資料4 社団法人全国学習塾協会提出意見書

 センター試験に関する意見

社団法人全国学習塾協会

 「平成24年度センター試験に関する検証委員会」におけるヒアリングに関する主な意見は次の通りでございます。
 なお、本意見のうち『 』印の部分は、河合塾の大学入試情報サイト掲載記事(1月23 日付「センター試験大混乱再試験対象者数は約4千人」)より引用いたしました。

(1)今回発生したトラブルについての受け止め

○実施要項変更点の運営側への周知不足が原因と考えられるので、今後このようなトラブルが起こらないよう対策を考える必要がある。制度変更により配付ミスは想定されていたこと、問題が発生したときの対応マニュアルが充分ではなかったのではないか。
また、再試験という措置が取られるような大きなトラブルを起こさないことは勿論のこと、配付時のもたつきなどによる数分の試験開始時間の延長であっても、その日のために頑張ってきた受験生を動揺させ本来の力の発揮を妨げ得る結果となっている。

○『「地理歴史」と「公民」は同一時間帯の実施となったものの、大学入試センターが「地理歴史と公民は別教科として扱う」ことに拘ったのが混乱の始まりだったといえよう。当初、大学入試センターが事前教科登録制の導入を発表した際は、受験生には「地理歴史・公民」として登録させる予定であった。しかし、昨年7月に高等学校や予備校に対して行われた説明会にて、突如別教科として登録させるよう変更した。加えて大学入試センターは、登録した教科の問題冊子しか配付しないようわざわざ変更したのである。結果としてこの変更が裏目に出た形となった。』

○ある学習塾の通塾圏内ではK大学での試験時間繰り下げなどのトラブルがあったが、受験生からは休み時間が減ったという声も多く、気持ちの面で動揺があり実力が発揮できなかったというようなことも聞いた。こうした試験時間の繰り下げが全国48会場で、また問題冊子の誤配付が全国81会場で起こったことを考えると、トラブルとしては大規模であり、再発防止に努めてもらいたい。

(2)トラブルの発生原因についての見解

○マニュアルの「徹底」不足と、試験運用経験の少なさによるスタッフの個人判断のミスではないか。同時に受験者においても複雑な制度であったため、理解が不十分だったことも考えられる。
また、会場担当者の曖昧な対応において以下のような被害が出ている。ある生徒は文系5-7科目で出願をしていたが、志願変更で私立文系にしたため、センターの受験科目も3-3科目で受験に切り替えていた。そのため、当日は社会2科目めの開始時間に合わせて会場に向かったが、元々5-7科目出願をしていたため、社会2科目受験扱いのままだったので、教室に入れなかった。その際、会場の担当者から「きみはもう試験は受けられない」と言われたそうで、本人は諦めてそのまま帰宅してしまった。対応した担当者の一言に「社会は」の一言があればよかったが、その言葉がないがために「すべて受験できない」と生徒は受け止めている。
大学入試センターの案内を読むとこのケースでは社会の受験は出来ないことになっているが、その後の国語、英語は受験可能であった。にもかかわらず、当該生徒は受けずじまいであった。
生徒本人が帰宅後試験会場の担当者に確認をしたところ、そのような案内はしていないとの回答が返ってきており、納得の出来ない状況である。

○『「地理歴史・公民の問題冊子の配付ミス」「答案回収時間帯のトイレ希望者の退出」は、いずれも試験監督者の実施方法変更に対する理解不足によるものである。
ミスが多発した「地理歴史・公民」は、事前に受験生が登録した教科のみの問題を配ることが徹底されていなかった。一見、単純なことに思えるが、同じ試験室内に地理歴史2科目の受験生と地理歴史1・公民1の受験生が混在するなど、受験生によって配付内容が異なることが監督者を混乱させた。監督者には、受験者別にどの問題冊子を配付するのかが分かるリストが配られていたものの、全く無視された格好となった。』

○『今回の実施方法の変更に伴い、大学入試センターは「地理歴史・公民」「理科」で1科目を120分使って解答するようなケースを防ぐ措置として、センター試験を利用する大学・短大へ「地理歴史・公民、理科を1科目課す場合は、第1解答科目の得点を採用するよう」要請した。この要請を受けて、国立大のうち、「地理歴史・公民」「理科」を利用する大学では福島大を除く全大学が第1解答科目の成績利用を決めた。公立大でも半数以上の大学が、私立大でも早稲田大や同志社大など一部の大学が第1解答科目の成績を利用する。
この結果、受験生にとって「地理歴史・公民」「理科」科目の受験順序は非常に重要なものとなった。科目の受験順によって、合否判定に用いられる得点が変わるからである。また、理科総合や地理歴史A科目、公民科目といった科目の利用を認めない大学があり、指定以外の科目を第1解答科目で受けると出願できないケースが出てくる。
今回のセンター試験では、試験監督者は試験の実施方法の変更に加え、前述のような大学側の成績利用方法の変更、それに伴う受験生への影響まで理解したうえで、運営に臨む必要があった。受験生に対しては「出願時に受験教科・科目数を登録させる」「第2解答科目は一部の大学で成績利用できない」といったさまざまな制限を強いておきながら、試験を実施・運営する側で制度変更やその背景について理解の徹底がされていなかったのは残念でならない。』

○今回理科・社会において科目選択方法で大きな変更があったが、それについて、
 1.トラブルの予想と対処法のシミュレーションが不十分であったこと
 2.問題冊子の構成に欠陥があったこと
 3.大学入試センターと実施会場(大学)側との連携ミス
などがトラブル発生原因として考えられる。
1.については、大学入試センター自体2011 年度のシミュレーションを不十分な形でしか実施していなかったことから、それが実施会場での試験監督者の対応ミス、遅れという形になって表れたのではないだろうか。
2.については、問題冊子が1 冊にまとめられていた理科では社会ほどのトラブルは起きていないことから、「地理歴史」「公民」を別冊にしたことの影響が大きく出たといえる。
3.については、大学入試センターと大学側の共同実施という点で、両者間に何らかのトラブルになる盲点があり、事前に想定できなかったのではないだろうか。

○年々、センター試験のシステムは複雑になっていることは確かであると思うが、これは受験生側のニーズを反映させていると同時に、大学側の要望を取り入れ、より良い入試を追求している結果である。それを、ミスが起こりやすいシステムと決め付けて、受験生(もしくは大学側)の科目選択の幅を狭めたりすることは本末転倒だと思われる。

○新聞記事などを読むと、ミスの内容は大きく分けて2つ。配付時間の遅れによる試験時間の変更と配付の方法(地歴冊子と公民冊子の2冊を配るべきところを1冊のみ配付)。
配付時間の遅れは、事前説明時間と配付にかかる時間を計測して準備すればよい。配付方法のミスも単なる試験監督の不注意で、決して選択科目システムのせいではないと思われる。大学入試センターは、今年度のトラブルを改めて各大学に伝え、各大学が試験監督に対してミス防止のポイントを十分研修すれば解決できる範囲であると思われる。

(3)考えられる改善方策

○『今年度のセンター試験で、2万人以上が関わるといわれる実施・運営関係者全員に実施方法の理解と徹底の難しさが、あらためて浮き彫りになった。
当然ながら、大学入試センターには実施方法の再検討をお願いしたい。今回のトラブルは前述のようなさまざまな要素が絡み合い複雑化している。これを紐解いていく必要があるのではないか。
まず、配付ミスが多発した「地理歴史・公民」については、全受験者に両教科の問題冊子を配付することをお願いしたい。運営上の配付ミスを考慮すれば、あわせて1冊となることが望ましいが、冊子の厚さの関係上で分冊となったとしても全員に2冊配付すれば問題はなかろう。1科目受験者についても、2科目受験者と同様に両教科の問題冊子の配付を要望する。』

○『受験教科の事前登録制について、再検討をお願いしたい。事前教科登録制を導入したのは「地理歴史」「理科」の1科目受験者と2科目受験者の試験教室の割振りが最大の理由であろう。加えて、各教科の問題冊子部数がある程度計算できることも理由であろう。しかし、事前教科登録制の導入に伴い、受験生の受験教科・科目の決定は、従前であればセンター試験受験時でよかったのが、センター試験出願時(10月)に前倒しされた。特に別教科扱いとなっている「地理歴史」と「公民」から2科目の受験を考える場合、「地理歴史2科目」「地理歴史1科目・公民1科目」「公民2科目」のいずれで受験するのかを決める必要がある。大学によっては指定教科が異なるため、出願可能校が絞り込まれることになる。事前教科登録制はあくまでも試験実施運営側の都合上で導入されたものであり、受験生側の視点に立てば、ただ制限が多くなっただけである。そこで、「地理歴史・公民」「理科」の受験科目数を除いては事前登録の撤廃をお願いしたい。少なくとも「地理歴史・公民」は1セットとして登録するよう変更していただきたい。』

○『出願時に誤って登録した内容が変更できないことは問題である。センター試験出願後に、大学入試センターから受験者には登録内容の確認ハガキが送付される。その際、氏名や住所などについては誤りがあれば修正が可能となっているにも関わらず、登録教科については一切変更を受け付けないという。仮に、ほとんどの国公立大で必須教科となっている外国語の登録を誤れば、受験生にとってその年の国公立大受験は不可能となる。それほど、現在の大学受験においてセンター試験の重要度は高い。この確認ハガキ受け取り後に受験教科および科目数の修正が可能となることをお願いしたい。』

○ 2013 年度は「地理歴史」「公民」について合計10科目から1もしくは2科目を選ぶという形式自体は変わらないとされている。そうであれば運営面で前掲1. 2. 3.の要素をなくすよう改善を行われるべきではないか。
1.についてはまず大学入試センターが何度もある程度の規模でシミュレーションを行うべきなのは当然である。その上で問題冊子の配り方でミスが出る、もしくは時間がかかる部分をなくすよう会場ごとに検討すべきである。また最終的な部分ではマンパワーで解決しなければいけない問題であるので、現場の試験監督者が動きやすいようマニュアルも改める必要がある。
2.については思い切って理科と同じく問題冊子を1冊にまとめるべきであろう。また時間をずらすというような抜本的な改革も考えるべきではあるが、もしそれがかなわなければ会場をはっきりと区別すべきであろう。
3.については、事前の準備と連携を強化していただくしかないと思う。

○運営に携わる担当者全員が実施内容について正確に把握できるよう、徹底した研修とシミュレーション(リハーサル)を行う。

○問題発生時のサブウェイの構築

○充分な数のスタッフの配置

○問題の総合冊子化

○試験運用ノウハウのある、予備校での実施または予備校担当者を試験監督に採用

○学校、学習塾、予備校等による出願者(受験する側)の理解を深めるためのガイダンス・説明会の実施

(4)その他センター試験に関する意見・要望等

○『2015 年度には新教育課程に対応した入試科目の変更が行われる予定である。特に理科においては複雑な科目の選択方法となることが既に発表されており、今年度と同様に混乱の要因となることも懸念される。今年度の実施結果を踏まえて、科目の設定も含めて再検討を行ってもよいのではなかろうか。』

○これだけ大規模な試験は他に例を見ないが、注目度も高く影響も大きい試験の性質上、細心の注意が求められる。十分な準備と連携をとって再発防止に努めてもらいたい。

以上

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