大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会(第3回) 議事録

1.日時

平成21年5月11日(月曜日)17時30分~19時30分

2.場所

キャンパス・イノベーションセンター 1階 国際会議室

3.議題

  1. 統合化したカリキュラムに関する有識者からのヒアリング
  2. 統合化したカリキュラムに関する意見交換
  3. その他

4.出席者

委員

中山座長、菱沼副座長、秋山委員、倉田委員、小山委員、坂本委員、佐藤委員、高田委員、西澤委員、羽生田委員、平澤委員、松尾委員、宮﨑委員、村嶋委員

文部科学省

戸谷大臣官房審議官(高等教育局担当)、新木医学教育課長、小山田看護教育専門官

オブザーバー

野村看護課長(厚生労働省医政局)

意見発表者
南裕子意見発表者(近大姫路大学長・国際看護師協会長)

5.議事録

【小山田看護教育専門官】 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第3回大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会を開催させていただきます。各委員の先生方、また意見発表者の先生におかれましては、ご多忙のところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。では、早速、座長に議事進行をお願いしたいと思います。

【中山座長】 皆様、こんにちは。連休明けの月曜日で、授業も本格的に始まった日ではないかと思います。お忙しい中本当にありがとうございます。今日は、前回に引き続きまして、統合化したカリキュラムに関しまして議論していきたいと思います。特にお忙しい中、近大姫路大学学長の南裕子先生、国際看護師協会の会長さんでもあるのですが、来ていただきまして、いろいろなご提言をいただくという形で、今日の議論を進めていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それから、前回、委員のほうに資料提供を募りましたところ、平澤委員と村嶋委員から資料を提供していただいておりますので、そのご説明をしていただいた後、全体討議に入るという形をとっていきたいと思います。
 もうそろそろ着地点を見出していかなければならないところでもあるのですが、まだ座長といたしましてはどこにどう着地するのか、ちょっと見えないところでもあります。副座長の菱沼先生に手伝っていただきまして、できるだけ論点整理をしながら、どの辺に着地点がなるかということを見据えながら進めていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、事務局のほうから今日の委員の出席状況の報告と、配付していただきました資料の確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【小山田看護教育専門官】 初めに、委員の出欠状況ですが、本日、横尾先生、富野先生、前野先生からご欠席のご連絡を頂戴しております。秋山先生と西澤先生は遅れてお見えのようですが、ご連絡はまだいただいておりません。また、本日、先ほど座長からもご説明ありましたが、改めまして、本日の意見発表者の先生をご紹介させていただきます。近大姫路大学の学長で、国際看護師協会の会長も務めておられます、南裕子先生です。

【南意見発表者】 南です。よろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。まず一番上に本日の座席表があるかと思いますが、続けて1枚目に会議次第、資料1として、南先生から頂戴しました発表資料がございます。資料2として、平澤委員からお出しいただきました資料、資料3が村嶋委員からお出しいただいた資料でございます。資料4は、過去2回の検討会で出された意見の中で、統合化したカリキュラムの見直しに関する意見を事務局で整理した論点(案)でございます。資料5が当面のスケジュール案、そして、最後に、参考資料として前回の議事要旨をおつけしております。また、机上配付だけですが、一番上に青い冊子体で、助産分野における就職3年未満の実践能力評価というところで、平澤委員の参考資料をおつけしております。以上でございます。

【中山座長】 ありがとうございました。資料が足りない先生、ございますでしょうか。大丈夫でしたでしょうか。それでは、議事に入る前に、事務局に提出していただきました資料につきましてご説明していただくことから始めたいと思います。

【小山田看護教育専門官】 はい。資料4をご覧ください。先ほどご説明したように、過去2回にこちらからお示ししている論点に基づいて頂戴した議論を整理したものですが、その中から統合化したカリキュラムに関する議論を抜粋して集約したものが、資料4となっております。統合化したカリキュラムの趣旨、現状、見直しの方向性、今後の課題という4点で整理をいたしました。統合化したカリキュラムの趣旨については、一部、平成16年の報告書から言葉を引用しているのですが、看護職者には、あらゆる場で、そこに生じている利用者のニーズに対して責任を持って問題解決していく能力が求められているということで、看護系大学では3つの職種に共通した看護学の基礎を体系的に教授する課程である「統合化したカリキュラム」を通じて、看護職者に必要な能力を育成してきたということが、議論の中で確認できたかと思います。統合化したカリキュラムの現状については、幅広い能力や多様なキャリア形成が可能になるという利点と、大学の増加による実習施設の不足や、保健師教育内容の不足などの課題が議論されてまいりました。これらの課題に対する見直しの方向性としては、学生全員が保健師国家試験受験資格取得を必須としていることについて、そして、資格にとらわれることなく、大学における看護系人材養成において教授すべき内容をいま一度明らかにすること。大きくは、この2点が論点として提示されたと認識しております。また、当然これ以外にも様々な論点が議論されましたが、ここでは、統合化したカリキュラムに関する論点以外の点については、今後の課題ということで2点ほど別記して整理しております。統合化したカリキュラムの見直しという観点から、これまでの議論を事務局で整理した内容は以上でございます。

【中山座長】 ありがとうございました。これについてはいろいろ意見があると思いますが、先に2人の委員のほうから提出されている資料についてのご説明をしていただきたいと思いますので、平澤委員、よろしいでしょうか。今日は時間の関係で短いのですが、5分ぐらいでご説明いただければと思います。資料2になります。よろしくお願いいたします。

【平澤委員】 それでは、資料2について説明させていただきます。先生方のお手元の資料は、文科省から大学評価研究委託事業としていただいた研究費の中でまとめた冊子体の中から抜粋いたしました。冊子体では、4ページから23ページまでにまとめられておりますが、その中の要旨をご紹介したいと思います。
 天使大学の専門職大学院が今年度5年になりまして認証評価を受けておりますが、卒業生を輩出しております。天使大学院他、2大学院も卒業生を輩出しております。したがって、助産分野における就職3年未満の実践能力の評価を意図して、学部の卒業生と大学院修士課程の修了生の比較を行っております。目的は記述どおりですが、3年未満の学部卒業生と大学院修了生の実践能力を比較検討するために、学部と大学院修了生が同施設に勤めている施設にご協力をいただきまして、上司の方々にフォーカスグループ・インタビューを行いまして、データを得ました。アウトカムモデルをご覧ください。研究方法は今申し上げましたが、便宜的に3から5カ所の施設を選出いたしまして、上司約10名を対象に伺いました。関東周辺の方々にお伺いしたのです。インタビューガイドは記述どおりですが、卒業生と修了生の動向と、卒業生の強いところ、弱いところ、修了生の強いところ、弱いところ、そして、卒業生と修了生の相違点等を中心にまとめました。
 インタビューガイドはこれぐらいにしまして、次のページをご覧頂きますと、学部卒業生より大学院修了生に特徴的なこととして4点挙がりました。「旺盛な探究心を持つこと」、「助産という仕事への専心があること」、「調整し焦点化する力を持つこと」、「職業人としての人間関係スキルに長けていること」です。以下、簡単な説明を致しますと、「旺盛な探究心」では、向上心があり、勉強熱心、目的意識が明確である、論理的できちんと調査・探索する姿勢を持つ、事例からの深い学びをしている。次いで、「助産という仕事への専心」では、妊婦に寄り添うケア──お産にじっくり2年間向き合ってきたので、それが現れております。また、2年間というのは助産師になる覚悟をする時間として、私は助産師なのだという自立心、職業意識を持つ2年間であったということ。「調整し焦点化する力」は要約力なのですが、グループワークやカンファレンスの持ち方が上手である、プレゼンテーション能力がある、同期のモデルになり、教育的なかかわりができるということ。「職業人としての人間関係スキル」では、社会人としての落ち着き・対人関係のよさを持っていること、できる部分を述べられるし、積極的、できないことにはヘルプを求めるということ。卒業生・修了生の両方に当てはまる特徴としましては、個人差の大きい助産技術の修得ということで、指定規則では10例程度とありますが、大学院生は15例から19例ぐらい分娩介助を行っていますが、非常に助産技術は深みがある内容なので、習得した助産技術はそう変わらないというデータが出ております。また、両方の学生の共通点としては、現代の新人気質として横並びを装うことや、卒業したという気負いから、できない自分の軌道修正で、頑張り過ぎて力の抜き方が分らないというようなことが出ておりました。この2つは、今述べましたことを要旨として述べておりますが、旺盛な探究心というのは非常に特徴的です。評価される理由として、修士課程において助産学の基礎を系統的に学ぶと同時に、病態生理、生命倫理、看護研究、Evidence-based Medicineをはじめ、真理の追求をする姿勢が養われているということ。それから、助産という仕事への専心では、学部の選択科目で6から8カ月間の濃密なカリキュラムに対して、大学院では2年間の基礎理論から、基礎・応用実習まで、その学習期間の実質的長さが異なり、そのために助産という仕事への関与や覚悟が試されて、修了時には助産師として必要な態度や技術が伴っていることなどが出てまいりました。結論は、今申し上げましたこの4点が、学部の卒業生と比較して修士課程の修了生の特徴であったということです。以上です。

【中山座長】 ありがとうございました。このことについては、まだ議論していかなければいけない点があるかと思いますが、続きまして、村嶋委員のほうから、保健師の教育課程のことについてのプレゼンテーションをお願いします。

【村嶋委員】 資料は3でございます。今まで保健師、助産師の統合カリキュラムは、実習内容の貧しさや単位の読みかえで実質的な教育がなされていないこと、卒業後の育ちが悪いことなど、多々問題が指摘されてまいりました。全国保健師教育機関協議会では、昨年11月に卒業時の到達度に関して全国調査を行いました。その結果、1年課程と保看統合化カリキュラムをとる看護系大学とでは明らかに差がありましたので、ご報告します。時間が限られておりますので、3枚目のエクセルの表を開いていただきますようにお願いします。保健師教育の技術項目と卒業時の到達度は、保助看の学校養成所指定規則の改正に伴い、平成20年9月に厚生労働省から示された基準でございます。大項目1.地域の健康課題を明らかにする。2.地域の人々と協働しながら、その健康課題を解決・改善し、健康増進力を高める。3.地域の人々の健康を保障するために、社会資源が公平に利用、分配されるように地域全体に施策化等で働きかける。この活動に沿って、個人/家族に対する技術37項目、集団/地域61項目の技術項目を配置し、構成ごとに4段階の到達度レベルを設定しています。ローマ数字(ローマ数字)Ⅰは、1人で実施できるレベル、(ローマ数字)Ⅱは指導保健師などの指導のもとで実施できるレベル、(ローマ数字)Ⅲは、学内演習で事例を用いたりして実施できるレベル、(ローマ数字)Ⅳが知識として分るレベルです。右側のほうをご覧くださいませ。回答は、既に卒業生を出した大学52校、1年課程14校の地域看護学の責任者から得ました。項目ごとに学生の80%が到達したと教員が判断したときに、できていると回答してもらいました。全回答校の中で、できていると回答した学校の割合をパーセントで示しました。これがこの表の数値でございます。教育期間の8割以上が到達したと回答した項目をゴシックであらわし、逆に、5割未満の学校しか到達していないとした項目をイタリックで表示しました。つまり、ゴシックはできている項目、イタリックはできていない項目です。
 まず、個人/家族の欄をご覧ください。縦に欄が3つあります。左側のローマ数字が各項目の到達度レベル(ローマ数字)Ⅰから(ローマ数字)Ⅳ、真ん中が4年制大学の到達度、右が積み上げ1年課程の到達度でございます。個人/家族に対する技術項目37項目中、各教育機関の8割が到達しているのは、4年制大学では6項目、16.2%のみです。これに対し1年課程では22項目、59.5%、6割もありまして、1年課程のほうがはるかに到達できている項目が多いことが示されます。逆に、50%未満の学校しか到達できていない項目は1年課程校にはありません。統合カリの大学のみには10項目もありました。この傾向は、集団/地域ではさらに顕著になります。61項目中8割の大学ができているのは4年制大学では4項目、8%のみでしたが、1年課程では14項目、23%に増えます。逆に、到達できていないのは明らかに4年制大学で多く、61項目中25項目、4割もございました。1年課程校ではゼロです。
 では、どんな項目が4年制大学ではできていないのでしょうか。例えば、この小項目の25番をご覧ください。これは、保健師が集団/地域をケアする際に、個人/家族への支援も、組織的アプローチも、両方組み合わせて活用するというものでございます。これは、地域で支援を必要とする人々は複雑な問題を抱えていることが多く、多様なアプローチを必要とすることを考えて設定された項目でございます。統合カリの大学では20.4%の大学しか到達できていませんが、積み上げ1年課程校では71.4%が到達できています。その下、大項目2のBは、地域の健康課題を解決・改善し、健康増進能力を高めるための活動を行うですが、達成できている大学が半数未満の項目は、14項目中9項目もありまして、到達できた大学が大変少ないことが示されます。また、C.地域の健康課題に対する活動を評価・フォローアップするでも、大学は4項目中4項目すべてが50%未満でございます。また、その下のD.地域の健康課題を解決するために人々と協働するは、大学では6項目中5項目ができていないことを示しています。レベル(ローマ数字)Ⅲであっても、つまり学内演習でやるというレベルであっても到達度が低く、達成できていないことが示されました。積み上げ1年課程では、8割以上の学校が到達しているのと大きな差異があります。
 以上のことから、統合化カリキュラムをとっている看護系大学では、保健師として卒業時に最低限必要な到達度にも達していないという実態が示されました。統合カリキュラムは廃止し、保健師に特化して積み上げて教育する課程が必要だと言えます。

【中山座長】 ありがとうございました。議論のあるところかと思いますが、これは後に回させていただきます。それでは今日来ていただきました南先生のほうからのプレゼンテーションに入りたいと思います。南先生からは、「大学における看護学教育の在り方について」ということでお願いしております。どうぞよろしくお願いいたします。

【南意見発表者】 はい。ありがとうございます。ご紹介いただきました南です。私は国際看護師協会の会長の経験としてという立場と、それから、教員として30年間余り教育してきたということで、その立場から話をするようにというご指示でございましたので、その立場で話をさせていただきます。本日、このような機会をいただきましたことを大変光栄に思います。次、お願いいたします。先生、何分いただけるのですか。

【中山座長】 大体20分ぐらいを予定しておりますが、20分か25分ぐらいで終わっていただければと思います。

【南意見発表者】 はい、分りました。今日の主なポイントは後ほど、順次申し上げますが、こういうことをお話ししたいと思います。世界的に見てみますと、日本で今議論されているようなことが、同じく現在ヨーロッパでも議論されていますし、アメリカでは1980年代にもう既にこの議論は終わっていると考えていいと思います。アジアの地域でも、ASEANのミューチャル・アグリーメントという、免許をお互いに認め合うということの施策が進んでいるという観点から、かなりいろいろな議論が進んでおりますが、本日は基本的には、両極端がありますので、ヨーロッパとアメリカを例に出しながらお話しさせていただきたいと思います。
 次、お願いいたします。何が起こっているかということ、今まで看護教育の大半は世界でもそうですが、今でもそうですが、基本的には専門学校のトレーニングです。これはOccupational Trainingと言われているもので、基本的に、日本でもそうでしたが、昔は病院の附属の専門学校で、卒業生はその病院で働くことが期待されていて、すぐに役立つ、そういう人の育成というTraining Educationだったと思います。それが、今Professional Educationへの移行が起こってきている。これは、ヨーロッパで今トラブルしている例で、後でお話し申し上げたいと思いますが、こういう傾向があるというふうに思います。その後ろにあります背景は、皆様ご存じのとおりで、さっと通りますが、基本的には、保健医療福祉のニーズとサービスがグローバル化していて、一つ一つの国が1カ国の都合だけで免許制度の問題だとか、教育の問題は考えられなくなってきている。グローバルに考えないといけない理由の1つとしては、多様なヘルスニーズが国境を超えています。新型インフルエンザで今私たちはまさにそれを経験しているところですが、同時にヘルスサービスが国境を超えています。日本で臓器移植の禁止をするという法律をどうしようかという議論がされているように、実際ヘルスサービスを、国境を超えて受けている人も多いし、日本に来て受ける人たちも多くなっています。同時に専門職が、特に保健医療福祉の従事者か国境を超えるというのが当たり前の時代になってきました。
 国内におけるヘルスニーズも多様化し、複雑化してきておりまして、このことに対応していくためには、目の前の問題を解決する人だけを育てていいのか、これから起こってくるヘルスニーズに対応していける人の育成が重要なのではないかということから、今Professional Educationに行っていると思います。
 もう一つは、大学制度が社会的にも変わってきて、そもそも純粋科学の教育から応用科学までの教育を大学でやるのが当然になってきた。そして、専門職教育は大学院でという体系化もどんどん進んできております。日本でも専門職大学院構想というのがあるように、専門職教育を大学院で行うというのも行われています。
 もう一つは、看護職はどうしても女性の問題ですので、女性の地位向上、大学院の進学率が非常に高くなってきて、女性が主に担っていた看護職の教育も当然プロフェッショナルなエデュケーションへと変わっていく必要がある。また、専門職の就業率の向上が非常にありまして、例えば医師等、いわゆる高度な教育が必要だと思われていた職業に対しても女性が進出しているのが当たり前になってきました。
 そういう中で、世界で看護と看護教育の主な動向としては、基本的には専門職教育の基礎教育として大学教育へ移行し始めたということです。これはとめようのない世界の動向だと思います。
 もう一つは、知識・技術習得重視型から、知識・技術開発能力重視型への移行が行われています。これは、目の前の病院で役立つ、または現場で役立つ人を育成するという観点の専門学校教育から、知識・技術開発能力を重視して、基礎教育から新たな問題に取り組んでいくことができる人を育てていこうと。
 また、後で、図で示しますが、次は、もともと看護教育がOccupational Trainingだったときは、どうしても基礎教育から分化せざるを得なかったという背景がございます。今、もう一つ、非常に急速に進んでいるのが卒後教育の体系化です。基礎教育と卒後教育の関係を明確にしていこうという動きが世界の動きでありまして、特に卒後教育とは大学院教育の体系化です。これは、後のほうに出ている図をもう一度ここで出させていただいているのですが、先ほど言っていた従来の看護基礎教育というのが左側に書いてありますが、もともと、例えばヨーロッパなどでよくあったこととして、特定専門基礎教育というところが書いてあるのですが、例えば助産師教育なんかはそうです。ダイレクトエントリーで、初めから助産師を目指していた。ところが、助産師だけではなくて小児科も、高齢者も、障害者も、初めから基礎教育から特定化していて、そこの卒業生は他の分野では働けない。つまり、3年かけて小児の人になる、精神の人になるという教育がされていた。ところが、イギリスでプロジェクト2000のあたりから、共通の基礎教育が必要だという発想から黄色のようなものが出てきていて、共通基礎教育をある一定の期間受けて、その上に一般ナースか、または小児とか、障害者だとか、そういう教育を受けると。これが従来型で、積み上げ型の考え方です。専門職のトレーニングというのは、かなり技術を目の前で使えるようになるまで教育機関で預かるという考え方をしていましたから、この中で多いのは特に実習期間が長いのです。そういう意味で、従来型はこういうことをやっていました。国家資格に、日本も保健師、助産師がそうですが、その上にPost-basic trainingというのがあって、そこで教育を受けた人たちが国家試験、または免許を受けるという形を受けて国家資格を取るという方法だったのですが、それが大学化になるとどうなっていくかというと、この基礎教育とPost-basic、2つのレベルでありますが、この2つのレベルのPost-basicをどういうふうにして統合し、選択していくのかということが課題になってまいります。その上に大卒者も継続教育が必要ですし、研修も必要ですし、大学院におけるAPN教育。世界では、もうCNS教育というよりは、APNと呼んでいるので、あえて使わせていただきます。
 ヨーロッパの流れは、先ほど少しお話ししましたが、一般看護師系の他にこういう基礎教育から分化をしていた。Post-basicとしては、例えばPublic Healthだとか、スコットランドはそうですし、District Nursing、イングランドのほうは、こういう日本で保健師的なところの免許がPost-basicとして置かれていました。それがEUの統合が起こってきて、ヨーロッパ全体として同意事項というのを議論されました。ヨーロッパは実践力のある人が非常に重要という考え方できておりますので、基礎教育は12年間なのですが、pre educationという高校までの層なのですが、高校の卒業者に対して3年以上の教育で、実際の時間が4,600時間、日本では考えられない数字です。4,600時間、このうち実習が3分の1から2分の1です。したがって2分の1は病院で実習している、または地域で実習をしているということになります。こういう考え方が基本的に実践家を育てるという考え方のヨーロッパのモデルです。
 ところが、Bologna Processというのが一方で動いていまして、これはEUが大学のあり方についての検討会をやっております。これは看護に限らず、他の職業教育も含めての大学のあり方について検討しています。今ヨーロッパのナースたちが同意されているBologna Processとは、基本的には学士課程での教育を行いたい。看護の教育を学士課程で行う。その中には、研究、技術、コンピテンシーの考え方を入れていくということと、それまで学校長が医師であったり、他の職種であったのが、学校長、または課程長が修士以上の看護師であることということが言われているところです。これは、ヨーロッパは何を模索しているかというと、この4,600時間はとても大学におさまりません。もともとの考え方をかなり変えないとおさまり切らないというのが当然のことですので、ヨーロッパは今かなりな葛藤を続けているということになります。
 ヨーロッパの問題というのは教育水準がかなり違います。そもそも看護の大学で5年間かけて看護職を育成している大学もあれば、12年教育を見ない基礎教育の上に3年間というような教育もありますから、かなり水準も違います。それから、EUの話し合いで、看護職の国境を超えた移動があるために、看護職の免許を何とか一本にしていかないといけない。それから、これだけ4,600時間の実践をやっていても、やっぱり教育を終えて出てきた学生たちは、すぐには現場で役立たないという批判がヨーロッパでもありまして、実践と教育のギャップがあるということ。それから、大学教育とトレーニング、いわゆる専門学校との格差をどう縮めていくかということが、ヨーロッパでは大きな課題になっています。卒後研修の問題も含めて議論されているということです。
 この議論の土台になっている組織は2つありまして、FEN(European Federation of Nurses)、これはヨーロッパの看護協会が、ICNに所属している組織が作っているもので、看護界の同意を得ているものです。もう一つはEU組織内活動で、これは政府機関で大学界、特にBologna Processはここが特に大きな議論をしているということになります。
 一方、1980年代に、ある程度看護の大学化に向けての1つの回答を出したアメリカが実際は何をしているかというのをお見せします。ワシントン大学の例ですが、他の大学も非常に似ているので、1つの例としてご覧いただけたらと思います。4年間、BSN180単位という単位を出していますが、Prerequisite Courseというのが2年間で、これは92単位です。この中は一般教養の問題、語学、コミュニケーション能力の他に、看護に関係するものとしてそこに示したような科目が含まれています。ワシントン大学の特徴として、ヘルスケア体験もある程度Prerequisiteの中に入れていて、100時間のボランティア、または保健医療福祉の従事者として働いた経験があるということが入っていると言われています。看護学専門コースがその後2年間行われまして、これが88単位です。実習は、ワシントンの場合、演習と実習合わせて23単位です。ご注目いただきたいのは、Prerequisite Course92単位、看護学専門コース88単位で、Prerequisiteのほうが多いということです。これが大学の特徴をあらわしていると、大学教育に上げていったときの特徴をあらわしていると思います。
 その他、少し紹介しておいたほうがいいと思うのですが、例えばカナダのトロント大学では、2年間のBSプログラムというのをやっています。これはワシントンと同じように、Prerequisiteでどこかで学士課程を修了してきた、または2年間の課程を終えてきた人たちに対してやっているものです。
 ワシントン大学は、先ほどのBSNコースの他にMEPNというコースがありまして、他分野の大学卒業者に2年間で看護学教育をしております。これで看護の免許が取れる仕組みを作るわけです。もちろん、アメリカとかカナダはコミュニティー・ナーシングというのは非常に大事ですので、この基礎教育の中にコアカリキュラムが入ってきています。
 オーストラリアは、大学が3年間でいいということもあって、看護教育は3年でやっているということになります。
 これは先生方には言わずもがなですが、大学における看護学教育では、1つは、ワシントンの例にあるように学士力、教養の教育というのが重要な問題です。もし看護の教育を大学に持っていくということがメーンのストリームであれば、この学士力、教養の教育というのは他の職種と同じように重要な課題になってきます。今までは、大学が非常に日本では少なかったので、専門学校のカリキュラムに合わせて大学の教育を作らざるを得なかった。ここが非常に苦しかったところだと思います。
 もう一つは、当然看護職になるための基礎教育です。人の育成というのが大学の中でも重要なことですので、この看護職の基礎教育とは何なのかというコンセンサスを得ていくことが重要になってくるかと思います。でも、基礎教育で頭でっかちだけでは困るというのがあって、適応能力とか、批判能力というのが十分に養われるということがありますし、看護の知識と技術の検証基礎能力。今までの看護教育でこれが非常に欠けていたのは、私たちは素直に現場で非常にけなげに働く看護職を多く育ててきましたので、私は日本の看護職は世界に比べて優秀だと思っています。しかし、新たな問題が出てきたり、目の前の課題がどんどん変化してきたときに、そこから、例えば医師のように課題を持って対応していくのを現場から発信していくということが少なかった。そのために大きな課題が次々と看護界では残されていると、私は思います。
 それから、看護学教育というのは基本的に大学院教育に対する基礎能力です。忘れてならないのは、大学と専門学校の大きな違いです。基本的には下に書いてありますように、人的・物的資源は、大学は格段にいいというのが言えます。例えばものでもそうですし、スペースでもそうですし、教員の数でも、質でも、そういうことが言えると思います。それから、教員たちは研究者でもありますから、研究活動に裏打ちされた知的な知識が提供されるということを課せられています。
 もう一つは、大学の教育というのは時間ではなく単位ではかるように、1単位とは何なのかということを考えた上の質の担保が課せられています。だから、基礎教育は時間の問題ではない。例えば、アメリカのあんなに短い期間で看護の専門教育を受けてきた人たちが現場で役立っていないかというと、そんなことはないのです。つまり、何かの教育のシステムをかなり根本的に変えていかないと、今までのような積み上げ方式の考え方は大学の教育にはなじまないと、私は思います。
 もう一つは、目の前で役立つ人を育てることも1つ、基礎能力をどこに置くかというコンセンサスが得られれば大事なことで、普遍性が必要ですが、もう一方では、国際的に見て日本が特別というわけではないという時代になってきているということが理解される必要があるのではないかと思います。
 看護の知識は、これは私がよく使うもので、人が患者の中で健康問題も持って生活しているとき、大きく保健医療福祉では、キュアとケアという大きな介入のプロセスがあるが、看護はその2つにまたがっている。両方にまたがった専門職だということですね。ICNでは、看護師の能力を、コンピテンシーですが、どういうふうに見るかということの提言もしていまして、世界ではこのコンピテンシーの考え方に従って各国のユニークさを作っていくということになっています。ケアの提供と介入というところが中核ではありますが、その他に、いわゆる看護師の能力というだけでいうと、こういうことがあります。これは中身の構造です。
 どこの国でも基礎教育と免許と実践のはざまで苦しんでいます。免許制度は国によって大きく異なります。免許とは国民の安全と看護の質を保障する制度ですから、教育と免許の関係というのは非常に重要で、どこでも苦しみながら、その国の、そして今はアジアだったらASEANをにらみ、ヨーロッパだったらEUをにらみ、北米は北米の、カリブ海はカリブ海のユニバーサルな、またインターナショナルな考え方を取り込んでいます。
 ヨーロッパの例で示しましたように、理論と実習のバランスをどう考えるか。今までは、ヨーロッパは、実習はすごく大きく見ていました。これを大学教育に乗せるときどう考えるか。それから、教育と実践の間のギャップ、卒前と卒後の関係ですね。卒前にはどんな能力を持たないといけないかということと、その後、卒後教育をどうするか。私は看護の教育は早晩世界で卒後研修を前提にしての基礎教育ということになると思います。卒後研修を前提にしないと、今の議論は非常に難しくなるということがあると思います。ただ、看護の全体ですぐにこれができるのかということは今後の議論かなと思っています。
 これは先ほどお示ししたとおりです。だから、こういう免許の問題と、免許につながる専門職の教育は今変わりつつある。私は、基本的概念は統合と選択だと思っています。
 先ほどから申し上げている実践と教育のギャップ、これは古くて新しい問題で、1995年にErautという人がまとめていますので、関心のある方は読まれたらと思います。どうしても起こらざるを得ない、実践にすぐに役に立たないのは当たり前というところが1点はあるのです。基本的には、教育というのはある程度理想を教えますし、現場は問題解決でございます。問題解決の基本的な方法は基礎教育でも行いますが、目の前の問題をすぐ解決される人を基礎教育で育てられるのだろうか。これは4,600時間という教育をしているヨーロッパでも問題になっているところです。
 もう一つは、知識の本質と特定の応用の相違です。例えば患者さんのケアをしていくときに、A病院で役立つということと、C病院で役立つということとは違いますし、また、地域で役立つということと、施設で役立つということとも違う。だから、どうしても実践とのギャップというのは出てきます。
 もう一つは、学習したものを移行し、活用する問題というのがあります。これは、免許をどの段階で持っていないといけないかという議論です。これは厚労省の看護課でもかつて議論をされていますが、自分で、例えば免許を持たないと患者さん等にしてはならない、または、これから特に権利を主張される患者さんが増えてきたときに、免許を持たない人が卒前実習で本当にできるだろうかという問題があると思います。また、活用する課題というのは、多様な場所で活用していかないといけませんので、10人いれば10人の患者さんに違う活用の仕方がある。そうすると、どうしてもギャップが起こってくる。また、場とか資源の相違によって知識の活用も違ってまいります。したがって、私は卒後の臨床研修というのは今後重要だと思います。伝統的な方法としては、ご存じのように院内研修とかプリセプター制度をやっていらっしゃいます。オーストラリアのような場合は、卒業生が病院へ就職するまでの間、何カ月間か臨床研修を選択で行っています。また、EUもこの卒後の臨床研修を議論し始めています。
 日本の場合、これはどういうことなのかということですが、私は基礎教育の見直しが必要だと思います。制度を今までは主に専門学校で教育をするから、その保助看法に合わせて基礎教育を考えていかないといけなかった。それを、大学教育の中の基礎教育を考えなければいけなかった。それが1つは課題で、日本はこのことをどう取り組むかが、私はこの委員会に期待したいところだと思います。
 もう一つは、看護系の大学が増えてくる中で、大学自身の問題もかなりあると思います。当然大学で努力してやっておかないといけなかった事柄を多くの大学でできていなかった、または選択的にしなかったということがあるのではないか。だから、これは日本看護系大学協議会等でもう少し大学自身の課題を取り上げてもらいたいと思います。
 それから、基礎教育のカリキュラムは、今まで全員保健師の免許を取るという統合カリキュラムが、統合は統合なのですが、是認なのかどうか。助産師のように選択が可能になってくるかということも考えられていくべきだと思います。伝統的な狭義の講座的な柱の立て方も日本の大学の中では見直さなければいけない。成長発達論で講座の柱を立てていくあれが、本当にいいのか。むしろ働きかけ論で立てていくべきではないかということなども考える必要もありますし、看護系の大学を卒業した人が全員看護職になるのか。今後は、教養としての看護学教育も含んで大学で考えていく余地を残さないといけないと思いますし、卒業後に科目等履修生などを通して取得できなかった免許への科目が、卒後にできる道も開いていいのではないか。それから、卒後研修のあり方を検討していく必要があるし、大学院教育との関係で基礎教育をどこまでするかということが重要かと思います。
 その他に環境的なものとして、私は大学になるということは、専門学校よりはずっと教育的投資が必要になってきます。それは制度的にもそうですが、個人にも奨学金制度等の充実が必要になってきます。また、日本が避けて通ってきた通信教育課程をどう考えていくか、遠隔教育をどう考えるかということも課題だと思います。卒後に免許が取れる方法も道は開けないのだろうか。それから、働きながら学べる道の開発も各国でやっておられる道を模索してもいいのではないかと思います。
 役立つかなと思う各国の文献をご紹介しております。
 以上です。ご清聴ありがとうございました。

【中山座長】 どうもありがとうございました。大変広い視野からいろいろな問題提起をしていただきました。今の南先生からのプレゼンテーションで何か質問しておきたいことがありましたら、それを先に聞きたいと思います。はい、羽生田先生、どうぞ。

【羽生田委員】 大学教育というお話で非常にいいお話を伺ったなと思いましたが、種々の外国のお話もありました。いわゆる日本の養成所的なものは他の国にはないのですか。

【南意見発表者】 もちろんございます。今まで、世界的には大半が養成所で、専門学校でやってきました。ヨーロッパでも今大半がその段階かと思います。アメリカでは、大学にかなりシフトしていますから、今専門学校は卒業者が今16%か17%ぐらいになりましたので、ほとんどが大学、短期大学も含まれますが、移行されてきています。アジアでは、例えばタイのように大学に一本化していこうとする動きもありまして、大学化へのシフトが起こっているというだけで、現実は養成学校もたくさんございます。

【羽生田委員】 数的な問題、いわゆる日本全国で看護師さんがどれだけ必要なのかという数的な問題をすべて大学で解消できるのかどうかという疑問と、今のような大学のやるべきことというのは、すべてが大学になったとしても、非常に限られた人たちが通るべき道、学ぶべき道であるように思う……。今の日本の形でいうと、むしろ大学院的な話ではないかというふうに感じたのですが、その辺はいかがなのでしょうか。

【南意見発表者】 数の問題は、例えばアメリカの場合は、日本よりずっと看護職の数は多いですから、養成するべき数も多いです。アメリカの経済でやれていることが、日本の経済でやれないのかというのは議論の余地があると思います。どれだけの時間をかけて移行していくかということも議論されるべきだと思います。私は数より質を懸念します。だから、スピードが必要だと思います。例えば専門学校の制度が日本で初めてできた終戦直後は、中学から高校への進学率が38%ぐらいでした、女の子だけで見ると。中学校から高校への進学率がそれなのに、高卒3年というのは高学歴です。したがって、日本の伝統的な専門学校の卒業者は優秀だったと私は思います。それはすばらしい人たちがたくさんいた。ですが、今、高校から大学への進学率が、女の子で大体それ以上になりつつあります。そのときにいつまでも専門学校に置いていくと、少子化になってきますので、この少子化の流れの中で女の子たちが職業の選択の幅が広くなってきたときに、大学の看護教育を選択しなくなったときの臨床のナースの質が、これからの社会問題として私は大きいと思っています。

【中山座長】 よろしいですか。

【羽生田委員】 よろしいですか、続けて。済みません、少子化になってきたときの話というのは、それは今の大学が、もう少し看護大学が増えていったときには、100%大学卒の看護師さんが出てくるというのは理屈上も理解しますが、現在のこの日本の中で、じゃ、いつそこまでいくのかというと、かなり先の話だろうと思いますし、今の話ですべて大学化を急いだときには、必ず学生の質は落ちる。それは必ずあると思うのです。
 それから、いわゆる看護学と看護、看護学教育と看護教育、この違い、ずっと先の将来のことは別として、全員に今看護学教育というものが、当然部分的に必要な部分はありますが、いわゆる技術者看護師としての現場として、全員に看護学、今言われたような大学でやる看護学が必要かどうかというのは、私は少し疑問に思っています。

【南意見発表者】 私は、先生よりは、もっと大学化がほうっておいても進んでいくと思います。というのは、兵庫県をとっても、15年ぐらい前は3校ぐらいしかなかったのが、今12校になってきていますので、関西地区の動きを見ただけでも、私立大学が看護系の大学に雪崩を打ってきているということがあると思います。だからこそ、私は、先生がおっしゃるような懸念も、私も今私学にいますので、県立にいたときと、私学に入ってくる学生さん、学生さんもいろいろな人がいますが、偏差値だけで見ると、それは違いが出てきていると思います。ただ、志は同じです、いい看護師になりたいと。あの学生たちに、私は今のような時間に縛られた教育で看護教育をしないで、別の仕組みでちゃんと教育をすれば、私は現場に役に立つ看護職になれるという自信があります。それは人間の志の高さで、今もって看護職、わざわざ高い授業料を払ってでも看護大学を選んでくる学生さんたちのそういう思いというのがあると思います。だから、教育の質は教員たちの責任だし、生徒の責任になってくると思います。
 もう一つ、先ほど先生が最後に聞かれたことは何でしたっけ。

【羽生田委員】 いわゆる全員に看護学が必要かということです。

【南意見発表者】 先生、医師に医学は必要ないですか。

【羽生田委員】 それは、アメリカ、ヨーロッパと日本との医療制度を比べたとき、医療全体を比べたときに全然違う。今これだけ地域に医師がいる国というのはないわけです。これだけ散らばっている国というのはない。もちろん集約化も必要ですが、今の日本の医療というのは地域に非常に医師が多くいる、散らばっているという、これは非常に大きな国と国の差です。ですから、いわゆる看護師さんももちろん必要ですが、医師がやっている医療の場面というのは非常に多いのです、広い範囲ももちろん、これがいい悪いは別として。ですから、看護だけがそういった今の考え方でなく、日本の中の医療全体を考えていかないと、むしろアンバランスが生じてくるのではないかと懸念をしています。

【南意見発表者】 その件は大いに議論をさせていただきたいのですが、教員になる人たちは教育学を勉強します。小学校教員も、中学校教員も、教育学を勉強します。そういう意味で申し上げています。

【中山座長】 ありがとうございました。きっとこれでいきますと、ずっとこの議論でもいけるぐらいの大きな話題かと思いますので、少し違う観点から、ご質問がありましたら、どうぞお願いいたします。佐藤委員、どうぞお願いします。

【佐藤委員】 南先生の発表、大学での看護教育、あるいは看護学教育、どうあるべきかというのは非常に悩んでいるところで、幾つか大変ひらめくところがあり、ありがとうございました。その上で、特にアメリカにおける先行した議論と一定の決着、それから、ヨーロッパで進行中のというのを比較していただいて、大変分りやすかったと思います。お尋ねしたいのですが、アメリカの例で、180単位は大変多いと思いますが、一方、実習が非常に少ないように見受けました。一方、ヨーロッパでは4,600時間ですか、これをやっても、まだ現場では十分ではないというお話もありました。一方、アメリカでこんなに少なくしても現場で役に立たないかというと、そうではないというようなご発言がありました。この違いというのは一体何なのでしょうか。非常に素朴なのですが、2つの観点でお願いします。
 1つは、大学以前の初等中等教育の段階で何か違いがあるのか。つまり、大学教育は、もちろん、それまでの様々な教育のプロセスの上にあるわけですね。それで、例えばアメリカでは、自主性とか、自立性とか、そういうことが非常に身についているからというふうにお考えなのか、つまり初等中等教育との関係でどういうふうに考えているのかということ。
 もう一つは、最後に強調されました卒後研修との関係。アメリカはこういうふうに実習時間が少なくてもいいというのは、卒後研修というのは充実しているのかどうなのか、その辺のところを少し教えていただけますか。

【南意見発表者】 はい。初等中等教育の違いは、私は分りません。自分の経験から見て、ヨーロッパ系の人たちの初等中等教育は、教養の豊かさという意味では、教養を何ととるかによって違ってくると思うのですが、あるなという感じは、私は同じレベルの者と話したときに思いますが、アメリカが、だからいいということはあまり思わなかったです。そういう意味では、何でアメリカのは2年、こんなに短い期間でできて、ヨーロッパとの違いがどこにあるか。なぜアメリカでは実習が短くてできているのか。アメリカの1つのやったことは、技術を非常に重視するという考え方を1つの柱に立てているのです。理論と技術ですが、技術を特に細かく臨床家と教育者が集まって、基礎教育ではどこまで到達して欲しいかという技術をずっとリストアップしているのです。例えば結構レベルの高いところまでやります。病院の中だったら、患者さんが急変したときの蘇生の仕方とか、そういうところまでやりますので、かなり幾つかの項目は明確に出ていまして、その技術を習得する方法を大学でやれるようにしてあるのです。病院でないとできない実習は病院でやります。ですが、いわゆる実習室でやれる。だから、教育的投資がすごく多いのです。実習施設が充実していて、パッケージができていまして、学生はいつでも実習室に行くと、そこに大学院修了者の指導者がいて、私はこの技術を今日は練習したいと言ったら、技術のパッケージをもらって、質問に答えてもらえるというようなことができていますから、ある一定の卒業の段階までにこの技術はマスターしているというのはチェックされています。これは、かなりエネルギーを注いで教育をしています。これは日本の看護教員の学ばないといけないことだと思います。ただ、アメリカは今、看護職のものすごいマンパワー不足に悩んでおりますので、政府自体が今看護教育にすごい投資をしています。今までも投資してきましたが、アフリカとかアジアの看護師を吸い上げるというので大批判をこうむっていて、今一生懸命投資しています。だから、大学の中の実習施設や投資されたものというのは、教材とか、そういうもの、またインターネットだとか、コンピューターを使った教育というのは非常に充実してきています。そこがアメリカの質をよくしていくと、卒業生も短い時間で質を上げられるということの証明に私はなると思います。もちろん、ワシントン大学というのは東大みたいなところですから、大学はピンからキリまでありますが、でも、基本的にこの構想でいっているというのは、これで、現場で働いていける人が増えるということだと、私は思います。
 ヨーロッパは、教育的投資はそれほどされていません、教員に対しても。教員の数も少ない。実習、2,300時間、病院に行きますが、ほとんどほうったらかしです。したがって、病院の中の看護職に指導されています。病院側も悲鳴を上げている。日本も保健師さんが悲鳴を上げているみたいに、ヨーロッパも悲鳴を上げている。ただ、ずっとそこにいて実習しますから、学生もなれてくるので、ある程度、もともと学生のパワーをマンパワーとしてカウントしていた国々が多いので、それぐらい現場的指向がすごく強いのです。
 しかし、それはBologna Processの中ではとてもやっていけない。だからといって大学でない課程にするかというと、それだとEUの人が動いていくという仕組みに合わなくなるので、ヨーロッパ全体が大学改革せざるを得なくなってきている。いろいろプロセスがありまして、専門学校と大学が提携して、いわゆる専門学校の教育を受けながら大学の教育もレジストレーションできて、幾つかコースがとれるというような課程的な努力というのもヨーロッパではされていますが、基本的にはそういうことかなと思います。

【佐藤委員】 済みません、卒後研修は。

【南意見発表者)】 卒後研修は、アメリカの場合は個々の施設の努力でやっています。必修化という制度はないです。

【佐藤委員】 そうですか。

【中山座長】 ありがとうございました。時間もかなり経過してきましたので、南先生にも入っていただきまして、討論のほうを広げて全体的な問題に行きたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 羽生田先生のほうからもありましたが、日本の看護職、ずっとこれまでもやってきましたように教育背景が非常に多岐にわたっていますが、今ここの検討会としましては、大学教育、180にこの4月なっているのですが、その膨れ上がった180の大学教育の質をどうするかということの問題を中心に、様々な看護師の養成課程の問題はあるかと思いますが、大学教育に少し焦点を絞って討論していただきたいと思っております。そういう意味では、平澤委員、村嶋委員、南先生から、少し違った角度から3つプレゼンテーションがあったかと思います。そのことも含めまして、大学の教育の質ということの担保をどうするか、統合化したカリキュラムでは保健師教育の問題としてはかなり難しくなっているのではないかというプレゼンテーションもあったのですが、その辺のことも含めまして討論していきたいと思います。
 南先生、1つだけ、今日のお話の中で、他の国々はライセンスが……。イギリスはパブリックヘルスというか、ナースのライセンスが少し明確になっているようですが、他、国際的には、日本のように看護師と保健師というのを明確に分けるという形でなくやっているというふうに考えてよろしいでしょうか。

【南意見発表者】 基礎免許は1本ですね、助産師だけ別のことが非常に多いのですが、基礎免許は保健師も他の看護分野すべて1本ですね。もともとヨーロッパは別々だったのですが、基本的な考え方が、例えば小児だとか、それがあったのですが、今は基本的には一本化しましょうという方向です。

【中山座長】 ありがとうございました。どうぞ。

【村嶋委員】 私は専門がパブリックヘルス・ナーシング、公衆衛生看護でございますので、この分野に関しては情報を持っています。「基礎免許は一本だ」という南先生のご発言は、事実と違う、と言えます。英国は一度一本化したのですが、その後、スペシャリスト・コミュニティー・パブリックヘルス・ナースという形で、免許登録制になりました。つまり国家免許になっておりまして、実際には修士課程でも教育されております。それから、南アフリカ、アイルランド、タイなどは免許です。それ以外に、デンマークだとか、カナダだとか、サーティフィケーションの国はたくさんございますが、免許制度を持っている国は幾つかございます。

【南意見発表者】 先ほどPost-basic trainingと申し上げたのがそれに当たります。

【中山座長】 というのが、国際的な動きです。

【羽生田委員】 先ほど村嶋委員と平澤委員から、保健師、助産師の卒後の形での教育のお話がありましたが、これ、一番の違いは看護師免許を持っているか、持っていないかというのがすごい違いですね、これは基本的に。その辺がどのように影響しているのか。免許を持っていることがよかったというふうに考えられるのか、教えていただければと。

【村嶋委員】 まず保健師のほうから申し上げますと、保健師は単独の家庭訪問を1年課程では行います。それは看護師免許を持っているからでございますが、単独でいろいろな家庭・ケースを訪問します。
 もう一つは、1年課程では、保健師という専門に特化して自由にカリキュラムを組み立てられるということです。同じように家庭訪問するのにも、毎月1回、同じおうちに、同じ方に訪問する。そうすると、1回目に見えていたこと、その次の月に見えたこと、3回目に見えること、4カ月、半年後にはずっと親しくなっていきますので、見えてくるものが異なってきます。そこでは、保健指導の効果が全然違ってまいります。
 大学の中に保健師教育を入れられることによって、多くの大学では地域看護学実習は2週間や3週間で、他の成人や老年や母性とローテーションで組まれております。そこで、母性看護学や小児看護学を習っていないのに母子の家庭訪問に行ってしまうということが強制されてしまいます。そういう教育の順序性の無視が2点目にございます。
 それから、3つ目に大きいのは選抜するということでございます。保健師としての指向性のある、レディネスのある人をピックアップして効果的に教育するというのが、選抜して行う教育です。
 一方で、大学の中での選択制はまずいです。4年間の中で看護師の教育が終わらないのに保健師の教育を入れ込むとか、保健師と看護師とを一緒に教育していくためにカリキュラム上の制限が非常に大きくて過密になっている、そういう点があります。以上です。

【中山座長】 羽生田委員、よろしいですか。

【平澤委員】 助産師教育の場合も看護師教育がベースにあるということが第1条件だと思います。先ほど南先生がダイレクトエントリーのお話もなさいました。ニュージーランドでは4年間の中で正味3年間の教育はダイレクトエントリーで助産師教育のみを行っていますが、カリキュラムの中には、看護教育が入っての助産師のカリキュラム構成です。
 日本の教育制度の中では、看護師として看護学の学習後助産師教育をということですが、現在4年間の学部教育の中でも教育が行われております。しかし、4年間のカリキュラムの中で半年以上、23単位の教育を行うことはかなり厳しく、系統立てて積み重ねていくような教育が行われにくく、過密カリキュラムの中で、かなり厳しい教育が行われております。従って、大学専攻科、または修士課程での教育をという動向が助産師教育界には多いように思っております。

【中山座長】 ということで、羽生田先生、よろしいですか。他に何かありますか。宮﨑委員、どうぞ。

【宮﨑委員】 今看護師教育がベースかどうかというお話でしたが、私自身は看護師教育というよりも、看護学、もしくは看護教育がベースだというふうに思っています。ローテーション教育やモチベーションのことが村嶋委員からご指摘がありましたが、ローテーションを組むそのベースには、やはり看護学教育を終えた学生たちが各領域を回っていくわけです。だから、看護学教育はもう既にベースになった上で、各いろいろな領域を回っていくということですから、私は1つ、看護学教育がベースになった段階でいろいろな領域を回っているのだと理解しています。
 モチベーションに関しても、やはり学生というのはいろいろな領域に対するモチベーションというのは、その世界に触れてみて、ああ、こんな面白い実践があるのかということが初めて分かるわけですね。ですから、むしろ現場の中での体験をどんなふうに構成するのかという、教育の質ということがこのモチベーションを高めていく上で非常に重要だと思います。
 私、今日南先生のお話を聞いてすごく心にしみたというか、考えた部分は、やはりこれからの大学教育というのは本当に発想を変えていかなければいけないなというところはすごく感じたのです。と申しますのは、これまでの教育いとうのは、特に看護教育というのは、経験というところに重きが置かれていたのではないでしょうか。ですから、何回も同じ、ある実践を繰り返して学ぶというような、だから、それだけ期間が必要とされた。ですが、これからの教育というのは、ある一定期間の中でいかにどこまで修得するかという、その深さと申しますか、そういったところをより追求していかなければいけなくて、繰り返し経験的に学ぶというよりも、たとえ1回の経験であったとしても、それをどう経験として幅を広げるのか、そこに相当教育としての教員側の創意工夫をしていかなければいけないなと、そういうことを強く感じました。

【中山座長】 ありがとうございました。松尾委員、どうぞ。マイク、入りますか。

【松尾委員】 私は2つのことを申し上げたいのです。1つは、こういう議論をしていくとき、なかなか着地点が定まらなくて苦労をされているという話を聞くのですが、現実、今、日本における看護師さんが足りないとか、現実的な問題がありますね。その問題と、看護師、あるいは今看護学の教育の話になっていますが、これをごっちゃにすると非常に問題が多い。医師臨床研修を考えてみますと、平成16年のときに医師の臨床能力を上げるということで、新しく臨床研修制度ができたんですが、その後、医師不足が起こって地域医療が崩壊するという過程で、そのハンディの1つが臨床研修制度が変わったからだということで、それを変更するということで今議論が起こっていますが、そこの過程で最初に決めたことの評価がまともにされていない。医師の質が、臨床研修制度が変わったことによってどのぐらい変わったのか、全然評価もされないで変えていかれるわけです。
 そういうことがあるので、私は今回の議論では、やはり一番大事なことは、現実には様々問題はあるのですが、最終的なグランドデザインは一体どこなのかということを、多分すぐそこには到達できないのですが、そのグランドデザインをまず作っていただきたいと。私は今南先生のお話を聞いて、これは医師に置きかえても同じような問題があるなということをすごく感じたのですが、やっぱりグランドデザインをしっかりやると。そこで一致できることと、できないこと等は何なのか、理想的なことを考えたら、そこの一致点、不一致点をはっきりさせて議論していくことが今すごく重要だと思います。というのは、将来的に、今決めて、またこれが3年後、5年後に変わるというふうでは、教育に非常に弊害をもたらすと思うのです、ころころ変えるというのは。ですから、まず着地点、目指すところは何なのかというのをしっかり考えるということは重要だと思います。
 2つ目は、ずっとこの間の議論を聞いていて、今の看護系の大学の問題点というのは非常に詰め込みで、すべてをやるには時間が足りない。しかも、そこに保健師、あるいは助産師の資格取得のためのカリキュラムが半年ずつ入ってくるというので、非常に過重になってしまっているという意見、これはほとんど皆さんが認めていることかなと思うのです。であれば、すべての人が保健師さんや助産師になるわけではないので、新たなコースを設けるというのは、私はリーズナブルだと思うのですが、もし、そうしたときに具体的な問題は一体何があるのかというのはまだちょっとよく分らないのです、それに対して反対する理由が。その辺もお聞かせいただけたらと思います。

【中山座長】 はい。いいですか。

【菱沼副座長】 南先生はじめ、いろいろな方のご意見を聞かせていただいて、ありがとうございます。私は、看護師という名称を聞いたときに、我々のこの日本の社会でどういう人材を思うのか、要求されるのかということを考えますと、おそらくあらゆる場で、あらゆる健康レベルの人のニーズにこたえられるというのを、今の社会が看護師に求めるのだろうと思いますし、おそらく世界のレベルでも、看護師はどういうことをする人かといったときには、あらゆる場で、あらゆる健康レベルの人にこたえるということだと思うのです。私は、そこにみんなが合意できるかどうかというのが問題ではないかなと思っています。しかしながら、日本の保助看法では、保健師は対象を決めていないのであらゆる人に保健指導をできると規定していて、看護師のほうはだれにかといいますと、傷病者と褥婦で、やることは療養上の世話と診療の補助という2項目が規定されていまして、その中に保健指導が入っていないのです。ですので、そうしますと、日本の今の法律に基づいて考えるならば、私は大学教育で育てる看護師には、今の日本の法律で言う保健師と看護師の両方の機能を求めなければ、意味がないのではないか、つまり、病院等で、傷病者と褥婦対象にケアをできる人材だけを育てたいのかというふうに考えますと、私はそうではないと思っているのが1点です。大学教育が今まで看護師と保健師の教育を長いことやってきたことの強みはそこにあったのではないか、あらゆる健康レベルの人に、いわゆる療養上の世話から、診療の介助から、保健指導も全部含めてやれた、そういう人材であったというところなのではないかなと思うのです。私自身は大学教育において、それはそのまま担保したい、それは残しておきたいと思っています。
 ただし、今日もいろいろ議論が出ておりましたように、今ある保助看法の指定規則に定められている内容がすべて必要かどうかという見直しは考えたほうがいいかと思うのですが、そのときに保健師のところを除くのではなく、そこも含めて見直しをする必要があると思います。
 それと、村嶋委員のほうから再三ご指摘がある、スペシャリティーのある保健師に関しては、大学院教育で私はやっていただいたほうがいいのではないかと思っているのですが、村嶋委員がご指摘の機能を持つ保健師のみを保健師と言うのではないと考えています。今の日本ではもう少し薄く、保健指導ができる人材をも保健師と呼んでいるのではないでしょうか。この保助看法の規定が変わらない限り、今度、看護師教育を充実させましょうといったときには、この保助看法で言っている範囲を超えて規定をすることができるのであればそれでいいのですが、それはできるのか、あるいは保助看法を変えるところまで考えて論議をしていいのかというあたりも、少し疑問があるなと思っております。

【中山座長】 野村課長に心の準備をしていただいている間に質問を受けたいと思います。どうぞ、高田委員。

【高田委員】 群馬大の高田です。私どものところには医学部の中に保健学科があります。もともとこれは医療短大でやっていて、大学にしたときに、カリキュラムを、どうするかということになりました。それまでずっとやってきたことの1つとして、これから医療人としてチーム医療をしっかりやろうという方向で、大学として広い視野を持った看護のできる人を育てようというコンセプトで大学のカリキュラムを始めたというふうに当時の方から聞いています。ただ、カリキュラムを実際に作り始めてみたときに、共通のいろいろなカリキュラムを作っていくと、やはり今の指定規則の問題があって、なかなか苦しい。苦しい中でも、やれるだけやろうという形で、今の私たちのカリキュラムはできています。せっかく医学部にいるのだからということで、医学科と保健学科との共通の教育のカリキュラムというのも実はやっております。
 これからの医療人の中での看護師、あるいは保健師の教育というのはどう考えるかということですが、今、南先生がおっしゃった、基礎をきちんとやっておいて、応用力があるような人材を育てていくというのは、大学としては日本の将来を担う人を作るわけですから、やはり大事なのではないかと思うわけです。そう考えていくと、大学は狭い看護教育だけを指定規則に則ってやって、あとは少しそれをゆっくりやって、実習をやればいいというものではなくて、もう少し幅広い視野を持った人を育てることが必要となってきます。その中には、今、菱沼委員がおっしゃっていたような、従来保健師教育に当たっていたようなところというのも必然的に入ってくるのではないかと思うわけです。統合化したカリキュラムというのを作られたときのこと、宮﨑委員がおっしゃっていた理念というのは、確かにそれはそれであるのだと思います。ただ、その中で現実にどうなっているかというと、この会の最初のときに伺った、実習の現場が悲鳴を上げているということがあるわけです。ですからこのところは、とにかく何らかの形で解決する必要があるかと思います。村嶋委員がおっしゃるように、大学院に持っていって高い志を持った方に特化すれば、確かに解決はするかもしれない。それは1つの方法かと思います。
 もう一つは、例えば実習がパンクしているのだったらば、実習のところだけ高い志を持った方だけに行っていただければという考え方もできるのではないかなと思うわけです。例えば、今日の資料で、これは村嶋先生でしたか、4年制の大学と、1年の課程を経た方の間でパフォーマンスが随分違うというようなことがあったのですが。これは、私は、違って当然だと思うのです。1年の課程に入られた方というのは当然保健師になろうという高い志を持って入ってこられた方です。一方で、4年制の大学は、自分はとりあえずは保健師とは関係ないんだというような方も全部含んだ方で調べているわけですから、当然そういうことは起こるのだと思います。
 ただ、国家試験の合格率でいけば、これはほとんど差がない。今年の合格率で見ても、大学卒の方だと98.5%ですし、養成所だと97.8%ですから、むしろ大学のほうが高いぐらいで、そういう意味では、基本的なところというのは大学教育でも十分押さえているのではないかなという気がするわけです。
 当然看護教育においても、看護師の資格を取ったらそれで終わりというわけではなくて、さらにその上のいろいろな専門的なコースというのは今たくさんあるわけです。ですからその1つとして、スペシャライズした高度な保健師というのも当然あっていいと思います。そこら辺を全体を考えていって、制度というのを作っていくのかなという気がしているわけです。

【村嶋委員】 済みません、今の……。

【中山座長】 ちょっと待ってください、小山委員が先に手をあげていたので。どうぞ。

【小山委員】 看護教育は、社会の変化を見ながら、社会のニーズに沿って教育の内容を変えていくものだと思います。看護師を例にとりますと、看護師としてずっと変わらないものと、社会の変化やニーズに沿って変えていかなければならないものがあると思います。
 先ほど出ました看護師、保健師、助産師の定義は、終戦後に保助看法ができた時の60年以上前の定義をそのままずっと使い続けているわけです。しかしながら、実際には私ども看護教育をする立場にいる者としましては、社会の変化を見ております。社会の変化に合う看護職を育てるにはということで相当内容を変えました。保健師の業務としてその頃言われていたことが、今日は看護師でもそのような能力が必要であると考えまして、そのような教育内容をカリキュラムの中にどんどん入れ、結果として国家試験に合格しているということになると思います。ですから、この保助看法の定義を今日的なものに変えないと、日本の看護職はいつまで経っても発展しないと思います。これは野村看護課長への1つの希望といたしまして、もう一度見直してみて、私たち日本の看護職は60年前の看護師の定義を使い続けていくのでしょうかということを問い続けたいと思います。実際に看護教育は相当変わっておりますということが1つです。
 それともう一つは、教育の成果をどのように評価するかは、国家試験だと思うのです。ただ、国家試験は技術を問うていないというところが非常に大きな課題ではあるのですが、その評価としまして、保健師の国家試験の合格率は大卒も非常に高いということは、1つの評価を得ているのではないかと理解しております。
 それから、先ほど松尾委員がおっしゃったことは非常に大事なことだと思います。ここは文部科学省であり、大学教育について焦点を置いて話していると思いますが、本来ならば看護教育は厚生労働省管轄の養成所と、文部科学省管轄の大学、学校とがありますので、その両方の需要と供給を見ながら、どのくらいのスパンでバランスをとっていくのかということを慎重に考えないといけないと思っております。それはここだけの議論ではなく、需給バランスを考えて計画的にやっていかないといけないと思っております。

【中山座長】 坂本委員、看護課長に振ろうと思いますが、発言はその前のほうがいいですか。

【坂本委員】 いいえ、その後で結構です。

【中山座長】 分りました。では、野村課長のほうから、保助看法における定義、看護師、助産師、保健師の定義の問題にまで議論が発展しているのですが、その点でコメントいただけますでしょうか。

【野村看護課長】 看護教育は指定規則に基づいて教育が行われ、国家試験受験資格を与えているわけですが、大学については指定規則のみですが、養成所については指導要領という局長通知ですが、教育内容を押さえた上で教育を行っています。その指導要領に看護師教育の基本的な考え方が出されておりその中に、健康の保持、増進、疾病予防と治療、リハビリテーション、終末期など、健康や障害の状態によって看護を実践するための基礎的能力を養うというのが1つございます。教育の中身のところにおいても、疾病の予防からリハビリまでという範囲での看護を教える、教育するといった教育内容が定義づけられております。ですので、保助看法で言う業務の定義が、教育の内容とイコールになっているわけではありません。これは小山先生がおっしゃったように、その時代、時代に必要とされる内容の教育をしてきているというところではないかと思います。

【中山座長】 それで、保助看法は変える可能性が少しはあるんでしょうか、あるいは議論をする可能性はあるのでしょうか。その辺のところはいかがでしょうか。

【野村看護課長】 法律ですので、絶対変えてはいけないものではなく、国会のご審議で法律は変わっていくものと思います。そういった議論が国民的にあれば、また議論が進めば、法律は変わってくるものだと認識しております。

【中山座長】 ありがとうございました。それでは、坂本委員、どうぞ。

【坂本委員】 委員の先生方のご意見というのはよく分かりますし、南先生のお話の中もすごく分りやすいところもありました。ただ、現実的な話として、大学ができたころと、それから今との現実は大変変わっています。時代の変化を考えると、現在の看護大学のカリキュラムというのは大変過密であります。そういう意味で、厚生労働省の中でも基礎教育のあり方検討会等、様々な話し合いがされてきたわけです。大学教育についても同じようにカリキュラムが大変過密です。ましてや必ず看護師と保健師の教育内容が入っております。この状況の中で、本当に基礎教育をどこに置くかというのは大変難しいものがあると思います。今看護大学の教育を看護学だという皆さんのお話を伺っていますが、私が見ている限りでは、看護学に必要な学問は現状ではまだ不十分だと思います。
 なぜかと申しますと、例えば老年看護学を学ぶにあたり、本当に老年学というものを徹底して学んでいるかというには大変薄いものだと、大学教育でも思っております。老年学というのをきちっと学ばなければ小児が分らず、小児が分らなければ母性が分らない。統合されていくという教育は、ある意味では、予防から健康、終末まで統合する、という意味はよく分ります。しかし看護師教育は職業教育と違うとか言われますが、職業教育にしても看護学教育にしても、現在の統合されたカリキュラムの4年間では看護師になるための教育としても内容等も含めて過密であると思います。
 なぜ過密かというと、4年間の中に保健師と助産師が入ってきて、それを合わせて取るという免許制度が入ってきているからだと思います。看護学は、もっと幅広く、他の領域のことも幅広く学ばせていくということも大事だと思います。先ほど委員の方がおっしゃられたように、これからのチーム医療においては、ただ看護の領域ということだけではなく幅広い教養的なものもさらに深めていくことが必要だと思います。
 期間と質というご意見があったと思いますが、看護大学の4年間を看護師のみの4年間にし、保健師と切り離していただき、今助産師が大学院での教育が増えているのと同じように、保健師の教育もしていくという形で、今後やっていかざるを得ないと思っております。それは時代の要請であると思います。
 保健師は大学4年間以上で何を学ぶか、ということですが、保健師はもっとマス的な視点が必要だと思っております。地域をマス的にみて、分析し、対応する力が必要とされています。例えば、訪問看護など一部の業務に徹するのではなく、その領域におけるマス的な調査、分析、それに対する対策ができることが必要だと思います。この点でも、大学の中における保健師の学問は看護師といっしょではさらに過密であるため、内容と期間を見直すことが必要と思っております。

【中山座長】 村嶋委員。

【村嶋委員】 高田委員が同じ国家試験で大卒は98.5%、養成所97.5%とおっしゃいましたので、その背景を少し申し上げます。この養成所の中には、1年課程の養成所と、本当に保看統合カリキュラムをやっている4年課程の統合カリキュラムの専修学校と、両方ございます。ですから、私は、何年か前の国家試験の合格率について分析したのですが、4年課程の専修学校の統合カリキュラムの合格率は3分の2でございました。一方で、1年課程だけを取り出しますと、大学よりも高かったという事実がございます。
 それから、今の保健師の国家試験、これはぜひ見直しをして欲しいのですが、99%の合格率だった年から83%まで、難易度が回によって大きく違っています。保看統合カリキュラムを大学がやっているので、そのレベルに合わせて、内容も変わってきているという印象があります。もっともっときちんと国家試験をやらないといけないと、個人的には思っております。
 それから、宮﨑委員がモチベーションは触れれば上るんだということをおっしゃいました。それは確かでございますが、前回、大阪の森岡さんがおっしゃったように、実際に今の実習は家庭訪問を全員の学生ができる状況ではございません。35人の学生が1保健所に行って、1時間ごとにその保健所の職員の話を聞いて、その中から選ばれた5人ぐらいの学生が家庭訪問をして、そのことをみんなに伝えて、そしてケーススタディーで理解し合っているという実態でございます。保健師の教育として、担保すべきものを担保していない。免許が担保すべきものが、担保できていない。国民を欺いていると思うのですが、それが行われていることが非常に問題だと思います。

【中山座長】 村嶋委員のほうに1つだけ確認したいのですが、今日出していただいた資料があるのですが、これは1年の積み上げというのは、3年の看護師課程を終えた方の1年の積み上げですね。

【村嶋委員】 はい、そうです。

【中山座長】 ですから、それと4年制で学んだものとの比較ですから、そこでは基盤がちょっと違うんですね。大学を出てから1年課程を積み上げて……。平澤委員の助産の場合は、大学の教育を終えてから2年の修士ですか、それから大学だけの人との比較ですが、この村嶋委員の資料は、3プラス1と、4年制大学の比較なのでしょうか。そこがちょっと私……。

【村嶋委員】 そうです。ちょっと急ぎましたので落としましたが、大学のほうは4年間で統合化カリキュラムで行われているもの。1年課程のほうは14校ありますが、短大の1年課程、専修学校の1年課程、3プラス1の積み上げの4年間の教育の中の、3プラス1ですから合計4年になりますが、その1年間に特化した課程でございます。

【中山座長】 疑問に思ったのは、その比較ですと、私は村嶋委員の基本的な考え方は、4年間の大学教育の上に修士なら修士の、保健師の特化した教育をというふうに思っていたのですが、これだと3年プラス1でもいいということになるのではないかということが、逆に懸念されたのです。

【村嶋委員】 いえ、今は、そういう課程がないので、実際に4年プラス1年の課程というのがございませんので、便宜的に3年プラス1年の課程を使いました。私は今の看護系大学の統合化カリキュラムは、幅広い看護師を作る意味では非常によかった。ですが、保健師のほうは、本来持つべき能力が担保できていないというところが問題ですので、ぜひ大学の今の看護学教育に積み上げて、保健師教育をして頂きたいと思います。

【西澤委員】 今座長が言ったように、全く同じ疑問を先ほどから感じておりました。要するに、同じ4年間だが、4年間でやるのだったら、3年の養成所プラス1年の保健師教育のほうがいいと。統合プログラムの内容が悪いからこうなんだということで、今の大学のカリキュラムが悪いのだということを言っているように、私には聞こえていました。そのあたりは問題点をもっと明らかにしたほうがいいと思います。ここに書いてある1ページ目のところの問題点というのは、非常にいろいろな問題点、実習生が多いだとか、学生の学力低下とか、統合カリキュラム以外の問題がかなり入っているのではないかという気がしますので、そこら辺も分離していただきたいと思います。
 もう一つ、今の意見であれば、逆に言うと、4年間においてカリキュラムを変えさえすればきちっとした保健師教育ができるというふうにも聞こえますので、そのあたりももうちょっと整理していただきたい。私、専門ではないので分らないのですが、大学の4年間の統合カリキュラムの中のプログラムには看護教育と保健師教育があって、それ以外に当然看護学教育なども入っているのだろうと思います。即ち、養成所の3年間の教育プラス、保健師の1年間の教育と共通の部分と違うところというのを明確にしていただくと、私も理解できると思いますので、この次、そういう資料もできればお願いしたいなと思っております。
 それから、南先生のお話は、看護教育というものと、看護学教育の違いというのを非常に私の頭の中でもクリアに整理できたということで、非常に感謝しております。ありがとうございました。

【中山座長】 他に何かご意見ございますか。

【高田委員】 こんなことを言っていいのかどうかよく分らないのですが、国家資格というのに何を求めるか。どの時点で国家資格を与えるかということが1つ、大きな問題になるのではないかと思います。南先生がおっしゃっていたように、例えば基礎的なところができたところで、将来現場へ行けば学べるだけの基礎ができたところで資格を与える、これが今、南先生がおっしゃっていたアメリカ、あるいは世界の動向かなという気がします。この時点で与えるのか、あるいはもうちょっと学んだ上で現場に出ればそこですぐに役に立つ、そこまで上げる必要があるのかどうか。私は医学部にいたので医師国家試験のことしかよく分らないのですが、医学部で6年間学んで卒業して、国家試験をペーパーで受かって、さあ、1人で何でもできますかと言われて、できないわけです。それで臨床研修制度が始まっているわけですし、臨床研修を終わって、それで1人でできますかというと、それもまたできないわけで、さらに専門医に向けて後期研修を行うというような形になっています。では、その後期の研修を終わったところで医師免許を出すのがいいのかどうか、もちろんそういう論議にはならないわけで、どの時点で看護師、あるいは保健師のライセンスを出すかということも少し考えていかないといけないと思います。高いところを求めるのか、あるいはある一定のところでライセンスを出して、あとは現場で経験を積みながらということにするのか、そこを見極めておかないと、論議が空回りするような気がしました。

【中山座長】 どうぞ、佐藤委員、何か。

【佐藤委員】 済みません、細かいことだから口に出すまいと思ったのですが、村嶋委員の先ほどのパフォーマンスの違いに、少なからずショックを受けて聞いておりました。4大出と3プラスの1の違い。3プラス1というのは、こういうデータも入っていませんか。ストレートでいった人ばかりではなくて、3で終えて、看護師としての臨床経験を積んで、それから保健師を志した人。かなりそういうデータと一緒なんじゃないでしょうか。

【村嶋委員】 そこは、入学生はいろいろでございますので、そこまでは精査できておりません。

【佐藤委員】 そうですね。

【中山座長】 ありがとうございました。倉田委員と秋山委員が何も言っていないのですが、何かありましたら、時間もそろそろ来ていますので、どうぞ。

【秋山委員】 私も菱沼委員と同じような意見で、統合化したカリキュラムを今までやってきた、本当にこの利点と課題がここで論点の案で出ていますが、最初にスタートした時点と現在の大学の状況は違うというのは重々承知の上なのですが、統合化したカリキュラムが、本当に全部が否定すべきものであったかということには少し疑問があります。
 それから、1回目のときに宮﨑委員がおっしゃった、しばらくしてから保健師になって勤め続けている卒業生たちの姿があるという意味合いでは、資格の面と発展していくキャリアというのか、その中で使える幅の広さという意味で、統合化したカリキュラムが全く無意味ではなかったのではないかという思いがずっとあるのです。その辺、つまり統合化カリキュラムが本当にどうして不具合なのかというあたりがきちんと論点整理がされて出てきた上で、資格との兼ね合いを含めて、これから社会のニーズが求めている看護師をどう教育するかという、それこそグランドデザインのところにつながっていくというか、やっぱりそういうベースの考え方をしっかりしていかないと、ちょっと違った方向に行くのではないかなと思いまして、ずっと聞いておりました。

【倉田委員】 私は、他のコメディカルの学生たちと比べて、看護学校に行っている方たちを見てみますと、やはり全然違うなと、モチベーションが高いなと、いつも思っています。多分人のために役に立つにはどうしたらいいのだろうかという、そのベースの考え方が一番しっかりしているのではないかと思って。国家資格はどの時点で授けるかというお話が出ていましたが、彼らならいつでも授けられるんじゃないかなと思って見ています。

【中山座長】 ありがとうございました。座長のほうから、1つ、坂本委員のほうに確かめたいのですが。坂本委員は前回から、大学教育を看護師課程といいますか、看護師の免許を取る課程だけにしたほうがいいという主張をされているのですが、その中に、今日の議論がありましたように、看護師の役割の中に疾病の予防とか、そういったものを含めてあるのですが、今の大学のカリキュラムですと複数の免許が入ってきてしまうので、何かがんじがらめになって十分思うような形にならないということだと思いますが、看護師の課程の中にも相当保健指導のようなものとか、疾病を予防したり、あるいは健康を維持したりとか、そういう部分は入るというふうに考えていいのでしょうか。ちょっと、そこだけコメントくださいますでしょうか。

【坂本委員】 私は、実は保健師と、看護師と、助産師を持っています。中山座長がおっしゃることはそれはもちろんそう思います。看護師については、先ほどおっしゃったような幅広い教育はきちんとした学問体系の中でやっていくべきだというふうに思います。内容は4年間の中で看護師の教育をきちっとベースにして行い、それを基礎教育とすべきだと考えます。看護師というと、また職業としての看護師というふうに言われますが、学問体系されたものをきちっと幅広く、そして、深く。そして、もう少し看護学とともに、社会学とか、もっと他の学問をも入れていくべきだと思います。それはなぜかといいますと、私が病院に勤務していたとき大学卒の看護師や、養成コース卒の看護師にも会っていろいろかかわってきました。チームで仕事をしていくときには、もっと深く相手のことを理解したり、患者さんのことを様々な方面から分っていこうとする力、そういうものが必要であると思いました。
 それから、コミュニケーションという名前で呼ぶと分りづらいのですが、相手の状況を見て、いかにそれを解決していくかということの能力、それは大学教育の中でも大変重要であるし、養成学校でも重要だというふうに思います。ここは大学を語るところですから、大学の中ではそういう意味ではきちっとそこをやるべき。そして、もっといろいろな教養的なものを入れるべき。いいご意見をいただきましたが、看護師は目的意識が強くて、大変すばらしい。他のコメディカルの人たちもそういうふうにしていただきたいというようなことを、お話を伺いましたが、私自身が見てきた中では、まだある意味では狭いという考え方もあります。もっと深められるようなゆとりをもった教育をやっていくべきだと思います。
 私はずっと助産師をやってきましたが、助産学と、保健師の実習をしましたが、きつかったと思います。助産学は今大学院の方向に行っていますから、平澤委員がおっしゃった話の中でも、いい成果が出ていると思います。
 次、保健師ですが、保健師につきましては、公衆衛生的なことや、その地域を査定するとか幅広い見方が必要で、看護大学の中で学んできただけでは、自らがやってきたかかわりをどのように分析して、どのように地域に還元していくか、何がそこに隠されているかというところまでは、教育されていないのではないか。そういう意味では、保健師に必要な力はそこだというふうに思いますし、これから、私たち日本の医療において、予防において求められる力に対し、もう少し力をつけていくべきだと思います。
 さらに、一番今問題なのは、大学の4年間の中で保健師と看護師を行っていくことにおける現場の大変な疲弊です。保健師協会から臨床現場は大変疲弊しているという申し入れ書が出ました。このようなことを考えると、現状のように保健師の教育をすべての学生に4年間の中でしていく事が本当にいいのかどうか。患者さんにとって、受ける人たちにとって、国民にとって、学生にとって、という視点から考えていくと、ここで厚生労働省での検討会から話してきたプロセスを踏まえて、何らかの形で教育の改革をしなければいけないと思います。これは、松尾委員がおっしゃったとおりで、何らかの形でやっぱり変えていかなくてはいけないという意識はここでは一致しているのですから、次は、何と何と何というふうに具体的に、この委員会で決めていっていただきたいなと思います。私は看護部長をしてきましたし、今は大学と看護協会に籍をおいていますが、臨床現場においても教育現場においても大変な問題を感じております。

【中山座長】 ありがとうございました。だんだん時間の問題がありまして、今どちらの手が……。ちょっと南委員に最後、コメントをもらってというか、その前に発言したいですか。

【小山委員】 村嶋委員がずっと言い続けておられる「保健師」と、今の大学新卒が受験資格として持っている保健師とは、相当能力の違いがあると思います。一人で地区診断ができるような形では卒業させていませんし。坂本委員が言われたことにも関連ありますが、求められるものが何かというのは、まずどこ段階でライセンスを出すかということを、先程、医学教育を例に出されましたが、それについてはどこかの時点できちんとやらないといけないと思います。これは保健師だけではなく、看護師でも然りです。看護師は診療の補助という定義があるにもかかわらず、診療の補助行為は実習期間には学生はあまりできませんので、そこのところもある程度は「何が」「どこまで」という、どのレベルでライセンスを出すかの合意を得る必要があるかと思います。
 それから、村嶋委員がおっしゃるそのような高いレベル、大学院レベルの公衆衛生看護師は、今の保健師と同じ名称でいいのだろうかと思うのです。といいますのは、保健師の免許をもつ人たちが今はもう十数万人になるでしょうか、毎年1万人以上の新卒の保健師が出ますが、その人たちと、大学院を出て、もっと政策やいろいろなことを学んだ高いレベルの保健師とは、名称が一緒でいいのだろうかというのは、ちょっと危惧します。大学院で学んだというクレジットをあげて、いわゆるAPN、Advanced Practice Nurseではないかと思いますが、同じでいいのでしょうか。

【中山座長】 多分続いていくので、少し切りたいと思います。いいですか。今、私も思わす南委員と言ってしまいました。南先生は、今日は有識者として来ていただいているんだと思い直しておりますが、南先生のほうから全体的な論議を聞きましてのコメントをいただきまして、座長としましては着地点を少しは見出したいなと思っていますので、よろしくお願いいたします。

【南意見発表者】 それぞれの体験してきたものが違うと、本当に意見がいろいろ違ってくるのだなというふうには改めて思いました。また、背負っている組織がありますから、それぞれがそれぞれの組織でおっしゃっていることによって違っているのだなというふうには思います。
 ただ、お聞きしていて、私は、どうか世界の流れを日本が見て、そして、その流れの中で看護職のある意味の普遍性を求めて欲しいというふうに、本当に思います。そういう意味で、なぜアメリカで、あれでできているのかというのは、ぜひ文科省で特別研究でもつけていただいて、調査団でも送って見てきていただけたらと思うし、ヨーロッパがあんなに技術教育をやっていても何が問題なのかということも、見てきて欲しいというふうに思います。
 そういう意味からいくと、私は今日が最後なので自分の私見を言わせていただきますと、自分が教育してきた経験から見ると、確かに保助看法の指定規則によって大学が振り回されている部分というのはあるし、読みかえ、読みかえはおかしいという、皆さんの論点の根拠にもなっているのだと思います。大学は、看護経済学としても、どういうカリキュラムのあり方がいいかという議論をずっとしてきていたし、そして、それぞれが努力して卒業生を送ってきたし、その卒業生に対して、私たちが、自信がありません、あの人たちは役に立っていませんというものではないと思います。それぞれが、それぞれの場でいろいろな方々のサポートを受けたとしても、頑張って保健師になり、大卒の助産師になってきていると思います。
 何か今日お話を伺っていて、村嶋委員と、助産師さんの平澤先生のを読みますと、比較しているものの根拠が、先ほどから保健師の場合みたいに出てきていたのですが、違うなというふうに思うのです。保健師の場合は、専門看護師で行政の保健師になった方は非常に少ないのです。だから、実績がないのです。大学院修了者はどこのレベルまで行けるかという実績がない。ところが、助産師の場合は、専門看護師のレベルの修了者で、かなり実践現場にいる人たちもいるのです。だから、そこのレベルと、基礎教育としてのレベルとの識別をきちんとしたらどうかと、私は思います。先ほどおっしゃられたように、統合カリキュラムをどこまでしていくか。免許との絡みの中で実習等の問題等はありますが、私は厚労省のときも申し上げたのですが、保健師とは行政保健師だけではないでしょう。保健師というのは、多様な場で保健師という名称を用いて保健指導をするわけですから、別に行政保健師だけを育てるわけではないでしょうと。例えば、保健所長になるような人たち、私はぜひ保健師になってもらいたいと思うのですが、そういう人たちは大学院できちんと教育を受けるべきだし、リーダーたちはそういう人たちが何人も出て欲しいというふうに思いますが、基礎免許のレベルで本当にそれが必要だろうか。
 私たちは、保健師も、助産師も、マスが必要です。特に助産師で、私が申し上げたいのは、世界から見ると日本の助産師免許というのはすごくユニークなのです。それは何かというと、病院助産師も、普通アメリカなどでは産科看護師が……。産科看護師と言うのはおかしいですが。看護師の免許を持っていたら、ある程度のことがICUでも、CCUでもできるように技術ができるのですが、日本の保助看法では、助産師でないと業務独占だから、できないのです。それは日本のいいところでもある。だから、あのことを守ろうと思えば、ある一定の数の助産師が必要なのだと思います。そこが基礎なのです。開業したり、院内助産所を開いたりというような人たちは、ぜひ大学院の教育をきちんとしてもらいたいというふうに思います。
 坂本委員がおっしゃっていた教養の問題ですが、アメリカは、従って教養課程にものすごい単位数を置いているのです。専門基礎もありますが、確かに教養に置く必要があると私は思います。ただ、教養というのは4年間だけで得られるものではない。人の素養というのは、やっぱり長い基礎、どういうふうにして自分の教養を高めていくかのきっかけが大学の中で得られたら、一生涯をかけて教養を深めていく。看護職というのは、特にそういう職業だというふうに思っています。したがって、基礎をどこまで置くかという議論をきちんとする必要があるのではないかというふうに思います。
 今日は、機会をいただきましてありがとうございます。

【中山座長】 どうもありがとうございました。多分、テーマとしましては、南先生からのプレゼンテーションのなかで、基礎教育と、免許と、実践のはざまでというのがあるのですが、それに近いようなものが一番大きな課題として残ったような気がします。
 それから、また、今日新たに出していただきました国家資格、国家免許というのはどのくらいの時点で出すのか。それは、実践ができるレベルなのか、基礎の基礎でいいのかということの問題も、新たな視点で出てきたのではないかなと思っております。
 もう一つ出てきたのが、保健師。保健師という名称を用いて保健指導を行う者となっていますが、これは、場は規定していないわけですから、そうなってきますと、行政で働く保健師だけではなく、様々な場でも保健師として活動すると。そうなってきたときに、どの時点での能力というか、免許が必要なのかということの問題も、今日は少し明らかになったのではないかなと思っております。
 それと同時に、これまで大学がずっとやってきた、統合化された2つの免許、3つの免許を入れたカリキュラムというものが、問題点だけではなくて、よかった点も含めて整理もするということで、新たな視点が幾つか出ました。それらを含めて、松尾委員から初めに言われていますが、もう少しグランドデザインを考えて、どういう方向に行くのかということを考えて、その中での議論の詰めがいるのではないかということが出てきたと思います。
 次回は、できるだけ、そのグランドデザインに基づくような形の議論が深まるようにしたいと思っておりますが、菱沼副座長、何か加えることはございますでしょうか。

【菱沼副座長】 ありません。

【中山座長】 ないですか。分りました。では、そんな形で次回をもちまして、その次回の状況で、あと1回でまとめられるのか、2回になるのかということが、懸念されているところですので、その辺も含めまして、事務局のほうにこの後のことにつきまして少し話をしていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

【小山田看護教育専門官】 ありがとうございます。次回はもう決まっておりますが、5月25日の月曜日、17時半からということで、今度は文部科学省の3階の講堂で開催を予定しております。お手元にお配りした資料5では、その次の第5回で第1次報告のまとめということで6月25日を予定しておりますが、前回お示しした資料の中で、予備日として6月8日をとっておりますので、先生、今ご懸念のあったように第4回で。

【中山座長】 先生方のほうは6月8日、何とか確保してくださっていますでしょうか。6月8日、何時になっていましたか。まだ時間は決めていませんでしたか。夕方ですか。5月25日は、17時30分から2時間やるということは決めています。今の議論の状況によっては6月8日、とにかく最後が6月25日になっています。これは資料5に出ていますが、21年6月25日の木曜日の15時30分から17時30分というのは入っているかと思います。ですから、5月25日の17時30分から19時30分と、6月25日の15時30分から17時30分とあるのですが、その間に6月8日を入れたほうがいいかどうかのところだと思いますが。

【小山田看護教育専門官】 済みません、前にお話ししたときには、6月8日の17時半から19時半を予備日としてお示ししましたが、先生方にはお断りしていませんので。

【中山座長】 どうでしょうか、とれそうですか。

【村嶋委員】 17時半だったら何とか。

【中山座長】 17時半だったら何とかとれそうですか。

【小山田看護教育専門官】 17時半です。この、今日と同じ時間帯。

【中山座長】 時間帯ですね、6月8日は先生方は準備してくださっているようですので、25日の議論にもよりますが、6月8日も予定させていただいて、25日、議論が足りないようでしたら、6月8日にもう一度させていただき、最終まとめにいきたいと思っております。
 この前話しましたように、できるだけ具体的に何か1つでも勝ち取れる、実行できるようなことをしていかないと、現実問題がありますので、そのことも含めまして結論を出していきたいとも思っております。一応中間取りまとめにはなっておりますが、方向性はきちんと示せるようなものにできればと思っています。では、よろしくお願いいたします。それでは、小山田専門官のほうにもう一度返します。

【小山田看護教育専門官】 では、確認でございますが、次回は5月25日の17時半から、文部科学省の3階講堂で開催を予定しております。どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします。

【中山座長】 では、ありがとうございました。多分言い足りないことがあった先生方もいるのではないかと思います。もし何か事前に準備するものがありましたら、5月25日ですから、少し前までに小山田専門官のほうに資料等を提出していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

お問合せ先

高等教育局医学教育課看護教育係

小山田看護教育専門官

看護教育係 中村 先立 鎌倉
電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2906)、03-6734-2508(直通)

(高等教育局医学教育課看護教育係)