際競争力の向上に貢献しつつある。さらに,能力の高いスパコンによるシミュレーションを行うことにより,様々な科学的課題・社会的課題の解決に貢献することが期待されている。
 このため,我が国の計算科学技術インフラの維持・発展とそれを支えるハードウェア及びアプリケーションの研究開発,利用の促進,人材育成等の取組を着実に進めていくことが必要である。
 特にトップレベルのシステムについては,研究開発の基盤という位置づけばかりではなく,サイエンスやテクノロジーを切りひらく最先端の装置という位置づけもある。したがって,今後シミュレーションで期待される最先端の研究を実施し,社会的・科学的課題の解決や画期的なイノベーションの創出を図っていくためには,我が国が有している最先端のスパコン技術を適切に維持発展させつつ,利用するアプリケーションの研究者とハードウェアの研究者が共同して,必要な経費にも留意しつつ,新しいシステムを開発していくことが有効と考えられる。
 こうした中で,これまでそれぞれの分野で行われていたシミュレーション研究を統合し,更に自然科学系のみならず社会現象や人間活動等の人文社会系研究の中で行われていたシミュレーション研究や,最近重要性が高まっているビッグデータの処理なども統合し,様々な社会的な課題の解決に適用するとともに,これと同時に,「京」の利用で培った様々なペタスケールのシミュレーション技術を医療,防災対策,ものづくりなど実際の社会の現場に実装し国民生活の向上に貢献することにより,スパコンが「研究開発の基盤」から「社会の基盤」へ発展していくことが期待されている。

第2章 我が国における計算科学技術システムの在り方

1.総論

 第1章で論じてきたように,我が国の計算科学技術インフラは,「京」の開発やHPCIの構築により着実に整備されているが,世界の計算総能力に占める我が国の割合でみると,「地球シミュレータ」や「京」などの最先端のスパコンの開発により一時的に増加するものの,長期的には低下傾向となっている。
 一方で,利用者の計算資源量に対するニーズは高く,今後ともそのニーズは増加していく見通しであるとともに,利用の分野や形態は多様化しており,大規模な計算を行うための最先端のシステムから比較的小規模な計算を手軽に行えるシステム,また大規模なデータ処理を高速にできるシステムなど様々なシステムが求められている。また,今後の計算科学技術の発展のためには,利用者の裾野の拡大や若手人材の育成が不可欠であるが,そうした点にも留意が必要である。

【グランドデザイン】
 このようなことから,我が国の計算機科学技術インフラ全体のグランドデザインとしては,必要な予算にも留意しつつ,世界トップレベルのスパコンやその次のレベルのスパコンを複層的に配置し,全体として,多様なユーザニーズに対応できる世界最高水準の計算科学技術インフラを維持・強化するという考え方が重要である。そして,その基本的な考え方のもと大学,附置研,共同利用機関及び独法の有するシステムの役割・位置付けを明確にしつつ,戦略的に計算科学技術システムの整備を進めることが重要である。
 その際,各システムの配置については,リスク分散の観点からある程度の地理的な分散も必要であるが,ネットワーク経由で利用できることから,むしろ電力や設置スペースなどの設置条件が整備されていることがより重要である。このためにも,スパコンの性能に応じた高速ネットワークの整備を今後も着実に進めていくことが必要である。
 また,ユーザ窓口や研究拠点となる組織については,地理的な分散も重要であり,利用の促進という観点から,その体制・機能の在り方についてはより具体的な検討が必要である。
 なお,トップレベルのシステムについては,研究開発における基盤という位置づけばかりではなく,サイエンスやテクノロジーを切りひらく最先端の装置という位置づけもあり,このようなシステムを整備するに当たっては,性能目標としてLinpackによる性能評価を完全に無視するわけにはいかないが,より重要なのは,そのシステムで何を達成するのかであることに留意が必要である。

2.リーディングマシンの必要性

【リーディングマシンの必要性】
 上記の基本的考え方に基づき,我が国の計算科学技術インフラを全体として維持・強化する中で,我が国の計算機科学及び計算科学全体をけん引し,科学技術の新たな展開を切りひらいていくシステムとして,世界トップレベルの高い性能を持ち,最先端の技術を利用して開発されるシステムを,リーディングマシンとして整備していくことが必要である。
 このリーディングマシンの整備は,我が国の計算科学技術を発展させ,世界における当該分野の優位性を維持し,それにより我が国の科学技術の発展や産業競争力の強化に貢献できるものであり,国として戦略的に整備を進めていくことが重要である。

【リーディングマシンの在り方】
※本日のWGの議論を踏まえ加筆する

3.各機関のシステムの位置付け・役割

 我が国の計算科学技術インフラを全体として,維持・強化していくためには,リーディングマシンのみならず,大学,附置研・大学共同利用機関,独法等の有するシステムが,それぞれの目的・役割に応じて適切に整備され,人材育成や利用の裾野拡大も含め,様々な計算ニーズに対応できるようにしていくことが必要である。

 国内のシステムは大きく分類すると,特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律(以下「共用法」という。)に基づく特定高速電子計算機施設のシステム,9大学情報基盤センターのシステム,附置研・大学共同利用機関の共同利用システム,独立行政法人のシステム等に分類される。これらの現状を表1にまとめた。
 各機関のシステムの役割・位置づけを,前述の基本的な考え方を踏まえて具体化すると,以下の(a)から(e)のように考えられる。このような方向性に沿って,各機関のシステムを整備・運営していくことにより,我が国の計算科学技術システム全体の底上げを図っていくことが望ましい。

(a)特定高速電子計算機施設のシステム
 特定高速電子計算機施設のシステムは,共用法に基づき整備されるものであり,引き続き世界トップレベルの演算処理能力を有する我が国のフラッグシップシステムとして,産業界も含め幅広くその計算資源を共用に供していくことが適当である。このため,計算機技術の発展を先導する研究開発を行い,その能力を高度化していくととともに,幅広い分野で利用できるシステムとすることが必要となる。

(b)全国共同利用の9大学情報基盤センターのシステム
 全国共同利用を進めている9大学の情報基盤センター(以下「情報基盤センター」という。)は,今後ともHPCの分野において,適切な規模の利用者支援機能・研究開発機能を維持しつつ,我が国のトップレベルの演算処理能力(例えば世界トップレベルのシステムの数分の1から数十分の1程度)を,先端又は大規模な計算を行う幅広い分野の研究者に提供する役割を果たしていく。
 また,その計算資源の一定割合はHPCI一括課題選定の対象とする計算資源(以下「情報基盤センターが担うHPCI資源」という。)として,大規模な計算や多様なユーザニーズに応えるための我が国全体の計算基盤として運用を行う。
 このため,国は大学の自主性・自立性に配慮しつつ将来の我が国における計算科学技術システムの整備・運用に関する計画を策定し,各情報基盤センターは,その計画に沿って,情報基盤センターが担うHPCI資源を戦略的に更新・整備していく。システム導入に当たっては,各機関が抱えているユーザ層に考慮しながら,大学内におけるシステムの集約や複数機関での共同導入・運用などについても検討していく。
 こうした計算資源提供や研究開発実施の役割を十分に担える体制・システムを整備し,各情報基盤センターがそれぞれの得意分野を強化しつつ,これらのセンターが協力し学際的なグランドチャレンジ的な課題を解決するための共同研究・拠点事業の推進や,計算科学技術全体の発展に資する人材育成の役割も果たしていく。

(c)附置研・大学共同利用機関法人の共同利用システム
 附置研・大学共同利用機関法人の共同利用のシステムは,特定研究領域の研究の実施のために整備しているものであることから,基本的にその目的に沿った能力の計算機を整備し,運用を行うことが適当である。ただし,このような考え方を基本としつつも,学術研究は,関係分野が相互の連携を通じて発展していく方向性にあり,従来のような個別分野的なシステム整備ではなく,関係分野が連携して最先端のシステム整備を行う方向性についても検討が必要である。
 しかしながら,リーディングマシンとして国の戦略に沿って開発・整備する場合や,対象としている研究分野が横割り的な分野(例えば統計数理学など)などの場合は,自らの研究の遂行に支障のない範囲で,HPCI一括課題選定の対象とする計算資源として,我が国全体の観点からHPCIへの資源提供も検討していくべきと考えられる。(※)

※附置研・大学共同利用機関法人の場合は,当該研究施設の目的たる研究と同一の分野の研究を目的とすることが求められ,運用上ある程度の制限がある可能性を考慮する必要がある。

(d)独立行政法人のシステム
 独立行政法人のシステムは,基本的に設置者の自らの目的に使用するものであるため,それぞれの必要性と予算に応じて必要な能力のシステムを整備し,それぞれ運用を行うことが適当である。ただし,このような考え方を基本としつつも,研究開発は,関係分野が相互の連携を通じて発展していく方向性にあり,従来のような個別分野的なシステム整備ではなく,関係分野が連携して最先端のシステム整備を行う方向性についても検討が必要である。
 一方,自らの研究開発業務の遂行に支障がない範囲で,積極的に外部の利用に供することも求められており,その際には利用者の利便性も考え,HPCIの共通運用の計算資源として提供することも検討すべきである。
 また,リーディングマシンとして国の戦略に沿って開発・整備する場合は,HPCI一括課題選定の対象とする計算資源として,我が国全体の観点からHPCIへの資源提供を検討することが適当である。(※)

※独立行政法人の場合は,設置法で定められた業務の範囲での利用となるため,運用上ある程度の制限がある可能性を考慮する必要がある。

(e)大学等のシステム((b)及び(c)を除く)
 9大学情報基盤センター,及び附置研を除く大学等のシステムは,基本的に設置者の自らの目的に使用するものであるため,それぞれの必要性と予算に応じて必要な能力のシステムを整備し,それぞれ運用を行うことが適当である。
 また,大学等においては,それぞれのシステムを活用し,我が国の計算科学技術の発展に向け,多様な計算機科学及び計算科学を発展させるとともに,人材育成やユーザの裾野拡大等の役割を果たすことも期待できる。そうした中で,これらの大学等において,リーディングマシンの開発や比較的大規模なシステムの整備・運用が行われる可能性も視野に入れておくことも必要である。

4.整備・開発の戦略的推進

 我が国の計算科学技術インフラを適切に維持・強化していくためには,1.から3.に示したグランドデザインにもとづいて,長期的な見通しを明らかにしつつ,戦略的に研究開発・整備を進めていく必要がある。
 そのため,文部科学省は,今後10年程度を視野に,

・ リーディングマシンの計画について,ハードウェア技術の動向やアプリケーション分野のニーズ,我が国全体の計算資源の状況等を踏まえ,どのようなスペックのシステムをどのようなスケジュールで整備・運用するか
・ 9大学情報基盤センターも含めたHPCI一括課題選定に計算資源を提供しているシステムの更新計画(各大学等のシステム更新計画をベースにした全体の整合性を見る観点から,ユーザコミュニティの意見を聴きつつ,必要に応じて調整)

などの内容を盛り込んだ計画を策定し,定期的に見直しを行いながら,計算科学技術インフラの整備を進めていくことが必要である。
 また,我が国の計算科学技術インフラの整備を計画に基づき適切に進めていくためには,各機関の取組を定期的に評価する枠組みを含め,国として必要な関与を行っていくことが適当である。

 

表1 国内システムの現状

 

  特定高速電子計算機施設のシステム
(スーパーコンピュータ「京」)

  9大学(注)情報基盤センターのシステム

 位置付け

特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律(共用法)に基づき理化学研究所に設置

学校教育法及び同施行規則に基づき,全国共同利用を目的として大学に設置された施設に置かれるシステム

 役割

産業界も含めた幅広い分野の研究者等に共用

学術利用を中心に幅広い分野の研究者に共同利用

 能力

極めて高度な演算処理を行う能力を有する電子計算機(浮動小数点演算を毎秒10ペタ回以上実行する能力)
※「京」の理論演算性能は11.28PF,TOP500(H24年11月)において3位(10.5PF)

H24年10月現在,全体で24システム,総理論演算性能:6,315TF(平均性能:約700TF/センター)。各センターのシステムの総演算性能は31.2TF~2,400TF
TOP500(H24年11月)内に10システム;東工大(1,192TF),東大(1,043TF/ 102TF),九大(460TF/167TF),筑波大(422TF/77TF),京大(252TF/135TF),北大(122TF)

 運用

・共用法に基づき,理化学研究所が維持管理等,登録施設利用促進機関(登録機関)が中立・公正の立場から利用者選定・利用者支援を行う
・計算機資源の約85%を共用に供し,うち約50%分を戦略プログラムが利用し,約35%分を一般公募利用に割当て

・各センターにおいて学内外の研究者等を対象に利用者の公募・選定を実施
・資源の一部をHPCIに提供し,国の委託により高度情報科学技術研究機構が9大学共通の公募・課題選定を実施

 その他

 

・研究開発機能として,新しく開発された技術を実践する場としての役割や,人材育成,学内の支援等の役割があることにも留意
・7大学と東工大の情報基盤センターは学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(JHPCN)として認定
・筑波大は単独で共同利用・共同研究拠点として認定

(注)北海道大学,東北大学,筑波大学,東京大学,東京工業大学,名古屋大学,京都大学,大阪大学,九州大学

 

表1 国内システムの現状(続き)

 附置研において共同利用しているシステム 

 大学共同利用機関法人のシステム

 独立行政法人のシステム
(超高速電子計算機を除く)

学校教育法及び同施行規則に基づき,全国共同利用を目的として大学に設置された施設に置かれるシステム

国立大学法人法に基づき設置された大学共同利用機関に置かれるシステム

独立行政法人の設置目的の研究を実施するために設置

特定分野の研究者を対象に共同利用

特定分野の研究者を対象に共同利用

主として設置法人の研究者に計算資源を提供。ただし,機関の研究開発業務の遂行に支障がない範囲で外部にも提供している例がある

TOP500(H24年11月)内に3システム
・東北大 金属材料研究所(244TF)

・東大 物性研究所(162TF)
・東大 医科学研究所(101TF) 

TOP500(H24年11月)内に5システム
・高エネルギー加速器研究機構(518TF×2システム)
・核融合科学研究所(253TF)
・分子科学研究所(117TF)
・国立遺伝学研究所(83TF)

TOP500(H24年11月)内に4システム
・日本原子力研究開発機構(191TF)
・海洋研究開発機構(地球シミュレータ: 122TF)
・宇宙航空研究開発機構(111TF)
・理化学研究所情報基盤センター(98TF)

・各機関において学内外の特定分野の研究者等を対象に利用者の公募・選定を実施

・各機関において機関内外の特定分野の研究者等を対象に利用者の公募・選定を実施

・主として設置機関の研究者に対し,所定の手続に沿って計算資源を提供
・地球シミュレータは計算資源の40%を一般公募枠,30%を特定プロジェクト枠,30%を機構戦略枠とし,機構戦略枠の中で有償利用を実施

 

 

 

 

 

 

※上記の他,大学等に設置された様々なシステムがある(理論性能合計:国立大学 1204.12TF,公立大学 141.44TF,私立大学 82.30TF(平成24年5月調べ))

第3章 研究開発の方向性

1.研究開発の進め方

 我が国の計算科学技術を今後とも発展させ科学技術の振興やイノベーションの創出に貢献していくためには,技術的な動向や諸外国のスパコン開発・利用の動きも見据え,ハードウェアとアプリケーションの研究開発を両者のバランスをとりつつ着実に進めていくことが必要である。
 その際,計算科学技術により具体的な科学的・社会的課題に対応するという観点から,ハードウェアの研究者とアプリケーションの研究者の共同(Co-design)により,アプリケーションのニーズをハードウェアの研究開発に反映するとともに,ハードウェアの技術動向を踏まえたアプリケーションの研究開発を行っていくことが重要となってきている。
 また,研究開発を効果的・効率的に行うとともに,開発した技術を国際標準にしていく等の観点から,国際協力的にも戦略的に進めていくことが重要である。

2.リーディングマシンの研究開発

 第2章で述べたようにリーディングマシンは,世界最高水準の能力を有し,最先端の技術を利用し新たに開発されるシステムである。その開発に当たっては,最先端の技術開発により新たな科学的・社会的なニーズに対応して今後の計算科学技術をリードすることや,アプリケーション開発者と計算機開発者との密接な連携により早期の画期的な成果創出が可能となるとともに,国内産業への波及効果が期待できることなどから,国内で実施することが重要である。

※リーディングマシンの開発の在り方(要素技術開発を含む)については,本日の議論を踏まえ加筆する

3.アプリケーション開発の在り方

(1)共通基盤としてのソフトウェア開発の在り方
 ポストペタスケールに向けてアプリケーションソフトウェアの開発を行うに当たっては,分野横断的に利用できる共通基盤となるライブラリやミドルウェアの整備が重要であり,その開発をシステムの開発と並行して行うべきである。
 ライブラリ等の開発には,開発しているシステムの知見が不可欠であるとともに,計算機科学の研究者とアプリケーション開発者の連携が重要である。また,特定の分野のみではなく,分野横断的に活用できるものであることから,様々な分野の研究者の意見を聞きつつ実施すべきである。
 このようなことから,リーディングマシンを開発・整備する主体が,ライブラリ等の整備の中核拠点として,9大学情報基盤センターや大学等とも連携しつつ,計算科学と計算機科学の研究者が共同して開発していくことが効率的・効果的であると考えられる。

(2)各研究分野におけるソフトウェア開発の在り方
 次期リーディングマシンのアプリケーション開発に向けて,新たな課題や社会的ニーズにも対応していくことが必要であり,戦略5分野以外の新たな分野を対象に,次期リーディングマシンのアプリケーション開発に向けた準備研究や,戦略プログラムで実施している既存の5分野における次期リーディングマシンに向けた新たなアルゴリズム開発などの準備研究が重要である。なお,これらの研究開発は,幅広く様々なアイディアを募り,シーズを育てるという観点から,公募により行うことが考えられる。
 その際,リーディングマシンのアプリケーション開発については,新たな分野のアプリケーション開発やアルゴリズム開発に向けた準備研究の成果を踏まえた上で,着手する必要がある。また,産業界での利用を進めるためには,開発者の視点のみではなく,ユーザである産業界やさらには社会のニーズを反映して開発すべきであり,ユーザから開発者にフィードバックする体制の構築にも留意すべきである。

(3)ソフトウェアの利用促進について
 開発したアプリケーションを広く普及し活用していくためには,維持管理を個人に頼るのではなく,コミュニティとして維持管理する体制,若しくは企業との連携も含めた体制を構築することが必要である。
 このため,基盤となる重要なアプリケーションソフトの将来を見据えた上で選定し,それらのソフトウェアについて,ユーザへの提供,バグの修正,バージョンアップ等を行う機能を有する体制を構築し,その運営についてはユーザ等から何らかの料金をとることなどにより,効率的に行えるようにすることが必要である。
 また,対象となるアプリケーションソフトウェアについては,開発終了後の利用状況や得られた成果等について,一定期間ごとに評価していくことが必要である。

(4)その他
 ライブラリ等の開発や,上記(2)の公募研究開発を始めるに当たっては,平成24~25年度に実施している「将来のHPCIシステムのあり方の調査研究」を活用し,それぞれの分野におけるライブラリ等へのニーズや新規アルゴリズムの必要性,新しい分野として立ち上げるべき分野について,あらかじめ調査・研究しておくことが,円滑なアプリケーション開発の観点から重要である。
 また,アプリケーションソフトウェアを開発する人材については,サイエンスとしての成果だけではなく,ソフトウェア開発に対する評価もコミュニティとして考えていく必要がある。

4.計算科学技術に関する国際協力

 今後のスパコンの開発・利用については,解決すべき多くの技術的課題があり,我が国が強い分野は自国で開発を行い,海外が強い分野は協力して開発することにより,効果的,効率的な開発ができるため,国際協力を積極的に進めていくことが重要である。
 国際協力を進めるに当たっては,まず我が国として他国との協力に必要な技術力を保持していることが重要であり,その上でどの部分を協力し,どの部分を競争するのかなど,我が国の競争力を維持するための戦略が必要である。こうした点に十分留意しつつ進めていく必要がある。
 国際協力の分野としては,ハードウェア,システムソフトウェア,アプリケーションの開発及びその利用研究等が考えられるが,スパコンのハードウェアについては,主として民間企業が商業ベースで開発を行っていること,また,米国等では国家安全保障と強く関わる分野でもあることから,現時点で国際協力のニーズは乏しい。
 他方,システムソフトウェアについては,システムのさらなる超並列化に対応するための解決すべき研究開発事項も多く一国で実施することは効率的ではないことや,また,国内外のベンダー間で基本的な部分は共通化されていることが,ユーザにとってもメリットがあることなどから,日米の国際協力について検討が進められており(平成25年6月に日米合同ワークショップを開催予定),具体化に向けて議論が進められていくことが期待される。
 さらに,アプリケーションの共同開発やスパコンを利用した共同研究などについても,欧米に限らずアジアの国々との連携も視野に入れて,その在り方について検討していくことが重要である。 

第4章 利用の在り方,人材育成等

1.利用の在り方

 計算科学技術により我が国の科学技術の一層の発展,産業競争力の強化を図っていくためには,計算科学技術インフラの整備・運用のみならず,利用手続の簡素化,使いやすいアプリケーションの提供,ユーザサポートなどの利用環境を整備し,利用者がより効果的・効率的に成果を創出できるようにするとともに,利用者の裾野の拡大を図っていくことが重要である。
 また,我が国の計算科学技術インフラの整備・運用を今後とも継続的に進めていくため,適切な利用料金の考え方についても検討していくことも必要である。特にスパコンの産業利用は,イノベーション創出等を通じた我が国の産業競争力の強化や計算科学技術の成果の社会への還元などの観点から重要であり,その利用の促進を図ることが重要である。
 そのためには,試験利用から本格利用まで,企業の利用段階にあわせた枠組みの構築,地理的バランスも含めた利用支援の実施,産業界が利用するアプリケーション環境の整備等が有効と考えられる。
 このように,産業利用も含めたスパコンの利用促進の方策については,今後のシステム整備の方向性や企業の利用状況も踏まえ,更に具体的な検討が必要である。

2.人材育成等

 我が国の計算科学技術を今後とも継続的に発展させていくためには,それを支える人材をいかに育成していくかが重要である。特に,スパコンアーキテクチャの並列化など技術の進展に伴い,それに対応できる人材の確保が困難になっており,そうした人材の育成が大きな課題になっている。
 また,人材育成の方策を検討する際には,育成する人材を

・ HPC技術の研究開発をする人材(計算機科学と計算科学そのものを研究対象としている人材)
・ HPC技術を利用する人材
・ 産業界で求められる人材

にカテゴライズし,それぞれの目的に応じた育成策を実施することが適当である。
 その際,アカデミアの研究者を育てるための人材育成とともに,企業の人間がアカデミアに戻って更に深い教育を受けられるような機会を作ることも重要である。
 また,特定の分野だけではなく,分野を越えて高度なアプリケーションを開発できる人材の育成が求められており,評価の在り方やキャリアパスも含めて,研究コミュニティとしても考えていく必要がある。
 こうしたことも踏まえ,今後の人材育成の方策について今後更に具体的な検討が必要である。

 さらに,今後とも計算科学技術の各施策を着実に進めていくためには,スパコンの開発・利用について国民の理解と支持が不可欠である。このため,国,スパコン運用組織,関係研究者は,積極的に広報や情報発信等のアウトリーチ活動を行い,スパコン利用や研究開発の状況,得られた成果や今後期待される成果等について適切に国民に説明していくことが必要である。

 この章で示した利用の在り方,人材育成などについては,本ワーキンググループで更に調査検討を進め,平成25年度末を目途にとりまとめる最終報告に反映していくこととする。

参考資料

参考1 ワーキンググループの設置について

 

HPCI計画推進委員会
今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループの設置について

平成24年2月10日
HPCI計画推進委員会

1.趣旨
 現在,文部科学省では,計算科学技術政策の柱として,京速コンピュータ「京」を中核とし,多様なユーザーニーズに応える革新的な計算環境を実現するHPCI計画を推進している。
 一方,計算科学技術を巡る国内外の情勢は変化してきている。来年度には,「京」を中核としたHPCIの共用が始まり,システム整備からシステム活用による成果の創出が求められる段階に入るとともに,スーパーコンピュータ技術の今後の進展も見据え,HPCIシステムを戦略的に高度化していくことも求められている。また,世界的には平成30年頃の実現を目指して,エクサスケールコンピューティングに向けた検討が本格化している。
 こうした状況を踏まえ,今後10年程度を見据え,我が国のHPCI計画の推進の在り方について必要事項を調査検討するために,HPCI計画推進委員会のもとに,今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループ(以下「ワーキンググループ」という。)を設置する。

2.調査検討事項
・ 国内外の計算科学技術の動向
・ HPCIに対する利用者のニーズの把握
・ HPCIの活用で実現する科学的・社会的成果
・ 我が国において将来必要となる計算資源量の把握
・ HPCIシステム構成の在り方
(HPCIを構成する計算機資源,ストレージ等の1(まる数字)配置についての地域特性,2(まる数字)規模特性,3(まる数字)利用に応えるシステム特性の在り方など)
・ HPCI全体のネットワークや利用体制の在り方
・ 今後の研究開発の在り方
・ 必要となるコスト,費用対効果

3.設置期間
 平成24年2月10日から調査事項の終了までとする。

 

参考2 ワーキンググループ委員一覧

 

HPCI計画推進委員会
今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループ委員一覧

主査  小柳義夫  神戸大学特命教授
   青木慎也  筑波大学計算科学研究センター教授
   秋山 泰  東京工業大学大学院情報理工学研究科教授
   天野吉和  富士通株式会社常勤監査役
   石川 裕  東京大学情報基盤センター長
   宇川 彰  筑波大学副学長・理事
   加藤千幸  東京大学生産技術研究所教授
   金田義行  海洋研究開発機構地震津波・防災研究プロジェクトリーダー
   小林広明  東北大学サイバーサイエンスセンター長
   坂内正夫  情報・システム研究機構理事/国立情報学研究所所長
   関口和一  日本経済新聞社論説委員兼産業部編集委員
   関口智嗣  産業技術総合研究所副研究統括
   善甫康成  法政大学情報科学部教授
   高田 章  旭硝子株式会社中央研究所特任研究員/スーパーコンピューティング技術産業応用協議会
   常行真司  東京大学大学院理学系研究科/物性研究所教授
   富田浩文  理化学研究所計算科学研究機構複合系気候科学研究チームチームリーダー
   中島 浩  京都大学学術情報メディアセンター長
   中村春木  大阪大学理事補佐/大阪大学蛋白質研究所筆頭副所長
   平尾公彦  理化学研究所計算科学研究機構長
   牧野淳一郎 東京工業大学大学院理工学研究科教授
   松尾亜紀子 慶應義塾大学理工学部教授
   松岡 聡  東京工業大学学術国際情報センター教授
   村上和彰  九州大学大学院システム情報科学研究院教授
   室井ちあし 気象庁予報部数値予報課数値予報班長
   渡邉國彦  海洋研究開発機構地球シミュレータセンター長

(50音順,平成24年4月18日現在)

参考3 ワーキンググループの検討経緯

 

ワーキンググループの検討経緯


第1回(平成24年4月18日(水曜日)17時~19時)
・ ワーキンググループの今後の進め方
・ HPCIに関わるこれまでの取組等
・ ヒアリング(東京大学物性研究所,海洋研究開発機構,スーパーコンピューティング技術産業応用協議会)
・ 意見交換

第2回(平成24年5月14日(月曜日)17時~19時)
・ 合同作業部会の報告
・ ヒアリング(東京工業大学,科学技術政策研究所)
・ 今後の調査・検討課題について

第3回(平成24年5月30日(水曜日)15時~17時)
・ ヒアリング(東京工業大学,日本電気株式会社,株式会社日立製作所,富士通株式会社)
・ 国内の計算資源について
・ 今後の調査・検討課題について

第4回(平成24年7月4日(水曜日)17時~19時)
・ ヒアリング(統計数理研究所,東京工業大学)
・ 意見交換(1.国内外の動向,2.計算科学技術の利用状況,今後の必要性)

第5回(平成24年8月10日(金曜日)10時~12時)
・ 将来のHPCIシステムのあり方の調査研究からの報告
 (システム設計研究チーム,アプリケーションソフトウエアチーム)
・ 意見交換(3.将来の我が国における計算科学技術システムの在り方)

第6回(平成24年9月11日(火曜日)17時~19時)
・ 意見交換(3.将来の我が国における計算科学技術システムの在り方)

第7回(平成24年10月10日(水曜日)17時~19時)
・ 計算資源の調査結果報告
・ 意見交換(4.計算科学技術に係る研究開発の方向性)

第8回(平成24年10月31日(水曜日)15時~17時)
・ 意見交換(4.計算科学技術に係る研究開発の方向性つづき)

第9回(平成24年11月21日(水曜日)15時~17時)
・ 意見交換(4.計算科学技術に係る研究開発の方向性つづき,5.利用の在り方(利用環境,産業利用促進等))

第10回(平成24年12月6日(木曜日)17時~19時)
・ 意見交換(5.利用の在り方(利用環境,産業利用促進等)つづき,6.その他)
・ 論点整理(素案)検討

第11回(平成25年1月25日(金曜日)17時~19時)
・ 将来の我が国における計算科学技術システムの在り方について(3.1(ローマ数字).(1)(2),3.2(ローマ数字).(1)及び(2)の今後の検討課題) など

第12回(平成25年2月18日(月曜日)17時~19時)
・ 論点整理案について
・ アプリケーション開発の在り方について(4.3(ローマ数字).(1)の今後の検討課題)

第13回(平成25年3月11日(月曜日)17時~19時)
・ 「将来のHPCIシステムのあり方の調査研究」のアプリチームから,サイエンスロードマップの素案についてヒアリング
・ HPCIコンソーシアムの提言について

第14回(平成25年3月27日(水曜日)16時~19時)
・ 「将来のHPCIシステムのあり方の調査研究」のシステム設計研究に関するヒアリング
・ リーディングマシンの研究開発について(4.2(ローマ数字).(1)~(4)の今後の検討課題)
・ 中間報告(案)の取りまとめに向けた意見交換

第15回(平成25年4月19日(金曜日)10時~12時)
・ 「京」の事後評価について
・ 中間報告案の取りまとめに向けた検討

第16回(平成25年5月8日(水曜日)17時~19時)(予定)
・ 中間報告(案)の取りまとめ

お問合せ先

研究振興局情報課計算科学技術推進室

電話番号:03-6734-4275
メールアドレス:hpci-con@mext.go.jp

(研究振興局情報課計算科学技術推進室)