東北メディカル・メガバンク計画検討会(第4回) 議事録

1.日時

平成24年5月15日(火曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 提言案について
  2. その他

4.出席者

委員

豊島主査、赤林委員、嘉数委員、春日委員、門脇委員、金岡委員、清原委員、久保委員、河野委員、小原委員、末松委員、高井委員、高木委員、中釜委員、成宮委員

文部科学省

吉田研究振興局長、田中総括審議官、森本大臣官房審議官(研究振興局担当)、板倉ライフサイエンス課長、岡村研究振興戦略官、鈴木先端医科学研究企画官、釜井ライフサイエンス課長補佐、根津ライフサイエンス課係長

オブザーバー

東北大学:山本東北MM機構長、五十嵐教授
岩手医科大学:祖父江副学長、小林医学部長
宮城県:佐々木保健福祉部長

5.議事録

 東北メディカル・メガバンク計画検討会(第4回)

平成24年5月15日

【豊島主査】  定刻となりましたので、ただいまから第4回東北メディカル・メガバンク計画検討会を開会させていただきます。
 本日はご多忙の中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 本日は、桐野委員、祖父江委員、松本委員からご欠席とのご連絡をいただいております。また、岡部委員からご欠席とのご連絡をいただいておりますが、宮城県からはオブザーバーとして佐々木保健福祉部次長にご出席いただいております。
 それでは、本日の議事を進めるに当たり、議事及び配布資料の確認をお願いいたします。

【釜井ライフサイエンス課長補佐】  本日の議事についてですが、議事次第にありますとおり、提言案について、その他です。本日の資料は、資料1、資料2、参考資料1から参考資料7でございます。落丁等がございましたら、事務局にお申しつけください。
 以上でございます。

【豊島主査】  ありがとうございます。よろしゅうございますか。
 それでは、ここで5月10日に開催されました国家戦略会議において、文部科学省から東北メディカル・メガバンク計画に関する資料が提出されました。文部科学大臣が説明されたとのことですので、議事に先立ちまして、その資料の概要について、事務局からご説明をお願いします。

【板倉ライフサイエンス課長】  参考資料1と書いてあります横長の資料をごらんいただければと思います。5月10日の木曜日に野田総理が議長を務めております国家戦略会議が開催されまして、その場の議題の一つとして、医療イノベーションの推進という項目がございました。
 その医療イノベーションの中で重要な取り組みとして、この東北メディカル・メガバンク計画の進捗状況について報告せよという指示がございまして、この参考資料1を用いまして、平野文部科学大臣からご説明を行っているところでございます。
 この参考資料1は、1ページ目が概要とこれまでの経緯、2ページ目が具体的な計画の概要と地域への医療の貢献、次世代医療の実現といった成果を目指すところについて記載をしてございます。3ページ目につきまして、このメガバンク計画の現在の進捗状況のご説明をしておりまして、上のほうから数えて3つ目で、メディカル・メガバンク計画検討会を設置して、検討しているということにつきましてもご紹介をしたところでございます。この戦略会議の委員の方々からは、今、この事業は次世代につながる事業であるので、オールジャパンでしっかり取り組んでほしい、しっかり行うべしという意見があったと聞いてございます。
 詳しい内容につきまして、また近々、国家戦略会議のホームページにおいて議事録等々も公開されることになるかと思いますので、そちらをご参照いただければと思います。
 以上でございます。

【豊島主査】  何かご質問、コメントございますか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 まず、議事(1)の提言案についてですが、今までのご議論や委員から事務局へ寄せられたご意見を踏まえて提言の案を作成いたしました。本日は、この提言の案につきまして議論していただきたいと思いますが、分量が非常に多いので、3つの部分に分けて議論をしていきたいと考えております。
 まずは1ページの1.はじめにから、5ページの2.(2)推進体制についてまでを議論したいと存じます。
 では、この箇所について事務局からご説明をお願いします。

【釜井ライフサイエンス課長補佐】  それでは、資料1に基づきまして説明させていただきます。1枚めくっていただきまして、左側が目次となっておりまして、最初の部分ではじめにと計画全体についてということで、1ページ目をごらんになっていただいて、順に読み上げをさせていただきます。

1. はじめに

 「東北メディカル・メガバンク計画」は、東日本大震災で未曾有の被害を受けた被災地において、総務省、厚生労働省の支援によって構築される地域医療情報連携基盤と密接に連携しながら、被災地の方々の健康・診療・ゲノム等の情報を生体試料と関連させたバイオバンクを構築し、創薬研究や個別化医療の基盤を形成、将来的に得られる成果を被災地の住民の方々に還元することを目指す事業であり、平成23年6月の東日本大震災復興構想会議等において、村井宮城県知事から政府に対して要望があったものである。その結果、被災地の復興に必要な事業として「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成23年7月29日東日本大震災復興対策本部)、「日本再生の基本戦略」(平成23年12月24日閣議決定)に掲げられた。
 本事業を開始するにあたり、東北大学、岩手医科大学が実施する被災地域を対象とした15万人規模の住民ゲノムコホート、ゲノム情報等の解析の実施計画案について検討し、文部科学省や実施機関等へ提言を行うことを目的として、文部科学省に「東北メディカル・メガバンク計画検討会」を設置した。本検討会は、平成24年4月、5月に計5回、これは予定でございますけれども、開催され、東北大学、岩手医科大学等の実施主体の実施計画案についてヒアリングした後、その内容について検討、評価を行い、今後実施計画の更なる具体化を進める上で今後留意すべき事項について、提言としてとりまとめた。
 また、解析研究等の成果として実現する個々人の特質に対応した個別化医療等の次世代医療の効果は、東北地方に留まらず、我が国全体に波及することが期待される。そのため、文部科学省をはじめとする関係者が、我が国としての次世代医療体制を構築するために研究開発を推進していく上で、今後検討を継続するべき事項についても、『将来的な検討が必要な課題』として、併せて記載している。
 今般、未曾有の大震災により、我が国は甚大な被害を受けるとともに、数多くの尊い人命が失われ、未だ仮設住宅での避難生活を余儀なくされている方々もいるという痛ましい経験をすることになった。本事業では、被災地への医療関係人材の派遣、健康調査の結果の回付による健康管理への貢献により、被災地の復興に貢献することが喫緊の課題である。また、地震・津波により甚大な災害を受けた地域を対象とし、その影響を本計画のごとく大規模に追跡するコホート調査は世界でも類を見ない取組であり、特色あるプラットフォームが他地域に先駆けて整備されることで、我が国における将来的な次世代医療の実現や新産業創出のために貢献しうるものである。この他にも、本事業の実施を通じて、次世代医療の実現に向けた倫理的な問題の検討、ゲノムメディカルコーディネーターやバイオインフォマティシャン等の人材育成等の副次的効果も期待される。
 東北大学、岩手医科大学等の実施機関や文部科学省は、本事業の持つ意義と担うべき大きな役割を自覚しつつ、本提言の内容を活かしながら我が国の叡智を結集して実施計画を具体化し、未曾有の災害を経験された被災地の方々に最大限の敬意と配慮を払って着実に実行することによって、本事業の最大の目的である被災地の復興と医療イノベーションを牽引する確固たる基盤形成の実現に貢献することを、強く期待する。

 3ページ目、2. 東北メディカル・メガバンク計画全体について

(1)医療計画について
 四角囲いのところを読ませていただきます。本事業では、被災地に医療関係人材を派遣して地域医療の復興に貢献するとともに、15万人規模の地域住民コホートと三世代コホートを形成し、そこで得られる生体試料、健康情報、診療情報等を収集してバイオバンクを構築する。また、ゲノム情報、診療情報等を解析することで、個別化医療等の次世代医療に結びつく成果を創出する。さらに、得られた生体試料や解析成果を匿名化等の適切な処理を施した上で外部に提供することや、コホート調査や解析研究を行うための多様な人材を育成することも本事業の実施内容に含まれる。
 本事業は、大きく分けて以下の2段階に分けられる。
 丸1、医療関係人材を被災地に派遣し、被災地を中心とした地域住民の健康調査を実施し、その結果を回付することで、健康管理に貢献する。それと併せて、地域医療情報連携基盤と連携しつつ、被災地を主な対象にしてゲノム情報を含む地域住民コホートと三世代コホートを形成する。そこで得られた生体試料や生体情報を保管するバイオバンクを構築し、ゲノム情報を解析する(第1段階)。
 丸2、数年後(5年後を目途に)、我が国で実施される他のコホートと連携しつつ、国内外機関への公平な分配とガバナンスの確保された大規模共同研究へと発展させ、ゲノム情報を含めた生体情報や健康情報等の網羅的な基盤情報を創出・共有する。これを用いて被災地住民を対象とした解析研究等を進めることで、革新的な予防法・個別化医療等の次世代医療を被災地住民に提供することを目指す(第2段階)。
 被災地におけるコホート調査は、宮城県内を東北大学が、岩手県内を岩手医科大学が実施主体となって行うが、得られた生体試料は東北大学内のバイオバンクに集約される。解析研究は、それぞれの機関で役割分担した上で推進する。

 四角囲いの後からですが、

本事業は様々な困難が予想されるが、その成果は被災地の復興や次世代医療の実現に向けて大きく貢献するものであり、東北大学を中心とした体制の元、全力で取り組むことを期待する。その他、事業計画を策定するに当たって留意すべき点として、以下のような事項が挙げられる。

 1枚めくっていただきまして4ページ目です。

〈被災地の復興への貢献〉
 本事業は、次世代医療に貢献する国家的プロジェクトであるが、千年に一度とも言われる大震災に見舞われた被災地の地域医療の再生・復興に不可欠な医療関係人材の確保や、継続的な健康調査等による住民の健康管理等、震災からの復興に貢献する、という目的を持つことを踏まえた上で事業計画を策定すべきである。

〈事業の長期的な運営〉
 コホート事業は年月をかけて行って初めて成果の出るものであり、健康調査を継続して行うことで価値が高まっていく。東北大学、岩手医科大学においては、本事業を開始するに当たり、10年間の事業期間のみならず、長期間の運営も視野に入れた検討を行うべきである。

(2)推進体制
 東北大学においては、「東北メディカル・メガバンク機構」が事業全体の運営を行う。また、事業に関するアクションプランを作成し、本事業を推進する段階において、課題ごとに有識者を集めたワーキンググループを立ち上げて推進方策を検討するとともに、同機構と独立して外部評価委員会、倫理委員会を設置する。岩手医科大学においては、「いわて東北メディカル・メガバンク機構(仮称)」を今後設置し、岩手県内の事業の運営を行う。
 本事業は、大規模かつ長期に渡るものであるため、推進体制については、長期的な視点も含め、しっかりとした体制を構築すべきである。また、先行して実施されている様々なコホート調査やゲノム解析事業の知見を活用するために、課題ごとに有識者を集めたワーキンググループの設置は望ましいことと考えられる。その他、推進体制を構築するに当たって留意すべき点として、以下のような事項が挙げられる。

 5ページ目、

〈事業全体の推進体制〉
 事業全体における東北大学と岩手医科大学の関係、またオールジャパンの研究機関がどのように関わっていくのかについて、検討を進めた上で詳細を対外的に明確化していくべきである。

〈ワーキンググループの設置〉
 本事業を推進するに当たっては、我が国で先行して実施されているコホート調査の経験に基づく知恵が有効に活用されて、オールジャパンとして知が循環・普及されていくような仕組みや、真に関係する分野の専門家が協力できる体制を構築し、事業内に入れ込むことが必要不可欠であり、推進段階からではなく計画段階から、先行して実施されているゲノムコホートやゲノム情報等解析研究の関係者が、具体的な計画を検討するワーキンググループに参加するような形を早急に具体化していくべきである。

〈倫理委員会、試料等配布審査会〉
 平成15年度に開始された「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」においては、倫理問題を検討するためのELSI委員会や、国のプロジェクトとして外部への生体試料配布について、公平性を保ち、組織としての透明性を確保するための試料等配布審査会について、当該プロジェクトにおいてバイオバンクジャパンとは独立した組織として設置されている。本事業における、実施機関の倫理審査委員会とは別途設置される倫理的な課題を検討する委員会や生体試料の配布のための審査会についても、このような取組を行うことが適当ではないか。

 とりあえず、ここまででとめさせていただきます。

【豊島主査】  ありがとうございました。
 では、今の箇所について何かご意見がありましたら、お伺いさせていただきます。どうぞ。

【河野委員】  このワーキンググループとか、外部の評価委員会とかが書かれてはいるのですが、特に4ページ目に書いてあるような地域医療の問題に対するワーキングについての言及がないのですが、その辺はいかがでしょうか。

【板倉ライフサイエンス課長】  これは前々回に東北大学からご説明をさせていただいたかと思いますが、一応そういうワーキングも今設置をしているところでございます。

【河野委員】  それは承知しているのですが、この中にワーキングとして大きな項目として書かれているところに触れてないものですから、そこはワーキンググループの設置の中の一つとして、地域医療問題というのは明記すべきじゃないかと思うのですが。

【板倉ライフサイエンス課長】  わかりました。ご意見をいただきまして、検討させていただきたいと思います。

【豊島主査】  ほかにいかがでございましょうか。はい、どうぞ。

【久保委員】  5ページ目の倫理委員会、試料等配布審査会の件ですが、オーダーメイド医療の実現化プロジェクトは事例として申し上げただけで、前々回お話しした目的は、このプロジェクトは国家プロジェクトであって、公平性ですとか、組織としての透明性を保つために、上位に組織が必要だということを申し上げたにすぎませんので、このあたりの文章についてはご検討いただければと思います。
 独立した組織であるということと、もう一つは、公平性とか透明性を保つために第三者を入れた組織をつくっていただきたい。そこが公平性・透明性を保つための担保になると思いますので、第三者を入れた組織をつくっていただくということを入れていただければと思います。

【豊島主査】  よろしゅうございますか。
 今の趣旨は、括弧でオーダーメイド医療実現化プロジェクトというのをわざわざ入れなくてもいいということですね。

【久保委員】  そうです。この文章そのままですと、オーダーメイドがやっているのでまねしたらという文章にとられかねませんので、誤解を生むような文章は避けていただければと思います。

【豊島主査】  それを抜くかわりに、第三者という言葉を入れるということですね。

【久保委員】  そういう意味です。

【豊島主査】  ほかにいかがでしょうか。今までいただいたご議論の趣旨は大体入れていただいていると思いますけれども、よろしゅうございますか。

【小原委員】  ちょっととんちんかんかもしれません。「はじめに」の2ページ目の上から1行目で、「バイオインフォマティシャン等の人材育成等の副次的効果も期待される」というくだりがあって、確かに人材ですから、そうなのですが、前の倫理的な問題とかメディカルコーディネーターは当然ですが、バイオインフォマティシャンのこれがないと、後ろのほうの記述が具体的にこれをどうするかというのがちょっと薄いような気がするので、これは副次的と言ってしまっていいのですかね。副次的なところも当然あるけれども、これがないとそもそもうまくいかなくて、大変心配になるところです。副次的というのは、当然そういう部分はありますけれども、これがないと進まないので、ちょっと気になったのですが、どうでしょうか。

【豊島主査】  ということは、副次的と言わずに直接効果があるというふうに。

【小原委員】  そう言ったほうがむしろいいのではないですか。

【豊島主査】  どうぞ。

【成宮委員】  先ほど外部の人を委員に入れると。多分おっしゃっているのは、東北大学、岩手医科大学の中の推進体制についてはここに提示していただいたのですが、全体として運営する、推進をするのに外部の委員を入れた形をとっていただきたいということが出たと思うので、そのことをおっしゃっているのかと思います。

【豊島主査】  いかがでしょう。

【板倉ライフサイエンス課長】  通常、国のプロジェクトの場合には推進委員会をつくらせていただきますので、東北大学は東北大学で、しっかりとガバナンスを行っていただくための体制は必要だと思いますが、このプロジェクトの推進委員会もこの文部科学省に設置をいたしまして、全体の推進、評価も進めていきたいと考えております。

【豊島主査】  よろしゅうございますか。

【成宮委員】  はい。

【豊島主査】  それでは、次に6ページから13ページまでの3.各論、(1)健康調査、コホート調査、バイオバンク構築について、各項を議論したいと思います。
 では、この箇所についてご説明をお願いいたします。

【釜井ライフサイエンス課長補佐】  それでは、各論のところの(1)健康調査、コホート調査、バイオバンク構築について読み上げさせていただきます。6ページ目をごらんください。
 実施機関の取組内容の概要ですが、

地域住民コホートについては、実施機関から医師、ゲノムメディカルリサーチコーディネーター等を地域医療機関、保健所、支援センター等に派遣し、対象となる地方自治体で実施する特定健診と連動した形、あるいはボランティアベースで協力者をリクルートし、詳細な健診、採血等を実施する。また、三世代コホートについては、産科医療機関を受診した妊婦に対してリクルートを実施し、妊婦健診を活用して採血、健康情報の収集等を行う。父親、祖父母については、産科医療機関を訪問した際にリクルートや採血を行い、詳細な健診は対象地域の支援センターで別途行う。なお、健診の結果は協力者に回付し、生活指導、こころのケア、受診勧奨を併せて行うことで健康増進に貢献する。
 地域住民コホートの参加者については、半年~1年毎に協力者に質問票を送付するとともに、4年に1回程度、地方自治体で実施する特定健診等と連携して協力者に対して詳細な健診を実施する。三世代コホートの子どもについては、半年毎に協力者に発達の状況や疾患罹患状況を聞くための質問票を送付するとともに、1歳6ヶ月児健診、3歳児健診、学校保健健診時に詳細な健診を追加実施する。
 さらに、医療情報のICT化、ネットワーク化を行う地域医療情報連携基盤と連携して、効率的に診療情報を収集する体制を構築する。
 7万人規模の三世代コホートを含む15万人規模の前向きゲノムコホートは類を見ない取組であり、世界でも最先端のバイオバンクの構築が期待できることから、着実な実行が求められる。その一方で、コホート調査を今後実施していくために、まずは地域医療の安定が必須となることや、コホート調査の実施には地域住民や地方自治体の理解が必要不可欠であり、特に本事業は被災地を対象地域としていることに十分留意しなければならない。そういった意味で、健康調査の結果が協力者の方に回付され、また健康管理に関する様々な取組が行われることは評価できる。このような観点から、健康調査、コホート調査を実施する際に留意すべき点として、以下のような事項が挙げられる。

〈地域医療の復興との連携〉
 被災地における直近の目標は、地域医療の復興であり、対象地域の医療体制が十分構築できていなければ、本計画について住民の方の信頼を得られないため協力者の確保はおぼつかず、仮に協力していただける住民の方がいたとしても、一定の質が担保された健康情報、診療情報等を長期間追跡することも困難である。今まで、仮設診療所の設置や後方支援病院の協力等により、入院・外来の診療が提供されており、国の財政支援によって被災地の住民の方の健康を守るための様々な施策が実施されてきたが、本事業の実施に当たっても、まず対象地域の医療の安定や住民の方に安心をもたらす環境を醸成した上で、推進されるべきである。

〈地方自治体の協力〉
 コホート調査は対象地域の地方自治体に相当の負担をかけることになるため、調査の対象となる地方自治体の協力が必要不可欠である。長浜コホートでは、対象地域の長浜市と実施機関の京都大学の間で協定書を作成し、市議会での議論を経て条例も策定しており、こういった地方自治体との連携事例を参考にして地域での同意を形成することが重要である。
 地域の医療を充実させて信頼を得るとともに、その地方自治体の実態を把握し、調査の担い手となる保健師等の協力を得ることが必須と考えられる。

〈医療情報のICT化との連携〉
 10万人以上の被災地の住民の方の健康情報を精度よく追跡するためには、医療情報のICT化が必要であり、総務省、厚労省の支援によって実施される医療情報のICT化との協力体制についてさらに具体化していくべきである。

〈コホート事業の目的の明確化と制度設計〉
 コホート事業の目的について明確化した上で、それぞれのコホートでどれだけの検体を収集し、そのうち何%の検体で、どの疾患を対象としてどのような戦略でゲノム解析を実施するかといった制度設計について具体化する必要がある。

 8ページ目に移っていただいて、三世代コホートについて、

計画が真に妥当なものとなるよう、統計遺伝学等の専門家の意見も取り入れつつ検討し、具体化していくべきである。

〈コホート事業の進捗管理〉
 本事業で実施されるコホート事業は大規模なものであるため、事業を推進していく上で必須となる数をあらかじめ決定し、その上で進捗管理をしっかりと行うことが必要である。

〈他のコホート調査との連携〉
 本事業を実施するに当たっては、2.(2)推進体制でも述べたように、先行して実施されているコホート調査の知見の活用や、そこで得られた成果の検証を行うことが重要である。それらを可能とするためには、事前に先行して実施されているコホート調査との間で、調査項目の共通化等を行う必要があるため、他のコホート調査の関係者が加わったワーキンググループでの議論等を通じて調整すべきである。

〈住民の方の健康管理への貢献〉
 本事業は被災地を対象地域とするため、コホート調査として実施する健康診断や診療情報等の追跡によって、多くの被災地住民の方の健康を親身になって長期間にわたって見守り、疾患の発症またはその兆候に気づいたら速やかに何らかの手立てを行うことで、被災地の住民の方の健康管理に貢献し、信頼を得ていくべきである。
 被災地の住民の方の健康管理に貢献するための手立ても一つの環境要因としてとらえて評価し、コホート研究としての有意義な成果を創出することが可能となるような手法を検討していくべきである。

〈震災影響を検証するためのコホート調査〉
 環境要因が震災の影響なのか、それとも普遍的なものなのかを正しく検証するためにも、震災による被害を受けていない地域における検証コホートを立ち上げるべきである。また、それぞれの地域の特性を活かした比較を行うことも検討していくべきである。

 9ページ目、

〈環境要因に関するデータ収集の方法〉
 環境要因に関するデータについて、科学的な検証に耐えうる収集方法について検討するワーキンググループを設置することも検討していくべきである。
 疾病発症後の予後を決定する遺伝因子並びに環境因子を捕捉するために、疾患発症後の追跡を行うための手法を検討していくべきである。

イ 生命倫理、インフォームドコンセント
 インフォームドコンセントについては、将来想定され得る提供や研究を含む同意取得、個別化医療等も含みうるゲノム情報等の利用に対する同意取得、医療情報ネットワークを通じた診療情報収集に対する同意取得等の考え方について、先行して実施されているコホートの事例を踏まえて早急に暫定版を作成し、パイロットスタディーを通じて見直した後、確定する。また、個人情報、生体試料の保存方法、対応表の管理、遺伝情報の開示等については、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の内容も踏まえつつ、先行して実施されているコホート事業の例も参考にしながら具体化する。
 なお、東北大学と岩手医科大学は、同一のインフォームドコンセントを取得する予定である。
 最終的なインフォームドコンセントは、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の内容を踏まえつつ、パイロットスタディーの結果も踏まえて具体化される予定だが、本格的な調査が開始された後にインフォームドコンセントを変更することは困難である一方、収集された生体試料や各種情報を用いた研究内容やその実施機関等についてはインフォームドコンセントの内容に大きく左右されるため、本格的なインフォームドコンセントについては、先行しているコホート調査の事例を参考にしつつ、十分に検討された上で作成されるべきである。このような観点から、生命倫理、インフォームドコンセントに関して留意すべき点として、以下のような事項が挙げられる。

〈各種指針の遵守〉
 本事業を実施するにあたっては、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、「疫学研究に関する指針」等、関係する指針を遵守する必要がある。

〈倫理的課題を扱うワーキンググループの必要性〉
 インフォームドコンセントの取得方法といった倫理に関する課題については、先行して実施されているコホートの知見を活用するため、ワーキンググループを設置し、専門家の議論も踏まえた上で具体的な運用を図るためのルールを決定していくべきである。

〈将来的な研究利用に対する同意等〉
 我が国の将来における個別化医療等の実現に極めて重要な役割を担う将来的な研究利用に対する同意の考え方については、我が国のスタンスを示すひな形を作成するといった心構えで取り組んでほしい。
 得られた生体試料やゲノム情報等は我が国の医療の推進に貴重な財産となるべきものであるため、他のコホート事業や研究機関との連携を可能とするよう、民間企業を含む幅広い機関が研究に活用できるようなインフォームドコンセントの取得について検討していくべきである。

〈実質的な同意取得〉
 住民の方からインフォームドコンセントを取得する際、強制力が働かないような適切な説明方法等、表から見えない倫理の部分についても十分に留意し、実質的な同意取得が行われるようにすることが必要である。

ウ 住民への広報、リクルートに当たっての留意点
 本事業の目的、意義、成果等を対象地域の住民の方に幅広く理解いただくため、サイエンスコミュニケーション能力を持つ人材を活用して、対象地域においてシンポジウム・説明会等の実施、各種印刷物の発行・頒布、映像の作成・供覧、ウェブサイトの構築と運用、メディアと協力した周知活動、展示会等への出展、各種ソーシャルメディアの運用等を行う。また、地方自治体や地方医療機関等とも連携し、イベントにも相乗りや出展等、一体的な活動を行う。
 医療系スタッフは、採用後、必要な教育、研修を受けた後、地域医療の支援、コホート調査等に従事する。
 本事業を実施するに当たって、対象地域の住民の方に本事業の持つ様々な意義を理解いただくことは重要な意味を持つため、実施機関は、対象地域への広報活動に積極的に取り組むべきである。そうした観点から、実施機関が予定している地方自治体や地方医療機関等との連携、サイエンスコミュニケーション能力を持つ人材の活用は評価できる。一方、現場で住民の方に説明し、同意取得を行う現場の医療系スタッフへの教育についても同様に重要であり、取組内容を早急に具体化することが求められる。このような観点から、住民への広報、リクルートを行うに当たっての留意点として、以下のような事項が挙げられる。

〈住民の方への本事業の意義の広報〉
 本事業は適切な同意を取得した上でゲノム情報も併せて収集するゲノムコホートであることから、ゲノム情報の持つ意味といった基本的なことから、それらの情報の解析がもたらす被災地の復興、我が国の次世代医療の実現への貢献まで、本事業が内包する多様な意義についても説明を行い、理解をしていただきながら推進していくべきである。
 ゲノムコホートを実施することで将来的なことも含めて何が実現するのかについて、わかりやすく伝えるような広報戦略を考える必要がある。

〈現場のメディカルスタッフへの教育〉
 本事業が内包する多様な意義について、実際に現場で住民の方に接する医師・看護師等のメディカルスタッフが、住民の方に本事業の持つ意義について自信を持って説明することが可能となるよう、メディカルスタッフに事前に十分な教育を行い、理解いただくことが非常に重要である。
 ゲノムコホートの持つ意義を理解したメディカルスタッフは、将来の地域医療を支える貴重な人材にもなり、そういった人材を育成できるように本事業を推進していくべきである。
 メディカルスタッフへの教育の具体的な実施方策を早急に検討し、提示すべきである。

 12ページ目、

〈サイエンスコミュニケーション能力のある人材の活用〉
 このような取組の実施に当たっては、先行して実施されているゲノムコホートの例も大いに参考にしつつ、サイエンスコミュニケーション能力のある人材を活用して実施していくことが必要である。

エ 生体試料・生体情報の取り扱い
 東北大学のバイオバンクに収集された生体試料と関連情報は、試料分配審査委員会で研究計画等の審査を経て、匿名化等の適切な処理を経た上で原則として提供される。試料分配審査委員会は実施機関を中心として有識者によって構成される。また、岩手医科大学にバックアップ施設を設置することも検討する。
 本事業で収集される生体試料・生体情報については、被災地の復興につながる研究開発を推進する上で貴重な資源となるのみならず、我が国の次世代医療を目指す研究を推進する上で基盤的な役割を果たすことも期待されているため、実施機関が予定している公平な審査を経た上で分配される体制は望ましいと考えられる。その他、生体試料、生体情報の取り扱いに関する留意点として、以下のような事項が挙げられる。

〈生体試料の活用方法〉
 生体試料は限りのある貴重な資源であることから、様々な活用法について十分に時間をかけて検討する必要がある。

〈先行するバイオバンク事業との連携〉
 先行するバイオバンク事業が保管している生体試料・生体情報と本事業で収集される生体試料・生体情報について、提供者のインフォームドコンセントの内容等に十分留意した上で相互利用や補完性を担保するシステム構築の検討を行うべきである。

〈バックアップ体制〉
 本事業で収集される生体資料・生体情報といった貴重な資源について、地震、津波等の災害で失われないためのバックアップ体制を検討し、具体化すべきである。

 とりあえず以上でございます。

【豊島主査】  ありがとうございます。
 それでは、どうぞご質問、ご意見をお願いいたします。

【赤林委員】  今、お読みいただいたところの全体ですが、倫理あるいはインフォームドコンセント、広報のところとかは大変よく書いていただいていると思います。よくという意味は、たくさん書いてもらってありがたいという意味であります。倫理とかインフォームドコンセントというのは、書いたり言ったりするのは大変簡単なことですが、なかなか行うのが難しいという部分があると思います。
 インフォームドコンセントを例にとれば、この文面を見ますと、包括同意の問題を正面から取り組むことになるわけであります。日本の包括同意についてのスタンスをこれでつくらなければいけなくなったわけでありまして、早急に解決するべき重要な問題が明らかになったという点で、この検討会は大変意味があったと思っております。こういう点を反映させていただきたいと思います。
 以上です。

【豊島主査】  いかがでございましょうか。

【成宮委員】  ここに地方自治体等々の連携について書いてございます。これは非常に大切なことだと思っております。特に現場の地方自治体の一番末端で、このコホートに参加していただく住民の方との間の折衝に当たっていただく方、この方たちは非常に大切なので、特にこれはこの後、ゲノム解析とか、試料の解析が出てまいりますけれども、試料の解析、ゲノムの解析というのは健康状態の調査があってのことでございますので、そこを調査してくださる方に対して十分な説明と納得がいかれるようにしていただきたいと思います。
 最初にあります実施機関の取組内容の概要というところに質問票というのが出てまいりますけれども、この質問票のフォーマットと項目というのはちゃんと整備していただかないと、最終的にゲノム、あるいはそのほかのオミックス情報との照合をしたときに意味をなさないということがございます。先行するコホート事業では、この質問票というのは例えば100枚程度の量がございます。ですから、ただ単に健康調査をした、普通の健診をしたような情報量とは全然違うわけですし、それは要するに100枚のものを半年ごとにやるというのは大変なことだと思いますので、よほどの納得が得られないと、なかなかやっていただけないと思います。
 特に東北大学の計画している三世代コホートは、赤ちゃんコホートも入るわけでございます。赤ちゃんコホートが入りますと、これは20年にわたって追跡調査をしなくちゃいけない。それを最初あらかじめ設定した質問票に沿って、20年間半年ごと、あるいは1年ごとにそれを調査していくということはなかなか大変だと思いますので、それのスタートに当たりましては、地方自治体の了承をとって、協力体制を構築していただいておやりいただきたいと思います。大変な難事業でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【豊島主査】  いかがでございましょうか。調査の継続というのは、疾患コホートの場合はまだ比較的楽ですが、こういう正常な方のコホートの場合は非常に大変なので、その辺よろしくお願いします。それで、そのことに関しては、これから先も地方自治体の協力が欠かせないものになりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 よろしゅうございますか。
 それでは、続きまして、13ページの(2)ゲノム情報・診療情報等の集約、解析研究から、最後の4.将来的に検討が必要となる課題を議論したいと思います。この箇所については、事務局からまずご説明をお願いいたします。

【釜井ライフサイエンス課長補佐】  それでは、3の(2)、13ページ目から最後まで読み上げさせていただきます。

(2)ゲノム情報・診療情報等の集約、解析研究

ア 解析研究の手法
 東北大学においては、震災の影響を受けて今後被災地で増加することが懸念され、発生頻度の高いPTSD、うつ病等の精神疾患、感染症等について、健康調査の結果やゲノム情報等の解析を行い、それらの疾患に関連する環境要因や遺伝要因を探索するとともに、発症の寄与度を決定する。また、数千人の全ゲノムを解読し、遺伝子多型リストを作成して、日本人にどのような頻度でどのような遺伝子多型が存在するかを明らかにした上で他の研究機関と共有することで、疾患関連遺伝子の抽出に対する対象配列とすることが可能となり、我が国における次世代医療を実現する研究を推進するための基盤を構築する。さらに、子どもへの健康影響が大きく発生頻度の高いアトピー性皮膚炎、ADHD、喘息、自閉症の発症が予測される参加者を中心としたゲノム情報等の解析を行い、それらの疾患に関する遺伝子を探索するとともに、曝露された環境要因も併せて解析することで、それらの発症への寄与度を決定していく。さらに、成長に伴って遺伝子発現が変化することを考慮に入れ、小児疾患を対象に、疾患関連遺伝子、環境要因との相互作用によって惹き起こされる血清中に分泌されるタンパク質等の変化をゲノム、トランスクリプトームと併せて解析することで、診断マーカーの特定等を行い、次世代医療の実現に資する成果を創出することを目指す。岩手医科大学においては、個人レベルのストレス応答性とゲノム情報との関連を調査する。
 本事業は、被災地を対象とした大規模な三世代コホートを含む前向きゲノムコホートであり、今まで実施されてきたコホートにはない特徴をいくつも含んでいるため、それらを最大限に活かせるような戦略をもって解析研究を実施していくことが望まれる。その中でも、実施機関が予定している被災地特有の疾患や小児期に発症する疾患に関するゲノム情報等の大規模な解析は今まであまり取り組まれてこなかったテーマであり、ゲノム情報等を追跡して得られる診療情報、健康情報と併せて解析されることで何らかの成果が創出されることが期待できる。一方で、我が国では様々なゲノム情報等の解析研究が実施されており、先行して実施されているこれらの事例と連携しながら推進していくことが求められる。このような観点から、解析研究の手法に関する留意点として、以下のような事項が挙げられる。

〈解析技術の向上、新たな知見の発見への対応〉
 今後、短期的にシーケンサーの技術も向上していくことが予想されており、さらに、既に実施された全ゲノムシーケンスの結果から、SNV以外の多型もかなり高頻度で存在することが判明しているため、今後の技術革新、新たな知見の発見の可能性を考慮にいれながら、解析研究に関する計画を検討すべきである。

〈生物学的な研究の必要性〉
 本事業で解析対象として挙げられている疾患は環境要因の影響が大きいと考えられるものが多いが、まだ環境要因の具体的な検証システムが確立されているとは言い難いため、コホート調査による観察研究だけでなく、環境要因が疾患の発症機序にどうかかわるかについて生物学的に解析する体制も構築すべきである。
 生物学的な研究を実施する際、対象が広範になりすぎないように、評価体制の構築等を通じて「選択と集中」の観点から生物学的な手法で取り組む対象疾患を優先順位付けし、実施順を明確にすべきである。

〈オミックス研究〉
 オミックス研究については、様々な研究内容が実施内容として挙げられているが、その手法はまだ確立されているとは言えず、データも複雑であることが想定されるため、「選択と集中」の観点から優先順位をつけて取り組むべき。また、オミックス研究に関する手法は我が国の様々な研究機関ですでに開発されているものもあり、本事業の実施内容がそういった基礎技術、技術基盤の発展に貢献するようなものとなるように留意すべきである。

〈コホート調査の規模に応じた研究内容の検討〉
 本事業は次世代医療の実現を目指す革新的な内容であり、大変挑戦的な内容であるため、目標を達成するために実施機関である東北大学、岩手医科大学が最大限の努力を払うことが大前提であるが、仮にコホート調査の規模が目標を達成できなくても科学技術的に意義のある成果を創出するため、目標に満たないデータ量でも、その段階に応じた解析を行うための検討も併せて行うことも検討すべきである。

イ 解析結果の協力者への回付
 ゲノム情報等の解析結果の協力者への回付については、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の改正内容も踏まえつつ、先行して実施されているコホート事業の例も参考にしながら具体化する。
 ゲノム情報に関する解析結果の協力者への回付については、疾患の兆候を検知した場合に協力者に情報提供できるというメリットがある反面、協力者の生命、身体、財産その他の権利利益を害する恐れがある場合も想定される。そのため、本格的な解析研究を実施する前に、専門家によって慎重に検討される必要がある。このような観点から、解析結果の協力者への回付に関する留意点として、以下のような事項が挙げられる。

〈専門家による慎重な検討の必要性〉
 全ゲノム情報を解析することによって、潜在的には非常に重篤な疾患の原因となる遺伝子変異の存在が明らかになる可能性があるが、それらは協力者の人生を大きく左右する機微情報であるため、得られる遺伝情報の特性を踏まえ、当該遺伝情報が協力者の健康状態等を評価するための情報として精度や確実性を有しているか否か、当該遺伝情報が協力者の健康等にとって重要な事実を示すものかどうか、また当該遺伝情報の回付が研究業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがないかどうかという点に配慮する等、慎重な対応が求められる。そういった状況について勘案しつつ慎重な検討を行うために、様々な疾患領域の専門家を集めたワーキンググループを立ち上げ、国際的な動向も踏まえながらゲノム解析を実施する前段階から議論を始め、考え方を事前に整理しておくべきである。

ウ 解析研究から得られた成果の共有
 遺伝子解析の結果得られたデータについては、一部はバイオバンクに収納し、生体試料と同様に扱われる。ゲノムの解析から得られた基盤的情報等については、公開に関するルールを作成した上でその公開を検討する。生体試料・データのカタログと集団として解析した結果については、原則として広く公開する。
 遺伝子解析の結果得られるデータについては、被災地の復興につながる研究開発を推進する上で貴重な資源となるのみならず、我が国の次世代医療を目指す研究を推進する上で基盤的な役割を果たすことも期待されているため、実施機関が予定しているように、匿名化等の適切な処理を経た上で公開されることが望ましいと考えられる。このような観点から、解析研究から得られた成果に関する留意点として、以下のような事項が挙げられる。

〈解析研究から得られた成果の取り扱い方法の具体化〉
 解析研究の結果得られた成果の取り扱い方法について早急に検討し、具体化していくべきである。特に、コホート事業によって得られた情報について、どこまでをオープンにし、どこからコントロール下におくのかについて、専門家を集めたワーキンググループを作り、議論することが必要ではないか。

〈他のコホート事業との整合性の確保〉
 他のコホート事業との連携という観点から、データの整合性も考慮して設計すべきである。

 17ページ目、(3)本事業に携わる人材

ア 医師の育成、環境型医師派遣
 医師は、全国の大学等に様々なネットワークを通じて支援を依頼するとともに、全国規模の公募で確保する。東北大学から対象地域に派遣される医師は、例えば1年のうち4ヶ月は地域においてリクルート活動を行うとともに、医療者として地域医療機関を支援し、残りの8ヶ月を東北大学で研究や教育を行う(循環型医師派遣)。対象地域の医療機関にアンケートを実施し、地域のニーズに基づいた配置を行う。
 被災地域である東北地方の沿岸部は、被災前から医師不足が大きな課題となっていた地域であり、循環型医師派遣によってこれらの地域に短期的に医師が派遣されることは地域医療支援の観点から評価できる。一方で、地域医療を支える医師が長期的に当該地域に定着することが将来の医療復興には必要不可欠であるため、将来的な医師の育成に関する取組についても求められる。このような観点から、医師の育成、循環型医師派遣に関する留意点として、以下のような事項が挙げられる。

〈循環型医師派遣〉
 対象地域での派遣期間と学内での教育、研究を行う期間がそれぞれ4ヶ月、8ヶ月とされているが、例えば、より被災地に貢献したい、という思いを持っている人材も含まれている可能性があり、この期間はあくまで目安として被災地現場の状況等により弾力的な運用とすべきである。

〈長期的な医師育成の取組〉
 地域医療を担い、将来的にコホート調査の現場を支えることになる人材と、ゲノム研究に興味があり、将来的に分析研究等に関わっていく人材では、多くの場合インセンティブが異なる。元々東北地域においては医師を含む医療関係人材の不足が震災以前も深刻な問題になっていた中で、現実的な対応として、循環型医師派遣は非常に有効なアイデアだが、このように異なるインセンティブを持った人材が存在する中で、長期的な視点から地域医療に軸をおいた医師の育成に関する具体策も今後具体化を進めていくべきではないか。

 18ページ目、

イ コメディカルスタッフ、バイオインフォマティシャンの育成
 看護師、ゲノムメディカルリサーチコーディネーター等については、採用後、必要な教育、研修を行った後、地域医療の支援、コホート調査等に従事する。平成24年度より、東北大学に「臨床研究支援者育成コース」を開設し、ゲノムリサーチコーディネーター等の人材の育成を行う。将来的には公衆衛生大学院を開設し、遺伝カウンセラー等の養成を行うことを目指す。さらに、「オープン教育センター」を開設し、外部に開放した形での短期間の教育・研修も実施することで、本事業で獲得された知識、技術を広く共有することを目指す。
 バイオインフォマティシャンについては、支援機関からの派遣、全国規模の公募、実施機関による育成等を組み合わせて確保する。
 本事業には、医師の他にも、看護師、保健師、ゲノムリサーチコーディネーター、サイエンスコミュニケーター、バイオインフォマティシャン等、多様な人材の参画が必要となる。特に、ゲノムリサーチコーディネーターやバイオインフォマティシャンは、我が国全体から見ても不足しており、本事業を通じた育成が不可欠となることは明白であるため、実施機関が主体的に取り組んでいくことが求められる。このような観点から、コメディカルスタッフ、バイオインフォマティシャンの育成に関する留意点として、以下のような事項が挙げられる。

〈キャリアパスの明確化〉
 本事業に係る多様な人材を育成するためには、職種別の人材の5年後、10年後の多様なキャリアパスを具体的に示し、積極的に発信していくべきである。

〈バイオインフォマティシャンの育成〉
 バイオインフォマティクスの分野は、情報工学と生命科学の融合領域であり、既存の学問領域の枠を超えて、両者の異なるアプローチや治験を持ち寄ることによって初めて、研究開発を行うことが可能となる。バイオインフォマティシャンの育成については、優れた人材を確保できるよう、キャリアパスの構築を目指し、制度設計や環境整備を行う必要があり、例えば東北大学、岩手医科大学に限らず他の研究機関とネットワークを構築し、現場のデータの解析とそれらの情報を用いた研究の場を行き来するような循環型の仕組みを構築することが有効だと考えられる。

(4)産学連携、知的財産
 インフォームドコンセントについては、産業界の利用も含みうるゲノム情報等の利用に対する同意取得の考え方について、先行コホートの事例を踏まえて早急に暫定版を作成し、パイロットスタディーを通じて見直した後、確定する。また、知的財産の帰属等については、先行コホート事業の例も参考にしながら具体化する。
 本事業のようなバイオバンク事業を長期的に継続していくためには、将来的な民間企業の参画が想定されるため、産業界の利用も含みうる方向でインフォームドコンセントを検討していくことは望ましいと考えられる。今後実施される検討の中で、産学連携、知的財産について留意すべき点として以下のような事項が挙げられる。

〈知的財産に関する方針の決定、人材の確保〉
 本事業で将来的に民間企業等による事業化につながる成果として、診断マーカーやオミックス解析による創薬シーズ等が想定される。これらの成果が実際に事業化される際には知的財産の取り扱いが重要となるため、専門家を集めたワーキンググループを設置して今後知的財産の利用に関する方針を決定するとともに、そういった問題に精通した人材の確保、特許出願の戦略的な進め方といった点についても検討することが必要ではないか。

 最後20ページ目で、将来的に検討が必要となる課題。

 本事業は、我が国で最大規模の住民(前向き)コホートとなることが想定される。住民コホートと疾患コホートでは、後者では疾患関連遺伝子を効率的に同定出来る一方、前者では疾患発症前の詳細な健康情報を併せて解析することが可能であるなど、それぞれの特徴と長所が存在する。将来的に個別化医療等の次世代医療を実現するためには、疾患コホートによって疾患関連遺伝子候補を同定し、次に住民コホートでその疾患関連遺伝子候補と環境要因の関係を検証するという、それぞれの特徴を活かした役割分担に基づいて両者が推進されるような我が国全体のコホート研究のグランドデザインが必要となる、また、そのようなグランドデザインを描いていくためにも、すでに様々な機関で実施されているコホート調査、ゲノム等解析研究の連携方策等のあり方をオールジャパンで議論し、方向性を決める場を設定することが必要と考えられる。さらに、本事業も含め、今後様々な事業で得られることが想定される低頻度変異の解析研究から、いかにして個別化医療等の次世代医療を実現していくかについて、その道筋を明確にしていく必要がある。
 本事業を含めた我が国全体のコホート調査、ゲノム等解析研究の成果を修復できる体制を構築することで、限りある資源を有効に活用しつつ次世代医療の実現につなげていくためにも、これらの事項については、将来的に検討が必要な課題として引き続き文部科学省をはじめとする政府関係者によって検討されることが望まれる。

 以上でございます。

【豊島主査】  ありがとうございます。どうぞご意見お願いいたします。

【久保委員】  ちょっと細かい文言で申しわけないですが、最後の20ページの上から6行目あたりですか、「住民コホートでその疾患関連遺伝子候補と環境要因の関係を検証する」ということになっているのですが、これは遺伝子と環境要因の相互作用を解明するということになりますので、検証という言葉ではなくて、新たに解明するという形に。ちょっと細かいことで申しわけないですが。

【小原委員】  今の最後の20ページのところですが、将来的に検討が必要となる課題という文言からは、当分は検討しないというふうに、不要と読めてしまうのですが、その前からほかとの連携が必要であるということがずっと書いてあって、すぐにそれがどういう場でできるかどうかわからないですが、これはかなり重要なことだと思うのです。7万人というのがありますけれども、三世代コホートは非常にいいのですが、数が足りるのかどうかということもいろいろな議論があると思うので、これは我が国として、日本人ですから、日本人の中でやっているものをどうやったらうまく連携して数を増やせるのかということは大事なことで、これは本末転倒のような気がします。それがまずあって、だけど並行してやっていかなきゃいけないので、将来的にという書き方がちょっと気になるのですが。

【板倉ライフサイエンス課長】  これはさまざまな問題で、デザインがあって事業を行うというやり方、それから事業を行って連携を行いつつ、その実績も踏まえながらオールジャパンのグランドデザインをつくっていくという、この2つのやり方がございまして、大きなグランドデザインを関係者のコンセンサスも得て築き上げていくには多分長い時間がかかるだろうというところもございますので、将来的な検討ということで整理したほうがよろしいのではと考えております。
 当然のことながら、このメディカル・メガバンクを行うに当たって連携しなければいけないことというのは、この事業開始前にワーキンググループをつくって、しっかり連携体制をつくっていくということですが、いわばトップダウン的なデザインをつくっていくというのは、なかなか一朝一夕ではできないことかと思いましたので、4番として分類をさせていただいた次第でございます。

【小原委員】  将来的というと、すごく遠いなという気がする。ほんとうは並行して、あるいは別のカテゴリーで議論するということだと思います。意味はわかりましたし、これでもいいのかもしれませんが、ぜひこれはどこかのところでやっていかないと、国としてはもったいないような気がいたします。

【豊島主査】  引き続き検討を行うということで、今答えは出さなくてもいいという。だから、この答えを出すためには時間がかかるということですから、将来的という言葉を抜いても意味はあまり変わらないから、逆に言うと、将来的という言葉を抜いて、今からどうぞ検討は進めてくださいと。この事業は先に進まなきゃいけないので、この事業は先にやりますという形で。

【小原委員】  最後の文章はそうですね。将来的に課題について引き続き検討されることが大事ですし。

【豊島主査】  だから、引き続き検討するのですから。

【小原委員】  そこが一番大事なことだと思います。

【豊島主査】  ということでいいのではないでしょうか。

【小原委員】  わかりました。

【豊島主査】  どうぞ。

【金岡委員】  産学連携ということで、民間企業の参画ということも想定された、それを提言に盛り込んでいただいてありがたく思っています。産学連携ということにつきましては、知的財産の取り扱いに加えて包括同意、倫理面の扱いについて包括同意のとり方、あるいは少し前に出てきました解析研究で得られた成果の共有をどう公開し、あるいはどうコントロール下に置くかといったところも連携してくるかと思いますので、ワーキンググループ等幾つかセクションといいますか、領域に分けてワーキンググループを設置されると思いますけれども、そういったことがそれぞれ連携してきますので、ぜひそういったところもご留意いただければなと思います。
 以上です。

【豊島主査】  どうぞ。

【末松委員】  17ページのところで確認ですが、医師の育成と循環型医師派遣のところです。大もとの提案が東北大学から出されていますので、実施機関の取組内容の概要はこれでいいと思うのですが、伺いたいのは、沿岸部の大変な状況というのは宮城も岩手も同じだと思うので、つまり、この循環型医師派遣システムの恩恵にあずかるのは、東北大学がカバーされているところはもちろんだと思うのですが、岩手医科大学が支えておられるところにこの循環型医師派遣の恩恵がいくのかどうか、そういう配慮が必要ではないかと思うのですが、その辺はどういうふうな感じなのでしょうか。

【板倉ライフサイエンス課長】  まず、ここの記述というのは特段東北大学だけに限定をしているところではございませんが、この循環型医師派遣システムについては、東北大学のほうが検討を早期に始められていたというところがございます。今後、岩手医科大学とは、こういうシステムにするのか、どうしていくのかということを詳細にまた議論させていただきたいと思っております。この記述自身は、地域を区切っているものではございません。

【祖父江副学長】  私どもはこれまで、震災以前から沿岸諸病院には医師を出して医療をやるということをずっとやっておりまして、震災後もそれが特に頻繁になりましたが、いわゆるメディカル・メガバンクを一つの契機にしまして、さらにそれを手厚くしていくという方向で、現在、検討をいたしております。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  まず、ご提言の中で、私どもは期限を少し例示した形だったのですが、柔軟にやるようにということで、これはこのとおり受けとめさせていただきたいと考えています。

 それから、循環型医師派遣制度は、制度として確立してしまうとやりやすい形になるので、岩手医科大学のほうでも、少し改変した形になるかもしれないですが、利用しやすいものになると思いますので、改めて一つのこういうやり方があるというのを、この事業を通じてお示しするような方向で、今の末松委員のご指摘にこたえていきたいと考えています。

【豊島主査】  どうぞ。

【成宮委員】  18ページにバイオインフォマティシャンの育成というのがございますが、これは文科省のほかの委員会でも議論をさせていただきましたけれども、バイオインフォマティシャンが不足しているということは紛れもない事実でございます。また、バイオインフォマティシャンを養成できる場所というのが非常に限られているということも事実じゃないかと思います。
 それで、18ページから19ページにかけまして、「現場のデータの解析とそれらの情報を用いた研究の場を行き来するような循環型の仕組みを構築することが有効だと考えられる」と書いてありますけれども、これは要するに教育あるいは育成においても、東北大学のみならず、実際に現在、ほかのバイオインフォマティシャンを養成できる拠点との間で、教育もシェアするということをお考えでしょうか。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  まさに成宮先生のご指摘のとおりで、まず学内で情報科学研究科という情報の研究科との間で共同作業をする。それから、高木先生のところ、小原先生のところ等、力のあるところと、一番簡単なのは人材をリクルートさせていただければいいのですが、なかなかそれだけではいかないと思いますので、教育の中に積極的に参加していただいて、それで我が国のバイオインフォマティシャンの層を厚くしていくということを、この事業を通じて試みたいと考えています。

【板倉ライフサイエンス課長】  それから、成宮先生ご指摘された別の委員会、今、ライフサイエンス委員会のほうで、このバイオインフォマティクスの問題をかなり重要視されておりますので、次回には今まで行ってきた施策でございますとか、現状の問題点なども踏まえて、バイオインフォマティクスについては真剣に議論をさせていただきたいと考えております。この事業に限らず、これは日本のライフサイエンスにとって重要な問題と思っておりますので、そこはライフサイエンス委員会でも審議をさせていただきたいと考えております。

【成宮委員】  今、課長が言われたように、大変大事な問題だと思いますし、それからえてしてバイオインフォマティシャンが恒久テクニシャン的な扱いで、そのキャリアパスをいかにつくるかということは非常に大事で、このコホートのためだけの養成ということではあり得ないと思いますので、その点も十分ご留意していただきまして、計画的にやっていただきたいと思います。

【豊島主査】  よろしゅうございますか。どうぞ。

【中釜委員】  14ページですが、多少細かなことだと思うのですが、ここにオミックス研究のことが書かれております。「選択と集中」の必要性が書かれているのですが、ここでも5ページに書かれている推進体制、東北大学と岩手医科大学の推進体制のあたりが多少明確に書かれていたほうが、連携は重要だと思いますので、そのあたりを少し加味した記載があったほうがいいかなと思います。

【豊島主査】  今の内容を先に。お答えですね。

【祖父江副学長】  その答えとお願いと両方でございますが、13ページで解析研究手法というところ、私ども2行だけしかございませんが、これは追加してお願いいたしておりますので、また次回になるかと思いますが、追加の部分を加えさせていただこうというふうには思っております。

【豊島主査】  どうぞ。

【門脇委員】  全体として座長の豊島先生のご尽力によって、本検討会で出たさまざまな意見がよく取り入れられて、すぐれたものになりつつあるということで、大変喜ばしいことだと思っています。
 私が1点気になるのは、15ページ、16ページの解析結果の協力者への回付の問題で、この問題はGWASのときには基本的には解析結果を協力者に回付することはしない場合が多いので、あまり問題にならないということだったかと思いますけれども、今回の研究の中では全ゲノムのシーケンスをするという計画ですので、まさにここに書かれていますように、専門家による慎重な検討の必要性があると思います。
 その検討の必要性のところに書いてありますように、潜在的には非常に重篤な疾患の原因となる遺伝子変異の存在が明らかになる可能性があり、それらは協力者の人生を大きく左右する機微情報です。その場合に治療法がなくて、いわゆる不治の病である場合もありますし、また先制医療を行うことによって病気の予防ができる場合もあると思います。
 もう一方、包括同意をすることになりますと、そのことも十分に頭の中に置きながら、後で全ゲノム解析を始める直前になって、最初にとったインフォームドコンセントに不備があることから、実際に全ゲノム解析の前で立ち往生してしまうことが決して起こらないように、入念に準備をする必要があるのではないかと思います。
 そういうことを考えると、16ページの3行目に、国際的な動向も踏まえながらゲノム解析を実施する前段階から議論を始めると書かれていますが、それではもしかしたら少し遅過ぎるのではないかという危惧を持ちまして、実際にはインフォームドコンセントを練り上げていく段階で、この問題についても十分に頭の中に入れながらインフォームドコンセントをつくっていく必要があるのではないか。基本的な考え方は、こういった遺伝子変異について、その時点でわかっている情報に基づいて、協力者の知る権利と知らないでいる権利が十分に担保されるという形で運用するのが基本的な考え方だと思います。このような点は、ゲノム解析の段階で検討するというよりは、もっと前のインフォームドコンセントの段階から、この点を十分に考慮してインフォームドコンセントを練り上げていくほうが万全の体制になるのではないかと思います。

【豊島主査】  よろしゅうございますか。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  ご指摘のとおりだと思います。それで、今、私どもは倫理、法令、インフォームドコンセント、包括同意等のワーキンググループをやっていて、そこでこの問題は一番重要な問題の一つとして検討させていただいております。

【豊島主査】  よろしゅうございますか。結局、こういう情報全体は、将来の個別医療の非常に大きな基本になる。そのときに企業が利用するというのは、当然それを利用しないと社会に還元できないということですので、その点は十分に考慮いただきたい。
 そのときに、多分ゲノム情報その他は、コンパニオン医薬の形で利用されることが多いと思うのですが、これ自体はあまり利益を生むものではないです。一度診断したら終わりということが多いものになりますから。だから、確かに特許を確保しておくことは非常に重要ですが、知財としてあまりそれを抑え過ぎると、せっかくの利用が進まないということがありますので、その辺はぜひ慎重にやっていただきたい。
 それから、そういうことに関するバイオインフォマティシャンを養成すると、その人たちの就職口というのは自然に広がっていく可能性は十分あると思いますので、その点も視野に入れながら進めていただければ非常にありがたいなという気がします。
 いかがでございましょうか。先生方からもきちんとコメントを返していただいたということも踏まえまして、そういう意味で、事務局が非常に努力して皆様のコメントを入れながら、かなりちゃんとまとめてくれたように私は思います。
 それで、これからどのように進めていくかということに入ってよろしいですか。ということになるかと思いますが、議題に移りたいと思います。
 それでは、事務局から今後の進め方についてご説明をお願いします。

【板倉ライフサイエンス課長】  お配りしております資料2をごらんいただければと思いますが、本日第4回ということで、この提言案についてご審議いただきましたが、次回第5回では、きょうのご議論を踏まえまして修正させていただきました案につきましてご審議をいただければと考えております。ご審議がまとまりましたら、次回で取りまとめという方向でお願いできればと考えております。よろしくお願いいたします。

【豊島主査】  ありがとうございました。今のことで何かご質問ございますか。よろしゅうございますか。
 それでは、事務局から連絡事項についてご説明をお願いします。

【釜井ライフサイエンス課長補佐】  本日の議事録でございますけれども、事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮りし、主査の確認も得た後、ホームページにて公開いたします。また、同様でございますけれども、資料につきましては机上に置いていただければ郵送させていただきます。
 以上でございます。

【豊島主査】  よろしゅうございますか。
 それでは、皆さんのご協力によりましてかなり早目に終わらせていただくことになると思いますが、よろしゅうございますか。では、どうもありがとうございました。


── 了 ──

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