教育内容等に関するワーキンググループ(第2回) 議事要旨

1.日時

平成21年9月29日(火曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館16階2会議室

3.議題

  1. 検討課題(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

野口主査、有信委員、岩熊委員、大場委員、岡崎委員、工藤委員
(※本会議委員)谷口座長、柘植委員

文部科学省

加藤高等教育担当審議官、神田専門教育課企画官、その他関係官

5.議事要旨

(1) 開会

(2) 事務局より資料確認及び説明

  • 資料3に基づき、国際的にProfessional Engineer(技術者)、Engineering Technologist(テクノロジスト)、Engineering Technician(技能者)といった分類がなされていることが紹介された。
  • 資料4及び参考資料3に基づき、英国では高等教育質保証機構QAAが分野別学位水準基標を作成しており、学習成果のパフォーマンスレベルを「最低到達基準」「標準到達基準」などとして設定していることが紹介された。
  • 資料5に基づき、モデル・コア・カリキュラムのまとめ方や機能別分化の考慮について検討の必要があることが紹介され、次回検討を深めることとされた。

(3) 検討課題案について

<1>技術者及び技術者教育について

主担当である岩熊委員より説明が行われた。

(説明要旨)

  • 技術を担う者として、技術者と技能者の二つが挙げられるが、日本においてはその境界は曖昧である。アメリカでは二つの職種は垂直の関係であるが、日本では必ずしもそうではない。
  • 技術者に求められる資質は、工学を基礎として学んだものを生かし、物を作ることであり、その他にコストや安全といったことに配慮して手段や手法を選ぶこと。また、科学技術に基づく国づくりの中核になり、市民への説明責任を持つことが必要である。
  • 現在の技術者教育の問題点としてしばしば産業界が求める人材と大学が輩出する人材のミスマッチが挙げられる。そのミスマッチを全て大学がそのまま引き受ける必要はないが、社会にスムーズに出られるような後押しをする教育を大学で行う必要がある。
  • 教育の中で技術者は人であるということを示す必要がある。
  • 日本語で誰しもが工学教育を受けるチャンスが開かれているということは評価すべきであろう。
  • 技術者は大学などで技術者とはどうあるべきかのキャリア教育を受けているべきだと思うが、実際はあまり行われていないのではないか。
  • 今後は技術者として意欲を持って取り組むことができる、技術の社会的影響について考えるなど専門知識とは異なる能力を備え、技術革新をもたらす創造的資質をもった技術者の育成が望まれる。また、どんな技術者がすぐれているのかや自分が目指すべき技術者像を学生に考えさせることが重要である。

(説明等に対する主な意見)

  • エンジニアリングという言葉を産業界は職能とみるし、アカデミアは学問領域とみる。定義の共通認識が必要。
  • 時代の変化とともに工学のイメージが変わる。現在に合わせて定義すべきであろう。
  • ロケットなどは技術の固まりである。技術者教育は学生に夢を与えるものでなければならない。
  • 職業としてのエンジニア像を明確にすることが必要である。その上で社会で求められるエンジニア教育をするべきであろう。
  • サイエンスから直接イノベーションは起こらない。テクノロジーを間に入れることでイノベーションは行われる。テクノロジーを担っているのがエンジニアである。そういったニュアンスで記述してほしい。
  • ヨーロッパでは職業教育としての側面が強いが、福沢諭吉は実学にサイヤンスとルビをふっているように日本では社会に科学を還元する学問として工学を体系づけた経緯がある。
  • 日本の工学は進んでいる。工学のノーベル賞をつくってほしいという声もある。
  • エンジニアは高度な科学を技術に変え、サイエンスを国民のために持ってくるという役割がある。ナポレオンは、エコール・ポリテクニークを設立したとき、「もっとサイエンスと栄光を国民のために」と言った。現在大学教育の中では、知識を教えることに偏重し、専門的職業人育成という観点が不足しているのではないか。

<2>技術者として共通的に身につけるべき基本的な知識及び資質・能力について

主担当である岡崎委員より説明が行われた。

(説明要旨)

  • 技術者として必要な能力として基礎力というのは不可欠である。
  • 工学系は数多く修士に進学している現実があるので、修士課程についても議論が必要である。
  • 東工大のGPでは、課題解決能力などの能力ごとに研究者・技術者リテラシー教育目標を設定し、複数の教員で学期ごとに学生の学習成果の合否評価を行いポートフォリオを作成している。
  • 各技術分野において必要な基本的知識には社会倫理も必要である。また、グローバル化の時代に、イノベーション創出と産業競争力に貢献できる技術者となるために身につけるべき素養についても議論が必要であろう。

(説明等に対する主な意見)

  • 工学が技術という形で社会をどう支えているか、リスク及びベネフィットの理解力を育てることが学士課程教育の中で重要である。
  • 学部も修士も共通する点はあるが、修士課程においては、与えられたテーマではなく自ら問題を発見することが学生に求められる。
  • 機械工学において四力学より、もっと先端教育をすべきかといった議論をしたことがあるが、四力学はやはり必須である。
  • 工学基礎に根ざしたデザイン(単なる製図ではない設計)が重要であり、今の工学教育に少し不足している。
  • 東工大のGPのような評価を積み重ねて、人間力といった数値化できない能力の評価方法を検証していくべき。さらにシンプルにして普及を図るべきである。
  • チームワーク能力とリーダーとしての課題解決能力が重要であることを記述してほしい。
  • 工学教育(人材育成)は工学研究(知的価値の創造)とイノベーション(社会的価値や経済的価値の具現化)との三位一体で推進する必要がある。
  • MITでは学生に勝手にやらせPhDの審査を厳しくする一方、スタンフォード大では教育を徹底しているように一様ではないが、教育によるレベルの底上げは重要である。

<3>技術者教育の充実のための教育内容・方法や教育体制・評価のあり方について

主担当である大場委員より説明が行われた。

(説明要旨)

  • 基本的な知識及び資質・能力を身につける際に効果的な教育方法(カリキュラム編成や授業形態等)については、従来の授業形態を改善しつつ、現場力(座学ではなくフィールド等)・コミュニケーション力・デザイン能力を強化する授業を取り入れていく必要がある。
  • 基礎的教育と先端的教育の融合をはかるための教育方法は、コアカリキュラムに関して基礎学力を保証するシステムを構築する必要がある。また、先端教育をある程度カリキュラムに取り入れることにより、学生のモチベーション向上につながると思われる。国内外で取り組まれているベストプラクティスを収集し例示することが考えられる。
  • グローバル化に対応できる人材育成を図るための教育内容・方法は、ABETなどの世界基準の工学基礎力の保証をはかる手段として、コアカリキュラムにリンクした共通テストシステムの試行も行うべきである。また、エンジニアデザイン能力教育の改善として早い年次から演習、実験などを有機的にカリキュラムに組み込むとともに、必ずしも十分教育が育成しきれない卒業研究とは別に米国でいうキャップストーンプロジェクト(学生にある程度易しい課題を与えて学生の自主性に任せて解決させるようなプロジェクト)の導入を考えてもいいのではないか。英語能力については、TOEICなど既存の英語能力評価制度を利用して大学として英語保証の能力を保証することを検討すべきである。
  • 幅広い視野と柔軟な思考力を養うための教育体制については、エンジニアリベラル教育が大事であり、従来の座学中心ではなくものづくりができるような能力が育成できるよう体験型事業やグループ作業、ディベート、PBLなどを積極的に取り入れていく必要がある。また幅広い視野を身につけるために、学部―学科間の連携体制を取り入れることも考えられる。
  • 基本的な知識及び資質・能力が身についたかどうかの適切な評価基準・方法を図るために、カリキュラム全体の3分の2程度をコアカリキュラムとし、残りを各大学で特色ある教育にすることがいいのではないか。

(説明等に対する主な意見)

  • 実際に早い時期から演習や実習などを取り入れるとチームワーク力やリーダー育成に効果的である。
  • 基礎的教育と先端的教育は、完全に分けるべきものではなく、例えば一つの授業の中でも相互に関連しながら教えることができる。
  • 先端的教育とは、大学を卒業しても自分で学習できる能力、先端をイメージできる能力の形成という表現がいいのではないか。
  • 融合という言葉に違和感がある。工学教育は研究、イノベーションと三位一体でないと無味乾燥になる。
  • 学科間の壁を崩した連携も重要である。
  • 一般的な英語能力だけではなく、専門英語も重要である。
  • 英語能力を伸ばすためには、実践する場が必要であろう。そのきっかけを大学が与える必要がある。
  • 共通テストシステム導入については、第三者評価が不要との議論を生みかねないのでその言葉を使うことは注意と十分な議論が必要であろう。
  • 文部科学大臣がAHELOのフィージビリティスタディーの実施についてコミットしていることも踏まえる必要がある。
  • 工学教養教育、エンジニアリベラル教育などの言葉は工学リベラルアーツ教育として統一してもいいのではないか。

(4) 資料8-2について工藤委員から説明。

(説明要旨)

  • 工学プログラム構築で大事なのは、ビジョン・目標・カリキュラム・出口管理の4つである。本来はビジョンを立て、目標を設定し、カリキュラムを組む順序であるべきだが、JABEEの認定受審の現状は、既存のカリキュラムがあり、それにビジョンや目標を当てはめている。
  • コミュニケーション能力などの人間的な能力の評価方法として、その能力をレベル別に細分化したルーブリックスという方法が挙げられる。ただ非常に時間と労力がかかるので、評価方法については今後も検討が必要がある。

(5) 事務局より次回の日程(10月26日(月曜日)14時~)確認後、終了。

 

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高等教育局専門教育課科学・技術教育係