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政策評価に関する有識者会議

2003/03/14 議事録
第6回政策評価に関する有識者会議議事録


第6回政策評価に関する有識者会議議事録


1.日  時     平成15年3月14日(金)   15:00〜17:00

2.場  所     霞が関東京會舘「シルバースタールーム」

3.議  題    
(1) 平成15年度文部科学省政策評価実施計画(案)について
(2) 文部科学省総合評価書(案)について
(3) 文部科学省事業評価書(案)について
(4) 政策評価の結果の政策への反映状況報告−平成14年度−(案)について
(5) 評価手法の調査研究について

4.配付資料
資料1  平成15年度文部科学省政策評価実施計画 (案)
資料2     平成15年度政策評価に関するスケジュール
資料3-1-1 文部科学省総合評価書−地域社会の期待に応える人材育成方策−要旨(案)
資料3-1-2   文部科学省総合評価書−地域社会の期待に応える人材育成方策−(案)
資料3-2-1   文部科学省総合評価書−優れた成果を創出する競争的かつ流動的な研究開発システムの構築−要旨(案)
資料3-2-2   文部科学省総合評価書−優れた成果を創出する競争的かつ流動的な研究開発システムの構築−(案)
資料4-1   文部科学省事業評価書−平成15年度要求新規事業(追加分)及び平成14年度公募・外部評価型研究開発課題−要旨(案)
資料4-2  文部科学省事業評価書−平成15年度要求新規事業(追加分)及び平成14年度公募・外部評価型研究開発課題−(案)
資料5   政策評価の結果への反映状況報告−平成14年度−(案)
資料6-1       教育行政における評価手法の在り方に関する調査研究 (平成14、15年度)
資料6-2       国際化政策に関する評価手法の調査研究(平成14年度)
資料6-3       研究開発の評価者の育成方策等に関する調査(平成13、14年度)
参考1       政策評価に関する有識者会議構成員
参考2       行政機関が行う政策の評価に関する法律

5.出席者
(委員) 伊藤座長、浅井委員、麻生委員、天笠委員、天野委員、大窪委員、岡本委員、小出委員、古賀委員、杉山委員、舘委員、中西委員、平澤委員、星野委員、横山委員

(事務局) 間宮文部科学審議官、結城大臣官房官房長、玉井大臣官房総括審議官、坂田大臣官房審議官(大臣官房担当)、小田大臣官房政策課長、佐野大臣官房政策課評価室長

(オブザーバー) 泉大臣官房会計課長、村田大臣官房国際課長、大島大臣官房文教施設部施設企画課長、布村生涯学習政策局政策課長、辰野初等中等教育局初等中等教育企画課長、合田高等教育局高等教育企画課長、尾山科学技術・学術政策局政策課長、伊藤科学技術・学術政策局計画官、川原田研究振興局振興企画課長、藤木研究開発局開発企画課長、山根スポーツ・青少年局企画・体育課長   他

6.会議の概要
(1)平成15年度文部科学省政策評価実施計画(案)について
 事務局より「平成15年度文部科学省政策評価実施計画(案)」について説明が行われ、続いて質疑・意見交換が行われた。

【伊藤座長】
   ご意見、ご質問等があればお願いしたいと思うが、それに先立ち、中西委員から文書でご意見をいただいているので紹介する。
   「『文部科学省の使命と政策目標』に、現在最も大切なテーマの一つであるエネルギーを中心に見据えたテーマがないように思える。原子力などエネルギーに附帯するテーマはあるが、主体的にエネルギーを開発するテーマも必要ではないかと思っている。」ということである。
   それからもう一件、きょうご欠席の池上委員から、実施計画(案)へのコメントということで、主として評価の方法論についてのご意見をいただいている。例えばシミュレーションを含めるべきであるとか、資源制約を明記すべきである、将来価値の減価とリスク評価の視点を取り入れるべきではないか等々、かなりベーシックな評価の方法についてのご指摘がある。このような点については今後、評価室で十分に参考にさせていただき、可能な限り来年度の実施計画に反映させていただきたいと思う。

【星野委員】
   資料2では、有識者会議のかかわり方が、至るところで文書による意見照会ということで、ここだけ具体的に方法論まで書いてあるのが気になる。文書による意見照会というやり方では、政策評価の持つ関係者間のコミュニケーションという大切なことがおろそかになる。むしろ、各政策目標分野別に、この有識者会議の分科会を設置すべきである。そこで評価した担当部門が実績評価や事業評価の結果を報告し、それに対して様々な立場から意見交換する場を設けたほうが、評価の質がもっと高まり、さらには政策評価の目的であるアカウンタビリティ達成にもなるので、そういう踏み込んだかかわりを有識者会議は今後持つべきではないか。

【佐野評価室長】
   ご指摘の分野別の会合について、時間を拘束するにもかかわらず、先生方が積極的な貢献をしてくださるという意思のあらわれとして、事務局としては非常に感謝する次第である。本件について内部でも相当検討してきたが、その中で、評価書の策定に当たって、もちろんこれまでどおり事前送付して、全体会合で意見をいただくということは同じくしていきたいと思っている。科学技術であるとか、教育であるとか、文化、それぞれ文書だけではすぐに理解できるものもあれば、できないものもあると思う。したがって、一律的に全部分野別の会合を行うということではなくて、できれば個々の具体的な案件に照らして、例えばご理解を深める必要がある場合などには具体的な案件で対応させていただけたらと思っている。

【伊藤座長】
   評価という活動が大分定着してきているように思う。今後はおそらく、問い合わせなどが出てくるということも十分考えられるので、そういうような質問、照会等を待って、分科会のようなものが開ければ、一番自然なのではないかと感じている。今の星野委員の意見は大変貴重なご意見でありますので、十分参考にさせていただきたいと思う。

【古賀委員】
   資料2で、有識者会議があって、その後庁内の政策評価会議をやるのが原則と思うが、第8回のところだけは有識者会議が後になっている。これは特に理由があるのか。
   それから、庁内の政策評価会議というのは、どのような形で審議されているのかイメージがわからないが、ご説明いただきたい。

【佐野評価室長】
   8月は、予算作業で非常に立て込んでおり、委員の先生方のスケジュール調整等も、前回も行うということでかなり調整していたが、予算の作業、役所側の都合となかなか合わなかった。従って、文書による照会をきちっとやらせていただき、その上で政策評価会議で決定させていただきたい。9月にはその状況をご説明させていただくというような形にさせていただいている。
   文部科学省に設置されている政策評価会議だが、これには事務次官をヘッドとし、各局長、あるいは会計担当部局等が出席し、この会議と同じようなスタイルで審議させていただいている。

【伊藤座長】
   事業評価書というのは言ってみれば事前評価のようなもので、予算がらみで時間との勝負になるので、設定がなかなか難しいのか思う。印象としては、この有識者会議の位置づけは、全体として事業評価よりはむしろ実績評価ないし総合評価のほうにウエートを移していったほうがよいかと思うが、その辺のことも含めてまた評価室といろいろと相談させていただきたい。

【麻生委員】
   時間は相当かかっているが、コンセプトもなかなかクリアにならないし、それに結びついている評価の方法論みたいなものもまだプリミティブな領域にあるので、なぜかということをここで一遍反省する必要があるのではないかと思う。
   特にテーマというのは我々が関与したかどうかはわからないが、「地域社会の期待に応える人材育成方策」などというのも、地域社会の期待にこたえる人材というようなもののとらえ方なども不満だし、このコンセプトがもうちょっと成熟して、方法論も成熟していく、そういう方向に引っ張っていくことをしないと、お金を使ってやるだけの価値があるものかというのは、同じようなことが3年目に続いたら出てくるのではないかと思う。コンセプトとか方法というものの、委員の相互理解とか情報の共有とか、そんなことが必要かなという感じもするし、そうではなくて、文科省では文科省としてやっていて、これはこれで自己完結的な意味があるのかなと考えているが、方針みたいなものについてちょっと疑問がある。

【浅井委員】
   昨年とどんなふうに進歩したか、変わったかと様子を見ていた。感じていることは、有識者会議というのが一つの評価のプロセスの中に、過程が、ステップがいろいろとあり、そして各テーマ、このテーマをどう選ぶかが一つ一つ問題だが、テーマである種の評価活動がなされたときに、そこに対してちょっとだけコメントするという位置づけになっているように思い、なるほど、有識者会議なるものの位置づけが少し決まってきたのかなと思うと同時に、最初のときは評価というもののあり方から随分議論したような記憶があり、スコープが矮小化しているのではないかというような感じをちょっと受けていた。
   今思うことは、国の力ということと、文部科学省の役割ということとの関係で、やっていることがどんなふうに国の力につながってきているかということを率直に見て、そしてそれをどういうふうに判断するかということを議論することではないかと思っており、今、非常に心配している。今の世界における日本の位置づけが非常に大きくスリップしている。我々の努力もポジティブ方向に向いているのかもしれないが、世界のほうはもっと急勾配で進歩している部分もあったりし、経済力といったようなことでは大変に大きな問題になっていると思う。学力でもそうかもしれない。そういったことを考えると、有識者会議というのは先ほど私が言ったのが間違っていたら訂正していただきたいが、そういうことで役割を果たせばいいのかどうか、私はわからないでいる。
   今、たまたま麻生先生が、「地域社会の期待に応える人材育成方策」ということで、このテーマについてはどうなんだろうと言われたので、そのことを取り上げて申し上げれば、もちろん地域社会の期待にこたえる人材ということは、今の日本の社会にも地域にちゃんと根差したようなボランティア活動などを進んでやるような人材を育てていかなければならないといったような意味で、また非常に大きな着眼点であることには間違いないが、今、日本における人材育成における問題点というのは、必ずしも地域社会とかそういうふうな話ではなくて、もうちょっとマクロにリーダーシップというか、そういうことの育成なのではないかと考えている。独創性とかリーダーシップというのをどうやって育成していくのか、日本をどうやって引っ張っていくのかといったようなことを議論しなければならなくて、そのことにおいて地域ではどうか、あるいは創造性というようなことではどうかとか。あるいは、例えば研究機関の評価や何かにおいても、アドミストレーションのリーダーシップなどというのは今まで存在し得なかったような感じがしているが、そういったところではどうなんだろうか、そういうことを議論してみる必要があり、殊、地域社会におけるリーダーシップというだけでは論じ足りないというような感じがするのではないか。麻生先生が言われた文脈がそういうものではないかなと想像しながら、同じ思いをしている。
   最後はスペシフィックなテーマで申し上げたが、有識者会議の位置づけということについて、はかりかねているというところが率直なところだ。

【伊藤座長】
   有識者会議というよりも、むしろ政策評価そのものについて、そろそろ2年たつので、一度ここで考え直す時期に来ていると思う。総務省の主導型で行われている、すべての会議を対象にして一斉にやるという評価がいいのかどうか、もうちょっと重点化していく必要があるのではないか。そういう点について、評価室ともぼつぼついろいろと意見交換を始めているが、今後、委員の各先生方にもお諮りしながら、ご相談しながら、全体としてのデザインを変えていくような方向に持っていきたいと考えている。

(2)総合評価書について
   事務局及び科学技術・学術政策局内丸評価推進室長より「文部科学省総合評価書−地域社会の期待に応える人材育成方策−(案)」及び「文部科学省総合評価書−優れた成果を創出する競争的かつ流動的な研究開発システムの構築−(案)」について説明が行われ、続いて質疑・意見交換が行われた。

【古賀委員】
   「地域社会の期待に応える人材育成方策」というのは、このテーマ、大項目、小項目を含めて、スクールカウンセラーの設置その他、大変大事なテーマがここに全部入って、そして総合評価されていると思う。アンケートをとって、ポイントというのはたしかに重要だと認識している。しかし全体の目標に対して達成度がどうだったかというのは、全体の表を拝見すると、総評のところと今後の「政策項目別の評価結果一覧」にあるが、こういう課題があってこれから大事だというような、失礼な言い方をすると、よそごとの表現みたいなものが多い。むしろこの中でこれが非常に大事だとか、総合評価の結果、単純ではないけれども、よかったのか、達成度が非常に低かったのか、あるいは、低いけれども、この政策はこのままでいいとか、評価だから、いいとか悪いとか、優とか良とか可とか、ABCとかあると思う。その辺が見えない。総合評価というのはそういうものなのか。
   それから、例えば具体的なこととして、「スクールカウンセラーなど児童生徒を対象とした相談員」というテーマがある。大変予算もかけていただいて、各校にスクールカウンセラーとか、あるいは相談員とかをかなり配置していただいて、今一番問題になっている心の問題とか、あるいは不登校の問題がこれでかなり解決しているというのが数字上も出ているような気がする。そういうときに、課題が、全国の公立の中学校に配置すると書いてあるが、実際にスクールカウンセラーの資格を持った人が養成できているのかとか、その環境条件もあると思う。課題のえぐり出しというのが、もう少しあってもいいのではないかという感じがする。
   このスクールカウンセラーのテーマ一つをとっても、予算の関係がありますから、小中学校に重点を置かれたと思うが、例えば高等学校もあると思うし、それから今申し上げたような、スクールカウンセラーという資格を持った者の養成が足りているのか。あるいはこれが配置されただけではなくて、学校の教職員との連携というようなことでいろいろな質が高まってくると思うが。まとめだけを見ていると、どうも少し空虚な感じがするが、その辺はいかがなものか。
   総合評価のところに、もう少し自己評価の厳しさも、あるいは将来に対してもここだけは予算を相当とっていくというような姿勢とかが必要。今の奉仕活動の問題などもみんなここに入っていると思う。先ほど議論があった学力とか、リーダーを養成するとか、そういうところの部分は別として、少なくとも一番共通的に底辺的に問題になっていて、各市町村でもこの辺のところが一番関心の深いところだと思う。そういう意味で、この総合評価の相対的なレベル、評価というのはこの程度のものなのかということだが、ABCとかをつけるとよくないのか。省庁によってはそういうことをやられているところもあるやに聞いている。
   個別論の、スクールカウンセラーそのものについて、この評価でもう少しこういう方向に持っていくというような方針が具体的にあれば、お話しいただきたい。

【浅井委員】
   先ほど、私の発言が「地域社会の期待に応える人材育成」が大事でないというふうに響いたのだったら、それは全くの誤解である。あくまでこれは大事なテーマであって、これは一つの側面だけれども、非常に大事だと申し上げたつもりなので、誤解のないようにお願いしたい。
   今、古賀委員からもご指摘があったように、今まで単に学力というところで見ていたとしたら、ボランティア活動だとか、スポーツクラブだとか、そういったことを率先してやっていくような人たちの育成といったような事柄、あるいはそれをちゃんとケアするようなメカニズムの確保だとか、そういったことについて文部科学省で施策をいろいろと打ってきて、それを評価してみたら、以前よりそういったところはおそらくよくなっているだろうということは理解できるし、そういった意味で、この一つのテーマは意味があると思う。さらに、政策としての総合的な評価というのをマクロに見て、ほんとに我が国が大変前向きに大きなストライドで前へ進んでいるかというような感じで物を見ないといけなくて、我々の社会も少しずつ進歩しているかもしれないけれども、世の中はもっと速く進歩しているというところを見ないといけないのではないか。
   そのためにどういうことをしたらいいかということの一つのポイントで少し指摘させていただくと、アンケート調査の対象が教育関係者だけになっていないか。これが一つの問題点ではないか。コミュニティーの活力というのは、もちろん教育が大きい貢献をするわけで、教育関係者のところにアンケートの調査の対象を絞っているわけだけれども、実はそれは教育の結果を受けとめるほうの地域社会全体の評価を反映しなければならないわけで、それをどうやってやるかというところは大変難しい問題だと思うが、そこをやってのけないと、結局調査にならない。これは評価をする人が、結局自分でやってしまっているというようなところがマクロに言えばあるわけである。もう少しマクロに見ていただいて、教育コミュニティー全体が評価されているという感じで事に当たっていただくと、もっとマクロ感が出てくるのではないか。
   私なんかは教育そのものには携わっていないが、企業、産業界のほうからそれを見ているというような立場で、ただいまの評価、このアンケート調査の実施ということになると、むろん初等中等教育もあるが、高等教育や生涯教育もあるわけであって、今、例えばアントルプレナーシップといいますか、そういったことの確保、醸成というのが社会の非常に大きな問題だと思っている。リーダーシップの。それをもっとちゃんととらまえてほしい。そういう事柄からとらまえていかないと、教育の教育による教育のための評価というような感じになってしまうと、これは非常にやりやすいけれども、そこでとまってほしくないという感じであり、いま一層の工夫をお願いしたいところである。

【伊藤座長】
   企業、もしくは産業界を代表されまして、お二方からご意見が出たので、これについて何か。

【山下評価室長補佐】
   今後の、実際の総合評価の実施に際しての参考にぜひともさせていただきたい。
   アンケート調査につきましては、いみじくも今、浅井委員からご指摘いただいた、対象範囲の幅をもう少し広げてやろうかというようなこともシンクタンクの研究者とも実は相談したが、実際アンケート自体が相当大規模になって、あと回収率の問題とか、アンケートの中身自体も55項目について実際の実施の方法とか、そういうところまで立ち入って聞いていくという、当初そういうつくりも予定していた。それでまずは教育委員会を窓口に、あと首長部局の人材育成担当者にもアンケート票を配付する形でやってみようかという次第であり、しかしそこは今のご指摘をいただき、調査の段階で考慮が若干足りなかった部分かなと改めて考えている。
   あともう一つ、総評の部分だが、その点についても分析が足りない部分がまだまだあったかと思うが、アンケート調査の結果、地方におけるニーズは高いけれども、確保水準が低いという項目についてこのたび一応ピックアップをさせていただいたので、全体を通じて現状がどうなのかと申しあげると、それぞれの項目についてはそういう状況にあるということはあろうかと思う。
   さらに個別の表で、それぞれの項目についての施策上の課題についてはできる限り浮き彫りにはさせていただいているところだが、なにせ分野がかなり広がっていたので、分野横断的にここだということが、今回少し言葉が足りなかったという点はやはり反省すべき点ではないかと考えている。

【玉井総括審議官】
   スクールカウンセラー、先ほど古賀委員のおっしゃった、ごもっともなご指摘だと思っている。この評価というのはアンケート調査をもとにしており、そこであらわれたところにとどまっているようなところがあるが、スクールカウンセラーについては、実はかなり総合的かつ深いいろいろな調査を担当部局がちゃんと持っており、課題でいえば、どうしてもお金の問題、人の問題があるので、配置についてまずは中学校に力点を置いているが、実際には高校に活用したり、小学校にも活用したりして、広がりは持っているが、今のところメーンは中学校。
   課題は何よりもやはり臨床心理士等が足りない、不足してきているということがある。都市部はそれなりにいるが、地方に行くと、それだけの人材が果たして確保できているのかという問題がある。それからもう一つ率直に申し上げると、広がっていけばいくほど、今度はスクールカウンセラーの質の問題がやはり問われてくるのだろうということで、実は研修なども開始をしており、それから同じスクールカウンセラーの中でもスーパーバイザー的なスクールカウンセラーを教育委員会なり拠点校に配置するということも開始をしている。ただ、これは始まってまだ数年であるので、課題はまだ多いだろう。効果が高いということは明らかに数字においてあらわれている。配置する前と配置した後の、例えば不登校のあらわれた率を比較すると、明らかに効果はある。ただし課題はなお多いと思っている。
   同時に、これは昨日オープンにしたが、不登校問題についての中間報告、協力者会議を設けて議論してきたものが、きょう新聞にも載っていたと思うが、要はもっと広がった、学校になかなか適応できない子どもたちに関する対策の中の一環としてのスクールカウンセラーという意味なので、スクールカウンセラーでまたすべての対策ができるわけでもない。ちょうど古賀委員がおっしゃった、校内の教職員との関係、あるいは保護者との関係、トータルでとらえ、またそれは教育関係者だけではなくて、民間のNPOの方々を含めた、あるいは行政でも教育委員会だけではなくて、例えば高校レベルになると、不登校の子どもたちはハローワークあたりとのかかわりも実は相当出てきている。そういった広がりがある。ただ、こういう背景があるが、もう少しいろいろなあらわし方なり、調査のあり方は検討させていただきたいと思う。
   それから浅井委員のおっしゃったことは、よくわかっていると思う。これは多分どこかでご説明をしたことがあるかとは思うが、昨年、我が省として人間力戦略というものを明確に打ち出し、そしてその中でやや画一的な教育であったというところを問題点としてとらえて、基礎基本をそれぞれ発達段階において確実に身につけると同時に、伸びる子はもっと伸ばしていこうとしている。それからじっくり型の子どももいるわけだから、じっくり型の子どももしっかりと教育できるようにと考えている。そういうシステムに今、変えていこうとしている。どちらかというと受信型の教育であったものを発信型の教育に変えていこうということで、新しい指導要領についてのご意見はいろいろと出ているが、指導要領の中では、ディベートするとか、みずから調査するとか、受け身よりもむしろみずから学んでいこうという指導方法を相当取り入れているということであり、そのあたりもまたこういった評価の中にあらわれてくるように、また検討させていただきたいと思っている。

【大窪委員】
   現場では、いろいろな委嘱事業、委託事業を受け、社会の変遷に即した好ましい事業へのきっかけづくりをすることができる。
   一方では、総合的な学習の時間におけるゲストティーチャーやスポーツ指導者等が支援する場合、現場ではけがや事故の補償の問題などがあり、望ましい方向に発展させる上でネックになることも多く、政策実施にあたっては、受けている方がたいへん苦労しているのが現状である。
   評価にあたっては、計画する側、実践する側が、ともにしっかりした評価の観点をもつことが大切であり、また、受け手が活動する場合の予測される問題点などを計画する側もしっかりとらえ、対応できる措置を用意しておいていただきたいと思うのでよろしくお願いしたい。

【小出委員】
   文科省のほうで、社会的ニーズが高いけれども、確保・育成水準の低い分野を特に選んで調査したというのは非常によかったと思う。
   例えばスクールカウンセラーの場合、絶対数が不足しているのに対応し、大学の心理関係の学科増、定員増が従来の規制外として認められている。しかし、養成には学部4年、大学院2年、研修1年、計7年間が必要であり、時間がかかるが、その方向に進んでおり、順次効果が出てくると思う。
   評価はいろいろあると思うが、少なくともその分野についてこういった調査をされて、必要な分野でむだはやっていないということがわかったということだけでも非常にいいと思う。先ほど委員の先生が言われましたように、さらにいろいろな分野からの評価をされていきまして、効果をしっかりとしたものにされたら余計にいいと思う。

【天野委員】
   人材育成の総合評価ということだが、文部科学省が所管している大学は一体何をやっているのか。例えば、特に国立大学の教員養成学部はまさに直轄であるが、ここに挙がってきているような、情報教育に詳しい教員の養成だとか、それからLDやADHD等、これはすべて現職の教員を対象としたプログラムのお話だけで、国立大学の教員養成学部はこういう問題に一体何をしているんだと。これも文部科学行政の重要な一部であるのに、それが総合評価の対象として入らないというのは一体どういうことなのだろうか。
   今、日本の臨床系のカウンセラー養成はどうなっていて、どこまで来ているのかということも評価の対象で、その中で国立大学はどういう役割を果たしているのかをきちんと押さえなければ、文部行政はこれだけしかやっていないのか、現職でともかく応急処理的なことしかやっていないで、抜本的な人材養成をどこで考えているのかという問題が抜けているように思う。総合評価といいながら、どうしてこういうふうになっているのか、もし理由があれば伺わせていただきたい。

【山下評価室長補佐】
   当初アンケートを実施するに際して、それでそれぞれの分野について重立った項目を列挙をして、アンケートをとった。
   今回のアンケートの実施の重立った対象が市町村ということになり、市町村になると、市町村の人材育成担当窓口としてどうしても一番身近な存在であるのが生涯学習分野であったりとか、あるいは学校教育分野であったりとかということで、これがもう少し広域の都道府県になってくれば、例えば高等教育、産学連携分野において、産学連携に必要な人材というものを入れたら、そういったものが上位の項目に来たわけだが、全体として見たときには、そういう部分で市町村が主体であったということもあり、高等教育分野について項目がなかなか挙がってこなかったという点が反省点であろうかと思う。
   それから総合評価については、おそらく今後とも実施方法について、今ご指摘があったような、そういうテーマなども適宜選択しながら実施していくという形になろうかと思うので、そのあたりで少しご理解をいただければと考えている。

【小田大臣官房政策課長】
   今の点について補足説明させていただく。
   総務省が中心となってつくり、閣議決定された「政策評価に関する基本方針」という中で、評価方式として、事業評価方式と実績評価方式と総合評価方式が定められている。総合評価方式というのは、政策の決定から一定期間を経過した後、政策の見直しや改善に資する見地から、問題点の解決に資する多様な情報を提供することによって、特定のテーマについて様々な角度から掘り下げて分析し、それから問題点を把握するということで、総合的に評価する方式ということになっている。
   2年前の準備段階では、総合評価方式とはどういうものなのかまだわからない状況で、とにかく課題を決めて、それでまず練習台でやってみようということになった。したがって今回、まず横断的なテーマで、地域ということについては、必ずしも教育に関し、掘り下げて分析をして、この課題を重点的にという、いわゆる「総合評価」という名称の印象から来るような、そういう形での分析をした結果、選び出されたテーマではない状況である。この評価というのがきちっと決まる前の準備段階の2年前にこのテーマを選んだということもある。したがって教育についてすべてのことが総合評価として評価されているわけではなく、このテーマがすべてを代表するものということではない。今回は試行的な意味合いがある。どこもみんな、他府省も総合評価については、ほんとに細かい、総合評価という名称の印象からくる重点的に選んだテーマかどうか疑わしいようなものが今の段階ではいっぱいある。
   そういったこともあって、我々も反省を込めて、来年度、総合評価で選ぶテーマについては、今回ご提示させていただいた2つがあり、科学技術については、必ず基本計画の中の重要テーマを、課題を選ぶところからきちっとやることとしている。それからあと、スポーツ振興基本計画も、基本計画全体を見て、そこでその評価方法等を検討、それから場合によっては課題の発掘というか、課題をどう設定するかというところも十分議論してからやろうということである。
   したがって、2年前のこのテーマのときは、必ずしもそういった分析を経てきたものではない。そういう事情があったので、今後は総合評価については「総合」という名称にふさわしい形のものをやりたいと思っている。

【伊藤座長】
   総合評価はとにかく今回が初めてである。文科省としても非常に苦労してなさった。これに対するいろいろなご批判があろうかと思うが、ご批判を踏まえて、今後、総合評価に力を注いでいっていただきたいと思う。今後は事業評価のようなもののほうからは少しずつ足を洗って、むしろ実績評価から総合評価のほうにウエートを移していく。それが政策評価の本来あるべき姿ではないかという感じがして、制度全体の修正、改革等の問題も踏まえながら、総合評価のあり方を考えていきたい。今、貴重なご意見をいろいろといただきましたので、ぜひ参考にしていただきたいと思う。
   それからもう一つ、総合評価をやりますときに、原局・原課の協力が得られないとできないのでありまして、今までのところではなかなか原局・原課のほうが警戒心を緩めないということがあり、その点でも評価室にかなりご苦労があると思うんですけれども、今後はそういうような認識を省内全体で持っていだく。総合評価が中心になるのだということで、この方向をぜひ深めていっていただきたいと思う。

【平澤委員】
   今回は試みであるので、その内容に関してさまざまな不満な点があるわけだが、それはそれとして、今後どういうふうに取り組んでいくべきかということに関して、多少お話ししてみたいと思う。
   今回2つの大きな基本計画との関連の中で、本来分析すべき政策を取り上げるというような、非常にいい方向だと思うけれども、何かターゲットを決めて、それを分析すれば次にちゃんと生かせるという、そういう枠組みの中で総合評価はぜひやってきただきたいということが一つ。
   それから、有識者懇談会というのはある種のアドバイスをするとすれば、その種のチェックポイントというとちょっと言い過ぎかもしれないけれども、そういう点がちゃんと踏まえられるようなスケジュールというのをお考えいただくと、後手後手に回らないで済むのではないかと思っている。
   最後につけ加えれば、担当された方は前任者のいろいろなことを受け継がれて、その制約の中で最大限のことをおやりになったということは私も認めたいと思う。それだけでいいというわけでは決してないので、今後は方向を改めてくださいということを強調したいと思う。

【舘委員】
   2つの総合評価の実績を見せていただいたが、総合的な評定というのだけを見ると、成果がわかりにくいのかなと。手続的に、まず都道府県の教育委員会にニーズと確保水準の調査をされているんだなと。それで選ばれたということだけれども、評価としては、文科省のやった政策がどの程度成果を上げているかという評価をするんだと思う。そうすると、確保水準が低いということだから、問題点が明らかなところを取り上げているというところを要旨のところにも書いておかないと、すべてがこれから始まるみたいな読み方になるという可能性があると思う。
   それから、すべてがこれからという読み方になるというのは、古賀委員がご指摘されたことだけれども、一つは、ここに書いているのは評価の中の一個一個のところの、総合評価の中の総合的評定だったか、そこの部分を抽出されていると思うんだが。そうだとすると、これが評価だとすると、評価らしい書き方になっているのが、ほとんどが課題であるという文章とか、重要である、必要である、これは評価した結果、課題であるということだと思う。そういう意味では、そういう表現になっているのが、2つ目のコーディネートする人材、これは一定上げているけれども、問題があると。評価があって、それでこういう必要があると書かれている。それから今、ちょうど取り上げられたスクールカウンセラーについては、大きな効果が得られているということで、しかしさらにということなので、そういう意味では、評定があって課題ということだ。そういうふうになっているけれども、もしこれが書き分けられるなら、どういう状態かということを、評価の弁をちゃんと書いていただいたほうがわかりやすい。
   科学技術のほう、研究のほうになると、現状がどうだったのかというところがさらに書かれていないのではないか。いきなり今後の課題になっている。これは実は自己評価でやっていらっしゃるんだけど、基本的に自己評価の援助を我々はしていくんだと思うんだが……。大学でも最初に自己評価をやったときに、現状と課題とやってしまって、評価が見えない。いきなり課題が書いてあるということになって、自己評価をした場合、どうもこういう書き方になるようだけれども、やはり評価なので、まずどの程度の水準にあるかということを書くべきではないか。
   それでさっきに戻ると、そもそもそうすると全部問題になってしまうんだけれども、それはもともと問題のあるものだけを抽出されているので、その断り書きは要旨の前にしっかりつけておいたほうが。方法論を読んでいけばわかるんだけれども、方法論を読んでから結果を読む人はいないので、それも入れておいたほうがいいのではないかと思う。
   それから、先ほど発言しそこなったのと、平澤先生が前に戻った発言もされたので、ついでに発言させていただくと、資料1のご提案だけれども、私は去年タッチしていないのであれだけれども、新しく委員になったということで、ご説明を聞いたり、勉強をした限りの印象だけれども、自己評価をしていく際のフォーマットと考えると……。それから先ほど総合評価というのも、今、省庁に課されている評価というのは基本的に自己評価なので、そうだとすると、テーマとか、総合評価の課題をいきなり立てても、それだけで調査を全部やっていくということは難しいと思う。そういう意味では、確かにどの程度やるかは別だけれども、事業ごとの自己評価というのが、例えばテーマが立ったときもこれがベースになって、それをまとめていくという面があると思う。アンケートで済むというようなことではないので。そういう意味では、自己評価というのは、担当されている事業ごとの事業評価、あるいは実績評価だろうか、そういうものがどういうふうにうまくやっていくか、なされるかということがやはりベースになっていくのかなとは思う。
   そういう面で、今のあれから外れてしまいますけれども、先ほど発言しようと思っていたのは、今度の改革案、改正案で、例えば継続事業のところに、文章上は小さな改正だと思うけれども、あえて「社会的影響又は予算規模の大きいものを対象」とすると、こう入れることによって、あまりにも継続事業というのがあまたあるわけだから、逆に言うと、取り上げることが必ずしも取り上げられないというようなことが起こって……。私は去年のを見たときに、文科省はこれしかやっていないのかなという印象を持ったんだけれども、逆に言うと、そういう設定がないので何を取り上げたらいいかわからないので、取り上げていないというような事情もおありになったようで、そういう意味では、こういうふうに明記することによって、自己評価の対象がはっきりしてくる。あるいは、全部にそういう視点、方法というのがつけ加わった。下線の部分の意味は大きいのかなと。またフォーマット上、「必要性」、「効率性」、「有効性」、この辺は前回はどうなっていたかわからないが、随分まとまった格好になっていたけれども、各事業を担当のところで「必要性」、「効率性」、「有効性」――効率性などというのは難しい評価項目だと思うが、そういう点でしっかり見ていただく。それを受けて私も何か貢献できればと思うけれども、先ほどチャンスを逸しましたが、去年と比べると、そういう点が改善されているという印象を受けたということで、つけ加えて発言させていただいた。

【伊藤座長】
   いろいろとご意見をいただいて、すべて大変貴重なご意見であるので、今後、総合評価の質を高めていくために、大いに評価室でも参考にして、取り入れていっていただきたいと思う。総合評価については、今後重点を、軸足をそちらのほうにどんどん移していきたいと思っているので、今後ともいろいろとご助言をちょうだいしたいと思う。


(3)事業評価書について
 事務局より「文部科学省事業評価書−平成15年度要求 新規事(追加分)及び平成14年度公募・外部評価型研究開発課題−(案)」について簡単な説明が行われた。

(4)政策評価の結果の政策への反映状況報告−平成14年度−(案)について
 事務局より「政策評価の結果の政策への反映状況報告−平成14年度−(案)」について説明が行われ、続いて質疑応答・意見交換が行われた。

【横山委員】
   後でも結構なんだが、総合評価の競争的、流動的資金のほうは、ほとんど意見が出ないで、そのまま終わってしまったので、それもぜひやっていただきたい。1つ目の報告書でほとんど終わってしまっているわけで、それはいかにも変な話ではないかと思う。

【伊藤座長】
   それでは、先ほどの総合評価の第2の競争的な環境をつくるということについてのご意見があれば、出していただきたい。

【横山委員】
   勝手なことを申して、申し訳ない。
   私は、競争的、流動的研究開発システムというのを非常に重要だと思って、しかもそれをアンケートなどをやって、総合評価をしている。ただ事実をたんたんと述べているだけで、何が問題になっているのかとかというようなことをもう少し書いていただいたほうがいいのではないかと思う。
   例えば、資料3−2−2の、競争的資金の予算の増大が組織とか研究者に与える影響というのを見ても、申請等の手続業務に時間が割かれるようになったとか、あるいは研究に専念できなくなっているとか、問題点がかなり書かれていて、現場の声が非常によくあらわれていると思う。そういうところをやっていただきたい。
   それから、競争的、流動的資金の研究開発システムだけに焦点を合わせるのではなくて、今、総合科学技術会議で重点4分野とか、あるいは産官学連携とか、そういうものすごく大きな流れがあるわけで、その中で競争的資金とか、あるいは流動的な研究開発システムというものを考えないと、これだけをとったのではまずいのではないかと思う。
   例えば、きのう私はたまたま文科省関係の研究機関の方とお話しする機会があったが、そういう話を聞いていると、総合科学技術会議の路線というのはかなり経産省路線だなと。文科省はどこかへ行ってしまっているんだと。言わんとすることは多分、基礎研究というよりも産業振興とかそういったところに日本全体が向かっていると。文科省の人も、何で文科省はもう少し基礎研究という観点からやってくれないんだろうというような不満をかなり持っていた。
   それで、こういう総合評価をせっかくやっているわけだから、総合科学技術会議が今、出している政策との絡みでこういう研究開発システムの問題を取り上げて、それで現場の研究者が何を考えているかということをやっぱりもう少し出していただけたらと思う。国立大の独法化の問題なども進んでいる中で、私はひょっとすると間違えると大変なことになるのではないかと思う。流動的な研究開発システムとか競争的な研究開発システムというのは時代の流れで、そちらの方向に当然行くべきだと思うんだが、その中で忘れ去られていることがかなりあるのではないかと思っている。

【伊藤座長】
   今のご質問、ただいまの評価結果の政策への反映の42ページに、今ご説明いただいたようなことがある。これと先ほどの総合評価とが関係してくるわけだが、今の横山委員のご意見に対して何か。

【浅井委員】
   関係して。少しスペシフィックな事柄かもしれないが、研究者が流動するための仕掛けということで、今やられている仕組みというのはポスドクの関係とか、それから国研から大学へとか、そういうところにとどまっているところがある。また産業界からばかり物を言うといけないのかもしれないが、大学のためにも非常に大事だと私が思っていることは、先ほど天野先生でしたか、ご意見があったように、情報関係のことなどで、大学にもっと強くなってもらいたい。全体に情報関係をもっと強くしようといって大学がリクルートをかけたら、人材が全然集まらないというのが実情である。それで、つまり払底しているわけである。長年そういう情報分野が大事だという認識が非常に乏しくて、文科省も大学も責任があることだと思うし、もっとも我々もお願いをずうっとしていかなければいけなかったことではないかと思うが、大学の先生方もそういう領域を増やしていかなければならないというご認識は増えているんだけれども、どうしても人が集まらない。
   これは産業界も実は同じだ。ソフト屋人口などももっと増やしたいんだけれども、なかなかいないわけである。これをどうしたらいいか。大変困るんだが、やっぱり大学から、教育の段階から増やしていくしかない。それを一緒になってやるために、産業界で幾らかでも実際のソフトの開発に従事をしていて、そしてなおかつ教育にも熱心なような人材を引っ張ってくるしかない。こういう具体的な案件で流動というのをやっていただかないと。それも流動が起きそうな、起きても起きなくてもいいようなところで流動が起きているというようなことではちょっとおもしろくないと思っており、これは私の言い方がちょっとまずいかもしれないが、研究人口がもともと非常に多いところで、そして日本の研究の分野としては比較的得意な領域だけで流動が若干起こっているということでもって、よしよしとしていたら非常に問題なのではないか。こういう問題でありまして、産業界もそこのところは何とかしたいと思っている。そういうところへ考えていくというようなことが必要なのではないか。特に情報、ソフトの面で。
   もう一つ別の角度から言うと、そういう領域の仕事を、流動というのをもっと根本的にファンダメンタルなところで起こそうと思うと、クロカワ先生などがよくおっしゃるように、年金とか退職金の問題までいってしまうわけで、ほんとはそういうところまで指摘しないといけないとは思うが、少なくとも今、そういうところで何か打つ手があり得るという感じがしていて、そういう問題意識へ反映させていただくと大変ありがたいと思う。

【伊藤座長】
   流動性といいますと、どうしてもどのくらい動いたかという数量的なあれがまず出てくるんだが、ほんとに意味のある分野で流動が起こっているかどうかという、質の問題を今後検討していっていただく。これは大変な問題だと思うけれども、総合評価などで、今後ぜひご検討いただきたいと思う。

【間宮文部科学審議官】
   今、いろいろとご意見がありましたが、私、今の第二期の科学技術基本計画をまとめたときの担当局長だったわけで、そのあたりから少しお話しすると、第一期の計画というのは、まとめる期間も短かったということでいろいろな不備があって、分野の切り出しが全くない。それで、第二期計画では、一生懸命4分野を切り出したわけだ。ただあの中に基礎研究の重要性というのも同時に書いてあり、基礎研究の重要性というのは何で今やろうとしているかといえば、競争的資金の倍増ということでやろうとしているわけである。その競争的資金倍増の中の一番大きいシェアを占めているのは科研費なわけで、ですから科研費を増していくということは、基礎研究重視のあらわれであると思っている。
   末端の状況と、そういう大きな流れがどうマッチしているかは、確かに我々はまだわからないが、マッチングの動向を把握するために、今度新しくデータベースができあがった。これまではある人に流した金がどこに行っているかわからなかった。把握ができなかった。だから、あるところでは研究費バブルだと言われ、あるところではないと言われ。それがわからなかったんだが、今回わかるようになったわけである。つまりめぐりめぐってAさんのところに幾ら行っているのかというのがわかるようになってきたということでは、これからもう少し論理的というか、合理的に物事が行われるようになっていくだろうと思っている。
   従って、大きな物事と、現場との乖離をなくすことは、そう簡単ではないが、今、一生懸命マッチングをとるような努力がなされていると理解をしており、いま少しお待ちいただきたいというのが一つ。
   それともう一つは、流動性の話でも、今日お聞きしているといろいろなご議論があるが、やはり一つ大きいのは国立大学の法人化である。主体性を持った大学をつくり出すということによって、大学が自分で考えていろいろな行動を起こす。流動性を持たないと、だんだん地盤沈下していく。そこに今度のCOEが入ってきて、あれは非常に革命的なインパクトを大学に与えつつあるわけだ。現実に、COEに入るということがものすごく大きなことになってきている。それを目指して、いろいろな改革が中で行われ始めており、それをさらに加速するのが国立大学の法人化。あれで一気に動いてくるのではないかと思っているので、これももう少し時間をいただければ、もう少しいい方向に向かっていくのではないかと思っている。

【伊藤座長】
   いろいろと問題が出てきた。まだたくさん問題があると思うが、私が一つ感じておりますことは、評価をなさって、評価書にお書きになる。評価書の項目と実際に予算のほうである。評価の結果をどう政策に反映させるか。主として予算の問題が出ているわけであるが、予算書の項目とが必ずしも対応していない。こういうような状況で、政策の評価の結果が次の段階の政策にほんとに反映されるものだろうかということに若干疑問を感じている。
   これをどうしたらいいのかということだが、一つは評価のほうをあらためる必要もあるかもしれないけれども、むしろ主として今の公会計制度に問題があるのではないかという感じもしている。聞き及んでいるところによると、財政制度等審議会でもその検討を始めたということであるし、それから経済財政諮問会議でも公会計制度の再検討が始められるということであるので、その辺のところをちゃんと整理しておかないと、文科省でどんなに頑張って反映させようと思っても予算のほうが受け付けないということになってしまうのではないか。そういう危惧を持っているが、評価室は何か。

【天笠委員】
   今、ご説明がありました3ページ、4ページを拝見しているが、このフォーマットについてだが、「評価結果の概要」が書いてあって、そしてその横の欄に「評価結果の政策への反映状況」という枠組みというのだろうか、欄の構成だけれども、「評価結果の概要」から、どうしてこちらのこれになってくるのかどうなのかという、そのあたりのところが大変わかりにくいというんだろうか。だから、例えば「学力向上アクションプランの推進」ということで、各施策を一体的に推進することに云々というふうな、こういう取り組みがあるということだけれども、それぞれどういう形で評価されて、そしてそれが反映のこちらのほうの状況になっていくのかどうなのか。ここら辺のところの枠取りのとり方とか、記述の仕方ということを、そのあたりのことをもう少し丁寧に書くということが、評価から結果への反映のつながりというんだろうか、というのをわかりやすくしていくのではないかと思うんだけども。現在、私が拝見しているこの中で、そこら辺のところが大変大ざっぱに書かれているというふうな印象を持ったので、この辺のところを少し改善を図られたらいかがかなと思う。

【伊藤座長】
   今、申しましたように、項目が対応していないということもあり、この辺は非常に難しいと思うんだけれども、室長から何か補足的な、少しご説明いただけるだろうか。

【佐野評価室長】
   委員長が先ほどおっしゃいました、予算書の項目と評価書の項目が対応していないというのはものすごく大きい話で、今、政府全体でそこが指摘されつつあるので、全体の流れを見ながらやっていきたいと思っている。非常に重要な点だと思う。
   それと今、「評価結果の概要」のところの書き方が少しラフではないかということだったが、まさにそれは反省すべき点なので、変えていきたいと思っている。今、先生がおっしゃった3ページはそうなんだが、3ページ以降の14ページを見ていただけたらと思うが、新規以外の14ページの場合は「評価結果の概要」を細かく書き、改善事項等を記載しているというのと、先ほどの42ページの競争的資金もそうだけれども、「評価結果の概要」は改善等に結びつけるためにかなり詳細に書かせていただいている。新規だということで、その辺の必要性というのはむしろカットしてしまったものだから、ここはご指摘のとおりだと思うので、改善していきたいと思っている。

【天野委員】
   評価に基づいて出されているのは、予算の部分だけを見れば前年度と同額、あるいはさらに増額を要求になっているんだけれども、評価の結果、減額をする事業というのは一体あるんだろうか。もしないとすると、評価というのはいい評価ばっかりということになるんだが、その辺はどうなんだろうか。

【佐野評価室長】
   実際は減額もしたりとか、さらに廃止までされているものがある。従って、先ほどの新しい実施計画では廃止されたものをきちっと明示していこうということで、来年度からはそういうことを、要は増やしたものばかりだけではなくて、廃止したものをきちっと出していこうという方針にしている。削除したものもあれば、削減したものもあるけれども、そういった、何を取り出すかというところが、実は我々事務方としては、どの項目を出すか非常に苦労しているところなんだけれども、減らしたところもどんどん出すような形で項目選びを精査していきたいと思っている。

【星野委員】
   本日の議題は、総合評価と政策への反映と理解しているが、総合評価についてまず言うと、文部科学省は総合評価の言葉通りに真面目に、総合的にやってしまった、やり過ぎたなという感じがする。総合評価という言葉自体が「何をどのように評価するのか」が明確ではない表現であるが、例えば本日議論になったスクールカウンセラーの事例で述べると、施策目標の2−2に、「豊かな心の育成と児童生徒の問題行動等への適切な対応」というのがある。この施策目標が示されていないといけない。例えば今の水準が高いか低いのか。低ければその原因は何か、さらに施策目標に向けて実際に今まで文科省がやってきた事業が、どのように結びついたのか。その事業にはスクールカウンセラーもあるし、それ以外のいろいろな、不登校と問題行動を削減するための取り組みはやっているはずだ。本来、そういう取り組み、事業を総合的に、正確に言うと施策全体の実績から見てそれらの貢献度や関連性を評価するのが総合評価の本質である。実は総務省の政策評価制度ガイドラインの策定の際、私は総合評価という言い方ではなく、実績評価に対する事業の貢献度評価と言った方が適切と主張したが、結局は総合評価という表現になってしまった。
   あくまでも実績評価の一環で、それに関連する事業の貢献度評価という観点を取っていれば、先ほど審議官がおっしゃったような、「問題行動対応を削減するためにはどういう事業があるのか」という施策目標達成のための具体的な事業の関連性、全体間で説明ができるはずだ。
   また先ほどの議論はスクールカウンセラーの養成という具体的な事業目標に対する手段として大学も貢献しているということだから、目的手段が3階層あり、それらを整理した方がよい。施策目標である「問題行動への対応」の部分と、その中の主要事業の「スクールカウンセラーの育成」という部分と、そのための手段である「大学の育成」とかという。その辺のあたりが整理されていないとどのレベルの評価を行っているのかがわからなくなってくる。
   まずは大学の育成といった手段的な議論よりも問題行動への対応という目的的な議論が必要なわけで、実績評価の担当部局がちゃんと説明責任を全うするということを今後は期待する。
   それと事業評価について言うと、事業のマネジメントができていないと予算に反映できないし、特に文科省の場合は一本一本の事業の金額が20億円とか2億円と大きいのだから。民間企業で2億円とか20億円の責任者が昨年度の結果を全く振り返らないというのは許されるはずがないから。そういう意味では、ぜひ事業評価を基本にして、ただ実績評価と事業評価の関連性を見るというところに焦点を当てて、場合によっては掘り下げて、総合評価の予算を使って、政策評価室が支援して、特定課題を徹底的に分析するという、そんな総合評価が、ある意味では補完的な意味を持つような運用をしていくべきでと考える。

【伊藤座長】
   評価の仕組みについて大変貴重なご意見をちょうだいした。今後、このご意見をぜひ生かしていきたいと思っている。
   まだまだいろいろとご意見がおありかと思うけれども、既に多くのご意見が出ているので、これらのご意見を踏まえて、引き続き、必要な修正等を含めて、取りまとめの作業を続けていっていただきたいと思う。
   最後の第5議題を取り上げさせていただきたいと思う。
   第5議題は、14年度の実施計画に基づいて実施されました評価手法の調査研究についての説明である。これは現在3つのテーマについて実施されているが、それぞれ報告書は取りまとめ中であるので、中間報告のような、実施状況についての説明ということになるかと思う。


(5)評価手法の調査研究について
事務局より評価手法の調査研究について説明が行われた。

【伊藤座長】
   本日の会議をこれをもって終了する。


──  了  ──


(大臣官房政策課評価室)

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