東北メディカル・メガバンク計画検討会(第1回) 議事録

1.日時

平成24年4月5日(木曜日) 17時00分~19時00分

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 東北メディカル・メガバンク計画案について
  2. その他

4.出席者

委員

豊島主査、赤林委員、岡部委員、嘉数委員、春日委員、門脇委員、金岡委員、清原委員、桐野委員、久保委員、河野委員、小原委員、末松委員、祖父江委員、高木委員、中釜委員、松本委員

文部科学省

吉田研究振興局長、田中総括審議官、森本大臣官房審議官(研究振興局担当)、板倉ライフサイエンス課長、岡村研究振興戦略官、釜井ライフサイエンス課長補佐

オブザーバー

東北大学:山本東北MM機構長、八重樫副病院長、冨永教授、栗山教授、五十嵐教授
岩手医科大学:祖父江副学長、小林医学部長、人見リエゾンセンター長

5.議事録

東北メディカル・メガバンク計画検討会(第1回)

平成24年4月5日

 

【板倉ライフサイエンス課長】  それでは定刻になりましたので、ただいまより第1回東北メディカル・メガバンク計画検討会を開会したいと思います。
 本日はご多忙のところ、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。私、文部科学省のライフサイエンス課長の板倉でございます。僣越ながら、主査にご進行をお願いするまでの間、私が進行を務めさせていただきます。
 それでは、まず初めに事務局を紹介させていただきます。まず、研究振興局長の吉田でございます。

【吉田研究振興局長】  よろしくお願いいたします。

【板倉ライフサイエンス課長】  大臣官房総括審議官の田中でございます。

【田中総括審議官】  田中でございます。よろしくお願い申し上げます。

【板倉ライフサイエンス課長】  同じく、大臣官房審議官の研究振興局担当の森本でございます。

【森本大臣官房審議官】  森本でございます。よろしくお願いします。

【板倉ライフサイエンス課長】  続きまして、研究振興戦略官の岡村でございます。

【岡村研究振興戦略官】  岡村でございます。よろしくお願いいたします。

【板倉ライフサイエンス課長】  続きまして、東北メディカル・メガバンク計画検討会の発足に当たりまして、吉田局長から一言あいさつをさせていただきます。

【吉田研究振興局長】  それでは、今回第1回の検討会ということでございますので、事務局を代表いたしまして、一言ごあいさつをさせていただきます。
 本日は、東北メディカル・メガバンク計画検討会にご出席いただきまして、まことにありがとうございます。この計画は、もうご承知かもしれませんけれども、昨年の7月の東日本大震災からの復興基本方針、あるいは12月の日本再生の基本戦略におきまして、被災地の復興のために取り組む施策の一つとして取り上げられたものでございます。
 これらを踏まえまして、復興を目的とした平成23年度の第3次補正予算、さらにちょうど今ごろ成立をしているのかと思いますけれども、平成24年度の復興予算に本事業を実現するために必要な経費が、それぞれ計上されているところでございます。
 この計画は、厚労省、総務省の行います地域医療情報連携基盤の整備と連携しながらも、本計画では健康調査、あるいはバイオバンクの構築、さらに解析研究、そういったものを通じまして被災地の医療復興に貢献するとともに、将来的な次世代医療体制の確立や、創薬等の新産業の創出につなげていくということを目指しているものでございます。
 本計画の実施につきまして、本日、東北大学、岩手医科大学、あるいはその地域関係者の方々が、一体となって準備を進めておられます実施計画案につきまして、本検討会においてご議論いただくことになっております。地域医療への貢献、あるいは科学技術上の意義といったさまざまな観点からご議論いただきまして、具体的な推進方策について大所高所からのご助言をいただければ幸いでございます。
 なお、この計画の速やかな具体化ということからいたしますと、短期間に集中的なご議論をお願いすることになろうかと思いますけれども、本計画の趣旨にご理解賜りまして、ご協力をよろしくお願い申し上げたいと存じます。どうぞ、これからよろしくお願い申し上げます。

【板倉ライフサイエンス課長】  ありがとうございました。
 報道の方の撮影はここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 本日は、高井委員と成宮委員からご欠席との連絡をいただいております。
 それでは、本日の議事を進めるに当たりまして、まず議事及び配付資料の確認をさせていただきたいと思います。

【釜井ライフサイエンス課長補佐】  本日の議事でございますけれども、議事次第にありますとおり、東北メディカル・メガバンク計画案、その他でございます。
 本日の資料は、資料1から7でございます。落丁等がございましたら、事務局までお申しつけください。以上でございます。

【板倉ライフサイエンス課長】  よろしゅうございますでしょうか。
 それでは続きまして、この東北メディカル・メガバンク検討会の主査についてでございますが、設置要綱に基づきまして、文部科学省のほうから指名をさせていただきたいと思います。文部科学省としては、豊島先生に主査をお願いしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、ここからの進行につきましては、豊島先生、よろしくお願いいたします。

【豊島主査】  このたび、東北メディカル・メガバンク計画検討の主査に指名されました豊島でございます。至りませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
 一言ごあいさつ申し上げたいんですが、東北メディカル・メガバンク計画は、被災地の復興のために取り組むべき施策の一つとして、ただいまご説明のありましたように、政府の方針に位置づけられて文科省が関係府庁と連携しながら推進し、かつ東北大学と宮城県が一体となって取り組んでいくということになっておるものでございます。
 一方では、本事業を実施していくためには、解決しなければならない多くのことがございます。例えば、これは地域医療の復興、それから医療体制の確立ということが非常に大きな1つの目標でございますけれども、それと同時に、研究上は長期の医療の基盤確立のための試料として、十分活用できるという体制を組んでいかなければなりません。そのためには、多くの課題が存在していると考えます。
 幸い本計画検討会には、さまざまな分野で深いご意見をお持ちの方々にご参画いただいておりますので、忌憚のないご意見を伺い、そして東北大学の方々とともにいい計画を練り上げたいと考えております。どうぞ委員の方々には、ぜひご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。それでは、これで失礼させていただきます。
 それでは、東北メディカル・メガバンク計画の推進と東北メディカル・メガバンク計画の概要について、文部科学省から説明をお願いいたします。

【板倉ライフサイエンス課長】  それでは、資料の2、3、4、5に基づきまして、この東北メディカル・メガバンク計画の現在までの経緯、予算等についてご説明をいたします。
 まず資料2でございますが、これは東北メディカル・メガバンク計画検討会の設置要綱でございます。設置の目的といたしましては、東北メディカル・メガバンクにおきまして、東北大学等が実施主体として実施する15万人規模の住民ゲノムコホートの実施、またゲノム情報等の解析計画についてご検討いただきまして、文部科学省、または実施機関等にご提言をいただくということを目的としてございます。
 委員会は、外部の有識者、専門家の方々から構成をしてございまして、この検討会の主査は文部科学省がご指名をするということで、豊島先生にお願いをしているところでございます。
 飛ばしまして、4番の情報公開でございますが、本検討会は原則公開ということで進めさせていただきたいと思います。原則公開ではございますが、当事者または第三者の利益を害する可能性のある議事につきましては、非公開とすることができることとしてございます。
 庶務につきましては、文科省のほうで処理をさせていただきたいと考えてございます。
 続きまして資料3でございますが、本検討会の進め方でございますが、この本検討会につきましては、まず1つ目でございますが、この東北大学等の計画に関します提言、それからまた将来に、こういうことを検討していかなければいけないという検討事項につきまして、お取りまとめをいただければと考えております。この提言につきましては、この構成員の皆様のコンセンサスでお取りまとめを行いたいと考えてございます。ただし、議論を尽くしても合意に達しない場合には、少数意見を付すということもあり得るということで、このご議論いただければと考えております。
 続きまして資料の4でございますが、この計画につきましては、昨年度からさまざまな予算の議論を経てございまして、このメディカル・メガバンク計画の実施に当たっての前提ということで、ご紹介をさせていただきたいと思います。 まず1つ目でございますが、本計画につきましては、復興を目的といたしました平成23年度の3次補正予算でスタートしてございまして、平成24年度予算も復興予算で措置をされているところでございます。したがいまして、この東日本大震災の被災地の復興を目的とするということが、その大前提となってございます。
 また2つ目でございますが、昨年の暮れ、12月に閣議決定されました日本再生の基本戦略におきましても、この東北メディカル・メガバンク構想が位置づけられておりまして、具体的な記載といたしましては、読み上げさせていただきますが、「東北大学を研究の中心とし、被災地の方々の研究・診療・ゲノム等の情報を生体試料と関連させたバイオバンクを形成し、創薬研究や個別化医療の基盤を形成するとともに、地域医療機関等を結ぶ情報通信システム・ネットワークを整備することにより、東北地区の医療復興に併せて、次世代医療体制を構築する」というふうに記載されておるところでございます。このメガバンク計画につきましては、これらを実現するために推進をしていくということが必要とされてございます。
 資料4に添付しておりますのは、今までのさまざまな閣議決定でございますとか、復興に当たっての復興本部決定などをご参考に添付をさせていただいてございます。
 それから、続きまして資料5でございますが、この東北メディカル・メガバンク計画は、大きく分けますと2つの要素から成り立ってございます。その1つは、この1番目に書いてございますが、厚生労働省、総務省で予算措置をされております地域医療情報連携基盤の構築ということで、その被災地の医療機関間を結ぶ情報ネットワークを整備していくという取り組みが、1つ目としてございます。
 それから2つ目といたしまして、本日、今回この検討会でご議論いただきます健康調査、バイオバンク構築、それから解析研究を行う事業がございまして、こちらは文部科学省のほうで予算措置をしているところでございます。この2つの構想につきましては、密接に連携しながら、相乗効果を持たせながら進めていきたいと考えているところでございます。
 先ほど予算についても申し上げましたが、この右上に予算額を記してございまして、平成23年度3次補正では、約158億円の予算を計上してございまして、24年度の予算では復興予算といたしまして、約56億円の予算を計上しているところでございます。以上が、現在までのこの計画に関します予算等の経緯でございます。

【豊島主査】  どうもありがとうございました。それでは、今のご説明に対して何かご質問ございますでしょうか。
 特にご質問、お意見がないようでしたら、次へ進ませていただきますが、よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、続きまして東北大学から、東北大学の実施計画案についてご発表をお願いいたします。よろしくお願いします。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  東北大学の山本でございます。本日は、私どもメディカル・メガバンク計画についての計画検討会を開催していただいて、ほんとうにありがとうございます。計画の骨子について、ご報告させていただきたいと思います。
 お手元にある資料6で、「東北メディカル・メガバンク全体計画骨子案」に沿ってご説明をさせていただきます。
 めくっていただいて、4ページを見ていただけますでしょうか。ここには、本計画の概要が記されております。先ほどご説明がありましたように、本計画は復興を目的とした23年度の3次補正予算及び平成24年度復興予算案で措置されており、被災地における医療の再生と医療機関の復興にあわせ、被災地を中心とした大規模ゲノムコホート研究を行うことにより、地域医療の復興に貢献するとともに、創薬研究や個別化医療等の次世代医療体制の構築を目指すことを主たる目的としております。
 事業計画の全体の要点ですけれども、次の2段階に分けて考えております。第1段階は、被災地を中心とした地域住民の健康調査を実施したいと考えております。また、このために医療関係人材を被災地に派遣し、地域医療の復興に貢献したいと考えております。それとあわせて、地域医療情報基盤と連携しつつ、被災地を主な対象として、ゲノム情報を含む地域住民コホートと、三世代コホートを形成したいと考えております。さらに、全国のゲノムコホート/バイオバンク研究機関と連携しながら、バイオバンクを構築しつつ、ゲノム情報等を解析したい、これを第1段階と考えております。
 次いで、数年後を目途に、我が国で実施されている他のコホート事業と連携して、住民コホート・患者コホートを組み合わせた成熟したバイオバンクを完成し、国内外機関への公平な分配とガバナンスの確保された大規模共同研究へと発展させたいと考えております。それにより、ゲノム情報を含めた生体情報や健康情報等の網羅的な基盤情報を創出・共有したい。これを用いて、東北大学では、被災地住民を対象とした解析研究などを進めることで、個別化医療等の次世代医療を被災地の住民に提供したいと考えております。これを第2段階と考えております。
 第1段階については、今後2番目以下に記載するような方法で推進してまいりますけれども、第2段階は今後の議論を含めて推進方策を決定していきたいと考えております。これらを推進することにより、被災地への医療関係人材派遣は詳細な健康診断の実施等による健康増進等を通じた地域医療の復興、東北初の予防医療・個別化医療等の次世代医療の実現と創薬等の新たな産業の創出を目指したいと考えております。
 東北大学の推進体制ですが、東北大学内に東北メディカル・メガバンク機構を立ち上げ、事業全体の運営を行いたいと考えております。次の5ページを見ていただけますでしょうか。
 まず、地域医療支援とコホート調査の実施についてご説明したいと思います。概要と目的です。背景ですが、東日本大震災の被災地において、住民の健康障害が懸念されています。2004年12月のインドネシア・スマトラ島を襲った津波被害に関する疫学調査から、感染症の増加だけではなくて精神衛生上の問題、特に小児においてはPTSDと抑うつが、成人においてはPTSD、不安障害、抑うつ、自殺が増加し、中長期的には循環器疾患などの生活習慣病が増加していると報告されています。すなわち、今回の大震災後の健康被害についても、急性期のみならず長期にわたる調査が必要であると考えています。
 被災地の新聞社が、仙台市、石巻市で実施したアンケート調査によりますと、住民が震災後に感じた不安ということでは、健康・病気が最も多かったと報告されています。こうした不安を解消するためにも、子どもから成人まですべての年齢層を対象とした大規模な健康調査を行うことが求められていると考えております。
 一方、被災地域の人的な医療資源は、行政や医育機関、関連する保険医療機関等の長年にわたる格段の努力にもかかわらず、厳しい情勢にあります。その状況は、大震災によりさらに悪化することが懸念されています。被災地の地域医療復興には、従前どおりの方策のみならず、医療人を被災地に引きつけるための何らかの特別な方策が必要であると考えています。
 本事業では、地域医療復興と次世代医療復興を実現する目的とあわせ、被災地域を中心とした対象地域において、7万人規模の三世代コホート、8万人規模の地域住民コホートを実施して、宮城、岩手県全体で15万人のコホートを実現したいと考えています。次のページをごらんください。
 それで、地域住民コホートと、それから三世代コホートと申し上げました。最初に、地域住民コホートについてご説明します。8万人規模の地域住民コホートを形成し、得られた健康情報、診療情報、生体試料等を解析することによって、ありふれた疾患である高血圧・糖尿病・高脂血症に関連する遺伝的要因の同定が、そこにあります表1のように可能になると考えています。表の詳しい説明は省略します。
 これらの疾患に関連する要因を同定するために、生活習慣調査、血液検査、尿検査、メンタルヘルス、家庭血圧、MRI検査、これらは一部住民を対象とするものもありますが、等を実施したいと考えております。これらの解析には、後述の三世代コホートにおける父親、祖父母世代のデータもあわせて活用する予定です。
 また、被災地で今後増加することが懸念される疾患を予防するための手法を確立し、住民にその成果を還元するという観点から、うつ病等の精神疾患、感染症、高血圧等循環器疾患の発症に関連する要因とその防止法の分析も行いたいと考えています。さらに、被災地域の健康増進に貢献するため、これらの検診結果は協力者に対して迅速にフィードバックし、栄養教室、運動教室、こころのケア、受診勧奨といった介入をあわせて実施したいと考えております。
 なお、被災地の住民に対する迅速な成果還元を実現するために、被災地域を中心とした健康診断を平成24年度から先行して実施し、結果を回付することとしたいと考えています。この際、市町村との協力関係を構築することを最優先し、疲弊している市町村に過度の負担がかからないように配慮したいと考えています。具体的には、市町村が主催する特定健康審査への相乗りによる健康調査が現実的な対応と考えております。特定健康診断対象外の若年者・高齢者に対する健康診断も可及的速やかに実施を予定していますが、詳細は各市町村との協議により決定したいと考えています。
 ゲノム試料の提供に伴う同意取得等は、平成25年度以降、改めて実施したいと考えています。この際には、被災地域の住民を対象として、県や東北大、その他の機関が既に実施している検診や調査と連携して実施したいと考えています。また、メンタルストレス、家庭血圧測定等の住民への短期的な成果の還元も行いたいと考えています。
 生体試料の収集については、平成24年度から数千人規模で着手し、25年度中には本格実施に移行したいと考えています。ゲノム情報の解読等については、平成25年度以降に実施するゲノム試料の提供検体が収集され次第、実施する予定でいます。
 なお、調査項目等のコホート調査実施の詳細については、先行コホートの知見やパイロット調査の結果を踏まえつつ、今後も引き続き検討していく予定です。また、生活習慣や診療情報を質高く長期的に追跡する仕組みや、それを全国で共有するための共通フォーマットなどについて、先行コホートの知見やパイロット調査の結果を踏まえつつ、今後も引き続き検討していく予定です。
 三世代コホートと連携して、地域子どもコホートを実施したいと考えています。これは、必ずしも医療機関を受診しない小児期のPTSDや広汎性発達障害、アレルギー疾患等について、学校保健等と連携してスクリーニングし、必要な介入を実施したいと考えています。現時点で介入の必要がないと判断される子どもについては学校保健記録等により、また介入の必要な子どもについては医療機関等で診療情報を収集することによりコホートを形成したいと思います。地域子どもコホートによって疾患感受性遺伝子を同定し、三世代コホートによってこれを検証して、病因の解明、有効な診断・治療法の開発を目指したいと考えております。
 三世代コホートでは、7万人規模のコホートを構築し、得られた健康情報、診療情報、生体試料等を解析したいと考えています。震災の影響により増加が懸念されるPTSDや抑うつ、震災の影響により悪化が懸念され、遺伝的素因の関与が示唆されているアトピー性皮膚炎、注意欠陥多動症(ADHD)、喘息、自閉症などを対象疾患と考えております。また、胎児期のコンディションが出生後のメタボリック症候群へのかかりやすさなどに影響するというDOHaD学説の見地から、自閉症等のみならず、心疾患やメタボリックシンドロームなども対象疾患として検討する予定です。
 調査の結果から、父母や祖父母の健康向上に資する項目は、参加者にフィードバックしたいと考えています。また、妊婦の葉酸摂取量や父親・母親の喫煙・飲酒など、子どもの健康向上に貢献する項目については、情報を迅速にフィードバックしたいと考えています。子どもの健康状態を詳細に追跡することで、必要になった際に、時期を失せず介入することを可能としたいと考えています。
 疾患に関連する遺伝要因と環境要因の影響を明らかにするために、この三世代コホートは出生コホートですので、出生コホートの側面を活用して、生活習慣調査と血液検査、尿検査等を実施したいと考えています。なお、PTSDや抑うつ、アレルギー性疾患等は遺伝要因のオッズ比が相対的に高くないことも想定されますので、環境要因を重視した解析も実施したいと考えています。
 3万人の新生児を出世後3年間追跡することで、アトピー性皮膚炎、それからADHD、喘息、自閉症は、そこにあるような数の発症が予想されます。全体的に、ある要因に25%の人がさらされて、疾病罹患の危険性が50%上昇すると仮定すると、これらの疾患と関連する要因を80%ほどの検出率で解明可能であると考えています。なお、三世代コホートの出生児については可能な限り長期に健康追跡調査を実施し、最終的にはその人の一生を見守る生涯コホートの形成を検討したいと考えています。
 つづいて、2です。目的を達成するための具体的な実施内容です。リクルートの方法で、大規模に参加者を収集するためには、地方自治体や保健所との緊密な連携が必要不可欠です。そのために、対象地域の保健所と連携し、特定検診・妊婦検診等と連動した形でリクルートの依頼、詳細な検診、健康イベントや健康相談会等を実施したいと考えています。
 それで、特定検診の対象者以外の住民に対しては、対象地域の地域医療機関、保健所、それから私どもの現地事務所に相当するメガバンク地域支援センターを設け、そこで東北大から派遣された医師や、ゲノム・メディカルリサーチコーディネーター(GMRC)等と現地のメディカルスタッフが連携し、詳細な検診を実施したいと考えています。
 三世代コホートのリクルートの方法については、対象地域の参加医療機関を受診した妊婦に対してリクルートを実施し、妊婦検診を活用して採血、採尿、母体及び胎児の健康情報等の収集を行いたいと考えています。また、父親、祖父母については、産科医療機関を訪問した際にリクルートや採血を行い、詳細な検診については対象地域のメガバンク地域支援センターにおいて別途実施し、電子データを連結したいと考えています。
 次のページを見ていただきますと、検診の結果、疾患が偶然発見された場合には、協力者にその旨を連絡するとともに、疾患の治療に向けた取り組みを必ず行うことで地域住民の健康増進に貢献し、信頼関係を築きたいと考えています。リクルートの数としては、特定検診でのリクルートの数、それからメガバンク地域支援センターのリクルート数、さらに協力産科医院でのリクルート数を、記載してありますような数で予定しております。
 東北大から医療関係人材の派遣ですけれども、現地でリクルート活動を行う拠点としてはメガバンク地域支援センター、それから保健所、産科医療機関が挙げられます。これらの拠点には東北大学から医師、看護師、GMRC等をチームで派遣し、現地の看護師、保健師等のメディカルスタッフと協力して、リクルートに関する同意取得、検診、予防医学推進イベント支援等の活動を行います。現地での方法と調査に関する調整の中心的な役割は、東北大から派遣されている医師が担う形で行いたいと考えています。
 また、それ以外の時間においては地域医療現場での診療、往診、健康相談会を行うなど、地域医療の支援も行いたいと考えています。また、地域医療機関や保健所の医師、医療系スタッフにもリクルート推進を依頼し、地域住民の医療ニーズのアップデートを行うという役割分担のもと、連携して実施したいと考えています。
 東北大から派遣される医師は、1年のうち4ヶ月は対象地域でのリクルート活動を行うとともに、専従医療者として地域医療機関を支援し、残りの8カ月を東北大で研究や教育を行うとともに、コホート調査に関する健康増進イベントの支援や、地域医療への検診結果の説明会に参加するような循環型の医師派遣制度を実施したいと考えています。また、若手医師にも別の仕組みで参加を募りたいと考えています。
 それで、このような循環型の医師派遣では、地域医療ニーズを知り、それに適した専門性を持つ医師を発見することが重要と考えています。そこで、アンケート調査を沿岸部の医療機関に行って、地域のニーズを把握する。一方では、東北大学病院の各診療科にもアンケートをとり、必要な人材確保を行うとともに、医療機関からのニーズに基づいて、支援スタッフを適材適所に配する体制の確立を行いたいと考えています。
 メガバンク地域支援センターの数及び協力医療機関の数は、お示しするような形です。産科医療機関については宮城県内で98医療機関を予定しています。必要な医師数、GMRC数等については、後ほどまとめて申し上げます。
 健康情報、診療情報の追跡についてですけれども、この追跡は非常に重要だと考えています。それで、地域住民コホートの参加者については、半年から1年ごとに協力者に質問票を送付するとともに、4年に1回程度、保健所やメガバンク地域支援センターにおいて、協力者に対して詳細な検診を実施したいと考えています。その際、地方自治体で実施する特定検診と連携して実施したいと考えています。
 また、三世代コホートの子どもについては、1歳6カ月検診・3歳児検診、学校検診等で詳細な検診を行う予定です。
 次々項に、医療情報ICT化によって得られるデータとのリンケージも、重要視して実施したいということをお伝えしたいと思います。
 転居や死亡、死因については住民基本台帳、人口動態統計等を行います。
 対象地域における広報は非常に大切なことだと考えています。それで、サイエンスコミュニケーション能力を持つ人材を活用して、対象地域において広報活動を重点的に実施したいと考えています。次のページをごらんください。
 先ほど申し上げた地域医療情報基盤との連携です。コホートの信頼性を高め、かつ効率的な情報収集を可能にするために、平成26年度に気仙沼医療圏、石巻医療圏で構築される予定の地域医療福祉情報連携基盤(ICT基盤)と連携して、質の高い診療情報を収集します。本コホートは健常人コホートとして出発しますけれども、病気になる方もおられるので、その病気の情報をこの電子カルテ網、地域共有型の電子カルテ網をつくるということで収集したいと考えています。
 この電子カルテ網との協力は、平時においては地域共有型の電子カルテ網を東北大のサーバーに保存し、データ参照は一方向のみ、東北大から宮城県サーバーのデータを参照するのみで実施したいと考えていますけれども、緊急時には東北大のサーバーがバックアップサーバーとして働くような役割を果たしたいと考えています。質の高いデータベースをつくるために、私どもメディカル・メガバンクの方からデータマネージャーを派遣するような形で、質の高い電子情報の構築を試みたいと考えています。
 さて、次です。12ページをごらんください。コホート調査の対象地域ですけれども、それはそこのFにあるような地域を対象地域とします。それで、Gにリクルート数の設計についてあります。これをご説明させていただきます。
 地域住民コホートについては、震災や津波の影響を受けている地区で8万人のリクルート人数になるように設定したいと考えています。具体的には、気仙沼、石巻医療圏、さらに県央、県南でも津波の影響を受けておりますので、このような地域を対象としたいと考えています。
 三世代コホートですが、これは対象地域の年間出生数が2万人です。それで、新生児のリクルート予定数3万児を3年でリクルートしたいと考えています。先行している出生コホートであるエコチル調査では約8割が同意していただきました。8割の方に声をかけて、声をかけた中の8割の方に同意していただきましたけれども、ゲノム解析の明快な同意の取得をするという今回の計画では、同意率は低くなることを予想し、この3万児/3年ということを考えました。さらに、兄弟姉妹例がありますので、これを除きますと1.8万家系/3年ということになります。母親、父親、祖父母をすべてあわせて、合計8.1万人ほどの三世代コホートのリクルートができるものと期待しています。
 リクルート数の年次計画は、そこにありますように、26年、27年、28年で、新生児でこの数に行きたいと考えています。
 つづいて年次計画です。平成24年度は、先ほども申し上げましたように、特定検診に参加したいと考えています。それから、地域住民コホート、子どもコホート、三世代コホートのパイロット事業を開始したいと考えています。25年度は、地域住民コホートと子どもコホートについては、標準プロトコールを策定し、本格調査を開始したいと思います。26年度には、三世代コホートの最終プロトコールを確定して、本格調査を開始したいと考えています。平成28年度には、地域住民コホート8万人と三世代コホート7万人の登録を完了したいと考えています。以後、健康調査を実施していきたいと考えています。今後、コホート調査は可能な限り前倒しで検討していきたいと考えております。
 下から3行目です。他の医療復興事業との関連ですけれども、これは先ほど説明がありましたように、宮城県地域医療再生計画、それから宮城県地域医療復興計画と密接に連携しながら実施したいと考えています。
 それでは、次のゲノムの解析のところをご説明させていただきたいと思います。
 ゲノム情報、診療情報等の集約と解析、それらのデータの共有化です。それで、先ほど来ご説明しましたコホート事業によって、15万人の生体試料と、それに付随する健康情報、診療情報等が収集されてまいります。これを基盤とし、先行する他のコホート事業と連携して、大規模バイオバンクを構築したいと考えています。それから、国内外への公平な分配等、ガバナンスの確保された大規模共同研究へと発展させたいと考えています。生体試料からゲノムやオミックス情報を取得し、健康情報・診療情報等を集約した網羅的な基盤情報を創出し、国内外と共有するシステムを構築したいと考えています。
 東北大では、被災地で増加する疾患等の分子機能解析研究などを進めることで、予防医療、個別化医療等の次世代医療を実現して、被災地の住民に提供したいと考えています。特に、疾患に関連する遺伝子や環境要因、薬物動態に関連する遺伝子等についての同定を試み、十分に信頼性の高い結果が得られた場合には、患者や東北地区の住民にフィードバックすることも将来的に検討したいと考えています。
 このような網羅的解析の必要性について少しご説明したいと思います。遺伝子情報の取得が飛躍的に容易になった現在、ゲノムコホート研究では個人のゲノムを詳細に決定し、健康・疾患との相関性について議論することが求められています。個人ゲノムの解析が進むにつれて、個々人の間にはゲノム全体で数百万カ所の塩基配列が異なることが判明しています。この塩基配列の相違が、頻度の高い疾患、common diseaseの発症にかかわっていることはある程度証明されていますが、その病気への寄与が比較的小さいこと、またこのようなデータが欧米人の解析結果によっている場合が多く、日本人とは遺伝的に異なっていることも知られています。
 これまでのような解析法による遺伝的素因と疾患発症の関連を想定した臨床研究をより精度の高いものにするためには、高頻度の遺伝子変異、common variantに加えて、病気の寄与が大きい低頻度の遺伝子変異、これをrare variantと呼びますけれども、この解析を行うことが重要であると考えています。遺伝子情報・オミックス情報と健康情報・診療情報を集約することで、疾患の予防や診断精度の向上、治療効果の向上を目指した個別化医療の実現を目指すことが可能になると考えています。
 rare variantの解析には、まず日本人及び宮城・岩手県民の標準的な塩基配列とvariant頻度を決定することが必須です。以下、4点ですけれども、rare variantの解析の必要性はこれまでも強く支持されております。16ページをごらんください。
 目的を達成するための具体的な実施内容についてご説明したいと思います。24年度から28年度の5年間を目途にしたものですけれども、日本人の標準ゲノムセットを作成し、他のゲノムコホート・バイオバンクと連携したいと考えています。それで、そこの最初のところにありますように、疾患と遺伝的要因を検討する際に留意すべきことは地域差の存在です。一般的に日本人は均一性が高いと言われますけれども、我が国は南北に長く、また文化や生活習慣も地域間で異なっています。そこで、遺伝的背景の地域差がやはり問題になると考えています。
 したがって、日本人の中でも地域差を示す遺伝子だけリストを保有する必要があり、地域住民コホート検体及び、全国のゲノムコホート/バイオバンク検体について、GWASデータや全ゲノムデータの比較を行いたいと考えています。さらに、バイオバンクジャパンとの連携や他の先行コホート事業との連携を行い、現在ゲノム解析を必要としている検体の解析を、時期を失することなく実施し、我が国の持てるゲノム医科学のポテンシャルを最大限活用できるようにするとともに、同時に被災地の住民により早く次世代医療を提供するための礎としたいと考えています。
 そこで、具体的には、平成26年3月までに全ゲノムを3,000人読み、各染色体座位における日本人のアリル頻度をvariant頻度0.5%程度まで決定したいと考えています。それで、これまで日本人のゲノムが欧米人と相当程度異なることが報告されているものの、数千人規模で全ゲノムの配列が決定されたことはないので、日本人にどのような頻度で、どのようなバリエーションが存在するのかを確定し、疾患関連遺伝子の抽出に対する対照配列としたいと考えています。
 さらに、得られた多型情報を検証するために、必要に応じて定量的PCR法等の解析、サンガー法による塩基解析などを実施したいと考えています。今後、次世代シークエンサーの精度向上とコストの逓減、生命情報科学的な解析技術の開発を含む解析効率の大幅な上昇が期待されるため、最新技術を遅滞なく導入し、コホート参加者のゲノムについても可能な限り全ゲノム解析を実施したいと考えています。ただ、それだけでは全部がカバーできないかもしれないので、GWAS解析と同様に、カスタムオリゴアレイやPCR法を使ったスクリーニング解析も実施する予定です。
 さて、疾患関連のアレルの探索も行いたいと考えています。それで、ここについては特に発生頻度の高い、今後被災地で増加することが懸念されている発生頻度の高いPTSDやうつ病等の精神疾患、感染症、子どもへの健康影響が大きく、発生頻度の高い疾患障害であるアトピー性皮膚炎、ADHD、喘息、自閉症等の発症が確認されたサンプルの解析を行いたいと考えています。それで、シークエンサーの読み取り能力が倍に向上すると仮定して、平成26年4月から28年3月までに8,000人の全ゲノムを解析したいと考えています。それで、これらの情報と、それから疾患の発症との相関を調査することで、環境要因の発症への寄与度を決定したいと考えています。
 具体的な解析のことについて、ここには生命情報科学解析のことを書いていますけれども、これは省略させていただきたいと思います。
 それから、18ページの上から3段目をごらんください。ゲノム解析部門で出てきたデータに関しては、個人のゲノム配列にかかわる部分は、暗号化や物理的隔離など、最高レベルのセキュリティで保護されるのは言うまでもありませんが、関連解析の結果など、個人と切り離すことができる部分に関しては、統合データベースなどと連携して、速やかに情報開示を行い、国内外の関連研究の発展につながるように留意したいと考えています。
 オミックス解析については、ぜひ実施したいと考えていますけれども、説明は省略します。
 それで、19ページをごらんください。4番目です。生体試料、データ、成果の共有と公開についてお話ししたいと思います。これらはこのような原則で公開と提供を行いたいと考えています。A、生体試料・データのオンラインカタログと集団として解析した結果については、あらゆるチャネルを通して、研究コミュニティーにかかわらず原則として広く公開したいと考えています。
 B、バイオバンクに保管された個別データですけれども、バイオバンクに保管された生体試料、それからその関連電子情報については、試料分配審査委員会において研究計画を審査し、合理性が担保されていると評価された機関については、匿名化等の適切な処理を経た上で原則として提供したいと考えています。
 試料分配委員会は東北大に設置し、東北大に限らず広く有識者からなるメンバーで構成したいと考えています。配分に関する基本的な考え方は、緊急性、科学的妥当性、実行可能性、被災地住民をはじめとした人類への貢献度、当該機関でのセキュリティー等を考慮したいと考えています。民間や国内外への広く分配するものとしますけれども、特に個人情報等のセキュリティーを十分勘案した上で、審査したいと考えています。
 それから、遺伝子情報の結果として得られたデータですけれども、これについては公開に関するルールを策定した上で、それでJSTのNBDCが開設しているポータルサイトを経た公開を検討しています。もちろん、情報の性質上、広く公開するのに適さないと考えられる情報についても、できる限り研究コミュニティーと成果を共有できるような方法を考えていきたいと思います。
 さて、どんな疾患を対象にするかということが20ページに書いてありますけれども、これについてはこれまで少しずつ説明してまいりましたので、ここは省略したいと思います。
 22ページをごらんください。4番目です。実施に必要な環境整備ですけれども、概要と目的を簡単に申し上げたいと思います。地域医療の復興を成し遂げるためには、医療施設や設備の復興だけでは不十分で、医療を担う人材が将来的に被災地にとどまり続ける仕組みをつくることが大切です。それで、このために本事業を実施していくためには、多くの医師やGMRC、バイオインフォマティシャン、データマネジャー等の人材が必要になります。これらの人材について、本事業を通じて将来的にキャリアパスを確立し、育成・確保していくことにより、人材面からも地域医療の復興を成し遂げることができると考えています。これらの人材については、東北大における育成と全国からの公募の2つの軸をもとにして、それで要請していきたいと思います。
 それで、どのような人材が必要かと、それからどれくらい必要かというのは、23ページに具体的な数が書いてあります。それで、医師について必要な医師数、300人、10年間延べ数と書いてあります。これは数字をごらんになっていただければと思います。
 最後に、24ページに倫理的な課題の検討ということをご説明させていただきたいと思います。24ページのBです。インフォームド・コンセントについては、未確定な研究内容に対する包括的な同意取得、個別化医療、産業利用も含み得るゲノム情報等の利用に関する同意取得、医療情報ネットワークを通じた診療情報収集に関する同意取得の考え方について、国立がん研究センターで実施されているゲノムコホートFS等の先行コホートの事例も踏まえて、早急に暫定版を作成し、パイロットスタディーを実施したいと考えています。その結果を踏まえ、本格調査に使用するインフォームド・コンセントのあり方を検討し、関係機関との統一的な方針のもとで確定したいと考えています。
 また、個人情報や生体情報の保存方法、セキュリティー、対応表の管理、遺伝情報の開示、得られた知財の帰属等については、ゲノム指針の改正内容も踏まえつつ、先行コホートの事業の例も参考にしながら具体化していきたいと考えています。長浜コホートのように、必要に応じて条例の制定も検討したいと思います。
 少し長くなりましたけれども、最後の25ページのところに、これに関する第1段階5年間の年次計画をお示ししてあります。参照していただければと思います。私の説明は以上です。

【豊島主査】  どうもありがとうございました。委員の先生方からいろいろご質問したいことがあると思いますが、とりあえず先に、東北メディカル・メガバンク事業への参画を現在検討しておられる岩手医科大学より、一言ごあいさつとご説明をお願いしたいと存じます。

【祖父江副学長】  岩手医科大学副学長をいたしております祖父江でございます。よろしくお願いします。
 まず最初に、本計画を立ち上げられました文科省及び東北大学に深い敬意を表したいと思います。
 私どもは本計画に関しまして参加をさせていただくという前提で、本日は私どもの考え方を少しご説明させていただきたいと思っております。ちょっと座って説明させていただきます。
 まず、先ほど来お話が出ておりますように、本計画の骨子は巨大なメガバンクを構築するというところに一つはございますが、ただそのメガバンクを、生体試料を被災地の皆様方からいただいて構築していく、そのところに関しては、かなり十分な被災地の人々の心と健康を守るという立場からの配慮が大事であろうと思っております。そういう意味合いで、かなり厚い手当てといいますか、そういうものをしながら進めていくことが大事ではないかと考えております。
 それから、そういう意味合いで申しますと、いわゆる被災地の皆様方の健康生活の介入なくして、本研究の調査はあり得ないとも考えております。この本計画というのは、おそらく将来日本でまた起こり得るかもしれない大災害、そういうものに対する1つのモデルケースであろうと、それをいわゆるナショナルプロジェクトとして遂行するというところに大きな意味があるのではないかと考えております。
 今回の巨大なメガバンクでございますが、これはあくまでも健康人のコホートではないと私は考えておりまして、むしろ被災をされた方々、つまり震災あるいはストレスをキーワードとしたコホートではないかと考えております。そういうスタンスで今後メガバンクに遂行していく必要があるんではないかと思っております。
 現在、我々岩手県におきましては、23年度の補正予算で岩手県と岩手医科大学とによりまして、「岩手県こころのケアセンター」というものを設置いたしております。今年の2月の15日でございますが、岩手医科大学にそのセンターを設置いたしまして、沿岸諸都市、久慈、宮古、釜石、大船渡の4カ所にそれぞれ沿岸サテライトをつくりました。これは3月28日に開所いたしております。このいわゆるこころのケアセンターの活動といいますのは、現時点で約五十数名のメンバーがおりまして、医師、看護師、臨床心理士、保健師といった方々により構成され、この4カ所の沿岸それぞれのサテライトを中心に、沿岸の市町村のある面で言えば、住民の人たちの心と体を守るという草の根的な活動を現在開始したところでございます。
 そういう意味で、この東北メディカル・メガバンクの中で我々が、さらにこのこころのケアセンターをさらにパワーアップした組織で、いわゆる草の根というスタンスで沿岸の被災の皆さん方のケアを続けてまいりながら、バイオマテリアルを収集し、さらにその解析、研究を行ってまいりたいと思っております。今日は簡単でございますが、ごあいさつということで話をさせていただきました。

【豊島主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今までいろいろご説明がありましたけれども、本計画検討会の目的と申しますのは、先ほど事務局から説明がありましたように、文部科学省や自主機関への提言を行うことになっております。今後、5月末を目途に、委員の皆様からご発言をいただいたご意見や、あるいはその提言をまとめていくことになると思います。一方で、この東北メディカル・メガバンク計画は内容が多岐にわたりますために、議論を効率的に進めていくために、対象とする論点を挙げて2回にわたって議論を行うことにしたいと存じます。
 具体的には、本日は主に健康調査、バイオバンク構築、携わる人材に関する点をご議論いただき、今後開催することを予定されております第2回以降で、残りのゲノム情報、診療情報の集約、解析研究といった点を議論し、提言に盛り込む内容を検討していきたいと考えております。なお第2回が終了しても議論すべき点が積み残されていた場合には、第3回でそれらについて議論を行うという予定にいたしております。
 では、これから今日は主に健康調査、バイオバンクの構築及び携わる人材に関するご議論をいただきたいと思います。どうぞご議論をお願いいたします。いかがでございますでしょうか。
 はい、どうぞ。

【河野委員】  それではご質問させていただきたいと思います。
 医療支援というようなことが非常に大きく前提とあるということと、それから被災というような医療のニーズの高さから考えますと、治療的な介入というのが健康調査の中で、コホート調査の中でかなり重要な部分を占めると思うのですが。本来的なコホート調査のことを考えますと、治療介入をした場合にその分析ですね、コホート研究自体に対する影響というのがかなり大きなものがあろうかと思うのですが、その辺のところのあり方はどのようにお考えでしょうか。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  確かに、コホート研究をやるということになると、介入をしないで見ていくことが一番科学的には正しい方法かもしれないですけれども、今回の場合にはやはり介入をしていこうと考えています。特に子どもの場合、それから実際に津波で被害を受けられた方の場合には、結果を積極的にお戻しして、それで介入をする。また、介入の後も、また長期に追いかけることによって、長期にわたって健康を見守るような、被災を受けた方の健康を長期にわたって見守るようなことをしたいと思います。それで、少しデータが変わるかもしれないですけれども、一応私どもが検討をした結果では、それは普通の疫学調査でもやることだと理解しています。

【河野委員】  挙がっている疾患が、比較的環境要因などの状況が非常に影響しやすい疾患が挙がっているものですから、それでやはり長期にわたることになりますと、インセンティブも考えると治療介入というのは必要であろうと私はわかるんですけれども、これだけ、例えばアトピー性皮膚炎等、アレルギー疾患等々も非常に環境的な影響があることを考えると、介入の影響というのがほかのコホートよりもより大きく出る可能性があるのではないかと。そうすると、これだけの大規模研究の場合、ちょっとそこが気がかりだなという気はいたしました。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  疫学が専門の栗山教授からご説明いたします。

【栗山教授】  ご質問ありがとうございました。おっしゃるとおりです。今回は、特に観察研究のみは許されない調査と心得ておりますので、その介入したこと、そのものをエクスポージャー、曝露として評価して、4年に1度と申し上げました。できればもう少し短い間隔でできればいいですが、対象者数が万単位ですので、最長でも4年に1度、その4年後のエクスポージャーも含めて、その時点での状態、要は最初のベースラインと4年後、両方を評価することで、その間の介入もしっかり評価しながら評価していきたいと。例えば米国のNurses’ Health Studyなんかは2年に1回曝露評価をして、エクスポージャーが変わることを追跡しております。ああいったものを、デザインを日本でしたいと考えております。

【豊島主査】  ほかに。はい、どうぞ。

【清原委員】  今、介入すると言われましたが、これは致し方ないことかもしれませんが、コホート研究で介入をやると、その結果が本来ある疾病とその原因の因果関係を見ているのか、介入の結果なのかがわからなくなると私は思います。したがって、将来的に全国規模の大きなコホートをつくるということのようですから、なるべく早い時期にその中にでも検証コホートをつくるべきと思います。それによって、被災地でのコホートの結果が震災特有の現象なのか、普遍的なものかどうかがわかるのではないでしょうか。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  お話のとおりだと思います。私どもも対象コホートというようなことを考えて、それをぜひつくっていきたいと考えています。そのとおりに進めたいと思っております。

【清原委員】  もう一点よろしいですか。
 本来コホート研究は観察研究で、対象となる地域に負担のかかる研究です。このプロジェクトの受け手側の東北の自治体は震災で疲弊されておられると思いますが、下手をするとこの地域にさらに負担をかけるだけで終わってしまうということになりかねません。受け手側の自治体の協力があって初めてこういう研究が成り立つわけですから、その自治体の実態を把握して、そこで受け手となる方々、例えば地域の保健師さん方の協力を得る方策や支援する体制が必要ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  ほんとうにそのとおりだと思います。それで私どもは、私のご説明のところにも少し触れさせていただきましたけれども、やはり地域の保健医療体制が疲弊しておりますので、それに対して過度の負担がかかることのないように十分に配慮した設計、それから私どもメディカル・メガバンク機構側からは十分な支援をするような体制を組み立てていきたいと思います。
 これについて、岡部部長、少しご発言いただけますか。

【岡部委員】  宮城県の保健福祉部長の岡部でございます。まずもって、震災直後から、本日お集まりの方々をはじめ、全国各地から大変なご支援、温かいご支援をいただきましたことを、この席をおかりいたしまして、まずは御礼を申し上げたいと思っております。
 宮城県の状況でございますけれども、津波の浸水面積も全国の6割ぐらいを占めるというふうなことで、大変被害の大きいところでございまして、1万人を超える死者と、行方不明者も1,600人というふうな状況になってございます。そうした中で医療機関、1年たちましても、石巻とか気仙沼は3割、2割、休廃止というふうな状況でございまして、医療の再生復興というのは大変大きな課題でもあるわけでございます。それに当たりましては、当然ながら新しいまちづくり、大変長期化するわけでございますけれども、その復旧再建とともに、医師の確保なり、医療資源としての人材の確保なり、流出防止、あるいはICTを活用した地域の医療の連携というのが大変重要だと考えておるところでございます。
 そうした中で、国のほうの復興の基本方針の中でもこういった構想が位置づけられましたので、これまで県のほうにおきましては、地域の医療再生を考えるということで、関係の方々、ほんとうに集まっていただきまして議論を闘わせて、地域医療復興の方向性の中にも、こういった東北メガバンク構想との連携というようなことも位置づけをさせていただき、それを踏まえて県の復興計画にも位置づけをさせていただいているというふうな状況でございます。
 いろいろ大変地域、厳しい状況ですので、保健活動につきましても、おっしゃるとおり大変厳しい状況ではあるというふうなことでございます。被災者の方々の健康管理についてもさまざまなご支援をいただきながらやっているところでございますけれども、5月には早々に東北大学のほうで公衆衛生活動とか、そういった壊滅的な状況を踏まえて、地域保健活動のための支援センターなども立ち上げていただいているというふうなことで、相当お力をいただいているというふうな状況もございますし。状況といたしましては、ほんとうに長期化する被災者の状況がありますので、健康管理面について、さまざまな健康調査について、フィードバックをしていただきながら、被災者の方々の健康管理をやっていくというのが非常に極めて重要な観点だとは思っておる次第でございます。
 私どもの地域といたしましては、こういったメガバンク計画によって、県のほうでも医療情報、福祉のネットワーク形成のための協議会を11月に立ち上げてさまざま活動しておりますけれども、そういったものとの連携を行いながら医療資源の有効活用を図っていただくということも期待しているところでございますし、先ほど申し上げましたように、被災者の管理、健康管理面について、大変な課題でございますので、そういった面で結果をフィードバックしていただきながら、健康増進なり維持管理に努めていくということを大変大きく期待しているところでございます。
 また大きくは、やっぱり人材の確保というのが大変重要な観点でございますので、県といたしましても、さまざまに医師の循環的な配置とかキャリア形成を目指します育成機構とか、大学の総合医療研修センターとか、あるいは地域医療支援という寄附講座なども設けさせていただくとか。あるいは大学のほうでは臨時の定員増をしていただくとか。さまざまな形でそういった人材の確保策をとっておりますので、こういったメガバンクによる吸引力によって若い優秀なお医者さんが来ていただいて、地域の中で活動していただきながら地域の医療を支えていただくということに対しては、大変大きな期待をしているというふうなところでございます。
 我々も、単にこういったメガバンクだけに頼るのではなくて、それぞれ地域の自治体なり県としましても、一生懸命そういった面で人材の確保なり地域の医療体制なり、保健活動をやっていく体制を強化しながら、それと連動してこういった計画を進めていただくということを十分認識して取り組ませていただきたいと考えているところでございます。

【豊島主査】  どうもありがとうございます。
 はい、どうぞ。

【末松委員】  資料6の9ページのところです。健康調査、コホート調査のためのリクルート推進のところで、9ページの中段から下段にかけてのところで質問です。東北大学から派遣される医師が1年のうち4カ月は対象地域でリクルート活動を行う、専従医療者として地域医療機関を支援する、残り8カ月を東北大で研究や教育ということですけれども、エフォート率はこれで本当に良いのかという点です。
 おそらく東北地方で、宮城にしても、それから岩手にしてもそうだと思うんですけれども、発災前から100%エフォートでコミュニティーと緊密に信頼関係を培ってきたたくさんの医師の方、コメディカルの方がいらっしゃると思うんです。その中で今回、現場の出されたこの循環型の医師の派遣制度について、ここをもう少しフレキシブルにしないと、フレキシブルというのは、おそらく100%エフォートで災害地のことを今までやってこられた方は、やはりそこから新しく来る方、新しい医師の方、あるいは公募でほかの地方から来られるような人たちとうまくコーディネーションできるかどうかという、感情的な問題が起きないかどうか。その辺はどのように考えておられるのか。
 私の気持ちとしては、やはりあまりバリアンスがあるのも問題ですけれども、このエフォートのうちの3分の1で対象地域の支援を行うという部分が、この事業にアプライを出される医師の方には、より大きなエフォートで地域に貢献したいという人もおそらくいると思いますし、そういったところはぜひ、弾力的に地域の既にもうほんとうに疲弊して頑張っておられる方々とのコーディネーションを考えると、その辺は事前にこのプロジェクトでどんな議論があったのか、この4対8ですね、そこだけはちょっと伺っておきたいなと思いまして。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  よろしいでしょうか。
 ご質問ありがとうございます。これは実際に末松委員がお話になられているような案です。少し舌足らずのところがありました。例えばこの4カ月というのは、3人でチームを組む際の4カ月です。3人でチームを組んで1つの診療機関を支えると、1つのポジションを支えるというときに、1人の若手医師は4カ月いると、残りの2人は8カ月大学にいる、さらに1人が帰ってきたら、次のA、B、Cとしますと、Bが行く、Bが帰ってきたらCが行くという形で循環型にするということです。1つの病院を、1つの診療機関を支えるのに3人でチームを組むということになると、この4カ月ということになるのですけれども。これについては、ご指摘のように半年がどうかとか、もっと短く2カ月ではどうかとかという議論はたくさんあり、バリエーションはもちろんあると考えています。
 ただ、ここでの問題点は必ず送って、帰ってくることです。特に若手の医師のキャリアパスを考える上では、高度医療や先端医療や医学研究に触れる機会を保証しながら、しかし被災地の地域医療にも貢献するという、このキャリアパスを支えるやり方として、循環型の医師派遣制度というのをつくり上げようと考えていました。
 それで、これについてはちょっと舌足らずでしたけれども、もちろん派遣されている4カ月なり6カ月の間は、相手先の病院のほうから給料をいただいてそれで働きます。それで、戻ってきたときには大学で、メガバンク事業を支えるための、この事業のための給料を出すという形の循環型を考えております。

【岡部委員】  宮城県です。地域の実情から申し上げますと、もともといらっしゃって、被災地で頑張っていらっしゃるお医者さんというのは、ほんとうにこういった研究をやる際には望ましいとは思うんですけれども、先ほども言いましたように、2割、3割の医療機関が休廃止というふうな状況で、なおかつ大きな中核の病院とかが全壊状況にありますので、大変多くの先生方がそういった地元に残れない状況があります。なおかつ被災者の方々の生活というのは大変長期化するわけです。
 そういった地域においては、多少なりとも先生方が循環というふうな形で変わるというふうなことであってもですね、とにかく地元で診療をしていただけるなり健康管理をしていただけるということがほんとうにありがたい状況であって。もともといらっしゃった方が地域に戻れるという状況には相当の時間がかかるということも、ちょっと地域の実情としてはご理解いただきたいと思っております。

【豊島主査】  ちょっと松本先生、よろしゅうございますか。お時間があるらしいので、先にもし。

【松本委員】  いや、まだ大丈夫ですが。
 わざわざありがとうございます。今、議論させていただいていろいろ伺っておりまして、だんだん実現に向かって少しずつ進んでいるのかなと思っております。これは極めて単なる競争的資金でどうのこうのという話ではなくて、国の極めて大きな合理的な施策として動かすということが大事だと、私自身は思っておりまして。そういう意味で、山本先生には、何度も言いますけれども、ノブレス・オブリージュということでほんとうにご苦労さまですと申し上げているわけでございます。
 やはり、この施策がほんとうに成功するかしないかは、先ほど専門家の方から、介入をしたことによってどういう影響があるかとか、細かい議論はたくさんあるんですけれども、最終的にはやはり復興事業としてこれが被災民の方に認められるかどうかということが一番大きいところだと思うんですね。ぜひそういう立場に立って、このコホートをつくっていくということが将来の全体の日本の医療の、ある意味で、ここで復興と私が言うとちょっとまずいのかもしれませんが、いろんなところで言われている問題がきちんと動いていけるような仕組みにしていただければと思っております。
 ぜひコホートをつくって、それがどういうふうに活用されていくかというのは、やはりせっかく今までいろんな方がこういった研究をやっておられるわけですし、学会もあるわけですから、そこの知恵がきちんと入って、一緒にオールジャパンとして知が回っていくような仕組みを文科省でも東北大学でも考えていただいて、そういう意味で真に専門家の方が協力できる体制をつくりつつ、動かしていただきたいと思っております。
 そのためのきちんとした枠組みの設計を拙速にやるのではなくて、少し時間がかかってもちゃんとやるということだと思いますし。最初ボタンをかけ間違えるとなかなか難しいということもございますから、もう一度立ち直るという、もとに、原点に戻って考え直すということもおそれず、ぜひやっていただければと思っております。
 十分な、やはり国民に対する説明責任ということを果たしていくというのがこの事業の極めて大きな論点だと思いますので、ここに集まっておられるほんとうの専門家の方が、これは意味のある事業だということが納得して動けるような、そういう体制の中でぜひ進めていただければと思います。どうもありがとうございました。

【豊島主査】  先生、どうぞ。

【河野委員】  松本先生から本質的な議論と言われちゃうと、なかなか発言がしづらくなっちゃうんですけれども。
 私、やはり今の先ほどの議論の続きなんですが、医師の地域医療の派遣のところで、やはりゲノム研究をやるというインセンティブの医師と、それからやっぱり地域医療を担う医師のインセンティブというのは異なると思うんですね。それで、非常に短期間であれば、先生のこの循環型の考え方というのは非常にまずの対応としては非常に重要なよいアイデアだろうと思いますし可能だろうと思うんですが、やはりこれ、そんな短い期間で終わる事業ではもちろんないんじゃないかと。それを考えたときに、こういうようなインセンティブの異なる医師が、地域のほんとうの末端、末端と言うと何か語弊があるかもしれませんが、現場の医療を担えるのは長期になったとき少し疑問があるかなと。
 そのときに、例えばですけれども、コホート研究の現場での担う医師ということと、それから分析等々の中央とのやっぱり動く医師と二段構えで、やっぱり地域にある部分、もう少し長期にわたってのやっぱり地域医療ということを軸に置いた医師の存在というものもこの中で考えないと、コホート研究ということと、それから地域医療ということが何か私、これを読んでお話をお聞きしても少しちょっとそぐわない部分があってですね。その辺のところを、もう少し具体的な橋渡しの案をそこに入れておかないと、現実地域医療というところが、現場が一番困るのが地域の患者の方々じゃないだろうかと思うんですが、いかがでしょうか。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  お話しのとおりだと思います。
 それで、これは文章にしてしまうとこうなるのですけれども、私どもには長い期間、東北地方の地域医療を支えてきた歴史があります。それで、地域医療をしっかりやる医師と、それから最先端研究をやる医師が、あるところでは同じようなキャリアパスの中で切磋琢磨しながら自分の適性を見つけていくということの一つのインキュベーションの期間として、これを使っていくということも大いにあると考えています。
 それで、地域医療のほうに向かって伸びていく方はやっぱりそちらの方を主にしていってもらうし、それからゲノムの最先端研究に入ってくる方はそちらの方に、医師はそちらのほうに入っていくということで、落ち着いてきたころに地域医療の支援の体制も見直していくということができると思うのです。しかし、今この時点で循環型の医師派遣制度を、今までの医局制度とは違う新しい循環型の医師派遣制度を確立しないと、いつまでたってもやっぱり地域に医師が出ていくという形にならないで、若手の医師がみんな中央、東京のほうに集まってしまう体制になってしまいますので、最初は循環型の医師派遣制度から始めていきたいと考えております。切磋琢磨していく中で、やっぱり次から次へと地域医療を希望する医師、それから先端研究を希望する医師が巣立っていくような体制をこの中からつくり上げていきたいと考えています。

【豊島主査】  どうぞ。

【桐野委員】  実際、今ご指摘があったように、なかなか困難な状況下で、何とかその一方で地域の医療に貢献しながら、一方でメガバンクを動かしていくにはどうすればいいかとお考えになったものだと思います。これだけの数の医師が、一方で地域医療にもある程度貢献しながら、一方でバイオバンクの運営とかバイオインフォマティクスとかを含めたこういう研究を学んでいくというのは、言ってみれば大変難しいので。この200名から300名の人たちがこの後どういうふうに育っていくかということも十分お考えの上だと思いますけれども、期間も長いですし、初めてこの研究に入ってきた方々が終わるころにはもう専門家になっているようなタイムスパンですので、そのあたりをよくお考えいただく必要があると思うんですね。
 そのためには、やはり何人かの先生が率直にご指摘になって、私も何度も同じようなことを言っていますけれども、被災地の困難な状況を初めにご説明いただいて、その直後に復興を目的としてメガバンクを設置するというふうに説明をされると、何かごく普通の感覚からいうと奇異な感じがしますが、実際はいろんな意味があって、よく伺うとよくわかるんですけれども、そのあたりを住民の方にもよく理解してもらうことと、それからこの研究に参加する若手の医師や看護師、CRCの方々も、そのあたりの意義を十分理解して、将来のために必要だということを理解した上でおやりになるということがなければ、確信を持ってできないと思うんですよ。何となく確信のない状態でやるというのでは、うまくいかないんじゃないかなと危惧しますので、そのあたりをよく準備されるといいかなと思います。

【金岡委員】  先ほど祖父江先生のほうから、このコホートというのがそもそも健常人のコホートではないと、震災でストレスがかかってという状況でのコホートであるというお話でしたけれども。まあ、介入ということともかかわるかと思うんですが、そうしますと、例えばある疾患が増えたかどうかということもこの中だけでは比較のしようがないわけですね。そうしますと、先ほど山本先生が標準コホートというようなこともおっしゃっていましたけれども、そういったものがぜひ必要になるのかなと考えます。
 そこで質問なんですけれども、その標準コホートというのは具体的にどういう形で整えようとされているんでしょうか。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  対象コホートを被災地以外の場所に置くというのが良いと考えています。それで、先行するゲノムコホートと連携する、先行する前向きコホートと連携するというのが、対象コホートを置くというのでは1つの考えと思います。それから、被災地に近いところで、地震で揺れたのですけれども津波の被害は起きなかったというところを調査区域に加えるというのも、もう1つの考えと思います。私ども、その両方が対象コホートになると考えています。それで、対象コホートを置いたほうがいいというお考えについては、ほんとうにそのとおりと考えています。

【祖父江委員】  先ほど来出ている議論とちょっと関連するんですが。私も全体のご説明を聞いて、もちろん非常にすばらしい内容でセットされていると思いますが、やっぱり職種別の人材のキャリアパス、5年後、あるいはさらにその先ですよね、そこの記述がちょっと薄いかなという気がします。ですから、例えばここに入った人は将来どういうことを目指すのか、あるいはどういう形を構想されておられるのか。人材育成という観点が僕はやっぱり非常に重要になってくるんではないかと思っておりますので、その辺の、おそらくいろいろな、先ほども研究をやる人と地域医療に入る人という分け方がございましたけれども、おそらくもっと多様なキャリアパスが描けるんではないかと思います。
 しかも、5年でありますけれども、もうちょっと、このコホート自体が5年で終わるコホートとはとても思えないですね。5年は多分入り口的な議論で、そこから先にほんとうの意味づけができてくると思うんですね。ですから、それと相まって人材を、じゃあ将来を見込んでどうキャリアパスを描いていくのかというところが、僕はもうちょっとご説明いただけるといいなとは一つ思います。
 それから、もう一点だけいいですか。この前もちょっと申し上げたかと思うんですが、やはりこれは国策的な事業として、最終的には全国に及ぼす事業、全国にアプリケーションを及ぼしていくということですし、住民の、あるいは国民の合意を得るということになりますと、このゲノムコホートというのは、一般の人にはなかなかわかりにくいんじゃないかと思うんです。ですから、これをやることによって何が見えてくるのか。一般の人というか、それから地域の方々にとってこのゲノムコホートというのはどういうものが見えるために協力してもらうのかという、そこのあたりの語り方というんですかね、そこをもう少し工夫していただけると、より入ってくるという感じはちょっと思ったんですけれども。
 なかなか今すぐ出口を見据えるというのは難しいかもしれませんが、やっぱりナショナルプロジェクトである以上、例えば10年後に月へ人をやりますよとか、何かそういうスローガンとまでは言いませんけれども、何かそういうものがゲノムの側にもあるといいなと思います。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  ありがとうございます。それで、祖父江先生のお話の通り、やっぱり2つの論点が重なってあるように私は思います。次世代シークエンサーの大きな普及によって、最初の1人のシークエンス決定は13年かかったのが今は1週間で決まるという、この大きな遺伝子解析のビッグバンの時代に、ゲノムの情報に基づいた医療が展開していくのだと思います。そして、それは個別化医療の形になるかもしれないし、新たな創薬につながるかもしれません。それから副作用やPGxにつながるかもしれないということで、それは大きな絵が私どもは見えていると思います。それで、将来のゲノム医療に発展したときに、そこで働く新しい職種の人たちの養成に私たちがこれを通して取り組むんだということを私は考えています。
 それでご質問の、出口はどこにあるのかというお話ですけれども、私どもは、これ前向きコホート、ゲノムコホートと考えています。ゲノムだけではなくてオミックスも行いますので、分子疫学コホートと呼んだほうが良いのかもしれないんですけれども、一般の方へのわかりやすさから考えればゲノムコホートと呼びたいと思います。それで、このゲノムコホートは疾患のコホートと相補的に発展しますので、今度は患者さんを集めるコホートが盛んになれば、コホート研究が大きなトレンドになって、それで日本の臨床医学の医学研究を支える基盤ができていくんだと思います。その基盤をつくり上げるときに働く人材は、今までの医師や看護師や検査技師さんだけでいいのかという視点から、新しいGMRCということを申し上げました。それからCRCと申し上げました。インフォマティシャンということも申し上げました。こういう新しい職種を養成していかなければいけないのだということで、それが人材育成であり、この骨子案中には、今日は時間がないのできちんとすべてを説明しませんでしたけれども、公衆衛生大学院をつくることによって、そういうものを養成していくということをご提案しています。

【祖父江委員】  まさに今先生が言葉でおっしゃったことが、見える形で最初にドーンとした形であると非常にいいなと思います。よろしくお願いいたします。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  ありがとうございます。

【赤林委員】  今の桐野委員や祖父江委員のお話にフォローアップさせていただきたいんですけれども。
 今日、せっかく公開で討論会をやっておりますが、まだまだ非常に大学目線、研究者目線といいますか、それとあと役所目線という、そういうところがぬぐえないところがあるんじゃないかなと思うんですね。それで、お話をよく伺っていると、私も研究者の端くれですので、この計画全体の意義がよくわかるんですね。
 せっかくこの10ページに、Dのところ、対象地域における広報というところがございます。ここに、2段落目にサイエンスコミュニケーションというキーワードが出てきますけれども、これまでもゲノムコホートも含めたこういう種類の国民の皆さんからの理解を得る、住民の皆さんからの理解を得るというためには、このサイエンスコミュニケーションという領域が非常に重要な役割を果たすということが言われておりますし、これまでも幾つかの地域で動いている部分もございますので、そういう皆さんの知恵もぜひ借りて、全体のこのトーンといいますか、それをこれ広報というレベルではなくて、このプロジェクトを動かすための一番重要な部分だぐらいに思われて、サイエンスコミュニケーションというキーワードのところをぜひ強調されて、国民の皆さん、地域住民の皆さんにアピールしていくとうまくいくんじゃないかというふうな印象を持ちました。以上です。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  ご指摘ありがとうございます。まさに委員のお話しのとおりで、私どももそう考えています。それで、私から少しご説明した後で、栗山教授のほうから少し話をさせていただきます。
 私どもはサイエンスコミュニケーションというのは、私どもから参加してくれる人たちへのアピールをするだけではなくて、やっぱりコミュニケーションは双方向性ですので、地域住民の方たちの意見をサイエンスコミュニケーションの能力を持つ人たちから、力のある人たちからメガバンクの事業にフィードバックしていくところもサイエンスコミュニケーションを専門にする人の仕事になると考えていて、そういう人材をやっぱり養成していくし、それから集まっていただくことが非常に必要だと考えています。

【栗山教授】  栗山でございます。大変貴重なご意見ありがとうございます。
 徐々にではありますが、私どももこちらのさまざまな計画、あるいは実行しておりまして。具体的に申し上げますと、例えばバース・コホートで、アメリカのナショナル・チルドレンズ・スタディーというのがあるんですが、実際に対象者となる方、あるいは自治体の方、それから医療スタッフの方、それぞれにインタビュー調査をして、どういうニーズがあって、これをどう受けとめられるかというスタディーもございます。それに倣うわけではないんですが、もう実際に被災者の方、あるいはいわゆる対象となる疾患の患者さん、あるいはその患者の会の方にご意見を伺う等の手続、それからもちろん自治体の皆様、それから医療機関の先生方、いろいろご意見を伺いつつありまして、それを今集約していくところです。それに基づいてさらにサイエンスコミュニケーションをということで、先生におっしゃっていただいたとおりでございます。

【久保委員】  最初の地域医療の支援のところから次世代型医療につなげるところとして、その間にバイオバンクの構築であったりゲノム解析であったりというのが入ってくると思うんですけれども、先ほどからご指摘があるように、その間には少しギャップがあるというか、被災地の住民の方々に理解していただくためには、もう少し詳細なというか、具体的な説明があったほうがよろしいんじゃないかという気がしました。
 それと、これはおそらく東北メガバンクだけではなくて、ほかのゲノムコホートであったり、いろんな事業と連携していかないといけない。そういう意味では、連携するために、バンキングの構築に当たっての整合性であったりデータの整合性であったり、そういうところも今後日本の全体のゲノム研究が進んでいく中では必要な話になると思いますので、そのあたりも考慮していただければと思います。
 1点、ちょっとご質問をさせていただきたいんですが、この最初の地域医療の支援のところで最初に健康調査をされる、それから1年以上おくれて、今度はゲノム研究のためのインフォームド・コンセントがとられる。ここをずらしていらっしゃるのは何か理由があるんでしょうか。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  ありがとうございます。
 久保委員のお話は、ほんとうに同意するところです。ご質問の点は、何で健康調査を先行させるかと、地域医療支援を先行させるかということなんですけれども、今具体的に被災された方たちがおられて、それで地域医療が非常に立ち行かない状態になっているわけです。そこに対して、先ほど宮城県の岡部部長からもご説明があったように、保健のほうについては私たち昨年の5月1日にもう保健医療支援センターというものをつくって、公衆衛生面での保健師さんや保健所活動については支援を始めたんですけれども、医療のほうの支援もやっぱり先行させなければいけないということなので、健康調査を先行させたい。
 それから久保先生もよくご存じのように、こういう大きなゲノムコホート事業、コホート事業、疫学事業をやるためには十分に準備して、それで質問項目、先ほどお話しになられたように、質問協力項目や調査項目の共通化というのをなるべくやったほうがいい、先行するコホートや今一緒にやっているコホートとの共通化をやったほうがいい。それから包括同意のとり方についても十分に心してやったほうがいいというところでは、やはり準備の期間が必要だと思います。拙速にコホート事業を始めないで、しかし地域医療支援について、それから地域保健支援については、この事業を通して早くやるということを考えると、先生が言われたように、1年私どもが本格開始をおくらせるというのは、私たちにとっても早く始めなければいけないものと、それからしっかりと批判に耐える科学的な事業をやるということのバランスをとったというふうにはご理解いただけないでしょうか。

【豊島主査】  よろしいでしょうか。
 はい、どうぞ。

【門脇委員】  このプロジェクトは、東北大学を研究の中心とし、目的としては東北地区の医療復興を目指すと、それにあわせて次世代医療体制を構築するということで、これは日本の再生を左右するような非常に重要なプロジェクトで、そういう点で今までもご指摘ありましたように、このオールジャパンのこれまでの経験、あるいは英知を集めて非常に間違いのない計画をつくる必要があると。そういう点から見て、不十分だなと思うことが幾つかあります。
 概要のところで、東北大学の推進体制ということが4ページに書かれていますけれども、極めて三、四行だけ書かれていまして、具体的にはどのような推進体制なのか見えません。それから、本事業を推進する段階において、論点ごとに有識者を集めたワーキンググループを立ち上げて推進方策を検討すると。で、これについてはむしろ推進段階ではなくて計画段階からオールジャパンの英知をそれぞれの分野で結集する体制をつくるべきではないかと思います。
 もう少し具体的には、今日もご指摘がありましたように、我が国のゲノム研究は、これまでバイオバンクプロジェクトをはじめとして国際的なリーダーシップをとってきましたし、また久山町研究をはじめとする優れたコホート研究が行われ、また幾つかのコホート研究が現在進行中であります。これらの成果をどのように生かすのか。確かに、文言としてはそういう成果を生かすということが書かれているんですけれども、もう少し具体的にそこを詰めていく必要がありますし、そのようなコホート研究やゲノム研究と連携していくという、その連携のあり方についてもさらに具体化する必要があると思いますし、実際には、そのようなゲノム研究にかかわった先生方、コホート研究にかかわった先生方が計画段階からこのプロジェクトの計画立案に参加する形で、オールジャパンの英知を結集するべきだと思います。
 さらにこの資料5、横長の基本となる、これ予算案に付随する資料でありますけれども、そこにはナショナルセンター、あるいは理化学研究所、関係大学と連携するということを前提に東北大学を中心にして実施するということの絵になっていますけれども、具体的にナショナルセンターや理化学研究所、関係大学、こういうところがさまざまな英知を持っているわけですけれども、具体的にどのような形で連携をするのかということが示されていないと思います。
 このような東北の復興にとって、我が国の次世代にとってキーとなるプロジェクトであるからこそ、ぜひオールジャパンの検討体制を、この検討会だけではなくて、具体的な計画をつくっていくワーキンググループの中に反映させるような仕組みをつくっていただきたいと思います。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  ありがとうございます。
 まず東北大学の内部の機構については着々と整備をしていて、本日は内部事情と思いましたので、資料を準備してまいりませんでしたが、次回の会議でお示ししたい。それは、もう2月1日付でこのメディカル・メガバンク機構が成立しております。それで、いろんな準備を進めています。それはそのとおりで、ご指摘のとおりです。
 それから、次にここにありますように、先行するコホート事業、それからゲノムコホート事業等についてと経験に学ぶということは、もうそのとおりで。多くの方たちに、今私どものところに来ていただいて教えていただいたり、私どもが訪問して教えていただいたりして、具体的に連携をするように努力をしております。
 それから3点目に、解析の方向に向かっていくときに、オールジャパンの力を結集する、もしくはオールジャパンで東北大学を助けていただく、もしくは東北メディカル・メガバンクを助けていただくということについては、今後体制を考えていきたいと考えています。ありがとうございます。

【豊島主査】  ちょっとよろしゅうございますか。私も少し発言させていただいて。
 少し今までの議論と視点が違うかと思いますけれども、どちらかと言えば赤林委員のおっしゃったような視点がかなり重要なポイントになるんじゃないかと。それはこのメガバンクのこと自身が、多分、地域の医療を完全に立て直して医療システムと医療情報をきれいに組み上げるということがスタートの一番大きなポイントじゃないかなと思っているんです。
 それで、先ほどからの話の中で、医師のあるいは看護師さんなどを含めて、その方々の教育をどういうふうにするかということをあまり触れられていないんですけれども、これものすごく重要だと思うんです。先ほど、岡部委員からもお話がありましたけれども、今スタートはどうしても地域の医療を充実させて、そこで信頼を得て、これ以降の研究の進捗をうまくコントロールできるような形に持っていかなきゃいけない。おそらく全国あるいは東北大学からそういう方々を集めたとしても、その教育というのは相当なことをやっていただかないと、これは続かないと思います。
 先ほど祖父江委員のお話もありましたけれども、この事業にたくさんの方がかかわられて、このほとんどの方はゲノムのスペシャリストになるわけじゃないんですよね。で、やっぱりほとんどの方がお医者さんになる。そのお医者さんになる方が、ゲノムのことを含めたコホート研究がどういうものであって、これがどういうふうに将来の医療に役立つかということを深く理解していただけることが必要で、それが一番大きな成果になるんじゃないかと思うんです。そういうことを目指した住民への信頼を得た上で、それをできるような人というのを育てていただくことがものすごく大きなポイントになると思います。
 それともう一つは、介入は私もものすごく気になりました。ほんとうは介入するとコホートとしては十分じゃないということは、もうこれはどなたが考えてもそうだと思うんです。これのもう一つの解析方法、解決方法というのは、このコホートは地震と津波というものに基づいた医療上の非常に大きな1つのポイントになるわけですね。対照として、どこか日本の他の地域でこれに対応するようなコホートをいつか立ち上げなきゃいけない。既存の一般的な生活習慣病に関しては、かなり大きなデータが今までも既に出始めていますから、それを利用していただいて、これを確認していただいて、この先進むというのは非常に大きなポイントになると思いますが、それ以外のことをやはりこの地域以外でもやって、この地域の特性を生かした比較をしていただくということが、これを生かす一番大きなポイントになって。これは二度とあってほしくない事象ですけれども、ですから余計に、これは大切に解析していかなきゃいけないポイントになるんじゃないかなと考えております。
 ですから、これからそういうことを考えながら、そこに従事する方々の教育というのを非常に重く考えていただいて、これを成功に導いていただくような方向というのを打ち出していただけるということをぜひよろしくお願いしたいなと思っています。
 どうぞ、ほかのご意見。

【高木委員】  よろしいですか。

【豊島主査】  はい。

【高木委員】  今日、人材育成のことが話題ということで、この1つのポイントでありますバイオインフォマティクスの人材のことで、少しコメントをしたいんですけれども。ここでそういう人材をリクルートしてくる、あるいは育成するということが1つのテーマになっておりますけれども、私もこれまで20年近くバイオインフォマティクスの人材育成にかかわってきていまして、なかなか難しいというのが実感でございます。
 それはいろんな理由があると思いますが、1つはキャリアパスがどうなるのかということ。先ほど山本先生がおっしゃったように、将来は新しいゲノムをベースとした医療なり、そういう研究が花開くので、そこで幾らでもポジションがありそうに見えるんですが、でもなかなか現実そこに飛び込んでいくのは夢だけではやっぱりいけないので、そういう学生なり若い人をどうやって集めてくるかというと、やはり何かいろんな工夫が必要だろうと思うんですね。そういう意味ではなかなか難しいと思います。
 それからもう一つは、こういういろんなデータ、現場のデータを扱えるという意味では、すばらしい環境ではあるんですけれども、一方ではなかなかデータの処理に追われて、研究ができないという現実もあると思います。そうすると、なかなかやはりいい人を集める、あるいは育てるというのは難しい状況になってくるんじゃないかなと思います。それをどう解決すればいいか、私も案がありませんが。
 先ほど、循環型という医師派遣というのがありましたけれども、やはりバイオインフォマティクスも何かあるネットワークを組んで、循環じゃないですけれども、現場のデータを解析するのと、やはり少し研究現場に戻るというような何か工夫なり、それは東北大学だけではなく、ほかの大学も含めてかもしれませんけれども、何かそういうことも考えていただいて、そのあたりのキャリアパスとネットワークとか循環型というようなことも少し含めていただいたほうがいいんじゃないかと思います。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  ありがとうございます。お話しのとおりだと思います。それで、高木先生のご指摘のように、やっぱりこのゲノムコホート事業や、それからゲノムにかかるバイオインフォマティクスに、情報科学系の学生が修士や博士で参加してこない一番の理由は、その後のキャリアパスが見えないというところだと思います。ただ、将来のことを考えると、ご指摘のように、やっぱりこのフィールドの人材をどれだけ厚くするかということが、我が国の生命科学それから医学研究の力を涵養するところになっていくのではないかと思います。私ども、メディカル・メガバンク事業だけでできることではないと思うんですけれども、東北大学の情報科学研究科や、その関連する東北大学だけではなく、全国の人たちと知恵を絞って、それでやっぱりバイオインフォマティシャンをキャリアパスつきで養成していくということが課せられた課題かなと考えています。

【八重樫東北メディカル・メガバンク機構副機構長】  今回のこの計画書の中に産業のことも書いてあるんですけれども、やはりこの事業のある程度のところでかなりいろんなIT関係の産業が入ってくるという、その仕掛けをつくらないといけないんだろうなと思っています。東北地方にそういった会社が来ることによって、そこへのキャリアパスが見えてくるのではないかと。これは大学だけでできることではないですので、宮城県とあるいは岩手と一緒にやらなければいけないと思いますが、そういったところのキャリアパスというのを今考えております。

【祖父江委員】  一つよろしいでしょうか。

【豊島主査】  はい、どうぞ。

【祖父江委員】  先ほど来のちょっと教育と広報の話にまたちょっと固執するかもしれませんが。これ書きぶりを見ると、やっぱり支援という感覚がドミナントにあるんですね。例えば5年後、10年後を目指し、10年後ぐらいですかね、10年後、20年後を目指したキャリアパス、人材育成プログラム、こういう人材をつくるんだということをおそらく全国に発信されれば、僕は非常にいい人材が全国から来るチャンスになるんじゃないかと思います。ですから、支援型の発想でやられると多分なかなか来ないんじゃないかと。そこの辺の広報も含めて、先ほど来、教育ということがうたわれておりますので、ぜひそこをもう少し厚くしていただいて。あるいは広報という、広報という言葉が合うかどうかわかりませんが、やっていただけるといいなとは思います。

【中釜委員】  重要な議論はもう出尽くしているかと思うんですけれども、もう少し気づいた点をコメントさせていただきます。このプロジェクトは、地域医療の支援というところから始めて、地域住民との信頼関係を構築しながら、将来的には次世代の医療に役立つようなゲノム、分子疫学コホート、ゲノム医療を構築していくというように、非常に大きなミッションになっていると思います。同時に、そこには現場の教育を含めて、日本人全体への教育等も視野に入れながらやらなければいけないということで、非常に大変だと思うんです。
 先ほど来指摘されているように、具体的な方策について幾つか書かれてはいますけれども、やはりまだまだ細かく詰めなければいけないように思います。教育を含めてですね。例えば実際に試料を採取する際には、ここに書かれているGM、ゲノムメディカルですか、あるいはRCというだけではなくて、現場の人たちに十分に理解をしていただいて、被験者さんとの間にそごがないように十分な意思疎通が必要だということを考えると、かなり難しい事業だと思うんですね。そのあたりの具体的なプロトコール等をきちんと提示してあげないと、なかなかうまく機能しないのかなと思います。
 あと、将来的にこれがゲノム解析につながっていくと、インシデンタルファインディングみたいなこともやはり考慮しなければなりません。それらを見据えたIRBをどういうふうに構築するかということ、そのあたりもやはり当初から議論をしていかないといけないと思います。いったん開始すると、後戻りできないと思いますので、そのあたりも十分に考慮して進めていただければと思います。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  答えてもよろしいでしょうか。お話しのとおりだと思います。
 それで、人材養成のことで、私どもはこの24年のこの4月1日から、東北大学大学院医学系研究科修士課程に臨床研究支援者コース、CRC養成コースを設けたんですけれども、既に3人の入学者がいて学んでいます。それで、先生のお話は、私たちの中に専門職業人を養成するような公衆衛生大学院をつくるか、それとも修士課程を充実するかというようなことで、大学院教育で対応できるところがあると思います。それから現場の方たちへの教育をしなければならないというのはゲノムコホート事業をやる上ではもう必須のことで、ご指摘のとおりと考えます。
 それで、教育制度を磨いていくことで、今日は骨子案ですので、詳しい紙を持ってきませんでしたけれども、次回には教育のプログラムをお示ししたいと思います。

【春日委員】  大分大きな観点からの話はもう十分出尽くしたと思いますので、ちょっと細かいことになりますけれども、私から一つだけお聞きしたいのは、まあ生体情報とか生体試料のバックアップ体制というのをどういうふうに今具体的に考えられているのかなと。想定外のことが起こることをいろいろ考えておいたほうがいいのかなと思って、切りがないとは思うんですが、現在どの程度のことを考えられているか、教えていただけたらと。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  実際にサンプル保管を担当します栗山教授のほうから。

【栗山教授】  ご指摘ありがとうございます。まず、生体試料につきましては、UKバイオバンク等の先行例にならいまして、3分の2をアクティブということで、東北大の星陵キャンパスに置くと。3分の1を完全なバックアップとして、まあ10キロぐらい離れたところ、あるいはもう少し離れたところ、もっと離れたところ、いろいろ検討してございます。まず3分の2と3分の1、分けるという方策を考えてございます。
 それぞれ、じゃあ適当なセキュリティーでいいのか、それはもう全然違いまして。例えばUKバイオバンクでしたら、自然災害ももちろんです、地震、洪水、いろいろ。それからテロ、飛行機事故、その他スプリンクラーの誤作動であるとか、いろいろなものがございまして、それをすべて今つぶしているところでございまして。できれば、世界で最も進んだ保管庫にしたいとは考えています。
 生体情報につきましては、当然ながらいろいろな方策がございまして、メインのサーバーがもちろんありますが、それに対してどうミラーをつくるとか、今電子情報について専門家を集めて検討しているところでございます。以上です。

【春日委員】  生体試料の場合は、10キロとかあまり近いとやっぱりよくないんじゃないですかね。

【栗山教授】  ご指摘のとおり、UKバイオバンクはそうであったということで。ただ、あそこは地震がございませんで、あそこが一番気にしているのは洪水ということでした。ですので、10キロ程度でいいということでした。我々は地震の影響がございますので、今検討中でございます。

【豊島主査】  そろそろ時間になってまいりましたけれども。
 はい、それではもう最後の。

【小原委員】  地域医療ということで、あんまり発言しませんでしたけれども、全体でゲノムコホートとは日本で初めてやるわけですよね、これからね。これは非常に大きいですけれども、当然東北だけではなくてほかでもやらないといけない。日本は長いですから、ということがあって。我が国全体のコホート研究あるいはゲノムコホートに向けた戦略の中で、非常に大きなものとして東北を位置づけるということになると思うんですけれども、今ここは東北大学のこの計画に対する意見を言う場ですけれども、個別に連携するということじゃなくて、もうちょっと大きな絵として、我が国のゲノムコホートというのは議論があるような気はしますけれども。それはまずどこで議論がされているんだろうかということと、連携というふうに先生はおっしゃっているけれども、それはどこでやるんでしょうね。それをはっきりしておいたほうが、もちろんいろんなことで走りながら考えるということはあるでしょうけれども、そういう枠組みはやっぱり国としてつくっておかないと、このお金が生きないかもしれないし、ほかのところのお金が生きないかもしれないしと思います。そういうことはちょっとやっぱり聞いておきたいなと思います。

【豊島主査】  これから先、そういう議論になるのかと思うんですけれども。やはり、だから情報の集め方とか、あるいは保存の仕方とか、そういうものをできるだけ全国で共通できるような形に持っていっていただくということが、多分大切なんだろうと思います。それでゲノム、日本人の標準ゲノムというのはまだわかっていないわけですよね。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  そうですね。

【豊島主査】  だけど、まあ例えばGWASでいうと、大体日本人は2種類ぐらいのまじり合わせという感じになっていて、ほとんどそれでGWASやれば、どういう感じかというのがわかるところまでは来ていると思うんですけれども。それで、これから先、やはりきちんとしたバンクをつくって、情報をきちんと使える形で残していただければ、やはり将来全国でそれをつないでいくということができると思います。
 だから、ぜひそれを目指してやっていただけたらと私としては思いますので、これからそういう議論をここででも、どういうことをすればいいかという議論をやっていただけるということを期待しながら、今日の議論はこのあたりにさせていただきたいと思いますが。
 今日の議事2のほうのこれからの運び方について、事務局から。

【板倉ライフサイエンス課長】  それでは、今後の議論の進め方でございますが、この資料7をごらんいただければと思います。今日、第1回目ということで、このメディカル・メガバンク計画のご説明と、それからこの東北大学の資料で行きますと、14ページの前半部分を中心にご議論いただいたかと思います。
 それで今後ですが、第2回目を4月16日に予定をしてございまして、この第2回ではこの15ページ以降の部分についてご議論いただければと思います。もちろん、今日ご指摘いただいて、もう少し説明をする必要があるものについては、また補足をして説明させていただきたいと考えております。
 また、3回目は4月25日に予定をしておりまして、ここではまた1回目、2回目でさまざまな議論があろうかと思いますが、この積み残した論点についてご議論をいただくとともに、提言に何を盛り込んでいくかという事項についてもご議論をいただければと思います。
 第4回目では提言案の草案についてご議論いただければと考えておりまして、順調にいきますと、この5月30日ごろに提言案をおまとめいただければと。こういう、順調にいけばということではございますが、大まかなスケジュールとしてはこのようなスケジュールで今後ご議論いただければと考えております。以上でございます。

【豊島主査】  特にご質問ございませんでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは締めのほうをお願いします。よろしいですか。
 じゃあ、どうもありがとうございました。


―― 了 ――

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