教育内容等に関するワーキンググループ(第5回) 議事要旨

1.日時

平成22年2月16日(火曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館6階3会議室

3.議題

  1. 「大学における実践的な技術者教育のあり方」(案)とりまとめ
  2. その他

4.出席者

委員

野口委員(主査)、篠田委員、岩熊委員、大場委員、岡崎委員、工藤委員
(※本会議委員)谷口委員、柘植委員

文部科学省

加藤高等教育担当審議官、澤川専門教育課長、神田専門教育課企画官、神田専門課長補佐、その他関係官

5.議事要旨

(1)  学習成果の適切な評価方法

【事務局より、資料2-3のP16~P18を説明】

【委員からの補足】

  • 社会人基礎力のようなものの適切な評価方法については、全体には広まっていない。JABEEはそれを要求しているが、JABEE自身もどれが適当か示しておらず、大学も困っている。これからはアメリカ等の先進的な事例を日本流に咀嚼して普及させないといけない。構造的には目標成果(アウトカムズ)、点検評価、改善というPDCAサイクルがあるが、その中で評価が一番難しく、皆が納得する妥当な線で普及することが大事。

【議論】

  • 「(a)教育目標」として「卒業後3~5年で卒業生に期待される技術者像を設定」とあるが、どんな役割が果たせる技術者になるか、卒業後何十年も先の話になると大学との関連が薄くなるので、卒業後何年後かを考える、という意味。「3~5年」はABETがそのようにしている。「(b)学習成果」は、社会人基礎力というような抽象的なものではなく、「(d)点検評価」ができる目標。
  • 大学教育は社会からの負託によっているので、「このぐらいの技術者が欲しい」「技術者というのはこれぐらいの能力が必要」という負託に応える教育をしなければならない。
  • ABETはObjectiveと言っており「(a)教育目標」ではなく「(a)教育目的」とすべき、「(b)学習成果」が「目標」。
  • 指標を「統一試験さえ受かれば」と一本化してしまうと大学の序列化を招くが、例えばアメリカの大学ではABETに対して自分の大学のプログラムはいくつもの指標から成り立っていて、統一試験、PEの試験、外部試験、学生の自己評価が全てだいたい良い結果を出せているので、総合的にいい大学だと主張している。ある程度オーソライズされた評価方法を、各大学が自主的に選択し多次元的にやっていくことがいいのではないか。
  • 就職面接でも統一試験のようなものを受けているというと評価が上がる。
  • P17の「GPAで不可となった科目も平均点に入れる」ことについて、申告だけして採らなかった科目が0点となり、それを平均点に入れられ学生が非常に被害を受けたケースがある。
  • 大学の対応もバラバラのようだが、あらかじめ申告した科目をキャンセルできるような学内の規則を整備していれば解決できる問題。
  • P17の「試験の活用」はそのまま置いておく。

(2)国際性を踏まえた技術者教育認定制度の改善

【篠田委員より当日机上資料1をもとに説明】

【議論】

  • 課外学修の担保についての箇所は、それ以前の記述と相関しているので、このつながりに対しての問題提起や課題設定の記述を加筆してほしい。
  • JABEEは課外学修との合計時間ではなく授業時間のみで評価している。
  • アメリカの教科書は分厚く学生も自学習できるが、日本の教科書は薄く自学習できるほどの内容が無いことがあり、問題。
  • エンジニアリングの中にサイエンスの先生が混じり込んでしまったり、エンジニアリングと関係ないテクノロジーの先生がいたりして、その結果その先生のもとで書いた卒業論文はエンジニアリングとはすこし離れた内容になる点は改善が必要。
  • ワシントン協定からJABEEへ「エンジニアリングデザイン教育としては弱く改善が必要」と指摘されたのであれば、第三者から現実にそういう指摘があったという書き方でいいが、こちらからのとらえ方であればもう少し卒業研究のよさとのバランスを考慮した文面がいい。
  • 日本の技術発展は、卒業論文・卒業研究のおかげだという意見が日本では非常に強い。一部を切り取って卒論自体が国際化を遅らせているようなニュアンスにならないようにしなければいけない。外国のデザイン教育は確かによくできているので、それとのマッチングをどう図っていくかが重要。卒業論文研究をしっかりやったために、修士論文研究が非常に優れたものになるケースは多い。
  • アメリカでも10%ぐらいの大学はそのように卒論をやっているが、それ以外はある意味教育大学を目指しており、論文を書かなくても卒業できる単位取得型。研究を重視している日本やオランダは、デザイン教育もやって卒論もやる。卒論の中身をエンジニアリングデザインに変えてやる大学があってもいいだろう。
  • 学生自身で考えて創造させるような「デザイン」をやらせなければいけない。卒論がデザイン教育として認められるためには、卒論のテーマにおいてデザイン的な要素はどこかを書かせたり、卒業論文で育成するべきアウトカムズとして、コミュニケーション能力や問題解決能力等をシラバスに挙げ、卒論の発表の際にプレゼンテーション能力等のシラバスに掲げた目標をちゃんとチェックして達成できていれば合格、という風にするなどすべき。本当はデザイン科目を別に作るのがよい。
  • チームワーク力の評価法として、米国国立科学財団(NSF)のサポートで開発されたCATME(Comprehensive Assessment of Team Member Effectiveness)というものがある。

(3)モデルコアカリキュラム案

【事務局より資料2~資料5に基づき説明】

【議論】

※WG最終まとめ案を作成するため、本日議論した項目も含めこれまでの全体に対して議論

(資料2-2に対する意見)

  • 技術士制度に合う人材だけが「技術者」ではなく、その他も含めて資格を取るために工学教育があるわけではない。

(資料3に対する意見)

  • 「技術分野共通」枠内の「上記の知識を体系的に理解するとともに、その知識体系の意味を歴史・社会・自然と関連付けて学習する」という箇所が最も重要なので、それをもっと強調すべき。同様に「技術分野ごと」の枠内の※1にもあるように、社会や生活との関わりの中でなぜこの4力学を学ばなければいけないのかというあたりを、この資料で読み取れるようにしてもらいたい。資料4のスペックとして使えるように。
  • 熱力学などの専門分野は中身だが、社会人基礎力のようなものはどういう力を身につけなければいけないかを書き、それをどうプログラムにするかはもうグッドプラクティス事例を持ってきたりしないと、全国一緒になってしまう。アウトカムズとしては、「熱力学は、何と何を理解していること」「コミュニケーションスキルは何と何をできること」という風になるのではないか。
  • アメリカは、たとえば電気分野の人でも機械や化学等の工学の基礎知識をある程度学ぶ。概念力、構想力にも繋がる。
  • 「大学ごと」の枠に「各要素の深さ、要素の広がり、専門の学修内容は各大学による」とあるが、例えば各大学で「熱力学は何と何が分かっていれば“理解している”と見なす」という風に決めて評価することになるのだろう。
  • 「複合的な技術問題」とあるが、アメリカではテクノロジープロブレムに対応するのはテクノロジスト、エンジニアリングプロブレムに対応するのはエンジニアリングなので、ここは「技術問題」という記述ではなく、「工学(技術を含む)や人間力等を駆使して解決する絡み合う問題」という風になるのではないか。
  • モデルコアカリキュラムは最低限なのか、平均なのか、望ましい姿なのか、強制するのか、JABEEの審査に使うのか、何に使うのかを示しておかなければいけない。

(4)参考資料の紹介

【参考資料1~3を事務局から説明】

【参考資料4を岩熊委員から説明】

【参考資料5~11を野口委員から説明】

(5)その他意見

(資料3について)

  • 知識・理解と応用力等とは、相互関係にある。応用だけ単独では教えられない。
  • 「技術分野共通」に基礎工学を加え、「技術分野ごと」に専門工学を加えた方がいい。
  • 資料3は第一次的な仕様書なので、おおまかな範囲だけ明確にし、記述例でいい例示を書けばいい。

(資料4について)

  • (次年度からの)モデルカリキュラムの策定は、工学分野ということもあり、基本的にはオープンで進行させていく予定でお願いしたい。
  • ただあまりフルオープンにし過ぎるとまとまらずスピードが落ちるので、若い人にも入ってもらいできるだけオープンにしていく方向にしたい。

(6)閉会

【野口主査より】

  • 本日の議論をもとに、また事務局を中心に資料の加筆修正を行う。
  • まとまった資料を、3月下旬開催予定の第4回本会議に報告する。
  • 資料原稿の加筆修正は、主査、事務局に任せていただくが、篠田委員、工藤委員にもご協力いただきたい。
  • このWGメンバーを中心に、来年度も引き続きコアカリキュラムの作成にご協力いただきたい。

【加藤審議官より謝辞】

お問合せ先

高等教育局専門教育課科学・技術教育係