大学における実践的な技術者教育のあり方に関する協力者会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成21年6月29日(月曜日) 18時から20時

2.場所

学術総合センター202、203会議室

3.議題

  1. 大学における実践的な技術者教育のあり方に関する協力者会議の運営について
  2. 実践的な技術者教育のあり方について
  3. その他

4.出席者

委員

有信委員、石川委員、内海委員、大西委員、大場委員、岡本委員、谷口委員、柘植委員、野口委員、古田委員

文部科学省

戸谷高等教育担当審議官、藤原専門教育課長、坂口専門教育課企画官、神田専門教育課課長補佐 他

5.議事要旨

(1)開会

(2)戸谷高等教育担当審議官から挨拶

(3)座長選任及び座長代理指名について

 座長に谷口委員が選任され、座長代理に有信委員が指名された。

(4)会議の公開について

 要領について原案どおり承認され、会議、議事要旨は原則として公開することとされた。

(5)各委員から自己紹介を兼ねた意見発表が行われた。

  • 本件については、資質能力の高め方、知識の与え方の観点からそれぞれ検討していく必要がある。課題としては、研究費配分が競争的資金にシフトしていることもあり、最先端の研究に力点を置き、学部等で本来教えるべき事柄がおろそかになっているように感じる。資質能力を高める方策としてはPBL等が考えられる。知識と資質・能力の組み合わせで人材育成を考えていきたい。
  • 最先端の技術開発を行うには幅広い知識及び基礎的な知識の双方が必要。
  • 工学を取り巻く環境としては、教育、研究、社会貢献について個々に励んでいるが、それらが一体となって有機的に機能していないように感じる。研究が研究のための研究となっており、工学による社会貢献という観点が希薄になっている。今後は、現状の負のスパイラルを正のスパイラルにしていくことが必要。また、初等中等教育段階で理科や数学の授業時間数が増えたのはいいが、それがどのように技術や社会に結びつくかといった観点での教育はできていないのではないか。
  • 大学での教育のみならず、初等中等教育段階から含めた総合的な対策が必要。特に工学の魅力をその世代にいかに伝えていくかを明確にすべき。
  • 工学教育は理論のみではなく、同時にツールも教えていかなくてはならない。また、カリキュラムやプログラムを組んでも、基礎をしっかり教え込んでいくことが必要。
  • 教育改革を行うには、教職員の意識改革が必要であり、結果を大きく左右する。その上で改革を通して教育によってどれだけの付加価値を学生に身につけさせることができるかということである。
  • 工学分野では女性比率が低いため、その比率を上げることも大切である。女性が企業で働くことは女性のキャリア開発にも有効であると考える。
  • 日本技術者教育認定機構(JABEE)の評価はシステム評価であり、今後は実質的な質保証を図っていくことが必要である。また、大学に入ってからの教育も重要だが、入り口(入試)の段階で工学を志す優秀な学生を確保していくことが何より必要だと考える。
  • 地方の工学部を取り巻く環境は厳しい。最近では数学・物理など工学系の基礎となる科目を履修しない学生までが入学しており、従前とは明らかに異なっている。質保証という観点からすれば医学で行われているような試験を課すことも考えられる。また、基本的な資質・能力として、工学基礎力、工学倫理、キャリアデザイン能力、英語力が必要であると考えられるが、曖昧な部分もあるので、企業の方と連携しながら分野ごとに構築していくことが必要であろう。
  • 工学系の学生の質を確保するためにはまず教員の意識を変えていくことが必要。教員の意識を変えることができれば学生にも必然的に好影響が出る。

(6)事務局から資料説明の後、資料3「検討課題」に基づき自由討議が行われた。

  • 日本の高等教育において遅れている点や、進んでいる点を明確にした方がいい。日米で比較すると、日本の場合は初等中等段階での教育がしっかりしており、学部で基礎を学び大学院で専門的な研究に励んでいる。現状もそうかは不明だが、日本の学部教育レベルはアメリカの大学院レベルの教育を行っていると言われるほど専門性が高いと聞いたことがある。
  • アメリカである会合に出席した際、オバマ大統領の教育政策の中で再三「STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)」の強化を図ることが必要であるとの言及があったのを覚えている。アメリカでも日本と同様に工学離れが進んでおり、危機感を持って初等中等教育段階からの政策を打つことを言明している。
  • 教員について教育上の能力評価を実施することが必要ではないか。研究能力は論文数など、実務上の能力は技術士や建築士などのライセンスで評価することができるが、教育に関しては全く行われていないといっても過言ではない。学校教育法の中で大学教員に必要な能力(教育・研究・実務)を決めても教育能力を評価しなければ、現場で教育に力を注ぐこととならないのではないか。教育上の能力評価の問題は我が国固有の問題ではないが、先駆的に進めていくべきではないか。
  • 教員に対して教育上の評価をするだけでなく処遇に反映させなくてはいけない。しかもそれは継続的に行うことが求められる。
  • 英語でのコミュニケーション能力が他国に比べて日本は低い。そういった能力も大学として保証するようなことが必要ではないか。
  • 大学において学生の満足度を高めるため活動を明確に発信していくべきではないか。
  • 企業側から見ると、ものづくりができる人材が欲しい。ものづくりは、最低限の基礎知識を有することに加え、その上で一定の経験を有する必要がある。製図などの科目は必要。我が国はものづくり国家であり、ものづくりに力点を置いた教育体系を組む必要があるのではないか。
  • 基礎力という言葉をよく聞くが、定義付けが必要。基礎力を定義付けしないと議論の意味がない。
  • 大学教員は研究を通じて学生のみならず教員の教育も行えている。最初から教育能力が備わっている教員はいないため教員も時間をかけてトレーニングしていく必要がある。良い例を全大学で共有できる仕組みがあるといい。

(7)その他

 本日の議事を踏まえ論点整理案を作成し、今後も論点を絞って審議することとされた。

 また、事務局から、資料5について説明があり、その後次回の開催は8月3日である旨説明が行われた。

 

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高等教育局専門教育課科学・技術教育係