大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会(第4回) 議事録

1.日時

平成21年5月25日(月曜日)17時30分~19時30分

2.場所

文部科学省 東館3階 講堂

3.議題

  1. 「大学における看護系人材養成の在り方について(一次報告)」骨子案の検討

4.出席者

委員

中山座長、菱沼副座長、秋山委員、倉田委員、小山委員、坂本委員、佐藤委員、高田委員、富野委員、西澤委員、羽生田委員、平澤委員、前野委員、松尾委員、宮﨑委員、村嶋委員

文部科学省

戸谷大臣官房審議官(高等教育局担当)、新木医学教育課長、小山田看護教育専門官

オブザーバー

野村看護課長(厚生労働省医政局)

5.議事録

【小山田看護教育専門官】 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第4回大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会を開会させていただきます。委員の皆様におかれましては、ご多忙のところ、本日もお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日、事務局の戸谷審議官が所用で遅れておりますが、前の会議が終了次第、到着する予定となっております。では、早速、座長に議事進行をお願いいたします。

【中山座長】 今日は、場の雰囲気が違うので私も少し戸惑っております。皆様の前にはそれぞれマイクがあるかと思いますので、発言のときにはスイッチを入れてください。今日は、これまでの会議の様々な議論、関係者の方々にヒアリングにも来ていただきましたので、そのことを踏まえまして、資料にあるのですが、第一次報告骨子案の取りまとめを中心に議論していただきたいと思っております。座長としましては、難破船にならないようにできるだけ舵取りをして、どこかに落ちつくようにと考えておりますが、皆さんに自由闊達なご議論をしていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今日は、2名の委員から資料提供がありましたので、そのご説明をいただいた後、骨子案についての全体討論という形で進めていきたいと思います。その前に、委員の方々の出欠状況を事務局から報告いただきたいのと、配付資料についても確認をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】 初めに、委員の出欠状況ですが、本日は横尾委員がご欠席となっております。また、倉田委員から10分ほど遅れる旨のご連絡をいただいております。続いて、配付資料の確認ですが、1枚目に会議次第がございます。その次に、資料1として、大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会第一次報告骨子(案)をつけております。資料2は、1枚物で坂本委員からご提示いただいたものです。資料3は、横尾委員から提出された資料で、こちらも1枚物になっております。最後に、参考資料として前回の議事録をおつけしております。不備等がございましたら、事務局までお知らせください。また、座長からもご案内ありましたが、本日もマイクはご発言のときに押していただいて、終わりましたらオフにしていただきたくお願いいたします。

【中山座長】 それでは、議事に入る前に、今日の本題に入る前に、委員のほうから提出いただきました資料について簡単にご説明をいただきたいと思いますので、坂本委員、資料2のご説明をよろしくお願いいたします。

【坂本委員】 それでは、説明させていただきます。資料2をご覧いただければと思います。看護の質の向上と確保に関するPT(プロジェクトチーム)と書いてありますが、私ども看護協会もヒアリングを受けましたので、自民党の看護問題対策議員連盟がどのような方向で動いているかという資料でございます。今後、少子高齢化が進む中で、高齢者を中心とした医療ニーズの増大や医療の高度化、在宅医療の進展等にこたえるために看護の質の向上を図るとともに、看護職員の確保を図る必要があるということで、明確に決定ではございませんが、動きということで参考にしていただければと思います。

 まず、看護基礎教育の充実に関しましては、大学化推進のための、大学において看護師になるのに必要な学科を修めた者、看護師4年課程も想定としまして、現在の多様な看護師養成ルートについては現状どおりですが、保健師助産師看護師法の中に明記していただくということで動いております。それから、新たに看護師4年課程も想定した教育内容を検討、3年課程も併存ということでございます。

 保健師、助産師教育の充実ですが、ここに関しましては、今、修業年限は6カ月でございますが、1年に延長。それから、統合カリキュラムの一律実施を見直して、看護師教育課程から独立させる。

 それから、現在、厚生労働省でも進められていると思いますが、卒後研修の実施に対しまして、この報告を踏まえて、現在、与野党において法案審議のための手続中であると聞いております。具体的な動きはまだですが、そのような方向で動いていると聞いております。

 さらに、報告で提言された方向で具体的な内容の検討が進められるとこちらも承知しております。これらは、関係団体の合意によって取りまとめられたものと承知しておりまして、このようなことを見ていただければと思っております。具体的には、読んでいただければと思います。以上でございます。

【中山座長】 もし質問がございましたら。大丈夫ですか。では、報告だけでいきたいと思いますが、全体の議論の中でまた何か問題があるようでしたら。

【坂本委員】 すみません。短いようでしたのでつけ加えますが、この資料には保健師と助産師を分けて書いてございますが、保健師におきましては6カ月から1年に保助看法で延長して、さらに修業年限を延長することについては、教育内容の充実とあわせて今後検討する。統合カリキュラムを一律に実施することを見直して、大学が看護師のみの教育カリキュラムを設定したり、学生が看護師と保健師双方をもらうのか否かを選べるような選択制とする。この際、保健師教育課程をもらう場合には、保健師教育においてコアの講義、実施については看護師教育課程から独立して行うものとする。また、保健師教育を大学院または専攻科で行うことも可能とする。保健師教育におけるコアの講義実施の内容については今後検討。

 助産師に関しましても、同じく6カ月から1年に延長する。これは保助看法です。さらに修業年限を延長することについては、教育内容の充実とあわせて今後検討。助産師教育を行う場合には、現状同様、学生が看護師と助産師双方を学ぶか否かを選べるような選択制とする。この際、助産師教育課程を学ぶ場合には、助産師教育においてコアの講義、実習については看護師教育課程から独立して行うものとする。また、助産師教育を大学院または専攻科で行うことも可能である。

 卒後研修につきましては、看護師等の資質の向上を図るとともに、離職防止と看護師等の確保を図るため、新人看護師等に関する卒後研修を実施する。法律上、看護師等については、免許を受けた後も研修を受け、資質の向上を図るよう努めなければならないこととする。これは保助看法です。国が定める看護師等の人材確保の基本指針と国の責務に関する規定に、研修についても明記する他、病院等の開設者に新人研修の実施や自己啓発への配慮等に努めるものとする。これは、看護師等の人材確保の促進に関する法律でございます。

 以上、自民党の看護問題対策議員連盟の中の、看護の質の向上と確保に関するプロジェクトでございますが、この検討会においてもこのような方向で検討すべきではないかと考えております。以上でございます。

【中山座長】 ありがとうございました。それでは、資料3につきましては、横尾委員がお休みなので、事務局のほうからご説明いただきたいと思います。

【小山田看護教育専門官】 資料3ですが、横尾委員から、大学における助産師教育の在り方に関して意見書をご提出いただいております。ただ、本日は委員がご欠席であることから、次回、横尾委員ご自身から関連資料をお示しいただきながら、ご説明をいただくことになっておりますので、こちらからのご説明は省略させていただきます。

【中山座長】 横尾委員の提出したものにつきましては、皆様に読んでいただきまして、次回、横尾委員ご出席のときに説明していただくことにしたいと思います。今、説明いただいた資料ですが、坂本委員のお話しいただいたことについて何か質問ございますか。西澤委員、どうぞ。

【西澤委員】 今の自民党での議論ですが、ここの場で、これをもとにして議論してくれというのは、少し筋違いだと私は思います。これは向こうでやっているので、これに縛られるのはおかしいので、無視して議論すべきだと思います。

【中山座長】 ありがとうございます。無視まで行くかどうか分からないのですが、検討会は検討会の見解がございますので、参考にしながら考えていただきたいと思っております。

【坂本委員】 無視というのは少しきついですが、こういう動きがあるということをぜひ聞いていただければと思います。参考で結構です。

【中山座長】 そういうことですので、よろしくお願いします。それでは、今日の本題の資料1に入りたいと思います。第一次報告骨子案ということで、事務局のほうでまとめていただいたものです。もし、皆さんの発言が漏れていることがあったときには、言っていただければと思います。説明に入る前に、中に書いてあるもので名前を変えているところがあります。これまで、保健師、助産師、看護師の三職種の免許取得に必要な教育内容を体系化して教授する学士課程におけるカリキュラムを、本検討会では「統合化したカリキュラム」と称してきました。しかし、今、4年制の専修学校で、保健師と看護師をあわせた、あるいは助産師と看護師をあわせて養成する教育課程があるのですが、それを「統合カリキュラム」と呼んでいます。その「統合カリキュラム」と「統合化したカリキュラム」では、報告の中では非常に混乱するかもしれない、あるいは混同しやすいのではないかということから、報告案では「看護学基礎カリキュラム」という名称を用いて書いてあります。これがいいかどうかという議論もあるかと思いますが、文言を変えています。「看護学基礎カリキュラム」というのは、これまで皆さんと一緒に「統合化したカリキュラム」と呼んでいる部分だということをご了承ください。それでは、説明をお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】 では、資料1をご覧ください。事前にご送付できればよかったのですが、間に合いませんでしたので、内容を少し細かくご説明させていただこうと思っております。第一次報告骨子案は、これまで議論いただいた意見に基づいて、座長と相談の上に作成いたしておりまして、次回6月28日に検討していただく第一次報告を作成するに当たり、その骨子について合意を得ることを目的として作成いたしました。骨子の枠組みとしては4つありまして、1つは大学における看護学教育の現状認識、2点目に大学における看護系人材養成の在り方に関する基本的な方針、3つ目に保健師教育及び助産師教育の在り方について、4点目に基本的な方針の実現に向けた今後の課題についてという全体構成になっております。それぞれの内容をご説明いたします。

 まず1枚目ですが、大学における看護学教育の現状認識といたしまして、1つ目の丸は、大学における看護学教育は指定規則においてそれぞれ免許取得に必要な教育内容が規定されている、と書いております。2つ目の丸は、ただいまご説明いただいた看護学基礎カリキュラムの内容についての説明です。3つ目に、看護学基礎カリキュラムにおいて修めるべき教育内容は、三職種に共通する看護学の基礎とあわせて、看護師養成及び保健師養成それぞれに特化した教育内容を効率的に教授するということをこれまで最低基準としてきた、とまとめてございます。次の丸では、大学が看護学基礎カリキュラムを志向した理由として3点まとめました。1点目に、学問領域として看護学の確立を目指してきた。2点目に、いずれの看護職も人々の生活が営まれるあらゆる場で、あらゆる利用者のニーズに対し、責任を持って問題解決していく能力を求められるようになったこと。3点目に、看護職に期待される役割と責任が増大しており、三職種に必要な教育内容を確実かつ効率的に教授する人材養成の仕組みが重要となってきた。看護学基礎カリキュラムを志向した理由をこの3点にまとめました。次の丸は、近年の看護系大学の増加により看護学教育が発展する一方で、学生数の増加が実習施設の確保を困難な状況にし、看護学基礎カリキュラムでは看護師教育及び保健師教育それぞれが不十分になっているとの指摘があること。また、医学、医療の高度化に伴い、三職種それぞれの養成に求められる教育内容も増大しており、学士課程において網羅的にその内容を教授し難くなってきているのではないかとの指摘があることを述べています。

 このような現状認識を踏まえまして、2.として、大学における看護系人材養成の在り方に関する基本的な方針というものをまとめました。3項目あり、1)の今後の看護職者に求められる能力については3点にまとめました。1点目は、みずから主体的に考え、行動ができ、急性期医療から地域医療まで看護を提供できる能力。2点目として、チーム医療の調整役として必要な高度なコミュニケーション能力。3点目として、看護専門職としての自発的な能力開発を継続するための素養の育成や、看護の向上に資する研究能力の涵養などが求められている。こうした認識に基づいて、大学における今後の看護系人材養成の基本的な方向性についてということで、2)にまとめました。看護系大学おいては、社会の要請に対応し得る看護職を養成することが社会的な使命であるということを、最初に確認しております。次に、3ページ目にまいりますが、大学における看護系人材の養成については、学士課程教育で完成できるものではなくて、今後、専門分野を学ぶための素養の育成が強調されるべきである。したがって、学士課程では特定領域のスペシャリスト養成を目指すのではなく、広く豊かな教養や判断力を持ち、専門職として自己研鑽を続けることのできる、質の高い看護専門職者の基盤作りが必要である。その上で、各職場の業務を実際に遂行するのに必要な知識、技能であって、免許取得後に習得することが適切なものについては、各職場において卒後研修として習得する体制が必要である。さらに、高度専門職業人(スペシャリスト)として求められる教育に対応できるよう、大学院における教育を充実していく必要がある。これらの方向性に対する具体的な方策を、次の3)にまとめました。学士課程教育においては、看護専門職の基盤形成を目的とし、今後も必要な教育を効率的に行うために、三職種に共通する看護学の基礎を体系的に教授する。同時に、学士課程教育では、医学、医療の高度化に伴い看護師教育の一層の充実を図る。これに伴い、保健師教育に固有の教育は学士課程教育の段階では必修とはせず、助産師と同様に、将来的には大学院化の可能性も考慮しながら、当面は学士課程教育の段階で選択制、あるいは専攻科や大学院の整備状況によっては学士課程修了後において教育する。この場合に、学生によっては学士課程教育の段階で保健師教育を修めないことも考えられますが、健康保持増進や疾病予防、地域における看護活動の基本的知識等は三職種に共通するものとして、すべての学生に対して学士課程教育で引き続き教育すべきである。就労後の研修を効果的に実施するために、大学においては卒後の新人研修への支援が求められると考えられることから、今後、関係省庁と連携して具体的な在り方を検討する必要がある。専門的な教育を求める学生や、社会の高度専門職業人のニーズに対応するため、大学院教育の充実をさらに推進する必要がある。保健師教育及び看護師教育を充実していくため、以下のような体制が整い、適正な教育課程を実施できる大学は、学生のキャリアパスを広げるという観点から、今後も保健師教育を含めた教育を実施することができるものとするとして、保健師、看護師教育を十分に行えるカリキュラムであること、各大学の理念に基づいて必要な保健師教育実習施設が確保されていること、教育体制が十分であること、学生の高い学習ニーズがあること、この4点を上げました。

 3.保健師教育及び助産師教育の在り方についてということで、1)今後の大学における保健師養成の在り方について再度述べております。看護系大学の急増が保健師に必要な実習施設の確保を困難にし、保健師教育の内容を希薄化させている。個人に顕在化した健康上の課題や、潜在している課題を予測、解決または予防するために組織的に取り組む能力を備えた保健師の養成ができない。保健指導の対象の複雑化が実習の場を限定している。実習が卒業要件とされていることで、学生のモチベーションが低下し、そうした学生に対応する保健師の時間やエネルギーの損失が、市民サービスの低下につながっているといった問題認識をはじめに論じました。これに対して、以下のような対応をまとめました。まず、保健師教育を卒業要件とすることは見直す。これにより各大学は、保健師教育選択制コースの設置や、大学院において保健師教育を行うなど、大学の理念や特色を反映した弾力的な教育体制の構築が可能になる。保健師が取り組む健康課題は複雑化し、活躍の場も拡大している。また、施策化能力や企画調整力は活動領域を問わず求められ、組織のリスクマネジメントや経営にかかわる力量も求められており、こうした力量を持つ保健師教育へのニーズに対応するため、専攻科や大学院を充実していくことが必要である。今後、拡大する保健師の活動の場を反映した、多用な保健指導に基づく実習内容を検討する。ただし、このような対応については、今後、保健師の役割の整理や卒前卒後の教育内容の整理を行い、免許付与時点での人材像を明確にしていくべきであるといった指摘がある、とまとめました。2)今後の大学における助産師養成の在り方については、以下のような意見があったとまとめております。学士課程における助産師養成は、カリキュラムが過密化し、選択できる学生が全体の1割程度に限られているという問題がある。今後、助産所や病院における助産師外来、院内助産所で自律的に出産にかかわる助産師へのニーズに対応するため、専攻科や大学院を充実していくことが必要である。一方で、助産師不足や学生のニーズに対応するためにも、学士課程における助産師養成は、教育の内容を見直しながら引き続き選択制で行われるべきである。

 最後に、以上のような基本的な方針の実現に向けた今後の課題についてということで、4つまとめました。今後、保健師教育の選択制を前提とした看護学基礎カリキュラムの具体的な教育並びに保健師教育及び助産師教育の内容について、その質の担保の在り方とともに検討を行う。また、医師と看護師等の適切な役割分担等に対応するため、大学における看護学教育の在り方について今後検討していくべきである。学士課程修了後の大学院における高度専門職業人養成の在り方についても引き続き検討を行う。大学において学生の臨床実践力を育成するためには、臨床教授などの実務家教員を導入すべきとの意見がある。一方で、看護学基礎カリキュラムの内容を見直した場合、現在の教員数のままでは限界があるとの指摘があり、今後、教育内容の見直しにあわせて、その内容を教授できる教育体制の見直しについても検討すべきである。指定規則が学士課程における看護学教育の効果的、効率的なカリキュラム構築を阻害するおそれがあるとの指摘があり、今後、看護職の質を底上げしていくためには、このような指摘の問題点を明確にした上で、指定規則にかわる新たな質の担保の仕組みを検討すべきである。

 以上のようにまとめました。

【中山座長】 ありがとうございました。皆様の意見が反映されているかどうかという問題も含めまして、討論をしていきたいと思います。骨子案の1.2.3.4.とはきれいに分かれていかないだろうと思いますが、私としましては1.2.3.4.と皆様と意見交換をして、最終的な方向性を少しでも出せればいいと思っております。

 それでは、1.から始めたいと思います。大学における看護学教育の現状認識、これは現状認識ですので、これまで1回から3回まで皆様に出してもらったものをできるだけ網羅する形で入れてみましたが、この中で不足している点、あるいは、こんなことも盛り込んだほうがいいのではないかという点がございましたら、ご発言ください。どうぞ。

【羽生田委員】 前回、南先生からいろいろとお話しありましたが、私、いま一つよく分からないので、看護教育と看護学教育の違いをご説明いただけないでしょうか。

【中山座長】 だれが説明すればいいですかね。それぞれ教員ですから、必ず看護教育と看護学教育の違いの意見は持っているのですが、ここにいる方々が全部同じとは限ってないので、どういたしますか。小山田専門官のほうで何か。

【小山田看護教育専門官】 大学で看護職を養成する場合には一律に看護学教育と称しており、それと看護教育を対比して考えていないという、そのぐらいの整理しかできていないところです。

【中山座長】 他に何か。これは座長の個人的な見解になるかと思いますが、流れとしましては、大学教育をするに当たっては、先ほど言いましたように免許資格を3つ入れていましたので、単に看護師養成だけではなく保健師も助産師もと考えまして、国家資格としては看護師、保健師、助産師となっていますが、学問体系では看護学として看護職の資格が同じ中に入る。全部が必ずしも入るわけではないですが、コアになる部分は必ず入るということで、これを統合して看護学というような形を考えてきました。3つの職種のコアになるような部分を看護学として、看護学の体系化を目指してきたということから看護学教育とし、養成所で行ってきた看護師養成とは違うという形で区別をしてきた経緯があると思います。違いについてはそれぞれお考えを持っているかと思いますが、一般的な見解としてはその辺のところで落ちついていると思います。

【羽生田委員】 この報告書を最後まで読んだときに、大学では看護学を教えるという筋道があるように思うのです。ですから、それをきちんとするためには、通常の看護教育と看護学教育とどこが違うのかが少し明確になったほうがいい。今の段落のもう一つ下には、看護師教育、保健師教育、助産師教育という形になるわけです。ですから、看護教育というと職業教育かなという気がするのです。看護学教育というと、それに何かしらが加わってくる学問体系といいますか、具体的には言えませんが、そういうところが大学と養成所との違いであって、その辺をきちんと大学が、ここが違うんだというところを見せることが大学の基本的な在り方であろうと思っています。そういう意味で質問させていただきました。

【中山座長】 ありがとうございました。菱沼副座長、今のことで何かコメントありますか。

【菱沼副座長】 今のご意見に答えられるかどうか分からないのですが、確かに看護教育といったときには、職業としての看護職を育てる教育というニュアンスが、私たちが使うときには多いと思います。看護教育の流れはどうなってきたかと考えると、院内の病院で働く人材、要するに企業内教育と同じような、そういう教育の中で始まって、看護教育は、もともとは職業訓練として始まった。それは共通の認識だと思います。

 それが、職業訓練だけにとどまらず、教養のある人材であるとか、言われたことをやるだけではなく、自分で考えて看護のものを開発していく能力がある人間を育てるという段階で、学の体系になりつつある。看護学は、アメリカで言葉の上での整理が始まったのは1950年代ですので非常に遅いですし、今、看護職の人間がやっているいろいろな技術に関しての理論化といいますか、そのバックは何なのか、実際にやるとどのくらいの効果があるのかということの追及は、現在やられていて、それを学問としてみんなが一生懸命保証しようとしている段階です。そういうことをきちんと学生に提示していく。これまで言い伝えでやられてきたことはこういうことですが、それだけではない、こういうバックの理論もあるし、説明の仕方もあるということを含めて、学として成り立ちつつある。そういうものを学生に示していくのが看護学教育で、それを大学において行うという認識かと思っております。先生の質問に答えられたかどうか分からないですが、そのように思っております。

【中山座長】 ありがとうございました。急にふると困るので、あまりふらないようにとは思っておりましたが、羽生田委員、ここに、その辺の説明を少し入れたほうがいいということですか。大学における看護学教育の現状認識とするなら、看護学教育とはどんなふうに考えるか。

【羽生田委員】 入れたほうが分かりやすいと思います。私も今、副座長が言われたような、感覚的には同じような認識でいるのですが、それをどのように表現するか、そこを書く必要があるかどうかは、皆さんのご意見で考えていただければと思います。

【中山座長】 松尾委員、どうぞ。

【松尾委員】 今、羽生田委員の言われたこと、非常に重要だと思うのです。養成所を出ても、それから看護大学を出ても、国家試験として看護師の資格ができる。片やそれプラス学士がつくのですが、片やつかない。そのことによってどのような看護師をつくるのかということが一つ。例えば、世の中で経済学部を出た人と専門学校を出た人が同じ会社に入ったとき、どういう区別をされているのかよく分かりませんが、現実には同じような仕事をするので、そのために養成学校の人も3年ではなくて4年制にして、教育をもっと充実させようという方向性が多分あるのだと思うのです。そうしたときに、同じフィールドで、同じ資格を持って仕事をするのに、どういう違いがあるのかをもう少し明確にしておかないといけないと思うのです。

 前回、グランドデザインと申し上げたのですが、すぐにはできなくても、どういう人を、どうつくるのか。もし、養成所と大学をずっと残すのであれば、現場で一体どんな区別をするのか。明確になっていないと非常に分かりにくいという気がします。

【羽生田委員】 すみません、坂本委員がご提示された資料2の理解が間違っているので、将来的に大学になるということは一言も入っていませんので、その点はよくお読みいただきたいと思います。3年以上という表現で国家試験を受ける資格があったものを、大学を卒業すれば受けられると明確に書くということであって、将来、全部大学になるという意味では決してないということはご理解いただきたい。ルートについては現状どおりという言葉が入っているのはそういう意味でございまして、全部大学にすることが決まって、こういう方向に行っているわけではないということだけは、誤った理解をしないようにお願いしたいと思います。

【中山座長】 ありがとうございました。宮﨑委員、どうぞ。

【宮﨑委員】 別な観点で、1.に関してですが、看護学基礎カリキュラムを志向した理由が幾つかあったはずです。実は、その成果の検証が十分なされないままに、急激に看護系大学が増えたという事情から生じた実習施設の確保の困難性、そういった現実の必要性から見直しの議論になっている。そもそも掲げた理念、哲学というものがあったわけで、それがいろいろな実情から理念の検証がなされないままに、必要性から見直しが始まっている。そこについてはきちんと言及しておいたほうがいいと思います。

 看護系大学の急増が始まったのは、平成10年ぐらいから深刻になってきていると思うのです。この間、看護学基礎カリキュラムによって卒業した人たちがどれぐらいいて、その人たちはおそらく中堅クラスになっていると思うのですが、その成果の検証が十分なされていないというのは一つ課題として押さえておく必要があると思います。

【中山座長】 どうぞ。

【村嶋委員】 私も、今のところは問題にしたいと思います。学生数の増加が保健所及び市町村の実習施設の確保を困難な状況にしていると。学生数の増加と書かれておりますし、今、宮﨑委員もそのようにおっしゃいましたが、学生数の増加は確かに一因ではございますが、それだけではなく、4年間に看護師と保健師の2つの免許を詰め込みで入れている、統合化カリキュラムがもたらすカリキュラムの過密さが非常に問題だと思います。

 それから、統合化カリキュラムによって教育されました保健師は、第2回目の会議のときに大阪の森岡参事がおっしゃいましたように、実は保健師として大変トレーニングが不十分でして、1年目に本当にしなければいけない家庭訪問や健康教育すら体験しないまま就職してしまっている実態がある。それは、本人にとっても、現場で保健師として求められることと自分ができることとのギャップが大きく、いろいろと悩んで、そして離職に至ってしまうような現実がある。統合化カリキュラムは、システムとしては破綻してしまっていると、森岡参考人はおっしゃいました。そういう意味で統合化カリキュラムの評価は既に出ていると思います。統合化カリキュラムの持つ負の側面を十分書き込んでいただきたいと思います。

【中山座長】 2人の間は少し違うと思いますが、負の側面というのは、大学は保健師の免許と看護師の免許を一緒に入れて教育をずっとやってきたという経緯の中で、過密ですごくなってきたというのは、看護師そのものに求められることが多くなって、学ばなければいけないことが多くなり、保健師も求められるものが変わってきて大きくなった結果、非常に大きな問題になったということなのでしょうか。それとも、私も最初に開設された大学を出ているのですが、最初から問題だったというご指摘なのでしょうか。そこだけは明確にしておいてください。

【村嶋委員】 本当は、最初からある部分問題だったのだと思います。しかし、その時点で大学生は全体の1%に満たず、かなりエリートだった。それから、現場も、母子のほのぼの家庭訪問からゆっくり育てることができた。そういうこともあって、成長していけた人は成長していったということはあります。だけど、統合化カリキュラムそのものが持っている保健師としての教育の不十分さは、やはり指摘しなければいけないと思います。それから、学部教育であることの限界、ポピュレーションを見る訓練は学部の中ではできません。統合化カリキュラムの詰め込みによる問題点は、今、非常に大きくなってきていますが、単に学生数が増加しただけではないということを申し上げます。

【中山座長】  そこのところで、他に意見ございますか。村嶋委員としては、それを現状認識としてこの中にもう少し書き込むということなのでしょうか。

【村嶋委員】 はい。学生数の増加だけ書いてありますが、2つの免許を一斉に取らせることによる詰め込みの過密カリキュラムの問題が多い。それは、最初から、再三言われてきたことでございます。それから、統合化カリキュラムは、保健師にとっては非常に不十分な教育だった。看護師にとっても不十分だったのですが、そのことを最初に書く必要があると思います。

【中山座長】 どうぞ。

【菱沼副座長】 今の村嶋委員のご発言は、現状認識の最後の丸のところで、医学、医療の高度化に伴い、看護学基礎カリキュラムの中に三職種それぞれの養成に求められる教育内容も増大して、網羅的にその内容を教授しがたくなってきているということとは違うのでしょうか。過密性、あるいは内容の……。

【村嶋委員】 私が申し上げたいのは2ページの最初の行で、学生数の増加が実習を困難にして、それぞれ不十分になっていると。もともと統合化カリキュラムは、看護師にとっても保健師にとってもかなり不十分だったと思います。

【中山座長】 ここは、いろいろな意味で異論があるところだと思います。私も含め何人かの方々は、先ほど言いましたように大学のカリキュラムで育ってきていますので、そう否定されてしまうと、私はだめだったのかという感じがしないでもないのですが、それは別にしましても、現状としては非常に困難になっているということは、今の村嶋委員のご指摘だと、単に学生数の問題ではなくて、カリキュラムそのものの不十分さの問題のほうが大きいというご指摘と受けとめていいですね。あまり遡らないで、現状という形で考えていただいたほうがいいかと思います。

【菱沼副座長】 内容的には同じなのですが、表現、論旨の整理の仕方として一つ提案をしてみたいと思います。この中に、人々の生活が営まれるあらゆる場で、あらゆる利用者のニーズに対し、責任を持って解決していく能力が求められるようになったと書いてあるのですが、おそらく大学では、大学ができたときからこのことを考えて、あらゆる場で、あらゆる健康レベルの利用者のニーズに対して責任を持って、問題解決していく能力を持った看護職を育成することを目標にしてきたんだと。その結果として、看護師と保健師の教育内容が含まれるカリキュラム、基礎的カリキュラムというのでしょうか、基礎カリキュラムが大学ではずっととられてきた。そのように文部科学省でも指導をしてきたわけです。そして、助産師教育は、もともと看護師教育を土台にした選択制をどこの大学でもとっていた。全員に助産師を取らせるという教育は、大学ではやっていなかったと思います。

 そういう状況でずっと進んできまして、今日、看護に対する社会のニーズの変化に伴い、看護師教育の内容は非常に変化して、増大してきた。また、看護大学の増加によって、教育に不可欠と考えられている実習施設の確保が困難になってきた。これは保健師教育のみならず看護師教育においても言われていることでして、困難となって看護師、保健師の教育のそれぞれが不十分であるという指摘がなされていると、ここに書いてある順番を少し整理すると、今、おっしゃられたことが少し解決できるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【中山座長】 どうぞ。

【坂本委員】 私も前に発言したと思うのですが、2ページの一番上、教育内容も増大しておりというところに時間が足りないと。助産師は22単位、保健師は40単位と前に出されたことがあるのを覚えておりますが、やはり時間が足りないというのが抱えている問題でもあったと記憶しております。

【中山座長】 時間というのは、教育をする時間数が足りないという問題ですね。他に何かご発言ございますか。宮﨑委員、どうぞ。

【宮﨑委員】 時間が足りないですとか、単位数のことがとかく問題にはなりますが、大学における教育の到達をどういうふうに位置づけるかによって、そこら辺の軸は変わってくるように思います。

 それから、大学における教育はいわゆる職業人教育ではないわけですから、その実践というものがどういう理論的な成り立ちによって目的を達成するのか。その論理構造をきちんと解明して、新たな問題にも取組めるような開発力を習得していくということですから、繰り返しトレーニングに時間を割くということではないと思うのです。そこら辺の看護学教育に対するカリキュラム、もしくは教員の資質というところも、時間数の足りなさですとか、単位数の不十分さという議論に影響を与えているのではないかと、私は思っています。

【中山座長】 ここのところでまた、羽生田委員が最初に言ってくださった看護学教育なのか、看護教育なのか、要するに大学はどこまで職業人としての教育を入れていくのか、あるいは、学問としての看護学の根幹がきちんと入ればいいのかという議論にも進んでいきそうな気がします。この問題でずっといきますと、多少の時間は延長してもいいと言われていますが、延々といきそうなので、今のところと違う観点から問題があるという方だけ発言いただけますでしょうか。

【坂本委員】 質問ですが、1ページの丸の2つ目、三職種に共通する看護学の基礎と免許取得に必要な教育内容を効率的に教授するための体系化したカリキュラムを看護学基礎カリキュラムと名前をつけられましたので、それでよく理解できるのですが、先ほど説明された6ページの4.の丸のところにある、今後、保健師教育の選択制を前提とした看護学基礎カリキュラムと、今、1ページで言った看護学基礎カリキュラムは同じであるのか、これが免許とどのように関係してきているか。最初は免許と書いてありますので、6ページが免許と関係しているのかどうか、お答えいただきたいのですが。

【中山座長】 小山田専門官のほうから答えていただいていいですか。

【小山田看護教育専門官】 端的に申し上げると、看護学基礎カリキュラムであらわしているものは同じことなのですが、免許に関するものについては、1ページ目の定義をしたところの後ろのほうに、看護師養成、保健師養成、助産師養成に特化した教育については、それぞれ看護師教育、保健師教育、助産師教育という形で、この報告書案の中では整理をさせていただいております。6ページ目では、あまり明記はしていないのですが、看護学基礎カリキュラムには、おそらく看護師教育は原則的に含んでいくのだろうということで、保健師教育及び助産師教育の内容についてというものを看護学基礎カリキュラムと対比させております。ご説明になっておりますでしょうか。

【中山座長】 坂本委員、いいですか。

【坂本委員】 ということは、6ページの看護学基礎カリキュラムは、看護師を前提にしたということで読み取ればよろしいのですか。免許は関係ないと読み取ればいいんですか。

【中山座長】 そうです。

【坂本委員】 そうですね。はい。

【中山座長】 最初の、あらゆる健康レベル、あるいは利用者、あらゆる場で看護職が働くときに土台になる部分のことだと私のほうも思っていますので、免許に規定されるものではないと考えていただければいいのではないかと思います。他に。よろしいですか。

 そうしましたら、2番目のところに行きまして、大学における看護系人材養成の在り方に関する基本的な方針、ここは1.と少し関連してくるかと思います。佐藤委員、どうぞ。

【佐藤委員】 1.でも出ました看護教育と看護学教育の違いというところは、私、1.であえて申しませんでしたのは現状認識ですから。ただ、2.のところはぜひ、どう書き込むかは別としても、議論を深めていただくことが肝要かと思いました。まだきちんと整理されていないというお話です。大学教育に携わる者は、ずっと同じ疑問を抱き続けているのではないかと思います。この辺で一度、明らかにしていただくほうがいいかと思います。

 特に、2ページの2.のところに3つほど書いてありますね。これは、他の養成施設において養成される看護師等と共通項が多くて、学士課程については3つ目の丸のところにだけ書いてあります。果たしてこれだけが差異なのかということも含めて、やはり基本的に大学において看護教育、あるいは看護学教育を行う意味について、ここら辺で明らかにしていただいたほうがいいと思いました。

 もう一点よろしいですか。後半になると、保健師教育を分離というか、選択制にするというくだりが出てまいります。それはそれで一つの、それこそ選択かと思いますが、私、前からよく見えないのは、こういうふうに分離すると、大学が悩んでいる、いわゆる過密ダイヤがどの程度解消されるか。この辺がよく見えないです。それによって、教員数等の基準がどういうふうに変わっていくのかという設計も見えない。さらに、選択制をとっていくと、どういう選択傾向があろうと推測して、こういうことを提起されているのか。大学がどう選択していくのか、学生はどういう選択傾向があるのかという何らかの推定、推量がないものか。そのことと絡んで、それで本当に人材養成ニーズ上よろしいのかという議論は、どこでどうなされているのか。この辺が少し気になりました。

【中山座長】 分かりました。看護系大学が増えて、この間からのデータでは、4分の1ぐらいは看護系大学を終えた人たちが国家試験を受けることになってくると示されていると思うのですが、それは、ずっと前と比べると、そこの部分が看護職の人材育成として大きくなってきているということもあるので、大学が増えてきたことによる問題は、10校ぐらいしかなかった時代から比べれば、人材育成という問題で大きな課題になってきていると言えるのではないかと思います。その辺のところで佐藤委員からの疑問も出てきて、大学がどこまで、どういう人材育成をするのかということがもう少し見えたほうがいいということですね。このままでは、看護学校の人材育成とあまり違わないのではないかという疑問から、今の質問が出たと思います。

 はい、どうぞ。

【佐藤委員】 すみません、もう一つ付け加えていいですか。分離して、過密ダイヤを解消することで看護の基礎教育の充実というふうに動くとすれば、結果的にそちらのほうにまた単位が取られてしまって、私、最初のこの会議で申し上げました、大学教育における教員や学生のもう少しゆとりを持った人間形成が実現できないのではないか。そういう懸念もあったりするのですが、その辺はどういうふうにお考えなのかも伺いたいと思います。

【中山座長】 そういう佐藤委員からの質問ですが、これにお答えできる他の委員、いらっしゃいますか。何か発言したい方、いらっしゃいますか。はい、どうぞ。

【羽生田委員】 最初に、看護教育と看護学教育の違いという疑問を投げかけたのですが、私は、大学においても養成所においても、今の看護師という国家資格を取る、これは最低条件である。今でも養成所では大学に近い合格率を保っているわけですから、それは最低限のことであって、それにプラス大学である意義ということが看護学教育につながるものであって、1年余分にあるということだけではなく、すべてのカリキュラムにおいて、人格形成であるとか、人間的な考え方、開発能力、自己判断能力というものが、すべてその中に組み込まれて4年になるという意味で、資格は資格、看護学としての人間素養、人格形成等々は大学におけるその部分である。そこが大きな違いであると、私は理解しているのですが。

【中山座長】 ありがとうございました。他にご発言。どうぞ。

【高田委員】 今のお話を伺っていて大体分かってきたのですが、国家試験に合格して、国家資格を取るということは、本当に最低限といいますか、絶対に必要なことではあります。大学で看護教育を行うことが始まった時点で、大学卒と養成所と何が違うというところが論議され、この点が、宮﨑委員がおっしゃっていた大学における統合化カリキュラムの理念ではなかったかと思うのです。単に技術的なことを職業教育するだけではなくて、将来伸びていくための基礎的なものを全部含めた形で、医療人の一つとしての広い視野の看護師、とりあえずは看護師と保健師に関する教育、あるいは助産師に行けるような教育、そこの基礎を全部含んだものをとりあえずやろうということで、今の大学教育は来ているのではないかと思います。

 前回、南参考人がおっしゃっていたことは、世界的な流れとしても大体そういう方向で来ているということす。大学とは何かと言われれば、やはりきちんとした基礎をつくって、将来、大学院とか、そういうところへ行って、さらに高度なものができる素地をきちんと作っておくことです。これは医学教育でも全く同じで、学卒までの間の6年間で学ぶべきことがものすごくたくさん増えている。それでも卒業してすぐに一人前にはとてもできない。ただ、体系的にきちんと学べるのは学部の間しかないからということで、大学でとにかくできる所をやろうという形になっているのだと思うのです。

 ですから、看護師養成においても、やはり大学としての特色というのは同じような感じかと思います。医療人としてやっていくわけですから、そういうふうに考えていけばいいと少し思った次第です。

【中山座長】 どうぞ。

【富野委員】 その点につきましては同感ですが、2.の1)の丸の2番目、大学で学ぶ人たちの意義というのはまさにここに集約されていて、チーム医療のリーダーになり得る人たちを大学において教育するということだろうと思います。資格を取るのは当然のことであって、3年制と4年制で大きく違うのは、やはりコメディカルスタッフ、ドクターとともにチーム医療を引っ張っていく人材を養成するのだという、この一文に含まれているような気がします。

【中山座長】 他に、どうぞ。今、3年制課程が主となりますが、看護学校、専門学校での教育と、大学での教育の違いの問題が論じられているのですが、この問題は、人材養成の在り方に関する基本的な方針の中で、宮﨑委員も主張されていますように、看護学基礎カリキュラムに看護職のすべての土台になるようなものを入れるというところにも、影響してきているのではないかと思っています。そこの土台の部分をきちんとやる、大学教育はそこを強調してやってきたのだと思うのですが、社会的に要請される事柄が大きくなる、指定規則のカリキュラムの科目数なども多くなってきているので、そういうことから非常に過密化してきている。なおかつ、今の若者たちの気質の問題もあるのだと思います。生活力が弱くなってきている若者が、生活実態に合わせて提供する看護をやらなければならないというところの困難さもあって、大学で一番養成すべきは何なのかという問題が挙がってきていると思います。ここの論点の中で、もう少し強調したいところ、あるいは加えたいところはございますか。はい、どうぞ。

【羽生田委員】 内容というよりも、2.の1)と2)の題目にあまり差がない。ですから、その辺をもう少し整理して、今、議論したような、概略だからこそこういうことをして欲しいのだというものを、もう少し別に書いたほうが分かりやすくなるのではないですか。今、1)と2)は同じようなことが同じように書かれているので、もう少し今の議論を中心とした、大学だからこそこういうことを求めているのだというか、そういったものと少し分けて書いてみたらどうですか。

【中山座長】 確かに、1)と2)の違いがあまり明確ではない。ですから、2)の大学における看護系人材養成の在り方に関する基本的な方針ということで、ばんばんばんと出したほうが明確ではないかということですね。

【菱沼副座長】 先ほど佐藤委員のほうからご指摘があって、ここでもし保健師をカリキュラムから外したとき、看護師教育のコンテンツが増えるという結果になったら、今と過密性は変わらないのではないかというご指摘があって、その心配というか、それはすごくあると思います。医療、医学は、看護もそうですが、どんどん中身は増えてきているわけです。でも、増えてきている中身を全部教え込もうと考えること自体、アウトの発想だろうと思います。逆に言いますと、本当に基本的な、どうしても知っていなければならない知識とは何なのかという整理と、その知識を使って自分たちが開発していく能力、あるいは勉強をする方法を学士課程ではきちんと勉強するんだということを、はっきりと打ち出すのも一つではないかと思います。そのためには、コンテンツの整理だけではなくて、一番大事なのは教育方法だろうと思いますので、どういう教育方法をとれば本当に考える学生が育つのかというのは、少し考えないといけないのではないかと思っているところです。

【中山座長】 どうぞ。

【平澤委員】 私も菱沼副座長のご意見に大体類似しているのですが、2.の1)の4つ目の丸あたりが、看護学基礎カリキュラムの中でこれから目指していくべきものなのだろうと思うのです。専門職はその専門性を生涯にわたって開発していくものという文章、それから学士課程では、看護専門職として自発的な能力開発を継続するための素地を育成するということと、看護の質向上に研究能力の涵養という、この3点は基礎のカリキュラムの中で明示しておかなければならないことだろうと思います。

 2)と少し重複するというところでは、確かに3ページの2つ目の丸の中で、広く豊かな教養や判断力を持ち、専門職としての自己研鑽を続けることができる質の高い看護専門職者の基盤づくりというところが基礎のところで求められるので、このあたりは重複している内容と感じました。

【中山座長】 ここは、もう少し整理したほうが明確になるということですね。

【平澤委員】 そうですね。

【中山座長】 他にございますか。どうぞ。

【宮﨑委員】 後で過密性に対して申し上げようと思いましたが、今、そういう話も出ましたので、私も意見申し上げたいのですが、三職種に共通する看護学の基礎という、もちろんその中にも、当然、地域看護学というのは入ってくるだろうと思います。そうなってくると、既に指定規則上は在宅看護学というものが看護師の教育内容として入っているところに、さらに地域看護学という内容がおそらく入ってくるだろうと思います。そういう中で実習をしていくということが連なってきますので、それに保健師の教育を別課程でということになっていくと、過密性にさらに拍車をかけるのではないかと思います。今、教育の方法というお話も出ました。大学の看護学教育における方法ということをやはりもっときちんと議論をして、従来型の職業人教育としての方法ではなくて、大学における人材育成の方法としてきちんと議論すべきなのではないか。そこをきちんと押さえるという方向性を出すべきではないかと思います。

【中山座長】 はい。

【村嶋委員】 今、宮﨑委員がおっしゃいましたように、大学で幅広い看護師をつくるといったときには、やはりある部分の地域看護学が入ってくると思います。それは、看護師に対して母性看護学や小児看護学があり、助産師教育に対して助産学がありますように、看護師に対しては在宅看護論プラスある部分の最低限の地域看護学があり、保健師に特化したものとして地域看護学のある部分や、公衆衛生看護学というもっと専門性を明確にした学問体系を構築することを考えるべきだと思います。地域在宅看護学になるのか、それとも在宅看護論の発展系になるのか、ですね。地域看護学は、新しい指定規則では12単位ですが、そのうちの2単位ぐらいにして、さわりの部分だけを教えるのかによって、カリキュラムは随分変わってきますし、今の過密な部分というのは削減していくことができると思います。そして、幅広い看護師をつくっていくことが可能になると思います。幅広い看護師はぜひ必要でございます。

【中山座長】 はい。

【富野委員】 ちょっと分からないので教えて欲しいのですが、医学部にはモデルコアカリキュラムというものがありまして、それを何度か繰り返しながら、直しながらやっているのです。その大学に合うようにモディファイしたりしているのですが、大学における看護学教育においてコアカリキュラムを作るということは、今のところ指定規則云々かんぬんで難しいのでしょうか。

【中山座長】 今までも、コアカリキュラムのことについては議論してきた経緯があるのですが、指定規則との関係の問題があって、大学自体が指定規則に縛られてきた。かなり自由にはしてもらっているのですが、縛られたところもありますから、コアカリキュラムと指定規則の問題をどうするかということが議論になります。今日、この後の問題になるのですが、指定規則に縛られない仕組を考えるときに、コアカリキュラムの発想が入ってくるのではないかと思っております。そのコアカリキュラムが、3つの職種に共通する土台になる部分のカリキュラムとなれれば、大学としては一番いいという方向性は模索していると思いますが、今日の検討会でどの辺に行くのかということでは、先生の発言は一番最後のページに行くかと思います。

【羽生田委員】 保健師、助産師の基礎的なものを看護教育の中で教えるという話は、もちろん大学でいい話であって、今、在宅看護という指定規則になっているわけですが、地域看護という考え方は、どれだけ広い視野で物が見えるかということにつながるわけで、それこそ大学でやるカリキュラムである。これが全体的な看護の中で、地域看護という考え方は当然いろいろ入ってくるものですが、4年でやる余分な部分で、余分に長くやれる部分で、そういう部分がいろいろあるということが広く人材育成につながるだろうと考えることで、カリキュラムを選択制にしたから余計大変になるということはないだろうと思っています。

 それから、高田先生から、前回の南委員のお話の中で世界的にそういう方向になっていると言いますが、アメリカは日本よりも段階がいっぱいあります。ヨーロッパでもそうです。ですから、全部が全部大学という話ではないということはご理解いただきたいと思います。

【中山座長】 ただ、これは、秋山委員がおられますが、私自身の経験もそうなのですが、教育というのは長いスパンで考えなければいけないことです。今の時代状況がそのままずっと続くということでもなくて、自分の受けた教育が30年後、私の場合、10年後、20年後に生きていくということはあるわけで、それを考えますと、本当に今の時代状況の中で、何を土台にしておけば、時代が変わっても続くものになるのかという発想はしておいたほうがいいように思います。私はずっと思っているのですが、辞めないで続ければ看護師として40年ぐらいのキャリアがあるわけですから、特に大学卒の看護師の場合はその土台を大学教育の中で作っておく必要があります。その人材が同じままでずっと行けるということはないわけですから、その土台の問題は抜いて欲しくないというのが座長としての希望です。

 今、困っているから、今、過密だからということだけの問題ではなくて、20年後、30年後も働ける看護師をつくるためには、何をしておかなければならないかという発想も入れていただきたいと思っています。離職をしてしまうことは非常にもったいない話で、看護職を続けていくためには、大学で何を教えておけばいいのかという発想は要るような気がします。

【倉田委員】 加えてお願いしたいのは、何年か後にも大学に戻れるように、再び戻ったときに、何年も年を経ているわけですから、それなりの人生経験もあって、貢献できるところは大きくなっていると思いますので、どんなときにも大学に戻れるというチャンスを作って欲しいと思います。

【中山座長】 ありがとうございます。それが大学の一番よいところだと思います。なぜ大学なのかというのは、必要になればいつでも大学に戻れるという、その辺が大学の特色としてあると思います。倉田委員の発言は大変貴重ではないかと思います。他に。どうぞ、秋山委員。

【秋山委員】 私、去年、看護サミットの企画委員を拝命しまして、保助看法制定60年ということでいろいろと調べた資料が上がってきたときに、昭和23年に保助看法が決まるときにアメリカから来た様々な調査をした結果、アメリカではパブリックヘルスナースもスクールナースもクリニカルナースも全部ナースであって、あとミッドワイフと2つだったわけです。でも、日本の各地を調べ歩いたとき、リンゴとミカンとバナナは一緒にできないから、3つの職種をそのまま残して保助看法を作ったというくだりがありました。私は、そのときに非常にルーツを見る思いで、ナースという中には様々な職域というのか、今で言うところの、パブリックヘルスナースですから公衆衛生も含めて、健康から、それこそ死に至るところまですべてを含んで、いろいろな分野で働ける人をつくるという目的があったのではないか。それに沿った法律が作られたのだが、今の保助看法のそれぞれの職種の縛りというのは非常に簡単に、単純化して明記されていますが、指定規則のほうは看護師にあらゆる健康レベルが入っていて、時代とともに変わってきているわけです。

 今、病院から在宅へ向けて看護師の活躍する分野が広がり、在宅看護論がカリキュラムの中に入って、自分のところも受けていますが、病院という箱の中だけではない、様々なところで活躍できる看護師、これから先、もっとそういうところが増えてくるときに、4年制大学の教育の中で一体どういう人を育てていけばいいのかというあたりを、やはりそこが盛り込まれた形でまとめができていかないといけないと思います。

 私の同窓会の名簿をくくって、40年前に短大から保健師の専攻科に行った人たちが一体どのぐらいいるのか数を挙げてみましたら、3分の1ぐらいの人が専攻科を志向して、十数年の短大時代に、専攻科というのは保健師課程を学ぶ人たちですが、3分の1ぐらいの人が進学していたのを名簿から見ました。

 そして、自分の同級生が一体どういうふうになっているのかを見ていきますと、それこそ統合化カリキュラムで育てられた大学ですが、卒業したてのときは4人ぐらいが普通に保健所に就職していました。でも、18年後ぐらいになったら、2割の人が、保健所ではないのですが、保健師資格を有しながら働いていました。長く続けていく仕事の中で、キャリアアップという意味では、一番最初に宮﨑委員がおっしゃった内容のことが実は続けられているという実態を、自分の身近なところで見てきました。

 では、今、どうしたらいいかといったときに、確かに学生数も増加していますし、実習場所に困っているという現実もありますので、そこら辺はちゃんと現状認識を書いた上で、大学教育が本当にどうすべきかというあたりを、先ほど意見が出ていますが、大学だからできるということをきちんと示した上で、次の具体的な方策というところに移っていただきたいと思います。

【中山座長】 ありがとうございました。3.のほうまで議論が発展していると思います。選択制の問題、選びをするということは、具体的にはそれしかないのではないかと思うのですが、3.に踏み込んで何かご発言いただけますでしょうか。どうぞ。

【小山委員】 先ほどの宮﨑委員の、「大学が統合化カリキュラムをなぜ用いてきたかという視点の評価ができないままに」という意見と、秋山委員の今の意見とは、多少重なると私は思っています。大学教育として何をすべきかを丁寧に出していきますと、あらゆる場で、あらゆる利用者のニーズに対してという、1ページの下に書いてあることになります。「責任を持って問題解決をしていく能力を求められる」には、どうすればいいかということを考えてやってきたのが大学教育かと思います。

 日本では、国家試験受験資格として、看護師、保健師、助産師があります。ただし、諸外国は(助産師は別ですが)、「看護学」として、「ナーシング」としてやっている国が圧倒的に多うございます。そうしましたときに、日本の大学教育から保健師の視点を抜きますと、非常に重要な、今までの「あらゆる場における」というところがすぽっと抜ける可能性がありますので、世界的な動向から見る広い視野の看護職の育成というのが大学から抜けないようにしないといけないと思っております。

 たまたま国家試験受験資格として3つの免許があるがゆえに、保健師を外すという議論をしていますが、そのことが長い目から見たときに、また世界的な視野から見たときの動向に対してどうかと考え、それに対応するものを早くコアカリキュラムとして作らないといけないと思っています。

 今、実習の場が非常に少ない、大変危機的状況であるということで検討しておりますが、コアカリキュラムができた暁には、国家試験受験資格があるのかどうかをもう一度検討する会をぜひ持っていただきたいと思います。今日の結論が何十年も続くものではないということにぜひしていただきたいと思います。

【中山座長】 それはそうだと思います。村嶋委員、どうぞ。

【村嶋委員】 私は、小山委員は看護学教育の専門家だと思っておりますが、今、おっしゃったことは大変矛盾していると思います。というのは、今までは、「看護系大学では看護学を教育する、だから免許に縛られるものではない」とおっしゃってきたように思います。ですが、今は免許がどうしても必要だとおっしゃったように思います。コアカリキュラムを看護師教育、看護学教育を前提にして作るのか、それとも、そこにどうしても保健師教育を組み込んだ形で、免許を前提として作るのかというのは、大変議論があるところでございます。

 今、一番問題になっているのは、今の統合化カリキュラムでつくった保健師たちが、保健師として十分に機能しない、保健師として資質が不十分な人たちが大量に出てきている、免許だけばらまいているということです。これは国民を欺くものでございまして、コアカリキュラムを作るときに、看護学教育をきちんと担保することが重要です。ですから、そこに免許をつけろという話はやめていただきたいと思います。

【中山座長】 どうぞ。

【小山委員】 私の発言が誤解されているかと思いますので、修正したいと思います。私は、免許を先に言っているのではなく、大学における看護学教育のコアカリキュラムを作るというふうに、今、動いていると思いますので、それをよく見直してみたときに、今までのような受験資格に相当するものがあった場合には、もう一度このような検討会を設けてという意味でございます。今まで大学が求めてきたものは何かというと、地域看護も含めて、あらゆる場で、そして健康を損なった人だけではなく予防医療も含めて、広い視野で見たときにはどういう教育かということでやってきているということです。

【村嶋委員】 地域看護学が看護師にとって必要なのは、今、秋山委員がおっしゃったとおりでございます。訪問看護ステーションは、全国1,800の市町村のうち半分しかございませんし、看護師には地域医療も頑張ってやっていかなければいけないという使命が課されておりますので、ぜひ幅広い看護師をつくっていただきたいと思います。

【中山座長】 坂本委員、どうぞ。

【坂本委員】 先ほどから伺っていると、看護学校と大学の違いがいろいろ語られていますが、先ほどどなたかがおっしゃったように、例えばチーム医療をするとか、実践的なものとか、コミュニケーション能力というのは、大学であろうが看護学校であろうが、現場としては大変必要なものです。では、大学は一体何かということですが、先ほどおっしゃられたように、いろいろなことに自ら切り開いていく力です。それは、看護師養成所でもしているとは言います。していると先生方もおっしゃるし、私もある程度は見ました。でも、学問をつくりながら、自分の要素、能力にしながら、取り込みながら、自ら切り開いて、自ら解決していく力というのは、やはり学士だろうと思います。そういう意味では、2ページの一番下、自分がどのように能力を上げていきながら社会に貢献していくかということに対しては、学士課程を出ていれば次のステップに上がっていくものがあるわけです。先生方がお話しされているのをよく聞いていると、トレーニング教育はしていないと言いつつも、トレーニング教育が入っているような気がするのです。だから、ここでは大学の教育とはどういうものなんだということを明確に、自ら主体的に考えて行動する、初めて体験する、見たことがないことに対しても何らかの考えを用いて、それを乗り越えていく力というのは、おそらくベースにあると思うのです。やはりそこを明確に出すべきだと思います。トレーニング教育がいけないとか、大学はチーム医療、高度なコミュニケーション能力が必要ということですが、はっきり言うとこんなのは実践をやる人すべてに必要です。そこはちゃんと学士としての明確さを出していく。

 私、聞いていると、看護学校が何となくつらくなってきて、学士がすごいという雰囲気を少し感じたので、実はそうではなくて、実践ではどの人がどうであると選んでいる状況は、患者さんはないわけです。そういうことをする以前の学問体系として、自らが切り開いていく力、自ら考える力というもののベースを、看護学基礎教育としてやっていただきたいと思います。

【中山座長】 ありがとうございました。委員の方々の議論の中で、もう一つ大学の特徴として、看護学基礎カリキュラムを学んでいけば、そこが土台になるわけですから、それを終えてから大学院に行く人もあれば、今後、助産師とか、保健師とか選択制をせざるを得ないような状況になってきますが、選択制になったとしても、また戻って助産師を取る、保健師になるために学ぶとか、大学で学んだ土台さえあれば、社会情勢によっていろいろな選びがある。そこが看護学校と大学の違いで、その大学のよさみたいなものは残しておけという議論も入っていると思っています。倉田委員も、そういう意味で大学は開かれていて欲しいというご発言があったととってよろしいですか。

【倉田委員】 おっしゃるとおりです。

【中山座長】 他に何か。時間的に、7時ぐらいになってまいりましたので、4.に踏み込んでくださっても結構でございます。全体で結構でございます。どうぞ、お願いします。

【西澤委員】 大学と養成所の違いというのは、今、座長が言ったようなところにあると思います。医学部でもそうですが、臨床医になる者と、そうではない人たち、研究者になったりする人がいるのと同じことであって、今の看護学校は出れば看護職にならざるを得ないというか、なるための教育だと。大学は、それ以外に研究者、あるいは教員、指導者、あるいは、もっと違うところで活躍できるのではないか。そのための教育する場でもあると思うのです。そのあたりが、看護学と「学」がついており、学士ということだと思います。これらの議論が、先ほどからありますとおり、この中では何となく抜けているので、もう少しきちんと書き込んでいただいたほうがいいと思います。

【中山座長】 ありがとうございます。羽生田委員。

【羽生田委員】 4.に踏み込んでもいいというお話でしたので、4.の1番目の丸の3行目、医師と看護師等の適切な役割分担の次に、「(看護師の業務拡大)等に対応するため」とあります。これは、3ページや2ページに、学士課程段階で特定領域のスペシャリストの養成を目指すのではなくとはっきり書いているのに、ましてや業務拡大ということは全くどこでも議論されたこともなく、決まったことでもない。これがこういう言葉で入ってくる。別に、役割分担を見直すことに反対はしません。ただ、業務拡大ということはどこでも議論をされたことがない。業務拡大をすべきだという意見はいろいろなところから出ています。だけども、業務拡大をすべきであるということに対しての議論は一つもされていない。ましてや、決まってもいないことが文言として出てくること自体がおかしい。

 それから、学士課程における看護師教育の在り方ということです。先ほどから出ているように、卒業した後に自ら研究していくとか、大学で学んだことからこそ、自らの開発能力であるとか、考える力を育てていく土台を作るのだということをずっと言ってきているわけです。新たな職種を作るとか、それは卒業後に今後できるかもしれませんが、そういったことに対応できる能力を養うのが大学であるという考え方に、やはりきちんと整理をしていただきたい。業務拡大という決まってもいない言葉が出てくること自体がおかしい。その辺はお考えいただきたいと思います。

【中山座長】 ありがとうございます。座長もこれは目を通しておりますが、先ほど説明あったときに気になって、「また」から3行については四角い括弧に入れておりました。、羽生田委員と同じことも、これは学士レベルの議論でいいのかという疑問を持ちましたので、ここはまた検討していきたいと思います。看護系人材養成の在り方に関する検討会は、大学院のことは多少踏み込むところはあるにしても、学士レベルを土台にして考えるということでいいのでしょうか。小山田専門官のほうに確かめたいと思いますが。

【新木医学教育課長】 基本的には大学4年間の学部レベルを想定しておりますが、一部、大学院について、また専攻科などに言及している部分もありますので、大学と書いてありますが、大学プラスアルファの部分もあるというのが1点であります。

 それから、羽生田委員のご指摘でありますが、また座長のご指摘でありますが、ここの部分は、将来的に適切な役割分担、それから、この検討会の中でも看護師の業務はどうあるべきかということが何回か出ていたと、私、記憶しております。そういうことに対応するために、もちろん4年間で全部の業務分担云々が完結するという意味ではなくて、そういうことも念頭に置いて、大学における教育、さらに職場における教育、研修、こういうふうに繋がっていくことが必要ではないか。この検討会で、何回かは失念いたしましたが、看護師の役割がますます大きくなってくるということは、繰り返しお話があったように記憶しています。ただ、今のような誤解といいますか、紛れがないように、今のご指摘を踏まえて言葉について検討をしたいと思いますが、趣旨はそういうところでございます。

【中山座長】 ありがとうございました。羽生田委員、よろしいですね。他に。

【羽生田委員】 5ページの一番下の丸、「今後、助産所や病院における」とありますが、日本では4割が診療所で生まれています。病院ではないのです。ですから、「助産所や病院」と書くのだったら、「助産所や病院、診療所」と書いて欲しい。

【中山座長】 重要な診療所が抜けているというわけですね。はい、分かりました。他に。全体的なことで結構ですので、何かご発言。両方手が挙がりましたが、どちらからいきますか。では、村嶋委員、どうぞ。

【村嶋委員】 少し戻りますが、4ページの3.の前に、「なお、保健師教育及び看護師教育を充実していくため……今後も保健師教育を含めた教育を実施することができる」と書いてあります。現在増えているのは私立大学でございまして、学生集めには免許が有った方が良い、一校だけ免許を抜くと、学生集めに不利になるので、分かっていても自分の大学だけ止めることはできない、といった指摘も随分あります。このように、今、看護系大学で保健師を選択制にすると、どうしても不十分な教育が横行してしまうという懸念がすごくございます。ですから、3.の前の丸は、ぜひ取り外していただきたいと思います。それは、その前に質の担保をする必要がありますし、査定の仕組みを作る必要がありますし、保健師教育として質を高めていくことがとても重要だと思います。

【中山座長】 村嶋委員、4ページのところですか。

【村嶋委員】 3.の前の丸です。2.の最後の丸でございます。

【中山座長】 分かりました。ありがとうございます。

【菱沼副座長】 今のご意見に対してですが、私は、教育する職種は各大学の教育目標に応じて、各大学が選択するべきであろうと思います。ここにできないと規定するのは、ちょっとどうかなという意見です。

【村嶋委員】 だから、この丸そのものを外して欲しいということです。

【中山座長】 丸そのもの。

【村嶋委員】 「なお」から。

【中山座長】 外す文章を読んでくださいますか。

【村嶋委員】 4ページの真ん中、2つ目の丸になります。「なお、保健師教育及び看護師教育を充実していくために、以下のような体制が整い、適切な教育課程を実施できる大学は、学生のキャリアパスを拡げるという観点から、今後も保健師教育を含めた教育を実施することができるものとする」。このために、もっときちんと質の担保を図るような査定の仕組みが必要だと考えます。

【中山座長】 「できるものとする。ただし、そこには質の担保の問題がある」ということではないのですか。先に質の担保があって、これというのはおかしくなりませんか。大丈夫ですか。私は、今のことは、それはそれでもう一つの議論として、確かに十分行えないという問題はあると思います。それは何とか十分行うような方向性を示さないといけないと思って、村嶋委員の発言を聞いていたのですが。逆ですか、やはり先に質のほうですか。

【村嶋委員】 やはりカリキュラムでございますので、質の確保が十分なされるような査定の仕組みといいますか、そういうものを作っていく必要があると思います。それは4.とも関連するかもしれませんが、ここでわざわざこれを書くと、今後、いろいろな意味で支障が残っていくのではないかと危惧いたします。

【中山座長】 宮﨑委員、どうぞ。

【宮﨑委員】 違う点というか、関連した点を発言しようかと思ったのですが、今の村嶋委員の箇所に関しては、各大学がきちんと、自分自身の質の担保、自分の大学の中での質の担保ができる仕組みを持って、何らかのコンソーシアムとか、協議会とか、もっと対外的な仕組みを担保する。それは保健師教育だけではなくて、看護学教育そのものが、学士課程の教育そのものが、そういう仕組みが必要と理解しておりますので、丸の文章自体を削除する必要性は何もないし、そこら辺が懸念されるというのであれば、質の担保の仕組みを前提にというようなことを書き加えたらいいと思います。

 私が手を挙げたのは、3ページの3)の3つ目の丸、「これに伴い……」という一連の文章です。この2行目に、「将来的には大学院化の可能性も」と出ています。つまりは、ここでいう保健師の教育というのは、免許取得にかかわる保健師の教育という意味で使っているのだろうと思うのですが、保健師の免許取得にかかわる教育を大学院教育でやっていくという方向性を文言としてあらわしているのですが、これはものすごい大きな方向性の転換であって、このことは十分に議論が必要ではないか。ここにすんなりと書かれているのですが、私は免許取得に繋がる教育というのは学士教育だろうと思っています。その中で、特にスペシャリストとしてのある領域に関する教育は大学院教育でやるべきでしょうが、ここで免許取得につながる教育を大学院教育で、もちろんこれまでも大学院教育の中で専修免許という教育上の制度があったと思いますが、大学院教育の中で免許を与えていくこともあろうかとは思いますが、ベースラインとして、免許取得を大学教育でというのはあまりにも大きな展開であり、もう少し慎重な議論が必要ではないかと思います。

【中山座長】 宮﨑委員、それは保健師だけですか。基礎免許というか、ベースになる免許は、助産師も保健師も学士課程でということでしょうか。そこは明確にしてくださいますか。

【宮﨑委員】 私は、助産師教育は専門ではないので、こうだということは十分には強く申し上げられませんが、助産師教育に関しては学士教育で成立するということも視野に入れるべきだと思います。

【村嶋委員】 助産師は、既に大学院で免許を出している課程がございます。保健師と助産師は、現行ではプラス6カ月以上の並んだ国家免許でございます。特に日本では、そういう国家免許があったから保健師はずいぶん活躍してきて、世界的に見てもいろいろな分野を開拓できているということもございます。また、学生の多様なキャリアパスを保証するという意味でも、大学院化の可能性も考慮しながらということは必要なことだと思います。学生は、将来、20年、30年にわたって学び、働いていきます。

【中山座長】 坂本委員、どうぞ。

【坂本委員】 また同じ問題に戻って、学士の中で与えるべきという話になっていくと、先ほど少し自由にしていっていいのではないかということが出ていたにもかかわらず、また元に戻って、学士の中で保健師も助産師も与えるべきという話になってくると、今までやってきたことは一体何だったのかよく分からなくなります。

 選択制という話が出ておりますが、選択制をすることによってどのように動くかということは、まだ予測がつかないものもありますが、秋山委員からも話されたように、保健師と助産師は一緒にできない職種であったということも踏まえて、大学院でも取れる、専攻科でも取れるというふうに、保健師を助産師と同じような形にしていくということはやはり必要なのではないでしょうか。慎重な議論が必要だということはありますが、また元に戻っての議論になるのかどうか。

【中山座長】 西澤委員、どうぞ。

【西澤委員】 ここの文章のとらえ方ですが、大学院の中で免許を取るようにするということと、3ページの2つ目の丸、学士課程修了後において教育するというのは、少し意味合いが違っていると思います。学士課程が修了して初めて大学院ですから、要するに学士課程を修了していないと保健師になれない、大学院に進めない。すなわち、今の看護学校の卒業生は保健師になれないというようにも読み取れますが、そういう議論はしていないと思います。

【中山座長】 そこはどうなのでしょうか。大学院で保健師といった場合、西澤先生が懸念するのは、看護学校の人たちは保健師になれないのか。でも、大学は看護学校からも入る、同等とみなすということになれば問題はないと、村嶋委員は言うのですね。そこを少し説明していただけますか。

【村嶋委員】 それぞれの大学は、大学院の入試のときの受験資格を審査する方法がございます。それぞれの大学が一定の基準を用いて入学資格を審査しております。そういう意味では、看護学校の卒業生も一定の条件が揃えば大学院に入ることはできます。

【西澤委員】 ただ、ここでは学士課程修了後と明記しているわけですから、普通の看護学校を出た場合は学士課程を修了していませんよね。だから、これは今の説明と矛盾していると思います。

【中山座長】 もしそうならば、ここは表現を変えないと。この中の議論としましては、坂本委員からも出ましたが、大学によって、大学の主体性をすごく尊重して、学士課程で取るもよし、選択制にしてもよし、大学院で取るもよし、そこは大学が生き残りをかけて選べということかと思っているのですが、それならば坂本委員も合意ですか。

【坂本委員】 学士課程修了後と明確に書いてありますが、今、大学院は学士課程を同等とみなすという状況で入れる仕組みがありますので、もう少し言葉を考えればいいのではないですか。

【中山座長】 はい。

【平澤委員】 助産師教育のほうもそうですが、先ほどおっしゃっていたように、受験資格は個々の大学院でどのような方を入学させるかという規定がありますので、それに則ると、看護学ではなく看護師教育を修了した方も、その大学院に見合った方ならば入学できるという考え方です。

【中山座長】 そういう方向性に行っているのですが、菱沼副座長、よろしいのでしょうか。

【菱沼副座長】 4.の基本的な方針の実現に向けた今後の課題に戻りたいのですが、学士課程、4年制の大学が担保すべき能力は何なのかということは、今、皆さんの議論を聞いていますと、自己開発能力が一つ、それから、その後どの専門領域に進むにしても必要な基礎能力、あるいは基礎的知識と能力というのでしょうか、その2点だと理解ができるので、もしそれでよろしいのであれば、そういうことができるためにはどれだけのコアカリキュラムが必要なのかという基準作りが必要だと明記するように、たくさんの課題を挙げるよりは、そこに絞ったほうがいいのではないかという気がいたします。

【中山座長】 今のところはそれでよろしいでしょうか。もう一つ、4.のところで私が大変気になっていますのは、丸の3つ目、教員数の問題とか、教員の臨床能力の問題、臨床教授の問題が出ていますが、この辺のところで何かご意見はございませんでしょうか。数の問題は前半でも多少出てきていますが、教員数の問題、特に先ほど言いました質の担保をするためには、やはり教員の能力と数と両方が要るのだと思います。その辺の問題は、今、看護系の大学は課題として持っているので、そこはもう少し努力をしないと、今日、ずっとしてきた議論の根幹の問題は解決しないような気がするのですが。学士課程であろうが、大学院であろうが、やはり教員の数と質の問題というのは抜けないような気がいたします。

【村嶋委員】 私は国立大学に勤めておりますが、やはり教員数は全般的にとても少のうございます。最低基準は上げていただきたいと切に願っております。

【中山座長】 どうぞ。

【宮﨑委員】 看護学独自の教員基準というのは、たしか持っていないと思います。他の学問領域の基準を適用して、教員の必要性というものがはじかれている現状にあると思います。そこら辺をしっかりと、実習という教育形態を必須とする教育課程であるということを前提にした、看護学独自の教員基準というものを明確にすべきだろうと思っています。

【中山座長】 どうぞ。

【富野委員】 臨床教授のことは僕が言ったことではないかと思うのですが、これは医学部でもありますが、大事なのはベッドサイドラーニングであって、確かに今いる師長さんや、主任さん、看護師さんは非常に忙しいのですが、臨床能力をまさに屋根瓦方式で後輩に伝えていく。臨床能力を伝えていく人たちのレベルアップ、そのために、その人たちを臨床教授とか、准教授になっていただくレベルまで上げて、後輩に伝えて、学生教育にもっていって欲しいという意味で申し上げたのです。非常に医学部と似ている考えです。

【中山座長】 宮﨑委員、その意味でも医学部から比べれば教員の数は少ないと。

【宮﨑委員】 臨床の実践家を教育の中にどう位置づけて、体系的にやっていくか。そこの位置づけ方も、看護学の教育は非常に脆弱である。体制的に仕組みが本当にできていなくて、各大学で個々に努力しながらやっていっているという現状なので、もう少し何らかの体制を作っていく必要性があろうかと思います。

【中山座長】 もう少し研修制度のほうに持っていってもいいのではないか、基礎教育の中でやれることは限界がある、免許を持たないでやれることの限界があるという問題にも行き着くかと思います。それにしても実習体制という問題は出てきていますので、保健師の教育のことでもそうですが、その辺は少し発言を盛り込めればいいと思っております。他に何かございますか。どうぞ。

【村嶋委員】 6ページの下でございます。指定規則が効果的、効率的なカリキュラム構築を阻害するおそれがあるという指摘があると書いてありますが、これは問題のすり替えでございます。指定規則が阻害をしているのではなくて、看護師と保健師の2つの免許を学士課程の中で無理矢理取らせようとしているところが、過密カリキュラムを来しているというのです。少なくとも、指定規則は免許を最低限担保するものでして、指定規則を廃止するとか、撤廃するとか、そういう発言が途中でございましたが、指定規則は免許の質を担保するものとして、そのことに触れるときには慎重にしていただきたいと思います。

【中山座長】 これまでの検討会、協力者会議というところで、平成14年、17年ぐらいですか、指定規則は大学としては外して欲しいという意見がずっと出ていたと思います。今、小山委員のほうから手が挙がっていましたが、そのことに関してでしょうか。

【小山委員】 はい、そうです。

【中山座長】 お願いします。

【小山委員】 指定規則とは何なのかということをもう一度認識したとき、やはり安全な看護師として国民に最低限保障するための教育内容と単位数ではないか。国家試験受験資格を全国津々浦々の、どんな学校であっても最低限保障しましょうというある程度の枠組みだと考えております。今日の大学教育はどうあればいいのかという議論の中に、一般的な他の大学ですと卒業生はいろいろな道に進む。将来、いろいろな方向に活躍できる可能性のある看護学教育をするのが大学教育ですよね、というところで私は落ちついたつもりでいました。そうしますと、指定規則とはちょっと切り離していいのではと思った次第です。

【中山座長】 今までの議論ですと、指定規則全部が云々ということではなくて、指定規則で縛られる割合が高いのです。124単位のうち97単位が指定規則となりますと、大学の自由度はどうなのかという議論がこれまでも違う検討会であって、それで指定規則の問題が出ているのだと思います。やはり大学の特徴として、大学の自主性、大学の独自性、大学がどういう理念でやるのかという問題は、178ある大学がもう少し真剣に考えるべきことだという感じがしています。そのことと指定規則は関係があるということで、出させていただいたという経緯があるのですが、野村課長、何か発言ありますか。ふってはいけませんか。今日は発言がなかったので、思わずふってしまいましたが、もしよろしかったらどうぞ。

【野村看護課長】 指定規則が大学を縛っているということをよく聞いてはおりますが、皆さんご存じのように、指定規則は国家試験受験資格としての教育内容を規定してますが、個々の教育科目を規定しているわけではないと思っていますので、カリキュラムを作る上でのそれなりの自由度はあると思っております。124単位の中の97単位という割合だけで縛られていると言われることは、いかがなものかとも思っております。もう少しどこがどのように縛られているのかというあたりも、議論をしていただきたいとも思っております。このようなことを、明確にした上で議論を進めていくことと思っております。もちろん、コアカリキュラムの議論が進んでいくことを否定するものではございません。

【中山座長】 ありがとうございました。西澤委員、何か発言したかったんだと思います。どうぞ。

【西澤委員】 おそらく村嶋委員は、どんどん大学が増えていくと、質の面での懸念から、やはりきちんとした担保が欲しいということなのだと思うのですが、逆に、国が作ったと言ったら怒られますが、指定規則で縛れば本当に質がよくなるのかというと違うのではないか、質を担保するもっと違う仕組みがあるのではないか。私は、国のほうで縛るのはできるだけ少なくしておいて、逆に現場というのでしょうか、皆さん方の間できちんと質を担保できるようなものを作ったほうが、よりいい看護学の教育ができるのではないかと思います。

【中山座長】 ありがとうございます。大体予定の時間に近づいてまいりましたので、発言していない先生方、どうぞ発言していただいて、私は締めのほうに入りたいと思います。前野委員、どうぞ。

【前野委員】 静かに聞いておりました。それぞれの先生方、それぞれの所属するところからの発言ということで、それは重いのですが、一方で、今回の検討会に求められた課題を今一度確認する必要があるのではないでしょうか。というのは、少なくとも看護系大学がたくさんできたが、質の担保が伴わず、現場の実習も立ち行かなくなっている。過酷なカリキュラムも含めて、その現実をどうしたらいいのか。そういう問題認識に基づいて、どう直したらいいのか、現実的な形でどう検討するかということが、今回の検討会の基本的な考えではないのかと思っております。

 これは根本的に申しますと、看護系大学が平成21年までに178に増え、一緒くたに看護系大学をくくれません。様々な現実を踏まえないと、それぞれのお立場のことを言っていてもまとまるものもまとまらないのではないか。実際、患者、国民のニーズが多様化して、それに付随した形でどんどんカリキュラムが増えていくのが現実でしょうし、片方で今の大学生、これは看護系大学に限らず、いわゆる日本の大学全般の大衆化が根底にあって、学問のモチベーションを持たない学生たちが非常に増えている現実もあるようです。それを同じような形で、従来どおりの形での教育方法が立ち行かなくなっているのではないでしょうか。ここは現実に合わせた形での実効性が期待できる見直しに取組むべきではないかと思います。

 大学教育として最低限の質はきっちり担保しなくてはいけないが、それ以外の部分は、178大学の中での自主性が発揮して創意工夫することで独自の特色を出してもらいたいと思います。かなり自由裁量という部分を認める形でカリキュラムを作っていってよろしいでしょうし、看護師と保健師を一緒にせず、分けるという方法もあるでしょうし、一緒にできるという大学はそれで結構でしょうし、ほかの方法を採用してもよろしいのではないかとも思います。そのような自由裁量を認める形を今回の検討会でできないでしょうか。そういうところに戻らないと、これはいくら経っても堂々巡りでありますので、そこが必要です。

 とにかく一般の国民、患者さんから見ても、看護職も医療機関も様々あるわけですから、現実に則した修正といいますか、ここで継ぎはぎ的な部分修正を提案するのではなくて、かなり思い切った、できるだけ画期的な提案を国民は求めているのではないかと思います。

【中山座長】 ありがとうございました。やはり今日の最初の、看護系大学とは何かという問題を明確に出して、そこでの在り方をもう少し書けというご発言かと思います。佐藤先生、どうぞ。

【佐藤委員】 すみません、そろそろまとめられてしまうということですので。先ほど来、専門家の皆様の議論を大変興味深く拝聴しておりまして、問題も非常に大事だと思います。ただ、当然と言えば当然かもしれませんが、このペーパーで言われていることは、看護の基礎教育に関する、いわゆる専門教育のことだけに言及しておられます。学士課程で到達すべきものについて、先ほど来、自己開発能力であるとか、リーダーシップとか、縷々出ております。それは、そのとおりだと思います。

 ただ、ここは文部科学省の会議です。今、中教審で、学士課程教育は分野横断的に、このくらいまで到達目標を置くべきだという非常に大きな議論が一方にあります。そういった中で、この会議の目指す学士課程における看護教育、あるいは看護学教育の方向性を打ち出す限りは、専門教育のことだけ論じてはまだ不十分だと思います。

 言うまでもなく、学士課程で到達すべきレベルとして、例えば知識レベルだとか、技能とか技術レベル、あるいは態度レベル、心情レベルと非常に広範な到達目標、ラーニングアウトカムというものが議論されている一方において、看護の世界でも今までさんざん言われてきている課題探究能力であるとか、問題解決能力という汎用的な力量が備わっていて初めて、学士課程を修了した専門職と言われるのだと思います。それらの人間力というのは、専門教育だけで培うというような、あまり悲壮な、すみません、聞きようによってそうなのですが、非常に悲壮な状態で臨まれるよりも、むしろ幅広い教養教育だとか、隣接諸科学を学ぶことによって培われる基礎力ですか、こういうことにも信を置かれることが大事かと思います。

 議論の主な部分は、専門教育で一向に差し支えないのですが、先ほど来出ています大学の、とりわけ学士課程教育における看護職の育成ということについては、ぜひ分野横断的に求められている学習力などの視点、それから教養とか、そういう幅広い視点に立ったことも必要だということを、どこかできちんと鮮明にしておいていただいたらいいなと思っておりました。

【中山座長】 他に加えたいことは。どうぞ。

【羽生田委員】 意見ではなくて確認をさせていただきたいのは、保助看法は今、国会に出たか出るかですよね。あれは、助産師、保健師が1年になるという非常に大きな話で、それを前提に選択制を考えているのか、あの保助看法に関係なく選択制にしようと思っているのか、その辺はいかがですか。

【新木医学教育課長】 法律はまだ出てないと思いますが、法律の有無にかかわらずここのところは議論を、冒頭、少し議論ございましたが、政治の世界の議論とは別に、あるべき看護の教育の姿としてのご議論をいただければと思っております。

【羽生田委員】 そこが違うのは、選択制だけでやった場合には、保健師と助産師は4年制大学でそのまま選択制で残せるんですよね。ただ、1年となったときには、通常、両方は残せない、片一方しか残せなくなるでしょう。

【中山座長】 そこはどうですか。

【新木医学教育課長】 まず、1年という法律が通るという前提だと思いますが、その法律が通ったときに、1年間で何をどう教えるのかという内容によると思っております。したがいまして、4年間でどこまでどういうふうに3つのことをやっていくのかというのは、今後、教えるべき内容を見直すのか、それはもちろん厚生労働省と一緒にお話をする部分でありますが、その内容次第だと思います。ただ、繰り返しですが、現実点では法律が通ることを前提にこの議論をしているわけではないということです。

【中山座長】 他に何かご発言ありますか。村嶋委員もずっと保健師教育のことについては主張してまいりましたが、それに賛否両論はあるにしても、今現在、教育が十分でないということだけはここにいる教員たちもみんな認識していると思います。今、検討会で多少の結論を出したとしても、入学した人たちはこのままで行くわけですから、そこの問題を全く抜いて議論するわけにもまいりませんので、後で結構ですので、その辺の対策みたいなものを、盛り込めるかどうか分からないのですが、5年後のことだけをやってもしようがない。ずうっと村嶋委員が主張してきているのは、今の教育が十分でないのだということをおっしゃりたいのだと思うのです。そのことを考えると、今から5年ぐらいの間はまだカリキュラムが変わるわけではありませんので、その間をどんなふうにするのかということも、何か対策があれば出しておいていただけるといいかなと思っています。暫定的に、この方向性が出るまでの間はどんな形で教育の質を保証していくのかということで、もし何かアイデアがありましたら出していただきたいと、私としては思っております。

 現状に対する問題解決の考えが全然ないまま、遠い先のことだけを言うわけにはまいりませんので、現状認識をした上で、今現在、当面しなければいけないことがもし課題としてありましたら、出していただければうれしいと思います。

 そろそろ締めたいと思いますが、今後の方向性についてですが、今日の議論を踏まえて、これを大きく変えろということでなくていいですね。この線で、今日の議論を踏まえて、第二次報告骨子案というものを作りたいと思います。それで皆様のほうに、今度は少し早くお配りしておいて、いっぱい書き込んでもらって、6月に臨めればいいかと思います。小山田専門官、それでいきますでしょうか。今後のことも含めて、お話しくださいますでしょうか。

【小山田看護教育専門官】 できましたら、この骨子案で見直す部分あるかと存じますが、次回は骨子案に肉付けをして、報告の案という形で皆様に事前にお渡しして、ご意見をいただくという形にできたらと思うのですが。

【中山座長】 内容的なことももう少し入れるということですね。これではアウトラインだけなので、もう少し内容的なことも入れてということですか。皆さんの議論も、もう少し整理して、入れるところは入れたいということでいいですか。

【小山田看護教育専門官】 そのようなことで、今、座長からおっしゃっていただいたように、まだ足りない意見については事前にいただいて、それを盛り込んで、これを膨らませたものを皆様に見ていただくという形にさせていただければと思います。

【中山座長】 できれば、具体的にもらったほうがいいですね。お願いします。

【坂本委員】 ただ、方向性については、たくさんの意見をいただいて、それを全部盛り込むのではなくて、方向性は変わらないわけですよね。

【中山座長】 どうしても抜けない方向性、大学の中で看護学を学ぶ、あるいは看護系人材養成をするとはどういうことなのか、この辺はきちんと盛り込まなければいけないという問題が一つ出たと思います。今回のこれではそれほど盛り込めていないので、そこはするということ。

 もう一つは、大学の主体性を尊重する形で、選択制、大学院、様々なことを考えざるを得ないのではないかというところは行き着いているのではないかと思いますが、そこのところはいかがでしょうか。1個に決めることは、それこそ大学の主体性がなくなってしまうので、そこはできないと思うのですが。

【坂本委員】 私は、前野委員が言われたように、きちんと現状を踏まえた中でできた解決策に対して明確にしていくべきだと思います。それは方向性としては分かったわけですから、いっぱいいろいろな意見が出たとしても、また違うところでかり出されるような話にならない方向性は維持していただきたいと思います。

【中山座長】 そういうところは、今日、合意できている点ではないかと思います。私としましては、大学の自由裁量、大学の主体、このことは尊重した形での報告案ができればいいかと思っています。村嶋委員、どうぞ。

【村嶋委員】 先ほどの言葉のことが気になっているのですが、1ページの2つ目の丸で使った看護学基礎カリキュラムと、6ページ目の4.の最初の丸で使った看護学基礎カリキュラムとは違いますよね。

【中山座長】 分かりました。その辺の矛盾についてはきちんと整理をしていきたいと思います。言葉の使い方とか、文脈の中での重複、齟齬、いろいろあると思いますので、それは整理できればと思います。それをまた見ていただきまして、村嶋委員、気がついたら、これはこんなふうに直して欲しいという形にしていただければと思いますが、よろしいでしょうか。小山委員。

【小山委員】 先ほど座長が、今年入学した人も含めて今後4年間、5年後のことも早急に考えていかなければならないとおっしゃいましたが、一般的にカリキュラムは、入学した年度のカリキュラムで卒業するまで行くという仕組みがございます。ただし、実習場が本当に確保できないという大変な現状が日本全国あるとすると、それは大学ではどうしようもない部分もあると思うのです。その辺は、文部科学省の方針が少し変わるとか、やはり大学への配慮があって、本当は早めたかったがというところがあるのか。あるいは大学全体の早急の調査等があり、日本看護系大学協議会のほうからも出るのか、によっても随分方針が違ってくると思いますが。

【坂本委員】 そういう目先の、どう工夫すればいいのではないかという話をだれかが出してきて、こうしようなんていう話にはならない検討会だと思いますので、4年間は4年間の担保をすべきであって、目先でこういうふうに工夫すればいいのではないかという話は持ってくるべきではない。違う会で、こんなことをやってうまくいっているというケースを出し合うことは必要だが、この会に持ってきて、そういうことをすべきではないと思います。

【中山座長】 小山委員、それでよろしいですか。

【小山委員】 承知いたしました。

【中山座長】 あまり具体的なことではないが、5年間の暫定的なことに何か方向性があれば出していただきたいのですが、具体的にどうするかというのは各大学でやるしかないと思います。質の担保のための方向性みたいなものは多少盛り込んでもいいとは思っておりますが、それ以上のことは踏み込めないと考えていただいていいと思います。副座長、何か加えることはございますか。

 それでは、時間が過ぎてしまいましたが、今日のところはこの辺で置きまして、事務局のほうにお渡ししたいと思います。

【小山田看護教育専門官】 ありがとうございました。では、次回、第5回は予定どおり、6月25日木曜日の3時半、15時半から、開催場所は今のところ文化庁、隣の建物ですが、そちらでの開催を予定しております。今、ご議論いただきましたように、この骨子案に盛り込むべきご意見、情報等については、大変恐縮ですが、できましたら1週間以内にお出しいただきたくお願いいたします。

【中山座長】 1週間というのは、5月いっぱいぐらいまでということですね。

【小山田看護教育専門官】 そうですね。前回、6月8日を予備日としてお願い申し上げましたが、それではなく6月25日、予定どおりの開催で、十分練ったものを皆様にご覧いただいて、意見も頂戴するという形にさせていただきたいと思うのですが。

【中山座長】 今日の意見を取りまとめるまで行きませんので、8日はなしです。議論は出るところは出たと思いますので、これをどうまとめるかというほうに行きたいと思います。先生方には、大体1週間をめどにということですので、5月いっぱいぐらいで皆さんの意見を取りまとめて、25日までに座長、副座長と事務局の皆様と知恵を絞りまして、皆様方の意見を盛り込んだ形で第2の骨子案ができればいいと思っています。どうぞ。

【佐藤委員】 すみません、確認ですが、これ以上意見があれば書くんですね。今日、きちんと申し上げたことは、それで記録していただきましたね。

【中山座長】 テープを起こして、その中に入れられるものについては構いません。ただ、表現はこんなふうにしてもらいたいということがありましたら、先生、ぜひお願いいたします。そのほうがうれしいです。

【小山田看護教育専門官】 すみません、追加で恐縮ですが、次回、6月25日が第一次報告を検討する最後の会ということで予定をしておりますが、万が一、6月25日に合意に至らなかった場合のために、大変恐縮ですが、皆様にもう一度日程調整というか、日程伺いをさせていただこうかと思っております。7月に入ってからです。

【中山座長】 万が一、取りまとめに失敗したときには、7月にお願いをするということのお願いでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【羽生田委員】 来月ですね。

【中山座長】 そうですね。早くということですので、できるだけ努力いたします。羽生田委員のところにも、できるだけ早く届くようにいたしたいと思います。今日は、長時間、本当にどうもありがとうございました。

お問合せ先

高等教育局医学教育課看護教育係

小山田看護教育専門官

看護教育係 中村 先立 鎌倉
電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2906)、03-6734-2508(直通)

(高等教育局医学教育課看護教育係)