(別紙5)新規実験装置提案(仮称)の具体例

 現行の利用推進課題は、 平成18年度に基本的枠組みが構築されたが、この5年間の研究の中で新たに得られた知見やその他国内外の研究の進展 (LCLS, FLASH等) により、 多くの分野で新しいアプローチが必要となってきている。
 例えば、 コヒーレントイメージング分野では、 利用推進研究課題の理論グループにより、 単粒子イメージングに必要な実験条件が、 実際の粒子サイズや形状を想定しながら精密に提示された。 その結果100ナノメートルを切るような微少なビームサイズの形成と、 短波長で高角領域まで対応する計測系という、 LCLSでも到達していない高い性能の機器を新たに整備することが、非常に重要であることが明らかになった。(新規実験装置提案の具体例:1,3,4)
 また、 利用推進研究課題において、 ポンプ・プローブ研究の準備として、SCSS試験加速器を用いた実験が行われ、 世界初の重要な成果もいくつか得られた。その結果、 FELと同期レーザーの相互作用領域を時空間で精密に合致させる必要があることがわかり、 SCSSの真空紫外領域では対応が進められた。 今後、実機の硬X線領域においても、調整運転等で実際のビームも活用しながら、 早急にノウハウを蓄積し、 システムを構築していく必要がある。(新規実験装置提案の具体例:2,5,6,7)
 さらに、 偏光制御は超高速磁性研究等において不可欠な技術であるが、未だLCLSでは行われておらず、 早急に整備することにより産業利用にも直結する世界初の成果を得ることが期待できる。 (新規実験装置提案の具体例:8)

1. 超高強度XFELビーム形成装置

 極限集光技術による超高強度XFELビーム形成は、 イメージング、 プラズマ科学、 非線形光学等、 XFELの広汎な利用において核となる技術である。 特に、 LCLSの動向も踏まえると、 XFELをロスなく集光しサブ100ナノメートル以下のサイズに絞り込むことは喫緊のテーマである。 さらに、 ワークディスタンスをできる限り長くとることは多様な実験を可能にする。 これを実現するためには、 全く新しい光学系の発想とともに、 シミュレーションコードの開発、 光学素子製作技術・評価技術・形状補正技術の確立、高精度・高安定の位置・角度制御機構等の様々な課題を解決することが求められる。

(関連する利用研究課題例:1,3,5,6,14,16,17)

2. 同期レーザーとXFELとの時空間整合装置

 同期レーザーとXFELを用いたポンプ・プローブ実験の精度・感度を向上させるためには、22つのビームの時空間整合が非常に重要となる。 例えば、 同期レーザーをXFELの集光サイズ程度 (1ミクロン以下) に絞り込み、 かつXFELとオーバーラップをとることは容易ではない。 また、 時間領域についても、 XFELのパルス幅はサブ10フェムト秒程度まで到達可能と予想されており、 同期レーザーについてもこのパルス幅とマッチングをとった上で、 両者の時間差をフェムト秒オーダーで正確に制御するための装置開発が必要である。

(関連する利用研究課題例: 3,8,9,11,12)

3. コヒーレントイメージング装置

  コヒーレントイメージングは、 XFELにより飛躍的な発展が期待される手法である。 供用開始直後の利用は1ミクロンビームによって行われるが、 集光径を絞り込んでビーム密度を高めることにより、 分解能の一層の向上が期待される。 このために、 ビームコンディショニング、 サンプルハンドリング、 X線検出、 データプロセッシング等の一連のシステムについてさらなる技術開発を行い、 その上で共用としての汎用性も兼ね備えた装置の構築が必要となる。

(関連する利用研究課題例: 1,2,7,13,15)

4. XFEL用2次元検出器

  XFEL用2次元検出器は、 XFEL利用における基幹技術である。 供用開始時にはMP-CCDが整備されるが、 イメージング実験の空間分解能を向上させるためには、 短波長化と広角化が求められる。 このために、 検出効率の更なる向上とともに、 大規模のタイリングを可能にするための新規技術開発が必要とされよう。

(関連する利用研究課題例:1,2,11,13)

5. 超高速分光装置

  フェムト秒オーダーの準単色光というXFELの特性を利用したシングルショットの超高速吸収・発光分光法を開発することにより、 多岐にわたる分野 (触媒反応、 新エネルギー、 プラズマ科学、 非線形光学) への画期的な応用が期待できる。

(関連する利用研究課題例:3,4,5,9,12,14)

6. 大強度レーザー

  新しい物質相の構造決定と時間発展に関する知見を得るために、大強度レーザーを導入し、 XFELの同期実験を行うことは極めて有効である。

(関連する利用研究課題例:5,6,14,16)

7. XFELパルス操作装置

  XFELパルスの分割・遅延を行うオートコリレータは、 ジッターフリーのポンプ・プローブ計測、 光子相関分光、 非線形光学といった研究を行うための基幹装置である。 また、 適切な強度比でビーム分割を行う装置を導入することにより、 ビーム診断と利用実験を並行して行うことも可能となる。

(関連する利用研究課題例: 4,5,9,10)

8. XFEL偏光操作装置

  XFELの偏光操作は、磁性研究をはじめとする幅広い分野での活用が望まれている。

(関連する利用研究課題例:4,12)

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