薬学教育モデル・コアカリキュラム改訂に関する専門研究委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成23年10月25日(火曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省東館16階 16F2会議室

3.議題

  1. 今後の薬学教育モデル・コアカリキュラムの在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

市川座長、太田副座長、吉富副座長、赤池委員、伊藤委員、井上委員、奥委員、平井委員、松原委員、森委員

文部科学省

奈良大臣官房審議官、村田医学教育課長、渡辺企画官、小野医学教育課課長補佐、伊東薬学教育専門官、大林技術参与ほか関係官

オブザーバー

厚生労働省 医薬食品局総務課 中井課長補佐

意見発表者
松木則夫(公益社団法人日本薬学会薬学教育委員会委員長)

5.議事録

【市川座長】
 それでは、定刻になりましたので、この第3回の委員会を開催したいと思います。
 それでは、まず、事務局から委員の出席状況と、配付資料について確認をお願いしたい。
【伊東薬学教育専門官】
 本日の委員の出席状況でございますが、本日御欠席の委員は井関委員、入江委員、長野委員、中山委員、奈良委員ということで5名の先生となっております。また、本日、ゲストスピーカーといたしまして、日本薬学会薬学教育委員長の松木則夫様においでいただいておりますので、御紹介させていただきます。
 それでは、本日配付の資料を確認させていただきます。資料の議事次第に従いまして、まず、資料1が日本病院薬剤師会からの提出資料でございます。資料2が日本薬剤師会からの提出資料、資料3が日本薬学会からの提出資料でございます。資料4が薬学教育モデル・コアカリキュラムの基本理念と利用上の留意点について(たたき台)。資料5が薬学教育モデル・コアカリキュラム調査研究チームで実施するアンケート調査骨子(案)ということとなってございます。
 また、委員の先生方のお机の上には、前回までの資料及び医学、歯学、薬学のコアカリの冊子を置かせていただいております。
 以上でございます。
【市川座長】
 それでは、議事に従って進めさせていただきます。前回の委員会では、薬学教育モデル・コアカリキュラムの改訂について、医学、それから看護学、薬害被害者の立場から、薬学教育モデル・コアカリキュラムについて求めるものについても御意見を頂いて、それをもとに委員同士の意見交換をしたということであります。
 本日は、その最後のときにもお約束したとおり、職能団体であります日本病院薬剤師会、それから日本薬剤師会、そして学会関係者として日本薬学会からも御意見を伺うことといたします。その後に調査研究チームで委託する内容について御審議いただければというように考えております。予定は12時半ということで、時間厳守でいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それではまず、職能団体からの御意見を伺うことにいたしまして、各団体様にお願いしたのは、薬学教育モデル・コアカリキュラム全般についての御意見を頂くこととしておりますけれども、最後に薬学教育モデル・コアカリキュラムの基本理念、位置づけ、基本的資質について触れていただくよう、お願いいたします。
 まず初めに、日本病院薬剤師会としての御意見を日本病院薬剤師会の常務理事の松原さんにお願いいたします。この委員会の委員でもいらっしゃいますけれども、団体の立場からということでお願いしたいと思います。それでは、お願いいたします。
【松原委員】
 それでは、日本病院薬剤師会としてのスタンスを少しお時間頂いてしゃべらせていただきます。トップバッターで何をしゃべっていいのかよくわからないんですが、考えていることを述べさせていただきます。
 前回までの話合いでもあったように、今回6年制のモデル・コアカリキュラムを中心につくるということで、今まで非常にオブスキュアであって、どういう薬剤師をつくっていくのかということがはっきりしていなかった。ただ、6年制になる過程で、物から人への薬学教育の転換だということが明示されていたと思いますが、それを薬剤師像に置きかえたわけで、現在から将来にわたって必要とされる薬剤師像を少し書いてみました。それは少し病院に偏ってはいますが、いわゆる医薬品を供給する専門職から、患者の様々な病態における医薬品の使用を包括的に管理し、薬物療法の安全性、有効性を保障する専門家ということでございまして、これは病院のみならず、保険薬局においても院外処方せんが患者側に立って、その有効性、安全性が担保されなければいけないという意味では、保険薬局も含んだチーム医療でございますので、そういった医療の中で一番大きな視点は患者の薬物療法である。それを担うのが薬剤師であるということです。
 これは私の範囲外ですが、保険薬局の先生にはやはり、これも大事な柱ですが、セルフメディケーションとか、あるいは在宅医療への積極的な関与も担っていただいて、医薬品全般にわたる薬剤師の役割というものを最初のページに書かせていただきました。
 次のページにいきまして、3枚目になりますが、これは昨年度行った実習の中で、なかなかできなかったものをピックアップしたものでございます。病院においても薬局においてもできなかった項目は非常にたくさんございますが、例えば赤で書いてありますようなところで、12.8%の服薬指導ですが、例えば病院ではほとんど90%以上の病院が院外処方せんを発行しているにもかかわらず、窓口での服薬説明というのはなかなかできづらい。下の注射のところで、抗悪性腫瘍薬ですが、現実的にがん化学療法をやっている病院は半数にしかない。
 次のページにいきますと、例えば院内製剤加算と書いていますが、院内製剤加算を算定している施設は1割しかない。次のTDMですが、TDMの測定までやっているところは2割もない。もちろん外注したものを解析するところを含めると6割弱になりますが、国立大学の附属病院ですらTDMの測定しないところは現実的にはございます。理想を言えば、すべてやることは必要かもしれませんが、現状段階では中規模病院、時には小規模病院でも学生を実習して教育しなくてはいけませんから、コアカリの中でこのように多くの病院でできない項目があるということは非常に問題であろうというふうに認識しております。
 次のスライド、5ページ、3枚目に行きますと、そういった指導できなかったものに対してどう対処したかというと、未履修のままにしたとか、他施設で行ったとか、集合研修、大学に対応を依頼した、こういうもの以外にも実は、実施したという中でも課題を与えたグループディスカッションであったり、あるいはそのためにだけに用意した院内製剤の実習フォーマットといったふだん業務としてやっていないことを実習のために実習のようなことを別にやって、現状に至っていると思います。薬局においてとしても、例えば学校薬剤師の部分というのは5割以上が他のところに委託しているわけで、そういった実態がございます。
 それから、もう一つ指導薬剤師から指摘されている事項としまして、病院で病棟に学生を連れていくと、医師や看護師とディスカッションすることが多いわけですけれども、基本的な専門用語がわからないために会話が成り立たないということが多うございます。こういったものに対して事前学習あるいは少し早めの導入実習といったもので基本的な言葉を身につけてから病院や薬局――これは疑義照会でも同じですが――していただいたらよかろうかというふうに思っております。
 その次ですが、7番目、これは昨年2月に薬学教育協議会が主催されましたフォーラム2011の中で学生の意見として出てきたものですが、赤が意味があるわけではないですが、現場でしか得られない体験がしたい、患者さんと接する機会を多くしてほしい、機能の異なる病院を何箇所か回りたい、あるいは赤にしていませんが、オプションがあってもいいのではないかとか、実習期間は適正なのか、もう一つ、我々非常に痛いわけですが、病院により内容の格差が大きすぎる。こういった問題があるかと思います。最初の1回目のときに申しましたが、コアカリキュラムは国家試験の出題範囲とも重なっておりますので、こういう格差が生じるということはやはり好ましくないだろうというふうに思います。
 これも前回話になりましたが、8番目の方略ですが、こういうふうに時間を非常に丁寧に書いていただいたことによって、次のページにいきますと、こういった時間割表がもうできてしまって、多くの大学ではこういう実習をしてしまう。薬局実習をやってきた学生であるにもかかわらず、あるいは初めが病院実習でも、ほとんどが調剤部門での仕事が多くなってしまって、学生さんの実習を受ける意欲というものが損なわれてしまっている。そういった結果になってきているかと思います。これは工夫すれば、その下は私の病院でやっている実習で、ちょっと黄色で網かけしたのがお手元の資料では余りわかりませんが、8割方は病棟で実習させて、例えば患者に関する院内製剤を薬剤部本体で行うとか、TDMを行うとか、そういうすべて患者に結びつけた形でやろうと思えばできるんですが、なかなかそれは明記されていないために現状では上の方の、9枚目のスライドのような実習が行われていることになります。
 次、めくっていただきますと、現行のモデル・コアカリキュラムです。三角にされているところは、要は、どちらにもある項目で三角になっているんですけれども、見ていただきますとわかりますように、特殊な配置を要する医薬品、同じようなものが薬局にもあって、全く同じなわけです。この三角の数は病院のSBOs108個のうち41個、薬局の114のうちの52個もあるわけです。ですから、これはやはり結局LSの方略では三角に入れてあるわけですから、同じことを半分以上ダブってやっていることになってくるわけです。もちろん細かなところでは、薬局で行う調剤と病院で行う調剤は違うかもしれませんが、基本的なものは一緒ですので、同じことを繰り返すことになってしまいます。
 12ページ目の調剤のところも見ていただきますとわかるように、ほとんど全部三角で、言葉が少し変わっている程度でございます。これはやはり改善してSBOsが重ならないようにしなければ、うまい実習はできないだろうというふうに考えています。
 13ページは、これはどうしようもないんですが、就職活動をどうするかということは今後皆様方に考えていただきたいと思います。
 14ページ目から、これはもう単なる参考程度ですが、アメリカの6年制の薬科教育の例を、その後4つぐらい大学を挙げて示してあります。非常に長い時間、大体10か月以上の実習期間があるわけで、例えばその次の15ページ目がノースカロライナですが、1年と言わず3年という意味ですけれども、導入実習の後に4年生でアドバンスをやることになって、アドバンスの中にも必須と選択が設けられているということです。下の、次のキャンベルも、その次のページのUCSFも同様なカリキュラムをとっております。UCSFの場合は少し違って、Pharmaceutical Care pathwayというのとResearch pathwayというのとPharmaceutical Sciences pathwayという三つのpathwayによって少し実習の内容が行っておりますが、基本的には同じことかと思います。18ページはネバダで、これは5年制の数少ない薬学部のカリキュラムでございますが、実習の長さはほとんど同じで、夏休みを短くしたり、いろいろな工夫をして実習時間あるいは講義等を担保している状況でございます。
 その次にいきまして、実習の特徴と実際というので、二つほど病院と薬局の分を挙げましたが、病棟での実習が病院では多いし、薬局の実習は、アメリカの場合は薬局の役目がかなり違っておりまして、要するに、予防接種とかあるいは患者カウンセリング業務、Medication therapy managementと呼ばれているような、州との契約によって健康管理を契約して行うといった、いわゆる健康維持あるいはセルフメディケーションに関する部分が非常に多くなっているのが特徴かと思います。
 21ページに行きまして、では、現行の制度問題は何かということにもう一度返ってみると、先ほど言いましたように、つくられたときから随分変わってきて、そもそも病院で行われていないものもあるし、例えばTDMとか院内製剤のような多くの実習病院でなかなかできないものもたくさんあるし、こういったものは集合研修とかいろいろな工夫をして大学でやるのと大して変わらない、血中濃度をはかって解析するという程度であればどこでもよかろうというように思います。できれば病院で本当に患者に直結したものが一番よろしいのですが、理想論を言っているわけではなくて、現実の実習を考えるとなかなか難しいであろうということでございます。
 22ページ目が基本理念と位置づけでございます。基本理念、位置づけは何ら医学と変わりございません。ここの中の文章は医学コアカリキュラムの中の基本理念と位置づけを、医学を薬学に置きかえた、その程度でございまして、スタンスは医療人としてのスタンスですので、ほとんど変わらないという形で医学教育コアカリキュラムに則して書かせていただきました。
 次からですが、次の基本的な資質です。これも医学教育の中の医師の基本的な資質とFIPのセブンスターファーマシストを合体させましてつくらせていただきました。薬剤師の職責は医師と同じ。患者中心の視点も内容的には同じでございます。コミュニケーション能力に関しましては、FIPのものを加えて、そこに書いてありますように、文章にしております。チーム医療というのは医師とほとんど同じ。薬学的ケアの提供は新たにつけ加えましたが、こういう具体的な薬剤師の職責について述べました。地域医療に関しても少し言葉を追加しています。薬学研究への志向は医師の医学研究への志向を薬学に合わせたもの、医薬品の合理的使用を提案するためにエビデンスに基づく情報を効果的に活用しなければならない。そのためには薬学、医療の進歩と改善に資するための研究を遂行する意欲と基礎的素養を有する、という言葉をつけさせていただきました。自己研鑽も、医学のところの生涯にわたり自己研鑽を続ける意欲と態度を有する、というところの前に少し、学生の間ですべてを習得することはできないので、学生の間にそういった生涯学習で身につけるものを得る意欲を有するような文章に書きかえさせていただきました。最後の教育者というのは、医学教育にありませんでしたが、FIPの文をとりまして、大事なことですので、教育者であるべきであるといった資質を加えさせていただきました。大きく見てそんなに医学教育と変わらないと思います。
 次に、望ましいモデル・コアカリキュラムとはどういうものかというものを24ページに示させていただきました。基本的に実習は患者を中心とした実習といったようなコアカリに変えるべきであって、将来どのような勤務先に就こうと、企業であろうと、保険薬局であろうと、あるいは行政であろうと、薬剤師として基本的な経験を学習する。それは患者との接点で得られるものであろう。患者を必要としない項目は事前学習あるいは集合研修あるいは導入実習でよかろうというふうに思います。今分かれている病院実習、薬局実習は分ける必要はないと思っております。一本化してそこの中で病院が担う部分と薬局が担う部分に分けてしまうことによって、SBOsを重複させなくてすむだろうと思っていますし、今までのSBOsがお互いのやっている仕事の内容も全部つぎ込んだという内容になっていますので、そういった意地の張り合いのようなものは避けるべきだろうというふうに考えています。
 事前学習を拡大する。これは導入学習をしても構いませんし、アドバンス学習、実習をしても構いませんが、先ほどから申し上げていることと同じで、実習受入れ機関で、ほとんどの受入れ機関で可能な実習内容に変えていって、それ以外は集合研修あるいは事前学習に回す、あるいはコアではなくてアドバンスの実習に回していくというふうにすればいいのではないかというふうに考えます。4番目の実習期間の見直しは先ほどアドバンスも含めて、やはり少し多様性があってもいいんだろうと思います。あくまでもコアはコアであるべきだと思います。
 次は私の私的な意見で、必ずしも病院、薬剤師会の見解ではございませんが、一つの問題提起として言わせていただければ、いろいろ学生とも話し合ってきましたが、2.5、2.5の必要性はないだろう。やはり患者を視点として考えたときに、どちらの仕事が大事か、大事でないかという問題ではなくて、薬学生が医療を学ぶという意味でいけば、やはり病院のウエイトと薬局のウエイトというのは異なってしかるべきだし、それがやはり学生に対して真摯な実習を提供するということになるんだろうと思います。したがって、私案として、僕はコアの実習は4か月でいいんではなかろうかと思います。で、薬局、1から1.5、病院、2.5から3ぐらいが適当かと思います。残った分を集合研修にするとか、あるいはアドバンスの実習として薬局に興味ある人は薬局でやればいいし、病院でやってもいいというふうに思っています。それと、様々な機能があるわけですから、様々な形態の病院とか薬局を学生さんに学んでもらうのも必要かと思います。
 最後の3枚ですが、あとは例として、先ほど言いましたように、あえて病院薬局を区別せずに、例えば病院実習はベッドサイドで学ぶ、チーム医療への参加、こういった患者中心のものであって、薬局はカウンターで学ぶ、カウンターでの薬局の患者さんとの触れ合い、服薬指導、在宅医療あるいはセルフメディケーションといったものを主体にして、将来あるべき薬剤師像のコアを学んでいただきたいというふうに考えております。
 最後のものですけれども、多様性を持たせるために、あるいは学生さんの選択を持たせるために、半月とかあるいは1か月間ぐらいアドバンスがあってもよかろうと思います。こういった学生さんたちの要望にこたえるためにアドバンス実習を設ける。これはなかなかスケジュール的には工夫が要って難しい面はあるかと思いますが、考慮していただくようなことはあってもいいかというふうに思っております。
 以上でございます。
【市川座長】
 ありがとうございました。非常にいろいろな御提案を頂きまして、先生方、いろいろな御意見があるかと思いますけれども、今ここで何かご質問いただけることがありましたらどうぞ。
 考え方としては、実習の内容としてコアがあってアドバンスがあるというような大きな概念をつくってよろしいでしょうか。
【松原委員】
 アドバンスは必ずしも必要ない可能性もあるかもしれませんが、やはりコアは絞らないと、学生間での不満、不平が強くなるでしょうから、やはりコアである限りであれば、実習施設でできなければいけないわけですから、現状での薬局、病院の実習施設の中で行えるものがコアでないと難しいだろうというふうに。他施設に依頼するとできているところに集中してしますから、なかなかそれは難しいと思います。
【市川座長】
 どうぞ。
【赤池委員】
 赤池ですけれども、大変重要な御提案を頂いたと考えております。もともとコアカリキュラムというのは、特に専門教育については、大体7割程度をコアとして、残りの3割程度は大学独自のカリキュラムを組むということで現在運用されていると理解しています。
 その点、少なくとも私の理解が正しければ、先生のお話にもありましたが、現行の病院、薬局実務実習というのはそういったオプションが極めて少なく、かなりがっちりと組まれています。その点、アドバンスト実習ということが御提案に入っていましたけれども、そういったものは大学独自というわけではないかもしれませんが、いわゆる3割程度の自由なカリキュラムの中に入るものと考えてよろしいのでしょうか。
【松原委員】
 いや、そのとおりだと思います。それは大学の独自性があってもよろしいですし、学生の選択があってもよろしいでしょうし、受入れ機関の独自性も多少あってもいいかとは思います。
【市川座長】
 では、伊藤先生。
【伊藤委員】
 昭和大学の伊藤ですけれども、この薬局と病院の重複を除くというのもすごくいい案だとは思うんですけれども、現状では薬局が先か病院が先かというのを学生が選べないわけですね。そういう場合にこの重複を全部除いてしまうと、要するに学ぶ順番としての適正がなくなるんじゃないかという感じがするんですが、そこに何かアイデアありますか。
【松原委員】
 いや、何も薬局調剤が先じゃないと困るとかいうのが、現実的には僕はないと思うんです。もちろんその方が好ましいことは好ましいですが、調剤での技術とかそういったものは少し異なるものがございますし、病院から調剤を外したとしても、全くやらないわけではなくて、1日とか2日とかそういうものは、概略は病院の流れとして見るわけですから。それは好ましいか好ましくないかという程度で私はどちらであっても、やろうと思えばできると思います。どちらが先であったとしても。
【市川座長】
 事前学習のところにもう少ししっかりしたものをやらないと、今のような場合に、実際に現場に行ったときに、いわゆる基本的な、一番必要なものというか、それを学生が満たしているかどうかというのは少し問題が出てくるような気がするんだけれども。例えば非常にたくさんの学生がいて、いろいろな形の学生がいて、それでどちらでもという形になりますと。
【松原委員】
 ですから、一つの案としては事前学習を拡大するということだとは思います。そういうときに、現場の薬剤師が必要であれば、現場の薬剤師が出向いていって、大きな病院に負担がかかるという話もございますが、大学の中で病院薬剤師が技術的なサポートとしながら事前実習をするとか、あるいは3年次、4年次に導入実習、今でもやっているところは、見学というのはどこかありますが、そういうものを短い期間入れるとか、いろいろなモチベーションを高めていく方法としての導入実習というのもあってもよかろうとは思います。
 又は、うまい具合にスケジュール管理をしていくには、かなりタイトなところはありますけれども、方策としてはできるかと思います。
【市川座長】
 ほかに何かご質問。
 そうしたら、先に次のところに進めて、また両方団体の御意見を頂いた上で、もう一度議論したいと思います。
 それでは、次に、日本薬剤師会としての御意見を日本薬剤師会の常務理事の森さんにお願いいたします。森さんももちろんここの委員でいらっしゃいますけれども、団体の立場というところからお願いいたします。
【森委員】
 日本薬剤師会の森でございます。薬局、薬剤師の立場で少しカリキュラム全体に関しての意見を中心に述べさせていただきたいと思います。
 パワーポイントの2枚目ですけれども、今日モデル・コアカリキュラムの意見ということで述べさせていただく内容がまとまっております。1ページめくっていただきまして、パワーポイントの3枚目から5枚目ですけれども、平成13年に私立薬科大学協会、それから国公立大学薬学部長会議の方でモデル・コアカリキュラムを公表しました。これからモデル・コアカリキュラムの作成、公表を含めてまず6年制の教育関係の動き、それから、この10年ですけれども、薬剤師にとって、これは教育にとってもそうかもしれませんけれども、非常に大きな方向性を決める議論が行われてきたように思います。それに伴って、法律、制度等の改正が行われており、主なものを資料の中に入れております。平成14年に、日本薬学会の方から、それまでの私立薬科大学協会と国公立大学薬学部長会議のモデル・コアカリキュラムを一緒にした薬学教育モデル・コアカリキュラムが公表されました。そして平成15年には、実務実習のモデル・コアカリキュラムが完成して、その同じ年に医療保険制度改革の基本方針が、確か3月だったと思いますが、閣議決定されております。そして、平成16年に6年制が決まって、翌17年には、今後の医療の方向性を決める、医療制度改革大綱が12月厚生労働省から公表されております。
 平成18年から6年制がスタートしましたけれども、ちょうどその18年に、医療法等の一部改正する法案が可決成立して、私たち薬局にとって一番大きい動きとしまして、薬局が医療提供施設として位置づけされております。それから、安心、信頼の医療の確保という視点から、薬局における安全管理体制の整備、薬局機能情報の公表制度ができ、また、高齢化に伴って在宅医療の推進、医療費適正化という点で患者の居宅等での調剤が可能になりました。ちょうど私が大学で習ったころは、薬局以外調剤をしてはいけないということを習っていたものから、外来と、それから入院というものから居宅での調剤ということが入ってきております。そして、医療提供体制の確保に関する基本方針が適用されて、平成20年から各都道府県で新たな医療計画に従った医療計画が実施されております。それから、平成20年には薬剤師の行政処分の類型に戒告というものが加わり、そして行政処分を受けた薬剤師の再教育の義務化が行われております。そして平成21年に薬学共用試験がスタートして、医薬品販売制度の改正も行われています。平成22年に長期実務実習がスタートして、チーム医療の検討会報告書がまとめられております。来年3月に第1期の学生が卒業して国家試験が行われることになっております。
 本当にこの10年を見ると、薬剤師を取り巻く環境はすごく大きく変わったという実感であります。ただ、そうはいっても、6枚目のスライドを見ていただければと思いますが、薬剤師の任務というのはいつまでたっても変わるものではないと思っています。調剤、医薬品の供給、その他薬事衛生をつかさどることによって、国民の健康な生活を確保することです。次のページを見ていただければと思いますけれども、では、薬剤師の養成教育を考えたときに、まずは自分たちの任務を果たす薬剤師を養成するんだ。先ほどから出ていますけれども、では、薬剤師に求められる資質を検討する必要があるのではないか。そして、その資質に基づいて、では、卒業時までに学生がどのような実践的能力が必要なのか、それを設定する。そしてその上でカリキュラムを組み上げていったらどうかと思います。この考え方がOutcome-Based Educationと言われております。
 一つスライドを飛んでいただいて、9枚目のスライドを見ていただきたいと思います。Outcome-Based Educationに関しては、Spadyという人とHardenという人が定義しております。Spadyの定義によれば、卒業時の達成目標からそれを達成するようにカリキュラムを組み上げることと定義しています。それから、Hardenもほぼ同じ考えですが、卒業目標を設定して、それを達成できるように目標、方略、評価など、教育全体をデザインする。それから、卒業目標を達成できるように1年次から順次性のある学習目標を設定するらせん型のカリキュラムと定義しています。
 もう一度8枚目に戻っていただきまして、現在のモデル・コアカリキュラムですけれども、基礎、臨床、事前学習、実務実習、卒業研究ということで、多分これは下から組み上げてつくったのではないかと思います。ただ、このOutcome-Based Educationという考え方によれば、任務を果たす薬剤師に求められている資質、その資質を習得するために、では、卒業時にどういう能力が必要なのか。そのことからカリキュラムのプランニングをしていったらどうかということになっています。
 それで、10ページを見ていただければと思いますが、では、薬剤師の養成教育をこのOutcome-Based Educationの考え方で組み上げてみますと、まずは基本的に自分たちの任務というものがあります。そして、時代によっても、社会のニーズにこたえられる薬剤師を養成しなければなりません。そうした中で薬剤師として求められる基本的な資質は何なのか、そして、実務実習で身につける能力は何なのか、では、事前学習での到達目標、臨床教育での到達目標、基礎教育での到達目標を設定する必要があるのではないかと思います。
 そういう中で、このOutcome-Based Educationの有用性ですけれども、一つは、やはり順次性のある6年間の一貫したカリキュラムが作成できることではないかと思います。それから、当然学習項目の重複、欠落が上からカリキュラムを組むことによってなくなること。それから、学生、教員双方にとってもわかりやすいことがメリットではないかと思います。
 次のページに行っていただいて、実は、薬学教育の偏りということで、モデル・コアカリキュラムをずっと眺めていて、以前からちょっと心配していたことですけれども、自分たちの任務ということは調剤、医薬品の供給、それから薬事衛生ということですけれども、下を見ていただくと、教育の偏りということで、力を入れる視点が違うのか、どうしても見る視点が調剤中心になってしまうのか、調剤に教育のウェートが大きく行き過ぎているように思います。
 次のページを見ていただければ、13枚目ですけれども、これは一般用医薬品に関してのカリキュラムだけを抜き出したものになっております。事前学習までに学ぶところですけれども、まず、学生は講義等でC18、薬学と社会の中でOTC薬やセルフメディケーションに関して以下の1、2、3というものを学びます。ところが、事前学習の中では、一般用医薬品に関しての項目はありません。そして、実習先に出て、薬局カウンターで学ぶということで、例えばセルフメディケーションのための一般用医薬品などを適切に選択できるということを実習するわけですけれども、このことを支える教育というものが事前の中で行われていません。Outcome-Based Educationの考え方でカリキュラムを組むことによって、順次性のある6年一貫のカリキュラムを作成できることと、例えば学習項目の欠落をなくすこともできるのではないかと思います。
 ところが、もう一つは、9番目ですけれども、私がちょうど大学を卒業するころは、調剤業務という点では、第三世代に入ったところでした。ところが今は第五世代に入ったと言われております。先ほどお話ししましたけれども、例えば調剤で言えば、在宅で調剤をやること。また、後発医薬品の調剤というものが入ってきました。何十年も薬剤師として処方せんのとおり正しく調剤するというのが基本であったものから、後発品を調剤することが優先されており、薬担規則の中でも後発品の調剤が義務化されております。このように、業務としては大きく変化しています。
 そういう中で、次のページにいっていただきまして、コアの概念の考え方ですけれども、大きく業務は変化しても、薬剤師として変わらないコアというものがあるのではないかと思います。ただ、一方、もう一つは、社会のニーズ、それから業務の変化に伴って、そういった新たなコアというものができてくるのではないかと思います。また、大学の理念に基づいた教育が行われた中で、大学が考えるカリキュラム、また、学生の希望するもの、そういうものを一度このコアの概念とともに整理してみてはどうかと思っております。
 それから、11番目からは、今回実習を1年ちょっと、4回行いました。そういう中で、モデル・コアカリキュラムの現場から寄せられた主な意見です。簡単に説明させていただきますと、やはり全体としてはモデル・コアカリキュラムはよくできている。モデル・コアカリキュラムがあったから、均一の実習が行われたという意見が非常に多くあります。ただ一方では、薬学教育モデル・コアカリキュラム全体での目標、理念がなかったのではないか。それから、もう一つは、自分たちを取り巻く環境、社会のニーズが変わった中で、GIOをもう一度見直す必要があるのではないか。当然GIOを見直すということになれば、SBOsの検討も必要になるのではないか。それから、時代が変化しても基本となるコアがあるのではないか。
 次にいかせていただきます。それから、もう一つは、特に実習ですけれども、どうもGIOに意識が行かず、SBOsをこなすことにとらわれている。この後のパワポにありますけれども、これは多分実務実習の中で知識教育が非常に多かったことが一つ要因になっているのではないかと思います。それから、基礎教育、臨床教育、事前学習、実務実習と一貫した教育が行われていないのではないか。先ほどの一般用医薬品の件ですけれども、そういうようなことも意見として寄せられています。
 次に、18枚目に行きまして、SBOs、LSについては、SBOsの中でも表現のわかりにくいものがある。これは見直してもらいたいと思います。それから、先ほど言いましたような、新たな業務が出てくれば追加するSBOsがあるのではないか、また、要らないものがあるのではないか。また、LSが例とは言いながらも業務に合っていないからやりにくいとか、実施が難しいというような意見も寄せられています。あと、先ほどありましたけれども、カリキュラムプランニングに関しては、積み上げ方式からOutcome-Based Educationへ変えるべきではないかということで意見があります。
 次に、右のページにいっていただきまして、実習の中で寄せられた意見の中で多かったのが、知識教育から技能、態度教育を中心にするべきではないか。例えば、薬局実習の中の処方せんの受け付けを見てみますと、ここに5つほど到達目標がありますけれども、1番から4番までは全て知識教育になっています。例えば処方せんの形式及び記載事項について説明できる。これは学校で習得することができるのではないかと思います。確かに5番目の在庫品がないときの適切な対応を選択できる。これは実務で体験しながら考えることでしょうけれども、例えばこういうことの到達目標はなくして、事前学習の中で終わらせてもらえないかと思います。
 それから、もう一つ、20枚目に行きまして、調剤録のところを見ても、調剤録の法的規制について説明できる。これも大学で事前に学ぶことだと思います。それから、では調剤録に何を記入するのか。これも学校でできることではないかと思います。ただ、調剤録の保管、管理の方法、期間などについて説明できる。これは現場で実際に保管しているところ、それから管理しているところを見て、それで確認することだと思います。であれば、例えばここの項目に関しては、調剤録を作成できる、調剤録の保管、管理ができるという到達目標にすべきではないかと思います。
 最後に、モデル・コアカリキュラムの見直しに向けてということで、まず、基本理念については、薬剤師の任務が薬剤師法の第1条で定められています。そのことが基本になると思います。そういう中で実践能力を有した薬剤師を養成するためにどうしていくのか。そして、共通の理念に基づいてモデル・コアカリキュラムを作成してはと思います。それから、教育全体のデザインに関しては、Outcome-Based Education(学習成果基盤型教育)へということ。そのためには、薬剤師として求められる基本的な資質の検討を行う必要があると思います。位置づけに関しては、もう一度コアの概念を再検討すること。それから、薬剤師としてのコアというものがあり、その上で、社会のニーズに伴ったコアをどう扱っていくか。そして、それぞれの大学の理念に基づいて、特色あるカリキュラムを作成していくのがいいのではないかと思います。
【市川座長】
 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの森さんのお話について何か。はい、伊藤委員。
【伊藤委員】
 この現行のカリキュラムと比べて、知識偏重から技能、態度教育というのはまさにおっしゃるとおりだと思うんですけれども、このコアカリをつくったときに私も同席してずっと見ていましたけれども、現場でどのくらいできるのからわからないから、とりあえずこの程度書いておこうかという形でできていたように思うんです。ですから、その現状が大分開けてきて、みんなの認識が共通になった時点で、より技能、態度教育に進むという部分は私もすばらしいと思ったんですけれども、先ほど、Outcome-Based Educationのところで、一般用医薬品のところを例にしてOutcome-Based Educationがいいというお話をされていたんですけれども、これはこの一般用医薬品の位置づけが変わったためにこうなっているような気がするんですけれども。少なくとも教育システムの問題というよりは、平成14年時点での一般用医薬品の位置づけが今よりもはるかにもっと閉鎖的なものであったということから来ているような気がするんですけれども、その点はいかがでしょうか。
【森委員】
 まず、前者の先生がおっしゃったような実習で知識教育が多かったというのは、私もこのカリキュラムを一応作成したので、最初の、初めての実習だということで、あえて入れたということは理解しています。
 それから、ちょっと説明が悪かったのかと思いますが、一般用医薬品を例にとったというよりは、一つは、Outcome-Based Educationの有用性の中の一つに、順次性のある一貫したカリキュラムということがあります。一般用医薬品に関して、これを実習でやる上で、それを支える事前に学ばなければならない教育が行われていません。そのための例示として出させていただきました。それは順次性、一貫のカリキュラムという意味での例として出しております。
【赤池委員】
 よろしいでしょうか。
【市川座長】
 はい、赤池先生。
【赤池委員】
 赤池でございます。15ページ、16ページで、いわゆるコアの概念、それから、モデル・コアカリキュラムへの現場からの主な意見ということで資料がございまして、御説明いただきました。本当にそのとおりだというふうに思って拝聴しておりました。ただ、ちょっと2点だけ、私の聞き方が悪かったのかもしれませんけれども、少しわかりにくかった点がございまして、それについて質問したいのですが、まず、1点目は、15枚目の方ですけれども、薬剤師としてのコア、それから社会のニーズに伴ったコア、これはそのとおりだと思います。ただ、コアというのは、やはり共通性のあるという、初めの方でもおっしゃっていましたが、大学の理念に基づいた教育という、この大学の理念というのは大学全体を通した共通の理念ということなんでしょうか。それともちょっと個々のというふうに聞こえたものですから、その点を少し確認したいと思いまして。
【森委員】
 今の教育では7割がコア、3割が大学独自というところでやって、今7割のところで全部終わってしまっているというようなこともあったので、今後考えるのであれば、一つは、コアというものがあって、コア以外はやはりそれは大学の特徴を出すべきだ。それから、学生によっても希望がある、そういうものを盛り込めるようなカリキュラムへということです。
【赤池委員】
 ですから、コアそのものを大学が個々につくという意味ではないということですね。
【森委員】
 わけではないということです。そうです。
【赤池委員】
 どうもありがとうございます。
 それからもう1点は、16ページ、16枚目の方ですけれども、共通の理念がないというところで、確かに現行のモデル・コアカリキュラムは必ずしも先に共通理念をつくって、それからつくられたという経緯ではないということは私も認識しておりますのですけれども、ただ、私の理解では、現行のモデル・コアカリキュラムでも、若干後つけ的なところはありますけれども、かなりしっかりとした理念というのをつくられて、その中で全体が統合されたというように考えておりまして、ここでの共通の理念がないというのは具体的にどういったところを指しておっしゃっているのか、ちょっと伺いたいと思います。
【森委員】
 私を含めて、現場の薬剤師の理解は、今のモデル・コアカリキュラムに関しては共通の理念はなくて、教育は各大学の理念に任されているという認識です。今のモデル・コアカリキュラムが最初に示されたときに、理念が公表されなかったので、共通の理念をもとに作成したというような事実がなかったのではないかということと、各大学に理念は任されていた中で教育が行われてきましたが、今後つくり直すのであれば、まずは、一つはみんなが共有する理念が必要ではないか、そういう意味を含めてここに書かせていただきました。
【赤池委員】
 そういう意味では、先ほどちょっと私も申し上げましたけれども、改訂に当たって、やはりまず理念をきちんと立てて、そこから改訂すべしという考え方と理解してよろしいですか。
【森委員】
 そうです。おっしゃるとおりです。
【吉富副座長】
 ちょっといいですか。
【市川座長】
 どうぞ、吉富先生。
【吉富副座長】
 吉富ですけれども、いろいろな内容があって、ちょっと頭が整理できないところがあるんですけれども、7枚目のスライドのところで、いわゆるOutcome-Based Educationのところで、卒業時の実践的能力を設定するということをしなければいけないとか、そういうふうに言われていますし、一つには実践的能力をどこまでの深さというか、高さまで求めるかということに対しては、一つ問題はあるとは思うんですけれども、実は今のコアカリの一般目標というのはこれをある程度具現化した形で表現しているのではないかと思うんです。特に実習に関しては。
 だから、卒業時の実践的能力を設定するとかいうのは、薬剤師としての臨床現場で働ける能力とかそういう具体的なことを指されているんですか。あと、話が全体のコアカリと実務実習のコアカリというのが実は議論の中でちょっとはっきり整理されていないので、この卒業時の実践的能力というのが、薬剤師会からいわれた能力というのは何を本当に意味されているのか、ちょっと整理していただくとはっきりわかると思う。
【森委員】
 すみません。一つは卒業して、それから薬剤師として働くことになりますね。卒業して薬剤師として働くときに、いわゆる知識だけじゃない、もう実践ができる、そういう意味で、卒業時にどこまで学生にそういう能力を求めるかというのをきちんと設定したらどうかということです。薬剤師の養成教育ということで言えば、そこをきちんと設定したらどうかという意味でここに書いています。
【吉富副座長】
 では、今の段階では、例えば今の6年制のコアカリではその実践的能力が実際には設定されていないということになっているんですか。私はある程度設定されて、その設定されたとおりに到達したかどうかは別にして、実習などは今きちんと一定程度設定は既にされているのではないかと僕は理解していたんですけれども。
【森委員】
 4年生の最後にOSCEを受けて、実務実習で学んで、本来で言えば、戻った後にもう一度教育されて、不足している部分は、例えば技能、態度にしても教育されて、例えば卒業時に例えばアドバンストOSCEという形で評価をすべきであると個人的には思っています。そういう意味で、そこでの設定は実習を終わったときのものが、もしかしたらそのまま6年生に求められることかもしれませんけれども、実習の後の1年半ぐらいの教育がありますので、その上での能力というのはまた変わってくるのではないかと思っています。
 ただ、先生おっしゃるように、到達目標を見ても、あの到達目標は学生に求める到達目標でもあり、また、一般の薬剤師でも、例えば計数調剤ができる、ということを例にすれば文章としては同じものですが、深さが違うと思います。そこの設定の仕方は難しいと思いますが、私自身は卒業時に、どこまで実践的な能力が設定されて確認されているか不明確であり、これに関してもちょっと会内でも議論したんですけれども、きちんと設定する必要があるのではないかと思います。
【吉富副座長】
 例えば、きっちり設定をするというのは具体的にどういう設定を提案すればいいんですか。
【森委員】
 そこは今後具体的に検討していくことで、今具体的な提案をできません。
【吉富副座長】
 いや、実務実習のコアカリの構造自体がきちんと一般目標を掲げている以上、一応設定されていると僕は一定程度理解していたんです。あの一般目標がおかしいというんだったら別ですけれども、あの一般目標が一定程度いいんだったら、あの一般目標が実は実習が終わった後での基本的な実践的能力を設定したものになっているんじゃないかと僕は理解していたんですけれども、あれがまだ不十分だと言われるんだったら、当然GIOを変更するということにはなるでしょうけれども。
【森委員】
 一般目標は確かにそうかもしれませんが、より具体的に、例えば薬剤師に求められる資質について、医師で言えばモデル・コアカリキュラムの中に8項目あったと思いますが、例えばそのようなものを設定すべきだと考えています。
【吉富副座長】
 はい、すみません。
【市川座長】
 奥委員、どうぞ。
【奥委員】
 病院薬剤師会から御丁寧な御説明ありがとうございます。両方ともある意味でいい教育をするためには大学で学べることはなるべく大学で学んで、現場でしか学べないことを現場で学ぶような形というのを考えておられるという解釈だと思います。大学の立場でも、それができれば一番いいと思いますが、現状の1月の実務実習事前学習でも、各教員の負担がかなり増えていると思います。例えば2か月にする、あるいは2か月でなくても長期にした場合、理想に近づけるのではないかとは思いますが、大学の立場で言うと、多分これ以上実務家教員を増やすとかはなかなか難しいのではないかという気がします。提案は提案として受け入れたとしても、実際問題としてはかなり厳しいのかという気がしますが、これに関して御意見ありますでしょうか。
【松原委員】
 いや、だから、私が言ったのは、病院に集中すると困るのですけれども、現場の人間が大学に行って教えるというやり方だってあり得るでしょうと言っているんです。
【奥委員】
 ただ、その場合でも。結局1人、2人来ていただいても、事前学習はできないので、かなりの教員が手伝うことになると思います。本学だけかもしれないですが、多分他大学もそうですよね。
【伊藤委員】
 ですよね、そうです。
【奥委員】
 そういう意味では、1月の事前学習でも、基礎系の教員などに負担をかけているので、現場の先生に来ていただいても、結局1月増えれば教員の負担がかなり増えることになると思います。また、実際に事前学習をやってみて、結局は実務家教員以外の教員は教えていくのがなかなか難しいのが現状です。今後6年制教育を受けた学生が教員になっていけば、また変わるかもしれないですけれども、現時点では非常に難しいということを考えると、現実的に事前学習を増やせばいいというような形でお伺いいたしましたが、今の1月というのがある意味では限界ではないかと感じています。大学の立場から言うと、確かに知識教育は大学で、技能と態度の教育が現場でというのは非常に理想的ですが、事前学習の増加に関しては、各大学で異論がでるという気がします。
【松原委員】
 松原ですけれども。そういう事前学習を長くするという手もあるし、アドバンスとしてやるという手もあるしというふうに、あるいは導入としてもう少し早い時期に行う実習としてやるということもできるし、3通りを私は提案したと思うんですけれども。
【市川座長】
 そうだったと思います。それで、今の議論のところになると、要するに、先ほどの言葉は卒業時の実践的能力だったけれども、実務実習に出るまでの実践的能力という言い方はおかしいけれども、臨床現場というところで必要な知識、技能、態度というもののどれがコアなのかというところが明瞭になっていないということが問題です。事前学習は大学の方で現場に行くことを考えて、時間内でできる最大限のことを、ここまでをやっておいたら、御迷惑という言い方はおかしいけれども、余り混乱しないで現場に入れる。あとは一緒に指導をしていくというところでつくられていると思うんです。
 それが今の1か月というところの内容になっているわけで、それがただ、先ほどの森さんの話にもあったけれども、やはり大学との間での、それをつくった時点でのコミュニケーションというのは十分ではなかったから、今現場から見たら、不十分ではないかという御指摘のように思うんですけれども。
【松原委員】
 いや、松原ですけれども、私ばかりで申し訳ございませんが、実践的能力と臨床に秀でた能力というのは違うと思うんです。基本的に調剤だって何にしたって、実務実習の中ですぐに使える能力というのは非常に限られているわけで、そうではなくて、ベースとして、素養として、例えばがんの患者から学ぶとか、高血圧の患者さんから学ぶ、この中で薬物療法、基本的なものを学んでいって、卒業時の実践的能力というのは、患者さんに対してどう向き合うかという薬剤師としての基本的な素養を身につけていただければいいということで、実践的なものというふうに限定してしまうと、どこかのメーカーの分包器の使い方を一から十までやって、病院行ったら違った分包器、就職したら違ったもの、そういったようなものが決して実践的な能力ではなくて、実践に出るに当たっての心構えですとか。そんなに細かなことまで大学に求めているものではなくて、医療人としての薬剤師の患者と向き合う基本的な資質を学んでいただきたい。
 よく医学生で、ポリクリに行くと、ぼけっとしていた医学生がしゃきっとする、そういったような医療人としての心構えがその間に形成されていく。それがやはり僕は臨床に秀でた薬剤師という意味であろうと思って。先ほども言いましたけれども、だから、今は、現場でやっていることを全部詰め込んでしまって、とても僕ら、それぞれ病院の薬剤師でも薬局の薬剤師でも両方できるわけではないのに、できないことまで書いて、それをたった4か月、5か月で学生が実践的能力をつけろなんてどだい無理なことが書いてあるということを僕は申したいというだけの話で、全然負担にはならないんだろうとは思います。
【市川座長】
 でも、ちょっと言いたかったのは、実践的能力という言い方、先生方が使う実践的能力というのを僕らがきくと、臨床現場で患者さんと向き合うというところから実践が始まるんだという概念を思って、そこのイントロダクション的なものから始まると考えたら、それを事前学習でやろうというとき、そのコアという、その何を求められているのかというところを大学は十分理解していないで事前学習をつくっているというようなことになるのか。
【松原委員】
 そうかもしれませんね。
【市川座長】
 おっしゃっていただいた問題はわかります。
 どう落とし込むかというか、モデル・コアカリキュラムの中で実践的という言葉をどういうように入れていくのかという。それは内容で入れていけばいいのかもしれないけれども、その辺が今後問題になるのかと思ったんだけれども。
【平井委員】
 すみません、ちょっと質問。
【市川座長】
 どうぞ。
【平井委員】
 平井ですけれども、森先生にちょっとお尋ねしたいんですが、16枚目のモデル・コアカリキュラムの全体についてとあるところで、全体としてよくできているというのはモデル・コアカリキュラム全体ですか。それともこの実習の部分ですか。
【森委員】
 いえ、これは全体に関してよくできているという。
【平井委員】
 この青いの1冊ということですね。
【森委員】
 そうです。
【平井委員】
 はい、わかりました。
【森委員】
 いろいろな批判がされていますが、教育の基本としてはいいと思います。
【平井委員】
 すみません。これは基本だよねというふうには、その意見に反対するわけではないんですけれども、これがコアだと言われると、ちょっと私は困ると思います。
【森委員】
 そうそう。ただ、否定的な話も多いのですが、今もモデ・コアに従った教育が行われているということでも、一定の評価はあると思います。
【奥委員】
 ちょっといいですか。
【市川座長】
 はい、奥委員。
【奥委員】
 奥ですけれども、先ほどの、もし実習をそういう病院あるいは薬局でしかできないものにする、実りあるものにするという方向で行った場合に、実務実習の事前学習を増やすのはなかなか難しいとした場合に、例えば座学でそういうものをカバーできるとすれば、例えば新しいコアカリキュラムのときにそういうものを提案していくのも一つの手かとは思うんですが、その辺どうでしょうか。
【平井委員】
 平井ですけれども、今の議論を全体的に聞いていると、テクニカルな部分、それから知識の部分に偏り過ぎているような気がするんです。事前学習で、例えば松原委員の中に言葉とか基本的なことがわかっていないというような指摘がありましたけれども、その時点でわかっていなくても全然構わないと思うんです。ただ、そこにあって、「わからない」、「では、どうして調べたらいいんだろう」、こういうふうにしてやればいいのかと自ら調べるという態度を大学の中で培っておいていただければ、細かいことをいちいち全部詰め込んで教育する必要は全然なくて、それは実務家教員と言われる人たちだけが教育することではないと思います。
 なので、いたずらに事前学習の期間を延ばす必要はなくて、大学薬学部の1年生に入ったときからずっとそういう態度を教育していくのがいいと思うので、そのためには私は今の定員の数では無理ですと思います。
【松原委員】
 松原ですけれども、つけ加えさせていただきますと、先ほど私が言ったように、コアカリを簡素化していってダブらないようにしていけば、どうやったって現行5か月が4になってしまうことになりますね。実習の負担は減るということもございますが、その残りの1か月をどう使うかというもので、先ほど言ったような事前学習でしっかりやるという案もあれば、アドバンス的なものもできるだろうし、それを3年次、2年次に持っていく導入実習にもできるんだろう。
 だから、今の実習に関するコアカリのところが非常に重複が多くて、学生にとって魅力のないものになりすぎているのではないかということで、そこの提案だったわけです。
【森委員】
 すみません。今の実習期間に関しては、どのくらいの期間が必要なのか議論をして積み上げ方式で期間が決まったわけで、それこそ今後何箇月にするかは、何年か実習をやってみた上で、もう一つは、どこまで学生に求めるのかが決まった後にもう一度期間を検討すべきではないですかと思います。それが1点。
 それから、奥先生の事前学習ですけれども、1か月ということでとらわれなくて、要は実習に出るまで全体の期間で考えたらと思います。1か月とか2か月という意味ではなくて。そうすれば、教員にも負担がなく、かつ一貫性のあるような教育ができるのではないかと思います。
【市川座長】
 ちょっと具体的なことであれだけれども、先ほど御提案の中で、コアになる部分というのは病院バージョン、それから薬局バージョンという格好で今は分かれていますけれども、そういう格好ではなくて共通のものがある。あるいは共通のスタイルで書けるということ、松原委員が御提案された話は、例えば両方の職能団体から見た場合に可能ということですか。いわゆる薬剤師の資質のコアみたいなものが教育上に落としたらこういうものですという形になる。
【松原委員】
 松原ですけれども、私は可能だと思います。仲よくすればいつでもできると思いますけれども。いつも仲よいですから大丈夫だと思いますが。
【市川座長】
 いかがですか、森委員。
【森委員】
 いや、仲悪いわけじゃないですよ。
 病院だ、薬局だではなくて、臨床実習という一つの枠としてとらえるのは非常にいいことだと思います。ただ、幾つか整理しなければいけないのは、同じ行為でもやはり薬局と病院と別なところがありますから、そこをどうするのかというのは、多分最初に実務実習のモデ・コアを作成したときに、共通の部分に三角をつけたときにも最終的に解決できなかったと思います。だから、そこの考え方をどうするか。だから、三角をつけて、多少時間を短くしてもいいということだったと理解しています。
【市川座長】
 はい、平井委員。
【平井委員】
 平井ですけれども、医師の場合は大学病院の中だけで実習をやるのではなくて、外部の病院にも出かけますし、それからいろいろな他の施設にも行ったりやるんですけれども、それをいちいち分けて書いたりはしていない。でも、全体として実習、実務能力、臨床能力ということでやっているので、今お二人がおっしゃっていたようなことをまとめてやることは可能かと思うんです。ただ、今回、現状の分は初めてつくったものですし、どうしても現状追認的な面があるのは否めないので、これに基づいて次のコアカリキュラムをつくるときにどういう形にするかは議論してから決めたらいいんじゃないかと思います。
【太田副座長】
 よろしいですか。
【市川座長】
 はい、どうぞ。
【太田副座長】
 太田です。今病院と、それから薬局の実習を一つにまとめるというのは、本当にそうしていただければ、それが一番いいのではないかと私も思っているんですけれども、先ほどSBOsで削除する項目が日薬あるいは日病薬からあるという、それも結構な数あるのではないかということが出てきましたね。それから、実行できないものがある。現状で実行できないものがあるのがコアになっているというのは、やはりいってみればおかしいこと。それはコアなんですかと言われたら、それがなかったらできないんだったら、そこの病院あるいは薬局が業務ができないことになってしまって、それは矛盾することになりますから、それはそういう整理で、かなり整理ができるだろうと思うんです。
 あと、重複間の三角に関しても、森先生がおっしゃったように、立場が違うから業務がというようなものと、全く同じで、とりあえず挙げてしまっているために重複しているものと、その二種類がやはりあるだろうと思います。そうすると、結構モデル・コアとして整理できたらかなりスリム化されるのではないかと、聞いていてそういう気がしたので、それが実行できれば、もちろん実習で知識教育に偏らない。全部外せるとは到底思えないんですけれども、態度と技能にかなりシフトした、今よりシフトしたということが実行上可能だろうと思うので、やればできるのかという気になってきたんですけれども。
【伊藤委員】
 すみません。
【市川座長】
 伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】
 伊藤ですけれども、やはりスリム化して簡略化していけばいくほど、習う順番が大切になってくると思うんです。それで、やはり先ほどの薬局と病院の実習の順番が学生間で入れかわってしまうというのはどうしてもクリアできないような気がするんですけれども。それが気になるんですけれども。
【松原委員】
 いや、そうでしょうか。松原ですけれども、例えば、薬物治療学で習った、例えば高血圧の薬、いろいろ種類がありますが、それが例えば病院で患者さんに服薬指導するに当たって、大学で習ったいわゆるマスとしての薬事作用と個々の患者に対する薬事作用では全く違うわけだし、そこにいろいろな薬を飲まされている、そういうことによって薬物療法の患者に対する現実性を学ぶということは大事なことなんですけれども、それは別に調剤をやっていなくたってできるんじゃないでしょうか。
 ただし、患者さんとある程度コミュニケーションできるということは、素養としてある程度持っていただかなくてはいけないですけれども、それは事前学習でそれまでの教育でやるわけですから、うまく組み合わせさえすればどちらが先かはクリアできると思います。もちろん順番を決めた方がいいに決まったことです。ところが、現実の実習をやっていく上で、それは今不可能に近いわけですから、そこは不可能ということを前提にして考えていくということ。太田さんができると言ってくださっていますから、きっと太田副座長も加わってやってくださると思います。
【吉富副座長】
 ちょっといいですか。
【市川座長】
 はい、吉富委員。
【吉富副座長】
 太田先生の言われたことの中で、一つちょっと問題なのは、今やれないことをコアから外すというと、でも、それは本来薬剤師が将来やるべきことだから、ということもある。セルフメディケーションのOTCのカウンターで学ぶというところが実は一番引っかかってくるんですけれども、あれがやれないところがあるから抜けてしまえというのが一番シンプルでいいんですけれども、でも、将来薬剤師がああいうことに活動しなければいけないという目標から言うと外せないというのがあって、そのところをちょっと整理しないとコアカリが、恐らく病院の方もそうなんですよね。どちらかにきっちり整理しておかないといけないし、そうなると、方略というか施設をやはり1施設でやっていくという、ああいうしがらみをちょっと抜かないと、恐らくきっとうまくいかないだろうというのが一つあります。
 それからもう一つ、これはちょっと別の議論になるんですけれども、松原先生の6枚目のスライドの中で、専門用語や略語の知識をもっとつけないと実習に行けないというのは、大昔にクリニカルファーマシーなんかで薬剤師が病棟に行き始めるときに、みんなそういう議論をしていて、こういう略語など覚えていかないといけないと言われていたんですけれども、実はそういう必要性がわかるその現場に行かないとそんなものは覚えないわけで、学校の中でこんなことを100時間やっても、実は何も意味がないんです。だから、これは指導者の方にこういうことを勉強させるという意識づけをやってもらえば、僕は学生は臨床現場に行けば、自動的にすぐ勉強するものですから、こういうことを大学の方に要求するのは僕は是非やめていただきたいんですけれども。
【松原委員】
 はい。
【吉富副座長】
 教える方もこういうことは面白くないです。やる方も面白くないし。
【松原委員】
 いや、だから、そういうことをまだまだ事前学習であってもいいだろうし、導入実習でそういうモチベーションを高めて学生が学ぶような態度をつけさせるのであってもいいという。
【吉富副座長】
 いや、でも、患者がいないところでそういう態度なり、その必要性がわかるというのは。
【松原委員】
 いや、導入実習であれば患者がいます。
【吉富副座長】
 導入実習というのは何を意味しているんですか。
【松原委員】
 いや、アーリーエクスポージャーをちょっと。
【吉富副座長】
 ああ、そっちの方か。はい、わかりました。では、僕の誤解です。
【市川座長】
 大分議論が盛り上がってきて続けたいんですけれども、ちょっと今日は時間の関係もあって、まことにあれですけれども、結局今の議論で、いわゆるコアというところ、それを薬剤師のコアとして考えた場合にどういうことを実際に大学の教育の中に入れていくかというところを考えることが大切です。病院、薬局という区別は問題ではなくて、共通のものがあるのではないかという視点でこれから少し検討していく、ということに関しては特段問題はないというように私は今理解させていただいた。
 それから、それと含めて、それぞれの職責において大事な、いわゆるアドバンスというのは加わっているわけだから、それはそれで次に考えていくというような形で全体像ができ上がるのがいいのではないかという意見だったと思うのです。それは実際に今度のモデル・コアの改訂をするときにそういう概念で検討していただくということでこの場は締めさせていただくということでよろしいでしょうか。
 先へちょっと進めさせていただきます。今日はわざわざお忙しいところ、日本薬学会の薬学教育委員会の委員長をされています松木則夫先生に来ていただいておりまして、松木先生は日本薬学会の会頭としてずっと活動されてきて、日本薬学会の考え方というのはずっとよく御存じの方ですけれども、日本薬学会の立場から先生にひとつお話を伺うということで、よろしくお願いいたします。
【松木氏】
 日本薬学会の松木です。よろしくお願いいたします。
 まず最初にちょっとお断りしなければいけないのが、このヒアリングに対する我々との意思の疎通が余りありませんで、文科省でヒアリングがあるというのですぐに思い出したのが、先月締切りがありました大学における医療人養成推進等委託事業で、これに対しまして、日本薬学会が薬学教育モデル・コアカリキュラム及び実務実習モデル・コアカリキュラムの改訂に関する調査研究というものに応募しておりまして、ヒアリングというと、すぐにそれに関するヒアリングだろうというふうに思ってしまいました。この応募した内容が、最初のところで基本理念とか位置づけが非常に重要であるから、それをまず時間をかけて議論してコンセンサスを得るというところから始まっているんですが、今回それに関する薬学会としての考えを示せということなので、最初から決めるのであれば、調査研究のこの部分は必要ないというところで、ちょっとまだ誤解があります。
 ですから、資料のところに追加資料というふうに書いてあると思うんですが、実は計画書を申請資料として出していて、それに際しての追加というつもりで書いてしまったということをおわびしておきたいと思います。
 その計画とか、あるいはどういうようなことが行われているかということをちょっと簡単に説明したいと思いますが、その前に、現在日本薬学会が薬学教育にどういうふうに取り組んでいるかというところからお話ししたいと思います。
 6年制の薬学教育の導入に伴って、どういう組織がそれを実行していくかということが非常に重要でしたので、平成16年に日本薬学会において文部科学省の御指導を頂きまして、薬学教育改革大学人会議というものを発足しました。既に平成18年から6年制教育が始まり、22年から長期実務実習が始まるというそのスケジュールに合わせて、とにかく共用試験をはじめ、それから長期実務実習の在り方、あるいは第三者評価をどういうふうにしていくかとか、教育と研究の在り方はどうあるべきかというような事柄を決める委員会をつくって、それに間に合わせるというのが非常に大きな目標でした。
 今まで大体40回ぐらいのワークショップを開いてきましたし、これらの業務の大部分は現在は共用試験センターあるいは薬学教育協議会、それから薬学教育評価機構が発足しまして、そちらの方で行っています。やっと来年には第1期生が卒業するということで、ある程度の当初の目標は達成されたという感じがいたします。ただ、このスケジュールに間に合わせるということが第一優先でしたので、どうしても全体的なボトムアップの議論をする時間がなかったというところで、一部の先駆的な人たちが非常に高度な議論を重ねて、それで、これしかないだろうというような形で決めてきたことであっても、どうしても全体的には理解が不足しているという、意識が違う、認識が違うというようなところが問題であったというように考えております。さらに、期日に間に合わせて薬学教育を実行するということが目的でしたので、そのときにアベイラブルな資金を使うということをしてきました。これは本当に優れた行動であり薬学関係者として粛々として実行できたということは誇るべきだと思います。ここで一段落ついたというようなことで体制ももう1回見直そうという段階です。
 それから、薬学会の中には薬学教育改革大学人会議だけではなくて、薬学教育部会というものがありまして、同じように薬学会全体の教育活動を行っていたということですので、この4月からそれを統合して薬学教育委員会を発足しました。その活動の内容としましては、今まで続けてきました薬学教育者のさらなる研鑽を積むアドバンストワークショップ、あるいは今年から始めました、実際に6年制教育を受けている学生によるワークショップ。それから二つ目としましては、学士力、博士力がどうあるべきか。それから、生涯研鑽です。学会というのはもともと薬学研究者の集まりで生涯研鑽をする場所ではあるんですけれども、どうしても臨床現場の方で、生涯研鑽のやり方とか、あるいはその場がないというようなことがありまして、それを薬学会がサポートするというような活動も始めました。それから4番目として、モデル・コアカリキュラムの見直しということをこの委員会の発足の前から議論しているわけです。これらにつきましては薬学会の理事会でも承認を得ていて、薬学会の正式な活動です。
 約10年前に薬学教育モデル・コアカリキュラムを、私学がつくられたものをもとに日本薬学会が完成させたわけです。これは6年制薬学教育が決まる前でしたし、文部科学省がこういうようなものをつくるというものに先駆けて行ったという、大変な仕事を成し遂げたという自負はあります。ただ、先ほどから御指摘されているようないろいろな課題というものもあります。その中で多く聞かれる意見としては、コアなのに内容が多過ぎて、これを講義するだけで精一杯であるというような御意見。あるいは自分の専門から見ると、あれが足りない、これが足りないというような非常に具体的な御意見。いわば相反するような意見というものが出てきたわけです。それはどうしてかというと、全体のモデル・コアカリキュラムに対する理念とか位置づけがそれぞれ大学の教員によってコンセンサスが余り得られていないところが問題であろうというふうに考えられるわけです。あれが足りない、これが足りないと主張している教員はコアカリキュラムの教育内容が自分が教えている内容に合致するということによって、自分のステータスというか、表現が悪いかもしれないですけれども、自分の存在意義をそこに求めようとしているというような点が挙げられるかもしれません。
 あるいは薬剤師の国家試験との連動ということを強く意識して、コアカリキュラムのことさえ教えていれば試験の範囲をカバーできるんだ、だからこうあるべきだというふうに思っているような教員。あるいは新設大学を含め、いろいろ薬科大学、薬学部が増えたことによって、それぞれの教育の質の確保ということがちょっと難しい。特に実務実習の内容が均一に行われるかどうか難しいというような考えで、それを担保する、教育の質保証としてコアカリキュラムを考えているような人がいるというようなことです。まず、このコンセンサスを得る必要があるということです。
 ただ、それは薬学会だけが突出した意見を出しても社会的なコンセンサスが得られるわけではありませんので、医学、歯学で行われているようなコアカリキュラムの考え方、あるいはこの委員会がまさにそれを議論されているわけですけれども、その委員会との連携を図りながら決めていかなければいけないということで事業提案をさせていただいたわけです。ですから、薬学会教育委員会としてその基本理念あるいは位置づけを、議論はしていますけれども、まだ結論は出ていなくて、それをこれからやろうという段階ですので、今日お話しするのはその議論を含めた私の個人的な意見であるということをまずご承知おきいただきたいと思います。
 それでは、その基本理念としてどのようなことが考えられるかということですけれども、追加資料にも少し書いておきました。医療、医薬品に関する知識や科学技術の進歩は目覚ましく、薬剤師や創薬研究者に求められる役割も非常に変わりつつあります。これらを大学ですべて網羅して教えるということは現実に不可能ですし、更に幾ら最先端の知識や技術を教えたとしても、すぐにそれは過去のものとしてなってしまいます。更に薬学の分野の大きな特徴として、多方面に人材を輩出しているという点があります。薬剤師はもちろん、薬学研究者、教育者、それから行政あるいは医薬品の開発などなど、非常に多方面の人材を輩出しています。したがって、どの分野に進んでも今後の進歩に対応できるような基本的な資質と能力の涵養(かんよう)を図るということが非常に重要でありますし、さらには生涯にわたって研鑽をし続けて社会に貢献していくという意識を持った人材を輩出するということが求められていると思います。
 先ほどから知識偏重、あるいは実践的かどうかというようなことが結構議論されております。モデル・コアカリキュラムはその膨大な薬学教育の内容を精選して卒業時までに学生が身につけておくべき必須の基礎及び実践的能力の到達目標をわかりやすく示すものであるべきだというふうに考えます。
 ただし、この実践的な能力という解釈は、いろいろあると思います。私の個人的な意見ですけれども、実践的というのは現在行われているかどうかということではなくて、将来にわたってそれを実行する能力があるかどうかということです。たとえ技術や知識が古くても、それがとう汰された理由があるわけです。その理由を理解することによって、これから起こるであろう変革を更によく理解できるという面が必ずあると思います。ですから、今あるかどうかということだけでこれは判断すべきではない。しかも、大学というものは幅広い能力を持った人間を涵養(かんよう)する場であるということ。それから、研究と教育の両方が必要であるということ、これは教育基本法にも書かれていることでありますので、必ずプラスアルファが必要ということです。実際に現場で行われているかどうか、あるいは将来その分野に進んだときに必要であるかどうかということだけで判断してしまったならば、大学教育は成り立たないというのが私の個人的な意見であります。
 それから、位置づけをどういうふうにするかということですけれども、先ほどからありますように、全体として、総論としては多過ぎるという意見があるわけです。どうしても自分の専門の分野が入っていないとそれを入れろとなるので、これを行うというのは非常に大変な作業なんです。ですから、位置づけを明確にするということが非常に重要だと思います。
 モデル・コアカリキュラムは各薬系大学、薬学部の教育内容や履修の順序などを細かく規定するものではなく、教育内容のコアとなる部分をガイドラインとして提示するというのがやはりこの医学、歯学とあわせた位置づけだろうと思います。各大学、学部はモデル・コアカリキュラムをもとに授業カリキュラムや細かな実際のシラバスを決めるということになると思います。このモデル・コアカリキュラムの内容だけで薬学教育が完成するものではなく、コアの部分以外については、各大学、学部の裁量にゆだねられて、各大学、学部はそれぞれ特色ある薬学教育を目指すことになるだろうと思います。薬学関係者の議論を通じて常に問題になりますのが、こういうルールを決めるときに、どうしてもハードルという意識があるわけです。ハードルを高くして、それを超えたらすぐれた教育である。それを学んだらすぐれた学生であるというような考えがあるわけですけれども、このモデル・コアカリキュラムはハードルというよりは踏み台と考えるべきであろうということです。それをもとに更に何をするかというような意識を薬学関係者に持ってもらうということが私は非常に重要だろうと思っております。
 先ほどから申し上げておりますように、今までコアカリキュラムに関して意見を述べている人が非常に多いわけですが、今回改訂するという人は多分その意見を通すということが改訂であって、それが通らないと、こんなものは改訂ではないということを言われるのは目に見えているわけです。ですから非常に大変です。総論は賛成ですけれども、各論は反対というのは目に見えているんですけれども、ただ、委員会の共通認識としては、批判の矢面に立つのが委員長というのが委員全体のコンセンサス、それだけは得られているというところはあります。
 もちろんこのコアカリキュラムを制定していくに当たりましては、各団体の協力も仰いでいかなければいけません。また、アウトプットとしての、実際に6年制の教育を受けた学生からのフィードバックというものは、この8月に実践しましたけれども、非常に貴重な意見がたくさん寄せられました。ですから、これらの点を考慮して行っていきたいと思います。
 それから、基本的資質に関しましては、やはり基本的理念、位置づけと関係しますけれども、薬学が多様な人材を輩出しているということを意識して、現時点で医療現場に必要な知識と技術だけでなくて、基本的な原理の理解や課題解決能力ということを意識して、どの分野に進むにしても、そのような人材を輩出するということが重要ではないだろうかというふうに思っております。
 以上、個人的な意見を少し述べさせていただきました。
【市川座長】
 ありがとうございました。それでは、ただいまの松木さんの発言について。はい、井上委員、どうぞ。
【井上委員】
 松木先生の最初の部分、特定の人が作ったとおっしゃった。これは確かに時間的な制約があったために、すべてボトムアップというふうにはならなかったということはおっしゃるとおりだと思いますし、その点は認めざるを得ないんですけれども、こちらとしてはできるだけボトムアップは図ってきたつもりではあるということをちょっとだけ言い訳で述べさせていただきます。
 後半の部分なんですけれども、おっしゃっていることは大変もっともなことだと思うんです。ただ、薬学が養成する人材が非常に多様である、まさにそうだと思うんですけれども、そうすると、コアカリとして、結局いろいろなものがどうしても入ってしまって、すきっとしたものにならないということがあると思うんです。今我々がここでつくろうとしているのは、基本的にはまず6年制の薬学教育ということに絞って考えようということにしていますから、そうすると、おのずとある程度は養成すべき人材像というのはやはり絞って考えていかざるを得ない。そうしないとやはり今までとちっとも変わらないといいますか、いろいろなものがどうしても入ってきてしまうということになるのではないかというふうには思いますけれども。
【松木氏】
 はい、松木です。まず、第1点目の一部の人という表現はちょっと問題だったかもしれませんが、ただ、言えることは、やはり世代ギャップが非常に大きいことです。議論に参加してこなかった人が今かなり薬学教育の中心を担っているので、その人たちが同じ議論の繰り返しであってもやはりもう1回議論するということは非常に重要であろうと考えております。
 それから、多様な人材の輩出ですけれども、全体のコアカリキュラムの中で確かにそれぞれの大学の特徴として出していくべきものだというところはある程度あると思います。ただ、現状ではコアが余りにも大き過ぎてそこを出しづらいというところがあるので、ですから、多様であるということ、つまりすべてが、例えば薬剤師の教育だけに特化するとか、そういうことではないというところは必要かと思います。
 それから、すべて6年制ということですけれども、時限を決めて4+2+2で4年制でも一応認めておるわけですので、その点も意識すべきと思っています。これは非常に議論があるところで、多分いろいろなところで言うと、袋だたきに遭うかもしれませんけれども、私はそういうふうに思っております。
【井上委員】
 それはやめておいた方がいいんじゃない。やはりここは6年制というふうに絞って考えないと、そこまで広げてしまったら本当にまとまるものもまとまらなくなってしまうと思いますので。
【市川座長】
 ほかにございますでしょうか。ボリュームを下げていくというときに、コアの概念というのは多方面の、いろいろな多様な、薬剤師として多様なという言い方もあるし、薬学としての多様な、卒業生としての多様なということがある。いずれにしても6年制の卒業生の多様な領域という観点からどんどん絞っていくということをやったときに、コアの領域というのをどういうように考えるのがいいのかというのを松木先生としての御意見。
【松木氏】
 そこがまさに非常に大変なところなんですけれども、もう少しコアカリキュラムの書き方を工夫して、余り細かく書いてしまうと、これが入っていない、あれが抜けているというような議論になってきてしまいますので、ある程度緩やかな内容にしておいて、そこでそれぞれの大学において順番など、あるいは内容に濃淡をつけて教えられるというような形がいいのではないだろうかというふうに思います。
 ただ、やはりいろいろな先生に聞くと、自分の教えているところが入っているか入っていないかということが本当にものすごく重要であるということを言われていますので、削った後の批判というものは覚悟しております。
【市川座長】
 伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】
 伊藤ですけれども、コアカリのときも結局SBOsをつくっても、実際に何をやればいいのかわからないということで、スタンダードシリーズとかという教科書までつくる羽目になってしまったわけですけれども、結局まとめてしまって簡略化した表記にすると、また実際の現場では混乱してくるのではないかという気もするんですけれども。簡略化するということと、曖昧さが出てくるという問題があるんですけれども、それはどういうふうに解決すればいいとお考えですか。
【松木氏】
 その点が非常に重要なところで、薬学関係者のコンセンサスを得られるかどうかというのはちょっとこれからの問題ではあるんですが、個人的な感覚として、議論するときに常に皆さんがものすごく形式にとらわれ過ぎていると思います。逆に、今まで多分それをクリアしたら薬剤師国家試験の受験資格がある、これを通ったらこれがあるという、それを全部積み上げていけば通るというような形を整えることを意識しすぎていたと思います。例えばコアカリキュラムの中でもある項目に対して、SBOsを満たしていれば、それを教えたら、それをやったら、必ず優秀な学生、優秀な薬剤師が育つわけではなく、もっとアウトプットはほかにあるべきなのに、形式をみたすことに満足してしまっているというところがあると思います。
 これはまた非常に大きな批判を受けるかもしれませんけれども、4年制教育の反省として薬剤師教育をしてこなかったというところがあります。しかし、いろいろな大学が薬剤師教育を標榜(ひょうぼう)していたんです。ただ、それは薬剤師国家試験に合格させるというための教育であって、それが薬剤師としての実践能力とかけ離れていたということです。結局今また同じことに陥ろうとしているわけです。例えばCBTだったら何をすればいい、OSCEだったら何をすればいい、それから実習だったらこれとこれをやったらもういいんだというように余りにも形式的過ぎます。薬学会では今、生涯研鑽のことを一生懸命やっているわけですけれども、それでもやはり実際の現場に出た人から聞かれることは、では、薬学会で何時間やったら何単位もらえるんだとか、その単位をもらったら薬学会としてどういう資格を与えるんだとか、あるいはそれで更にステータスが上がるかどうかというところまで知りたいということです。薬剤師としてのルーチン業務はそうかもしれないですけれども、課題解決型になるためには、8割、9割のルーチンの残りの1割、2割をどうやって頑張っていくかが重要です。そういう人材を輩出するためには教育者自体が変わらないといけないんだというふうに思っております。教育者自体が、自分がこれを教えたら、形式を整えたら自分は優秀な教員であって、自分の教育の質はこれで担保されたとなってしまった。それが今まで薬剤師国家試験の合格率だったわけです。その先は余り考えていなかったんです。それが非常に問題だというふうに思います。
【市川座長】
 ほかにございますでしょうか。
【太田副座長】
 よろしいでしょうか。
【市川座長】
 はい、太田委員。
【太田副座長】
 太田です。松木先生に伺いたいのは、位置づけのところで、ここに書いてあるおおむね6から7割程度というボリューム感を示していただいたところなんですけれども、この議論はとても大事だと思うんです。ところが、どうやってそのボリューム感を議論するかはとても難しいだろうと、また逆に思っているんです。先生のお考えがもしあったら教えていただきたいんですけれども。
【松木氏】
 これは委員会の中でも結構これから議論していかなければいけないところだと思いますが、ただ、それぞれの大学において授業時間の6年間でできるマキシマムというものは決まってくるわけです。それから、更にそこから実務実習とか必要なものを除くと、マキシマムで教えられるコマ数というものは決まってきます。ですから、コマ数で考えていくというのが一つのやり方だというふうに思っております。ただ、これはあくまでも個人的な意見です。
 それから、6割から7割というのは、例えば医学の3分の2というのはやはり私としても適当だろうというふうに思ったものですから、その数字を出させていただきました。
【市川座長】
 1点あれですけれども、Outcome-Based Educationというのはずっと先ほどの森委員の発言の中にもあったわけだけれども、今の一つの教育のシステムとして考える場合、この改訂の場合においても、いわゆる6年制教育は薬剤師教育であるという、イコールという形の、近いところまである。でも、その薬剤師という定義づけはそこで言っている薬剤師の定義の言い方。要するに、言い方を変えると、その資格を得ることができるのが6年制しかないから、そこから行くならそうであるということになると思うんだけれども、でも、それは国民から要望されている非常に大事なニーズから行くと、そこが一番という形の議論というのはずっと行われてきたわけですけれども。
 そして実際、そういうことに関して、例えば、今モデル・コアを改訂する作業に入ったときに、先生として、一番大事なそういうOutcome-Basedとしては薬剤師であるということをどう取り入れていくかというか、そこのところと研究者というところも取り入れる仕方、組み込みの仕方、創薬とかその他の、いわゆる多様なところをもう一つこだわっておられるんだけれども、どういうお考えでいらっしゃるのか。
【松木氏】
 全く個人的な意見なんですけれども、私は一人一人の能力を涵養(かんよう)する一番いい方法はやはりみんなにPh.D.を取らせることだと思います。やはりPh.D.というのは自分の専門の色分けではなくて能力の証(あか)しなんです。諸外国では当然のことのように、Ph.D.を持っているというのはその人の能力の証(あか)しです。実際にPh.D.を持つのはかなり大変ですので、課題解決能力の評価というような形になってくるというところだと思います。それに代わるような資質をどうやって担保するかというところだと思います。
 それから、先ほど井上先生の御質問にもありましたけれども、6年制の輩出する人材がほとんど薬剤師である。私もそう思っていたんですけれども、細かな調査は来年の春になってみないとわからないんですが、意外に6年制の学生でも薬剤師以外の職に内定している学生が多いわけです。これは上の学年、2学年がいないので、薬剤師の職がかなり自由に選択ができるような状態での結果です。もう少し精査して、薬学教育関係者としてはどうしてかという理由を考えていかなければいけないと思います。
 それから、これはこの場で議論することではないのかもしれませんけれども、1万人が毎年医療の現場に入っていくほどのキャパシティーは今ないというか、あるいはそれなりの待遇に見合ったポジションがないということはだれも否定できない現実だと思います。ですから、そういうような状況におきながら、我々は1万人の学生を輩出しながら、薬剤師しかなれないんだよということは余りにも現実を無視しているということが言えると思います。ですから、そこをどういうふうに兼ね合いをとりながら、どちらに進んでも能力を発揮できるような学生を輩出するというところは常に念頭に置いておかなければいけないことだというふうに思います。
【井上委員】
 井上です。非常にもっともなことをおっしゃっている。それはそうなんだけれども、今先生が言ったみたいにすればするほど、結局どうしてもオブスキュアになってしまうわけです。だから、基本的には医療現場で役に立つ薬剤師の養成ということを念頭に置いて育てた結果、その人材が企業あるいは行政でも大活躍できる、あるいは行政もそういう人は是非欲しいと言ってくれる、そういうふうなものであるのではないかと私は思うんですけれども。
【松木氏】
 はい、松木ですけれども、私が今まで申し上げてきたことはそれを否定するものではなくて、同じような考えです。コアになる部分の考えは同じであるということです。課題解決型の人材養成が非常に重要であろうというところです。それをどういうふうにやるかということが、結局何コマ講義をすればいいかとか、SGDで課題を幾つやればいいかとか、そういう形式ばかりの議論になってしまうわけです。実際、大学教育というのはやはりそのアチーブメントであって、教員側もそれを評価するというような態度が是非必要だというふうに思います。
 それができれば、どの方面に進んでも、生涯にわたって研鑽し続けるようなすぐれた人材になるというふうに思っております。
【市川座長】
 はい、平井委員。
【平井委員】
 平井ですけれども、先ほど松木先生がおっしゃった生涯学習では、何をどれだけ受けたらどれだけ点数をもらって、どんな資格が、というような人がすごく多いというのは確かにおっしゃるとおりで、私の知っている薬剤師でも勉強会をするとそういう人がたくさん来ます。でも、それは我々を含めて今までやってきた薬学教育の結果そうなってしまったんだと思うので、だから、これからそれを改める必要があるというふうに思います。
 それで、松木先生がいろいろなところから批判を受けるだろうとおっしゃっていますが、松木先生のおっしゃっているお考えは非常にすばらしいので、批判を受けられた場合は私たちがお守りしたいと思います。
 で、一つ、いろいろな、多様な人材というのは、多様な人材をつくるからそういう教育も入れなければいけないというのではなくて、薬剤師の基本的な資質を備えていたら、そういう人材はどんなところでもやっていけるのではないかと私は思っています。ちょっと長くなって申し訳ないんですけれども、例えば、ipodのアプリで、添付文書が全部引けるというアプリを開発された方がいるんですけれども、その方は東京薬科大学の出身で、それでIT企業を興したという方で、薬剤師が嫌いで薬剤師になりたくなくて、泣く泣く卒業したけれども、卒業してITに入って思いついたことは、自分はやはり薬剤師なんだった、医療だったということで、そういう医療関係のソフトをいろいろと開発されているというお話を聞きました。こういう方がどんどん出てくるようにするのがこれからのコアカリの理念ではないかと思います。
【市川座長】
 ありがとうございます。
【松原委員】
 需要と供給について。松原ですけれども、先日全国病院協議会で薬剤師の病棟配置を保険局長に要請するという決議が出されました。そのときの話で、きちんと供給はできるのかという話で、病院、医療団体側は供給不足になるのではないかということを懸念しているわけです。一方、院外処方せんの発行率もまだ六十数%であり、100には行かないでしょうけれども、まだまだ余裕があって。そういう段階であれば、恐らく1万人の卒業した者の受入先がないというような意見には決してならないというふうに思います。
【市川座長】
 短く発言してください。
【赤池委員】
 すみません。時間のないところで蛇足みたいな意見で申し訳ないのですけれども、今までの薬剤師、薬学教育というのは、結局、松木先生のおっしゃっていることと、例えば井上先生がおっしゃっていることは、結局は同じ言葉をおっしゃっている。ですから、一番の問題点は、薬剤師という言葉でくくったときに何を意味するかというのがまだ明らかでないというところにあります。それはこのモデル・コアを考えるとき、また基本理念を考える上でも、非常に重要なポイントだろうというふうに考えます。
 実際に、今ちょうど手元に資料があって、医学教育モデル・コアカリキュラムの基本理念と利用上の留意点というところにもほとんど同じことが書かれていまして、ごらんにならなくても、ちょっと読み上げます。将来どのような分野に進んだ場合にも共通に必要となる医師としての基本的な資質と能力を養成するべきであるというふうに書かれているわけです。恐らくここで書かれているいろいろな分野というのは医療のいろいろな分野、医師としての臨床のいろいろな分野ではなくて、恐らく社会のいろいろな分野という意味も含んでいるのだろうと思います。
 そういった意味で、やはり薬剤師というのは、もちろん臨床、医療で活躍するということが重要な場でありますけれども、当然その活躍の舞台は社会全体に広がっていくべきものでありますし、やはりそういったものを全体としてきちんと教育できるコアを考えるということが大事で、それは多分皆さんも同じような考え方だと思います。ですから、そういう意味で、薬剤師というとらえ方をもう少し明確にすべきではないかというふうに考えます。
【市川座長】
 そうですね、それを。はい、奥委員。
【奥委員】
 今の議論はやると時間がないのでやめますが、一つだけ問題提起というか、先ほど伊藤先生や太田先生がコアカリのスリム化のことで、ボリュームという話をしました。松木先生が、教育委員会でコアカリ改訂をやられるかもしれないので、お聞きしたいんですけれども、コアカリを減らすという場合に、コアカリが細か過ぎるのか、それとも多過ぎるのかという点をどう考えるのか。
 つまり、項目を減らしていくのか、それとも項目をまとめていくのか、いろいろなやり方があると思いますが、それによって教育の自由度というのが結構変わると思います。その辺の考え方をどう考えているかだけお聞きしたいと思います。
【松木氏】
 松木です。今の点に関しましては、それぞれの分野によってまたかなり違うところがあるんです。それぞれ先生方は自分の専門に関して御意見を持っているところはあると思いますが、ただ、薬理の面から言えば、薬理でやったことをもう1回薬物治療のところで出てくるというのは一貫してまとめて書いておいてくれた方が非常にすっきりします。あれは決して講義の順番を決めているわけではないのに、コアカリにこだわって薬理と薬物治療を分けて教えているわけです。
 ですから、そのようなところはかなり整理していいところだと思います。先ほどから申し上げていますように、減らされた項目があると非常に大変なことになるだろうということは予測がついています。しかし、そのときに重要なことはやはりコアであるというところです。コアイコール重要でほかは重要でない、ということではないというところも、みんなにコンセンサスを得る必要があると思います。
【市川座長】
 ありがとうございます。まだまだというのは十分にわかりますけれども、時間も追ってきましたので、今の議論はまだ先に続けたいと思います。特に一番大事なポイントはモデル・コアカリキュラムの基本理念ということになるかと思います。それに関してこの委員会としてはまだまだずっと継続的にやっていかなければいけないし、それから、位置づけといいますか、コアの概念、コアをどうするか。それから、そのほかの分野、割合を含めて議論をしなければいけないというように思います。
 それで、それはその先にさせていただこうかと思います。それで、そういうものが先ほど赤池委員の御発言にもありました先行する医学部の医学教育モデル・コアカリキュラムの中に、当たり前ですけれども、既に基本理念、位置づけ、それからその他、その使い方の留意点とかいうのも入っております。それをもとに少しこの委員会でもそれを議論していくということにしていきたいというように思っています。
 それで、そのたたき台として資料4をつくったんですが、先ほど聞いていたら、これは松原委員の最後のところと同じ、要するに医学バージョンをちょっといじったような、お互い。本当はたたき台のたたき台で、あるいは内容的には松原委員の方が豊かになっております。それを参考にされて、少しこれを次回に議論していきたい、今日はもう議論しないで、それをまた次回にということにしますので、お持ち帰りいただいて、少し見ていただければと思います。
 それでは、本日は3団体からヒアリングをして意見を伺いました。大変いい御提案を頂き、また、有意義な議論だったと思います。
 あと、私、前回のときにちょっと言い忘れたのは、実務実習の関係が今大分出てきたかと思うので、その関係で、次回ですけれども、薬学教育協議会に御意見を伺いたいと思うのですが、いかがでしょうか。今日は傍聴出席していただいたんですけれども、次回に発表をしていただく。
 それからもう一つは、そのほかにもヒアリングをした方がいいというところが先生方の中で何かお考えありましたら、御提案いただければ。
 そうしたら、次回は薬学教育協議会に、実務実習関係の非常にたくさんのデータもお持ちだし、いろいろな大学の意見も集約されておりますので、それらを含めて、今日の意見なども少し参考にしていただいて、御報告いただければというように思います。
 それでは、もう一つ、最後のわずかな時間ですけれども、調査研究チームという実際に作業を行うところの委託事業というのが文部科学省の方で公募されて、今その応募がなされていて、その結果というのは今はまだ整理中ということで時間がちょっとかかっておりますけれども、実際には前回の終わりの方に、その作業のやり方として、できるだけ全大学の意見をアンケート形式で集約してほしい。御承知のように、それは現在の薬学モデル・コアカリキュラムでは、その作成に様々な大学のいろいろな御意見というのがありますので、ボトムアップというような意味も含めてアンケートがいいのではないかということの提案をさせていただきました。
 そういうことの一つの実際の問題としてたたき台という形でもう一つの資料の2番目になりますけれども、アンケートの調査骨子という言い方をしております。案でありますけれども、これは私並びに副座長の先生方とちょっと相談させていただいたんですけれども、要は、ざくっと全部が入っているということでありますけれども、こんなような形で作業をしていただければというように思うので、これを含めてここで先生方に、もし作業チームが決まったらこんなこともそこでお願いしたいということがあれば、それを頂きたいというのが1点。
 その方法としては、作業チームの方がこのどれかに関して意見をアンケートなり、こういう形で進めたらいいのではないかという方策等々が決まったら、この委員会の方で発言していただくというようにフィードバックしてもらって、実際にアンケートが出たら、そのアンケートをまた頂くというような形でこの委員会の審議を進めていきたい。
 資料を見ていただきますと、1番が薬学教育モデル・コアカリキュラムと実務実習モデル・コアカリキュラムとのジョイント。これが一番大きなテーマになるかと思うんです。どのような形式でジョイントするかという問題。2番、3番というのは、今日の中で議論がたくさんあったので、そういうのも概念ができたらやっていただく。この委員会の内容でもあるかと思います。4番、モデル・コアカリキュラムの質量の厳選、あるいはボリュームの削減についてということで、これは今ありましたように、どのようにOutcome-Based でやっていくかというところ。その辺のことも含めて調査していただくということになるかと思います。それから5番目がモデル・コアカリキュラムの三角印によるという、モデル・コアの方の三角印は共用試験の範囲、4年次の終わりにある共用試験のところまでにできるだけ終えてほしいということで、問題の出題範囲になっておりますけれども、そういうことについての妥当性というか、その検討、あるいはそのやり方。上の4と少しつながっております。
 それから、あとはA、B、Cの項目立てということ。あとは準備教育。アドバンス教育。卒業実習カリキュラム。これは順次進めていくということですけれども、1番とか、あるいは4番のところあたりが少し議論を先に調査チームでやっていただきたいという部分であります。これもごらんになっていただいて、何かご意見いただければ。
【井上委員】
 この調査チームというのは、例えば、薬学会ということになるんですか。
【市川座長】
 例えばということですね。今、ちょっと発言がありましたから言いますけれども、例えば薬学会が選定されれば薬学会。それから、ほかの今手を挙げていらっしゃるところだったら、そこが調査チーム、ということになるかと思いますけれども。この委員会として必要な情報というのを実際に作業としてやっていただくということになるかと思うので。
 これはざっと全部書いてありますから、これを全部1回にやってほしいということでは全然ないので。最終的にはこういう形でモデル・コアカリキュラムの全体像をつくりたいということです。
【伊藤委員】
 伊藤ですけれども、一つ気になっていることは、先ほどからOutcome-Based Educationの話があるわけですけれども、それを本格的に取り入れたとすると、今までのコアカリとは全く異なる記載の順序になっていくわけなんですけれども、そこはどのあたりを落としどころと考えてこれからの作業を進めていくんでしょうか。つまり、薬学の教員はわりとまじめに今までコアカリをやってきているわけで、それを形が全く違う書式になったときにまた現場がすごく混乱するとは思うんですけれども、その落としどころはどのあたりと考えればいいのかがちょっとわからないんですけれども。
【市川座長】
 そうですね。それは本当に議論が必要なところだと思います。特にアウトカムという、要するに6年制の先、先ほど就職のこともあったけれども、そういうのを含めてカリキュラムとしてどこまでどうするかということ。それはここの議論もまだ十分煮詰まっていないし、まとまってはいないんです。
 作業チームの方に少しそれを投げかけてみて、そこでの御意見を頂いて次回ぐらいに討論していただけるといいというように私自身は思っています。伊藤委員の今おっしゃった部分というのは私も非常に気にしているもので、この中でもアウトカムとして非常にずれているような気もしないでもないです。
 11月ごろですか、調査チームの作業が始まるのは、その辺。
【伊東薬学教育専門官】
 今お話ございました調査研究チームについては、恐らく今週中から来週ぐらいにかけてお話しさせていただくことができると思っております。ですので、決まりましたら今日の御議論などを踏まえて作業を開始いただくということで考えているところでございます。
【市川座長】
 ということです。特にモデルコアと実務実習モデルコアとのジョイントと今の問題、アウトカムのところを含めて、調査チームに検討してもらう。ここ委員会では継続して、理念などについて議論していくということが良いと思うのですけれども、そんなやり方でよろしいでしょうか。
 ともかく、調査チームと委員会がばらばらに動くということは絶対におかしいわけだから、その辺は、調査チームが決まったら整理したいと思います。1番重要と思うのは、薬学教育のアウトカムのところで薬剤師という、その文言的なものをどう実際に一般目標、それからSBOsの中に、見える形にしていくかということになるかと思うのです。それからもう一つは現在のモデルコアの削減。縮小することです。あるものができ上がったら縮小できるわけなので、一番大きなジョイントのところを最初に議論をお願いしたい。
【井上委員】
 作業チームとこの委員会とで見解が違ったらどうするんですか。
【市川座長】
 それはこの委員会です。委員会と調査チームとの見解の違いは、それはやはりお互いに修正していかなければいけないと思うんです。というのは、作業チームの方はアンケートをとって、全大学の意見が持ち上がってきて、また、団体の意見ももちろん聞かれている見解だと思います。そういう過程があるので、調査チームの見解を提出してもらい、それをもとにここで議論して、フィードバックしていくということになると思う。最終的にはここでやることになる。
【松木氏】
 私、発言してよろしいですか。松木ですけれども、先ほどのOutcome-Basedの話なんですけれども、コアカリキュラムはやはりコアですけれども、これですべて完成するわけではないわけです。ですから、アウトカムを意識したことをコアカリに書き込むというのはなかなか難しいところだと思うんですけれども、そこをコアにしてそれぞれの大学が更に教育して完成するというのがベースだと思いますので、ですから、本当のコアの部分を書き込んで、そこがコアになっていればいいんだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
【伊藤委員】
 そういうことなんでしたっけ。
【市川座長】
 大筋では、それでいいと思います。6年制教育というのが、薬剤師養成教育というのが今回の改訂の中心課題となっているということですね。今までは薬学研究者並びに、という形で薬剤師の位置づけを置いて、非常に多方面の、多領域という言い方をしていたんです。それがもう少し具体化して薬剤師の位置づけというのをはっきり持ってくるということになる。
 そうしたら、そんなことで、次回、薬学教育協議会の方から実務実習のヒアリングを受けるということと、それから、もう一度理念を含めた、ここにある資料4のところに少し具体的に入りたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、今日はこれで時間になりましたので、何か事務局の方から。
【伊東薬学教育専門官】
 次回の委員会ですが、11月21日月曜日、5時から5F1で開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
【市川座長】
 それでは、長時間にわたってありがとうございました。終わりにします。

 

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