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政策評価に関する有識者会議

2002/06/20議事録
政策評価に関する有識者会議(第4回)議事録

第4回政策評価に関する有識者会議議事録

1. 日時 平成14年6月20日(木)  15:00〜17:00
     
2. 場所 虎ノ門パストラル「しらかば」
     
3. 議題
(1) 文部科学省実績評価書について
(2) 文部科学省事業評価書について
     
4. 配付資料
資料1−1 「文部科学省実績評価書概要−平成13年度−(案)」
資料1−2 「文部科学省実績評価書−平成13年度−(案)」
資料2 「文部科学省事業評価書−平成14年度新規・継続事業−(案)」
資料3 「第3回政策評価に関する有識者会議議事録(案)」
参考1 「文部科学省政策評価基本計画」
参考2 「平成14年度文部科学省政策評価実施計画」
     
5. 出席者  
 
(委員) 伊藤座長、浅井委員、麻生委員、天笠委員、天野委員、池上委員、小出委員、古賀委員、中西委員、星野委員、山谷委員、横山委員
(事務局) 青江文部科学審議官、結城官房長、田中総括審議官、林官房審議官、小田官房政策課長、板倉評価室長
(オブザーバー) 森口官房会計課長、高大臣官房文教施設部施設企画課長、山中生涯学習局政策課長、板東高等教育局高等教育企画課長、尾山科学技術・学術政策局政策課長、泉研究振興局振興企画課長、藤木研究開発局開発企画課長ほか
   
6. 会議の概要
(1)文部科学省実績評価書について
  事務局より、文部科学省実績評価書について説明が行われ,続いて質疑・意見交換が行われた。

<質疑・意見交換>

【浅井委員】
  今回、実績評価として各重点テーマ、重点課題について、課題別あるいは事業別に評価シートをまとめ公開することは、国として非常に重要な第一歩であると考え、高く評価したい。これは、まだまだ緒についたばかりであり、これからも改善を加えていただきたい。
  まず、評価について、定量的な指標を非常に上手にとらまえている事業と、それがとらまえられてないものがある。例えば、基礎学力の点でいえば、まだ調整中とか、集計中となっており、そういうところがまだまだなのかなと思うが、9ページに集計中とか、検討中になっているが、実際には相当つかんでいるのではないかと思う。C現状の分析として、子どもたちの学力の現状はみんな上位であり、戦後一貫して上位で、十分大丈夫だとまとめられているが、資料2「事業評価書」には、問題点として、かなり詳細にデータが出ている。「我が国の児童生徒の学力については次のとおり把握している」ということでIEAの調査が出ているが、全般的に低下傾向に見える。「中学校については、第1回調査では18カ国中1位、第2回調査では26カ国中2位、第3回調査では41カ国中3位、第3回追調査では38カ国中4位となっている」とあり、長期的に見て低下傾向にある。このようにデータを挙げているということは、問題点としてはっきり意識しなければならないと思う。また、これは担当部局のせいではなく、国民全体の問題である。したがって、もっとクリアに意識しなければならない。せっかくここでアラームをつかまえているわけだから、つかまえたアラームを生かさないといけない。これは、各省庁でも起こっているし、企業でも起こりかねない。こういう事柄から将来のカタストロフ(激変)を予見して防止していくということが評価のよさではないか。もう少し厳しめにとらえるということが大事であり、大丈夫な側面ばかり見ていて安心するという我々の国民性を踏まえ、よく戒めていかなければならない。さらに、事業評価のような情報を把握し、問題点として意識している担当部局の方の勇気に期待したい。これは決して、評価書の出来が悪いというのではなく、こういうデータをとりながら評価していかなければならないのだということを改めて認識するとともに、この努力に対する評価をしているつもりである。
  次に、なかなか定量的にとらまえられない目標があり、指標をどのように採るかが非常に大事ではないかと思う。「ゆとり」というのは暇にするという意味ではなく、考える力をつけることだと言いかえたりしているが、考える力や独創性等を、これからの教育では大事にしていかなければならないという側面がある。そこに向けて、教員、生徒自身や親がどのように努力しているのか、ということをどういう指標で設定するかということをぜひ考えていかなければならないと思う。例えば、一斉指導と個別指導とのバランス配分に対する評価を取り上げていくなど、定量的に測定することが難しいものについてなるべく定量化を図ることが重要ではないか。
  また、設定した目標に対する実績評価等が今回の内容となっているが、課題や目標の設定自身も見直すべきであるという場合が発生すると思う。例として生涯教育をみると、地域教育力の活性化と生涯教育が密接に不可分の関係に位置づけられていると思う。では、生涯教育は地域教育なのかと考えると、必ずしもそうでもないと思う。特に、地域教育と生涯教育を結びつけた理由として、成人の趣味教育的な面が1つある。もう1つは、成人でありながら、受けたいと思った教育を受けられなかった、もう1回基礎からやり直したいといったことがある。一方で、最近非常にクローズアップされていることに、医師の生涯にわたるスキルの向上といった生涯教育がある。専門家としての能力を、科学や技術の進歩に即してアップデートしていく努力をさらにサポートする必要があるということで、これは一番高級な生涯教育だと思うが、これに対して議論がほとんどなされていない。従って、施策とその目標が上がっていても、これ自身が妥当ではないが、もう少し重要な目標や課題があり得るわけで、そういったことも点検の対象にしないといけないと思う。
  最後に、今回の実績評価で数十項目の施策目標があるが、それをサポートしている財政的な規模についての議論みたいなことも起こるべきではないかと思っている。こういった事柄に関しては政治家の領域であるとか、あるいは議会の領域であるとか、文科省全体の予算配分の問題なのでそこまで議論してほしくないといったような要素があるかもしれないが、こういう場面で可能な限り広く議論に提供していただきたいと考えている。

【板倉評価室長】
  まず、定量化の努力についての意見に対して、これはまさしくそのとおりであり、基本計画の中には定量化についてはさらに努力をするということも書かれている。今回は、とりあえず収集可能なデータということで掲げているが、今後さらに、適切な指標を設定したいと思っている。これに関しては、例えば、国立教育政策研究所や、科学技術政策研究所の力も借りながら今後進めていければと考えている。

【古賀委員】
  この実績評価書がまとまった段階で事前に見て、大変力作だと感じた。他省のことは知らないが、わかりやすい説明図もついており、42の施策目標ごとに大変丁寧に平成13年度の実績が書かれていると思う。これでも書き足りないというような感じが文面に若干あらわれていると思うが、そういう意味で、第1回目としては大変評価をしたいと思う。
  1番目に、13年度の評価について、13年度の施策はどういうことがあり、成果はどういうことがあったか、それに対して14年度以降、まだまだ足りない課題があることが記述されているが、13年度に何を行ったのかが明確に書かれていないものも少しある、その辺を次回のときには、わかりやすくしていただきたいと思う。それから、いろいろ説明的なものが多いと思うが、次回から、施策目標の中の達成目標、あるいは施策目標全体についてでも良いが、その年度の達成がどうであったか、あるいは施策がどのようにあったかということを書くとわかりやすいと思う。
  2番目に、自己評価を行い、省内で議論をされたと思うが、各施策目標、あるいは達成目標ごとに何らかの評価、単なるABCという意味だけではなくて、この施策はこの方向でやっていけば順調であるという評価と、まあまあこのままいけばいいというのと、このままではもう少し加速をしなければいけないとか、あるいは追加予算を取らなければいけないというような評価がここから読み取りにくい。それぞれに課題に対してチャレンジされているということはあるが、全体としての総合評価リストみたいなものをこれにつけなくていいのだろうかと思う。各施策目標、あるいは、もう少し言うと達成目標ごとに、遅れているのは施策面で予算を取らなければいけないとか、3段階でも何でも良いが、そういう評価リストみたいなものをこのサマリーの中に入れてはどうか。評価書を見て結果的にどこが問題なのかが読み取りにくいので、省内ではどのような議論をされたのかということを、あわせて質問したい。

【板倉評価室長】
  まず、問題点の抽出が足りない、わかりにくいという点は、全体をコンパクトにまとめるということを今回は重視したあまり、分析を書く欄がスペース的に限定されてしまったということがある。委員ご指摘のように、まだまだ書き足りないというところもあるのかもしれない。そういう意味では、来年に向けて、どうしたら明確に分析を書けるのかということをもう少し勉強してみたい。ただ、箇条書きのような形で書くのがいいのかどうかという点は、もう少し我々も考えてみたい。短くすればするほど、逆にミスリーディングのようなものも招きかねないと考えており、ミスリーディングの文書がひとり歩きするというのも我々は避けたいと思っているので、そこは工夫をしながら、読んだ人に分析した結果がよくわかるようなものにしていきたい。
  その上で、3段階のような項目分けをしたらどうかということについては、実際に達成すべき目標がクリアになっていて、しかも毎年度の達成度が規定されていればわかりやすいが、中間段階のものについては、どうそれを表現するのかということもあり、もう少し工夫をしてみたいと思っている。いずれにしても、今回評価しているのは目標年度そのものがかなり先の話のものが大半であり、しかも、平成13年度または14年度から始めた新しい施策が多く、したがって、現在までの間に、実績がまだ積み上がってないものが多いということもある。だんだんデータが蓄積されていく中で、おのずとその辺が明確に書けるのではないかと思っている。

【古賀委員】
  13年度の実績について、例えば、達成目標4−1についての記述が1対1に対応しているのか、あるいは、13年度のものとそれ以降の課題というのが読み取りにくい。例えば、これを一般の人が読んだときに、どのように感じるのだろうかと考える。
  それから、もう1つの点は、確かにロングレンジの問題だと思うが、この年度に進んでいるのか、そうではないのか、あるいはこのままいけばいいのかというような、意味の評価で、一般に言われる目標管理の評価とか、あるいは業績評価みたいな意味で言っているのではなく、仮に遅れていても、それはそれでむしろ加速するのだと。担当部局がどうのこうのということではない。

【小田大臣官房政策課長】
  この実績評価書の進め方については、基本的には政策目標ごとに各課が担当して、課で議論をすることになっている。さらにそれを局内で議論され、それを踏まえて、各局の筆頭課長を集めた会議での議論を行っている。全体の会議は、この後に政策評価会議という事務次官をヘッドとする会議がある。そういう意味で、局内の、あるいは局間のところのトップレベルでの議論は、次のステップとなっており、今のところは各局の筆頭課長の間の議論にとどまっている。

【青江文部科学審議官】
  今のご指摘は、実は私自身もこれを整理する過程で感じているところであり、今、委員がおっしゃったのはどちらかというと甘くおっしゃっていただいたと思うのだが、例えば、これは具体的にということではないが、中には、これは本当に政策的意図に従って効果が上がっているのかという部分だって場合によってはあるかもしれない。その点についての姿というのはこの段階では見えないわけで、それをまさに将来において、担当課は自分たちの政策というものをきちんとアピールするが、それに対して、どれだけの政策効果が上がっているのかというチェックを省内においてどういうメカニズムでもってレビューを行い、フィードバックをかけていくのかということについて、いろんな問題があるが、1つは、多くの課題が大変足が長いということで、それが難しいということであるが、何らかの形で工夫をしていかなければいけないと認識している。それが、この実績評価のおそらく最大の眼目と考えており、これは、初年度ということで、今後の課題として、ぜひ考えていきたい。

【古賀委員】
  ぜひ、この実績評価書は、単なるドキュメントしてではなく、審議官がおっしゃったように、次の政策に生きるようにしていただきたい。

【横山委員】
  私は、政策目標の4から6を中心に読ませていただいたが、全体的には、各委員の発言にもあったように、わかりやすく書かれ、文部科学省で今の課題は何かということがよくわかり、どのような問題を抱えているのかということでは非常に勉強になった。
  先ほど、何が問題なのか、どこが問題か読み取れないというのがあったが、ライフサイエンス分野の右側の絵の中に、政策上の反省点として5つ挙がっている。これは非常に、新鮮というか、よくここまで書いたなと思う。5つの点についてはこれまでも言われていたことだが、行政というのはなかなかこれまでの政策に対する反省を書かないものだと私は理解していたので、その辺は非常に新鮮で、ぜひこういう点を書いてほしい。そうすると今後の課題などもよく見えてくるのではないかと思う。
  そういう点から言うと、4−6の原子力分野ではやはり、政府もいろいろやろうとしているが、国民の理解がなくて進まないという問題がある。ところが、これを読むと、「原子力の研究・開発・利用の推進に当たっては、安全確保に万全を期すとともに、国民の原子力に対する理解を深めることが重要」と書いてあるだけで、ライフサイエンスに書かれているようなこれまでの反省が全然ではないが見られなくて、これまでだめだと言われていたのに、文部科学省はどう判断しているのかというのがないような気がする。そういう点から言っても、反省みたいなものを書いて、その上で現状分析とか今後の課題というものをやっていただきたいと思う。特に今は、いろんなプロジェクトについては、何でも進めるということではだめで、立ちどまって考えろということである。それから、問題があればいつでも途中でやめればいいということが言われているわけで、そういう視点からの記述があってもいいのではないかと思う。
  それから、5−1の競争的かつ流動的な研究開発システムの構築についても、任期付き研究員数のことについて微増にとどまっているという表現があるが、何で微増にとどまっているのかということが書かれていない。任期付き任用というのはここ数年の大切なテーマだったが、それがだめなんだというのはどうしてなのかというものが反省とともにあって、それで、今後はどうするんだというふうにやっていただきたかったと思う。
  それから、最後に、4−4の環境分野の研究開発の重点的推進について、最初の基本目標のところに「地球温暖化、有害化学物質等の地球環境問題」ということで、温暖化とか有害化学物質というのが出ていて、私はこれを読んだときに有害化学物質の問題の今後の課題とか現状分析をどう書くのかと非常に興味を持ったが、そのことは一言も出てこないで、地球シミュレーターとか、ビッグプロジェクトのことだけが書かれており、その辺ももう少し気を配ってほしいと思った。しかも、情報通信分野の研究開発の重点的推進で地球シミュレーターのことはかなり書かれており、環境分野で書かれていて、有害化学物質がないという点にちょっと違和感を覚えた。
  繰り返しになるが、ライフサイエンス分野の反省というのが文部科学省内ではどう受けとめられているのかはわからないが、反省して、それで今後の課題を見つけていく姿勢というのが重要ではないか。

【藤木研究開発局開発企画課長】
  ただいま、原子力について反省が書いてない、あるいは過去の実績に立脚した上で目標を立てるべきだろうとご指摘があり、おっしゃるとおりである。限られたスペースということではあったが、そこに対する記述が十分でないというのは確かにそのとおりだと思うので、ぜひ取り入れて考えていきたい。
  それから、環境関係は、総合科学・技術会議におきましても全部で5つの領域ということで、温暖化や水循環以外にも、化学物質、都市再生・共生、あるいはごみゼロといったようなところも目標として掲げられている。私どもはそういった対策技術について取り組んでいないということはないが、目標として掲げるまでに成熟した段階の取組をしていないという認識で、ここには目標として掲げていない。しかしながら、対策についても文部科学省はいろいろポテンシャルを持っているという自覚はあるので、その辺をきちんと現せるように改善・改良をしていきたい。

【中西委員】
  今の横山委員の話は私もその通りだと思う。また過去の反省点をぜひ9−1の海外協力にも照らし合わせてほしい。私の身近な情報では、青年海外協力隊には非常に意欲のある若い方が参加するものの、日本に帰ってくるとどうも社会になじめず、その後の人生をうまく送れないという人が多々いると聞く。ぜひこういう点の配慮もしていただけたらと思う。
  私は政策目標の4、5、6と見させていただき、一番初めに古賀委員が言われたように、非常にクリアでよいと思った。ただ、これらの目標をかかげる政策が100%正しいとしないでほしい。例えば、研究者の流動性を100%確保するという目標に対し、とにかく100%の達成をしようという方向で突き進むと、弊害を起こす点が多々でてくると思う。研究者全員に対して、流動性が100%なければいけないということはなく、昔から行われている継承的な研究はずっと行われるべきだと思う。もちろん、この場合も評価を行うことは大切であるが評価になじまない点もある。目標に合わない部分の存在も認める雰囲気を育てる必要があるのではないか。
  基礎研究のところでは具体的な内容があまり書かれてないようだ。また、予算面としては3%確保したいということだが、研究開発のところも同様あと3%増やしたいと記述してある。つまり増やしたい部分がちょうど基礎研究の予算になっているほど基礎研究の予算は少なくなっている。基礎研究のとらえ方なのだが、基礎研究というのは新しいこと(ブレークスルー)を期待する分野であると同時に、日本のオリジナリティーの非常に高いものを期待している分野だと思う。重点分野、つまりこれから新たに力を入れようとしているテーマは、言いかえるとどこの国で着目しており、誰もが狙い、誰もがこれから開発しようとしている共通の分野でもある。言い換えると日本のオリジナリティーが生かされている分野かどうか疑問な分野ともいえるだろう。基礎研究の一部には昔から日本で長期間行ってきており、他の国が追いつけない分野がある。例えば、外国で何十年間も行われてきた研究については、今からはじめても日本はなかなか追いつけない。日本でもそういうところを育てる。そこから日本のオリジナリティーが出るような気がしてならない。今まで、基礎研究というとばらまき行政であるのでよくないとか、いろいろ議論はされてきたが、森林に例えれば下草も森林の大切な一部である。下草が生えるような、そういう余地をどこかに残しておいてほしいと思う。そしてこういう分野はあまりにきちきちっと評価してしまうと弊害が出てくるだろう。例えば、昔から細胞だけを見つめ、「どう生きているのだろう?」と、ずっとその形態だけを追っていた人は、この評価ではいい点数はとれない。しかし、そういう人たちも、研究ができるような素地をどこかで確保してほしいと思う。

【伊藤座長】
  4−2にあるが、比較優位をはっきりさせ大事に育てていくということ。これは、短期的な成果ということではなく国際的な観点で見て、日本で育てたほうがいい分野を大事に育てていただきたいと思う。

【泉研究振興局振興企画課長】
  まさに基礎研究の推進ということを考える上で重要な点として、今、中西委員からご指摘いただいたようなことがある。
  ここに記述している基礎研究というものとしてとらえているのは、28ページの説明図にあるように、基礎研究関連施策として、大学共同利用機関や大学の付置研究所等で行われている研究等、比較的大きな装置等を用いるような研究だが、それと同時に、資料の右のところに競争的資金というのがあり、その代表的なものである科学研究費補助金には、いろいろな研究種目がある。まさに委員が言われたような継続的なものとか、萌芽的な研究を支援していくような種目もあり、14年度予算においても、13年度に比べ約8%近い増額を図っており、引き続き予算の拡充に努力していく必要があると認識している。
(2)文部科学省事業評価書について
事務局より,文部科学省事業評価書について説明が行われた。
(3)政策評価全般について
政策評価全般について意見交換が行われた。

<意見交換>

【伊藤座長】
  文部科学省として初めての実績評価の審議を行っているが、本当に始まったばかりであり、いろいろご指摘いただいたように、至らない点等々、改善すべき点等々あるかと思うが、先ほど室長からもあったように、今は試行錯誤の過程であり、これを出発点にして、今後、息の長い取り組みをしてもらい、少しずつ内容を向上させるようご努力いただきたいと思う。文部科学省側の努力を後押しするというか、支えるという意味も含め、ここで評価全般についてご意見をいただきたい。特に建設的なご提言等をいただきたい。

【天野委員】
  全体ということよりも、分野別のほうで発言する機会がなかったのでそれとも関係すると思うが、私は施策目標の1から3のグループを中心に見せていただいたが、ほかとかなり違った点がある。4以下とは大分違う。どこが違うかというと、これは教育というものにかかわってくる問題かと思うが、確かな学力とか、豊かな心とか、信頼されるとか、快適で豊かなとか、意欲あるとか、いろんな形容詞がついているが、極めて抽象あいまいである。あいまいな目標が設定されているということではないか。したがって、手段、目標の関係がどうも見えにくい。どうしたら信頼される学校ができるのか。快適で豊かな文教施設ができるのか。いろんな形容詞をとったほうがいいのではないか。他は、生涯スポーツ社会の実現であるとか、我が国の国際競技力の向上とかになっていますが、ここだけ非常にエモーショナルな言葉が前についており、エモーショナルな言葉をどういう手段で達成するのか非常に難しいわけだから、この辺をご検討いただいたほうがいいのではないか。
  2番目の点は、目標があいまいであると同時に、目標が達成されたかどうかについての指標が逆に質的なものは何も含んでいないというのが特徴ではないか。例えば、9ページに教員1人当たりの児童生徒数というのがあり、これがだんだん減っていくようになっている。この数字は毎年減っているが、問題は何が確かな学力の育成に必要なのかであって、例えば少人数の学級がどのくらいあるのかとか、そういうことが重要であり、教員生徒比だけが出てきても、これだけでは何も説明したことにはならない。
  それから、13ページにはコンピュータを使った指導ができる教員の割合というのがあるが、これがどうして信頼される学校づくりなのかわからない。コンピュータを使える先生がいるかどうかではなくて、コンピュータを使った授業がどれだけ行われているかが学力と関係しているという設定の仕方にしないと、何も説明したことにならない。
  さらに、25ページに私立学校の財務状況の公表が行われているというデータがあり、85.2%の学校法人で財務状況が公表されていると。しかし、きちんと広報(ホームページ)で発表しているところというのは数えるほどしかない。85%という数字をうのみにすることはできない。まずは公開することが重要だが、情報公開という点から言えば、そういう数字はもう少し実態に即した数字が出るよう公開の中身、質というのも問うようなものにしていかないといけないのではないか思う。
  評価が始まったばかりなのでやむを得ないが、評価の視点の入ったデータ、統計づくりをしないと形の上ばかりの数字を並べることになるので、今後、評価を本当に行っていこうというのであれば、質的な側面がわかるような統計データや資料のつくり方をぜひお願いしたい。

【伊藤座長】
  天野委員からは、前回もデータのことについて大変貴重なご意見をいただいた。それで先ほどの基本計画の修正という形で取り入れたわけだが、今の点はぜひ評価室のほうでも取り入れていただきたい。
  1人当たりの学級の生徒の数が少ないということは好ましいことだと一般に言われているが、それと基礎学力との間にほんとうに相関関係があるのかどうかというようなことは、今の段階ではまだデータはないと思うが、将来、そういう研究をされると説得力を持ってくるだろう。エモーショナルという表現だったが、それに対して、分析的なデータを今後少しずつ増やしていただければという印象がある。

【山谷委員】
  今の天野委員のご意見と若干関連があるが、この数値は考えてみると3種類ぐらいあると考える。3種類というのは、数値目標を掲げて何かするという場合は、コントロールするとか、誘導するとか、こういう方向に行ってほしいという願い等があると思う。1つは、文部科学省がコントロールできる数字。2つ目は、何らかの法制度とか、補助金の制度とか、変更すると文部科学省がコントロールできるかもしれないという数字。3つ目は、相手次第で変わる。例えばオリンピックの金メダル等が出てくると思うが、こういう視点で数字を再度チェックし直し、実績評価から別の評価につなげるものを何か考えていいと思う。
  また、先ほどの天野委員、伊藤座長のご意見にもあるが、一度実績評価をかけた数値、これはおそらく問題指摘情報を探るというような意味合いがあると思うが、その場合に、後で定性評価のようなものを別な視点で網をかけていく、こういう2段構えが必要ではないかと感じている。

【板倉評価室長】
  今の山谷委員のご指摘の定性評価に関する話だが、文部科学省の場合は、この実績評価、それから、予算ベースの事業評価のほかに総合評価というのがある。今回、この実績評価は全体を広くとらえるというところを主眼としているので、そういう意味では確かに指標の取り方も非常に限定的になっている。それから、分析も十分掘り下げたものになってないという点がある。そういったものについてはむしろ今後の総合評価のような形でじっくり分析するということになっていくと考えており、定量評価もあれば、定性評価もあり、そういった形で対応していくことが今後のやり方と考えている。

【星野委員】
  今後こうすべきだという観点で少し提案をしたい。まず、実績評価と事業評価というのは連動するはずだが、そういった形でこの評価表ができ上がっているかどうかというのはまだわかりにくい。そこで、今の時期に昨年度の結果を評価するということをやっている。その結果を踏まえて先々の長期目標、基本目標の確認をし、来年度以降どういう目標を立てるかということなので、出発点は結果評価というか、実績評価書の中の今までの反省であろう。評価というのはplan-do-seeの中のseeという意味なので、振り返りが書かれてない評価書というのは評価ではないと言わざるを得ない。今後、実績評価表も様式を変える必要がある。13年度の実績について、基本目標や長期目標と下の指標とが対応していないことがありこれまでにも御指摘があったように改訂したほうがいいと感じた。
  それから、右のほうのポンチ絵も、最低限この項目は盛り込むべきだということの指針共通した項目は入れるべきである。現状の実績、具体的に13年度実施したことがどれだけ効果になったのか。仮に直近(昨年度)の効果がすぐ測定できなければ、場合によっては過去3カ年の取組結果の反省など、こういった項目は絶対入れるべきである。ポンチ絵のところが施策ごとにかなりばらついている。最初だから仕方がないが、最低限、今までの振り返りといった視点を入れないと、plan-do-seeの効果がない。
  内容的に見ると、基礎研究のところは、せっかくポンチ絵のところで新しい法則・原理、独創的な理論、未知の現象の予測・発見という目的、意図された状態を書いているので、少なくともこの目的を持った研究テーマが現状は何テーマあるのか、そのテーマがどれだけ進捗したのか等を記入すればよい。当然、これは長期的なものだから、すぐ劇的な成果は出ないかもしれないが、国民に対する説明責任という観点からみて、全体的にポンチ絵の描き方が何か宣伝的になっている。プランニングだけではなく、plan-do-seeのdoとseeの部分を入れないと実績評価という形にならないの、今後少し工夫すべき点として提示させていただく。
  あとは、実績評価書の使い方だが、施策目標ごとのplan-do-seeの会議を少なくとも年2回やるべきである
  seeで1回、planningで1回。できればplanningでやる時期が次年度予算要求の段階で、seeでやる時期が少しスプリングレビューのような時期。こういった仕組みの運用が評価書を書いている方たち自身も見えていないのではないかと思う。評価書をシートに基づいて書くのはあくまでも記述であり、plan-do-seeが回らないと意味がない。今年度は昨年度と比べてより一歩具体的な活動として、昨年度の反省と、先々の目標と、国の役割、を議論していただき、できれば政策評価会議を、政策評価室が音頭をとるよりは、主管課の課長が音頭をとってやるべきではないか。それも公表できるに値する。場合によっては、各委員の中で特定の施策について専門的な識見を持たれている方がいらっしゃるので、そういう方を呼んで、もっと突っ込んだ施策目標達成度評価会議というのをplan-do-seeのseeの部分で1回実施し、planningはどうするかというのを次年度の予算要求も含めて議論をすればレベルアップにつながるのではないかと考える。
  今後、評価室がすべきことは、文部科学省全体の政策評価の仕組みに関する運用水準のスケジュール化等だと思う。また、有識者会議という国民との接点は、事前に施策別に中身の濃い議論をしておき、全体がこの有識者会議で見えるという形をとり、この会議は個別の施策のことを議論するより、全体の評価の仕組みを政策評価のガイドラインに沿ってきちんと運用しているかどうかという部分を議論する場としてはどうか。事前の議論に当たっては、前回、私が提案したようにワークショップ型で、都道府県や区市町村と一緒に施策の確認をすると、具体的な目標というものがもっと議論できるのではないか。
  もう1つは、自治体などでやっている政策体系の策定のような、基本目標から達成目標につなげる全体の政策目標体系の具体的な手段の落とし込みを政策評価会議でやるとよいと思う。そういった経緯を踏まえていないシートでは、指標がどうしても活動指標的なものになるのではないか。定性的な目標というのは意図された状態が議論されている必要がある。豊かな学力とか、確かな学力を身につける等、具体的にはどういう状態を言っているのかという議論を、多くの方と施策別にしっかり議論し、plan-do-seeを回していただくということを今後の取組として提案する。

【小出委員】    基本目標、達成目標、それに対する現状の分析、今後の課題、それから、具体的な参考資料として指標を出していただき、さらにカラー刷りのシステマチックなものでわかりやすく説明してあり、このやり方は非常に結構だと思う。ただ、第1回目だからいろいろ問題点はあると思うし、これまで言われた個々の問題についてはこれから改善していけばよいと思う。
  大学などにおける教育研究機能の充実のところが18ページに記載してあるが、自己点検・評価の大学数は92%となっている。これは大分古い課題であるがスタートの9年のときに既に88%達成している。逆に言えば、この時点になってまだ92%なのかとびっくりしたのだが、こういう大多数完成しているところを、目標にするのはいかがなものか。第三者評価の実施を挙げるほうが良いのではないか。
  逆に、インターシップ実施率というのが33%になっているが、これは内容が大事であり、本当の意味のインターシップは33%もやっているのだろうか。やっているかいないかという問い合わせであれば、少ない人数でもやっているに入る。実質的なインターシップとなると、少なくともその学年の学生の何割かが参加し、実質的な意味と、将来、単位を与えるような内容になる。現時点ではこの程度でいいと思うが、将来は内容もチェックしないと、本当の意味のインターンシップにならないのではないか。実際は、学生のほうはかなり希望があるが、受け入れる企業がないという実態がある。私も地元でその委員をやっているが、なかなか難しいのが現状である。
  何を目標に掲げるかということと、その成果はうまくいったかどうかを判断するのは大変難しい問題だが達成しやすいのをテーマに挙げているのもどうかと考える。

【板東高等教育局高等教育企画課長】
  今、高等教育関係でいろいろ、指標の採り方などについて、あるいは指標の質についていろいろ御指摘があった。
  確かに、アバウトにとらえている部分もあるので、中身を明らかにしブレークダウンした形の指標も必要になってくると考える。さらに配慮していきたい。100%あるべきものをわざわざ指標にとるのはどうかという御指摘もあり、来年度に向け、いろいろな指標の取り方、目標の設定の仕方について、検討していきたいと思っている。

【伊藤座長】    ありがとうございました。最後に、今後の日程について、事務局のほうからご連絡いただきたい。

【板倉評価室長】    次回は、9月に予定しており、具体的な日程につきましては追って連絡をさせていただきたい。

──  了  ──


(大臣官房政策課評価室)

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