平成16年度文部科学省政策評価実施計画(案)について
事務局より、「平成16年度文部科学省政策評価実施計画(案)」について説明が行われ、続いて質疑・意見交換が行われた。
【伊藤座長】
それでは、ただいまご説明いただいた平成16年度の実施計画(案)について、ご質問、ご意見等があったら、ご自由にお出しいただきたい。
【星野委員】
質問というよりもアドバイスとして聞いていただきたい。今回の一番の目玉は規制だと思うが、これを事業評価の一つとして取り上げるということで、資料2の10ページを今拝見していたが、要はもう少し規制の評価ができるような項目にしたほうがいいと言うことです。
特にの規制の必要性、これはこれから新しく規制をやろうという事前評価と、今まで文科省がやってきた規制の事後評価の2つがあるが、まずやっぱり事後評価をやるべきです。
事後評価となると、その規制の必要性ということよりも、3つの要素を明記することが重要と考えます。まずその1つはその規制がいつから始まったのかという開始年度、2つめはその規制が制定された時代背景、3つめはそれを受けて当初に設定した規制の目的です。特に、規制の目的は、規制の対象となっている、誰のどのような活動を規制するのか、さらにそれがどのような状態を維持するのか、実現するのか、と言うことまで明らかにしないといけません。例えば、事務所の禁煙というのは、たばこを吸わないことによって他の人の不快感を与えないとか、健康を害さないということです。つまり、なぜそれを規制しなければならないのかと言う意図を明確に規制の目的の要素として明記することが重要なのでそれを考慮した様式にすべきと考えます。
ちょうど事業評価書の219ページ目に放射線障害防止対策が継続事業の評価としてあるが、規制のことを言っていると思われます。だから実際に今までやってきた規制についてまず振り返ってみて、評価をすることが、規制評価の具体的なやり方を決める近道ではないでしょうか。
【横山委員】
1点目は今のと同じことだけど、突然、この規制の話が出てきてもなかなか理解しにくいので、例えば文科省の場合、こういうものだという1、2例、例を挙げていただけないだろうか。ここには科学技術・スポーツの各分野から1件程度選定してやると書いてあるけれども、これまでの例で結構なので、どういうものが一番代表的な文科省絡みの規制なのかということを教えていただきたい。
それから2点目は、資料4の2ページ目の別紙の達成度合いのパターン分け案だが、この4つに分けるということは議論の結果で結構なことだと思うが、どちらも「想定したどおりには達成できなかった」、あるいは「想定したどおりには進捗していない」を2段階に分けると書いてあるが、これをよく見てみると、3番目のやつを2つに分けたんじゃなくて、真ん中の「想定したどおり達成」か、あるいは「概ね順調に進捗」を2つに分けたと解釈したほうが素直なのではないかと思う。
それから、現実に各部局にとってみても、「想定したどおりには達成できなかった」を2つに分けるとすると、言葉が適当かどうかはともかくとして、言いわけになりかねないわけである。これまでは「想定したどおりには達成できなかった」のが、「一定の成果が上がっているが、一部については想定どおりには達成できなかった」というと、まあ、よくやっているんだなというような印象にとられると思うので、せっかく4つに分けるなら真ん中の「想定どおり達成」、あるいは「概ね順調に進捗」を2つに分けるという解釈のほうが素直だし、今後の達成度合いを見ていく上でもいいのではないかと思う。
【伊藤座長】
2つご質問が出たけれども、いかがか。
【佐野評価室長】
まず、横山先生からのご質問です。対象となる規制の例ですが、来年度の対象にならないが、すでに提出している法律案では、例えば私立学校法の一部を改正する法律案というのがあるが、これは私立の学校法人に財務情報の公開を義務づけるという法律です。これはまさに規制の対象となるような法律かとも思っている。また、放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律(RI法)の一部を改正する法律案というのを今年度準備しているわけですが、IAEAで定めた国際標準に準拠する放射性同位元素の規制対象下限値の変更というのを法律に取り入れるというもので、数量とか濃度の小さい放射性同位元素の使用に関する規制の合理化を図るという、いわゆるすそ切り的な話の規制も対象に考えられる。
教育、文化、あるいは科学技術、対象はかなり広いかと思うが、そのうち特に16年度については試行的に実施ということから、典型的なものを取り上げて、16年度は評価していきたいと思っている。
2点目であるが、これはまさに先生方のこれまでのご意見を踏まえ、ここに示す4段階に分けていきたいと思っている。先ほど私の説明がちょっと悪かったかもしれないが、今までかなりの場合、「想定どおり達成」ということになっていた。少しでも「想定どおり達成できなかった」部分を浮き彫りにすることによって、次の目標に向かって何をやっていかなきゃいけないかということを次の目標にあぶり出していくというようなことをしたいがゆえに、少しでも達成できなかった部分を明示していくことが重要と思い、こういう案にしました。「一部成果が上がっているが」ということを強調しているわけではなくて、「一部については想定どおり達成できなかった」というほうをむしろ強調していきたいがために、また、この3番目の評価結果がかなり個数が増えるようにするために工夫したつもりである。
ちょっと前後しますが、星野先生のほうから資料2の10ページ目の評価票についてご意見をいただいた。10ページ目のものは星野先生がおっしゃるような事後評価は今想定してなくて、規制を改正あるいは新設する場合のフォーマットとして、今、用意させていただいたところである。先生のほうからご意見がございましたように、時代的背景であるとか、なぜ必要かといったところは、この書き方、規制の必要性、期待される効果というところの中で、事前評価として記載できるのではないかなと思っている。
【天野委員】
規制評価の問題だが、これから規制しようとするものについての評価ということのようだが、文部行政をこの何年か見ていると、やっていることは規制するよりも、規制を緩和したり廃止する方向でどんどん努力をしているわけである。
ところが、規制緩和や規制廃止自体が自己目的化しているようなところもあり、どういう2次効果がその結果及ぶのかについて、ほとんど検討がないままに廃止され、緩和された規制もたくさんあると思う。むしろ評価すべきなのはそちらのほうで、こんなめったやたらにやめてもいいのかという思いが非常に強くあって、特に私は高等教育の領域の仕事をしているけれども、さまざまなマイナスの効果が生じているわけで、そちらのほうは評価の対象にしないのかどうかということを伺いたい。
【浅井委員】
臨時提案だが、今、議論がレギュレーション(規制)のほうと評価のほうと錯綜しているので、錯綜すると、文科省のほうと発言者の一問一答みたいになって、これはあまりプロダクティブじゃないので、まず規制の話だけにしないかという提案です。座長にお決めただければいいのだけれども、まずとりあえず規制の話をしませんかと。
それから、規制について、今、天野委員のご発言を聞き取ると確かにディレギュレーション(規制緩和)が多くて、大変いい政策が多いのだが、半面、ネガティブな効果もあると思うし、政策のアセスメントとしてはレギュレーション(規制)もディレギュレーション(規制緩和)も取り上げるべきだと思う。そういう意味ではこのフォームだけ見ると、新しくできた規制だけみたいになっているのだが、ルールが変われば全部評価するというように解釈していいんじゃないかなと思うし、そうあってほしいと思う。
【伊藤座長】
それでは今、議事進行に関係するようなご発言があったけれども、もう一方、古賀委員から既に事前にご意見もちょうだいしているので、ちょっと規制の問題を中心にご発言いただきたいと思う。
【古賀委員】
じゃ、規制の問題だけに。
これは質問ですけれども、規制、あるいは廃止もそうだが、これは規制が決まって、法令が決まって、そしてそれを施行する前に評価するということというふうに解釈して良いか。またこの会議での問題ではないと思うが、規制をやるかやらないか、あるいは規制を廃止するかどうかという、それを決める前の段階、そこで評価をするというのが非常に大事なのではないかと思う。もう決まっちゃったものを正当化するというのももちろん大事だし、レビューしておいて、その後にその規制に対してのフォローをしていくことも大事なので、法令面、特に規制が決まって、その法令ができつつある段階で、それを事前評価するというように考えてよいか。廃止の場合もこれは同じだと思うが。そういうふうに解釈していいのか。それが1つ。
もう一つは、先ほど天野委員からもあったが、規制をやるかやらないか、あるいは規制を廃止するといった、規制をスタートする前の評価だけれども、これは例えば教育でいえば、中教審やなんかでいろいろ検討されるときに、その材料として評価をバックデータとして使い、規制のメリット、デメリットを示すというのが大事なのだと思う。これは私の理解が間違っているのかどうかお願いしたい。
【伊藤座長】
この現行制度の一つの制度の趣旨だと思うが。ここで新設する場合に限るのか。
【佐野評価室長】
先ほどの概要のペーパーの3枚目、あるいは実施計画(案)の1ページ目をごらんいただけたらと思うが、「規制に関する評価(試行的実施)」というところに「新設又は改廃」ということになっており、新設されたものも改廃も含めて、まさにディレギュレーション(規制緩和)の観点も含めて、ここでは重要なものは評価していこうというものです。
さらに、古賀先生からいただいた時期の問題についてのご質問ですが、まさに古賀先生がおっしゃるとおりであり、実施計画案の3ページ目で、時期について四角で囲って示してある。規制評価はいずれにしても事前評価であり、いつその評価書を作成するかというと、規制の法令案を作成するときと思っている。
作成するときというのはどういうことかというと、法律であれば国会に提出するときであり、法律の下の政令であれば閣議に提出するときであり、その下になればまたそれぞれ役所の外に提出する時期があり、その時期にはきちっとこういうものを取りまとめていきたいというものである。
したがって、当然、事前評価なので、実施されるころじゃなくて、案を作成して審議に入る前にやるというのが基本的考え方である。
【古賀委員】
大綱はもちろん決まっているけれども、大綱を法令にする場合に規制については評価をして、それによっては文言を変える場合もあるだろうと。
【佐野評価室長】
そうである。実際問題、法律を作成する場合にはいろんな議論がなされて、実際にその法律に落としていく過程で、法律案ができるときに物事が1個1個決まってくるので、そこの法律案ができるときに評価票で取りまとめていくという考え方でいる。
【古賀委員】
もう一つ私が申し上げたのは、ここでのマターとは違うのだろうけれども、規制をやろうというときに違う場で、規制をやったらどういう影響が出るか、あるいはメリット、デメリット、それを提案していくときに、アセスメントをし、比較しておくことが必要なんじゃないか。もう決まっちゃったものは相当ディテールのことになるから。
【佐野評価室長】
規制のみならずいろんな政策は、今、仕組みとして、役人だけがやるような仕組みにはなっていない。かなり多くの審議会等があり、評価という言葉ではないが、事前に議論する場が幾つもある。
そういう仕組みの中で、我々役所側で今のような視点を最終的には評価することということを明示しておくと、前のところの審議の場にフィードバックされていくのではないかということで、こういうところで最終的にこういう評価票をまとめる、あるいは評価がなされるということを提示しておくということが非常に重要なことと思っています。ここで評価のフォーマットをご議論いただいて、仮に年度末に公表して、これが省内全体に渡ると、こういうことが議論されなければいけないというのをほかの事前の審議会なり、審議する過程にフィードバックされていくと思っております。これが評価の一番重要な点かなというふうに思ってもいます。
【伊藤座長】
今の答えから大分はっきりしてきたけれども、「新設又は改廃」ということになっており、この改廃という言葉を広く解釈いたしますと、例えば先ほど天野委員が提起されました問題についても、ある程度こたえることができるのではないか。緩和する場合にもなぜ緩和するのかということをちゃんと調べる。それは星野委員がおっしゃいましたことにも、事後評価をまずやるべきじゃないかということにもある程度こたえていけるのではないかなという感じがする。
【星野委員】
今の話を聞いていて気づいたのですがそもそも、規制の全体像、形成過程が見えない。まず、最初の規制の必要性、法律との兼ね合いで、事前評価とまとめて言っているけれども、規制の基本設計部分と詳細設計部分とがあるような気がする。その全体像をきちんと整理した上で、基本設計段階での事前評価なのか、詳細設計段階での事前評価なのかを明確にして議論すべきと考えます。事務局の説明では、規制をやると決まっていて、詳細の部分で行う事前評価なのか、やること自体の政策判断の事前評価なのかがはっきりしてないから、それの全体像をフロー図で明らかにしていただかないと、具体的な議論にならないのではないでしょうか。
【佐野評価室長】
それは都道府県とか市町村とは違い、審議会などで十分な議論があって、それをさらに今度は役所のほうで議論し、中身を法令に落としていくという、簡単に言えばそういう過程があり、その審議会の議論というのが評価といえば評価なのかもしれないし、そこのところの取り扱いをどういうふうに規定するかは別にして、いずれにしても法令案を策定する時点を一つの区切りとして評価してみるということが今の考え方である。それ以前にはいろんな議論があって、それで法令のところまで長い過程を経てたどり着くわけだが、今、星野先生がおっしゃった長い過程の前段の部分がどうなっているかを明示すべきというところは、示し始めれば山のようにあるかと思いますが、そこまで必要が今あるかどうかということかと思う。
【星野委員】
要は、どの段階での評価なのかがわかるような説明が要るのです。
【佐野評価室長】
すでに何度も申し上げている通り、規制の法令案を閣議などに提出する段階の評価です。
【星野委員】
16年度に規制評価のモデルとして3つが出てくるが、もともとどの段階から発生して、どういう審議を経て、事前評価をするのかという説明が、規制の事前評価表に明記されてないといけないのです。指標の内容以前にそうした説明が必要と考えます。
【佐野評価室長】
法令を作る前の長い審議の課程の内容については、必要不可欠なものを、必要性のところにきちっと書いていくということではないでしょうか。
【星野委員】
ということは、その事前評価によっては、規制そのものは必要ではない、規制制定として採択しないという言う結論が出るわけですね。
【佐野評価室長】
法律案に落とす時点の評価だから、それまでの議論を全部入れるわけじゃない。必要不可欠な部分を法律案にし、その部分を評価していくわけである。
【星野委員】
そうすると、評価表の結論の欄にも、規制制定を採択するか、あるいは無効にするかというような項目が必要となるのではないですか。
【佐野評価室長】
法律案を出すときですから、当然採択しているものは落としているわけである。
【舘委員】
このRIAと略されるものの提起で起こっている規制評価だが、まず資料1で閣議決定されたものがあって、これのもとにこれが行われるわけである。なので、閣議決定の内容を吟味する必要があると思うが、残念ながら閣議決定のものというのは、多分、評価の専門家が見ると、ちょっと「あれっ」というところがあるものである。こういう文章だから、そういう厳密性は問わないということはあると思うけれども、注意しなきゃいけないことが2点あると思う。
1点は、資料1の別添だけれども、閣議決定となっており2ページにわたっているが、RIAが米国、英国等で導入が進んでいるとあるけれども、ご存じのように、状況は大分違って、英国の場合はこの閣議決定のいうRIAに近く、まさにここで略称が用いられているRegulatory Impact Assessmentと呼ばれている。アセスメントというのはご存じのように、主に事前評価に使う言葉なので、RIAの略語がここから来ていると思う。したがって、これはブレア政権で確立したものだと思うけれども、むしろ法律を提案するときに事前にやるものとして出てきたと思う。
アメリカの場合は、ほんとうの専門家がいたら、間違っていたら指摘していただきたいと思うけれども、あまりこの言葉は使っていなくて、法律のもとで実施する際に確かにこういうアナリシスをやっているということで、大分状況が違う。
今、レベルの問題というのが出たけれども、法律をつくるときの話なのか、法律をつくった、それを実施するところでこのアナリシスをやるのかという階層の問題は確かにあるということである。これが一緒くたに閣議決定されているので、各省で受けとめる場合はこれはどこの部分で実施するのかということで、試行なので、両方のものを選ぶということが必要。内容的な選び方もあると思うけれども、レベルとしての選び方があるのではないか。
それから、2ページ目であるが、RIAがといって項目が挙げられているけれども、規制の内容、目的、必要性に始まって、項目が挙がっています。ちょっと意外な感じがするのは、コストの分析が便益分析より先になっているというのは心配であるが、ただ、文科省のほうで今整理されている資料2のほうの10ページ、規制評価票では期待される効果のほうがコストより前になったので、安心した。基本的にコストの問題というのは、規制の内容を考えた上でしか考えられないので、順番が逆じゃないかなと思ったけれども、文部科学省案はその点はよくできているんじゃないか。
ただ、規制なので、多くの規制はリスクに対して規制するわけで、例えば放射性同位元素の取扱いにおけるリスクは何かが問題になる。なので、多分、多くの場合、特にイギリスの場合はリスクが先にあって、リスク、便益、コストという関係で分析しているんじゃないかと思う。
だから、日本の場合だと、ウのところに「便益」という言葉が出てきているんだけれども、便益の内容がリスクなのか、プラスの便益なのか。規制することによってプラスの便益が働くというのもあるけれども、まずリスクの分析があるんじゃないかということで、リスクという言葉が欠けているのが気になるところである。その点を注意しながら実施に移していただく。ちょっと生意気な言い方になって申しわけないけれども、勉強ふうにいうと、そういう点が気になるところだと思う。
【平澤委員】
私も星野委員や舘委員と同じような意見だが、今、舘委員が引用された閣議決定の文言の一番最初のところ、別添の上、「規制の導入や修正に際して」とある。導入というのはまさに事前そのもの、規制そのものを導入するかどうかということで、それと既に実施しているものを修正するというのとでは評価するときの確からしさというか、コストというか、それは全然違うわけである。予測的に評価をしようということと、それから既に実施されていて、事実を分析すれば、曲がりなりにもとらえられるという場合とでは全然違うわけである。
どちらかというと私は星野委員と同じで、まずは実施しているものについて、それの効果をどういうふうに分析したらいいかとか、こういうことを積み重ねないと、事前の規制ということはほとんど信頼性のあるデータは出てこないだろうと思う。これは多くの政策だけではなくて、通常の政策全般について言えることである。
ただし、もう1点言うならば、政策を運用するという立場から言うと、新たに展開しようとする政策を事前に評価するということのほうが、効果が大きいと言えるわけである。
そこで、通常、研究開発の中の政策評価では、事前に展開しようとする政策を評価するのは難しいので、既に展開しているプログラムレベルの政策の実施状況を細かく分析して、その結果を新たな政策展開へフィードバックするというやり方をとっているわけである。
だから、私は規制政策を今度新たに対象にするというときに、今、舘委員がおっしゃったように、リスクなり政策を規制によって存在させようとするある実態というか、こういうものを評価の対象にするというのは新しい取り組みなわけで、それはそれなりに意味があるわけだけれども、それを円滑に進めていく方法をここでよく考えておかないと、やってみたけれども、結局はうまくできなかったという今までと同じようなことになってしまうだろうと。
【浅井委員】
さきほど例として挙げられたのは、放射性同位元素の取り扱いに関する事項でした。これについては、遵守すべき規則として提起されるものと考える。一方、規制全般について、社会的なインパクトの点から、もっと大きなスコープで見るべきである。
問題にすべき規制はどんなものかというと、国立大学を法人化するとか、そのときの先生方の身分をどうするとか、兼業をどうするとか、知的財産権をどう扱うことにするとかの事である。これらは大きな規制ないし規制の変化である。今、この種の規制の変化を受けて大学は大きく変わりつつある。
大学や学校法人のあり方についても、今現に法律があって、例えばあるものが大学として認められるか、現実にルールが決まっている。文科省に関係するこれらの規制について、マクロな視点から議論すべきではないか。先ほど挙がった例がちょっと小さかったんじゃないかなというふうに思っている。
議論する問題はいっぱいあるが、私も星野さんがおっしゃったように、まず今ある規制で重要な規制になっていると考えられるものを一括して、テーブルの上に上げて、議論していくというのが大事なことと思う。こうした議論が、法を変えていくときの準備の段階に必要である。規制について、実際に議論していく段階で評価が下されるが、新たな法や資金の配布方法などを決めていく寸前の段階でさらに意見を反映する場面として、この、政策評価のメカニズムをお使いになっていただくというのが大変有効ではないかと思う。また舘委員が強調されたように、実際に法が決まっても、実施していく際にこういう注意が必要じゃないかといった議論をする必要もあると思う。
今までの議論を聞きながら思ったが、現行法のアセスメント的な側面と、規制が行われる前の段階のプリアセスメント、それから立法された直後の施行直前のアセスメントが3つぐらいあるのではと思う。それは全部性質が違うという感じがする。
このフォームについて先ほど星野委員がおっしゃったことは非常に適切である。開始年度や時代の背景、目的を書いておこうというのは非常に大事なことである。目標というのは目的に従属する属性的な事柄であって、まず目的を書いておかないといけないと思う。
それから、「期待される効果」には、ポジティブな事項ばかりを書かないといけないように見えるが、ネガティブな側面も予想されるわけで、それもきちっと挙げていくことが大事であると思う。
【伊藤座長】
いろんな貴重なご指摘をいただいたけれども、初めにおっしゃいました規制の種類は非常に重要だと思う。閣議決定された中に、イギリスやアメリカの例も出ているけれども、アメリカやイギリスで普通、規制インパクト分析というは、現在では2つの分野にほとんど集中しており、1つは都市計画規制であり、もう一つは環境規制である。教育というのは入っていない。ただ、私は教育も入れるべきだろうと思うので、教育サービスというのは公共財に分類されるけれども、公共財の中で非常に特殊であり、ほかの公共財のように、要らなければ断れるというものじゃないわけである。それこそ義務教育だから、これも価値財なんていうふうに区別している人もいるけれども、その限りで規制的な要素がどうしても入ってくる。ただ、その規制は都市計画規制とか環境規制とは違いまして、ちょっと基準設定的な意味を持っていると思う。先ほどおっしゃった大学の例なんかもそうだと思うんだけれども、私はそれをもう一つの規制の種類だというふうに考えて、少し広いスタンスで規制というものを考えていく。これは特に文部科学政策の場合には非常に重要なことだと思うので、規制の内容をもう1度検討して、少し幅広く考えるということをお願いしたいと思う。
ほかにもいろいろご議論がたくさんあるかと思うけれども、川邉委員から最後に。
【川邉委員】
せっかく委員長さんが取りまとめられたのに、混乱を招き入れるような言い方になるかもしれないが、規則に関する評価について発言したい。まず、はじめに教育施策の評価は、短期的な評価とともに長期的な視点からの評価が求められる分野であると思う。本市では、農村に長期宿泊体験教育(セカンドスクール)を実施しているが、実施前と実施直後及び3年後、さらに20歳(成人式)時点で、その教育効果の調査を行って、事業施策の評価とすることを検討し、進めている。
私は市の教育行政に携わっているが、市町村にとって教育行政の中心的課題は義務教育であり、市町村立小中学校をどうするかという問題である。
規制改革についての議論をいろいろ伺っていると、文科省所管では義務教育の規制に関するものである。国は関与するなという議論であり、地方分権化を促進するためにも、学校の設置者である市町村など地方に任せればいいという議論である。例えば、義務教育費国庫負担、これは教職員の給与額に関するものだが、これは国の関与であり、文科省はこのような仕組みをつくって、がんじがらめにして義務教育を画一化しているとの指摘である。これを国の関与、規制ととらえるのか、あるいは国民に一定水準の教育を受ける機会をきちっと保障する国の責務ととらえるのかが問題である。
日本国民として僻地に生まれようが、離島であろうが、都会に生まれようが、一定の教育条件のもとで国民としての教養の基礎を身につけていくことができるようにすること、これは国の義務だろうと私は思っているわけである。日本国に生まれたら安全が保障されると同時に、一定水準の教育が受けられるという義務教育制度は国の義務だろうと思うんだが、規制改革会議ではそれは規制であって、だから、国の関与を減らせという言い方であるから、教育で規制問題についていろいろ評価をするといったときに、それを関与ととらえるのか、その辺の評価が根本的に分かれる問題だろうというふうに思っている。評価室長さんのお話にあったように、制度論にかかわった本質的な問題は中教審等の審議会で検討したものを踏まえて、現状の体制がでつくられ、法令に基づいて事業を実施している。今回の規制評価は、その中身について、分析的に評価をしていくんだというお話だったかなというふうに理解した。私の理解が不足しているかもしれないが、委員長さんがおっしゃったように、規制影響分析といったときに、規制の範囲というのはそういう義務教育費国庫負担制度といった義務教育制度の根幹にかかわるようなところまで立ち入ると大変な、それこそ審議会でもつくって議論しなきゃいけないということであるが、それは中教審でやっているから、これまで教育改革に関連して改定されてきた一連の現行法令等に基づいて行われてきた行政に関して、その効果はどうなのか、影響はどうなのか、もう少し緩和したほうがいいかという現実的な問題として評価し検討するということではないか。根本的な義務教育制度のありように立ってしまうと、体系的にそれを示せといってもなかなか難しいのではないかというふうに思っている。その辺はぜひ区分けをしながら考えていく必要があるのではないかという意見である。
【伊藤座長】
大変根本的な議論になった。
【天笠委員】
今までの話とちょっと違うんだけれども、資料2の6.の職員の評価能力の向上についてということがあったけれども、外部の評価もさることながら、内部的な評価の能力を高めていくということが極めて大切なんじゃないかと思うわけで、そうするとこの資料のところには、職員の評価能力の向上という研修プログラムとか、取り組みがここで示されているわけだけれども、これについて質問させていただきたいのは、具体的にどんなことを進めようとしているのか、あるいはこのための手法とか、手だてというのがある程度培われて、そしてそれを実施に移すのか、そのこと自体にこれから取り組んでいこうとされるのかどうなのか、このあたりのところについて少しご説明いただけるとありがたいと思う。
【佐野評価室長】
2つあり、1つは新規採用の職員研修ではそもそも評価とは何かという、ほんとうに初歩的なことを説明すると同時に、役所に入ってくる場合は政策の企画立案、推進、評価というPlan(企画立案)、Do(実施)、See(評価)が全体で流れていくんだと、常に実際に仕事をする際には、そのPlan、Do、Seeの中で自分が今どこに置かれているかという基本的な話を研修する予定にしている。
もう一つ政策手法研修のほうは、もうちょっと上級者というか、もう既に役所に入って課長補佐なり係長クラスになった人間で、幾つか諸外国の調査の評価、あるいはこれまでの評価の中身について行う。例えばプログラム評価であるとか、インパクト評価であるとか、そういった幾つか手法そのものの中身なんかを紹介しながら、評価についての知識を得ていって、実際の自分の職務に役立てていくということにしている。
最後に先生がおっしゃった研修の手法自身も、まだ定まったものはない。その研修をどうやったらいいかという手法も、どのようにやっていこうかというのを別の形で今研究しているところである。
【天笠委員】
各都道府県の教育委員会の影響が非常に大きいので、この取り組み自体が非常に影響を与えていくと部分というのがあるんじゃないかと思うので、よろしくお願いしたい。
【古賀委員】
それに関連して1つ。
天笠委員のご指摘は非常に大事なところだと思う。私はこの評価書、評価システム全体を見ていて、毎回毎回進化されていると思う。これは大変な作業だと思う。従って、この評価システムを文部科学省全体のいろんな改革とかあるいは風土改革、そういうものの原動力にしていただきたい。そういう意味からいくと、この研修というのは新入生だけではなくて、文科省の中核の方の評価意識、政策評価意識が醸成されてくる、そういう教育の期待をしている。単なるこの評価システムが一つのペーパーワークをシステム化したというだけではなくて、これがむしろ行政改革の原動力になってもらえるんじゃないかというふうに期待している。
企業でもTQCとか、6シグマ運動等というのが手法で改革をしているけれども、教育を徹底してやっている。お願いはぜひ一番上位の方が率先して学んでいただきたい。トップはいつも評価システムを見ているよとか、評価にもいろいろ言葉があると思うが、この評価の言葉がともかく共通語として文部科学省全体に行き渡っているとか、ぜひそういうふうにお願いしたいと思う。
【星野委員】
政策評価のような新しい仕組みを導入して定着化をはかるためにはまず、トップが自ら研修を受けるのは民間企業では当たり前だし、最近の地方自治体でも首長以下、幹部全員が政策評価の研修を受けて、それに基づき方針を示すということが1年間のスケジュールの中に埋め込まれている。
だから文部科学省でもぜひ、大臣がかわるたびに大臣にも研修を受けてもらうということをしていただきたい。できれば就任した際の所信表明演説に実績評価票に基づいて自分の考えを表明してほしい。そのぐらいやれば課長層以下はみんな本気になって評価をやる。
【伊藤座長】
実は委嘱事業として私どものほうで、現在、研修のテキストの作成をしており、大体今月の末にでき上がると思う。ほんとうは今日、お見せしたかったんだけれども、ちょっと間に合わなかったので、次回の有識者会議にはその研修のテキストをごらんいただけると思うけれども、それを作成しているが、そのときに常に大臣のことがちらちら頭に浮かび、大臣にもぜひ読んでいただきたいなと。そういったようなテキストをつくりたいということで励んでいる。次回にはお目にかけることができると思うが、内容は、今、室長のほうからあったように、プログラム評価を中心にしたものである。今の業績測定というのは手法としてちょっと邪道であると思うので、もううちょっと本道であるプログラム評価について、解説したものを編集している。
【星野委員】
この1枚(文部科学省の使命と政策目標)を国民に対してどれだけ説明しているか。さまざまな場面で大臣なり、幹部層が文部科学省の使命と政策問題はこれですと説明すべきである。そもそも政策評価制度がどれだけ定着しているかどうかがわかる指標は、大臣や幹部がどれだけそれを活用して政策課題を関係者間で議論しているか、その幅と深さで表されるのです。それを期待したい。
【伊藤座長】
ただいま大変重要な有意義なご意見をたくさんちょうだいしたので、このご意見等については今後、平成16年度の実施計画(案)の取りまとめ作業の中でぜひ活用していっていただきたいと考える。さらに、来年度の政策評価の実施の中にも適宜反映していっていただけたらと思う。
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