教育内容等に関するワーキンググループ(第3回) 議事要旨

1.日時

平成21年10月26日(月曜日)14時~17時

2.場所

文部科学省東館16階2会議室

3.議題

  1. 検討課題(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

野口主査、篠田委員、岩熊委員、大場委員、岡崎委員、工藤委員

文部科学省

加藤高等教育担当審議官、澤川専門教育課長、神田専門教育課企画官、その他関係官

5.議事要旨

(1)開会

(2)事務局より資料確認及び説明

(資料3、4に基づく説明)

(参考資料1に基づく説明)

  • 高等教育機関が社会・職業との関連を重視した、実践的な職業教育の充実を図ることが課題。
  •  社会経済環境の変化や技術の進展、生活様式の変化に伴い、異なる分野の知識・技術等を統合・総合させて、ものづくりや商品・サービス等を生み出していくことが求められる状況にあって、社会から求められる人材育成ニーズへ積極的に対応し、経済社会活動のボリュームゾーンをなす中堅人材として活躍する実践的・創造的な職業人を育成していくことが必要。
  • 実験、実習、演習の割合は、現状において専門学校(専修学校専門課程)(工業分野)では約5割、4年以上の大学(工学)では約3割。旧制実業専門学校(工業系)では約4~5割程度であった。
  • ものづくり分野において、「複数の技術・技能に関する幅広い知識」「特定の技術・技能に関する専門的知識」「生産工程を合理化する知識・能力」を求める中小企業の割合が高い。ただし5年後に重要な知識・能力としては「顧客ニーズを把握し、製品設計可する能力」「革新的技術を創造していく能力」を求める企業が増加。

(3)資料2【検討課題(案)】について

課題4『大学教員に求められる教育能力及びその評価方法について』

主担当である野口委員より説明が行われた。

(資料5-(1)に基づく説明)

  • 大学設置基準において「教授、准教授、講師、助教となることのできる者」は、「大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者」とされており、文部科学省の教員審査では教育上の能力も記述欄にある。
  • 平成17年度に発足した日本工学教育協会による教育士の資格には、特別教育士、上級教育士、中級教育士、初級教育士がある。
  • 教員の能力向上のためのFD研修については、国立教育政策研究所が「大学・短大でFDに携わる人のためのFDマップと利用ガイドライン」をまとめており、FDマップを活用するという方法は有意義であることから、千葉大学も取り入れ始めている。
  • 4本柱(教育・研究・管理・社会貢献)のうち、教育以外のFD研修はまだあまり取り組まれていない。

(資料5-(3)に基づく説明)

  • ミクロ(教員による教授法の開発)、ミドル(カリキュラム委員等によるカリキュラム開発)、マクロ(学長・理事等による教育環境の開発)の3レベルを対象とするFDプログラムを俯瞰できる体系図「FDマップ」が開発されているが、ほとんどの大学が、ミクロレベルどまりで実践している。

(意見)

  • 薄い教科書しか無かったり、教科書に書いていることしか説明できない教員がいるのは問題である。教科書は厚く、学生が自習に使えるものが望ましい。
  • 科研費制度にも問題がある。大学は教員に、研究資金獲得で競争させるのではなく、研究成果の競争をさせるべき。米国のNSF国立科学財団やNASA宇宙航空庁の研究費では、複数プロジェクト選定し、オープンの場で報告させ、成果のよいものに絞ることがなされている。
  • 助教が最低限の学生の面倒しか見なく、研究にばかり時間を割く傾向があると聞く。教育に向かわせる必要があるのではないか。
  • 大学、教育の組織がどうあるべきか、欧米のスタイルを参考に具体的な提案が必要ではないか。
  • 世界でもやってないことを日本がやったから豊かな国を実現できた。どういう人材を育てるかが原点。
  • なぜ大学内で行ったイベントだけFDになり、学外活動がFDポイントとして評価されないのか?評価されてよいのでないか。
  • 日本工学教育協会の教育士は、今は肩書きだけで与えている雰囲気があるがいかがなものか。ただ教育士の資格を継続したり上のレベルに上げるためにポイント制があることは評価できる。
  • 手段としてのFDでなく、教育能力の高め方・評価方法の考え方をきちんと書くべきである。

課題5『国際性を踏まえた技術者教育の質の確保方策について』

主担当である篠田委員より説明が行われた。

(資料6に基づく説明)

  • 「工学」「テクノロジー」「技術」など、日本ではめいめい勝手にその意味を想像しており、世界に通用する知識確認がされていないので、用語の定義が必要。
  • 技術士会もJABEEも、エンジニアリング・テクノロジストをエンジニアと区別してこなかった。どう構想していくか整理が必要。
  • 電子情報通信の分野でも、商品の「市場でのライフタイム」が極端に短くなりつつあるため、即戦力であれば5年で価値が失われる。多様なニーズに応えられる基礎力重視の教育が求められている。

課題1 『技術者及び技術者教育について』

主担当である岩熊委員より説明が行われた。

(第2回WGを受けて加筆修正した版の説明)

  • 技術者の定義は、いろんな資料を集めているところなので、最終的にはもっと変更修正したい。
  • 技術者は、ものづくりではなく、アイデア等も含めものを生み出すというニュアンスだという話があったので書き直した。
  • 篠田委員から、欧米諸国においてEngineeringに学問の意味もあること、IEAの会議ではEngineeringはActivityであるとされているとの件を指摘いただいたので、記述を訂正したい。
  • 産業界に言われている「基礎知識が足りない」ということをきちんと受け止めるべき。
  • 社会人基礎力の定義は、計測可能性という点で曖昧。

(意見)

  • 創造性とか独創性が技術者には一番大事。高専は限りなく大学に近く、評価が高い。
  • 社会が技術者に多くの条件や足かせを突きつけるのならその分厚遇するべき。さもないと手を汚さずに金儲けだけしようという方に流れ、社会が空洞化する。
  • 基礎知識と専門性をしっかり大学で学ぶべきだが、問題解決力や人間力はどこで訓練するべきかはもっと整理するべき。
  • 新聞や評論家は、自嘲的、否定的に日本教育を取り上げるが、本当に悪ければ資源もエネルギーもない日本がここまでの豊かさまで発展していない。
  • 欧米に合わせようとするだけではいけない。国際標準化機構ISOに金だけ出しているようでもいけない。日本で発展してきた技術者教育の歴史を踏まえて、日本の大学工学部で社会に役立つテクノロジーを創り出したい、世界をリードしていきたいと学生が思えるようなメッセージを発するべき。
  • 工部省による殖産興業は、全体を見ていた。英国ダイヤーによるエンジニアリング教育に始まり、それから独国、戦後は米国に日本は影響を受けてきた。これからはどうあるべきか、その方向性を出すべき。
  • 日本の将来を考え、どのような技術者を育てていくべきか、そのための教育は、という議論が必要。そのための基礎データを集めるのがこのWG。
  • 産業界が求めている「すぐに使える人材」とは、与えられた問題、未知の問題にも対応できる人材で、「即戦力」ではなく「汎用的能力」が求められていると認識すべき。
  • 企業に迎合して大学があるわけではなく、大学の役割を踏まえることが重要。
  • 実践的技術者とは、自ら学習し対応できる基礎能力・マインドを持った者であるべき。
  • 理工系という言い方は本来適当ではない。文の素養もあり、管理能力も身につけ、企業経営している者もいる。中国の胡錦涛主席(水利工学)、英国のサッチャー元首相(化学)、独国のメルケル首相(物理)、鳩山首相(計数工学)、川端文科相(化学工学)のような方もいる。
  • Engineering graduate、つまりエンジニアリング教育を受けた人は、エンジニアになれる素養を身につけた人と言うべき。エンジニア以外にサイエンティストになる人もある、いろんな人がある。そのように表現することで多くの学生・教員が目を向けるのではないか。

課題2 『技術者として共通的に身につけるべき基本的な知識及び資質・能力について』

(意見)
  • 基本数学(concept based mathematics)をやっていないと論理的思考能力を養えない。
  • 学部レベルでは数学、自然科学といった基礎をしっかり学ぶべき。数学は自然科学には入らず、文系の中の哲学に分類されるべきものと国際的には認識されている。
  • 経団連などの要望は、だいたい修士レベルの学生を想定している。どの段階でどの程度の教育をすべきかを検討する場合、学部への期待と大学院への期待と分けて踏まえるべき。
  • 創造的デザインについて、1年なり2年なりしっかりやるべき。日本の独創性を育むことが大事。

課題3 『技術者教育の充実のための教育内容・方法や教育体制・評価のあり方について』

主担当である大場委員より説明が行われた。

(第2回WGを受けて加筆修正した版の説明)

  • タイトルは、「研究・教育・イノベーションの三位一体を推進して社会を支える工学教育」に変更案が出た。
  • コアカリキュラムに関してはこういうものだというものを、FE試験をベースにした形で作っていけば、現場はそれほど疲弊しないのではないか。FE試験では、広い分野に関する理解がある程度含まれている。
  • 「先端教育は3分の1にしなさい」という書きぶりがあったが、そのあたりは各大学で判断してほしいということで削除した。

(意見)

  • JABEEによるプログラム審査で問題なのは、オブザーバー、審査員。米国ではフェローなどの尊敬に値する人が審査員になる。審査員の質の保証をしないとJABEEはつぶれる。
  • プログラムの認定機構は複数合って競争すべき。

課題6 『技術者教育の充実に向けた支援方策について』

(意見)

  • 教育に特化した人材も必要である。みんなで教育も研究もやっていくという形ではみんな疲弊してしまう。教育系人材を、どう処遇していくか。学内で活躍できるような組織、幹部の理解、等を促す方針が必要ではないか。

(4)今後の日程の確認

検討課題(案)リバイス分(11月中旬〆切)を、第3回本会議で報告。

第4回WGは12月中旬~下旬頃予定。

お問合せ先

高等教育局専門教育課科学・技術教育係