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政策評価に関する有識者会議

2003年9月11日 議事録
第8回政策評価に関する有識者会議議事録


第8回政策評価に関する有識者会議議事録


1.日  時     平成15年9月11日(木)   15:30〜17:00

2.場  所     霞ヶ関東京會舘「シルバースタールーム」35F

3.議  題    
(1) 文部科学省事業評価書−平成16年度新規・拡充事業、継続事業、及び平成14年度達成年度到来事業−について
(2) 評価手法の調査研究報告について

4.配付資料
資料1−1    文部科学省事業評価書−平成16年度新規・拡充事業、継続事業、及び平成14年度達成年度到来事業−概要
資料1−2 文部科学省事業評価書−平成16年度新規・拡充事業、継続事業、及び平成14年度達成年度到来事業−
資料2 平成16年度文部科学省概算要求主要事項
資料3 文部科学省事業評価書−平成16年度新規・拡充事業、継続事業、及び平成14年度達成年度到来事業−への有識者会議委員からのコメント
資料4−1 教育行政における評価手法の在り方に関する調査研究
資料4−2 国際化政策に関する評価手法等の調査研究
資料4−3 研究開発の評価者の育成方策等に関する調査研究
資料5 政策評価に係る今後の予定
参考1 文部科学省政策評価基本計画
参考2 平成15年度文部科学省政策評価実施計画
参考3 文部科学省実績評価書−平成14年度実績−

5.出席者
(委員) 伊藤座長、浅井委員、麻生委員、天野委員、池上委員、川邊委員、小出委員、古賀委員、杉山委員、竹内委員、舘委員、田吉委員、中西委員、平澤委員、横山委員

(事務局)    結城文部科学審議官、矢野文部科学審議官、白川大臣官房長、玉井大臣官房総括審議官、瀬山大臣官房審議官、和田大臣官房政策課長、佐野大臣官房政策課評価室長
山下大臣官房会計課総括予算班専門官、末広大臣官房政策課評価室長補佐、安田大臣官房政策課評価室長補佐村田大臣官房国際課長、和田大臣官房国際課課長補佐、大島大臣官房文教施設部施設企画課長、布村生涯学習政策局政策課長、加藤初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐、小林初等中等教育局児童生徒課課長補佐、合田高等教育局高等教育企画課長、河村科学技術・学術政策局政策課長、川原田研究振興局振興企画課長、藤木研究開発局開発企画課長、高橋スポーツ・青少年局企画体育課課長補佐、尾山文化庁長官官房政策課長、仲庭科学技術・学術政策局計画官付評価推進室長補佐

6.会議の概要
(1) 文部科学省事業評価書−平成16年度新規・拡充事業、継続事業、及び平成14年度達成年度到来事業−について
   事務局より、「文部科学省事業評価書−平成16年度新規・拡充事業、継続事業、及び平成14年度達成年度到来事業−」について説明が行われ、続いて質疑・意見交換が行われた。

【伊藤座長】
   それでは、ただいまご説明いただいた事業評価書について、ご意見、ご質問等、お出しいただきたいと思うが、初めに、小出委員と古賀委員から事前にご意見をちょうだいしているので、ちょっとそれについて説明をいただきたい。

【古賀委員】
   事前に出させていただいた意見は、送付された案の段階の事業評価書を見て、出させていただいたものである。今度の成案にはいろいろ入れていただいており、大変わかりやすくなっていると思う。
   特に金額の記入のことを大分申し上げていたが、今日の1−1に金額が全部羅列してあり、全体の規模も非常によく分かる。大変いい資料になっているのではないかと思う。そこで2〜3ちょっと伺いたい。新規で、特に案の段階にはあまり入っていなかった最近の例の長崎等の問題、さすがに急遽新しい施策として入っている。特に居場所の問題として125億をバンッと入れて、さすがとは思うけれども、放課後とか週末の校舎を地域でうまく使っていくということで書かれている。この程度の説明で、かなりインパクトがあるのかなという余計な質問である。
   それからもう一つは、新規か拡充は、大変いいと思うが、やめていくもの、継続で達成時期が来たというのが重要。ほんとに予算がゼロになっているのはわずかだなと思った。案の段階では、既存事業の廃止・縮小というのを、別途まとめるということになっていた。新規に増やすのはよいとして、減らすほうがあんまりない。どんどん新規が増えていって、どうなんだろうか。減らしているものがどうなのかというのが、この評価の段階でも必要なのではないか。各論で、私が質問で出したものは大抵入っている。まとめとして新規事業で、大きく今度の問題が出ているけれども、これはかなり予算上も通りそうな、全省挙げてやられているのかということと、それからもう一つは縮小とか廃止、あるいは継続、達成時期が来たということで、減るほうはこういう評価の中でよくわからないので、その2点を教えていただきたい。

【佐野評価室長】
   まず、1点目。先ほどの資料1−1の3ページのところで、問題行動に対する対応という居場所づくり関係だが、1つ、今、先生がおっしゃった125億円。これは地域子ども教室推進事業ということで、地域のコーディネーターであるとか、地域社会と企業、家庭、学校、そういったさまざまな人たちが一体となった居場所づくりというのがこの125億である。これ以外にその関係で、例えば政策目標2のスクールカウンセラーのところから、その下の子どもと親の相談員の配置、これは子育てに関するさまざまな相談とか、問題行動に対しては、こういう居場所づくりも含めて全体で対応していこうということにしてあり、スクールカウンセラー、スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業(SSN)、問題行動に対する地域における行動連携推進事業、あるいはこの5ページにあるような青少年のための居場所づくり事業といった、この地域子ども推進事業だけではなくて、一応、かなりの事業を同じ目的で立てているところである。これは個々には説明は省かせていただくが。

【古賀委員】
   かなり熱を入れて、これについてはやられているということか。

【佐野評価室長】
   はい。文科省全体でこの問題は厳しく考えている。

【古賀委員】
   そうだろうと思ったが、29ページだけ読むとちょっとインパクトがあまりなさそうに見えた。

【佐野評価室長】
   29ページもそうだし、41ページもそうだし、54から63、そういったところに幾つか散りばめられているという、それはまとめ方の問題でもあるかとは思うが、29ページだけではない。

【古賀委員】
   よく分かった。

【佐野評価室長】
   それと、次に縮小・廃止する事業の件であるが、当然、この予算編成の過程、政策評価の過程で縮小・廃止も議論してきた。1つは時間的な問題があって、今年8月中に概算要求、ご案内のとおりギリギリまでやり、それのこともあってまとめ切れなかったが、例えば子どもセンターの全国展開というのを3億円でやっていたけれども、それは廃止したりとか、あるいは未来開拓学術研究費補助金というのは66億円あったけれども、今、38億円にして縮小している。あるいは次世代超音速機技術の研究開発15億円が4億円になったりとか、幾つか縮小はしている。
   ただ、これは今後の事業評価書のつくり方に関係してくるかと思うが、一応、新規・拡充を評価書に取りまとめるような形にしてしまったので、こういうまとめ方にしてある。今幾つか例を申し上げたが、縮小する事業も当然、役所のほうで政策評価、あるいは予算編成の過程で相当議論し、スリム化しているところはスリム化しているところである。

【古賀委員】
   継続とか達成年度のところでゼロになっているのはほんのわずかなものだから、それで今の120億とか、いい事業がたくさん出ているけれども、どうも今の緊縮な、財政上厳しい中で、増えるほうと減るほうとがある程度、バランスまでいかなくてもいいと思うが、考慮されなくてもいいものなのかということ。これは評価との直接の関係ではないけれども、財務当局に説明するときに、こっちは増やして、こちらは減らす。こういう事前評価も必要だということで説得するのかなと思ったものだから。マイナスのほうが上がってこないのは、今のお話だと、省内では分かっていると、こういうことであれば結構だと思う。

【佐野評価室長】
   例えば本体のほうの36ページを見ていただきたい。備考の欄に、スクラップした事業というのは極力書くようにしている。例えば社会教育活性化21世紀プランというのが事業であるが、その備考に、これは廃止して事業に統合するとか、スクラップ・アンド・ビルドをしたものを今後どうやって書いていくかという整理を今後はきちっとする方向で少し検討してみたいと思う。

【古賀委員】
   総覧で分かると、なおいいと思う。

【佐野評価室長】
   そのとおりだと思う。

【伊藤座長】
   フォーマットが概算要求用になっているので、要求しなかったものについてはつくらない。それでは分からないので、どこかで一覧表のようなものをつけておいていただくと大変分かりやすいし、説得力もあると思う。それは検討課題だと思うが。

【田吉委員】
   今、ちょうど子どもたちの育ちについての話が出たので、それに関連して中学校の立場から話をさせていただきたいと思う。
   このいろいろな事件を受けて、居場所づくり等々の政策を予算をとっていただいていることは喜ばしいことだなと思っている。と同時に、この中の青少年を取り巻く有害環境対策の推進(新規)というのもあわせてあるということで、あるひとつの事例について話をさせていただきたい。今はやりのチェーンメールが来て、そこにたまたまサイトの中に入ってしまった生徒に対して10万円を超えるようなかなり怖い取り立てがあり、結局、警察の力を借りて解決したというようなことがあったという話を聞いた。これはひとつの事例であるが、そういう子どもたちがほんとうにすぐに誘惑されそうな場面がたくさんあったり、あるいは性が商品化されていくというような事態の中で、一方で居場所をつくり、一方で育てながら、一方でそういうことの有害な環境を取り締まるようなことが一緒になければ、かなり難しい部分があるかなと思っている。
   不登校に関しても、小学校のときの不登校の傾向の子がやはり、中1が一番大事にしているんだけれども、一番指導が難しいのが中1だと、私は今思っている。早い時期からのスクールカウンセラーにかわるような事業が入ってきているかなと思うが、そのところを大事にしながらいくことで、長期的に子どもを育てていくという視点が出る。1つは有害なものを、どんどん社会環境を変えていくこと、それから、早目の子供の育ちをバックアップするシステムがどうしても必要だと特に感じているものだから、今、直接の関係がない部分もあるかと思うけれども、話をさせていただいた。

【伊藤座長】
   これは労働基準法などではあるが、何歳以下は働かせていかんというような。しかし、これは今のような状況、世の中になると、教育関係のそういう基本法があってもいいような気がする。

【横山委員】
   前に戻って恐縮だが、古賀委員と同じように、私もこれを見たときに、拡充とか、いいほうはかなり分かるけれども、これはあんまり評価がよくないんだというのがあんまりはっきりしないなという感じがちょっと気になった。それで、話を伺っていて、継続が18のうち16はそのままで、2つは形を変えて継続と、これなどは客観的に言えば、あまり評価が高くなかったので少し変えたと理解していいのか、それが1点。
   それから、今後、国立大学が独法化したときにかなりいろいろなことが厳しく評価されると思う。そのときに文科省本体が行っている評価がかなり、言葉は悪いか分からないけれども、身内に甘いような感じになっていると、そういうところで、今後、独法から出てくるものに対してほんとに第三者的に厳しく評価して、悪いものはだめなんだ、いいものは伸ばしていくんだというような感じに各大学で受け取れるかなという心配がちょっとあったんだが、その2点を伺いたい。

【佐野評価室長】
   まず、1点目。先ほどの資料1−1の6ページの継続事業だが、政策目標1にある教育テレビ放送事業というのと7ページにあるアジア諸国等派遣留学生制度、これは両方とも内容が悪いというわけではなく、さらにもっと必要だという議論である。教育テレビ放送事業については、これまでは教育テレビをつくったわけだが、今後はさまざまなコンテンツを活用したりとか、テレビ放送をつくっていくということである。例えばこの教育用テレビだと、199ページだが、単独で教育テレビ放送事業というのをやるよりも、教育コンテンツ活用促進事業ということで34ページにポンチ絵があるが、このポンチ絵の左上のほうで教育放送通信事業として、テレビのみならず、いろいろな媒体を使いながら教育放送というものを充実していこうということで衣がえをして、こういうことにさせていただいた。
   同じく7ページのアジア諸国等留学生制度だが、これも留学生交流の推進という、ページでいくと186ページになるが、アジア諸国のみならず、全体の留学制度の中で位置づけて推進していこうということに整理したところである。これは継続事業でゼロになっているから、今回、その評価が低かったということではない。それが第1番目の質問に対する答えである。
   あと、2番目の独法。そもそもこの評価書自身は独立行政法人は対象にしてない。なぜかというと、独立行政法人は独立法人委員会というのが別途あり、その法人委員会の結果を運営費交付金に反映させるという別の仕組みがあるので、そちらのほうで見ていくということ。それとあと、大学についても来年度から大学法人評価委員会というのが設立されるので、そこで事後評価をきちっと見て運営費交付金に反映させるシステムを今つくっているというところである。
   全体、この事業評価だけで今までの評価をやっているわけではなく、まさに前回ご審議いただいた、今回、資料の一番後ろにくっついている14年度7月、本年の7月末にまとめさせていただいた実績評価書というほうで全体の実績、行政のパフォーマンスは今評価したところで、この実績評価書の実績での議論をさらに新規・拡充のほうに反映させるという、今、そういうシステムでやっているところである。まさに横山先生がおっしゃったように、身内に甘く、外から見て大丈夫かというご趣旨かと思うが、独立行政法人、大学法人については、まさに第三者機関で別途評価を行って、その評価の結果を運営費交付金に反映させるという、その行政評価の、この政策評価は自己評価であるが、より法人関係の評価は外部評価を導入した形の制度になっているかと思っている。

【平澤委員】
   個別の案件に関しては非常に分かりやすくなっていて、このようにまとめられたということは非常にすばらしいことだと思うけれども、こういう評価をする全体像に関して、もしかしたらどこかにデータはあるのかもしれないけれども、例えば政策目標ごとに予算はどういうふうな分配になっているのかとか、あるいはモデル事業とか政策群ごとにどのようになっているのかといったのが見えると、全体像を考える上で役に立つと思っているけれども、まずはそういうデータはどこかにあるのかどうかということをお伺いしたいのだが。

【佐野評価室長】
   実はこの制度、政策評価をやる最初からその問題が非常にあり、今、政策目標ごとに予算を集計することができるのが一番ベストだと思っている。我々もそういうふうにしたいと思って、財務省での予算の整理とここでの予算の整理というのがまだ1対1に対応していないということだと思う。まさに評価の実効を高めていくということからすると、政策目標と予算の集計というのが全く1対1に対応するのが理想ではある。今、我が省でもそれに近づけようと現在集計をトライしている最中であり、来年に間に合うかどうか分からないが、そういった方向で予算の集計と目標というのを少しでも近づけていこうという方向で、今、努力していきたいというふうに省内では、関係担当部局とはそういうことで調整しているところである。

【平澤委員】
   個別の事業評価のことではなくて恐縮なんだが、例えば科学技術関係で言うと、政策目標で言うと主には4、5、6にかかわることになるかと思うんだけれども、この4、5、6の文言を見ていると、比較的、科学技術と社会というのが出てくるのは6だけというわけで、全体の7割の科学技術予算、ほぼ7割見当の予算を配当している文部科学省として、サイエンスを強化するということに重点があり過ぎるような気がする。というのは、ご承知のようにヨーロッパでは、中心は競争力政策、イノベーション政策に移っているわけで、そういう観点から見ると、非常に極端にゆがんだ構造を日本の場合は依然として持っているような気がしており、全体像が見えると、そういう様子は明確に比較できるようになるだろうと思っている。
   おそらく、例えば科学技術の戦略的重点化という政策目標4に関しても、この中にもイノベーション政策に近いようなものも多分たくさんあるんだろうと思うんだけれども、このように政策目標を立ててしまうと、科学技術を強化するということだけで完結してしまうような政策をいまだにたくさん展開しているということになるのではないかなと思うわけである。もちろんそういう部分は必要なわけだが、まあ、いろいろな国を比べてみてもせいぜい2割程度の予算だろうと私は思っている。だから、政府全体で見ると、ミッション・オリエンテッドなところに使われるのが、今、3割ぐらいだとすると、文科省がうまく切り分けていかないと、全体としての構造がひずんだままだという、これは非常に危惧しているところである。

【浅井委員】
   評価の方法について、大分方法論が確立してきたなと思う。それで、政策の評価をした上でこれをお金に反映させるというほうは大分、このプラットホームの中で随分進んだんじゃないかなという感じもするんだが、これを例えば実行する人たちの部局だとか、局の大きさだとか、そこをリードする人たちの責任だとか、そういうところにフィードバックすることもものすごく大事で、政策とお金と人とが、何かやっぱり3つがリンクしているんじゃないかなと思う。よく人・物・金というが、この「物」というのを「政策」と置きかえてもいいんじゃないかなと思う。だから、政策を評価したら、今度、お金と人である。
   例えば早い話が、予算が、ある部局で減るか減らないかというのは、その部局にとっては大変なことだろうと思う。それを耐えながらまたどんどんよくしていこうということも場合によっては必要だろうし、それを思い切って改廃しようということも、おそらく場合によっては必要なので、そういう側面についても記述ができ、全体をつかめるような仕組みが要るのかなという感じであり、今、ずっと議論が起きていたこと、そういった側面からも一望できるようにしていただけると非常によく政策が分かるんじゃないかなと私は思っている。
   現実、非常に重要な施策なんだけれども、効果が上がっていないということは現実問題としては起こり得るわけで、初等・中等教育の問題などでそういうことというのは私はあるんじゃないかなと思うが、そういうことをやった場合に、重要性があるがゆえに、金額はもっと増やさなきゃならないかもしれないけれども、場合によったら、そこをあえて我慢して、むしろ縮小するということも場合によっては必要なのかもしれない。そうすることによってまた政策の実行者が頑張るという面もある。そこらを微妙にうまくやらなきゃならないんじゃないかと思うが、言っていることがよく分かっていただけないかもしれないけれども、ある実行体がうまくやるかどうかというのは、必ずしもお金の量で決まらないということがあるよということを言いたいわけである。
   しかしながら、平均としては、担当者1人当たりの政策負荷というか、打っているお金、どのぐらいの方々がお役所で担当していかれるかというポリシーロードとでも言うか、そういうものがあると思うので、それを適正化しなきゃならないし、おそらくそれは、ちょっと理論的だが、多少の幅でアップダウンして、要するにうまくそういうところを運転するといいんじゃないかなと思うわけで、極論すれば、予算がしかるべき配分をされながら、物事がうまくいっていないところは人をかえたりしなきゃならないということをはっきり意識しなきゃならないんじゃないかなと思う。
   そこで、またさらに少し思うわけだが、そういう課題で大変悩んでいるときは、ぜひともすぐれた官僚をその地位に充てるということは大事なんじゃないかなと。これは当然だと思うのだけれども、場合によってはそういうところへ現場から官僚を任用するとか、そういうことも思い切ってやっていただきたい。先ほどの中学校の問題なんかあったけれども、決して中学校の先生は中学校の先生ばっかりやっていればいいというわけでもないだろうと。そういう現場から、そういう大事なポリシーを実行する人を登用してリードしてもらうといったようなことも大いにやらなきゃいけないんじゃないか。そういうことも政策評価の結果の見直しにおいてやっていくと大変効果的なんじゃないかなという感じがした。
   それから、先ほど出ている議論にちょっと戻って―戻ってというか、引っかけて申すと、教育現場の負荷というのは非常に、とりわけ小学校や中学校で高いように思われるが、そこで必要なのはやはり現場の先生方のやる気をもっと引き出す、創造力をもっと引き出すような努力ではないかなと思う。これは家庭の問題もあるので両面からやっていかなきゃならないと思うのだけれども、創造力のある先生方というか、工夫、努力をする先生方の意欲をもっともっと引き出すような工夫をやる。これをもっと政策的にやる。これを何とかもう少しお願いできないものかという感じがして、これは言ってみれば再教育でもあり、研修でもある。それをリードするリーダー層の先生方から現場の第一線の先生方までいろいろな階層でお互いに研鑽を積むような、そういうことが必要なのであろうか。会社の中などでも、企業の中だったら、そういうことを企業目的に合わせたある種のいろいろな活動でやるわけなんだが、こういうところをもっともっと工夫する必要があるんじゃないかなと思う。そういうこともあわせてお考えいただけるといいのかなと思った。

【伊藤座長】
   今、ご指摘があったけれども、例えばどのぐらい人手がかかっているのかという、これは広い意味でコストに入ると思うのだけれども、そういうマンパワーを含むコスト情報というのが非常に乏しい。これは文科省だけじゃなくて、日本の政府全体がそうだろうと思うのだけれども、もうちょっとコスト情報というものを出していただけるような方法を考えないと、システムを考えないといけないんじゃないかなという感じがする。
   それともう一つは、これは先ほどの平澤委員のご質問とも関係するのだけれども、予算項目と評価項目が必ずしも対応していないんじゃないかと。この1−2の最初のところに書いてあるけれども、かなり評価担当部局と予算部局が連携を強めているということであり、これは大変好ましいことだと思うのだけれども、予算項目と評価項目との間に整合性がないと、こういう努力を幾ら重ねても限界があると思う。これはおそらく財務省のほうの問題なんだろうと私は思うのだが、その辺のところを少し今後詰めていく必要があるんじゃないかなという感じもする。
   私、今回のを拝見していて随分よくなったなという印象を持ったわけである。例えば1−2の54ページを見ていただきたいが、54ページから55ページ、スクールカウンセラーの活用事業補助というのが出てきており、ここの55ページのところに、これは有効性について効果の把握の仕方というところで、スクールカウンセラーを配置した学校と全国平均とを比べてある。全国平均では、例えば暴力行為が15.5%しか減らなかった。ところが、スクールカウンセラーを配置した学校では19.8%減っているという、こういうはっきりした数値を出している。不登校などについても同じものを出しているけれども、こういうデータが出てきたというのは非常な進歩だと思う。こういうことをぜひ今後もやっていただきたい。
   例えばその少し前に、44ページのところであるが、確かな学力に関連してスーパーサイエンスハイスクールとあるが、あるいはスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール、こういう事業を新しく導入されたわけだが、これはまだ今のところはモデル事業的なものだろうと思う。全国で45校を70校に増やすとか、あるいは50校を100校に増やすという段階だから。ただ、こういうモデル事業的なものをするときに、このスクールカウンセラーでなさったような効果の測定把握をやりながらすると非常にいいのではないかと。スーパーサイエンスハイスクールがどれだけの効果を上げているのかということなどがおわかりになると思う。制御集団と実験集団とを比べるとか、いろいろな手法があるので、そういうような方向にどんどん全体として向かっているので、これは大変好ましい傾向だと思うのだけれども、ぜひこういう傾向を今後も一層お進めになっていただければなという感じがした。

【小出委員】
   私、文書で一言コメントを出しておいたのだが、前回のこの委員会での14年度の評価成績を見ると、大部分がおおむね順調に進捗、想定どおり達成と非常にいい結果が出ておったが、その中で唯一、想定したとおりには進捗していないというのが出たのは、私学助成の部分だけだったと思う。これは文科省の担当部課が一生懸命やらなかったという意味じゃなくて、予算がないからできなかったという意味での予定どおり進捗しなかったということで、先ほどの金があるけれどもうまくできなかったというのとは違って、やろうと思っても金がない、予算がつかないからできなかったと私どもは解釈しているところである。
   そういう意味で、この間の文書のところでも、ぜひ来年度に向けては高等教育に対する予算を大幅にとっていただくように頑張っていただきたい。特にその中で80%、私立大学が分担しているわけだから、その分野も含めてご努力いただきたい。並びに文科省の中でそういった面に対するほかの部局のご理解をいただきたい。そして、想定したとおり進捗していないではいけないので、多少うまくいきつつあるというような評価のできるようにご努力賜りたいということ。もう一つは今非常に不況で困っているので、奨学金を増額して欲しいということを書いておいたのだが、これを見ると、約100億円ほど増えているんじゃないかと思うので、こういう点は非常に結構だと思う。
   以上である。

【伊藤座長】
   小出先生からいただいたメモでは、イコール・フッティングという問題を出しておられたけれども、この問題は大変大事な問題だと思うのだけれども、これは例えばヨーロッパなどで大学と言うと大体国立大学である。授業料など非常に安い。日本の場合はちょっと違った、高等教育について何か違ったフィロソフィーをお持ちになっておられるのだろうと思い、一応、そういう問題についても高等教育関係の方からご説明いただきたいなと思っていたが、きょうはちょっと時間がないので、大変申しわけないけれども、事務局から後ほどご意見を承りに伺うこともあろうかと思うので、そのときには何とぞよろしくお願いしたいと思う。

【佐野評価室長】
   1点、私学の助成のところなのだけれども、資料2というこの概算要求主要事項というのがある。その10ページをごらんいただけると、かなり努力している数字がわかるようには一応、評価書のほうではここまで細かく予算を書いていないが、10ページのところで大学等について150億円、高校等については80億円、施設・整備については33億円ということで、小出先生からのコメントで、もちろん今後もさらに努力していかなきゃいけないのだが、今の段階ではこんな形で計上させていただいているということである。

【伊藤座長】
   今の小出先生のご質問、大変原則の現実的な問題が含まれており、またいつか十分にその点についてご議論を交わしたいと思っているが、大事な指摘をちょうだいした。
   ただいまちょうだいしたご意見等については、事務局において来年度の政策評価実施計画の策定、あるいは予算編成などに反映して、ぜひ積極的に反映していっていただきたいと思う。

(2) 評価手法の調査研究報告について
   事務局(大臣官房政策課、大臣官房国際課、科学技術・学術政策局計画官付)より「評価手法の調査研究」について報告が行われ、続いて質疑・意見交換が行われた。
   ・ 大臣官房政策課−「教育行政における評価手法の在り方に関する調査研究」
大臣官房国際課−「国際化政策に関する評価手法等の調査研究」
科学技術・学術政策局計画官付−「研究開発の評価者の育成方策等に関する調査」


【伊藤座長】
   それでは、以上3つのご報告を伺ったわけだが、まとめてご質問、ご意見等をちょうだいしたいと思う。

【古賀委員】
   国際化政策というのは、この本の3ページにあるように、開発途上国に対しての国際協力とか留学生とか、そういう部分の評価ということで、国際的な意味の比較とか競争力とか、そういうのはここには入らないということでいいのか。例えば数学などでよく数学オリンピックなんかあると思うけれども、そういうレベルは日本としてはベストプラクティスでどの辺だとか、そういうのは別なカテゴリーでやると考えていいのか。この国際化評価というのは、ここに書いてあるように、発展途上国等、開発途上国に対しての協力のODA的なところを評価するという手法というふうに、まだ全部読んでいないからわからないけれども、そういうふうに見ていいのか。この「国際化」というのは、一般的に国際化というとインターナショナライゼーションとか、内なる国際化もあるし、外との競争力もあると思うのだけれども、国際化評価というのは、国際化政策と関連しどのようになっているのか。意味を小さくとっているのか。

【和田国際課長補佐】
   ここで申し上げている国際化政策、ちょっと表現ぶりが確かに明確でない部分もあるけれども、文部科学省で行っている国際化に関する施策、これを政策評価しなければならないということだが、それに対して全体としてどのような政策評価を行うべきかという研究である。

【古賀委員】
   私が伺っているのは、「国際化」という言葉が、国際化政策といったとき、例えばスーパー・イングリッシュ・スクールなどで非常に日本は国際会議に行ったときに、語学力がおくれているとか、あるいはいろいろな学力でも国際化より、教育問題はドメスティックな視点のところが多い。これは教育だけじゃなく、文化もあるし、スポーツもあるし全部なんだが、一般に「国際化」というと、我々のイメージは、要するにインターナショナライゼーションなんだけれども、3ページで非常に定義が、留学生交流とか、科学技術交流とか、そういう部分に限られている評価というふうに見れる。

【村田国際課長】
   なかなか国際化政策という定義が難しく、我々も研究者の方々といろいろ議論をしたわけであるが、今回、調査研究をお願いするに当たり、いわゆる国際関係の施策というふうな位置づけで、したがって、必ずしもODA対象の国際協力ということには限らないけれども、2国間の対等の立場での交流、例えば日米のフルブライトとか、そういうものは含めてとらえている。また、ご指摘のスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールなどについては、外国語教育の充実という観点から国際関連施策という中でとらえてはいるけれども、先ほどご説明申し上げたように、事業ごとに目的が異なっていることから、なかなか1本の尺度で評価することが難しいというご報告の内容になっているわけである。
   具体的にこの報告書で申し上げると、17ページをお開きいただきたいが、我が省の国際化施策、国際関係の施策として17ページから19ページに挙がっているものを一応念頭に置いて調査研究をさせていただいたということである。

【天野委員】
   報告書の中で、一番最初の教育行政における評価手法の在り方に関する調査研究、外国でどうなっているのかという話を伺って大変興味を持ったのだが、ここに書かれているプログラム評価ということの意味をここに書かれているだけで適切に理解したかどうか分からないけれども、まあ、一般的な施策をする前に、ある程度実験的なことをやってみて、それは論理整合性をちゃんとやることと結果との関係であるのかという、チェックするというふうに、その上で一般化するというふうに読んで正しいかどうか分からないが、もしそうだとすると、日本でもこういうことをぜひやる必要があるんじゃないかと思ったわけである。例えばここにいろいろな施策が挙がって、前にご報告があったわけだが、その中には、ある種の事業であって、パイロット・スタディー的なものや、まさにここで言うプログラム的なものもあるのだけれども、それをもとにある程度成功していると思ったら、もっと一般化するのかどうか、その辺の見極めがはっきりしない事業が多いんじゃないかと思う。日本の場合に。そういうことが1つある。
   それから、例を挙げるとしかられるかもしれないが、最近のCOEを見れば、ここの評価の中にも出てくるけれども、COEというのは一体何を効果でねらってやっているのか、もう一つはっきりしない。5年後、6年後に評価がどうなるのか分からないが、いずれにしてもスタートしたわけだけれども、どういう結果が生まれるかということについてはほとんどわからないでお金だけが出ているというのが、大学関係者の話を聞くとそういう印象を秘密裏に受けるわけである。1つか2つやってみて、どういう結果が得られるのかをチェックをした上でこういうことはやる、予算も増やすというのがいいんじゃないかと思うので、そういうことを含めて15年度はぜひさらに研究を深めていただければと思う。これが1点。
   もう1点は、もう一つ非常に印象的だったのは、両国とも統計データとデータベースを非常に管理しているということである。一体日本の文部行政における統計データ、データベースはどうなっているのか。これは前から私は関心があり、折に触れて申し上げてきたけれども、長い間とっている学校基本調査のデータは今や現実にはほとんど使用にたえないようなデータの累積になりつつあるんじゃないか。つまり、政策目標と見合ったデータベースのつくり方、あるいは統計の収集が行われていない。だから、ここに挙がっているたくさんの事業で評価をする場合に、こういう事業の評価をやるのに必要な統計データやデータベースがそろっているのかどうかということもぜひぜひこの評価の問題と絡めてご検討いただきたいわけだし、この調査研究の中でも日本の場合にほかの国に比べてどうなのか検証していただきたいと。
   私は、具体的なデータに基づかない文部省の施策がどんどん増えているような印象を持っている。やってみなきゃわからない式のものが余りにも多過ぎるんじゃないかと思っているので、プログラム評価と統計データ、データベースの整理の問題について、日本は一体どうなのかということもぜひご検討いただければと思う。

【浅井委員】
   この3つの評価の報告があったわけだけれども、これは一般的に評価手法の研究とか、評価手法のあり方に関する研究となっていて、非常に間接的な感じがする。評価に関する調査研究であるべきなんじゃないかなと思う。評価手法というと何かえらく狭い、評価の仕方をどうやってやっているかということになるんじゃないか。だけど、先ほどのお話を聞いていると、例えば教育行政における評価手法の在り方に関する調査研究においても、イギリスやアメリカの例を見てもらえると、教育の外側から教育というものを見るようなことも含めて、要するに今さっきの教育評価の専門家に入ってもらっているから、専門家も養成している一方で経済を専攻した人とか、一般の社会人を相当そういうところに入れて評価活動をやっているとか、そういうところを見てもわかると思う。それも狭い意味では評価手法かもしれないけれども、やはりもっと立ち返って、どんな項目から、どういう観点から評価をするのかとか、そもそも何のために評価をするのか、そういうことに立ち返らざるを得ないというか、そういうところに触れると思う。今の天野さんのご指摘とも通じるところだが、こういった研究はぜひ、なぜこういう政策があるのかとか、何を目指しているのか、だからどういう観点から評価をするのかということがどういうふうに実行されているかというレベルでぜひ調べていただきたいなと今思う。
   それで、それに関係してもう一つ、今の政策評価のところに関係して言うと、これは資料2になって概算要求が載っているけれども、こういう概算要求に関するサマリーも、ほとんどが微分係数だけを扱っている今までの予算の配分が大きくあって、変わったところだけを取り上げて主張しておられるところが多いが、そうじゃない部分がものすごく大きいはずである。例えば教科書の配布みたいな問題があるが、これはあまり議論されないままずっと来ていると私は思うが、随分、議論、意見のある人もいる。こういうところは大いに掘り起こしてゼロベースで議論してはどうかと思うが、そういったあたりも教育費の負担の問題として、先ほどの調査の結果に実際出てきているわけである。そういったところを掘り起こして評価の観点をどういうところからやるかということを他山の石で調べてきていただきたいなと思うし、今申し上げた大きな予算配分があって、そしてあんまり議論が行われていないようなところをぜひとももう一度議論をしたほうがいいと思う。
   医療費の問題について、ほとんど全部自動的に保険で支払えるからといって、自分の健康にあまり注意しないような風潮が日本人の医療費の高騰とか、そういうところに、不必要な医療費の消費につながってきたおそれがあるということを言われているというふうに、最近、そういう議論を認識しているが、なるほどというようなことがあるが、教科書の負担などもやはりそういったところがあって、もっと負担意識というか、そういうものをもっと喚起するほうがいいという意見もあると思う。私はどっちかというと、そちらに賛成するが。したがって、要するに政策評価では、ハイライトを浴びているような微分係数のところだけ議論しちゃいけない。もっともっと根本的なところからも議論していただきたい、そういうような思いである。

【伊藤座長】
   ご指摘のご趣旨がよく分かる。評価手法だけではなくて評価システムも大事である。何のための評価をするのか。全くそうだが、評価というのは評価需要があって初めて評価を始めるべきだけれども、日本の場合には出発点で逆になったものだから、それをだんだん正常な姿に戻していくというのが大事だと思う。さしあたって、今、評価の対象になっているのは、いわゆる政策経費だけであるけれども、今後はもっと制度的な、例えば教科書の問題を指摘されたけれども、6割か7割はそれだと思う。そういう制度的な経費にも切り込んでいく。今、開発している評価手法というのは、そういうものにも使えるような評価手法になるのではないかということを期待をもって研究を続けているわけである。
   あと、天野先生がおっしゃったデータの問題、これは大変深刻な問題であり、さっき、末広補佐からのご説明があったけれども、ものすごく完璧なデータがそろっている。1人1人の生徒に全部背番号をつけ、毎年、年次経年的な学力だけではなく、家庭環境についてのデータもデータベースに入っている。日本ではそんなことをやるとなると大変なことになると思うけれども、どうしてそんなことができるのかと聞いたところ、向こうの人が簡単に、だって、教育に関するデータというのは最も基本的な情報だから、これは一種の公共財だと、パブリックだと関係者は答えていた。なるほどな、そういう見方があるんだなというふうに私は思ったけれども、そこまではなかなかいかないけれども、できればそういう方向に近づけていきたいなという感じがする。それができないと、ほんとうの意味での評価というのはできないだろう。これは天野委員がおっしゃったとおりである。いろいろ貴重なご意見をちょうだいした。

【舘委員】
   データに関して、一般的にはそのとおりだと思うけれども、具体的に1つだけ例的に申し上げると、きょうの国際化政策のところのご研究で教えていただきたいけれども、例えば今日の資料1−2で、医療評価で、例えば187ページ、186ページから、これはいわゆる留学生10万人政策で、これが達成されたということはすばらしいことだけれども、187ページにあるように、同時に急増に伴って質の問題が出てきているという指摘があるわけである。そうすると、単に数の指標では済まない、手法上だろう。状態になっていると、この評価書でも認識している。そうすると、これは新規、継続なので、これからまだ発展させようというときに、有効性ということで指標が考えられているけれども、これが受け入れの留学生数とか数になっている。それから、政府奨学金の受給、あと実態調査とかいうところで入ってくるのかもしれないけれども、必ずしも明示的じゃないということがある。
   そこから、私、このご研究で期待したのは、こういうところに関してどういう手法があり得るかというご研究があるんじゃないかということで、この今回のいただいている4−2の資料から、その辺どういう示唆があるのかお聞きしたい。もし必ずしもないのだったら、今後、そういうことを具体的に―資料、統計データが必要なのはそうなのだけれども、それから、政策目標に即したものは必要なのだけれども、それを1個1個つくっていかなきゃいけない状態なので、今、気がついたところの具体例として申し上げたのでこれだけというわけではないけれども、そういう観点からお答えいただければと思う。

【村田国際課長】
   今回の調査研究では個別具体の施策に踏み込んで、どの手法を当てはめるかというところまで、正直なところいっていない。報告書で申し上げると、34ページからいろいろな手法が書いてあるが、先ほども若干議論があったように、何のために評価をするのかということによっても当てはめる手法というのは変わってくるのではないかと思う。
   今、ご指摘のあった留学生の政策効果ということであるけれども、例えばイギリスなどでは、留学生が来ると地方にどれぐらい経済波及効果があるかというふうな調査を大学長協会などがやったりしている。これは38ページに出てくるコストパフォーマンス評価ではないかと思われるが、留学生施策を経済的なコストパフォーマンスだけで評価するのかという問題もあるし、教育的な観点はどうなのかといったことがあり、1つの施策を評価する場合もおそらく評価の目的などとの絡みで評価手法も変わってくるのではないかと考える。冒頭申し上げたように、今回の調査研究ではなかなか個別具体のところまで踏み込んで、この手法を当てはめるというところまでいかなかったということをご了承いただければと思う。

【伊藤座長】
   非常に重要な視点をご指摘いただいたので、今後、私どももみんなで考えていきたいというふうに思っている。3つの立派な報告書が出ているので、ぜひこの結果を今後の政策評価の推進、充実に役立てていっていただければなと思う。そういうことをぜひ期待いたしたいと思う。

【平澤委員】
   今の伊藤先生のおまとめでよろしいかと思うが、もう少し具体的に申すと、今、ここでの3つの調査というのは、手法とか、体制とか、データベース等にかかわる、いわば評価インフラをどういうふうに整えるべきかという、そういう話だったというふうに思うけれども、この点で日本の現状というのは非常におくれているわけである。だから、その評価インフラをむしろ整備する政策自身を展開しなきゃいけないというところだろうと思う。そういうことは一方にあるわけだけれども、しかしながら、天野委員等からも出たように、対象それ自身を評価してみるということを事例的に始めないといけない状況になっていると思う。
   だから、一方ではそういう評価事業を全面的には展開できないにしても、重要だと思われる、あるいは評価すべきフェーズにあるとか、そういうものを取り上げて、手法や体制やデータベースを不完全ながら使いながら、どういう点が不足しているかということを検証する。もう一つの柱としてやはり試みをやるべきだろうと思う。僕らの他省庁では、むしろ手法などの開発よりも、評価事業そのものを全面的に展開するというところもあったりして、これはこれで実際やろうとしたら、手法等が整っていないために非常に混乱しているという、こんなような状況も一方ではあるわけである。これが1つ。
   それからもう一つは、最初の教育にかかわる調査の中で、プログラム評価ということに関しての、これがキーワードかと思うが、受け取り方がどうも2通りあると私は思っているのだが、それは第1にはやはりプログラム化された政策に対する評価というのと、ここではむしろそうではなくて、評価それ自体をプログラム化するという、そういうふうにとらえておられるのだが、科学技術のほうで通常使っているプログラム・エバレーションというのは、政策自体がプログラム化されているという、それに対しての評価という意味で使っているわけである。これもまた基本的な課題を含んでいるけれども、日本の政策というのはプログラム化されていなくて、個別に担当課がそれぞれの年度に打ち出していくというような、そういう形になっているから、プログラム評価をもしやろうとしてもできないというふうなことになるかと思うのだが、これは評価コストを含む問題もあるし、それから、政策の体系的な展開という点からもぜひ政策自身をプログラム化するという、そういう政策展開というのが大きな課題としてあると認識すべきだろうと思う。
   以上2点である。

【伊藤座長】
   政策評価を始めてみて初めて、ああ、日本には施策がなかったな、プログラムがなかったなということを自覚させられたと、これは大発見であるけれども、今ご指摘になったように、確かに今後は施策、プログラム化を進めていくべき時期に来ているだろうと思う。
   これまで2年間かけていろいろ問題があったけれども、文科省全体として評価カルチャーのようなものは根づきつつあるなということであり、これは私、大変なことだと思う。大変いいことをなさっていると思う。今後ともぜひ文科省の政策評価、客観性、実効性を高めていっていただきたい。そのためにこの有識者会議としても積極的に助言、提言を出していきたいと思う。皆様方にはどうか引き続きご協力をお願いいたしたいと思う。
   本日の会議はこれにて閉会する。

──  了  ──


(大臣官房政策課評価室)

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