資料2 審議のまとめ(骨子案)

1. はじめに

  • 学生たちは、「何のために学ぶのか」という動機付けが不足し、主体的に考える力、グローバルな視点や国際的なコミュニケーション力が不十分との指摘がある。学生たちが、異なる価値観にぶつかる体験を通じて、心身ともに鍛えられ、自らの殻を幾度も脱皮して成長し、広い視野と問題意識や高い志が養われていく過程が重要。
  • 留学、インターンシップやボランティア等の体験活動は、学ぶ動機を明確にして学生の主体的な学びを促す「学外学修プログラム」の一つであり、学士課程教育の質的転換に資するもの。体験活動は、企画力や行動力、忍耐力、コミュニケーション能力、国際的な視野・感覚、勤労観等の基礎的・汎用的能力も培う効果がある。特に、1ヶ月以上のまとまった期間に集中的に行われる体験活動は、数日間のものよりも高い教育的効果が期待できる。
  • 「日本再興戦略Japan is BACK(平成25年閣議決定)」「教育再生実行会議第三次提言(平成25年)」においても、秋入学など学事暦の柔軟化に伴うギャップターム等を活用した、留学等の体験活動への支援を抜本的に強化する方針が示されている。
  • 日本人留学生数は減少傾向にあり、インターンシップ経験率は低く、希望する学生全員に機会を与えられる状況にあるとは言い難い。

 2. 日本のギャップイヤー推進方策の在り方

  • 海外では、一部の学生(イギリス:全学生の6%)が自主的に、大学入学前・在学時の休学・就職前に一定期間(3~24ヶ月間)、留学やインターンシップ等の体験活動をする「ギャップイヤー」という仕組みがある。
  • 日本においても、平成19年教育再生会議が、日本版ギャップイヤーの導入により、若者の多様な体験の機会を充実させる観点から、9月入学の促進を提言。

(学事暦の多様化)

  • これを受け、学事暦に関する法令上の規制が弾力化され、今は、学長が自由に学年の始期や学期の長さを設定することができるため、大学の判断によって秋入学制度への移行や、4学期制等の多様な学期の設定が可能になっている。
  • 秋入学など4月以外にも入学できる制度を導入している大学数は増加傾向。また、本年度から可能になった4学期制は次のようなメリットがあるため、これを導入し、また導入を検討する大学も出てきた。
  1. 学期の区切りを海外の大学に合わせることができるため、留学などの学生・教員の国際交流が促進される
  2. 週に複数回授業すること、より集中した学習が可能となり、教育効果が高まる
  3. 2か月程度の休学が可能となり、社会体験活動へ参加しやすくなる

(日本版ギャップイヤーの試み)

  • いくつかの大学では、入学前・直後に数ヶ月~1年間、自主的な体験活動の期間を設けて学生を支援する日本版のギャップイヤーの試みが始まっているが、参加できる学生はわずか。
    大学が全く関与せず、学生が自らの意思に基づき、休学して留学、インターンシップ等の活動をする学生もいると考えられるが、おそらく少ない。
  • イギリスのように入学前・直後のギャップイヤーがなかなか広がらない背景には、「受け皿不足」「活動資金がない」等の制約や、学生にとっても「留年してしまう」「就職につながらない(評価されない)おそれ」「入学前に遊んでしまう」「家族の反対」など、様々な要因が指摘されている。
  • イギリスでギャップイヤーが普及したのは、実績の積み重ねが世の中に認められたことによる。日本においても、希望する学生が1人でも多くギャップイヤーを取得できるよう、実績を積み重ねて多様なロールモデルを確立していく、地道な努力が必要。

3. 大学によるギャップイヤー・プログラムの推進

  • 希望する学生全員が参加できる機会を増やしていくためには、イギリスのような「自主性重視型」のギャップイヤーだけではなく、各大学が、自校にとってのギャップイヤーの教育的意義を判断した上で、自主的に支援プログラムの提供等を行う「大学支援型」のギャップイヤーを導入していくことが期待される。
  • ギャップイヤー・プログラムを導入する大学においては、学生の実態等を踏まえつつ、以下の点や別に添付する先行事例集を参考にしながら、ギャップイヤー・プログラムを企画運営することが期待される。

(プログラム名)

・大学が自由に定めるもの。国際通用性の観点からは「ギャップイヤー」が相応しいが、「ギャップターム」「チャレンジイヤー」等の独自の呼称も考えられる。

(時期)
・大学入学前に限ることなく、入学後、卒業前など多様な時期に、1ヶ月以上のまとまった期間実施することが考えられる。ただし、高校卒業後の4月以降は、奨学金受給資格、学割適用、ビザ取得等の観点から、学生を入学させて学籍を与えることも考えられる。
・学生が留学、インターンシップ等の社会体験活動に参加しやすくなるよう、秋入学や4学期制の導入・拡大を図るなど、学事暦を柔軟に見直すことが考えられる。

(活動内容)
・学生が主体的に学外の多様な体験活動に参加するもの。
「留学」や、産業界及び国・自治体・NPO等における「インターンシップ」、「ボランティア」、「フィールドワーク」、「小中学校の教員補助」などの多様な活動が考えられる。
・大学の関与の度合いによって、
  1 大学が企画運営するプログラム
  2 学生が企画した計画案を大学がサポートするもの
  3 学生が自主的に行う活動であり、大学は関与しないもの

の3パターンに分類できる。3については、大学が教育上有益と認めた学修があれば、それを評価することも考えられる。
・プログラム内容は、学生が、自主性・自発性を発揮できるような企画が効果的。カリキュラムに組み込み、単位を与える形も考えられる。
・事前指導とともに、発表の機会を設ける等の事後指導があると効果的。
・NPO法人等の団体が提供するプログラムの活用も考えられる。

(活動資金の確保)
・教育的観点から、学生がアルバイト等で活動資金を稼ぎ、一部を国や大学等が奨学金として支援するというマッチング方式が考えられる。保護者等から支援を受けられない等の経済的な余裕がない学生に対して配慮することも考えられる。

(安全確保と危機管理)
・事故や病気に備え、危機管理に関する事前指導や保険への加入が重要。JICA等の団体との連携も考えられる。

4. 社会の意識改革と国や産業界による支援

(1) 社会や企業におけるギャップイヤーへの理解・協力の促進

  • 学生は、就職が不利になるのではないかとの恐れから、留年を伴う留学等のギャップイヤー・プログラムへの参加を躊躇している。
    一方、産業界は、留学などのギャップイヤーの経験によって1~2年卒業が遅れても、優秀な人材であれば問題なく受け入れる意向。両者の意識にはズレがある。
  • 留年・休学にあるネガティブなイメージを、ポジティブなものに転換していくため、「トビタテ!留学JAPAN」等により、学生や保護者、高校教員等への理解促進が重要。
  • 産業界によるギャップイヤー経験者の積極的な評価を期待。しかし、就職に有利になるから参加学生が増えるというのは、ギャップイヤー本来の趣旨に反する。
  • 大学や民間団体が提供している体験活動プログラムの質を保証するため、基準を作成して、プログラムの質を認定する民間団体の設立が期待される。

(2)国による支援策

  • 入学前・直後にギャップイヤー・プログラムを実施している大学は少なく、実施している大学も、プログラム運営・開発人材や資金の不足などの課題を抱えている。
  •  希望する学生全員がギャップイヤーを経験できる環境を整備するため、国は、1学生個人に対する奨学金の拡充を図るとともに、2大学に対し、プログラム開発や学生サポートのための体制整備に関する財政的な支援を行うこと。なお、2の大学に対する支援に当たっては、より多くの学生に機会を提供する大学を積極的に評価すること。
  • 9月入学6月卒業といった多様な修業年限の在り方や、秋入学に伴う資格試験の実施時期の見直しについては、日本でのギャップイヤーの普及や秋卒業の状況を見極めつつ、今後検討していくべき課題。

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高等教育局大学振興課大学改革推進室

(高等教育局大学振興課大学改革推進室)