大学における教育情報の活用支援と公表の促進に関する協力者会議(第2回) 議事録

1.日時

平成23年6月27日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

学術総合センター1階 特別会議室

3.出席者

委員

(委員) 
岡本和夫,金子元久,鈴木典比古,関根秀和,髙倉翔,中西茂,早田幸政,福原美三,水上貴央,宗像敏夫,渡辺善子

(特別委員) 
浅田尚紀,圓月勝博,小田一幸,佐久間勝彦,村上哲也,山田信博

広島市立大学事務局企画室主任光田直史

大学評価・学位授与機構評価支援課課長補佐高橋信雄
大学基準協会大学評価研究部主幹土居希久
日本高等教育評価機構評価事業部長伊藤敏弘
短期大学基準協会事務局次長竹田貴文

文部科学省

小松高等教育局審議官,義本高等教育企画課長,榎本高等教育政策室長,西川高等教育政策室室長補佐,石橋大学振興課課長補佐

4.議事録

【鈴木座長】  大学の教育情報の公表・活用というテーマは、国内外の状況について幅広い観点から検討していく必要があると考えております。そこで、前回6月17日の会議において米国における大学の情報公表の動向について紹介していただくとともに、インターネットを活用した授業内容の公表の事例の説明をいただきまして、諸外国において教育情報の公表が多様な展開をしているということを見てまいりました。
 前回の議論も踏まえながら、引き続きいろいろな観点からご意見をいただきながら論点を確認していきたいと思いますけれども、本日は国内の状況につきまして2つの観点から議論ができればと思っております。
 1つ目は、個々の大学において教育情報の公表・活用に関して、どのような考え方で取り組み、また、実務的な面も含めてどのような課題があるかということを検討したいと思います。
 もう1点は、そうした各大学での教育情報の公表・活用の状況について、評価の観点からどのように見ることになるのか、また、評価の過程において教育情報をどのように扱っているかということについて現状を把握し、今後の議論の参考にしていきたいと思っております。
 事務局から協力者会議としての検討課題の全体像、及び認証評価との関係で考えられる論点について説明を聞いた上で議論をしたいと思っております。

 (文部科学省から配布資料の説明)

【鈴木座長】  教育情報の公表の制度化を受けまして、各大学では教育情報の公表、さらにはその活用に関する取り組みを進めているところでございますけれども、その状況や課題につきまして、浅田委員と山田委員からご報告をいただき、検討を深めてまいりたいと思います。

【浅田委員】  本学におけます教育情報の公表の取り組みにつきましてご説明いたします。
 まず、本学の概要をご説明します。いわゆる地方の中規模の大学として今回、説明をということだと思いましたので、少し概要をご説明します。
 平成6年に開学いたしまして、今年18年目を迎えておりますが、建学の基本理念というのが、広島でございますので、「科学と芸術を軸に世界平和と地域に貢献する国際的な大学」ということでスタートいたしました。ここにキーワードが全部入っておりますが、国際学部、情報科学部、芸術学部の3学部でございます。平成10年に大学院、それから広島平和研究所を設置しております。そして、昨年、平成22年に法人化いたしました。国立大学は一斉に法人化したのですが、公立大学は各自治体が判断をするということになっております。公立大学も順次法人化が進んでおりまして、もう8割近く法人化が進んでおります。
 本学の規模は、学生数が約2,000人で、教員数が約200人ということでございます。実は、この200人というのがポイントでございまして、全教員の顔が見える、そして声が届く規模です。これが1,000人規模になると、なかなか一堂に会してというのは難しくなっていくのでございますが、そういう意味では非常に大学全体が一体感を持つ規模だということでございます。
 それから、昨年、法人化をいたしました。陸上競技で言いますと、1周遅れたところで、要するに国立大学は6年終わっておりますので周回おくれなのですが、そこで皆さんの走り方を見て、周回おくれでトップを走ろうということです。そういう意味で改革がうまくいくように、いろいろな法人化の課題も含めて勉強してスタートしたということでございます。
 それでは、次のページでございますが、法人化に当たりまして、制度改革、これは大きなものなのですが、実はポイントは意識改革だということで学内的にかなり議論をいたしました。今回、いろいろな大学改革をその中に持ち込んだのですが、この会議のテーマにあります情報公開についてかなり徹底した議論を行いました。特にそこで、教員活動情報を公開するという原則を法人化に際して導入いたしました。これはどういうことかといいますと、各教員が、教育、研究、大学運営、社会貢献の情報を公表するという原則を全学で導入いたしました。この目的としましては、教員の意識改革をここで徹底し、それによる教育の質の向上を目指すということです。というのは、大学というのは基本的にはやはり教員がエンジン部分です。教員の意識がやはりそこで大きく前進して、全体の質が向上するという、そこにちょうど法人化という大きな改革がうまく使えるのではないかということでございます。
 各教員が、要するに一人一人が説明責任を持たなくてはいけない。そして、各教員が自己点検と評価をするという、いわゆる教員の小さな、個人個人のPDCAサイクル、それの集合体が大学全体としてのPDCAサイクルをつくるという構図をつくりました。これは大学全体から見ますと、市民に対する説明責任です。ここであえて市民と書きましたのは、広島市立大学ですから、設置自治体が広島市ですので、基本的には市、いわゆる非常に地元といいますか、そこの意識が非常に高いので、市民に対する説明責任という言い方で、これは教員が一人一人が意識してくださいということです。
 もともと大学というのは社会的存在だというのは、誰もそれは分かっていたはずなのですが、実は、大学全体も市の直営であったときというのは、市長に説明する、あるいは市議会に説明するというのが直接的な責任でありました。市長も市議会も市民から選出されていますから、結局は市民に説明していることになると思いますが、もっと直接的に市民に目を向けるというのは、やっぱり法人化の大きな変化です。社会に直接目を向ける、教員が社会を見るというところがポイントだと思いまして、市民に対する説明責任としました。
 これは同時に公立大学の存在意義を説明することになります。どの大学もそうですが、教員自身が別に社会に目を向けていなかったわけじゃないんですね。ただ、それは専門分野であったり、学会であったり、非常に限られた深いところで一生懸命説明責任を果たしていたのですが、多くの人に対して丁寧に広くしていたかというと、そうではない。やはりその意識を一人一人が持つことによって、大学全体の説明責任が高まるという考え方です。
 それから情報公開のもう一つの効果は、大学自身が存在感を向上させる点です。これは広報の一環になっていると思います。大学自身は今、いろいろな競争の時代になっていますので、大学のいいところをいかにして世間に公表していくか、知らせていくかというのは、大学としてより積極的、意欲的になるべきところです。その効果をプラスのものとしてフィードバックしていくという点につながっていくので、広報という観点で積極的に効果があるのだという意識を持っております。
 もう一つは、教員評価の基礎データに使えるということです。これは内部利用の観点です。当然、どの大学も教員という組織、あるいは個人個人を評価しなくてはならないということになっています。評価という言葉になかなか教員は敏感ですので、心理的抵抗感が生まれるのですが、これはやはり全体として責任を持たなくてはいけないということと、当然、自ら活動して、頑張ったことは、普通は全部出したいはずですので、どんどん出すことを前提にしています。出してもらえれば、それが大学の活動情報の公開になりますし、大学として堂々と各教員の活躍を説明できるということです。しかもそれで出してもらったものは内部的に評価するということがあります。評価というと、すぐに厳しい話を連想されるのですけど、実はよく頑張った人は表彰し、公表することにしました。表彰することで、そのような頑張りを大学としては望んでいると伝えることができます。昨年度は法人化した1年目ですが、22人の教員を表彰しました。それは、全学にも、こういう活躍に対して大学としては貢献を認めていますということを公開することによって、みんなにそれをお手本にしてほしいという思いです。
 それから、もう一方で、やはり何らかの意味でパフォーマンスがあまりよくなく、改善がみられない場合には、注意をし、警告をするという両面が必要ですので、そういう形の評価の一部としてこういうデータも使っております。
 教員活動情報とは、いわゆる氏名、所属、職位等の基本情報8項目、それから教育に関して9項目、これは担当授業、シラバス、それから、学生指導などがあります。それから研究、これは12項目ですが、専門分野、研究課題、獲得研究費、著書・論文、受賞歴等があります。それから、大学運営は6項目でございます。役職から各種委員会、広報活動、国際交流などです。大学の中での運営の負荷が各教員でかなり高まっていまして、その部分もきちんと評価することになりました。やはり非常に汗を流している先生方、つまり教育・研究というのは本来の職務なのですが、それ以外、組織に対して貢献している人もきちんと評価しましょうということで、こういう項目もそろえております。
 それから、社会貢献でございます。大学自身が社会貢献をしなければならないというのが、教育基本法にも謳われておりますように、各教員個人が積極的に社会と関わって欲しいということで、学外の委員、学会活動、講演、公開講座、産学官連携等の活動を全部集めて7項目です。
 全部合わせますと42項目ですが、前回もお話ししましたように、非公開にしなくてはいけないデータもあるんですね。例えば、入試業務に関わったことです。問作を担当しました、採点を担当しました、これは絶対に公表できませんので、そういうものは全部伏せますが、しかし、それも結構大きな負荷を持っております。だから、中ではきちんとそういうものは評価していきたいということで、項目を設けております。
 こういう流れの中で、法人化した1年後に、先ほどから出ています、教育情報の公表の義務化の話がありました。こういうバックグラウンドを持った中で我々としてはそういう公表に取り組みました。既に公表しましたが、公立大学協会のガイドラインが出ましたので、それに沿った形で我々として取り組んだ内容がございます。それについては光田のほうから説明いたします。

【広島市立大学 光田主任】  教育情報の公表に係る本学ウェブサイトでの公開についてということで、経緯ですけれども、先ほど学長から説明がありましたように、本学は平成22年度に法人化しまして、それまでは市の組織ということで、独自のホームページというかウェブサイトはありましたが、法人化に併せてウェブサイトをリニューアルしようということで、ウェブサイト自体は10月にリニューアルしたのですけれども、そういった流れの中での取り組みを説明いたします。
 まず、平成22年6月の省令の公布に始まって、公立大学協会主催の担当者協議会というのがございました。10月にガイドラインの説明ということで、担当者として出席した後、公立大学協会の第3委員会が開催されまして、その中でもガイドラインの説明がございました。その後、11月から本格的に本学の事務局内に人員を置いて、ウェブサイトのコンテンツ内容の検討を開始いたしました。その後、23年1月19日とあるところですけれども、ウェブサイト統括部署ということで、企画室というところがウェブサイトを統括、管理等を行っている部署になりますが、そのコンテンツ構成の素案を作成しまして、学内執行部に対して考え方を説明した後に、1月末から2月末にかけて協議等をした上で、2月21日にコンテンツの構成を決定いたしました。
 そこから、ウェブサイト上の既存のページを活用できるものもあったのですけれども、新たに作らないといけないページというものもございましたので、そういったコンテンツの作成作業に入りまして、3月14日、以下のコンテンツを公開ということで、教育研究上の基本組織、いわゆる学部、研究科といった基本組織であるとか、教員情報というところなんですけれども、教員数、職位別、男女別というような教員情報、3番目の授業に関することと、これはシラバスになるのですけれども、4番目、教育研究環境ということで、いわゆる施設概要というところになりますが、そういったもの。5番目、学生支援ですけれども、奨学金であるとか就職支援、留学生支援にかかる情報というものを公開いたしました。先立って公開したということになります。
 3月末になるのですけれども、例えばアドミッションポリシーという教育研究上の目的であるとか、そういった新規ページを含めた残りのコンテンツを公開したという流れになっております。
 ウェブサイトの概要が6ページ、7ページにございます。簡単にご覧いただければと思うのですけれども、まず、法定事項としまして、横に、例えば、1、大学研究上の目的というところがございますが、その横に新規作成というところがございます。こういった新規作成と付している部分が、本学において新たにこの省令の公布を受けてつくったものです。概ね既存ページへリンクということで、対応できたのですが、やはり省令や公立大学協会のガイドラインに沿った内容に改訂しないといけないということもありまして、ウェブサイトは10月に大幅にリニューアルしたのですけれども、そういった改訂作業というのはかなり膨大なものであったと感じております。
 8ページでございますが、これが本学におけるウェブサイトのトップページになります。トップページの左下の部分に、教育情報の公表ということで書かれており、バナーとして設定しております。ここをクリックしますと、8ページの下の方にまいります。教育情報の公表ということで、法定事項、任意事項を書いております。
 そのサンプルとしまして、成績評価、進級基準というのが、学習の評価、卒業認定基準のところをクリックしますと、GPAの制度であるとか、進級要件、卒業論文等の登録条件というのが、クリックすればこういう画面が出てくるというような状況になっております。
 10ページをご覧いただきますと、これは任意事項ということで掲載しておりますが、本学は平成21年に大学評価を受け、その結果のページとして自己点検・評価という項目を出しており、自己点検・評価報告書(2009年度)というところでアンダーラインを引いてあるのですが、そこをクリックすると評価報告書がそのまま出るという形でウェブに掲載しております。
 教育情報の公開の状況に関する説明は以上でございますが、11ページに定期的に実施される調査の状況をまとめております。本学で独自に調査した結果なので、厳密なものではございませんが、定期的に実施される調査の件数というのが152件ございまして、調査主体別ということで出版社とか進学情報事業者ということで、概ね半数ぐらいがそういった事業者から調査があります。その次は官公庁からの調査があります。その下に依頼内容別というところがございまして、主なものとしましては入試に関すること就職に関することということで、いわゆるデータの紹介がかなり多数を占めております。ここで申し上げる部分ではないのですが、そういったデータベースについてはさまざまな調査の中で、ウエブにも掲載しているという中で、こういったものの対応がかなり事務的な負荷があるということで、参考までに掲載させていただきました。

【浅田委員】  今の調査ですけれども、ここを整理したもので見えていないのが、量的な負荷なんですね。1件あっても膨大な調査量であったり、それから、数字を単に求めるものと記述を求めるものはものすごく質も違います。そのため、年間を通じたかなりの負荷になっております。したがって、それらはやはりきちんとした形のデータベースとして、そこに登録して、それをまたいろいろなところで使うという制度に移行していくべきだろうと思います。

【中西委員】  42項目中、非公開は入試業務などの6項目とありますが、この6項目は具体的に何なのかということを伺いたいと思います。非公開以外は公開という前提という、そういう認識でよろしいのでしょうか。

【浅田委員】  6項目は内部で確認するということで、外には出さないという意味で非公開ということです。

【中西委員】  6項目というのは、入試以外どういうもがありますでしょうか。

【浅田委員】  幾つかございますが、まず教員にとって、ちょっとデリケートな部分がかかわる部分は、やはりスムーズに制度を実施するということで、内部で扱うことにしました。研究費に関して、例えば申請状況全般を調査しているのですが、申請状況よりも獲得情報は公開をどんどんしてくださいということで、申請をどれだけしているかということは内部的なデータにしております。
 それから、運営負荷のところで、いろいろな委員会、会議等がございますが、それについて出席というのは当然見るのですけれども、その状況というのは内部的に見ましょうということでございます。
 それから、FD研修というのを何回か行っておりますが、それの参加状況とか、授業アンケート類で、これも内容によるのですが、一部非公開というような形になっております。
 大体そういった状況で、やはり議論して、原則全面公開ということで、全部出したらいいのではないかという議論をしたのですが、それについてはいろいろ誤解も生じるのではないかという意見がありました。そういった点も考慮して、それはやはり皆さんに気持ちよくやっていただかないと、制度そのものが進まないということで、幾つか項目は設けております。

【髙倉委員】  以前、公立大学協会の情報公開ガイドラインについてご説明をちょうだいいたしました。それが大きなインパクトになっているようにお見受けいたしますけれども、このガイドラインを大学として取り込む場合に、すんなりとガイドラインを取り込めたのか、あるいはそうじゃなくて、それなりのリアクションもあったのか、そのあたり。あるいは、もっと極端に言いますと、取り組みの中でここのところはガイドラインと違うよというようなところがもしあれば、お教えいただければと思います。

【浅田委員】  公立大学協会の第3委員会というのがガイドラインを決めていったのですが、その議論の中に私も入っていましたので、そこに公立大学の学長さんが集まって、ガイドラインづくりに関して意見を出されていました。その中で、全学でこれに合わせてするというのは、結構負荷も高いのではないかという意見はございました。一つは、作業的にウェブで公開するということの、要するに技術的なことも含めた負荷がなかなか見えにくいというところもあって、これを一斉に、いわゆる昨年度末で全部揃えるんだということについては、それはなかなか困難じゃないかという声がありました。それから、揃える内容につきましても、今言われましたように、やはり難しさがあるんじゃないかと、そういう議論はございました。
 ただ、公立大学としては、基本的にもともとこういう内容をいろいろな形で公表してきてばらばらになっているのを、まず揃えて見やすくすることが一つポイントだと考えました。だから、そこのところは既にあるものを集めてくださいということと、それから、そこにたどり着きやすくするために、トップページ、それから1ページの項目ページを用意すると、そこまでは統一することとしました。あとは、既存のデータにリンクを張る形で、とにかく外に見やすい形をそろえましょうというのがまず原則でした。
 あと、このガイドラインに沿ったものがないところは、やはり新規作成というものがどうしても出てきます。そこは大学によって作業負荷も変わるということがあって、それについては揃い次第順次ということだと思います。
 我々の大学に関しましても、ウェブサイトのリニューアルという大きな作業があったので、そこにあわせてこの作業をしたのですが、それなりにやはり負荷はありました。だから、そういう意味で言うと、なかなか見やすく情報を公開するということの難しさというのは、そういう作業をする人を専門に常に抱えているわけではないというのが多くの大学の実態だと思いますので、そのためにある人手を割いて、時間を割いてということをやる必要があったということです。ただ、順次、情報を更新していかなくてはいけないので、一時的にやればそれで済むのではなく、常に最新情報を出していくという体制を同時につくらなくてはいけないことが問われているのだろうと思います。

【福原委員】  3ページのところで、教員の意識改革ということを非常に重要視されていて、これはこの取り組みの前から大学として積極的に取り組んでおられるということ、非常にすばらしいことだと思うのですが、やはり教員の協力をどうやってとりつけていくか、少なくとも教員に対してどうやってインセンティブを持たせるかというのがすごく重要だということで、その後のご説明の中でも表彰されているというお話をされていましたけれども、そのあたり、例えば具体的に教員の教育活動に関して、業績の評価に関連するような取り組みをされているのか、あるいはその辺の公開との関連について何かお取り組みがあればお話をいただけると。

【浅田委員】  先ほど申し上げましたように、これで全てのものを見ているわけではありません。こういう評価をするときに難しいのは、原則として全データを網羅的に集めて、しかもそれを点数化して、ランキングをつけて、上から何位の人は表彰、下から何位の人は注意とか、そういうことは多分そぐわないと思います。
 というのは、大学というところは、教員の分野とか活動状況が全部違います。負荷も単純な1つの軸でははかれない。だから、まず基礎データとしてこれは共通で皆さん出しましょうということをやっています。それに対してもあまり協力的でない先生も当然中にはおられます。要するに、どんどんそういうデータを出してくれる人と、それはなかなかそういうことがお得意でないのかもしれませんが、登録していくのが遅れる先生もいます。しかし、見えるものに対して大学はきちんと評価しますよということをすれば、当然、皆さんが出すという方向が促進されていくだろうと思っています。
 基本的に私は、教員に対しては性善説であるし、自主的な行動を期待すべきだし、そしてプライドを持っている人たちがいかにもっと活躍してくれるかという意識で見ています。そういう意味では、まず表彰というのは、先ほど言いましたように、教育活動、研究活動、大学運営、社会貢献、その4項目で特に顕著な働きがあったということです。それは本人も自分は頑張ったと分かるし、それから周りの人も、あの人は頑張ったねということが分かる。つまり、本人も周りも分かるから、その表彰というのは意味があると思っています。
 そういう意味で言うと、こういう公表されたデータがみんな見られる状態になることでそれが分かるというのと、それから、当然、表彰理由も提示しております。こういう部分で活躍がありましたと。そういうことで、本人も周りも納得してそういうものを受け入れてもらう。それを1つまたインセンティブにして、次の段階に進んでもらう。そういうふうな形に今、つくっております。

【山田委員】  国立大学は、やはり大きく節目が変わりましたのは法人化だと思っております。やはり法人化で自律的運営ということで、我々、裁量の範囲が広がったわけですけれども、それと同時にやはり社会への説明責任、あるいはそれに伴う評価というものが重要な業務になってきたと思っております。特に私自身は、アカウンタビリティーを高めていくというのは、オートノミーと同様に大変重要な要素になってきたと思いますし、そのバランスをとっていくということがこれからの国立大学にとっては大変大事な部分であるというように思っております。
 公表に向けた検討ということですけれども、これはもちろん、法人化された第1期から取り組んでおります。そして、第2期の中期計画におきましては、「本学の特色・魅力や教育研究内容及び運営状況等について、国内外の理解を深める戦略的広報を展開する」ことを掲げて取り組んでいるというところですし、それから、平成23年4月からの公表に向けて、法令改正の趣旨を踏まえて、必要とされる教育情報を整理したところです。
 もちろん、既存の公表情報というのはたくさんありまして、大学概要ですとか入学案内、例えば入学案内にはアドミッションポリシー等々も記載されているわけです。そのような、既に公表されているものも含めて、今回の法令改正の趣旨にあわせて少し整理を始めてきているということです。
 例えば、次のページ、3ページにありますのは、その趣旨にのっとって、公表されてまとまった形として発表されているものです。先ほど、広島市立大学でもお示しされたような内容がホームページからワンクリックをしますと、ホームページ上では広報・公開といった項目かと思いますけれども、そこをクリックしますと、この公表した教育情報というものを見ることができます。各々につきましては、またクリックすることによって、そのページに飛んでいくということになるかと思います。このような情報一般に関しましては、筑波大学では、情報環境機構が学長のもとにつくられておりまして、企画評価・情報担当の副学長とともに、情報環境機構長の実質的な運営により、普段から常に討論、議論をされながら進んでいるという状況です。
 それから、いろいろな情報の取り扱いですとか、その運営に関しましては、企画評価・情報担当の副学長のもとに運営をされております。そして、もちろん企画評価・情報というのは、いろいろな情報が集まってくるところですけれども、教育担当の副学長、あるいは研究担当の副学長、あるいは人事担当の副学長等々からの情報を企画評価・情報担当の副学長のところで集約をしていくということになりますし、それから、情報環境機構のところでより効率のよいウエブ上の情報にしていくとか、あるいはICTの活用によって、効率よく教員の業績を集約していくというようなことを行っている次第です。
 4ページを見ていただきますと、教育上の目的に応じ、学生が修得すべき知識及び能力に関する情報。例えばこれは第1期の中期目標期間のときにつくられたものですけれども、学士課程、各教育組織における教育目標、教育の内容・方法、達成すべき水準、質の保証を記載した筑波スタンダードというものを、つくっております。
 次のページに、その一つの人文・文化学群の例を示してあります。この筑波スタンダードの、最初のページには、筑波大学学士課程の教育目標の達成に向けた方針というようなものが掲げられております。そして、大きく方針1、方針2、方針3と掲げられております。その中には教育システムのきめ細やかな指導体制の整備ですとか、学生の主体的な学習を促すカリキュラムの編成、FDの推進というようなものが掲げられているわけです。
 それから、教養教育スタンダードに関しましては、ちょうど今、このようなものをまとめたところです。これも不断の改訂というものを我々は行っていかなければいけないと思っております。もちろん先ほど申し上げた学士課程の筑波スタンダードも、第2期の中期目標期間において、必要に応じて、さらに改訂をしていかなければいけないということです。
 それから、もう一つ、大学院課程におきましても、これから実質化ということを進めていくこと、あるいは国際的な通用性ということを進めていく上で、質保証が大変重要になるということで、大学院スタンダードも、これは第1歩を始めたところです。しかし、これはまだ第1歩でありまして、今後さらに内容を吟味して、そしてより深いものにしていく必要があるだろうということになっております。これはいずれもホームページ上から見ることができる内容です。
 そして、実質上の課題ということですけれども、本学の教育に対する社会の理解と信頼を一層高めていくためには、よりわかりやすく、より有益な、そして、より具体的な情報の提供が必要であるだろうと思っておりますし、特にステークホルダー、受験生、保護者、企業等に対して、社会に対して情報を提供していく必要があるだろうと考えている次第です。
 その次のページは、筑波スタンダードの一例をお示ししています。これも第1期の中期目標期間のときに3年ぐらいかけてつくったものですけれども、各学群、あるいは学類においてのいろいろな共通のスタイルというものを保ちながらつくったというように記憶をしております。
 その次のページは、教育の質の向上へ情報がどのように活用されているかということです。これは、まず1番目には、教員の業績等を集積した研究者情報システム等を活用して、大学教員業績評価を行っているということです。これについて初年度はやはり各教員がこのシステムに入力をするということで、いささか負担があったかと思いますけれども、2年度目からはかなり負担が軽減をされているというように思っております。私自身も、この情報システムを用いて入力をしてみて、それほど大変ではないのではないかなと思っておりますが、やはり負担の感じ方は各教員によって随分違うというような印象を持っております。
 このシステムは研究推進の担当事務で運営しているものですが、そこでは、教員の教育、研究、社会貢献・学内運営活動、これは広島市立大学と同様ですけれども、活動について記載をされるということで、それによって改善、質の向上を図るということです。業績の評価は、全学の評価委員会において方針、あるいは実際の運用方法等を決定した上で行うということになっております。そして、各組織、教員にフィードバックするとともに、学外に公表しておりますし、全学的に特に優れた活動を行った教員、これはSS評価教員という教員になるのですけれども、各セクションで1人程度選ばれることになりますけれども、その教員に関しては学長表彰を行って、そして、その表彰者を一堂に会して講演会を行っております。この講演会は、先生方のモチベーションを高めるということと、それから、教員にもその講演内容を聞いていただくことによって、今後の質の向上にお役に立っていただけるようにということで行っております。我々が聞いておりましても、他分野の教員からの教育、あるいは研究、あるいは社会貢献に対する発表ですので、大変参考になりますし、そういうところから新たな異分野の連携というようなものも生まれてきているという、良い効果も生み出しているという印象があります。
 その次に、全学のシラバス作成のガイドラインを策定して、シラバスの記載内容を点検・改善しており、これも年度年度、常に改革、改善をしていかなければいけないところですし、もちろん教員も変わってまいりますので、かなり変化していくものだというように感じております。
 それから、もう一つ、授業内容をできるだけ社会に向けて公開していくということで、筑波大学のオープンコースウェアというのも平成19年4月から公開をしております。ただし、まだ海外で行われておりますような、授業全体を動画配信するというようなところまでは至っておりません。授業資料をネット上で公開して、知的資産を共有して、社会全体で利用していただこうという取り組みです。多くの授業が公開され始めておりますし、これも日々増えているという状況です。アクセス件数もかなりの数にのぼり始めているという状況です。いろいろな受験生が見ているというようなことを伺っております。
 それから、今後の検討課題ということになりますけれども、大学教育の国際競争力の向上の観点から求められる情報、これは特に我々研究型総合大学として、国際的な通用性というものをより確立していく必要があるだろうということで、より国際的に通用する情報を積極的に準備し、発信していかなければいけませんし、特に海外拠点における活動、あるいは海外から来る学生に対しての国際的に通用する情報発信というものが今後重要になると考えて質の向上に努めているところです。
 それから、学内における情報の蓄積と活用につきましては、先ほど来申し上げております環境情報機構を通じて行っているところですし、それから、システムについても全学的に共通できるようなシステムに段々とバージョンアップされてきている状況です。
 それから、大学におけるIR、これに似たようなものは先ほど来申し上げているところでは、私どもの大学では企画評価のところがかなりIRに近い活動をしているというように思っております。例えば、私どもの大学は病院を持っておりますけれども、病院ではかなりIRに近い部分としては、経営戦略室というようなものがありますけれども、そういうものも今後、大学の中では大いに活用していく重要性があるだろうと感じております。
 それから、法人化以降、社会への説明責任ということもありますし、それから、筑波大学はもともと新構想大学として始まったわけですけれども、法人化するまでに大学院の重点化というのも加わってまいりまして、いろいろな意味で組織が複雑化してまいりました。そして、情報発信するに際しても、やはり大学の持っている仕組みの複雑さというものが本当に社会から見てわかりやすいかどうかというようなことも議論がありましたので、そういう意味で社会からの期待、要請にこたえ得るような新たな教育体制への改革をしなければいけないということで、法人化の1期も過ぎたということで、2期目から、より研究、教育の質の向上、そして大学のシステムの、より国際的な通用性のあるシステムへの改革を始めているというところです。それから、大学教員業績評価というものを既に始めておりますけれども、本年度からは組織評価というものも実施をしております。これは第2期の中期目標期間の1年目に、まず大学執行部と各組織との対話というところから始めて、いろいろな意見を吸い上げながら、そして2年目からは実際に組織評価、サイトビジットという格好も含めて組織評価を始めているというところです。そして、各組織の取り組みを確認するとともに、中期計画が着実に進行しているかどうかの進捗をチェックしているということですし、それからさらに優れたポイントというものを全学的に共有するというようなことも始めています。
 9ページは、現在我々が行っております改革の概要を示しております。本年度の4月から改革の移行期にあります。そして、10月から実際にここに書かれているようなシステムで運営がスタートするということになります。特に、教育に関しましては、学士課程、修士課程、それから大学院課程を含めた学位プログラムというものを意識した、学生の視点に立った、かなり連続性のある教育というものを考えながら教育組織というものを再構築しようということですし、その中では改革の取り組みとして学位授与、それから教育課程編成、それから入学者選抜の体系化、成績の評定方法の見直し、それから教員力の向上等々を実施していかなければいけないということです。
 それから、教員の組織につきましては、これも大分複雑化してまいりましたので、大きなディシプリンで括ることによって、アンダーグラデュエイトからグラデュエイトまで一貫した教員組織をつくっていこうということで、現在行っております。そして現在、各教員はどの教員組織に所属するかということももう一度じっくりとお考えくださいということから、移行期間にあるというところです。
 最後のページは、これは私自身が考えているところがあって始めたものですけれども、大学は結局、いろいろなリソースを使って教育の質を上げ、研究の質を上げ、社会に貢献をしていくということですけれども、その結果としてやはり社会から十分に大学の中身が見えるようにしていかなければいけないだろうということで、積極的な情報発信とともに、わかりやすい形で大学の見える化をすることが大事だろう。しかも、一方的な情報発信ではなくて、我々が発信すれば、社会からの作用、反作用が期待できるような形で情報発信をしたいということで、大学のブランディングということを進めております。我々筑波大学というものはこういうふうに考えているということを発信させていただいて、学外からは、さて、どうでしょうかというようなご質問があれば、コミュニケーションはうまくいくというように我々は考えております。
 スローガンをまずつくりまして、「IMAGINE THE FUTURE.」というスローガンをつくりまして、そのもとに大学の理念でありますとかミッション、あるいはビジョンといったものをもう少しくだけた格好で、社会にわかりやすい格好で今、発信の準備をしているところです。これも今、全学からご意見をいただきながら進めているところです。メッセージソングというのもつくって、その中に我々の大学の理念等がわかりやすい形で組み込まれていればいいかなというように思っております。

【村上委員】  シラバス作成のガイドラインというのは、イメージがわかないので質問させていただきたいのですけれども、これはページの体裁だけじゃないと思いますし、あと、説明にあった、筑波スタンダードですね、これとの関連もあろうかと思いますので、具体的に例があったら挙げていただきたいと思います。

【山田委員】  シラバスは私自身がつくった経験がありますので、その中には授業の達成目標ですとか、授業の内容、それから成績評価をどうしていくかとか、そういうようなもの、あるいは参考資料等々も含めた内容になっているということかと思います。

【村上委員】  例えば、全体教育に対する当該科目の位置づけについてはいかがでしょうか。

【山田委員】  そういうのも、私自身はちょっと前の時代でしたから、異なるかもしれませんけれども、今は入っていると思っております。

【圓月委員】  今後の検討課題として、国際的通用性、あるいは国際競争力というふうなことをおっしゃっておられました。また、中期計画の中にも、国内外への理解を深めるということを挙げておられました。日本を代表する研究大学の一つとして、国外への発信というのは非常に重要な問題になりつつあると思うんですけれども、筑波大学の場合、いろいろな先進的な取り組みをなさっているかと思いますので、どういうふうな例があるか、また、課題としてどういうふうなものがあるかということをご説明いただけたらと思います。

【山田委員】  ウェブページが日本語と英語と中国語と韓国語で公開をされております。そこから入っていきますと、大体の情報には到達するというように理解をしております。それはなぜかと申しますと、先ほど、広島市立大学でもお話がありましたけれども、いろいろな内外からの情報収集の働きかけがあるわけですね。そういうものの中には、国際的にも利用されるような情報というものが出てまいりますので、国際的なものも逐次アップしているという状況です。
 ただし、それが、実際にまとまった形としてこれからは掲載されていく必要があると思いますし、これは私どもの大学だけではなくて、国立大学全体としてこれからの大事な方向性であると思っております。

【中西委員】  情報環境機構という組織はどういうものなのか少しご説明いただけますか。

【山田委員】  情報環境機構というのは、大きく言ってしまいますと、筑波大学における、まさに情報システムを運営しているところです。そこにはICTの実際の運用も含まれます。そして、そこには各部局の代表者が集まってきて、法人の情報化戦略などについての議論をしています。

【中西委員】  事務職員的な方も含めると、どういう規模の組織になるのでしょうか。

【山田委員】  情報環境機構は学長のもとにあって、企画評価・情報担当の副学長とともに、実際の運営を情報環境機構長が行っています。その下には各部局の代表者などからなる委員会があるというかたちになります。事務は、総務部の中に情報化を推進するセクションがあり、教員と協同して担当しています。

【関根委員】  広島市立大学も、それから筑波大学も、それぞれのこれまでの積み上げについて、共通して質問させていただきたいのですが、二、三日前、日経新聞に神戸大学の川嶋先生が、公表と言っているけれども、ほんとうはしたくない、見せたくない公表という角度から問題を突いた文章を書いておられたのですけれども、本日のそれぞれの大学での、ほんとうにすばらしい実践に至るまでの、つまりさせられるという受け身から、見せる化するという主体的な方向へ積み上げが動いていく、そのスタッフの間の意識の共有化みたいなところを、どういう形でお進めになったのか。
 私のように私立の大学に勤めている場合は、それから、認証評価にもかかわっていますけれども、生存をいかに確保するかというところに重点が行きますから、だから、必ずしも見せたいということと、見せなければならないということが一致しない。しかし、そこを越えていかないといけないわけですから、そうすると、スタッフの間に共通の共有意識をつくっていかなければいけないと思うのですが、これまでこんなにすばらしい積み上げをなさった、その積み上げの陰にどういう配慮やご努力があったのか、ちょっとお聞かせいただけたらと思います。

【浅田委員】  大学の規模というのが、かなり効いていると思っています。というのは、法人化の前から、法人化後もそうですけど、全教員を集めて直接説明する場を持って、そこで直接質問を受けて答えています。
 その場は教員と大学運営側としてはオープンにやっています。大学としても社会にちゃんと説明する責任がある情報に対してだれもノーはないんですね。だから、そういうところはまず前提として共有しましょうと。
 あとは、個人個人の努力の問題があります。それを強制できるかというと、それはなかなか難しいところがありますので、要するにそれをやりやすい環境はまず提供する。それでみんながやれば、やはりやる雰囲気が出てきます。だから、多数がそういう方向に向くように、我々としてはうまく全体を誘導していくということだと思います。
 だから、完全実施ということを考えると、すぐに罰則とか、そういうことになるのですが、それは大学にそぐわないと私は思っていまして、むしろきちんと説明して、全体の空気がそういう方向に醸成をされていく。そういう努力を我々はとにかく努めていく。その中でも当然、反対意見を述べられたり、そういうことに対して否定的なことを言われる意見が出てきますが、それもオープンにしてやりましょうということです。

【山田委員】  筑波大学は建学の理念で「開かれた大学」と言っておりますし、それから、従来の大学はややもすれば狭い領域に閉じこもりがちといったことも述べてありまして、そして常に先導的な大学の改革を行うということがありますので、そういう意味からも、全学的にはかなり共通理解はあるという意味で進みやすいのかなと思っております。
 それから、もちろん、大学院の重点化でありますとか、法人改革というようなものを通じて、教員にもやはり社会への説明責任の重要さということが伝わっていると思いますし、特に法人化以降、自律的運営をするためにこそ社会への説明責任もまた重要なんだという、やはり自律性と説明責任の両者がいい循環を生むように我々としては努力をしていきたいと思っております。

【鈴木座長】  2つの大学の例をご説明いただいたわけですけれども、そのご報告をいただきました内容も含めて意見交換に入りたいと思います。
 先ほど、事務局の説明から、資料1をごらんいただきますと、大学における教育情報の公表促進と活用の支援についてということから、今回の会議が始まったわけですが、この資料1は、1といたしまして、教育情報の公表についてということ、それから3ページ目に2として教育情報の活用についてという、この2つがございます。
 そして、1の教育情報の公表につきまして、1ページ目の下のほうに、主な論点ということがありまして、2ページまでこれが書かれておりまして、2ページの下のほうに、さらに検討いただきたい内容の例ということが書かれてございます。それから、3ページ目に教育情報の活用についてということもございますが、ここでも3ページの下のほうに主な論点とございまして、幾つか挙げてございます。そして、4ページ目にさらに検討していただきたい内容の例として、幾つかございました。それで、先ほどの2つの先進的な大学の例をご説明いただいたということであります。

【早田委員】  先ほどの2つの大学の先進的な事例というのを伺っておりまして、これをどう我が国の大学の教育の質の保証に使い、また、学生に対して有利な情報を提供するかということを考えた場合、特に私は認証評価の役割について考えてお伺いしたいと思います。
 広島市立大学のホームページを見ますと、教育情報の公表というところが独立してありまして、これを見ると、教育情報の公表の状況というのがわかるというような形になっています。こういう形にされている大学が最近増えていると思うんですけれども、しかし、必ずしもそうでもない場合に、認証評価機関が教育情報が公表されているかどうかの確認をする場合に、それぞれ大学ごとにその確認をしていくのかどうかということ。それから、教育情報の公表についても、広島市立大学のようにかなりきちんとまとまっているところもあれば、それぞれについて内部にリンクしているのでそれを見てくださいというところもあると思うんですけれども、認証評価機関はそういう手間ひまをかけて教育情報の公表というのがきちんとやられているのかを見るのかということと、それから、関連してですけれども、シラバスの公表状況については、部局によってシラバスの公表のガイドラインというか、そういうものが違っているところもあれば、それから、教員の情報について言うと、きちんとそれぞれ公表している方もいれば、何らかの理由でほとんど空欄になっているところもあると。そういうところについて、認証評価機関はどのような方針でその評価をするのかということが、実は疑問なんですけれども。
 そこでお伺いしたことは、認証評価機関、前回のアメリカの例で言いますと、自発性を基礎としているとは言いながら、全米規模で情報を集約して、それを何らかの形で公表するというような仕組みがあるようですけれども、仮に、基礎データをもとに質保証をしていかなければいけないという役割を担っている認証評価機関として、認証評価機関全体が教育情報の公表の基準というものについてガイドラインを考えてみたり、また、本日いただいた資料を見ると、評価機関ごとに提供してもらう基礎データは異なっていますけれども、少なくとも共通的な基礎データについて提供してもらうということについての合意を得るとか、そういうようなことというのは果たして可能なのかどうかということについてお伺いできますでしょうか。 

【大学基準協会 土居主幹】  基準協会のほうでは、評価者が評価する際に留意すべき事項というのを設けておりまして、その中で、きょう資料2の中で配られている基準ですとか点検・評価項目よりももう少し詳しいもので確認をしていこうというふうにはしております。シラバスですとか、教員業績についてもその点で評価の際に留意をして見ていこうというふうにはしておりますが、他の認証評価機関と共通で見ようというところはまだ特にそういう話し合う機会というのは出てきてはいないです。

【早田委員】  実際に認証評価をする場合に、規模の小さい大学と規模の大きいところでは、例えばシラバスについて見るとか、それから、教員業績を見るというのは、相当手間が異なってくると思うんですね。認証評価機関についても、それぞれ、審査、評価のスタンスが異なってくることに伴って、何かそういう共通のガイドライン、情報の収集、それから認証評価機関に集約されるデータについてガイドラインを決めたり、また、認証評価機関共通で公表できるような基礎データについて合意を得るということが、そういうことがあればいいと思うんですけれども、そういうことは可能でしょうか。

【小松審議官】  各認証評価団体の中でもいろいろ考えておられるのですけれども、今度、それをどうするかということについては、各団体ごとに、ここにもちょっと見えますように、認証評価ではかなり各大学が今、教育情報の公表ということで努力しておられることと相当重なっている部分があります。それから国立大学について言うと、国立大学法人評価というものがあり、これは大学としてのこういう教育情報ではなく、税金を大量に投入されている国に近い機関として、その税金が目的どおりに使われ、効果を上げているかどうかという観点から行うのですけれども、国立大学は教育研究を目的としているので、そうすると、教育研究関係の情報が当然関係しているということで、制度的には皆さん独立で、かつ理屈も全然違いますが、各大学の側なり、それから早田先生がおっしゃっている、外から見たときにどういうふうに見えるのかということを考えると、制度のそれぞれの理屈に合っていて、実際には結構ばらばらに見えるというところがあるわけでございます。
 そこで、それらについてはいろいろ皆さん考えておられるので、私どもが全部承知しているわけではないのですけれども、いろいろかかわったりした中で見ますと、今、少なくとも4年制大学を中心にしている大きなものとしては3つの認証評価機関がありますけれども、その3つと、それから短大と、合計すると4つになりますけど、集まって共通したようなデータであれば、お互いに持ち寄って、その部分をどういうふうに一緒にしていったらいいのか、一緒にしていったほうがいいんじゃないかと。これは大学の側もそういう形でスタンダードになれば、非常に負担軽減になるだろうということで話し合っておられるというふうに聞いております。
 もう1点、先ほど、広島市立大学の浅田先生のほうから、あるいは光田さんのほうからお話がありましたが、私どももいつも問題になっておりますが、いろいろなデータを今、求められていて、エビデンス主義ですから、それはそういうことでお願いをするというのはやむを得ないというか、必要なことながら、非常な現場の負担になっているというのをよく批判されておりますし、そうだなと思うときもあります。減らそうと思いながら、片方で、そんなことも調べていないのかというのは、やっぱり税金なりいろいろ制度を扱う側として困るというので悩んでいます。
 それで、先ほどのマスメディアとか、それからいわゆる受験関係の産業とか、ひいてはやがて高校もということかもしれませんけれども、そういったところともかなり重複しているんだというお話がありましたので、そういう意味で言うと、認証評価がというだけじゃなくて、全体としてどういうふうに負担軽減ができて、かつ、そういうところは誰でも、入れる側も一発で入れられるし、見る側もその限りにおいては参加しているところの情報はみんな見られるというようなことが、ちょっと関心になってくるのかなと感じております。

【岡本副座長】  1つ原則として、やはり日本の場合、評価の多様性ということで複数の評価機関があって、それが各々独自の基準と独自の考え方でいろいろな評価機関をつくっている。それを大学が自由に選択するということは、これは多様性ということで1つ大事だということがあるのですが、一方で、最低限、例えば今の情報の共有みたいなものでどこまでできるのかというのは、認証評価機関の協議会があり、そのでの大事な話題であると私は思っておりまして、これは今すぐ何とかしますというのは、そこは難しいとは思いますけれども、積極的に進んでいくのではないかなと思っております。
 一方では、国立大学法人評価につきましても、これはもちろん当事者の国立大学、あるいは国立大学協会との話というのももちろん中心にあるのですけれども、一方では、認証機関の間で認証評価と、例えば国立大学法人評価との関係という研究会等が立ち上がっております。そういうところでは具体的には、今おっしゃったように、こういうことがまさに問題になってくるということです。基本的にその研究会のテーマというのは、認証評価の結果をどうやって国立大学評価のときに反映するかというのが基本的なテーマですから、当然のことながら、データの共有とか何かっていうのは当然入ってくると思います。
 私はこういうデータというのは、まず公表というのもあるのですけれども、活用支援というところで言うと、いわゆる大学コミュニティーが、短大も含めて、基本データを共有できるかどうかというところが一番根幹であろうと思っています。それについてはみんなで話し合っていく。話し合っていくだけじゃだめなんですけど、企画して、つくっていけば、できるのではないかと。今、そういうのができる状況にあるのではないかというふうに思っております。

【金子委員】  本日はせっかく広島市立大学の事務担当の方がいらしているので、このぐらいの情報公開と、それから定期的にいろいろなところから来る情報ですね、これを処理するのは大体何人ぐらいでやっておられるのかということと、それから、11ページですけれども、定期的に実施される調査の状況についてということですが、全体で152件ということですが、入試情報はちょっと別だと思いますが、入試情報を除きますと大体70件ぐらいあるわけで、このうち、例えば学校基本調査で書いているもので大体処理するのはどれくらいでしょうか。あるいは、学内で問い合わせてしなければいけないのはどのぐらいなのか。あるいは、独自調査というか、答えるために自分たちで調査しなければいけないというのはどんなものがあるのか、教えていただけないでしょうか。

【広島市立大学 光田主任】  まず1点目としまして、事務処理にかかわる人数といいますと、事務局内にそれぞれの担当部署がございますので、その担当者からそれぞれ該当した依頼内容を吸い上げて回答するということになりますので、明確な人数というのは申し上げるのが困難かなというふうに考えております。
 ただ、取りまとめに当たっては、法人化の際に企画室というところを設置しまして、その中でさまざまな照会等を取りまとめたりするということでいきますと、取りまとめ担当者としましては、室長、主任と、あとは担当者の3名体制になろうかと思います。
 続きまして、先ほどの資料の11ページにございます依頼内容別ということで、入試に関することというのは重複を含むということで、いろいろな調査項目の中に入試に関することが入っているというような状況でございますので、すべてが入試に関することだけということではないという状況でございます。

【金子委員】  例えば、かなり基礎的な情報は学校基本調査で大学はいずれにせよまとめていなければいけない情報があるわけですよね。それでどの程度処理できるのか。
 それと、それではできなくて、やっぱり学内でいろいろと聞き、問い合わせてやるのはどれぐらいあるのか。
 それから、ほんとうに自分たちで調査でもしなければわからないような情報というのはどれぐらいあるのでしょうか。

【広島市立大学 光田主任】  感覚的には、概ね学校基本調査等、主要な調査がございますので、それで対応できるものが大半を占めているというところで、かなりの負荷を生じて、重複した数字を回答しなければならないということで、負荷はあるとは思います。例えば、就職とか情報誌で言えば、どういった学生を輩出しているかというようなアンケート的な内容というのもございますので、そういったものは各主管課とか、学長のコメントであるとかというのが調査の中にもございますので、そういった回答というのはあろうかと思います。
 ただ、概ね、本学で言いますと、学校基本調査と公立大学協会で行われる調査等がございますので、その辺の数値で対応できるものが大半を占めているのではないかと考えております。

【佐久間委員】  本日ずっと聞いていまして、大学が教育情報を公表する側であって、それで多くの方々がその公表で恩恵を受ける側と、こういう2つの大きな構造なのかなと思っていたんですが、いや、どうもこれは違うなと。大学は多くの方々から、どう公表しているかを評価される側だと。それで、さまざまな人たちが目を大学に向けて、それで、ここはちゃんと公表している、ここはちょっと足りないというふうな形になってくるんだなというのが今、私の実感です。
 それで、これまで認証評価は7年に1回、我々は評価される側として、2年前ぐらいから一生懸命、自己点検・評価報告書を書いて、そしてヒアリングを受け、そしてこういうところが足りない、こういうところはいいというふうな形で、7年に1回そういう体験をすればよかったと。短期大学基準協会の場合には、その間に1回外部評価を受けなさいということもあったわけですが、これからは毎年、更新をして、きちっとしたデータとかをこうやって明らかにしないと、ほかの大学と比べてこういうところが足りないのではないか、こういうのも公表すべきではないかというふうな時代に入ったのかなというふうなことで、これは大変なことになったなという思いをしたわけです。
 先ほどの2つの大学でも、非常に緻密なデータを公表されているわけですが、そういうところがありますと、そのことを評価する側はちゃんと見ていますので、こういうところが足りないじゃないかとか、そういうランクづけといいますか、公表されたデータのランクづけじゃなくて、公表をどうしているかのランクづけみたいなものが問われる時代になったという気がしていまして、そうじゃなくて、今まで外に出さなかったものを公表しているんだと。ほんとうは出さなくてもいいものを公表しているんだということを高く評価してくださるような、そういうふうにベクトルを変えられるとありがたいと思います。
 東日本の小さな短期大学がどうだっていうのを、西日本の人たちはあんまり関心がないでしょう。それを、あっちがこうやっているからこうしなさいとか、そういうふうな形でいろいろとこういうふうなものが入ってくると、これはマスコミだけじゃなくて、そうなるとこれはちょっと大変なことだなと。7年に1回でいいのではないかなと思います。

【山田委員】  先ほどの追加ですけれども、ちょうど川嶋先生の新聞の話が出ていましたので、国立大学の状況だけ少しお話をしておきますと、国立大学も教育情報の公表についてはいくらか温度差があります。川嶋先生の書かれているとおりかと思います。幾つかの大学はホームページから1クリックではたどり着けないような場合もあるかもしれません。ただし、国立大学協会としましては、やはり国立大学の機能強化というものを大変重要な課題としておりますので、ステークホルダーへの情報発信というものを共通認識としましょうということを確認したところでありますし、これからはこの共通認識に基づいて各大学が責任を持って、具体的に活動を展開するということにしております。
 そしてまた、国立大学全体としても、さらにこれから協議をして、何らかの共通の方針を示していきたいというように考えているところです。
 そしてまた、これも前回申し上げましたけれども、国際的な通用性という課題もありますので、世界に対して有用な情報発信のあり方についても国立大学全体として議論を進めていきたいというところです。

【宗像委員】  先ほど2つの大学でご説明があったのですが、それぞれの大学が、例えば高校生がどういう情報を求めているかということを、どうやって集約しているか、お聞かせいただきたいというのが1つございます。それから、今、佐久間先生がおっしゃったように、大学にとっては相当な負担だなと感じます。広島市立大学も専任の方が3人いらっしゃるということですが、各大学が、今後、これは更新していかなくては何の意味もないものだと思うのですが、そのあたりの負担を大学はどうお考えなのかということを教えていただきたいのですが。

【浅田委員】  高校側の需要調査なのですが、我々、教員側が高校のほうに出向いて、いろいろ先生方に直接お話を伺うことがございます。それから、オープンキャンパス等のいろいろなイベントをしますが、そのときに高校生が来て、全部アンケートとっています。そういう意味で、今、どういうところに関心があって、どういうことが求められているのかというのは、常に我々としてはモニターして、それに対してどうフィードバックをかけるかということを常に動かしています。
 今言われましたように、実は、これをやること自体、かなり負荷なんですね。膨大なアンケートをとって、それを分析して、それに対してアクションをしていくということ自体もこれは負荷なのですが、ただ、今の時代、大学というのはそういうことに関して丁寧に全部やらなくちゃいけないという、先ほど言われた、社会のプレッシャーは強烈なものがございますので、それに対して可能な限り、教員、職員一体となって動いているところでございます。

【水上委員】  何もかも情報公開するというときっとすごい負担なんだと思うんですけど、一番求められている情報は何かということを需要者ごとにきちっと把握をする必要があるんだと思うんです。例えば、就職情報といったときには、筑波のホームページを見ながら、非常にすばらしいなと思って見ていたんですけど、ここまで書いてあるんだったら何で人数が書いていないんだろうというふうに思うんですよね。例えば、企業名まで書けないとしたら、メディアまででもいいですけど、マスコミに行った人は結局何人で、製造業に行った人は何人で、住宅業に行った人は何人なのか。少なくとも業界ごとの人数比みたいなものはやっぱりあったほうがいいんじゃないかなと。
 また、先般、宗像先生がご意見をおっしゃっていましたけれども、同じ薬学部でも製薬会社に行くのと、研究者になるのと、町のドラッグストアーに行くのは全然違うという議論があって、それは非常に高校生にとっては進路を選択するのに重要だというご意見がありましたけれども、だとすると、やはりその情報はピンポイントに重要な情報だということなのではないかと思います。
 さらに言うと、結局、大学に入ったらどれぐらい中退するとか、この大学でGPAで2.5といったらどのぐらいのグレードなのかといったところもおそらく非常に重要な情報だと思います。
 そういう本当に重要な情報だけ公開されていれば、とりあえず、例えば高校生はいいということは当然考えられるんだと思うんです。そのときに、一番、その中でも最も高校生が求めている情報は何かということがどれぐらい把握されるのかということと、その一番求められている情報と公開したい情報はどれぐらいずれているのかということが、つまりすごく求められているんだけど絶対公開したくないという情報がもしあるとすると、それは非常に大きな摩擦になるんだと思うんですけれども、そのあたりの実態の部分がもう少し明らかになってくると、この議論は明確になってくるのだろうなと思うんですよね。
 例えば、さっきのGPAみたいな話だとすると、大学によってはものすごく公開したくないというところももしかしたらあるかもしれないし、そこを、じゃあ、今後、この情報公開を進めていくときに、障害になるところ、もっと言うとみんなが嫌がるところ、まとまらないところはどこなのか。また、情報公開をするときに、この点は公開しないと需要者の側からして意味がないところはどこなのか。つまり、情報って何でも公開してくれればいいわけじゃなくて、この情報が最終的に公開されていないと、高校生にとっては意味がないとか、企業にとって意味がないという、非常に重要な情報というのがあると。そこはやはり把握しないと、なかなか情報公開といったときに、何もかも公開するのか、という議論に逆になってしまうのではないかなと思うのですが、そのあたりはいかでしょうか。例えば筑波大学だと人数等はどうなのでしょうか。出したりすることはできないのでしょうか。

【山田委員】  私も細かいところまではわからないのですけれども、ウェブ情報として公開していると理解しています。

【金子委員】  今までのご意見を聞いていて感じたんですけど、一つは、情報を公開しなければいけない。しかし、これは大変であると。非常に労力もかかるというお話でした。ただ、今、佐久間先生が7年1回でいいじゃないかとおっしゃったのですが、これはやはり今の世の中で、ちょっと7年で1回はまずいのではないかなと私は思います。
 それで、私は大学情報には基本的に考えるべき種類があって、一つはかなり基本的な情報ですね。大学生数とか、先生の数とかですね。端的に言うと、学校基本調査で相当なものを調べているわけで、大学はもうこれは把握しているわけですね。これはもう指定統計で報告しなければいけないものですから。このレベルのものというのが一つのレベルだと。
 2番目は、もう少し需要者側が何を求めているかという議論にかかわる、今おっしゃったような話もあるでしょうし、あるいは今度は、広島の例でも筑波の例でも、大学の側がこれは大切だと思って提供したい情報がある。例えば、筑波はスタンダードというのがあって、これは何を目標としているかということ。広島は自分たちの独自の教育方針といったものも書いてある。それで、これは一般的に求められるものは何か、それから、一般的に提供したいものは何かというのは、これはなかなか議論が大変なところでありまして、私はこれはもう大学が一つの個性があっていいと思うんですね。自分たちはこれを言いたいと、そういったものを積極的に情報公開していくと。それはそれで必要だし、意義のあることだと思います。
 ただ、もう一つは、基本的な情報のほうは、今の話を聞いていても、いろいろな新聞や何かが同じようなことを聞いてきたり、どうもいろいろなそういう不評をあちこちで聞くのですが、そういったことがあって、そういった基本的なものはもうある程度、学内でも標準的に公開してもいいでしょうし、あるいはもう、国立大学について一覧表で公開していいのではないかと私は思いますけれども、そういった意味で2段階で考えたほうがいいのではないかと思います。

【渡辺委員】  今までの議論を聞いておりまして、例えば、問い合わせが非常に多くて、その対応に時間がかかるというお話も幾つか出ているわけですけれども、その情報が本来大学として持っていてしかるべき情報と、そうでない情報で、その調査に時間がかかるというのと2種類あると思います。本来持っていなくてはいけない情報は、出すか出さないかって決めるところはあるかと思いますが、そんなに調査には時間がかからないのだろうと。基本的に大学が持っている情報というのが、管理している情報というのが十分かどうかという話と、それから、持っている情報を公開するかしないかは、別の話だと思います。それが本日、一緒になって議論されていたかなというふうには感じました。
 もう一つは、どういう情報を公開するのかというのと、どういう形で公開するのかということがあるかと思います。例えば、先ほど議論が出ました、高校生に対してはやはりもう少しわかりやすい形で公開してあげる必要があるでしょうし、プロの人たち、例えばマスコミ関係とか、大学を評価される、そういう団体の方については、そんなに見やすいとか、そういう形でなくても、自分たちで情報が取れるような形で情報を提供すればいいと思いますけれども、一つは、求められる情報を提供するという言い方もありますが、むしろ大学がより積極的に、例えば高校生の場合は、うちの大学にはこういう高校生に来てもらいたいたんだというようなことで、積極的にそういう学生さんに来ていもらいたいというためにどういう情報があったほうがいいのかとか、そういう観点で検討されることです。
 そういうことで、基本的には大学ごとに情報公開ポリシーみたいなものを、委員会とかいろいろつくられて公開していけばいいのではないかなと思います。共通に持っていなければいけない、先ほど金子先生からもお話がありましたけれども、基本的な情報は最低限にして、そこは絶対みんなが公開するんだと。それ以上のものは各大学の公開ポリシーにのっとってやるんだみたいな形でいいのではないかなということを本日は感じました。

【中西委員】  大学側の負担の問題も何人かの方がお話しになりましたけれども、基本的には、今の時代の流れからすると、情報の公開が進まない限りは負担は減らないのではないかと思います。金子先生がおっしゃったように、それこそ学校基本調査のデータが公表されれば、おそらく聞かなければいけないことは基本情報としてはほとんどなくなるわけですから、ここでそういう議論をすべきなのかどうかはわかりませんが、おそらくそういうことなのではないかと思います。
 それから、先ほど、山田先生に情報環境機構の組織のことを伺ったのも、要するに、どの程度の方が、どういう形で情報公開にかかわっていらっしゃるかって、職員の方も含めて大事だと思いますし、広島市立大学の3人が、これがほんとうに多いのかなというふうに私は思いました。負担とは考えずに、発想を転換していただけないものかなと思いました。

【浅田委員】  少々誤解があるような気がしますので申し上げますと、調査件数が多い、それから内容が重複している、だから、割と使い回しができるから、意外とそんなに数ほど負荷がないのではないかというようにとらえられているみたいですけれども、来た調査に対しては全部丁寧に答えなくてはいけない状態に大学は今、置かれています。しかも、聞き方は全部違います。内容的には一緒であっても、要するに、アンケートをつくられる側はある意図があります。その意図に対してどう答えるかというのは、やはりこちらもきちんと考えて答えないと、こちらの数字をそのまま使い回していたら、全然意味がずれることがあります。そういう意味で言うと、1件1件がすべて負荷です。
 だから、内容が、これ同じでしょうというものはもちろん同じですけど、聞き方が違えば、当然、定義を考えて、それで同じものを入れたりするというのが求められている。だから、意見が出ていますように、基本情報はこれですと、どこかで統一して、それを見てくださいとなればいい。それをどう解釈して使うかは皆さんの自由ですという形に持っていかないと、各大学が、あそこにあるので見てくださいと言っても、なかなか、来たものに対して拒否はしにくい状況があります。だから、そこが負荷なんですね。だから、皆さんが言われる方向で私はいいと思います。基本情報をきちんとみんなが出して、そこに集めて、みんながそれを使うようにすればいい。
 それ以外の、言われたように、大学側が自信を持って出すものはどんどん出せばいいと。それは当然、大学側が説明すればいいわけですね。それは大学ごとに違っていいと。そういう住み分けは私も必要だと思います。ぜひ、その流れに社会全体がなってほしい。というのは、調査する側は、どうしても独自のデータとか、独自の分析をしたいから必ず聞いてきます。よそと違う分析をしたい、よそと違う聞き方をして何かを引き出したい、これは必ずあります。それに対して、それなりにも私は答える社会責任があると思っていますからやっていますけれども、ただ、これは単調増加していますので、これはどこかで歯止めをかけなくてはいけないと思います。
 本日、認証評価の話が出ているので、少し質問とお願いですけど、大学に関する評価という言葉は幾つかあって、認証評価、法人評価というのがあります。それから、一つは、今、大きく出ている社会評価みたいなものですね。乱暴なランキングも含めた、風評評価も含めた、そういうものがあると思います。ただ、制度として実施しているのは認証評価、法人評価と。
 私の誤解かもしれませんが、国立大学を一つのモデルとして制度づくりをされてきたのだろうと思うのですけれども、まず、認証評価は7年、法人評価は6年というずれが制度上起こって、これは整理していただきたいと思いますそれから、国立大学は大学評価・学位授与機構が認証評価と法人評価、両方行われています。そこにいろんなモデルのつくり方に多様性が出ていないんではないかと私は思っています。
 というのは、公立大学は、認証評価は大学基準協会であったり、大学評価・学位授与機構であったり、それは自由に選べるので、大体半々で今、選んでいます。法人評価は、各自治体が法人評価委員会を持ちます。それはもう完全に1個1個独立です。横の連携も特にない形でやっています。ということは、我々にとって認証評価と法人評価ははっきり違うんですね。同じ組織がやっているとか、そんな意識はなくて。ということは、当然、そこに役割分担を明確にしていただきたいんです。それは、法的なそういう義務づけられているという意味でいくと、そこにはちゃんとした理念があると思います。
 そういう意味で、認証評価は基本的には大学の質の保証の観点でやはりきちんとしてほしい。つまり、それを受けることが義務づけられていることは、この大学は、要するにちゃんと入学して、大学としての品質を持っていますということをきちんと見ていただきたい。そのためには当然、データも出すし、いろいろな方の外部評価を受ける。それがあると思います。
 もう一つ、法人評価というのは、自治体があって、法人評価委員会があって、大学があるから、非常に1対1の関係です。そこのところで、教育・研究の基本的なところというのは認証評価で当然データをもらったり、あるいは評価を受けたりするので、むしろ法人の、いわゆる強化です。大学の強化。質の向上のほうですよね。そこに重点を置いてほしいし、ましてや機能別分化みたいなところで、ここをもっと強化するとか、あるいはここに対して中期目標を達成したから、この大学はさらにこういう方向に伸びていくんだ、そういうところでの法人評価をしていただきたい。
 やはり認証評価と法人評価は別できちんと役割分担をしてほしい。そうすると我々もそっちに対する自己点検・評価ということに関しての業務実績も含めて出しやすくなります。それぞれが両方整うことで、全体として、大学から見ると、質も向上するし、強化もされるという形の制度全体になっていってほしいと思います。
 だから、そういう意味では、今、いろいろな意味でまだ過渡期ではないかと思っています。ぜひそういう方向に整備されていくことを望んでおります。

【小松審議官】  今のお話は、教育情報と密接に絡んでいますけれども、大学評価制度全般に及ぶお話なので、非常に大きな視点で、また別途、一つ構えなければいけないような次第ではございます。
 一応、国と地方公共団体、私学があるのですけれども、国と地方公共団体の法人制度、公立大学については確かに同じ国会に出されているのですけれども、違う法律でつくられていて、地方自治というものがありますので、各設置者ごとに見るということで、公立大学という一律のものでやるというわけではないと。つまり、設置者が設置者管理責任としてどういうふうに評価をするかという制度になっています。国については、それがたまたま、今、86あるわけですけれども、公立については、多いところは4つとか、そういう数を持っていたり、小さいところ、大部分は1つだけ持っていると。設置者との関係で言えばそういうことになります。
 国のほうも、公立大学法人と同じように、大学評価・学位授与機構がやっているわけではなく、国立大学法人評価委員会が行うので、そういう意味で言うと、この評価は、今おっしゃっておられる意味での環境を伸ばすというところは、教育・研究も含めて、国立大学法人評価委員会が直接行っている。公立大学の法人評価委員会がやっていただているのと同じでございます。
 そのうち、教育・研究にかかわる部分については、大学の自治が絡むのですが、憲法上の要請もございますので、専門的な機関に別途、国立大学法人評価委員会が委託をして、それを尊重する義務があります。それが国の場合について言うと、立法府によって大学評価・学位授与機構に委託することになっておりますが、公立大学について言えば、それは同じ要請があるわけですけれども、その同じ要請については、各設置者ごとの判断、つまり、国がそういうふうに判断したのと同じように、各設置者ごとにそういう判断をできるような制度にするということがアナロジーになるので、別途、教育・研究の評価は独自の観点からきちんとやるということだけが定められていて、具体的にどうするかは地方公共団体で決めるというふうになっています。法人として税金を投入したものを、税金の配分をしなければいけない政治体がどういうふうにするかという評価と、その中の教育・研究には自主性や専門性や特性があるので、別途やらなければいけないというのを組み合わせなければいけないということは、立法府は地方公共団体と国とを問わずイコールであるというふうに考えていると理解されます。
 ただ、今の専門的に行うというところと、認証評価として国公私を通じた全体の大学の質をどのように制度としてきちんと担保していくかというための制度の間には、非常にたくさんの似通った項目とか、重複するような項目があるという批判が非常にあるということは事実だと思います。その部分を、もともと違うのである程度やむを得ない部分もあるかもしれませんが、先ほどのメディアも含めた議論もありましたけれども、みんなの共通部分はこれではないかということがきちんとできれば、大幅な軽減になって、両方の制度が生きるのではないかということがおそらく論点になってくるのではないかと思います。制度論で若干補足させていただきますと、そこのところはかなり出来がいいとか悪いとかもおっしゃられたように、過渡期であるとか、まだ制度として鍛えられていないとか、そういう面がいろいろあるのかなと思います。

【水上委員】  今のは非常に重要なポイントで、共通でフォーマットとしてちゃんと情報を蓄積しておかないといけない、公開しないといけないところはどこかというところは非常に重要なポイントだと思います。特に労力の軽減というところからすると、最終的にはこのパッケージになって公開されているところに載せられているものについては、メディアの人もこれを見てくださいと、全部これを見ればわかるようになっているので、個別にもう聞きにこないでくださいというふうに最終的にはできると非常に軽減になるんだと思うんですけど、一方で、そうなるためには、需要者の側が欲しい情報がちゃんと入っている必要があるということだと思います。本当にベーシックな、何人学生がいますとか、そこの共通情報に入っていなかったら、メディアの側がそこを見れば足りるということにならないので、やはり聞きにいかなければいけないということになると思います。
 そうするとやはりここで重要なのは、共通してちゃんと持っておきましょうと。それによって手間も軽減しますよというところのデータの内容というものが、需要者の要求しているデータの内容と一致しているということがおそらく一番大事なことだと思います。そこが中途半端だと、結局、何か、こっちは責任果たしたぞということになるが、実は需要者はちっとも満足しないということになってしまうので、ぜひとも今後の議論の展開の中で、需要者がどうしても必要だとしている情報は結局どこなのかと、今の比較的先進的に情報公開をしている大学の情報公開でもう十分満足だと思っているのか、それでもやはりここは足りないというところがあるのかというところをはっきりさせて、それを共通情報に入れられるのかどうかというところを一つポイントにしていただけるといいなというふうに思います。

【小田委員】  認証評価制度の問題にしましても、今度の教育情報公開の問題にいたしましても、これが我々受け取る側にしてみれば、どうも天下り的制度の押しつけみたいな。ということは、逆に言いますと、なぜこういうことが必要なんだということについての、あらかじめ丁寧な情報がいただきたいと思います。この情報公開の成果ということが、おそらくその前段階として、それを受けたほうの学内で、そのことについての同意形成というか、やはりそれぞれの組織人が全部がそうしたことについての同意形成とか、また、理解が深まらなければ、なかなかこうしたものの基本的な成果というものには結びついていかないだろうということで、なぜこの認証評価制度が必要なのか、それから、教育情報の公開というのが必要なのかという、もっとベーシックな問題についての理解というものを深めていくことが僕は非常に重要だろうというふうに考えております。
 そういう意味で、少し、今度の教育情報の公開ということにおきまして、たまたまこの会に参加させていただいて、一方ではOCWの問題であるだとか、それから、各大規模校のいろいろなお取り組みの話などを聞きますと、中小の大学にとっては、非常に雲の上の話みたいな気がして、そのことについて、ちょっと距離があり過ぎるというような気がいたします。
 そういう意味で、できることならば、この制度改正、そのほかについて、十分な、我々が認識できる、また逆に言うと、みんなにそういったことの重要性ということを説明できるような裏づけのある情報というものが提供していただければ、また、もっとこの成果というものがいい形でもって結ばれていくのではないだろうかと感じております。

【鈴木座長】  本日は教育情報の取り扱いに関する大学の状況のご報告を踏まえて、幅広いご意見をいただきました。事務局で論点を整理していただきまして、次回以降、それを踏まえて議論を深めていきたいと思っております。

【榎本高等教育政策室長】  1点補足いたしますと、先ほど、卒業後の進路に関しまして、割合だけじゃなくて人数は、という問い合わせもございましたが、筑波大学に関してはデータを見ますと、人数も全部出ております。学類ごとに卒業者数、就職者数、進学者数、そのほか資格準備に当たっている方の人数、それから就職者に関しましてはどういう業種か、さらには就職企業名も具体的に入ったものが学類ごとに公表されておりました。補足いたします。

【鈴木座長】 それでは、別段の発言がなければ、本日のこの会議は終了させていただきます。ありがとうございました。

 

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