X線自由電子レーザー利用推進戦略会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成23年4月19日(火曜日)13時30分~16時

2.場所

文部科学省17階 局会議室

3.議題

  1. 調整運転提案・新規実験装置提案の選定(案)について
  2. 利用研究の重点分野について
  3. 利用時間の配分について
  4. 利用者選定、利用支援の方針等について
  5. 産業利用の促進について
  6. その他

4.出席者

委員

石川委員、岩田委員、上田委員、上村委員、太田委員、大野委員、下村主査、坂田委員、妹尾委員、西島委員、濡木委員、若槻委員

文部科学省

柿田基盤研究課長、藤吉量子放射線研究推進室長

5.議事要旨

議題1 調整運転提案・新規実験装置提案の選定(案)について

  • 本議題については、理化学研究所における未決定事項についての報告であるため、議事内容及び資料について非公開とするのが適当と主査より提案があり、委員より了承された。

 

議題2 利用研究の重点分野について

  • 事務局より、資料3及び資料4並びに資料5の該当部分について資料の説明があった後、以下の通り質疑があった。

(重点戦略分野の設定について)

  • 「生体分子の構造解析」というと具体的だが、「化学反応過程のイメージング」というとあまりに広いので、もう少し具体的なテーマを設定できないか。これまでの放射光では限界があったが、SACLAを使って初めてできるものであればなお良い。 
  • SACLAでは、「X線レーザー」というこれまで人類が見たことのない光を利用することが可能となるので、事前に具体的な課題を固定化するよりは、今後の発展を見込めるよう抽象度が高いほうがいいと考えている。そういう意味では、「化学反応過程のイメージング」というテーマは具体的すぎるかもしれない。 
  • 「生体分子」や「化学反応」といったテーマではなく、「非結晶物質がサブナノスケールで見られる」ことや「物質の動態がフェムト秒スケールで見られる」といったSACLAの特性から考えることが重要。例えば、重点戦略分野を「非結晶物質のサブナノスケール解析」とし、その下に何ができるかを考えるのが良いのではないか。 
  • SACLAの特性を活かした分野にするのか、あるいは出口を意識した具体的な利用研究目標を掲げるか、という2つの方法がある。
  • 実際に実験を行う課題申請者だけでなく、社会に向けても、SACLAでどんな研究ができるのかわかりやすく示すという観点も必要である。
  • テーマとして「化学反応過程」と掲げると、例えば多孔性材料などに見られるような「吸着」などといった化学反応を経ないテーマが入らなくなってしまう。 
  • 真空破壊等といった動態過程も重要であるので、化学反応過程とは違う名前の方が良い。 
  • 特に「化学反応過程のイメージング」については、想定しうる重点戦略課題を並べてみて、それをまとめて対外的にアピールできる重点戦略分野の単語を考えるのはいかがか。 
  • 「生体分子の構造解析」についても、生体粒子などもう少しテーマを広くしてもいいのではないか。 
  • 重点戦略課題を設定した上で、改めて分野名を決めることとしたい。 

(重点戦略課題の設定について)

  • 生体分子については、まずは微少結晶(ナノクリスタル)を用いて構造解析を行い、スパコンでその解析をするという組み合わせで使っていくのが良いではないか。また、現在想定する限りでは、単分子を原子分解能で解析することは実現可能性が低いと考える。 
  • チャネルやトランスポーターも含めた生体超分子と生体膜分子を挙げておくことが必要なのではないか。
  • 受容体は、膜タンパク質の中でも試料をコンスタントに準備できるので、SACLAの供用開始後早期に成果を創出できる。 
  • SACLAを利用して素晴らしい回折データを取っても、像回復の問題などで構造解析に結びつかない可能性も考えられるので、像回復のためのソフトウェア開発等、解析のメソドロジー開発については国際協力も含めて考えていかないといけない。 
  • 米国ではXFELの利用研究にエネルギー省が関与しているので、どちらかと言うとグリーンイノベーションに重点が置かれている。日本は、ライフイノベーションにより力を入れてはどうか。
  • 米国では、試料を作る人、試料の導入を出来る人、解析ができる人など、50人以上の大きな共同コンソーシアムを作り成果を出している。 
  • 世界中からSACLAに人が集まり協力して研究成果を創出することを期待する。重点戦略課題は成果を公開するものになるので、そのデータがそのまま創薬につながるわけではないが、SACLAでタンパク質の受容体等の解析ができることが分かれば、将来、製薬業界がSACLAで専用ビームラインを作ることになるかもしれない。 
  • イメージングの重点戦略分野で、反応過程というと、物質材料を微少結晶でスタティックに構造解析するのは重点に入らないということに見える。動的な過程に絞るか、静的な解析も入れるか、そのあたりがイメージングの戦略分野の分岐点になる。 
  • せっかく「重点戦略」課題を設定するのだから、そのテーマ設定は妥協しないほうがいい。マテリアルでは生体分子ほど結晶化が困難ではないので、動的(ダイナミクス)解析がその焦点になると考える。
  • 製薬会社にとっては、例えばアモルファスの構造を静的(スタティック)に見ることも意味はあるので、必ずしも動的解析だけが重要ではない。 
  • イメージングについては動的な解析が中心となるが、静的なものも排斥しない。また、生体分子についても構造解析などの静的解析が中心となるが、動的な解析も排斥するべきではない。
  • 重点戦略課題については、別途で御議論いただき次回までに具体案を提示いただきたい。生体分子については岩田委員を中心に、もう一つの化学反応過程については坂田委員を中心にまとめをお願いすることとしたい。

(重点戦略課題への支援について)

  • どのように重点戦略課題に取り組むチームを作るかが課題。
  • 重点戦略課題については、委託費や外部資金のような国家プロジェクトを立てないと、設置者、研究機関、企業などの共同研究推進体制を自発的に作るのは難しいのではないか。 
  • 設置者と登録機関だけで重点戦略課題の支援をするのは難しいので、パワーユーザーも入れた支援チームを作る必要がある。
  • 新しい光であるXFELに対して、どういう利用支援をすべきかは難しい問題。重点戦略課題は利用支援をされながら進めるものではなく、皆で研究し、研究しながら今後必要となる支援を定義していく過程と言えるのではないか。そして一緒に研究した者から、支援者が育っていくのではないか。 
  • SACLAの利用初期に当たり、自らも学びつつ利用者支援を行うとともに、共用法上の登録機関としての役割を果たすという努力も必要。
  • 登録機関だけで支援を行うことは難しいのではないか。 

(重点戦略課題の評価について)

  • SPring-8と同じように、課題の進捗や成果については、選定した者が評価をした方が良いのではないか。戦略会議はその報告を受けることとすれば良いのではないか。 

 

議題3 利用時間の配分について

  • 事務局より、資料5の該当部分について資料の説明があった後、全ての記載について了承された。

 

議題4 利用者選定、利用支援の方針等について

  • 事務局より、資料5の該当部分について資料の説明があった後、以下の通り質疑があった。

(質疑等)

  • 応募時期を定めず、課題ごと柔軟なスケジュールとすると、いつ応募していいのか分かりにくい。
  • 基本的には、SPring-8と同じ募集制度にしておいて、その中で柔軟性を持たせれば良い。
  • X線レーザーの性質上、SPring-8で提供する放射光よりもかなり短時間で研究結果が出ることも想定される。年2回の公募では、利用者を多く待たせてしまうことになるかもしれない。
  • SPring-8でも産業利用課題について年4回公募しているので、こまめな公募は可能。
  • では、基本的には、運転スケジュールを踏まえた具体的計画を記述することとしたい。

 

議題5 産業利用の促進について

  • 事務局より、資料5の該当部分について資料の説明があった後、以下の通り質疑があった。

(質疑等)

  • 産業利用の促進については、SPring-8同様、産学官が密接に連携して、とすればいいと思う。

 

議題6 その他

  • 第3回は5月24日(火曜日)10時より、第4回は6月27日(月曜日)午後に開催する。(事務局)

お問合せ先

研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室

電話番号:03-5253-4111(内線4336)

(研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室)