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政策評価に関する有識者会議

2001/06/29 議事録

政策評価に関する有識者会議(第1回)議事録

政策評価に関する有識者会議(第1回)議事録

1.日時

平成13年6月29日(金)14:00〜16:00

2.場所

文部科学省分館201.202会議室

3.出席者

(委員)

伊藤座長、浅井委員、天笠委員、天野委員、池上委員、大窪委員、大田委員、岡本委員、小川委員、小出委員、古賀委員、佐々木委員、杉山委員、竹内委員、伊達委員、田吉委員、永井委員、中西委員、長谷川委員、平山委員、星野委員、横山委員

(文部科学省)

遠山文部科学大臣、水島大臣政務官、小野事務次官、佐々木文化庁長官青江文部科学審議官、御手洗文部科学審議官、結城官房長、近藤生涯学習政策局長、工藤高等教育局長、大熊科学技術・学術政策局長、遠藤研究振興局長、今村研究開発局長、遠藤スポーツ・青少年局長、白川国際統括官、銭谷文化庁次長、田中総括審議官、丸山大臣官房政策課長  ほか

4.会議の概要

(1)遠山文部科学大臣、水島大臣政務官よりあいさつ

(遠山文部科学大臣あいさつ)

  文部科学大臣の遠山でございます。政策評価に関する有識者会議の発足に当たりまして、一言ごあいさつ申し上げます。

  まず、座長をお願いいたしました伊藤先生をはじめ、本日御出席の皆様におかれましては、御多忙のところ、政策評価という行政の重要課題に取り組む有識者会議の委員をお引き受けいただき、誠にありがとうございます。

  政策評価は、今般の中央省庁等改革の重要な柱の一つとして位置づけられており、国民に対する説明責任の徹底を図るとともに、国民的視点に立った成果重視の行政への転換を図る観点から、全政府的に取り組むべき課題となっております。

  一般に、行政機関は、「Plan(企画立案)」、「Do(実施)」、「See(評価)」というマネジメントサイクルで政策を実施することとされていますが、我が省においては、これまで必ずしも体系的に「See」が行われてきたとは言い難い面があります。

  文部科学省の政策全体の有効性をより一層高めるとともに、国民本位の効率的で質の高い行政を実現するためにも、「See」すなわち政策評価の重要性が、従来にも増して高まっていると認識しております。

  本会議においては、文部科学省が実施する政策評価の実効性・客観性を高めるために、皆様から御意見等をいただくこととしております。平成14年度から施行されるいわゆる行政評価法においても、政策評価の客観的かつ厳格な実施の確保のために学識経験者等の活用を図ることとなっており、本会議は極めて重要な役割を担うものと考えております。

  我が省が所掌する政策は、教育、科学技術・学術、文化、スポーツと極めて広範多岐にわたり、中には、その目標や効果を定量的に示すことが困難なものや、効果がすぐに現れないため、ある程度中・長期的に効果をみなければならないものもあります。
しかしながら、そのような政策についても、評価手法等の検討を行いつつ、積極的に評価の実施に努めていきたいと考えておりますので、なにとぞ御指導のほどよろしくお願いいたします。

  行政は、時代の推移に伴う社会経済の変化や国民のニーズ等に的確に対応し、政策内容を絶えず見直し、その改善・充実を図っていくことが求められております。

  江戸時代の蘭医である大槻玄沢の言葉に、「およそ事業は、みだりに興すことあるべからず、思ひさだめて興すことあらば、遂げずばやまじの精神なかるべからず」という一節がございます。

  我が省といたしましては、まさに事業を「みだりに興す」のではなく、事前評価をしっかり行った上で、「遂げずばやまじの精神」で、評価を踏まえた政策の見直し、改善を図りながら、一つの目標の達成に向けて邁進していきたいと考えているところでございます。

  しかしながら一方で、非常に動きの速い現代社会においては、その必要性がなくなれば、思いきって事業を中止するということもあろうかと思います。その際は、委員の皆様方の意見も拝聴しながら検討していきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

  本会議の委員の皆様は、言うまでもなく、各界において我が国を代表する方々であります。今回、御協力をいただきましたことにあらためて感謝申し上げますとともに、国民本位の成果重視の行政への転換のために、皆様の英知を結集し、積極的な御議論を賜りますようお願い申し上げまして、私のあいさつといたします。

(2)政策評価に関する有識者会議議事の公開の取り扱いについて

  会議の公開に関して、透明性の確保から公開とすべきという意見と、自由闊達な意見交換の確保という点から非公開とすべきという意見が委員から出された。

  多数決の結果、透明性の確保は、発言者名を明記した議事概要の公表において確保されるため、会議自体は原則非公開とすることとした。また、議事要旨については、事務局の責任において作成したものを、会議終了後、速やかにホームページ等で公表することとし、議事概要については会議の了承を得た上で公表することとした。

(3)文部科学省における政策評価の取り組み等の説明

  事務局より、文部科学省の政策や当面の課題、政策評価制度や文部科学省における政策評価の取り組みについての説明が行われた。

(4)意見交換(自由討議)

【古賀委員】

  評価の結果は予算編成に反映させるということだが、評価は誰がどのように実施するのか。

【丸山政策課長】

  実施要領に基づいて政策評価を行うわけだが、政策評価を行うのは自ら政策を立案している部局、つまり、局課の単位で自分が行っている、もしくは行おうとしている政策について評価書を作成し、評価室で全体をとりまとめたものを有識者会議に諮った上で、文部科学省としてどのように政策評価を行い、どのように概算要求に反映させたかを説明していきたいと考えている。

【古賀委員】

  実際に課題を作ったところが自己評価をして、その結果を省の中で横に評価するということはしないのか。

【丸山政策課長】

  基本的には資源配分の時には暗黙にそのようなことが行われていると思うが、それぞれの政策は目標とするところが異なるわけで、全く性質の違う政策の評価結果を比べるのは有益なことではないと考えている。むしろ、個々の政策の目標設定をしっかりと行い、その目標を達成するためにどの政策手段が一番効果的であるかという視点から、事業評価、実績評価、総合評価、それぞれのレベルにおいて評価を行っていくことが重要であると考える。そもそも、政策評価は政策間の優劣をつけることを目的とするものではない。

【古賀委員】

  達成基準を、できるだけ定数的に具体的に設定するとのことだが、達成基準の客観性を確保するために、横の評価があってもよいのではないか。13年度の政策等は、まだスタートしたばかりなのに、評価できるのか。

【丸山政策課長】

  13年度に新規にスタートしたものなど、評価を実施する段階に達していないものについては、評価の対象としない。今年度は、概算要求時の事前評価と、過去から続いており評価を行う段階に達しているものを中心に評価を実施する。部局毎のバラバラの評価にならないように、実施要領中の評価シートを共通のフォーマットとし、文部科学省全体の政策体系を念頭において体系的に評価していくこととしている。

【古賀委員】

  政策目標は、達成が容易すぎるものにならないよう注意すべきである。また、評価結果は公開を前提としている以上、一般の方にとってわかりやすいものにする必要があり、実施計画等もそのことを念頭において作成するべきである。

【横山委員】

  今の文部科学省にとって、統合をスムーズにランディングさせることが重要な課題であると考えている。そのためには、科学研究費補助金と科学技術振興調整費といった類似事業を今後いかに統一させていくかということや、国立大学の施設整備について言えば、これまでは教育行政の観点からやっていたものを今後は科学技術振興の観点からも行っていくことなどが重要になってくると思う。以上のような、統合のスムーズなランディングが当面の評価のテーマになってくると思うが、文部科学省はどうお考えなのか。

【青江文部科学審議官】

  統合前から、両者の間において、どのようにすれば統合による効果をあげうるかということについて議論してきている。横山委員の御意見から推察すると、統合の効果を上げうる分野として、主に研究開発に関する政策を想定しているようであるが、研究開発の分野を主に担当している科学技術・学術政策局、研究振興局、研究開発局の3局においては、来年度の要求に向けてさらに統合の成果を上げうる政策はないかということを内部で議論している。また、統合の効果をあげていくことの重要性を念頭に、評価に取り組んでいくべきと認識している。

【横山委員】

  統合に関する評価も、実施するということでよいのか。

【丸山政策課長】

  政策評価については、平成9年からの行革の流れの中で、政策について体系的に行っていくこととされており、御指摘の点については間接的には評価を行っていくこととなってくるが、統合効果そのものを評価するということ自体は、ガイドラインの枠組みの中のものではないと考えている。

【横山委員】

  そういう趣旨で言ったのではなく、先ほども例に挙げたが、科学研究費補助金と科学技術振興調整費という類似政策を一本化していくことは、政策評価の対象となると思うが、どうお考えなのか。

【丸山政策課長】

  実施計画においても、評価を行うに当たっては、省庁再編に伴う施策の融合・連携の推進にも配慮することとなっており、個々の事業を評価する中で、関連の事業の一本化についても考慮していくこととなると考えている。

【天野委員】

  実施計画中の重点課題評価は、いずれも短期間で成果が上がるような政策ではなく、どちらもかなり長期的な展望を持たないと評価は難しいと思うが、どちらかを例に挙げて、どういう形で評価をおこなっていくのか、もう少し具体的に詳しく説明してほしい。

【小川委員】

  文部科学省の自己評価に対し助言をするのが有識者会議の役割とされているが、実際、我々が評価にどのように関わっていくのかがイメージがつかめない。どういった年間のサイクルで、どういった方法で、我々が文部科学省の自己評価の作業に関わっていくのかということや、助言といったときに具体的に何をやるのかということがわからない。例えば、メンバーもかなり多岐にわたっているわけだが、分野ごとのワーキンググループのようなものを作って、様々なデーターをもとに掘り下げた分析を行うことをお考えなのか。年2、3回の会議の開催で、有益な助言をするのは困難。

【丸山政策課長】

  後者から先に答えると、本来のスケジュールは、次の年度がスタートするまでに次年度の計画を定め、それに基づき各部局で評価書を作成し、それを有識者会議において、目標の立て方、評価手法などについて御意見をいただくこととなっている。シーリングの状況がわからない状態でも評価の作業には入っているのだが、今年は省庁再編等でスケジュールが遅れている関係で、短期間で委員の方々に評価書について御意見をいただき、8月末を目途に評価結果と来年度の概算要求への反映方針を発表するというスケジュールにならざるを得ないと考えている。政策評価の着実な実施にはもう少し緻密な議論が必要であるということであれば、来年度以降の本格的な実施に向けて、工夫をしていきたいと考えている。

【星野委員】

  実施計画中別紙1の48本の継続事業の評価は、平成12年度の実績を踏まえて、それを14年度の予算に反映させるためのものであり、この評価の結果をしっかりと見て、助言をすることが今年度の有識者会議の主な役割と考えている。

  しかし、評価の中で重要なのはむしろ実績評価の方で、実績評価がない事務事業評価は点の評価になってしまう。実績評価については、9本の政策目標に対する目標設定を13年度中に行うということだが、14年度はその目標に向かって政策を実行し、15年度に出されるその結果を、今のメンバーによる有識者会議に諮るように任期を設定するべきであり、そうしないと今回の有識者会議の意味がなくなってしまう。また、有識者会議に実効性をもたせるためには、実績評価の政策目標毎に必ず分科会をつくるべきであり、それに加えて政策評価の枠組み全体のシステム監査の役割を担う分科会もつくるべきである。

【丸山政策課長】

  先ほどの天野委員の御質問に対して、若干正確性を欠くかもしれないが、「ゲノム科学分野における国際競争力の強化」を例に挙げて、今の時点で重点課題評価について考えているイメージを説明したい。一般的に、ゲノム科学がアメリカより遅れているといわれていることを問題意識とし、我が国がアメリカより遅れた原因と、これから我が国のこの分野における国際競争力を強化していくための課題を分析し、そのために新たにどのような政策が必要となるかを探っていくというイメージをもっている。達成効果を図る評価というよりも、政策の問題点を分析し、その問題の解決のために必要な政策手段を探るという性格の評価である。

【伊藤座長】

  事業評価というよりも総合評価的なものになってくるのではないか。

【丸山政策課長】

  総合評価的な要素が強いが、政策体系の整理に基づくと、「ゲノム科学分野における国際競争力の強化」というテーマは、各論の事業のレベルにあたるものである。

【伊藤座長】

  「基礎学力の向上」の評価もかなり難しい。

【池上委員】

  過去の失敗から学習し、解決策をさぐるという考え方は政策科学においては不可欠。従来の問題点を明らかにした上で今後の方向を出していくという方針には賛成であり、そのプロセスをきちんと踏んでいるかチェックすることも有識者会議の役割であると思う。自治体の政策評価も既存事業の整理から始まっており、過去の経験から政策を行う根拠を検証することで新たな政策展開の方向を探り出し、全体として政策の積極性を評価していくということが望ましいと考えている。

【大田委員】

  規制改革の関係で、教育の関係について旧文部省と議論してきたわけだが、あるべき姿を想定し、その実現のための目標を立てており、本当にその姿が社会に必要とされるものかという視点に欠けていた。その結果、実体と政策がかけ離れるという現象が生じ、そのことが現代の教育問題の根元にある。過去の政策の流れにこだわらず、問題を直視し、その問題の核心をつく処方箋となる政策を立案していかなくてはならない。また、その政策が処方箋として本当に正しいのかどうか、そこの部分に外部の目がしっかり入るべきだということが第一点目の意見。一度立案された政策をしっかりと実行にしていくことは、行政は今までも問題なく行っていると思うので、最初の立案のところに外部の目を入れることが、政策のアカウンタビリティーの徹底には必要である。第二点目の意見は、政策をやりすぎている部分をチェックすることが重要だということである。国と地方との関係では、現在は多くの部分が地方におりているが、文部科学省の意向が暗黙のうちに効いており、地方が自発的な教育の方向を示しておらず、国と地方の役割分担がしっかりと行われていないように感じている。

【伊藤座長】

  第二点目は、地方教育行政に係わることであるが、法律も改正されたことであり、一つの課題として評価してもよいと思う。一点目は、政策目標とそれを実現する手段との整合性をチェックする仕組みができているかという問題であると思う。ところで、大学改革の中で、「国公私立トップ30」を世界最高水準に育てるという話があるが、30という具体的な数字は目標として設定しているのか。目標であるのならば、それを実現するためにどのような政策が必要かという議論となるわけだが、これはイメージとしての数字なのか。

【工藤高等教育局長】

  はっきりとした目標というよりは、重点的な育成を図っていくという方向性をイメージとして示すための数字であり、国公私立合わせて670校中、その約5パーセント程度の30校程度を世界水準に育てたいという考えである。あらかじめ大学を選んでランク付けするのではなく、国策として投資をしていくことが必要な分野を育成していくための方針であり、政策の具体化にあたっては、中央教育審議会の大学分科会の中での御議論を参考にしながら、考えていきたい。大学の重点的育成に関しては、今までも文部省の大学審議会等のなかでも議論してきたことであり、その方向性を具体的イメージとして示すために、30という数を文部科学省としてだしたものである。

【伊藤座長】

  30という数を政策目標とすると、5〜10年先に、その30という数が達成できないことが政策の失敗だということになるので、その数そのものを目標とする必要はないと考えている。今後、大学間での競争が進んだ結果、10年後にすばらしい大学が15校できたということでも良いと思う。アメリカにおいても世界的に評価されている大学は10校程度であり、30という数に固執する必要はないと思う。いずれにせよ、大学の重要な育成のための施策を具体的にあげていただき、それについて有識者会議でしっかりとチェックする必要があると考えている。

【浅井委員】

  大田委員と座長の意見に賛同する。基本的には、どういうスタンスで政策を考えていくのか、政策課題として何をあげるかということを徹底的に議論することが必要であり、そのためにこの会議の場で、委員同士の多角的なマルチな議論が起こるようになればよいと思う。今年度の評価に関しては、時間的な制約が大きいということだが、取組がすすんでいるところがあれば、この会議に情報を随時提供していただきたい。総合科学技術会議などにおいても、現状をしっかりと調査し、正確に把握した資料や、外国とのベンチマークについての資料がそろえられており、官のもつ情報が充実してきていると感じている。そのようなものを早いうちに議論の材料として提供してほしい。我々は、評価にしっかり参画しようと考えているのであるから、それなりに議論の時間がほしい。

【伊藤座長】

  国立教育政策研究所で、イギリスとアメリカの教育行政についての調査報告書をとりまとめたのだが、それによるとアメリカでは2種類の政策評価を行っている。一つは、政策を体系的に網羅的に評価するというものであり、こちらについては原則公開ということになっている。もう一つは、評価というよりも調査研究のようなもので、大きく問題となっているいくつかの政策テーマについて、かなり掘り下げた調査・分析を行うものであり、これについては必ずしも公開となっているわけではない。この場で議論するのに相応しいものは、前者よりもむしろ後者で、重点的にいくつかのテーマについて掘り下げて調査・分析したものに対して助言を行うという関わり方もある。

【中西委員】

  科学技術基本計画は、社会的ニーズに応えるブレイクスルーとなる研究や将来の産業の新しい芽となる研究を国レベルで援護していくものと理解しているが、先端であればあるほど、評価になじみにくいということを考慮していただきたい。お金を出す方の立場からすると、しっかりと評価し、結果に応じた資源配分をする方が納得がいくのだと思うが、政府でしかできない政策の中には、何か一つのものに賭けてみようという勇気が必要なものもある。研究というものは効率は良くないが、夢のある何かが育つ可能性を秘めており、その可能性を評価するのは非常に難しく、一般的なやり方での評価は適切ではないと思う。さらに、あまりに評価をきちんとやりすぎると、新しい研究が創出されなくなる恐れがある。

【丸山政策課長】

  評価になじまないものがあるということだが、ガイドラインの中にも全て一律に定量的に評価すればよいというものではないということが明記されている。アカウンタビリティーという観点からは、客観的な数値目標を掲げることが適当であるものは数値目標を用いることで、また、数値的に評価することが難しいものについては、評価に際して第三者の視点を活用することで、客観性を担保するということになっており、研究の場合にはピア・レビュー方式が確立している。

【大熊科学技術・学術政策局長】

  科学技術基本計画の中では、評価について、公平性と透明性の確保、評価結果の資源配分への反映がポイントとして書かれているが、評価にあたっては研究課題の性質に応じて行い、一律の評価基準によるのではなく、分野によって柔軟に対応することとされている。

【中西委員】

  アイディアというものは個人に帰するものであり、そのアイディアを評価で堀りおこすことができるかが心配である。

(5)閉会

  次回は8月上〜中旬に開催し、次回は平成14年度概算要求の事前評価に関して論議することとした。

(以上)

(大臣官房政策課)

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