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3 計測分析技術・機器開発事業の進め方

   計測分析技術・機器開発事業の実施にあたっては、研究者ニーズを踏まえた計測分析技術・機器の開発を行うとともに、1.で指摘された現状の課題を解決するという観点が重要である。
    現状の課題、特に、産学官の連携、開発のスピード、世界標準へのアプローチ等に配慮して、以下のように実施スキームを検討した。また、各実施段階においては、技術の進捗や国際的動向等をふまえ本事業全体が適切に進むよう専門の立場から検討する「目利き委員会」を開催していくことが適切である。


  1. 計測分析機器開発
(1) 開発に着手する領域
   2
.で掲げた領域については、研究ニーズ、ブレ−クスルーの大きさなどから、大きく以下に分類し、戦略的に開発を進める。
   1 早期の技術・機器実現が重要なもの
   2 中・長期的な観点からの技術・機器の実現が重要なもの

   このうち、1については国家的視点にたって早急に着手することが重要であるが、2及び2.で掲げた領域以外についても、幅広く公募を行い、研究ニーズが大きく、ブレークスルーが期待できるものも積極的に開発を進めていくことが重要である。

(2) 具体的実施課題の選定について
   1 競争的資金の活用
   
本事業の実施にあたっては、新規性・独創性の高い提案を選定していく必要があり、競争的資金を活用して、多様な提案を公募し競争的な環境の中で実現していくことが適当である。

   2 実施課題の選定
   
実施課題の選定にあたっての視点として主として以下のものが挙げられる。
技術の新規性・独創性
    開発する計測分析技術・機器の基本原理や手法・組み合わせが、新規性・独創性の極めて高いものであること。
    既存の汎用の技術の延長では、独創的な研究の推進につながらないことに十分な配慮が必要である。
開発される機器の性能
    現状の機器性能の延長線上にある性能ではなく、非連続的に向上できる提案であり、かつ、2.で設定された領域に適合するものであること。
開発の実現可能性
    開発の手順が明確に計画されており、現状の科学技術レベルから判断して、プロジェクトの想定する期間内での開発について可能性が否定されないものであること。

(3) 開発体制
   1 開発体制
   
チームリーダーを中心に創造的なアイデアを持つ研究者、最先端技術を有する複数の企業、大学、研究機関が結合した体制で開発に取り組むこととする。
    チームを構成する機関については、コアとなる要素技術を持つ企業、大学、研究機関や全体を統合して装置化する企業のほか、試薬類を含めた前処理技術や自動化技術の開発、データハンドリングなどのソフトウェア開発を行う企業、大学、研究機関なども含む。

   2 中小企業、研究開発型ベンチャーの参画
   
計測分析技術・機器開発にあたっての機動性を高め、先端的な技術を取り込んでいくために、中小企業、研究開発型ベンチャーの技術が活かせる体制とすることが重要である。
    中小企業、研究開発型ベンチャー企業は、一般的に、経営資源が脆弱である場合が多く、開発のための資金、人材、情報提供などの面で十分配慮する必要がある。また、一定以上の比率の資金を中小企業、研究開発型ベンチャーに割り当てることも配慮する必要がある。

(4) 開発の進め方
   本プロジェクトにおける計測分析技術・機器の開発においては、独創性を確保しつつ時間軸を意識した開発を実現する必要があり、基本的には、下記の3段階に分けて開発を進めることが適切と考えられるが、課題の状況によっては、第2段階から開始するもの、あるいは、第1段階に入る前にフィージビリティ調査の実施が適当なものもあると考える。
    各段階の移行期には、有識者から構成される委員会等により外部評価を行い資源を集中配分するなどにより、有効な活用が重要である。また、毎年の進捗については、関連分野の状況も踏まえ、技術全体を俯瞰する立場から専門人材が計画の方向性、継続の適否について見守ることが重要である。
    各段階において発生する知的財産については適切に権利化することが重要である。また、知的財産権の帰属については日本版バイ・ドール制度を活用する。
    各段階の所要期間として2〜3年間を想定するが、本プロジェクトの特長とする世界最先端の技術・機器の実現のためには、領域の内容に応じ柔軟な対応が可能となるよう運用されることが重要であり、各課題毎に多様なものとして対応する必要がある。

   1 第1段階:応用開発、要素技術開発段階(複数提案を競争)
   
1つの領域に対して、複数の提案を採択し、開発を競争環境に置く。
    この段階では、計測分析機器開発の基礎となる理論や技術、また、計測分野に必須となる試薬等を開発して、計測分析機器の主要な要素技術を確立する。
    第1段階終了時には、開発した要素技術を組み合わせて、計測分析に関して性能評価を行う。

   2 第2段階:プロトタイプ製作段階(最適提案を選定)
    第1段階における各開発チームの性能評価試験の結果を評価委員会で研究者ニーズ、実現可能性、将来の市場等の観点から比較評価し、最適提案を選定する。その際、第1段階における複数提案のうち、所期の目標が実現された要素技術を組み合わせて最適提案に組み換えることにより、機器の実現性及び到達性能が大きく進展するような計画の見直しにも柔軟に取り組む必要がある。
    この段階では、要素技術の高度化のほか、計測の自動化技術、データ処理技術など装置のシステム化技術の開発や試薬開発等の周辺技術開発を行い、プロトタイプを完成する。

   3 第3段階:実証・検証、プロトタイプによるデータ取得
    第2段階で完成したプロトタイプを1〜数台製作し、その領域の最先端研究者に配置する又は共同利用機器として共同利用に供する。
 研究者は、装置性能の実証・検証を行い、操作性の点などで改良点を開発チームにフィードバックする。また、その研究データについては、迅速に論文発表を行い、世界中の研究者にその性能を認識させることによって、当該計測分析機器がそれぞれの分野において世界標準となることを目指す。
    第3段階の期間としては2年程度を想定し、経費としては、主として研究者の装置性能実証・検証にかかる経費及びプロトタイプを用いた最先端の研究のための経費を対象とする。
    開発チームは、研究者のフィードバックを受けてさらに改良を加え、製品化・汎用化を目指す。

 
2. 計測分析技術・手法の開発
    上記で述べた機器開発を指向した事業に加え、将来の画期的な計測分析機器の実現のためのシーズを育んでいく視点から、日々の研究活動の中で新しい独創的な計測分析技術・手法を生み出していていく研究環境を実現することが重要であり、独創的な計測分析技術・手法を開発する研究を支援していくことも必要である。

3. プロトタイプの実用化・産業化
    国内の大学等において、既にプロトタイプ段階にほぼ達している先端計測分析技術・機器があり、特にナノテクノロジーに係る先端計測分析機器にかなり開発が進んでいるものがある。こうした機器について、外部ユーザーのニーズを吸収しつつ、実証・検証等を行い、その実用化・産業化を早急に促進することも重要である。




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