平成24年度大学入試センター試験に関する検証委員会報告書(案)の概要

1 トラブルの発生原因の検証について

(1)問題冊子配付トラブル関係

    1. 配付トラブルの発生状況

    • 問題冊子の配付パターンの組合せが複雑な試験室で配付トラブルが頻発したわけではなく、比較的 単純な試験室の方が発生率が高い。
    • 試験監督者総数が多いほど配付トラブルが生じる傾向がみられ、試験監督者等に対する周知徹底という点で課題があったと考えられる。
  • 1試験場のみの大学における発生率は8%であるのに対し、複数の試験場を設けている大学では51%となっており、複数の試験場を設けている大学の約半数の大学で配付トラブルが発生。

     

    2. 大学入試センターから大学への周知の状況

    • 入試担当者連絡協議会の回数、地区数、時間、会議の形態(全体会方式等)いずれについても「現行通りがよい」との回答が7割以上を占めている。
    • 同協議会における説明内容については、「実施提要全体(現行通り)」が64%を占めているが、実施要領及び監督要領だけを重点的に説明する等ポイントを絞った説明などの工夫を求める回答も26%ある。
  • 各大学に対する説明の方法や内容については、大学側はおおむね妥当と評価していると考えられるが、試験運営に関する具体的内容について各大学へ提示される時期が全体的に遅かったことや追加的な指示が試験直前まであったことを指摘する声があることに留意すべきである。

     

    3. 各大学における学内への周知の状況

    • 監督者説明会への出席率が9割以上と回答した大学は84%となっている。配付トラブルのあった大学は、なかった大学と比較すると8%低い。
    • 説明会欠席者に対し約7割の大学では担当者から個別に説明しているが、配付トラブルのあった大学で32%、なかった大学でも23%が資料配付のみ。
  • 試験監督者の選定や学内説明会の開催に大学独自の工夫や配慮を行っている事例も寄せられており、このような取組の温度差や動員できる教職員の数も影響していると考えられる。

 

    4. 試験監督者用マニュアル(監督要領等)の記載内容

    • 「監督要領」及び「問題冊子等配付確認表」における「2科目受験者・1科目受験者」等の用語が試験監督者にとってはわかりにくいとの回答が多数寄せられている。
    • 「監督要領」及び「問題冊子等配付確認表」においては、「試験開始前に2冊同時に配布する」との明確な記載がなかった。
  • 大学入試センターが大学向けの説明会で配付した説明用のスライドにおいては、問題冊子はすべて第1解答科目の開始前に配付することが記載されていたが、当該スライドを大学内での説明会で使用している大学は半数に過ぎず、十分に周知されていなかった可能性が考えられる。

 

    5. 問題冊子の形態

    • 「理科」の試験時間帯には配付トラブルは生じておらず、問題冊子が2分冊となっていたことが、トラブルの最終的な引き金となったと考えられる。

    6. 関係者の意識の問題

    • 監督者説明会への教員の参加意欲について「熱心に参加している」と受け止めている大学は半数程度であった。
    • センター試験の実施が「大学入試センターと大学との共同実施である」との認識について、「(試験監督者の)大半が認識している」と受け止めている大学は6割強であり、「共同実施との認識が少ない」と受け止めている大学も1割強存在した。
    • 配付トラブルがあった大学となかった大学との比較では、監督者説明会への参加意欲や共同実施についての認識において、配付トラブルがあった大学の方が低く受け止める傾向が見られた。
  • 大学としては自大学の個別入試よりも神経を使ってセンター試験に取り組んでいるとの意見があった一方、学内全ての試験監督者等までその意識が行き渡っていなかった面があるとの意見もあり、各大学内での温度差もあったものと考えられる。各大学の試験実施本部における認識が、学内全ての試験監督者等に共有されるよう周知徹底が必要である。

 

    7. その他実施体制、実施方法等全般

    • 試験当日の大学入試センターと各大学との連絡体制に関する対策が不十分であり、各大学内における緊急時の連絡体制にも課題があったと考えられる。
  • 今回の科目選択範囲の拡大という制度変更に対しては、高校での多様な学習の成果を発揮及び把握できるようにするという趣旨は理解され、受験者側及び大学側のいずれにとっても意義があったとの評価の声もあった。
  • 実施に向けた事前のシミュレーションや関係者との意見交換等の面で課題があったと考えられる。

 

(2)試験時間の繰下げ関係

    1. 試験監督者の説明内容と説明時間の設定

    • 試験開始前の説明等の時間が十分に確保されていなかったことが原因であり、事前に行った時間設定の検証が不十分であったと考えられる。

    2. 問題冊子の形態及び問題訂正紙配付の影響

    • 時間繰下げの理由として、約7割の大学が「問題冊子・解答用紙の配付に時間がかかった」と回答している。
  • 問題冊子の配付パターンが複雑化したことや、問題訂正紙の配付が必要となったことも時間繰下げが多発した一因と考えられる。

     

    3. 繰下げの心理的影響

  • 結果として60分間の試験時間が確保できたとしても、試験時間の繰下げによる受験生への影響に十分に留意すべきである。

 

(3)リスニング機器の輸送ミス関係

    1. 各大学内における問題冊子や試験用機器等の輸送体制

    • 各大学内の輸送に関し、独自の輸送要領を作成している大学は9割に満たず、1割強の大学が未整備となっており、早急な整備が必要である。

    2. 気仙沼高校試験場についての検証内容

    • 東北大学によれば、各試験場への仕分け時や問題冊子等の搬送時のチェック漏れ、試験場でのリスニング機器等の個数確認漏れが原因であったと分析。

(4)再試験関係

    1.  課題発生時における連絡体制

    • 再試験の当日に来場した受験希望者に対する対応については、大学入試センター内での意思決定プロセスに課題があったと考えられる。

    2. 再試験受験の意向等の確認方法

    • 大学入試センターにおいては、救済措置の対象者に漏れが生じないことを最優先に措置を講じたが、過剰な対応であるとの不公平感を主張する受験者もおり、公平性をどの程度まで求めるべきかという観点からの課題を残した。
  • 大学側との連絡調整に十分な時間がとれなかったこと等から、大学関係者に不満が残る結果となった。
  • 再試験に関する大学入試センターと各大学の連絡等においても、一部支障が生じていたとの意見もあり、連絡体制の面での改善も求められる。

 

(5)その他のトラブル等

    1. リスニングテストの実施方法

  • 平成24年度センター試験のリスニングテストにおいては全国で162名の再開テスト対象者が発生した。
  • リスニングテストについては、センター試験という枠組の中で行うことの必要性を疑問視する意見があった一方、高校教育や高校入試にも好影響を与えていると評価する意見もあった。

    2. 第1解答科目と第2解答科目の中間時間の設定

  • 「地理歴史、公民」及び「理科」の試験時間帯の中間時間におけるトイレ等による一時退室については、受験者に対する事前周知、各大学に対する対処方法や人員配置等についての指示が不十分と指摘されている。

 

2 再発防止に向けて

(1)試験監督者に対する周知方法の改善

  • 試験監督者向けのリーフレットや説明DVDの作成、Webによる情報配信等についても検討されるべきである。
  • 各大学における試験監督者に対する事前の周知徹底のため、複数回の説明会の実施、説明会欠席者に対する個別の説明等が行われるべきである。
  • 各大学に対する実施方法等の伝達を、可能な限り早期に行うことが必要。
  • 各大学の取組の好事例について収集し情報提供していくことも必要。

 

(2)試験監督者用マニュアル(監督要領等)の改善

  • 受験者への事前の周知、問題冊子への記載等の工夫により、試験開始直前の試験監督者からの説明事項等を簡素化する方向で改善が図られるべきである。
  • 平易で明確な記述となるよう、用語も含めた全体の記述についても見直すことも必要である。

(3)問題冊子の形態

  • 問題冊子の合冊化(パッケージ化して2冊の問題冊子を一律に全員に配付する方式とすることを含む。)が考えられる。その際、受験者にとっての扱いやすさ等を十分に考慮した上で決定することが必要である。

(4)試験時間割等の設定方法の改善

  • 試験開始前の説明時間等、試験当日のスケジュール設定に当たっては、大学入試センターにおいて十分なシミュレーションが行われることが必要である。
  • 中間時間におけるトイレ等による一時退出は原則認めないことを周知徹底するとともに、やむを得ず退室する受験者に対応できるよう連絡要員等の増員等について検討すべきである。
  • 試験開始前の説明等に要する時間については、延長するのではなく、説明事項等を精選する方向で検討すべきである。
  • 新学習指導要領の実施に伴う平成27年度センター試験以降の変更に際しては、今回の教訓を踏まえ、受験者に配慮したものとすることが必要である。

 

(5)各大学内での各試験場、各試験室への輸送の改善

  • 各大学ごとに改めて輸送体制について検証するとともに、マニュアル等の整備が徹底されることが必要である。
  • 複数試験場を設けた経験に乏しい大学が新たに試験場を設けた場合、大学入試センターから大学に対しアドバイス等を十分に行うことが求められる。

 

(6)大学入試センターと各大学の間の連絡体制の改善

  • 試験当日における各大学と大学入試センターとの連絡体制について、複数の通信手段の適切な組合せによる再構築を検討するとともに、大学入試センター内での意思決定プロセスの在り方等の検討が必要である。
  • 各大学内における連絡体制について、改めて検証を行い、必要な見直しを行うことが必要である。

 

(7)実施方法の検討プロセスの改善

  • 大学入試センターにおけるセンター試験の実施方法等の検討に当たっては関係者の意見を幅広く聴く機会を可能な限り設けるよう検討すべきである。
  • 試験実施後の検証についても恒常的に実施するとともに、次年度以降に向けた改善に反映することを一層充実させるべきである。
  • 各大学及び大学団体等においても、今回の様々なトラブルに関し主体的に検証を行うことが求められるとともに、センター試験に関し必要な提案等が行われることが期待される。

 

3 中長期的な課題等について

  • センター試験が徐々に複雑化していることが、今回の様々なトラブルの背景として考えられること等を踏まえ、センター試験の在り方について、今後、文部科学省において別途検討が行われることが望まれる。
  • リスニングテストについては、これまでの成果を検証することが必要であり、その上で今後の在り方についても検討すべきである。
  • センター試験の在り方も含めた入試制度全体の検討に当たっては、高校段階から大学卒業までを見通した高大接続の観点からの総合的な検討が必要である。
  • センター試験も含めた入試の内容・方法の変更に際しては、受験者の準備状況に対する配慮が必要であることから、中長期的な課題の検討に当たっては、周知や準備のための期間についても十分に留意して進めることが必要である。
  • 文部科学省においては、十分な対応が行われるよう大学入試センター等に必要な指導、助言を行うとともに、当分の間、定期的なフォローアップを実施すべきである。

 

※枠内は、大学入試センターの報告書に、本検証委員会として追加、充実させた内容

 

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