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政策評価に関する有識者会議

2002/03/15 議事録
政策評価に関する有識者会議(第3回)議事録

第3回政策評価に関する有識者会議議事録

1. 日時 平成14年3月15日(金)  10:00〜12:00
     
2. 場所 虎ノ門パストラル「マグノリア」
     
3. 議題
(1) 政策評価に関する基本方針について
(2) 文部科学省政策評価基本計画及び平成14年度文部科学省政策評価実施計画について
(3) 実施計画書原案について
     
4. 配付資料
資料1 政策評価に関する有識者会議(第2回)議事録
資料2−1 「政策評価に関する基本方針」の概要
資料2−2 政策評価に関する基本方針(平成13年12月28日閣議決定)
資料2−2 政策評価に関する基本方針(平成13年12月28日)
資料3 行政機関が行う評価に関する法律に基づく政令について
資料4 文部科学省政策評価基本計画(案)
資料5 平成14年度文部科学省政策評価実施計画
資料6 実施評価書原案
参考資料1 国の研究開発評価に関する大綱的指針
参考資料2 「国の研究開発評価に関する大綱的指針」の概要
     
5. 出席者  
 
(委員) 伊藤座長,浅井委員,麻生委員,天笠委員,天野委員,池上委員,古賀委員,佐々木委員,杉山委員,伊達委員,田吉委員,永井委員,中西委員,長谷川委員,星野委員,山吉委員,横山委員
(事務局) 青江文部科学審議官,結城官房長,田中総括審議官,小田大臣官房政策課長,板倉評価室長
(オブザーバー) 高大臣官房文教施設部施設企画課長,板東高等教育局高等教育企画課長,磯田科学技術・学術政策局政策課長,泉研究振興局振興企画課長,高杉スポーツ青少年局企画・体育課長ほか
   
6. 会議の概要

(1)政策評価に関する基本方針等について
  事務局より,行政機関が行う政策の評価に関する法律、行政機関が行う政策の評価に関する法律施行令、政策評価に関する基本方針について説明が行われ、続いて質疑・意見交換が行われた。

<質疑・意見交換>
【伊藤座長】
  事業費10億円以上の研究開発については、施行令で事前評価が義務づけられているということだが、文部科学省関係では何件ぐらいあるのか。

【評価室長】
  新規に着手するということで、平成15年度要求が対象となる。全体で2,30件ぐらいだと思うが、実際の予算要求の内容によって変わってくる。

【麻生委員】
  各省庁が実施した政策評価の客観性等を保証する組織は、総務省関係でつくるのか。

【評価室長】
  総務省に、有識者の委員等からなる政策評価・独立行政法人評価委員会が設けられており、その委員会の意見を聞きつつ、各省庁の行う政策評価の中で、客観性が十分担保されていないものがあれば、総務省が再度評価する、もしくは総務省自らが評価を行うことが制度としてある。

【中西委員】
  評価は常に真剣勝負であり、評価する側もされる側も、真剣に対応しなければならない。評価をする人も、片手間ではなく、それなりの環境を与えられしっかり行うことが要求される。しかし現状では評価した人の責任がほとんど問われていないように思われる。だれがどういう評価をしたかということは、公表されることが重要で、公表されるという前提がなければ、公平な評価になっていかないと思う。もう一つ重要な点は、評価自身は目的となりえないことである。つまり、よい評価を得るために何かを行うということは本末転倒である。研究面でいえば研究を行うための環境が整っていけば、自然と評価がよくなるのであって、上からの押し付けではない、自然発生的な研究をいかに評価するかということが大切である。

【評価室長】
  評価の責任については、評価をした時点の担当課長の名前を評価書に明記し、それを公表していく体制をとっている。事後検証の課程で、評価が妥当なものだったかどうかということが明らかとなる。

【伊藤座長】  評価で一番大事なことは、その結果をどう生かしていくかということであり、どう予算及び法令等の取りまとめに結びつけていくかが焦点になると思う。

【星野委員】
  政策評価にかかわらず管理職の責任権限は重くなってくると思うが、気になるのは、どういう責任と権限があるのかということ。これには2つあると思う。1つは、評価した結果や内容が評価制度の考え方にのっとって実施されたのかという手続論、つまり、いわゆる事実に基づいて評価を実施してきたかという責任が事業を担当する課長にあると考えられる。それから、結果を生かすという責任になると、その課長の責任権限を越える部分もあるのではないか。したがって、評価を適正に実施したかという責任と、評価結果を適切に次の計画や予算や実施に生かしたかという責任の、2つあると思う。

【評価室長】
  評価シートの作成者を明記することは、評価シートをどういう観点で作ったかということである。最終的に、評価書は文部科学省として決定するものであり、評価の最終責任は文部科学省にある。他方、政策を生かしていくことについても、同じく、文部科学省が責任を負う。事務次官を長とし、各局局長が構成員となった政策評価会議があり、この場で、この評価書を審議するが、この会議の構成員は、実際に予算を決めていく省の意志決定機関と重なっており、そのような政策評価会議で評価書を審議・検討する過程で、評価の内容、その後の施策がつながっていくと考えている。

【星野委員】
  政策評価会議の議論で評価結果が変わり得ることはあるのか。

【評価室長】
  もちろんあり得る。個々の評価シートを政策評価会議の構成員に配付し、コメントをもらうという過程を経ながら評価書を作り上げていく。その過程と同時並行で、予算の概算要求という作業も行い、全体を総合しながら政策評価書を最終的に概算要求提出前に決定するという流れを考えている。その間には、政策評価会議での議論は十分反映されると考えている。

【星野委員】
  では、政策評価会議の評価は二次評価ということで、責任権限を明確にしておいた方がいいのではないか。政策評価会議での議論の中で評価書がいつの間にか変わってしまって、どこの責任で変わったのかがはっきりしないこともあり得るので、後で適切に説明責任が果たせるようにしておいた方がよいのではないか。

【麻生委員】
  事前評価が相当前に出ている場合、事前評価をした結果がマイナス、つまり、うまくいっていない場合には、計画した政策を実施に移さない方がよいという結果になる。例えば、新構想の教員養成大学・大学院をつくる地域があったが、専修免許状とセットになっていると意味があるが、専修免許制度ができたのは、随分後のことであった。そういう場合に、専修免許制度と一体化していないからといって、事前評価でやめられるのか。もう一つ、総合学科を見ても、「看護」、「情報」、「介護」といった科目が出てきたが、そのときも免許状ができていなかった。
  このように、政策がセットとなっているものがそろっていない場合に、事前評価でチェックした場合、政策は待てるのか。まず政策を進めた方が、全体から見るといい場合もある。各政策のタイムラグを合わせようとすると何か難しい問題が出てくるので、事前評価をどのように考えるのか。

【評価室長】
  事前評価とは、予算作業にかなり直結したものであるが、今の委員のお話は、その事前の政策を立案する過程でのいろいろな調査分析だと思う。もちろんそういったものが最終的に集約されて事業評価(事前評価)の中に現れるわけだが、予算作業と並行して行う作業の中で、それを全部分析するのは困難な点もある。他方、文部科学省の施策には、教育関係施策のように効果が発現するまで非常に時間がかかるものもあり、そういったものについては、単なる事前評価というよりも、むしろ総合評価という形で、過去の政策をさかのぼって分析してみるというような過程を経ながら、徐々に政策の質が高まっていくことを期待している。

【天野委員】
  有識者会議とは、評価システムの中でどういう位置づけになっているのか、そして、我々はこれについて何を意見することが期待されているのか。つまり、評価の仕組みとか評価の方法等について、意見を述べればよいのか、それとも個々の評価の結果について意見を述べることが期待されているのか。

【評価室長】
  大臣決定に基づく設置要綱で検討事項が定められており、評価の枠組みについての助言と、評価結果、及び政策の企画立案への反映についての助言となっている。本日は評価の枠組みが議論の中心になっている。また、来年度以降、実際に実績評価書などが出てきた場合、評価の内容についても助言をいただくことになる。


(2)文部科学省政策評価基本計画及び平成14年度文部科学省政策評価実施計画について
事務局より,文部科学省政策評価基本計画(案)及び平成14年度文部科学省政策評価実施計画(案)について説明が行われ、続いて質疑・意見交換が行われた。

<質疑・意見交換>
【横山委員】
  基本計画と国際プロジェクトとの関係について、宇宙ステーションや国際熱核融合実験計画などは、国内での政策やプロジェクトと異なり、外国の要因が入ってくるため、日本がやめようと思ってもなかなかできないとか、いろいろな問題が生じてくると思う。その対応はこの基本計画で読みとれるのか、あるいは、国際プロジェクトについては、別の項目をつくり、計画を立てていかなければならないのではないか。

【評価室長】
  国際プロジェクトについても、事業評価もしくは現在進行中の課題については、評価対象となっている。実績評価では、分野別、施策目標ごとに評価することになっており、個々のプロジェクトを評価するようにはなっていないが、宇宙ステーションのように非常に大きなものについては、施策の目標の大きな柱となっており、当然評価することになる。総合評価のテーマとして取り上げることもあり得る。

【横山委員】
  基本計画にそのような項目を立てておく必要はないか。

【評価室長】
  基本計画は、中期計画、全体の枠組みを決めるものであり、個々の課題を書き込むということは考えていない。
  他方、実施計画は、単年度計画であり、その中で具体的な課題及び条件について明記していくつもりである。仮に、総合評価のテーマとして取り上げるのであれば、実施計画の中で明示していくことになる。

【山谷委員】
  第一に、「職員の評価能力の向上」について、研修等で評価の手法などを省内で周知・徹底する方法があり、他省庁で行っているところもあるが、文部科学省ではどうか。第二に、「地方公共団体等との連携・協力」について、地方公共団体と様々な政策を立案して、その実施は地方公共団体にしてもらうが、文部科学省が評価を実施するために必要なデータを単純に出してもらうのか、あるいは実際に地方公共団体に評価をしてもらい、評価結果を出してもらうのか。もし、後者であるならば、例えば、国土交通省、旧建設省の公共事業評価のように、マニュアルを提示し、それを都道府県にて実施してもらい、その結果を提出してもらうことも考えているのか。

【評価室長】
  第一の質問について、研修を排除するわけではないが、研修を行う場合、業務の合間を割いて時間をとることが困難であり、過去に2回の研修を実施したが参加の規模が限定されてしまうという課題がある。したがって、メールマガジンのようなものを配布し、基本方針や、今回決めようとしている基本計画についての情報などを随時配布するということで、省内に政策評価に関する情報の提供を図ろうとしている。単なる一方通行に終わらせず、メールの配布を通じて、場合によっては質問、意見等を通じながら、全職員が政策評価に主体的に参加できるような下地づくりをしていきたい。
第二の質問について、文部科学省の施策の場合、地方公共団体との連携は多いが、直接実施するというよりは、むしろ国が行う部分はあくまでモデル事業であり、それを実際に取り入れるのは地方公共団体の主体的な判断というようなものが多い。そういった枠組みの中で、どこまで自らの施策を有効に評価できるかについては検討していきたい。教育や文化活動等々の実際の現場は、地方公共団体が中心になることは多いので、重要な課題と考えている。

【伊藤座長】
  山谷委員は、地方公共団体に評価までしてもらうのがよいという意見か。

【山谷委員】
  そうである。

【伊藤座長】
  それだけの準備や体制が地方公共団体に整っているという判断なのか。

【星野委員】
  文部科学省の事業というのは、どちらかというとスタッフ的な事業であり、国土交通省のような直轄事業ということではないので、直接評価することは望ましくないと思われる。むしろ、自治体の方が主体的に取り組んでおり、あと3、4年で市町村まで含めて8割程度の自治体で、政策評価、事務事業評価を実施し、検証も行っている。やはりワークショップのような形で、文部科学省と都道府県と市区町村で、政策評価のモデル事業のようなものを行い、その上で実態を踏まえて、それを文部科学省の事業評価や実績評価、総合評価に生かすことが、まさに今、山谷委員がいわれた2つの質問に対する明快な大きな取組になると思う。
  もっと現場におりて、現場の声を聞く、それが、plan−do−seeである。そういう意味では、文部科学省的な、日本国という中の本社スタッフ的なものであり、現場の声を聞いて、それを政策に反映しないと、この政策評価制度が生きてこないと思う。むしろ実務であるモデル事業でワークショップを行う方がいい。ワークショップの中に、有識者会議のメンバーが入り、2〜3時間でも1つの事業を議論すれば、かなり評価能力の向上には結びつくと経験的にいえる。

【古賀委員】
  自ら評価することが1つの原点であるが、自分に厳しいよりも、若干甘くなる嫌いもあるので、一番大事なのは達成目標や達成基準等が最初に明確に書けていることである。この実績評価書を見ると、努力するとか、改善するといった、そういう定性的な表現が多く、最初の施策目標には美辞麗句があるが、われわれ民間でもそうだが、中期計画書、あるいは目標管理の、目標基準をある程度客観的に書けるかが問題となる。若干部門によって違うと思うが、有識者会議で評価の甘い人をスクリーニングする必要があるのではないか。評価は目的ではなく、この評価から新しいものが生まれてくるとか、施策の変更が行われてくるとかということが大事だと思う。
  もう1点は、ターミノロジー(用語法)について。基本計画書の「文部科学省の使命と政策目標」には、「政策目標」「施策目標」と書いてあるが、実績評価書の方は、「施策目標」があり、「基本目標」というのがあって、それから「達成目標」となっていて、ちょっとわかりにくい。

【評価室長】
  2点目の御質問に対して。基本的には、施策目標をなぞって基本目標を書いているということなので、両者はほぼ同義である。この「基本目標」「達成目標」というのは、政府が昨年1月に定めた「政策評価に関するガイドライン」の中で、実績評価書というのは、このような「基本目標」「達成目標」というものを明記した上で、その達成度を測定するとされており、それを踏襲してこのような用語を使っている。

【天野委員】
  基本計画案の「4.政策効果の把握に関する事項」について、客観的な情報・データや事実を得なければ、客観的な評価はできないとあり、そのとおりだと思う。2つ質問したいが、まず、それに対応するための現在の文部科学省の情報統計作成が適合的なのかどうか。つまり、ルーティン化した統計作成事業は様々実施されているが、極めて時代遅れになっていて、政策効果を評価できるようなデータになっていないのではないか。その見直しを徹底的にやらなければ、効果の評価はできないのではないか。
  例えば、実績評価書原案の1ページ目、施策目標「生涯を通じた学習機会の拡大」において、達成目標の1−1−2に、「平成16年度までに、大学、大学院、専修学校等の高等教育機関において受け入れられる社会人の数を増加させる」とあり、この目標についていえば、一体ここに書かれている社会人というのはだれのことなのか。社会人入学枠の人たちをいうのか。なぜこういうことを言うのかというと、日本の学校基本統計調査には、高等教育機関の在学者の年齢別のデータがなく、これはOECD等の教育統計の中でも、欠損値になっている。それがない限り、社会人枠で何人入ったということをいくら書いても、社会人の学習の実態はわからず、効果測定にはならない。次の1−1−3では「公開講座の開設数をふやす」とあるが、開設数ではなく受講者の数はどうなのかという話がない。講座は開いたけれども、参加者が1人か2人ということは統計データとして既に存在するわけで、そこまで含んだ分析をしなければ効果測定にならない。このほか、今の統計データや、文部科学省の作成している様々な情報では、効果測定にならないことがある。学力の問題はまさにそうであり、今問題になっているが、この際、徹底的にそういう効果測定の必要な情報、データ作成、収集、プログラムというのも考えていただきたい。
  もう1点は、データ公開の問題である。文部科学省の作成しているデータの多くは、外で見ることができない。総務省と相談しなければ、学校基本統計調査にしても、高等教育について、我々は学校の個別レベルのデータを使うことができない。つまり、データは文部科学省だけが持って、内部で自閉的な評価作業をすることとなり、外側からの評価の目にはさらされない危険性がある。文部科学省は、大学に第三者評価をやるべきだと言っているわけであり、この会議では評価そのものを行うのではなく、評価の仕組みについて意見を言うこととされているので、やはり外部の目に可能な限りデータや情報をさらして、研究者、マスコミ等の目で評価をしてもらうような仕組みをつくらないと、お手盛りでやっているのではないかと言われてもしようがない評価の仕組みになってしまう。したがって、データを作成したら、それを公開して、それに基づいて、第三者の評価も受けるという仕組みになることを期待している。

【評価室長】
  御指摘を承り、検討したい。総論としては、今までにとっていなかったデータについても、政策評価を行う上で必要なものについては、今後、コスト等を勘案しながら努力していきたいと考えている。
  データの公開については、少なくとも政策評価に用いるデータとしては、この評価書に掲げた指標というものを、毎年継続的にデータを追いかけていき、それを公表していきたいと考えており、評価の観点から必要なデータというのは、こういう形で公表されていくことになる。

【伊藤座長】
  非常に重要な御指摘であり、データについては全く同感である。文部科学省だけではなく、どこの役所でも、効果測定に関係のあるデータというのは、これまでほとんど収集していなかった。行政の性質が変わったわけであるから、今は無理ないと思うが、今後は、効果測定に必要なデータを中長期的に整備しておく必要がある。文部科学省の場合、特にその点に留意をいただきたいと思う。単にコストの大小の問題だけではなく、行政活動の性質がかなり変わってきており、それに合わせて、関連のあるデータを今後中長期的に集めていただきたい。

【浅井委員】
  政策評価に関する基本方針に「学識経験を有する者の知見の活用に関する事項」という記述があり、基本計画では「学識経験者等を構成員とする『政策評価に関する有識者会議』を開催し」とあり、基本方針を踏まえた形で書かれていると思うが、基本方針は、学識経験者というものより、もう少し広いように書いてあるように感じる。民間の経験を導入する等もう少し広く書いてあるように考えるのだが、これをもう少し取り入れていただけないだろうか。例えば、教育関係でいうと、JABEE(Japan Accreditation Bond for Engineering Education:日本技術者教育認定機構)というものがあり、大学教育の、特に工業教育だが、教育のレベルが工業的に見て十分であるかどうかの評価をするNPOとして発足している。やはり教育について考えている組織が、文部科学省以外にもNPOや地方自治体、業界団体、ボランティア、シンクタンク等があるし、認定機関もある。そのような第三者をもっと上手に使うべきだと思う。そのことによって、先ほどから出ているような懸念も、わりと公平に解決していくと考えるべきではないかと思う。例えば、資料4に「国立教育政策研究所、科学技術学術政策研究所等の政策研究部門との連携により」とあるが、こういったところに、このような機関をいかに使っていくのか、もう少し、基本計画にうまく盛り込むことはできないかと感じた。

【伊藤座長】
  様々な先生方から大変御貴重な御意見を頂戴して、ぜひ事務局の方で取り上げて欲しい意見等もあるが、どのような修正・追加にするかについては、座長の方に御一任していただきたい。


(3)実績評価書原案について
  事務局より実績評価書原案について説明が行われ、続いて質疑・意見交換が行われた。

<質疑・意見交換>
【伊藤座長】
  実績評価書原案を見ると、文部科学省の仕事の全体像がわかるだけでなく、それぞれの課として、一体自分の課は何を使命にしているのか、どういう仕事をしているのかということを改めて認識できたのではないか。こういう作業を着実に続けていくことによって、非常に大きな教育的効果を発揮するのではないかと考えている。今の段階で完成されたものを求めるのは早過ぎると思うが、一種の自画像みたいなものが描けるようになると思う。制度の管理が重要である。
  この実績評価書については、事前に配付した資料に対して、古賀委員、中西委員、山谷委員、田吉委員から、それぞれ貴重なコメントをいただいており、4委員の方々から何か発言・意見があれば、お願いしたい。

【古賀委員】
  全体の像がわかるなど、大変工夫された評価書だという感じがした。施策目標、それを噛み砕いたのが基本目標ということになるが、それと達成目標との関係、施策目標からそのうちのいくつかを達成目標にしているが、その辺が本質をつかんでいる達成目標かどうかということが要ではないかと思う。
  ちょっと悪い例では、科学技術でIT研究において、実際にコンピュータは13年度にできているが、その先のことが重要だと思う。そういう施策目標と基準というのは、よく考える必要がある。
  それから、達成目標が、「改善する」等の非常に抽象的なものになっているので、できるだけデータとして目標を掲げる必要はあるのではないか。
  また、教育関係、研究関係は、国立・公立関係だけが記述されているような気がするが、例えば、生涯学習について、「公開講座の開設数を現状の水準より向上させる」という達成目標が1−1にあるが、これは私立まで入れると相当大きな規模になると思うが、国公立だけのテーマなのか。

【伊藤座長】
  私立まで含めると、これはデータがないのではないか。

【生涯学習推進課】
  御指摘の公開講座は、従来、まだ高等教育局で調査していたが、今年度から生涯学習として調査することになり、私立も含めて調査することになった。今の時点では示せないが、受講者数についても調査しており、現在、80万人ぐらい受講しているという状況である。講座数だけでなく、社会人をどれだけ公開講座で受け入れているかということについても示していきたい。

【古賀委員】
  教育、特に大学の施策を語る場合は、8割が私立であり、しかも国立大学が法人化する段階であり、だんだん公私一体になった施策が表に出てきた方が良いのではないかという感じを持っている。中等教育の場合、私立学校の高等学校は24%で、まだ76%が国公立であるが、大学の場合はやはり国立だけで本当にいいのかという感じが非常にしている。

【伊藤座長】
  わかりました。ただ、私立学校に対しどれだけ文部科学省が影響力を持てるのかという問題が他方あると思う。その辺は、非常に難しい問題であるが、以上の点を踏まえて、なお作業を続けていただきたい。

【中西委員】
  私は、大学におりますがブレークスルーをもたらすような優れた研究成果をどうやって出すかということは、とても難しいことだと思う。厳密な評価を実施し評価の高いものを選択したからといって、また、資金を投入したからといって、良い研究成果が出ないこともあり得ると思う。評価の高い研究の選択、つまり競争的資金の導入を強調すると、評価が高くなるように見栄えのよい研究を訴えることになり、そこに資金が集まるということも起こるかもしれない。将来の産業の基盤となるような、新しいブレークスルーを生み出す研究は、本当はだれにも評価できないと思う。評価は、優れた研究成果を上げた人が行うことが多く、これらの人は過去の時点の、いわば、旧先端をしていた人であり、これからの最先端研究開発を必ずしも正しく評価できない面がある。評価に基づいた競争的資金という考えも大切ではあるが、評価になじまない研究があるということをよく考えてもらいたい。
評価者は片手間に評価を行うことは避けなければならない。例えば、評価者は1カ月ぐらい缶詰状態で、詳細にその分野を調べ上げ、これはおもしろそうだという研究に、評価者の責任において、思いきって賭けるべきである。予算を配分する側からすると効率的に配分するためには評価の良いところに重点配分しがちであるが、新研究開発とは効率が悪いものだという認識も大切である。
評価を行う場合には常に評価法そのものの評価も同時に行うことが重要であり、もっと予算をかけてその手法の開発・見直しならびに専門家の育成を図るべきである。今の外部評価は、ボランティア的というか、外部の先生方が片手間に行うものが多く、私の経験でも、わからない分野を無理に評価しなければならなかった場合がある。研究環境の整備が整えば自然と良い成果が出るので、研究内容そのものの評価よりも環境整備という点の評価が最も重要だと思う。特に基礎研究では長い期間を考え、研究環境・研究者の育成から考える必要がある。評価手法そのものについてはもっと考えていかなければならないということをいつも感じており、変えていっていただきたいと思う。

【伊藤座長】
  文部科学省で、失敗事例をどう活用するかという研究報告があり、私も拝見し、深い感銘を受けたのだが、今後、先端分野ではこのような考え方に基づいた評価手法を考えていく必要があるかと。日本の場合、自然科学でも社会科学でも、外国でできた理論を取り入れることが中心であり、苦労して新しく理論を創り出すという経験が比較的少ないので、そのためにはある程度の無駄は覚悟しなければいけないだろうと思う。そのような観点も盛り込みながら、評価手法を開発していただきたいと思う。

【田吉委員】
  施策目標2−1の「確かな学力の育成」について、具体的に、この評価シートについて意見を書かせていただいた。
  基本目標があり、そして達成目標があるわけだが、達成目標が、「理解度や学習意欲の向上を図る」、あるいは、「個に応じた指導の充実を図る」、という形で出されているが、様々な学力低下論に振り回されることなく、しっかりと自信を持って新学習指導要領の意義を貫いていかれなければ、学校現場そのものは非常に厳しい状況になっている。そういうことにも言及するようなものがあるとよいと思う。
  例えば、「総合的な学習の時間」は、本当に学校によって様々な取組をしているのだが、ねらいにあったものでなければ、本当の基礎学力をつけるものにならない。このような指導を入れていきたいとか、そのようなことも入れば良いと考える。
  また、読書活動といった場合に、蔵書の数は出ているが、司書教諭はどのような計画で配置していくかというような、人的なことも非常に大きな要素になっていくと考える。
  また、今年度、学力の到達度調査があった。大体3割の学校が実施したかと思うが、その採点もすべて学校でやらなければいけないので、かなり負担が大きかった。来年から全学年、全学級になると思うので、良い方法を、コストがかかってもぜひ考えていただければと思っている。

【伊藤座長】
  現場の経験を踏まえた大変貴重な意見をいただいた。十分に汲み上げていっていただきたい。

【杉山委員】
  スポーツの方は、ソルトレーク・オリンピックで気勢をそがれるような結果になり、なかなか政策目標といっても前途多難であるが、やはりこのような評価をしながら、スポーツというものを全体的に考えていかなければ、スポーツ人だけでスポーツを考えるという時代は終わっている。ぜひまた様々な意見を、私自身も勉強していきたいと思う。

【伊藤座長】
  ただいま頂戴した意見を踏まえて、事務局の方で、なお作業を進めていただきたいと思う。

【麻生委員】
  実績評価書はいつまでに提出するのか。

【評価室長】
  6月に有識者会議を開催し、それを踏まえて、6月末ぐらいに公表したい。

【麻生委員】
  もっと辛口な評価を行い、文部科学省は苦闘しているのだというのを出した方が世論受けはすると思う。
  それから、例えば、日本人の体力とか体格とかというものが変わった時期というのは、9年より前である。したがって、全部5年で切るというのは、非常にステレオタイプで、必ずしも賛成しない。たくさん意見を伺っておいて、少し、辛口のものを出した方が世論は支持するし、文部科学省が苦闘しているのだというのが出てくる。甘口のものを出すと、国民は、いいことだけを言っていると思うはずだ。やはり辛口のものを最初は出した方がいいと思うのだが。

【天笠委員】
  この全体像を示すというのは大変大切なことであり、大変わかりやすく、また、それぞれの取組がどういうふうに位置づけられているのかということを示したということは、大変いいことではないかと受けとめた。その上で、施策目標間の調整や関連、設定の妥当性、相互の関係の妥当性等をどういう形で今後検討していくのか、先ほどのシステムの中で確保されるのかどうか。そういうことが検討事項の一つだと思う。
  それから、実績評価書は公表されるわけだが、これを見せられても、見せられる側は、何かよくわかりづらいということもある。例えば、何か非常に親しみやすいというか、関心になっている具体例を、シミュレーションというか、相互にこういう形で評価を進めながら、このように行っていくということがわかるようなものがあると、公表された段階で、よりわかりやすいものとして受けとめられるのではないか。

【評価室長】
  大変重要な御指摘をいただき、まず1つは、「文部科学省の使命と政策目標」については、基本計画の中に書き込むが、必要に応じて随時見直していく。具体的には、評価をする過程で、目標そのものを、こういうふうに修正すべきだという意見が出てくる可能性は十分にある。平成13年6月に、この表を作成したが、その後、1年弱かけて評価を行う過程で、個々の施策目標自体を修正した方がいいという意見が各担当課から出ており、それを踏まえて、既に見直している。そういう意味では、随時これは進化していくものだとお考えいただきたい。
  2点目のわかりやすい事例ということについて、実績評価は、各施策目標、施策レベルということなので、非常に幅広く取り上げている。これを淡々と分析しても、確かに平板なものになる可能性があるので、限られたスペースの中、国民の関心の高いトピックスについても「現状の分析と課題」を書き込んでいきたい。

【星野委員】  今日の議題は、基本計画に基づく今後3ヶ年の取組と実績評価の内容についての確認だと思うが、有識者会議を3回開催し、かなりの課題が出ていると思う。評価制度についての課題、手続、制度と、それから運用について、この基本計画がすごく不満なのは、ほとんどガイドラインの中身しか書いてなく、平成14から16年の3ヶ年、文部科学省として、この施策評価制度をどう取り組むのかということの魂が感じられない。平成13年度に試行を行ったわけであり、事業評価と実績評価、総合評価は2ヶ年でまだ途中なので来年になるが、十分にその結果を踏まえ3ヶ年でどういう取組をしていくのか。やはり、実績評価と事業評価が中心になると思う。
  事業評価は、昨年度の事前評価を、事後評価するのが15年である。中には18年度と達成時期を書いてあるが、やはり15年度にしっかりと14年度の新規事業は評価していただきたい。また、実績評価は、まだ基本目標と達成目標が目的−手段の関係になかったり、基本目標の中に、国としての本当の基本目標なのか、それとも、文部科学省が実施できる部分の事業の目標なのかが、いま一つはっきりしていない部分がある。生涯学習の分野は、まさに国全体で取り組むという目標が望ましいと思う。16年度までの3ヶ年で実施し、実績評価については、ものにするということを明確に述べるべきである。3ヶ年でどうやって取り組んで、どの位事業的なカバーができるのかが問題である。
  納税者から見れば、文部科学省が年間使う予算の中で、政策評価制度で16年度やったときに、どこまでカバーできるのか。これは事業の本数でもいい。それから、事業費の予算でもいいから、事業本数カバー率、プロジェクト数のカバー率と、それから、予算のカバー率で見たときに、何%までカバーできるのかというのが、特に納税者という観点から見たとき、非常に関心を持たれると思う。そういう意味では、実績評価の各基本目標で成果的な指標があるが、実際にこの施策目標を達成するのに、年間どれだけの税金が使われているかというのを、明確に示すべきである。そうして見ると、施策目標の高い低いとか、これ以上もっと続けるのかどうかという判断ができると思うので、14年度ではできないと思うが、16年度には完成するように目指して取り組んでいただきたい。

【伊藤座長】
  ありがとうございました。今後の日程等についてお願いしたい。

【評価室長】
  次回の会合は6月を予定しており、具体的日程は追って連絡させていただきたい。

──  了  ──


(大臣官房政策課評価室)

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