大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会(第2回) 議事録

1.日時

平成21年4月20日(月曜日)14時~16時30分

2.場所

学術総合センター 2階 中会議場1

3.議題

  1. 統合化したカリキュラムに関する有識者からのヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

中山座長、菱沼副座長、秋山委員、倉田委員、小山委員、坂本委員、佐藤委員、高田委員、富野委員、西澤委員、羽生田委員、平澤委員、松尾委員、宮﨑委員、村嶋委員、横尾委員

文部科学省

戸谷大臣官房審議官(高等教育局担当)、新木医学教育課長、小山田看護教育専門官

オブザーバー

野村看護課長(厚生労働省医政局)

意見発表者
森岡幸子意見発表者(大阪府健康福祉部保健医療室地域保健感染症課参事)
桑畠麻未意見発表者(江東区城東保健相談所保健師)

5.議事録

【小山田看護教育専門官】 では、定刻になりましたので、ただいまより第2回大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会を開催させていただきます。秋山委員がまだお見えでありませんが、ご出席の予定と伺っております。早速、座長に司会をお願いしたいのでが、本日は、ご発言の際はお手元のマイクのトークのところを押してご発言いただき、ご発言が終わりましたら切っていただくようによろしくお願いいたします。では、座長、よろしくお願いいたします。

【中山座長】 皆様、お忙しい中ご出席くださいましてありがとうございました。私、先週来、声の出ない風邪を引きまして、今日は何とか出ておりますが、大変聞き苦しい点があるかと思いますがお許しください。声が出なくなったら、副座長の菱沼先生にかわっていただくようにお願いしようと思っていますが、頑張っていきたいと思います。それでは、第2回の大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会を開催することにいたします。
 今日は、関係者からのヒアリングを実施したいということでプレゼンテーションをしてくださる方をお二人お招きしております。皆様にはヒアリングの後に忌憚のないご意見を交わしていただき、よりよいものに深めていきたいと思います。
 先に事務局のほうから、今日配られました資料とか、あるいは委員の出席状況等確認したいことがあるかもしれませんので、そのことから始めたいと思います。よろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】 では、改めまして事務局からも、本日、皆様お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。始めに、委員の出欠状況ですが、本日は前野委員がご欠席と連絡をいただいております。秋山委員は、ただいま遅れておられるということです。高田委員、松尾委員もちょっと遅れておられるということです。次に、前回の会議でご欠席された委員をご紹介させていただきたいと思います。納得して医療を選ぶ会事務局長の倉田委員でございます。

【倉田委員】 倉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】 次に、本日の意見発表者2名の方々をご紹介させていただきます。始めに、大阪府健康福祉部保健医療室地域保健感染症課参事の森岡幸子さんです。

【森岡意見発表者】 森岡です。どうぞよろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】 続きまして、江東区保健所城東保健相談所で保健師としてお勤めの桑畠麻未さんです。

【桑畠意見発表者】 桑畠と申します。よろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】 引き続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。1枚目に会議次第がございまして、座席表もお配りしてあります。続きまして、意見発表者の先生方からいただいた資料が資料1、資料2とあります。資料1はホッチキスでとまっているもので、資料2は1枚のものになっております。さらに、資料3は宮﨑委員のほうからご提出された資料で、資料4が村嶋委員からご提出いただいた資料でございます。資料5は、前回の会議で要望いただきました資料の中で準備できましたものを5-1から5-5として整理してお出ししております。飛びまして、資料6として前回の討議内容を踏まえて今回ご議論いただきたい点について案をお示ししたものを論点案として出させていただいております。資料7は、当面のスケジュール(案)でして、最後に参考資料として前回の議事録をおつけしております。不備等ございましたら事務局までお知らせください。以上です。

【中山座長】 ありがとうございました。資料はございますか。大丈夫でしょうか。資料のほうがありましたら、この資料、前回の皆様方から希望されたものも含めまして今日は用意していただきましたので、始めにこの資料についての説明をしていただきたいと思います。小山田専門官よろしいでしょうか。

【小山田看護教育専門官】 では初めに、資料5のご要望いただいた資料のことに関して最初にご説明をさせていただきます。資料5-1から5までをご覧いただきたいのですが、資料5-1は、統合化したカリキュラムにおいて保健師科目と看護師科目を統合して教えている単位数についてデータが欲しいということでした。全数を調べることが困難でしたので、一部抽出したデータから統計的なものを作ったので、それを資料化したものでございます。使ったデータが平成20年5月の調査のものですので、単位数は旧カリキュラムの単位に則った資料でございます。国公私別に無作為に抽出した20大学の設置主体別及び全体の単位数の平均値を示しております。縦から、国立が5大学、公立5大学、私立10大学の全体20大学を抽出したものでして、まず、卒業要件単位として平均値をそれぞれ示しております。国立が124.8、公立が127.2、私立が128.2ということで、そのうち別表3と別表1の単位数をそれぞれ横に示しておりまして、別表3というのが看護師の教育内容を示した表になっておりまして、旧カリキュラムでは93単位と示されております。それから、別表1が保健師の教育内容を示した表になっておりまして、旧カリキュラムでは21単位となっております。それぞれが大学で計上している単位数の平均が下に示されております。さらに、別表1の単位の中で講義と実習に分けて、それぞれ看護師の教育内容とあわせて行っている統合科目と保健師の科目だけ単独で行っている科目でどれぐらい単位数が計上されているのかというデータを横に示しております。実習のことだけ見ますと、国立は実習を保健師科目で単独でやっているものが0ということで、実習については保健師と看護師とそれぞれ統合した実習が行われている。今回抽出した5大学はみんなそうだったという結果になっております。公立は同じ意味で0.8ということで1単位弱、それから私立は2単位が保健師の単独の実習単位として計上されているというようなデータになっております。下に2つグラフをおつけしておりますが、その別表1で保健師科目だけ単独で単位をどれだけ計上しているのかというもののヒストグラムになっておりまして、講義のほうは単位数が多いので、データ範囲は0というところが0から4単位計上している大学で、5というのは5から9単位という形で、10から14、15から19、それから20単位以上とそれぞれの単位数を計上している大学が、この20大学のうち何大学あったのかというグラフになっております。単独実習単位数の分布というほうは、実習については単位数が多くなかったので、それぞれ0単位の大学、1単位の大学、3単位の大学、4単位の大学ということで大学数が計上されているという表になっております。
 引き続きまして、資料5-2をご覧ください。資料5-2は、保健師の継続教育に関する資料をというご要望でして、とりわけ新人期の継続教育ということでご要望いただいたのかと思いまして、新任保健師の継続教育に関する資料ということで3枚まとめさせていただいております。いずれも厚生労働省の健康局のほうから資料は頂戴しております。保健師の現任教育については、1枚目にお示ししたように体系化をされているということでして、それぞれの吹き出しの形で、例えば職場内研修については、指導者研修は一部の自治体を除きほとんど行われていないというように健康局の保健指導室のほうでそれぞれの体系化された研修がどんな形で行われているのかということを少し補足していただいている資料が1枚目でございます。2枚目に両面になって、ちょっと小さい表で大変恐縮なのですが、専門技術職員の分散配置における活動体制及び人材育成体制に関する調査結果の抜粋をおつけしております。こちらは、2007年に厚生労働省の市町村保健活動の再構築に関する検討会というもので調査をされた、市町村でどのような継続教育が行われているのかのデータの抜粋でございまして、1枚目のQ8、新任保健師のOJTを実施しているというところを見ますと、「はい」が39.6%、「いいえ」が60%ということで、OJTに関しては4割近いところがなさっていらっしゃるということですとか、Q10を見ていただくと、Off-JTを受講させる仕組みがあるというのが新任期には83.5%ということで、OJTに比べてOff-JTの仕組みが多いということがこちらから見ていただけます。また、裏面にQ16として保健師の資質向上にかかわる課題ということで、人手が足りないであるとか、予算が足りない、スーパーバイザーがいないといった点が多くの市町村で「イエス」と回答されているようなことが見ていただけます。そして、次に表1、地域保健従事者の1年目の教育目標ということで、新人の保健師さんの1年目の目標としてどのようなことが期待されているのかということで、同じ検討会の報告書の中に資料としてついていたものを今回お出しいただいております。継続教育に関する説明は以上です。
 それから、資料の5-3から5-5につきましては、厚生労働省医政局看護課から資料を頂戴しておりますので、オブザーバーとしてご参加いただいている野村看護課長からご説明をいただきたいと思います。

【野村看護課長】 看護課長の野村でございます。それでは、資料5-3、第六次看護職員需給見通し以降の資料のご説明をいたします。看護職員需給見通しにつきましては、現在第6次でございます。昭和49年から看護職員の需給に関しては計画的にこういったものを策定し、年々供給量の増加を図っているというところでございます。第6次では平成22年までの5年間の需給見通しを立てておりまして、平成22年には需要は140万人になるという数値でございます。それに対して供給が139万になる予定でございます。100%に若干欠けるといったところです。現在、平成18年の実績につきましては精査中でございます。ですので、今回の5年間の見通しの成果といったものが今の段階でご説明することができない状況です。また、平成23年からの需給見通しにつきましては、今年度検討会を設けまして、その後の需給見通しについても引き続き策定する予定で検討を進めてまいりたいと考えております。次のページが、この中から助産師について特に取り出したものでございます。助産師につきましても需要と供給の差が、一番下にありますが、平成22年には97%、若干不足しているという状況までいくのではないかと予測をしておるところでございます。次のページが、それを18年と22年を比較して都道府県ごとにどのような状況かというのを見ております。北海道は22年までに95%に達する状況ですが、青森、岩手等は100%を超える予定というようなことで、都道府県によって若干差がございます。少ないところは73%、沖縄ですとか熊本などはそういった数値が挙がっておりますが、全国平均では97%となっていますが、都道府県ごとではそれぞれ差がある見通しが立てられたところでございます。それから、次のページが新卒保健師の就業場所についてでございます。これは、上が保健師の養成所を卒業したもの、下が大学で保健師の資格を取ったものという数値になっています。上の養成所を見てまいりますと、平成20年を見ていただきますと、卒業者数が965名、そして「保健師として就業」というのが「保健所」から並んでおりますが、就業のところの真ん中ぐらいに計がございます。これが保健師として就業した合計ですが、385人保健師として就業しているということです。ですので、卒業者数の中で占める保健師として就業した割合は40%になっています。それと大学です、大学は卒業生が養成所の約10倍と9,900人卒業しておりますが、保健師として就業した者は770人、パーセントでいきますと7.8%といった数字で、1割を切っているというのが例年の状況でございます。次のページが、それを同じように助産師で見たものでございます。助産師の養成所と大学でございます。助産師の養成所につきましては、平成20年で959人卒業していて、そのうち、かなり多く、899人が助産師として働いています。しかし、大学を見ますと、これは実は卒業者数がすべての数字になっておりまして、助産師は大学の中でごくわずかな人間が選択性になっておりますので助産師の資格をとっております。ですので、この何割が助産師としてというような比較はできない状況ですが、大学では、平成20年では助産師としては555人が助産師として働いたということになっております。ですので、保健師の養成所と大学の割合と比べますと、助産師については養成所のほうがいまだに助産師を卒業生として出している割合は多いというところでございます。そういった状況が保健師と助産師で大きく違うといったところでございます。
 続きまして、医療施設に従事する助産師数でございます。前回の検討会では周産期医療という注文をされているかと思うのですが、そういった周産期だけに集中した統計ではございませんでしたので、医療施設における、病院については病院報告、診療所については医療施設調査、(注)の2と3にありますが、そういった調査から計上したものでございます。病院も診療所も助産師数は増加傾向にあるというところです。合計で2万5,431人が、助産所も含めまして従事されているというところです。病院につきまして、診療所もそうですが、看護師として就業している者は助産師資格を持っていても看護師というカウントの仕方をしておりますので、ここで書いてある数値は助産師として働いている人数ということになってございます。
 続きまして、資料5-5でございます。看護基礎教育の充実に関する検討会、平成19年3月に報告書を出していただいております。この検討会がもととなりまして、今年度、平成21年度からカリキュラムの改正が行われております。この上の四角で書いてありますのが改正に至った経緯でございます。カリキュラムの改正は10年以上経過していたといったことから改正をしたということです。もう一つは、新人看護職員の臨床実践能力の低下が顕著だった。それで、早急な対応が不可欠だという考え方から、このカリキュラムの改正をしたということです。平成22年には施行されていますので、内容については十分ご存じかと思いますが、看護師についてはその実践能力を強化するために統合分野、統合科目といったものを創設いたしましたし、それから3点目にありますが、卒業時の到達目標といったものも明確にいたしました。保健師については、臨地実習の充実、単位を増やしました。そして、保健福祉行政教育も1単位増やして強化しておるところです。助産師についても、臨地実習の単位を増加したといったカリキュラムの改正が行われたところです。保健師、助産師についても卒業時の到達を明確にしてございます。次のページ以降が、これにかかわった方々、検討会のメンバーが最初のページにありますし、そして、看護師、助産師、保健師、この3つにつきましては検討会のメンバーに加えて、ワーキングチームとしてそれぞれの専門分野の方々に加わっていただいて議論を進めたところです。保健師、助産師についてのワーキングチームはこういったメンバーでご議論をいただいたところです。そして、このときは21年度カリキュラム改正となった内容についてご議論いただいたと同時に、次のページにございますように、保健師として、助産師としての教育の望ましい教育とはといったことも議論いただきまして、望ましい単位数といったご報告もいただいております。資料4と上にありますが、保健師の望ましい単位数は、トータルしますと40単位といったことが出されておりますし、また次のページの資料5となっていますが、助産師については34単位というのが望ましい単位数として議論した結果出されたというところでございます。私からの説明は以上でございます。

【中山座長】 ありがとうございました。ここまでの説明で、説明が不足だから分からないという方がありましたら質問を受けます。ディスカッションは後にしたいと思います。先に進んでよろしいですか。何かどうしても分からないことがありましたら。よろしいですか。それでは、まだたくさん資料を出されているようですので、そのことについて少し説明していただきたいと思います。この前、保健師の就業者の就業パターンについて、大卒とその他の養成所卒の看護師の待遇とか能力の違いについてはデータがないということだったので、委員のほうから補足していただけることはないかとお願いしていましたら、保健師のことにつきまして村嶋委員と宮﨑委員のほうから資料を出していただいています。そのことについての説明をお願いしたいと思いますが、宮﨑委員のほうからお願いできますか。

【宮﨑委員】 資料3をご覧ください。前回の会議で保健師としての就業というのは、もちろん卒業直後、先ほど野村課長のほうからも1割を切っているというお話がありましたが、もちろん卒業直後というピークと、それから当面は看護師として就職しながらも、その後、保健師として就業していくもう一つのピークがあるというお話を前回いたしました。その根拠資料として、自大学の例で恐縮なのですが、なかなかこういった資料がございませんので、あえて千葉大学の例を用いてご紹介したいと思います。資料3の1ページ目です。この棒グラフは、これまで開設間もない1期生から31期生というのがこの21年の3月に卒業した学生たちの動向です。大体近年は、卒業直後は保健師に特化してお話をさせていただきますと、今年はちょうど1割なのですが、近年保健師として就業を希望しているにもかかわらず、なかなか就職先が十分でないという状況から1割を切っている状況が近年は見られております。それを円グラフにしたものが裏のページになりますが、これは1期から31期までを合計していますので、近年の状況というよりはこれまでの傾向ということでご理解いただけたらと思います。これまでの傾向ということで見てみますと、保健師として就業している者は全体の16%という状況です。そして、次の棒グラフですが、これは卒業してから当面はナースとして働く者が6割以上の現状ですが、その後、卒業後の年数を経るごとにどういう免許資格を使って働いているのかという動向を見たものです。これを見てみますと、大体7年、8年目ぐらいでナースとしての就業が先細りする中で、ですが、やはり看護職としてのキャリアを続けるという選択肢の一つとして保健師の資格を使って就業を続けていくという状況が見られていきます。ですので、全体を見てみますと、これは24年目までの動向ですが、大体20%を超えるぐらいの人たちが保健師として就業していくという全体的な傾向になってまいります。横断的な状況を見たものが裏の円グラフでございます。ですから、これは24年たった段階で、その時点の、1年目の人もいれば、これから24年目に差しかかるという人もいるのですが、数年前の状況ですが、それを横断的に見た場合の現況というところで見てみますと、保健師として就業している人が22%と、そのような状況だということです。以上です。

【中山座長】 ありがとうございました。今、千葉大学のことを例にしまして、24年ぐらいたったところでどうなのかということをお話いただきました。それでは、村嶋委員のほうからご説明をお願いしてよろしいでしょうか。

【村嶋委員】 資料4をご覧いただきますようにお願いいたします。日本保健師連絡協議会が3月20日付で保健師教育のあり方に関する協議会としての見解をお出しいたしました。この日本保健師連絡協議会と申しますのは、社団法人日本看護協会、全国保健師長会、全国保健師教育機関協議会、産業保健師活動研究会、日本公衆衛生看護研究会からなる協議会です。職能団体に加えて、地域保健から産業保健、また教育機関や研究者である保健師から構成されている協議会でございます。昨年3月に発足いたしまして、保健師活動の質の向上に向けて様々な活動を展開しております。私は、全国保健師教育機関協議会の会長としてこの協議会に入り、この4月から代表幹事を務めております。この見解は今年3月20日に日本保健師連絡協議会の集会を開き、構成員の合意を得たものでございます。3月までの代表幹事、日本看護協会の井伊久美子常任理事とともに文部科学省、厚生労働省に提出したものでございます。要点をご説明させていただきます。ページをあけてください。
 前文でございますが、保健師が取り組む健康課題は複雑化し、実際に対応する事例も多様な問題を抱える困難事例が多くを占めるようになってきております。保健師の業務も拡大しておりまして、健康危機管理や虐待問題等生命の危機に直面して対応する領域、あるいは介護保険や障害自立支援等の福祉領域においても保健師の機能が求められております。2段落目でございますが、一方、保健師の教育は、9割以上が看護系大学で統合カリキュラムにより実施されております。看護系大学の増加に伴い、学生数が急増し、保健師の教育は内容が希薄になり、実習場の確保すら困難な状況にあります。また、実習内容についても、保健師として就職後すぐに必要な支援技術(例えば家庭訪問、健康教育)を体験させていない大学が25%以上あるという調査報告もございます。先ほど小山田専門官から見せられました資料で、保健師としての実習が単独はゼロだという国立大学が5つもあるということで愕然といたしましたが、そのように実習が大変希薄になっております。保健師の質を保証し、専門性を発揮して公衆の生を護ることが出来るようにするためには、保健師の教育制度を再構築することが緊急の課題でございます。私ども日本保健師連絡協議会は、保健師の専門性を確保し、強化していくことを目指しております。この現状を憂い、保健師の教育は保看統合カリキュラムではなく、4年制大学の看護師基礎教育修了後の2年あるいは大学院の教育課程で行うことが必要だと考え、推進いたします。その理由を以下に申し上げます。次のページでございます。
 まず1番でございますが、保健師が担う業務は、昭和16年に保健師規則が制定された当初より、広範多様でございました。その時代時代の社会が生み出す先鋭的な健康課題に予防的に取り組むという性質を持ちます。常に新たな健康課題に対応することを期待され、保健師が用いる、支援活動方法は変化する社会の中で、その社会的ニーズに対応して進化し、より高度になっております。5行ほど下の右側に、価値観の多様化した少子高齢社会において、保健師による個々人への生活支援はますます重要になっております。同時に、そのための仕組みづくりやネットワーク化に保健師が携わることにより、多くの人々の健康保持増進に貢献してきております。保健師は、保健サービスを提供しながら、その保健サービスの提供体制を同時に構築していく専門職です。今日のように多様な問題を抱える社会において、このような2つの活動を同時に行うことができる高度な実践能力を有する専門職業人の育成は不可欠です。このような専門的な能力を養うためには、保健師に特化した教育が必要です。
 2番です。保健師が活動する主な領域は、保健予防領域でございます。1行ほど下でございますが、「保健師が業とする保健指導」、これは保助看法の用語ですが、この保健指導は、保健指導が必要となる状況を生み出した社会のあり方そのものの問題を見出し、その問題に対処、解決していくために、人々が主体的に、かつ組織的に取り組むことができるように支援していくことを意味しますし、そこに特徴がございます。このため、保健師は在宅医療の推進体制の整備にもかかわりますし、感染症対策では個人を守ると同時に、社会を守る機能も持ちます。このような自立した専門性を持つのが保健師でございます。このような保健師の機能を考えますと、保健師教育を看護師の基礎教育の一部に含めて行うことには限界がございます。
 3番です。保健師に求められる能力は、人々の健康課題を社会的条件の中でとらえ、顕在化した健康課題のみならず、潜在している健康課題を予測し、問題の解決または予防のために人々とともに組織的に取り組んでいける総合力でございます。この基盤を養う保健師教育では、個人、家族、集団をおのおの支援するだけではなく、地域、職域全体にかかわる活動の展開方法を体系的に学ぶ必要があります。そのためには地域保健及び産業保健領域の多様な場で実習することにより、おのおのの場の特徴に応じた支援のあり方を体系的に学ぶなど、基礎的な実践力を培う際にも十分な実習が求められます。
 4番です。保健師教育は、統合カリキュラムでは実施できません。特に看護系大学では、看護師教育97単位に一般教養科目30単位を加えるだけで、卒業要件の124単位を超えます。そこに23単位の保健師教育を組み込むこと自体に無理があります。保健師教育に必要な23単位という最低限度の単位すら教えられていない現状を容認することはできません。3行ほど下でございますが、このままでは、保健師の質が担保されないため、必要な単位数を確実に確保し、保健師教育に特化した教育ができるよう、見直す時期に来ております。保助看法では、現在保健師教育に必要な期間は6カ月となっておりますが、実際には保健師教育は1年間かけて行われてきました。しかし、今、保健師には高度な実践能力が求められており、担当者によると、この1年間の教育でもとても不足を感じておりますし、また、その不足も指摘されています。今後、保健師教育は2年あるいは大学院の教育課程で行われるように改めるべきでございます。これは日本保健師連絡協議会、すなわち看護協会という職能団体の他に、地域保健福祉や産業保健に働く保健師、保健師の教育機関、公衆衛生看護研究会という保健師からなる団体の総意でございます。

【中山座長】 ありがとうございました。座長と副座長は冷え切ってきておりますが、皆さん、お部屋の状況はいかがでしょうか。ちょっと温度を上げていただいてよろしいでしょうか。今、資料の説明をしていただきましたが、この資料に基づいてディスカッションをするのは少し後にしまして、今日は現場から本当にお忙しい中、私たちのために2人の方々に来ていただいております。その議事のほうに入りたいと思います。今日来ていただいているのは、ヒアリングという形ですが、現場の声をプレゼンテーションしていただきまして、私たちの討論に反映していきたいということです。お1人は保健師実習の受け入れ状況や保健師実習の実際についてということで、森岡幸子さんです。大阪府健康福祉部保健医療室地域保健感染症課の参事としてお仕事をされていますが、大阪も大変大学の数が増えまして、資料の中では不十分だということが大分言われてきたのですが、その中で実習を何とか十分になるようにと、調整を大変苦労されております。森岡さんのほうから保健所実習の受け入れ状況ということで、実際に保健所の実習がどのように行われているかということについてのお話をいただきたいと思います。それから、もう1人は大学で統合化したカリキュラムのもとで教育を受けて、保健師として働いていらっしゃる桑畠麻未さんに、実際に受けた教育がどういうことなのかという、私たちにとっては多分教育の評価をされることになると思いますが、保健師として就業した体験から見た統合化したカリキュラムについての話をしていただきたいと思っております。桑畠麻未さんは、江東区城東保健相談所の保健師さんです。よろしくお願いします。それでは、最初に森岡さんのほうからお願いしたいと思います。超えても構いませんが、大体15分をめどにしてお話しいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【森岡意見発表者】 ご紹介いただきました森岡でございます。本日はこのような機会を与えていただき、ありがとうございます。私は大阪府の保健師活動を統括する立場から、現在2つの大きな課題に取り組んでおります。1つは、保健師の現任教育の充実でございます。もう1つが、この地域看護実習の体制整備でございます。この2つは、これからの地域看護の担い手の確保に大きく影響するものであり、危機感を持って取り組んでいる次第です。本日は、全国保健師長会の立場から、大阪府域の臨地実習の現状を踏まえ、3つの内容で報告させていただきます。1つ目は、保健師教育における地域看護実習の受け入れの現状。2つ目は、保健所、市町村実習の具体的な内容。3つ目は、卒後の継続教育体制を踏まえ、新卒保健師に望む実践力ということで、ご報告させていただきます。
 それでは、資料1をご覧いただきたいと思います。大阪府の現状。保健師教育における臨地実習学生数の推移でございます。まず平成20年度の欄をご覧いただきたいと思います。現在、実習を受け入れている養成校はAからFまでの6校でございます。これにGからMまでの新設校7校が加わり、14校1,073人の実習を引き受けていくことになっております。14校の内訳は、看護系大学が12校、統合カリキュラム校が2校でございます。22年度から新設校の臨地実習が始まり、24年度には808人と、現在の2倍。25年度には1,073人と、現在の2.5倍の受け入れ数となります。14校1,073人を1施設当たりの受け入れ数に換算しますと、現在の受け入れ条件が、1人11日間、1グループ6人で換算しますと、府、保健所、市町村では1施設当たり6グループになります。現在、1施設当たりが二、三グループですので、6グループに増えることは現場の負担が大きくなり、現在の受け入れ条件であります実習日数や1グループの人数の見直しが避けられない状況です。現在でも、保健師教育としての実習内容が不十分な中で、今後の受け入れ数の増加は、実習の質の保証は困難となります。保健師教育としての地域看護実習は、既に制度的には破綻していると言わざるを得ません。全国保健師長会の調査でも、保健師に関心がなく、卒業するための単位を取るために実習に来ている学生が多く、モチベーションの低い学生により、学習意欲のある学生の学ぶ機会が奪われているとの実態が明らかになっています。学校によっては退学者が多く出て、実習をキャンセルするといった事態や、逆に定員以上をとったり、留年した学生を実習に来させるために予定以上の学生を送ってくるという困った学校も出ています。これらは、実習施設側のモチベーションを下げる要因にもなっています。保健師に関心がない学生にかかわる保健師の時間やエネルギーの損失は、住民サービスにも支障を来すとの厳しい指摘もあります。学校の実習指導体制は、ほぼ毎日カンファレンスに出席する学校から、最初と中間、最後のみといった学校側が選択して出席するなど、対応は様々です。学校によっては、指導教員不足で、かけ持ち指導や実習指導のみ非常勤を雇用するといった対応の学校もあり、また、地域看護の経験がない教員もおられるなど、学校側の指導体制についても課題があります。大阪府は、これまで臨地実習の受け入れに当たり、努力してきました。保健師も学生指導についてはとても大切だと考えております。しかし、これ以上は難しいということでございます。大阪府は、現在大阪市、東大阪市、堺市、高槻市と実習調整会議を置いて今後の受け入れ方策を検討していますが、ますます地域看護実習と呼べない内容となり、指定規則にある卒業時の到達度にはほど遠く、規則違反状態を続けていくということに妥協できないというところまで来ております。
 次に、資料の2枚目の臨地実習の内容について、大阪府のプログラムをご紹介いたします。大阪府では実習日数は3週間で、府内どこの養成校からも受け入れるように配慮しています。3週間とも週1日は帰校日となる学校が多く、保健所、市町村に来るのは計11日間です。統合教育が導入される以前は、32日から18日実施していましたので、11日しか実施できていないわけです。受け入れ人数は、大阪府の場合、市町村保健師数や市保健センターの規模等から、1グループ6人を限度としています。プログラムは、保健所と市保健センターで分担・協働し、全体のコーディネートは保健所が行っています。保健所管内が広い場合は、移動時間が負担にならないような配慮や、市町村によって家庭訪問に同行させることが難しい場合などは保健所が対応するなど、市町村を支援しながら柔軟に計画を立てて実施しています。実習内容は、4月に開催する実習施設指導者研修の際、それぞれに施設側と大学側が打ち合わせを行い、実習のテーマなど、学校の意向を確認してプログラムに反映しています。また実習の受け入れ時期は、市町村の主要保健事業等による施設使用の関係と、学校側の意向に沿って実習期間が限定されております。次の実習プログラムは、大阪府保健所と市町村で実施した事例です。まだ充実している例です。ですので、これより内容が少ないプログラム例もあるということです。まだ充実している例でも、保健師教育の実習としては不十分でございます。全22コマ中みずから実施できたものは3コマで、あとは見学が多くなっています。同伴訪問が2回のみで、あとはほとんど見学でございます。地区踏査や地区活動はあるが、その中で直接住民に接するわけではありませんし、学生の準備性も低いのが実情です。保健師の実習であれば、授業への参加、見学だけでなく、直接住民に接し、自分の対人支援サービスを磨く必要がありますが、実習に来ているのに、肝心の実施ができていないのです。また、事業計画や評価、事業以外の他のサービスとの関連性なども学ぶ必要がありますが、それもできていないのが現状です。11日間の実習では、保健師の技術適用が少なく、保健師が何をするのかつかみにくい。ひいては、保健師になってから専門職という意識が希薄という問題につながっていると考えています。次のページの実習プログラムをご覧ください。内容が少ない事例です。少ないというより、悪い事例と言ったほうが当たっているかと思います。実習日数は5日間で、学生数は17名です。家庭訪問も2名だけが同行見学し、その後、共有するためにカンファレンスを開くというやり方です。ほとんど講義で終了しています。これを臨地実習と呼ぶのか、大いに問題があります。3単位の実習というのは、1単位45時間掛ける3単位の135時間、1日8時間として22日から16日あるわけですが、あとはどこで実習しているのでしょうということになろうかと思います。卒業時の到達度について、参考資料としてつけさせていただいておりますので、ご覧ください。項目の19のところですが、「訪問・相談による支援を行う」、この項目は1人で行う項目として記載されていますが、先ほどの事例のように、ケースカンファレンスで同行訪問すら経験していないということは、とても保健師教育の実習とは言えません。実習人数が多いから選択にするということだけではなく、地域で保健師として活動していくために必要な能力を身につけるには、前項の23単位を読みかえることなく教授すべきと考えております。保健師は、地域の健康水準を底上げすることが仕事です。地域に責任を持ち、総合的に引き受けるものであること、保健師は地域看護を実践する専門職であるということが実習で認識できることが重要なのです。
 次に、3つ目の卒後の継続教育体制を踏まえて、新卒保健師に望む実践力について、具体例を紹介しながら、ご報告します。資料はございません。大阪府は、全国的にも卒後継続教育の体制は整っているほうだと思っております。特に地域保健法施行後、市町村保健師の配置が全国より後れたこともあり、卒後の継続教育については現任研修体制の整備、保健師リーダー育成のための市町村への派遣、人事交流など、組織的に努力してきました。また、最近の大学卒の保健師の現任教育のあり方についても、職場内育成シートの作成やマニュアル整備、全国保健師長会で取り上げている、見る、つなぐ、動かす、実践力の育成に取り組んでいます。しかしながら、それ以前の問題が大きくなっているのです。3つほど取り上げたいと思います。1つは、専門職という意識が少ない、アイデンティティーの問題があります。2つは、公衆衛生看護を担う職種であるという意識が希薄であるということ。3つ目は、離職する保健師が増えているということでございます。
 まず1番目の専門職という意識が少ない、アイデンティティーの問題があるということですが、ある自治体では、採用時にその新人の臨地実習での経験をすべて確認していますが、「家庭訪問は見学したのみ」が72%、1人で家庭訪問した例はゼロに等しいという実態で、見学の場合でも、その対象は極めて限られています。そこで、一人一人の経験を確認して、配属先に伝え、丁寧に新人教育の育成に取り組んでいますが、これだけ手厚くしても、なかなか育たない現状があります。例えば、1年経っても家庭訪問にうまく対応できない。先輩保健師が同伴訪問して、見せて、フォローしてというふうに育成しても、進んで訪問に行こうとしない。行って帰ってくるが、「断られるんです」と言う。話を細かく聞いていくと、玄関先で断られている場合が多い。コミュニケーション能力の問題なのですが、保健師の専門性が何なのか、職業意識が弱いと、コミュニケーション能力も育ちにくいと思われます。実習を通して、専門職としての保健師のイメージが育っていることがとても大切であると思います。結果として、保健サービスに苦手意識が出てくると、保健師としてやっていけるか不安になる。不安が高じて職場へ出てこれなくなるといった事例は珍しくありません。大阪府の保健所では、採用後10年間は地域を担当して、しっかり対人保健サービスを担える保健師に育成するようにしていますが、保健師サービス以外に企画へ行きたいとか、保健所以外に行きたいといった場合は、対人サービスが苦手でパソコンが好きだとか、ほとんどの場合、課題を抱えております。
 次に、公衆衛生看護を担う職種であるという保健師のイメージが希薄、マインドが少ないということです。保健師教育の本質を突いている事例をご紹介します。ある認知症の徘徊老人を保護した警察官が保健センターに連絡を入れました。窓口に出た保健師が、「それはうちではありません。地域包括支援センターです」とお返事しました。警察は市の高齢介護課へ連絡を入れました。課のほうでは、「地域包括支援センターは事業者へ委託していますので、そちらを紹介します」と、非常に笑えない話でございます。このように振り分けてしまう対応があちこちで増えています。このことを大阪の公衆衛生医師なども憂いております。保健師は、地域に責任を持つということが十分に理解されないままに、行政の枠の中にはまってしまっているのではないか。保健師は行政に身を置いておりますが、本来、行政の枠を超えて、地域に責任を持ち、総合的に引き受ける、公衆衛生看護を担う専門職であるという教育が弱くなっているのではないかと、とても心配な状態です。
 3つ目に、離職する保健師が増えてきているという実態があります。ある自治体のデータですが、ここ10年間で採用した保健師数162人中33名がやめています。その33名のうち、5年未満で20人がやめています。平均しますと、毎年15人から18人の採用がある中で、5人はやめているということになります。もちろん退職の要因は単純ではありませんが、傾向として、地域をもってあれもこれもの対応が現実的に難しいということが起こっているととらえています。採用されて、母子をやりたい、成人をやりたいといった特定の領域をやりたがる傾向があり、地域全体を底上げしていく実践者としてのイメージがつかないまま卒業して入ってきている。そこで、現実の厳しさについていけないということが起こっていると考えております。採用時に、現場にいかに負担になっているか、実は、採用された本人も負担が大きいということです。その流れの中で、新人保健師が現場に適応できず、退職していく事態が顕著になってきています。大阪府でも、ここ10年間の採用数92人中14人がやめています。そのうち5年未満でやめているのが12人です。それぞれのデータを見てみますと、共通の傾向として、2年目と4年目にやめていく事例が多いというのは、今後分析していく必要があると思っております。対人保健サービスの不得手な保健師が増えており、育てるほうも疲れてしまう。人事配置にも苦労している現状があります。従来、保健師は一度行政に就職すると定年までやめないと言われてきました。大卒保健師が増えてきた近年では、就職しても、一人前になる前に辞職してしまう保健師が後を絶たない。せっかく労力と時間をかけて新任者を育成しても、現実の厳しさに直面してやめてしまう者が増えているということです。保健師の活動技術やその本質を教育の中でしっかり教えておかないと、現場で求められることに対応できず、途中で挫折して定着していかないということです。
 以上から、現在の保健師の教育は、たとえ1年でも看護師基礎教育の上乗せが必要というのが現場の一致した考えです。これは、昔の保健師学校に後退するものではないと考えています。統合カリキュラム廃止は当然ですが、下手に選択制をするのではなく、ぜひ看護師教育に積み上げる教育にしていただきたいと考えております。保健師の所属は多様です。行政に限らず、産業保健領域でも一人配置が多いのが実情であり、実践のイメージが乏しいまま卒業しても育ちにくいということでございます。以上でございます。

【中山座長】 ありがとうございました。ただいまの森岡さんのプレゼンテーションに対して何か質問がございましたら。後でディスカッションにも加わっていただきますが、ここで今のプレゼンテーションに対するご質問がありましたら、ご発言いただきたいのですが、何かありますでしょうか。最後のほうはかなり厳しい現実を話されているようにも伺いましたが、どうぞ。

【羽生田委員】 学生のときの教育というものが大事だというお話は非常によく分かるのですが、現場を預かる立場として、現任教育をもう少し充実しようというお話は、今、あまり出てこなかったので、その辺をどう対応しているのか、お聞かせいただければ。

【森岡意見発表者】 先ほど小山田さんのほうから説明がありました保健師の現任教育の研修体系というものがございましたけれども、その都道府県の、資料の……。

【中山座長】 5-2ですね。

【森岡意見発表者】 大阪府の場合は非常に現任研修体制を努力して、保健所と市町村の保健師についても体制を同様に組んでおります。特に力を入れておりますのは、階層別研修ということで、新任期、中堅期、管理期ということで、このそれぞれの機能が発揮できるように、階層別研修に特に力を入れておりますが、中でも新任期の教育につきましては、新任期を育てるためには中堅期を育てないと育たないという問題がございますので、新任期、中堅期の現任教育体制を充実させ、集合研修も入れながら取り組んでいるということです。
 新しい課題といたしまして、今の大学卒で入ってこられる保健師さんの育成の仕方というのが、やはり我々の側にも課題がありますので、そこは新しい育て方ということを全国保健師長会でも取り上げていただいておりますけれども、十分ニーズを把握しながら、どういったやり方が一番いいのか。特に保健師活動を分かってもらうというところが、言葉ではなくて、彼女たちがどのように理解できるのかというところを、ワンクッションもツークッションも置いて、そこの使い方、保健師活動のコアの使い方を今作成しているところです。集合研修は体制整備できておりますが、職場の現任教育、OJTにつきましても、むしろ今はそこにシフトして取り組んでおります。予算の厳しい中で集合研修はなかなか広がっていかないのですが、派遣研修でありますとか、市町村との人事交流でありますとか、あるいはジョブローテーションということで、計画的な育成に努めているというところです。

【中山座長】 先生、よろしいですか。

【羽生田委員】 新人の看護師の場合にも、プリセプターがついて、現任教育を現場でやるわけですよね。保健師の場合にも、人数的に予算がないから、それだけの人がつけられないというところもあるのかと思いますが、やはり集団教育ももちろんですが、個々の人に、上司といいますか、先輩がいかに対応するかというのがすごく大事だろうと思うのですが、その点は今やられているようなお話なので、それによって少しは離職者が減ったかどうか。

【森岡意見発表者】 そこは本当に重要な問題かと思いますので、私どももプリセプターを養成して、昨年から、もともと新任保健師の指導者というのはずっと置いてやってきているのですが、やはりより身近なところで保健師活動を伝えていくということにおいて、プリセプターという位置づけを明確にしまして、そして中央でプリセプターの役割を育成しながら、プリセプターが自分の体験を新任期に伝えていけるようにという、非常に丁寧なやり方で今取り組んでいます。これは新しいやり方ですので、経験のしっかりした保健師さんがわあっと言うのではなくて、しっかり添えるように、そういうプログラムを今構築しながら取り組んでいるところです。

【中山座長】 どうぞ。

【富野委員】 順天堂の富野といいますが、大阪府の場合、保健師さんの新人というのは、卒後すぐですか、それともナースとして何年間かやってから入っているという、その辺の年齢構成というのは。

【森岡意見発表者】 大半は新卒でございますが、最近、一たんやめられて、また再就職という方もぼつぼつ出てきています。といいますのは、採用の年齢がちょっと広がったということが1つはあるかと思います。今、大阪府は40歳まで採用枠を広げていますので、今年度採用された方の中にも37歳とかそういう方がいますので、これはまさに年齢枠を広げたということがあります。通常はもう少し、これまでは広げてきていなかったのですが。

【富野委員】 というのは、逆に、若くて卒後すぐ入ってしまった場合に、学生時代にもった自分のイメージといいますか、保健師さんの仕事内容とか、入ったはいいけれども、ちょっと自分の思っているのとは違ったと、そういうことで5年以内にやめていくケースが多いんじゃないかなというふうに感想をもったのですが。

【森岡意見発表者】 経験が影響する場合もございますが、保健師としての経験とそれ以外の経験が、必ずしも経験がプラスにいくということではないと思います。例えば、仮に保健師の経験がありましても、非常に小さい市町村で経験して、苦労してきたといった場合には、指導者がいなくて、行政の村の中で一生懸命やってきたが、体系的に地域で活動する、いわゆる保健師としての活動が十分できなかったというふうな場合には、入ってきてからやはりきちっと組織も地域も一緒にやっていきます。それから、看護師さんの経験がある場合、今、地域で療養する難病とか小児難病とか、いろいろな高度医療を提供しながら在宅で生活するという方を支えている仕事、そういった場合には、臨床をやっておられる場合は、経験が非常に生かされます。

【富野委員】 どうもありがとうございました。

【中山座長】 話題が出たところで、統合したカリキュラムで教育を受けて、今保健師として頑張っていらして、きっと大変苦労もあるし、よかった点もあるし、いろいろあるんだと思いますが、桑畠さんのほうから忌憚のないことをお話しいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【桑畠意見発表者】 江東区の桑畠と申します。私は江東区に入職して、この4月で5年目に入りました。4年間実践を重ねてきたということになります。今回は、この話を受けまして、看護師・保健師教育を受けて行政に出た保健師として従事する立場としてお話をさせていただきます。江東区という、ある1つの自治体での保健師活動の実際についてと、それから、学生の立場から、行政の保健師となって、4年間の実践を経て思うことについてお伝えできればと思っています。
 資料2をご覧ください。まず初めに、江東区での保健師活動の実際についてお伝えしていきたいと思います。江東区の概況についてですが、江東区は、皆さんもご存じのとおり、23区の東部に位置する、人口、今は約43万人、もうすぐ44万人に到達する地域です。今、豊洲などに代表される臨海部の開発による人口増加が大きなイベントとなっていまして、年間約8,000人以上の人口増加が見られています。もともと江東区といえば、下町と呼ばれる地域ではありましたが、そのように開発が盛んな豊洲地域であったり、古くからの住民が生活する深川地域であったり、エリアによって大きく特性が異なるという特徴も持っています。そのため、それぞれの地域の住民が抱えるニーズであったり、健康課題であったりというのも異なっている現状であります。特に開発が盛んな豊洲地域では、近年の転入者の増加に伴う母子の増加で、例えば赤ちゃんの訪問であったり、乳幼児健診であったりといった母子への対応を丁寧に手厚く行うような働きかけを行っています。逆に、昔からの地域である深川・城東地域では、結核であったり、精神であったりというところの相談件数が多く、継続支援の必要性が高い地域でもあります。そして、江東区では、こちらに書いてありますように、地区担当制という形をとっております。これは、所内での様々な事業と、あと保健師1人1人が担当の地区を持ちまして、その担当地区の活動と両立させて行っているということです。現在、保健師1人当たりの担当の人口は1万人前後ですが、年々人口が増えておりますので、1万人を超えてきております。そのため、事業の数も多く、地区の活動の負担も大きくなっている中で、保健師1人当たりの業務の負担増大の課題であったり、あとは様々なニーズにこたえていかなければならないというところでの課題も増えてきているかと思います。
 保健師活動の実際について、内訳、項目を右の図に載せてみました。右の表と図を見ていただきたいと思います。保健師の業務の中で大きな比重を占めていますのは、家庭訪問、健康相談、それから、健診、地区管理などです。所内業務も多い中で、家庭訪問の割合がこれだけ高い理由としては、近年の転入者の増加で、地域の様子もがらりと変わっていきますので、その中で継続の支援者への対応だけではなく、新しく江東区民になられた方たちへのかかわりであったり、関係作りというのも漏れなく行っていこうという保健師の意識から来るものであると思います。日々の訪問は、所内の事業の合間を縫って、それぞれ出ています。訪問の中身としては、下の図にあるように、母子保健と精神保健が中心となっています。
 次に、新人教育についてお話ししたいと思います。これは、私自身が新規採用を受けまして、職場に配属されて受けた教育についての事例です。まず、江東区ではプリセプターシップをとっています。職場にもよるのですが、私の場合は、1名の新人に対して、経験数15年以上の中堅保健師2名が指導保健師としてついてくださいました。その2名の保健師は、所内の事業と担当地区の指導保健師に分けまして、それぞれの保健師から教育を受けたような形になります。同じ江東区の中でも保健師の定数が少ない現場では、1名の指導者がついていても、実際にはその保健師も忙しくて、なかなか教育のほうまで手が回らなかったりして、すぐに新人が事業につかなければならないような現状もあるようです。方法としては、指導保健師が作成しました保健師教育プログラムといった独自のものであると思いますが、年間スケジュールに沿って現場の経験を重ねていきます。主に、初めの上半期は、所内の事業、特に学生のころ、実習で経験させていただいた母子に関する事業からスタートして、1年をかけてほぼすべての事業につけるよう学んでいきます。また、後半に入りますと、地区の活動の割合も増えていきまして、指導保健師の同行訪問から始まって、私の場合ですと、後半、年明けぐらいには1人ですべて訪問に行けるような形をとっていたと思います。そのため、私の場合ですと、指導者から教育を受けたこと、そして、自分自身でも勉強していたことを合わせまして、さらに専門的な知識や最新の情報については、例えば東京都が主催する母子保健研修ですとか、その他の専門研修などに参加させていただきました。実際には、所内の事業の中でそういった専門の知識を得てからでないとつけない事業もあるのです。例えばエイズの相談ですとか、子供の発達の遅れの相談ですとか、そういった専門的な事業に関しては、必ず専門研修を受けてから従事するような体制をとらせていただきました。
 そして、新人である私が、保健師の教育を受けた上で、学ぶ上で心がけたことを幾つかお話ししたいと思います。まず1点目は、指導者をはじめ、他の先輩保健師の仕事の様子をよく見ることでした。例えば電話相談であったり、面接であったり、ちょっとしたことでもよく様子を、対応の仕方をよく見させていただいて、そこから学ぶことが大きかったと思います。ただ、保健師がどのような対応をするのかというところだけではなくて、自分の担当の地区だけではなくて、他の先輩の地区の情報も得ていくことで、管轄するエリアの全体像が見えてきたと思います。
 それから、2点目は、時間があれば地域に出て訪問したり、町の様子を見たり、それはとても意識して行いました。それから、健康問題を抱える方だけではなくて、そこの地域に暮らす住民とできるだけ接することも心がけていきました。よく指導保健師に言われたことは、健康問題を抱える方だけにアプローチするだけではなくて、健康な事例の経験を増やしなさいということを1年目のときにたくさん言われた記憶があります。ただ、実際には、現場に出れば日々が慌ただしくて、新人にとっては本当に余裕がありませんので、なかなか現場に出ている間は自分の仕事がどうなのかという振り返りをする余裕がないのですが、その日その日で自分なりの目標を設定して、必ず少しでも振り返りをするように心がけていました。
 3つ目、次ですが、就職後に苦労した点についてお話しします。私が卒業した大学では、3年次に2週間の在宅、2週間の地域の臨地実習、それから4年次に1カ月の地域の臨地実習を修了して現場に出ました。それでも大学で学んだことと実際の現場の業務とのギャップを感じていました。これについては、私だけではなく、大学を卒業したほとんどの新卒の保健師が抱えていたことではないかと思います。具体的に言いますと、例えば結核でありましたり、難病でありましたり、虐待、子供の発達の遅れなど、大学で学んでいない分野についても相談がたくさん来ますので、それに対応しなければならないというところで、自分が大学で学んできたところがすぐに生かされないというジレンマであったり、あとは、分からないところが多過ぎて、現場に出て戸惑うことも多かったと思います。それからもう1つは、情報交換や相談ができる同じ境遇の人が少ないというふうに書かせていただいたのですが、これは、新規採用数が少ない現状の中で、同じ4大の看護教育を受けて現場に出た新卒保健師の数もとても少ないと思うのですが、その中で同じ立場で悩みを打ち明けたりとか、意見を言い合ったりできるような存在が少ないなというふうに本当に感じました。私の場合ですと、同期が3人いるのですが、そのうち新卒は私だけで、あと2人は、他の自治体や病院等で保健師または看護師としての経験をしっかり積んできた人でしたので、なかなか新卒の立場としての思いを分かってくれる人がいないというところで、このことを書かせていただきました。
 それから、4番目ですが、新卒保健師に望むことという項目ですが、先ほども森岡さんのほうから少しお話を聞かせていただいた中で重なるところがあるかもしれません。新卒保健師の強みといいますか、例えば現場に出たときに、何か文書を書いたり、それから、事務能力であったり、若いという点からの発想力やアイデアに関しては、わりと現場でも高い評価を得られているかと思います。ただ、人の話を聞くという能力であったり、人との距離をどういうふうにとるかということだったり、コミュニケーションスキルというふうにまとめてしまうとあれなのですけれども、そのことに関しては、まだまだ足りない部分があるのかなと実感しています。やはり今の住民が保健師に求めているのは、とにかく話を聞いて欲しいというところなのかなと思います。なので、まずは住民への対応で重要である、人の話を聞くということ。住民の話をよく聞いて、一緒に健康の課題であったり、悩みであったり、それを整理していくような作業というのは、とてもエネルギーが要ることでなのですが、その基礎であるコミュニケーション能力というところが大事なんだよというのを知っていただいて欲しいなと思っています。
 あともう1点が、保健師のネットワーク作りというふうに書かせていただきました。これは先ほど苦労した点でお話ししたように、悩みを共有したり、一緒に学んだり、事例検討したり、そういうことができる仲間を増やしていくと、仕事もしやすくなるのではないかと思います。例えば私の場合ですと、私の母校では、行政の保健師として働いているOBと将来保健師を目指している学生、それから、保健師に興味を持っている学生が交流できる機会を作っていただいています。私も時間があれば、そういう機会に参加させていただいていますので、ぜひそういう機会であったり、場だったりというのも自分たちで積極的に作っていって欲しいなと思っています。
 それから、5点目の大学に望むことという項目に移ります。大学に望むこと、とても大きなテーマで、私もすぐに答えが出せないなと思いながら考えていたのですが、3つ示させていただきました。
 まず、業務に携わる保健師を活用した教育プログラムという項目についてですが、今、学生時代を振り返りますと、例えば保健所実習で保健師の活動の一部であったり、事業の一部であったりというのを見させていただいて、行政の保健師に興味を持った、保健師になりたいというふうに思ったのですが、まだまだ自分が知らない仕事であったり、あとは保健師が住民にかかわっている姿というのも見れる機会があればという思いがあったりとか、そういう細かいところが見れたらよかったなという思いを持ちながら就職活動に当たっていたことを思い出します。そして、その思いというのは私1人だけではないのではないかと思います。限られた臨地実習という時間の中で目にしたのは、その業務のごく一部であって、そのことが学生の、地域看護が広すぎて漠然としているといったイメージを作り上げているのではないかなと思います。なので、例えば実際に地域で働く現場の保健師が大学に出向いて、現場の様子であったり、日ごろの活動の中での思いなどを学生に伝える機会があってもいいのではないかなと思います。そうすることによって、学生がより保健師の魅力を感じたりとか、保健師は何をしているのかという具体的なイメージもつきやすくなると思いますし、それこそ実際に働き始めた後に、こんなはずではなかったというふうな思いを持つこともないのではないかと思います。
 それから、2点目の行政事業の企画や調査研究のサポートについてですが、これは区民の健康をサポートしていく上で、今の段階では十分とは言えない保健師の数で、日々の多くの事業であったり、業務を受け持っているので、どうしても企画運営であったり、調査研究というあたりでは多くの時間をかけられません。それから、自分たちの知識であったり、アイデアの幅にも限界を感じています。そのため、別の専門家であったり、教育関係者であったり、そういったいろいろな機関からの客観的な意見やアドバイスが欲しいなと思うこともあります。そして、これは特に大卒の若い保健師たちが強く願っていることではあるのですが、せっかく大学の勉強の中で研究の手法を学んで地域に出たのですが、実際には、研究活動の機会が全くなくて、せっかく大学で学んだことを生かせていないという面については、非常に残念に思っています。行政のそうした面を大学側がサポートしてくださったりとか、逆に窓口を広くしていただいて、我々が大学のほうに学びに行ったりとかできる機会を増やしていただけたらと思っています。
 そして、最後の地域看護学実習のフィールドを拡大、継続支援の実際を知る機会をというところについてですが、保健師としての知識や技術ももちろん大事なのですが、やはり対人サービスであると言われているように、コミュニケーション能力であったり、様々な人生経験が必要とされる仕事でもあると思うので、例えば今のカリキュラムですと、病院であったり、保健所であったりというフィールドに限られてしまっていますが、そういったフィールドの幅を広げて、様々なところで社会性や人間性を磨けるような機会があってもよいのではないかと思います。あとは、継続支援という点については、自分が実習の中で表面的なところしか見られなかったという思いから書かせていただいたところです。訪問に行くにしても、単発の訪問しか頑張ってもできない現状があると思うのですが、保健師の強みであったり、保健師の仕事といえば、継続の支援、実際を見ていただく機会があるといいのかなと思って書かせていただきました。
 最後に、終わりにですが、この4年間の実践の中で思うこととして、大学で学んだ知識だったり、就職して保健師から学んだ技術であったりという学習はもちろん大切にしていきますし、生かしていけるところではあるのですが、やはり住民とのやりとりであったり、個々の相談ケースの積み重ねこそが、一番の今の自分の学びになっていると感じています。ただ、そう思えるのは、やはり大学での学びや実習経験があったからこそだと思っています。大学教育が現場にどのように生かせているのかということについては、今の段階では言語化するのが非常に難しいと思います。それが現在の大学教育の関係者の方々が抱えている課題でもあると思いますし、我々新卒の保健師が抱えている悩みの1つでもあると思っています。その中で、これから行政の保健師に魅力を感じてくれている学生だったり、次世代を担ってくれる行政の保健師の仲間が増えることを願っています。拙い説明、言葉で申しわけありませんが、以上で発表を終わります。ありがとうございました。

【中山座長】 桑畠さん、どうもありがとうございました。桑畠さんのほうに、何かどうしても質問しておきたいということがございますか。どうぞ。

【村嶋委員】 東大の地域看護の村嶋といいます。2点ほどお伺いしたいと思います。桑畠さんの場合は、3番のところですが、大学で2週間在宅の実習をし、また地域の実習を2週間し、それから4年生のときに1カ月、特別に実習をしたというふうにおっしゃいました。これは選択じゃないかなと思うのですが……。

【桑畠意見発表者】 はい、そうです。

【村嶋委員】 大体何人ぐらい実施していらっしゃるのでしょうか。それから、今年5年目ということですから、1年から4年の間に、どなたか保健師になられたような後輩もいるのではないかとか、同級生でもうちょっと増えているのではないかと思うのですが、この1カ月の特別な実習を済ませた人は、実際に保健師になっている人の中で、どのくらいの割合いらっしゃるのでしょうか。

【桑畠意見発表者】 1カ月、総合臨床実習を受けた学生の中で実際に保健師に……。

【村嶋委員】 いや、保健師になっている人の中で、総合臨床実習の経験を持っている人。

【桑畠意見発表者】 自分の母校のことで説明しますと、保健師になっている人全員、この臨床実習を受けています。全員が希望していましたので、23区とは限らず、自分の生まれ故郷であったり、いろいろなところに点在していますが、ほぼ受けた学生全員が保健師として出ていると思います。

【村嶋委員】 じゃ、特別手厚い実習を受けた人のみが大卒で保健師になっているということですね。

【桑畠意見発表者】 そうですね。その年にもよるかと思うのですが。

【村嶋委員】 それから、平成21年から始まるカリキュラムの中には、継続的な訪問指導をしなければならないというふうに入ったのですが、実際に、もし桑畠さんの学生時代にそういうカリキュラムだったら、そういうことが可能だったかどうかをお伺いします。今問題になっているのは、過密カリキュラムで、特にこのごろ地域看護実習は他の実習とローテーションするから、2週間なら2週間しかない。全体は4年間あり、一見長いのですが、実際に地域看護に使われているのは非常に短いので、1人のケースを追いかけて訪問する体験を積ませるような、そういう教育プログラムが実際にとてもできにくいということが問題になっているのですが、桑畠さんの学生時代のカリキュラムを考えたときに、そういうことは可能でしょうか。

【桑畠意見発表者】 そうですね、私が受けた教育のカリキュラムで言いますと、今ほとんど自分と同じカリキュラムを受けた学生が保健師として地域に出ていると思うのですが、この2週間の地域の実習の中で、例えば継続の訪問ができるとすれば、頑張っても2回、3回だと思うのです。その中で1回行くのと、2回、3回行くのとで何が学びとれるのか、違いは何かというのもあると思うのですが、2週間の中でいろいろな所内の授業も見ながら、それから個々のケースも継続して見ながらというのは実際には厳しかったのではないかなと思いますし、だからこそ、私は実習の担当者には訪問の希望を出していたのですが、実際には母子と成人、精神、それぞれ1回ずつしか行けなかったという記憶がありますので、今の実習カリキュラムの中で、継続支援の訪問、何回か繰り返すということを考えれば、かなり調整は難しいのではないかなとは思います。

【中山座長】 ありがとうございました。2時からだから1時間半が経過しました。あと残すところ1時間になりましたので、全体的な討論に移りたいと思います。今日、前回から引き続いた資料の説明、それから村嶋委員、宮﨑委員のほうから新たに保健師教育についての追加のご発言、それから森岡さん、桑畠さんに来ていただきまして、現状を踏まえた保健師教育、あるいは今保健師活動の中でどういう能力が求められているのかということについてお話をいただきました。皆様に資料6を見ていただきたいのですが、このことの背景になっている問題につきましては、関係大学における人材育成の内容をどうしたらいいのかという問題、ページをあけていただいたら分かるのですが、大学における看護学教育の特色としまして、保健師・助産師・看護師に共通した看護学の基礎を教授する課程であること、これをずっと踏襲してきたわけですが、時代の要請、あるいは大学の急増、様々な状況から、このまま私たち看護系大学はやり続けていくことができるのかどうか、これを踏襲すれば専門職育成でしてきたことが崩れていくのではないか、多分こういったところでの議論になるのだろうと思います。多分皆さんそれぞれの思いを持ちながら聞いていただいたと思いますので、どうぞ忌憚のないご発言をお願いしたいと思います。森岡さん、桑畠さんにも加わっていただきますので、まだ質問が足りない方は森岡さん、桑畠さんに質問してくださって結構です。どうぞよろしくお願いいたします。はい、どうぞ。

【坂本委員】 今、桑畠さんのお話と、森岡さんのお話を伺った中で、先ほど看護課長もお話しされたように、要するに過密であるというところがすごく出てきていると思います。それから、新カリの検討会のときに出てきた必要だと考えられる単位数、助産師と保健師はここに出されています。先ほどの村嶋さんのお話の中にもありました、看護師の必要なカリキュラム数というのは明確にここには理想とされるものは出ていませんが、これを3つ入れただけでも大変過密になってくるという課題が1つあります。これに対しては、何らかの解決をするということは、文科省にお聞きすればいいと思うのですが、それに対しては何とかするということにおいては合意されていることでしょうか。

【中山座長】 文部科学省と厚生労働省との合意ですか。

【坂本委員】 違います。文科省にお聞きします。

【中山座長】 文科省のほうが……。

【坂本委員】 この会を開くということは、いろんな先生方や提案者の方にお話を伺ったわけですけども、カリキュラムが過密であり、大変ゆとりがないということ。それに対して、何らかの形で新しいことを行っていくのだということは合意されているかどうかをお聞きしたいのです。

【小山田看護教育専門官】 合意というか、そこでどんな対策が必要なのかを話し合ってお示しいただくために、こちらの検討会を開かせていただいているということです。

【坂本委員】 分かりました。結局、この会でそういう現状があるということを押さえて、そしてこれに対して何らかの対策をとっていこうと合意されているということですね。分かりました。

【中山座長】 よろしいですか。要するに、先ほど言いました3つの免許の基本である、基礎であるという形でずっと踏襲してきたけれども、このまま突き進んでいって、質の担保のことも含めて、時代状況のことも含めてやり続けることができるのかどうなのか、変革が必要なのかどうなのか、そのことに対する結論を出すのがこの検討会ということでよろしいですか。

【小山田看護教育専門官】 そうです。

【中山座長】 ということで、座長も解釈しておりますが、そこはよろしいでしょうか。

【坂本委員】 分かりました。

【中山座長】 どうぞ。

【高田委員】 桑畠さんに伺いたいのですが、森岡さんから地域で実習を受け入れるという体制がほとんど破綻しかけているというお話があったのですが、桑畠さんも5年目ということで、もう指導する立場になっていると思います。この辺は東京のほうはどんな感じなんでしょうか。

【桑畠意見発表者】 各区によっても状況は違うと思うのですが、江東区についても、やはり森岡さんからお話しいただいた状況と同じようなお話を中堅の保健師からは聞いております。実はまだ私は指導の立場に立てるところまで至っておりませんで、ただ実際に学生は毎年毎年保健所のほうに来ますので、その中でだれが見るのかというところで毎回の検討課題になっています。それだけ保健師も自分が持っている業務量の他に、学生の教育というところまで持ち切れない、抱え切れないという現状があると思います。

【中山座長】 小山委員のほうが先のようでしたので、次。

【小山委員】 桑畠さんにお伺いします。先ほどの資料の「大学に望むこと」ということで、3番目に地域看護学実習のフィールドを拡大して欲しいというのがありました。今日の実習は保健所で受け入れられないということが非常に問題になっているのですが、保健師としてのご自分を振り返られたときに、5年前に卒業された桑畠さんのほうからは、それ以外のところで実習することによっても保健師として身になるのではないかという実感としてのお言葉かなと思うですが、もう少しその辺を「例えば」というあたりで出していただけるとありがたいなと思うんです。

【桑畠意見発表者】 例えば私の場合ですと、大学教育を受けた実習の中で、フィールドとして病院と保健センター、保健所と、あと企業にも行かせていただくことができたのです。企業に行ける実習、行ける大学とそうでない大学もあるかと思うのですが、企業に行けたということも、実際自分は行政で働いているのですが、企業の産業看護で学んだこと、家庭訪問であったり、健康教育であったりという、そのあたりの学びが今の実践に生かされている部分もあると思います。あとは、今まだこれから自分で持っていていい能力としてコミュニケーションスキルを挙げさせていただいたのですが、そういう視野を広げる意味で、あまり保健師がいるからここというところにとらわれないで、例えばどんな職業のところでもいいと思うのですが、1年目とか、少し基礎看護の実習、在宅の実習にあわせて、他の職業だったり、他の企業だったり、どこでもいいと思うのですが、そういったところに学生が出向いて、どんな人がどういう考えでどういう健康問題を自分で持っているのかとか、そのあたりを気づけるような、あとどういうコミュニケーションをとったらその人に受け入れてもらえるのだろうかというところの体験的な学習ができればよりよかったなと自分の場合は思っています。なぜなら、地域に出られるとほんとにいろんな職業の方がいらっしゃいます。この職業は何だろうというところから私は入るので、そういう意味ではいろいろバックグラウンドを持った人たちとの接点を少しでも持てるといいのかなと。ただ、3年、4年になりますと、より勉強も専門的になっていくと思いますので、そういった余裕もないので、できれば入学して間もないころとかでもそういった学びは可能だと思うんですね。そういう課題を出してもいいのではないかなと思いました。

【小山委員】 ありがとうございました。

【中山座長】 よろしいですか。佐藤委員、どうぞ。

【佐藤委員】 直接的には森岡さんへの質問ですけど、あわせて他の委員の先生からコメントを頂けたらありがたいと思います。先ほどの森岡さんの離職、しかも早期離職が増加しているという話です。私は私立大学の学長をしていますけども、若者が就職して早期に職を離れるというのは全産業的に大変大きな問題で、それに対して大学がどうすべきかということは、今や大変大きな課題になっています。文科省の中教審でも、キャリア教育、職業教育について、義務教育の段階から大学に至るまで、すべての段階でこのことについては検討して、取り組もうとしております。それはともかくとして、先ほどのお話の中で離職の理由は様々ということで、そうだと思います。なかなか把握するのは難しいと思いますが、あえてお聞きしたいのですが、その背景、遠因というものに職務の特殊性というか、職務の性格に起因するものとか、職場の人間関係とか、あるいは全く切り離して個人的な事情とか、大雑把に把握しておられればそれを伺いたいと思うし、それから他の委員の方々にも投げかけたいのですが、私ども私学団体、私立大学の団体などで、幾つかの職種について、とりわけ離職率が高いということについて問題にして、処遇の改善など抜本的な解決が必要だと主張しています。その中で、保健師の森岡さんには大変申しわけないですけど、看護師、介護福祉士、それから保育士と、この3つあたりを取り上げて、いろんな場でいろんなことを言ったりしております。今日はこの場で、離職の理由の中に、養成教育と何か関係があることを感じられておられるのかどうか。例えばこの会の根本命題であります統合教育によって、保健師教育が希薄になっているとか、不十分だということ、このことが例えば職場に出て自信喪失につながりやすいから云々とか、あまり誘導的なことを言っちゃいけませんけれども、とにかくそういう養成の問題と離職率の高さ、しかも増加ということと何からの因果関係があるかどうか、お伺いしてみたいと思いました。

【中山座長】 森岡さんのほう、もしありましたら、どうぞお答えください。

【森岡意見発表者】 おっしゃいますように大変難しい問題で、ただ、数年前まではそういう離職するということがそんなに多くはなくて、ある程度明らかだったんです。女性ですので結婚もあったり、転勤もあったり、それから明らかに向かないという場合もありましたけれども、今離職されていっている人の中には、例えばはっきり何か理由があって、結婚する、退職する、転勤するということではなくて、やはり職場の人間関係のストレスも非常に大きいというのが1つあるとは思います。ですから、職場の人材育成の中での人間関係の作り方というのが非常に我々も課題があると思っていますし、そしてもう1つは、仕事として出ていくという、潜在的なものを、形がなかなかないものに沿うていくというところの保健師の技術的支援の難しさというのがあると思うのです。訪問に行って帰ってきたら、よく話を聞いて、やはり受けとめながら成長する時間を十分とって、いわゆるカウンセリング的な要素で支えていっているというのは、一昔前よりかはすごく丁寧にやっているつもりなのですが、ですから、そういう職業人としてやらないといけないというところの中で、やはりストレスがたまってきているのかなということは、傾向としてはっきり言えるのかなと思っております。

【坂本委員】 よろしいですか。

【中山座長】 どうぞ。

【坂本委員】 先生がおっしゃられた教育の問題が、私はやっぱり絡んでいると思います。その理由は、中身を本当に考えて、そして意欲が出てくるような教育が果たしてこの過密の中でできているのかどうか。おそらくしっかりした面白さとか、保健師だと保健師に、本当に保健師になってみたい、そしていろんなことをやりたいという意欲が、看護師もそうですけども、そういうことが引き出せる教育になっているかというと、私も今大学に籍を置いていますが、大変忙し過ぎて、作業的教育といいますか、方法をとにかく見せるだけとか、考える時間、そしてその面白さを自分自身が見出していく力を引き出すための自発性を持ってこさせるための時間がないと感じております。だから、そこをちゃんとしなければ、就職してから、いろいろな問題に遭遇したときに、そこを乗り越えていく力というのはおそらく方法的とか、作業的な状況をアラカルト的に見てくるだけでは、そこに乗り越えていく力というのが蓄えられていってないと思います。だから、教育と職業は大変関係すると思います。それから、その一つの例が、この前聖路加の大学院で助産師の教育をしているというお話を堀内先生から伺ったことがあるのですが、先生のところの学生は大変職業における目的意識が明確であるということ、だから意欲が大変強いとおっしゃられていました。そういう意味では、意欲が成果となるような教育にしなければ、大変そこが弱くなるのではないかと、私はそういう気がしております。

【中山座長】 秋山委員のほうから手が挙がっています。どうぞ。

【秋山委員】 私は今在宅の分野で仕事をしておりまして、公衆衛生的な分野の中でも、先ほど桑畠さんが示してくださったこのグラフで、母子保健と精神保健が非常に大きな割合を占めていますよね。それで、実際森岡さんなんかにもお尋ねしたいところなのですが、私たちも訪問看護ステーションで実際に実習に連れていくときには精神保健的なというか、精神衛生的な問題を持った方のところには実習生を同行できないような状況という、地域の中でも様々な健康問題を持っている人のところに実習の場として提供できるところが少なくて、本当はそこの部分が多いのにもかかわらず、持っていけないとか、そういうフィールドの複雑さとか、変わってきた変化が、やはり新卒で出ても、精神保健のここの分野の率が高ければ、非常に難しいのに直面していく、そういうところとも、先ほど坂本さんが言われた、確かに意欲を持っていっても、一気に難しい問題にぶち当たったときに乗り越えられるものが、4年生の実習の体験の中であるかといったときにちょっとそこは危惧せざるを得ない。それは訪問看護の実習の場というか、地域の場でも難しいところにはやっぱり連れていけないという、実習現場の問題もありまして、その辺がやはり4年生の過密の中とプラスで、フィールドとなるところの現状が変わってきていて、そこに出される学生や、新卒の保健師さんたちの受ける状況が社会の変化で、非常に変化が大きいというか、そういうふうに思っているのですが、いかがでしょうか。

【中山座長】 よろしいですか。

【森岡意見発表者】 乗り越えられるかどうかというところは、やや抽象的な言い方になるのですが、この子は乗り越えられるやろという子は、育成していて分かるんです。乗り越えられないやろというのはやっぱりありまして、それは家庭訪問で育成しましても、いろんな場面で、急ぐというわけにはいけませんので、その感じ方とか、その子の中での積み上げ方という確信が持てるんです。ですから、そうすると一生懸命育てて、それが2年、3年かかっても非常に楽しみにいけるのですが、そこがなかなか感じられないという場面、それはやはり保健師になるんだ、看護師じゃなくて私は保健師なのだと。あるいは、どの選択をしてもいいのですが、やはり職業意識がちゃんとあるかどうかだと思うのです。ですから、そこのところは、やはり言葉が悪いでが、何となく大学を出て、何となく資格も取れて、確かに優秀なのですが、しかし、いわば地域に出てやる仕事というのはきれいではございませんので、汗かいて自転車に乗っていかなあかんという、しかも断られても行かないかんというところの、どろどろしたことをやはりうまく、プレッシャーをかけるんじゃなくて、一緒にやりながら育てていっているのですが、そこはやっぱり学校教育の中で、ある程度イメージ化して卒業してくるという部分は大事なんじゃないかと思うのです。それで、どうしても不向きな人もいらっしゃると思いますので、そういう方は無理にということじゃなくてもいいんじゃないかなと思うのです。そこは、すべての人がそうじゃなくて、みんな乗り越えて行っているわけですから、一定の離職するとか、あるいは対人が嫌いな部分、ですから企画させたり、集計させたり、そういうのは我々以上にとても優秀なのですが、やっぱり保健師である以上地域活動ができないと困るというところがありまして、そこは特に今行政は人の採用も厳しいですから、行政職並みに――並みにと言ったら怒られますね。行政職的な仕事をしとってくれて、期待できへんから、あんた、これしとくかというわけにはいかないんです。ですから、ちゃんと保健師である以上は地域で活動できると。そのためにはそういうふうになるんだという意識が私は大切なのではないかと思いますし、そこはちょっと前までは私どもも実習生に向かい合うときはとても思い入れを持ってやっていました。よく保健師の仕事がそこでイメージがついて、私も保健師になるんだという気持ちになった人もいますし、非常に苦しい話が思い出になって、後々まで、それは看護師さんになっても意味があると思うのです。ですから、やっぱり一言で申し上げると、実習の日数がもっと要るんじゃないかな、私はそこである程度育つんではないかと思うのですが、今の実習11日ではとても無理ですし、保健師の教育としては、私はよく分かりませんが、過密ということであれば、まさにそういうことなのかなと思いますが。

【中山座長】 西澤委員、どうぞ。

【西澤委員】 桑畠さんにお聞きしたいのですが、今、教育のいろいろな問題点とか、それから提言という事をお話しいただいたと思うのですが、教育は養成所と大学の両方あると思います。大学しか経験がないので無理かもしれないのですが、保健師の教育全体の問題じゃなくて、統合教育の大学の問題という特殊性でしょうか。そこに何か気がついていれば、お話し願えればと思います。

【桑畠意見発表者】 すみません。もう一度お願いします。どこの部分……。

【西澤委員】 要するに保健師教育全体のいろいろな問題点とかを話していただいたと思うのですが、保健師教育というのは養成所と、大学の統合教育、両方あると思います。その大学の統合教育における保健師教育の問題について何かあればと。

【桑畠意見発表者】 そうですね、今、現場では保健師養成所で教育を受けて現場に立っている者と、あとこういった四大の統合カリキュラムで資格を一緒に取って出ている者が入り混じっていると思うのですが、それぞれの保健師で、それぞれの思いがあって、その辺もやはり難しい面もあるんです。一緒に仕事をしていく上で、学んでいる内容が違う面もあるので難しいなと感じるところもあります。ただ、今の自分自身が受けたカリキュラムについては、私自身はこの辺をもっと学びたかったなというところは先ほどお話ししたとおり幾つかあるのですが、トータルのバランスとしては満足のいくといいますか、とても感謝する教育を受けられたなと思っています。ただ、新卒として社会の中に出ていく中で、やはり自分自身の健康を守りながら、地域住民の健康も支えていかなきゃいけないという中で、そのあたりを学生の時点から意識できるかというのは難しいところだと思います。それは大学の中では、なかなかそこまで意識している人はいないかなと思うのですが、ただ、実習については、今自分が受けた2週間、2週間、1カ月という地域の実習で時間的にも精いっぱいだったのかなと納得はしています。

【西澤委員】 ありがとうございます。

【中山座長】 いいですか、佐藤委員のほうからでよろしいですか。

【佐藤委員】 桑畠さんが大学に望むことを3点挙げられて、その2番目に関心を持ったんです。大学は言うまでもなく卒業生を送り出して、その後卒業生一人一人がというのは理想的で、あまり完璧にいかないのですが、幾つかの職種については大学が継続してバックアップする、例えば教育や保育や福祉などは現に盛んに、卒業生をサポートするというだけじゃなくて、そういう卒業生が活躍している職域、もしくは職場を組織的にバックアップするようなことをしています。それで、この2番目に桑畠さんが挙げられたことは、行政事業の企画や調査研究などをケーススタディーとして大学は在学中にもっと取り上げて欲しいという意味なのか、それとも保健行政でおやりになる調査研究などに対して少しく学術的な支援を望んでいるのか、どちらなんでしょう。もし後者だとすると、具体的にはどういうふうにすれば大学はバックアップできるんでしょうか。何かお考えがあったら教えてください。

【桑畠意見発表者】 具体的に挙げるとすると、多分両方当てはまると思うんです。ただ、自分たちが大学でせっかく学んだことを社会に出て、自分がそういうことをするんだという目的を持って出たとしても、実際にそれがかなえられないという思いを大卒の保健師は抱えていると思うのです。ただ、忙しい授業の日々の中で、今やっている授業が果たして適切なのかどうかというところの検討だったりというのは、やはり苦手と言ったらあれなのですが、現場の保健師は材料は持っているのですが、それをきちんと系統立てて、論理づけて、検討していく、新しい課題を見出していく、新しい手法を考えていくというところの時間的余裕がなかったりとか、あとは今ベテランの保健師さんたちは、養成所で学んで出てきた方が多くいらっしゃるので、その中で、私たちはこれについて疑問を感じていて、検討したいと思っているのですが、それを上にいかにして持っていくかという課題もあるんです。なので、何かそういった問題を見つけたときに、やりたいんだけれども、私たち自身もまだ自信がない。4年間の教育の中で表面的なものをかじって出たけれども、自信がないので、本当は専門家のお力をかりたいところなのですが、それが今後可能になっていく可能性があるのかどうか。というのが、今私たちが思っているところです。

【佐藤委員】 どうもうありがとうございました。

【坂本委員】 先に村嶋委員。

【村嶋委員】 私はこの調査研究のサポートというのを桑畠さんがおっしゃったときに、大学に行ってとおっしゃったので、ちょっとがっかりしたのですが、そうじゃなくて、自分たちの仕事を分析して、よりよいものにするような評価能力を身につけたいという、そういう意味ですね。

【桑畠意見発表者】 そうです。それも含みます。

【村嶋委員】 そしたらよかったと思います。私は学部と修士と博士と持っておりますが、修士課程修了程度の能力がないと、全体を見て評価していく能力を身につけるのは無理だと思いますので、お悩みは分かります。それが今の回答に対する私の反応ですが、今までの話を聞いていて、やっぱり保健師に特化した教育が必要だということです。保健師に特化した教育をすると、少なくとも志向性を持つ人が集まる。だから、効率的に教育を行うことができます。しかし、保健師になるのに適性がある人とない人とがある。何が保健師の適性かというと、何か相談を持ち込まれて、形のないところにとりあえず対応し、そこから本質をつかんで、システム化していく、形にしていく、そういう仕事が保健師の仕事ですので、そういうことに対応できる性格が必要です。今まで保健師の中でメンタルな問題が少なかったというのは、保健師学校の先生たちが上手に選別をなさっていたことによると思います。本人の適性をよく見て進路を選択させていく、そういう時間が必要だと思います。そういう意味では、そのための時間が保障されるべきだと思います。
 それから、先ほどコミュニケーションスキルの問題がございましたが、コミュニケーションスキルはどなたかおっしゃいましたように、必ずしも実習だけで磨かれるものではなくて、やはり日ごろの生活の中で磨かれるものでございます。そういう意味では、ボランティアに行くようなゆとりが大学の中であれば、そうすると、コミュニケーションスキルをいろいろな形で磨く方法があるのだろうと思います。以上です。

【中山座長】 坂本委員にお願いします。その後、倉田委員も手が挙がっていますので、坂本委員の後、お願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【坂本委員】 ちょっと質問ですけれども、宮﨑委員が出された資料の中で、私はちょっとびっくりしたのですが、卒業直後の進路というのと、卒業を少ししてからの進路というグラフがございますが、保健師に就職する人が大変いて、今日は保健師のお話に特化されていますが、看護師になってもらわないといけないと思うのですが、何でこんなに保健師になって、数にすると大変多く毎年出ていらっしゃるということで、看護師にはどうしてならないんですかというのがちょっと気になるのですが、いかがなんでしょうか。

【宮﨑委員】 済みません、卒業直後の?

【坂本委員】 直後と、直後も多いし、それから何年後も多いと思うんですね。

【宮﨑委員】 直後は大体1割前後ですね。

【坂本委員】 ま、約、20%弱ですね。

【宮﨑委員】 1割弱。あともう1つ今日お示ししたのは、その後のキャリアの中で、どんな資格を使いながら、生涯、看護職として働き続けているかという経年的な、経年的というか、24年たった時点を横断的に取り扱ったものなんです。そうして見たら、私もちょっと驚いたのですが、その後も保健師になっている人が少なからずいらっしゃる。

【村嶋委員】 でも、3割。

【宮﨑委員】 ま、そうです。

【坂本委員】 で、私は疑問なのですが、看護大学じゃないんですかということなのです。

【宮﨑委員】 看護大学ということは、看護職大学ですよね、先生。看護師だけじゃないですよね。特に統合化されたカリキュラムでやっていますから、看護師、保健師、助産師の教育としてやっている。その教育の成果じゃないかと私自身は思っています。

【中山座長】 今の続きですけれども、保健師になった人のほうが離職は少ないとか、そういうデータはありますか。このやめてる、無職になっている人の多くは、看護職をやっていって無職になっている人が多いのかなと思ったのですが、そういうのは分かってないですね。

【宮﨑委員】 はい、そういうのはちょっと分かってないです。

【中山座長】 分かりました。ありがとうございます。では、倉田委員、どうぞ。お願いいたします。

【倉田委員】 私は医療の受け手の立場で参加させていただいているのですが、先ほど桑畠さんのお話の中で、大学に望むことという話のところなのですが、現場では母子保健と精神保健の仕事でかなりを占めているというお話をしてらして、それで、実際のところ、こういう母子保健や精神保健という仕事をなさるときに、保健師さん以外のコメディカルの立場の方たちともご一緒に相談しながらやっていくことがあると思うのです。例えば薬剤師さんとかヘルパーさんだとか、そういう方たちにも話を聞きながら、相談しながらきっと仕事をなさると思うのですが、では、大学のときに薬学を学んでいる人だとか、福祉にこれから携わっていく人たちとか、そういう方たちと交流を持つということは実際にされていますか。それとも、今は無理でも、今後、そういう交流があったほうがいいとお考えになりますか。

【桑畠意見発表者】 済みません、自分自身の経験で言うと、大学の4年間の中ではそういった経験はないに等しかったと思います。大学とはまた別のところで、自分自身の活動している別の所属のところだったりという、そこの経験はあるのですが、大学の教育の中ではそういった経験はなかったように思います。ただ、やはり、いろいろな社会資源を自分の中で積み重ねたり、あとは保健師の、自分のネットワークを作っていく、それを強みにしていけるという部分では、大学の教育の中でそういった部分の必要性だったりとか、看護、医療系の職種にこだわらずに、周りの人たちがどんな職種があるのかとか、どの場所に何があるのかとか、そのあたりの学習の機会もあってもいいのかなと今お話を伺っていて思いました。

【倉田委員】 ありがとうございました。

【中山座長】 どうぞ。

【富野委員】 先ほどのお2人のお話と村嶋先生のお話などを聞いて、今日は保健師さんのことについて特化していると思うのですが、確かに皆さんのモチベーションということを考えると、やる気とかコミュニケーションスキルとか能力等を考えると、村嶋先生が言われた日本保健師連絡協議会の考え方、4年たってから2年間の特化したコース、あるいは大学院の一部としてやったらどうですかという考えも一応分かるんです。ところが、資料5-5を見てみますと、平成19年厚生労働省が検討会の報告書を出していて、これを平成21年からスタートしようとしているわけですね。このなかに、現行の教育期限の範囲内、すなわち、看護師3年、保健師・助産師各半年ということの範囲内での改正で、現在の問題点を速やかに対応しましょうということを言っているわけです。ですから、この資料5-5が生きているとするならば、村嶋先生の言われている4年終わってから2年というのはできないわけです。これが生きているとするならですよ。生かそうとするならですよ。これも含めて改正しようということであれば、また考え方は変わってきます。そして、この下のほうに、左下に単位数が書いてありますよね。単位数が書いてあって、資料5-1を見ますと、国公私立全部が看護師教育も保健師教育も非常に単位数が多いんですね。これは、医学部でもそうなのですが、本当に学生のために必要な単位か。あるいは、教員がやりたいがために、教員のための単位、教育になってはいないかという懸念を我々医学部でも感じながらやらなきゃいけないと思っているのです。現在の議論のなかで、5-5というのは生かし続けるのか、これを変えてもいいのかというのはいかがですか。

【中山座長】 この問題、どうします? 先に課長のほうから……。私も1つだけ、座長としてというよりも、ずっと討論の中で同じような論点が1つあるかと思うのです。森岡さんから言われました、今の保健師たちの教育の中で、専門職としての意識が非常に低いという問題だとか、パブリックヘルスを担う職種であるということの意識が低いとかという問題があるということ。これは看護師課程を3年やってから、保健師をやりたいという人が保健師学校に入るから、その時点でかなり動機づけられているから、その人たちはパブリックヘルスを担うのだとか、自分はプロフェッションとして保健師をやるのだという意識づけがあるけれども、大学のほうは4年間の中で全部組み込まれているので、それが弱い。それはパブリックヘルスを担う職種であるとか、あるいは保健師の専門職としてのカリキュラムの内容、そういうものが薄いためなのか、そこがきちんと補充されれば、別に年限は関係ないのか。村嶋先生の出された資料もそうですけれども、私の一番腑に落ちないところですが、看護師教育を終えてから保健師教育をやるという、それでなければ保健師が育たないということなのか。要するに、統合化カリキュラムというのがまるでだめだという問題なのか、それとも、そうじゃなくて、統合化したカリキュラムでも、とにかく教育をきちっとやれば、もっといろいろなものを精査してきちんとやれれば育つ問題なのかと、この議論がちょっとあるような気が私はしていますので、その辺のことも含めてご意見をいただければと思います。

【坂本委員】 これは、またここの話に戻ると、毎回同じことをやっているわけですね。厚生労働省と、それからこの前は舛添大臣が作った検討会の中ですね。結果的には、今一番言われていた問題は、看護師の基礎教育なのです。看護師の基礎教育はなぜかというと、病院で大変なギャップがあって、医療安全的な問題もあって、今の教育がうまく何とかする方法はないかということで話し合われてきた結果、それに対しては、看護師の教育をどうするかというのをベースに話をしようということになったわけなのですが、大学になると、今度はそこに統合カリキュラムが入ってくるわけですね。看護師の実践能力をつけるにはどうしたらいいかという話し合いがされた中で、大学という形だけで話をすると、そこに保健師と助産師が入ってくると、実践能力をつける時間もない。本当にどういう教育をちゃんとしなくちゃいけないかということで、看護師の基礎教育4年間をベースにしたらどうでしょうかと。どうしてもして欲しいと。そして、保健師と助産師のことは考えて欲しいということが、私たちが提言した中での、何点か論点があった中での併記された問題もありますが、今日はここでは大学の話をしているわけですから、大学においては、それをベースに4年間の看護師の基礎教育をつけて、そして考えていこうじゃないかと。それで、統合カリキュラムの問題はどうなんですかという話になったときに、前回の菱沼先生がおっしゃった免許と学問をごちゃごちゃにしているからややこしくなってくるのであって、統合的な、もしかしたら統合的という意味じゃなくて、在宅とか訪問看護とかいろいろな、そういうものは看護師にとっても必要でしょうというのは、それはもちろんそうであります。だけど、そこに保健師ですかという話になったときに、今の現場の状況と、保健師の基礎教育はどういうことなんですかということに対して議論しているということで私は認識しております。

【村嶋委員】 今の現行規則下でも、既に助産師は修士課程になっている大学が幾つもあります。8校ぐらい?

【平澤委員】 8校。

【村嶋委員】 そういう意味では、期間自体の問題ではない。もちろん期間も不足だと思いますが、今、統合カリキュラムとして全員を縛っているカリキュラムが悪いと。全員を保健師と看護師をとらせているカリキュラムが悪いと思います。統合化カリキュラムは、看護師の幅を広げることについては、一定の貢献をしたと思います。しかし、それは保健師にとっては不足だったということです。ですから、学生たちは現場に行って、私は保健師になりたくないのに、卒業要件だから来させられている、来てやっているみたいな言い方をする。そうなると、受入れる現場も本当に困るし、学生もストレスが強いし。それから、不十分なまま卒業して就職をした人を抱える現場も困るし、何よりも、それを受ける国民が被害をこうむっていると言えます。看護師は少なくとも目の前でケアしてくれますから、その人が悪ければ文句は言えるわけです。だけど、保健師は直接一人一人、全部が目に見えるわけではなくて、個別にケアした何人かから地域の問題を見て、地域がより良くあるようにと一生懸命施策化していくわけです。施策化できない保健師がいたら、その地域の住民は非常な被害をこうむっているわけです。ですから、国民の立場に立つと、質の高い保健師が必要で、それには絶対に積み上げの教育が必要です。

【中山座長】 どうぞ。

【小山委員】 ここは文部科学省であるということを私たちは認識しなければいけないと思います。そして、大学教育について話し合っているんだということですね。残念ながら、看護教育は養成所教育から始まりました。それで、大学の数が0.何%の時代が随分長い間続きました。看護の質を保つということで、数は少なかったけれども、大学も含めての厚生労働省、文部科学省の合同省令のいわゆる「指定 規則」があります。今は大学の数が2割以上になっても、それを引きずっているわけです。ただし、大学の教員たちは、職業教育もあるけれども、職業教育だけではなく、やはり大学教育として看護学部の教育をということで相当努力してきております。それはどういうものなのかと相当いろいろと苦労しながらやってきているのですが、それで、その成果の例として先ほどの桑畠さんの発表を皆さん聞かれたと思うのですが、桑畠さんは大学卒の保健師の発表だと思います。どうぞ、桑畠さんの資料2をご覧になっていただけますでしょうか。桑畠さんがここに書いておられる保健師活動の内訳と書いてあるのは、いわゆる保健師の業務として挙げられていることだと思うんですね。ところが、彼女はこれだけではなく、何と言われたかといいますと、「自分が受けた新人教育」のところの2番の最後のところで、「仕事の仕方を自分がどうやって学んだか」ということや、「時間があれば地域に出た」とのことでした。つまり、職業教育であれば、ここに書いてあることを業務の時間内に済ませればいいことですが、彼女は大学教育を受けたことで、主体的に時間があれば地域に出、地域住民とできるだけ接した。そして、どのようなことをすればいいのかを考え、研究としての材料にも気づいておられる。問題を何とか解決したいけれども、大学は助けてくれないだろうかという大学に望むこと等のいろいろな提言等も、わずか5年目では、4年しか臨床されていませんけれども、5年目の保健師でありながら、そういうことができるように育っている大学の卒業生もいるということを私たちは認識しなければいけないなと思います。
 それで、ここは文部科学省で、私も指定規則をどうするかということも大変悩むところではございますが、大学教育としては、「看護師教育」はしていません。看護学教育をしておりまして、そしてそれが予防医療から全部を含めて看護学としてとらえていますので、その結果として保健師の国家試験も受かる、看護師の国家試験にも受かるということだと思います。大学の実習のことについて、先ほど中山座長から出ましたけれども、統合教育が悪いのか、どこが悪いのかを言って欲しい、まさにそこだと思うんですね。実習生が多いのが問題なのか、また、実習生の問題もあると思うんです。そこのところは、やはり先ほど、私は桑畠委員から出ましたように、病院や保健所以外のところでも実習をというのに大変示唆を受けました。確かに保健師になってからの能力というものを学ばせる場というのはすごくたくさんあるんだろうなと。私たちはそれを先入観のように、保健所でなければいけないみたいにして実習を組んでいること自体も問題があるなと反省させられた次第です。以上です。保健師教育で職業教育をすることについて、ここでは議論をしますかということについて問題提起も含めてお話ししました。

【中山座長】 緊急?

【村嶋委員】 いや、何か。

【中山座長】 もし、さっきの資料5-5のことで、看護課長、何かコメントがあれば。養成所指定規則の縛りの問題がちょっとあったのですが。

【野村看護課長】 資料5-5、平成19年の議論は、この検討会では実は様々な議論がございました。新人の実践能力の問題から、現行の制度の範囲内でいいのか。もっと教育期間を延ばすべきではないかといった議論も検討会の中ではありました。ですけれども、ここの検討会では、カリキュラムの改正をするということをメーンの検討会としておりましたので、現行制度の範囲内でカリキュラムの改正の議論をしていただいたというのが結果でございます。ですので、この範囲内でやったものですといったことをこの報告書の中で明記しているということでございます。実は、この後、看護基礎教育のあり方に関する懇談会というものを平成20年に1月から7月までやりまして、平成20年11月から、先ほどありました厚生労働大臣が主宰した検討会で、看護の質の向上と確保に関する検討会、ここでも看護基礎教育の議論をいたしました。ですので、この後、2回、検討を行っているわけです。この大臣の検討会の中で出てきましたことは、現行の制度の枠にとらわれずに、教育の内容について今後議論をしていくといった大きな方向が出されておりますし、それから統合教育についても、その検討をする、見直しをするといったことが厚生労働省と文部科学省が協力して結論を出すべきだといったことが出されております。その前提としては、今後より高い専門性も求められることから、その内容を充実し、臨地実習の場の確保も必要だと。そういったところから、そういった助産師、保健師教育については結論を出すべきだと。そういったところまでを大きな方向性として出されたところです。ですので、現在、議論は平成19年以降、進んでおるというところでございます。充実をするために、いろいろな角度から議論が今行われているというのが現状かと思います。

【中山座長】 ありがとうございました。時間が迫ってまいりましたが、村嶋委員、どうぞ。

【村嶋委員】 私は、今日の発表、資料2に関しては、全体の業務の統計を示すだけではなくて、自分が保健師として実施できたこと、自分の保健師としての専門性や、それをどう獲得したかという中身、自分が救ったケースだとか、そういうことをぜひ出していただきたかったと思います。本当は言わないでおこうと思ったのですが、小山委員の発言がありましたので、一言申し上げます。自分の成果をどう見せるかということ、それは保健師が一番悩んでいるところですが、やはりそういう成果をきちんと出せるようにして、自分の仕事をアピールしていただきたかったと思います。
 また、別に地域保健に限らず、産業も探せばいいじゃないかと小山委員はおっしゃいますが実習場は、産業も満杯です。保健師の実習ですので、産業保健師がきちんと活躍している、そういう企業・事務所でないと実習に行けません。そういう意味では、保健師の臨地実習の場は満杯です。以上です。

【中山座長】 どうしてもという方がございましたら。宮﨑委員、どうぞ。

【宮﨑委員】 済みません、資料5-1の別表1の下の右側のグラフのことなのですが、ちょっとそれだけよろしいですか。国立が単独で実習しているのが0件というこの棒グラフのことなのですが、この単独という意味なのですが、これは保健師の実習だけでやっているのがゼロという。つまり、私が伺いたいのは、保健師の免許にかかわる実習を統合化したカリキュラムでやっている場合は、保健師の実習としてやっているけれども、訪問看護の実習としても位置づけている。だから、軸足がどちらかという、そういうところがあるんだということなんですね。だから、ゼロというここの意味合いがどういうふうにしてお考えになったのか。そこだけ説明を聞いておきたいと思います。

【中山座長】 どうぞ。

【小山田看護教育専門官】 このゼロというのは、皆様に新カリキュラムの申請をするときに出していただいている対比表の中からデータを拾ってきております。おっしゃるように、ゼロというのは、保健師教育の地域看護学の実習にもカウントしますし、在宅看護学など看護師課程のカリキュラムでもカウントする、すなわち双方の教育内容を合わせて教授している、そういう単位数を拾っていった中で、看護師課程ではカウントせず、保健師課程のみに単位を計上している実習の単位数として拾ったのがたまたまゼロだったのですが、それが先生のおっしゃる軸足というのがどこに置かれているのかまで精査しているわけではありませんので、そういう意味合いはここからは読み取れないものと思っていただけたらと思います。

【中山座長】 どうぞ。

【坂本委員】 小山委員に反対と言われましたので、ちょっと補足しておきます。私は、この会は公開ですし、後ろにもいろいろな方がいらっしゃいますので、看護師を育ててないという考え方は、私はちょっとつらいものがあるなと思います。看護学という学問をやっていくということは大賛成ですが、最終的には看護職についていくわけで、つかない人を育てるわけじゃありませんし、医師の教育もそうですが、医学をやりながら最終的には医師になっていくということですので、ちょっとよく分からないのですが、私は現場にずっといたので、看護師を育ててないと言われると、ちょっとつらいものがあるなという気がしました。

【小山委員】 看護師教育だけではないという意味です。看護学教育とは言いながら、大学では当然のことながら職業教育もやりますし、重視してもいますので、言いたかったことは、「だけではない」ということです。

【坂本委員】 分かりました。

【中山座長】 ありがとうございました。議論がヒートアップしたところで時間が迫ってまいりましたので、本日の討論はここまでにしておきたいと思います。もし、どうしても発言が足りないことがありましたら、小山田専門官に何か寄せていただければいいですね。言い足りなかったことがあったら、メモを作って小山田専門官のところに寄せていただければと思います。それで、第1回、第2回とすすめ、今日は2人の現場の方に来ていただきまして、この会は2回目を持ってきました。第3回に向けまして、統合化したカリキュラム、こういうものがどのように考えられてきたのか、あるいは大学が急増する中で、看護学校、大学のあり方というのはどのように考えられてきたのかということで、私としましては、話を聞きたいと思います。先輩たちは苦労して180校にまで大学を増やしてきたわけですね。そういった大学教育を広げるということに尽力された方々、私もこのところ何人かの先輩たちに会いますと、2校から始まり3校になり、11校の時代がとても長いのですが、14校になり、そして一気に180校になり、この変遷の中で、とても苦労してきているわけです。その方たちがなぜこんなに大学にしたかったのか、そして大学教育の中で、看護師、保健師、助産師という3つの免許をはめ込めてやってきたというのはなぜだったのか、歴史的なことも含めた先輩たちの大学教育に関する考え方、意見も聞いてみたいと思っております。またそういったことも踏まえて、私自身は、日本の看護師も国際的に通用するような水準になっていって欲しいという問題もあります。小山田専門官と副座長の菱沼先生とも相談しながら、今日みたいな形でプレゼンテーションをしていただける方を探したいと思います。第3回に向けて、できるだけ皆さんの意見交換の時間を多くしたいと思いますが、お頼みする形をとってよろしいでしょうか。それで、第3回は持っていきたいと思っております。第4回でどういう方向に着地するのか、ちょっと私もまだ検討がつきませんが、最初に言いましたように、全く同じことの繰り返しにならないように、1つでも目に見えるものができるような形の中間まとめにしていきたいと思っております。その点を皆さんにも心していただきまして、第3回、第4回に臨んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まだ言い足りなかった先生方もあるかと思いますけれども、一応これで今日の検討会は終わりたいと思います。事務局からまだ連絡事項、その他があると思いますので、小山田専門官に渡したいと思います。よろしくお願いします。

【小山田看護教育専門官】 ありがとうございました。資料7に当面のスケジュールということでお渡ししてございますけれども、次回、第3回は5月11日月曜日の17時半から予定をさせていただいております。開催場所については、追ってご連絡をいたします。また、先ほど座長から資料提供があればというお話でしたが、もし資料提供をいただける委員におかれましては、準備の都合上、5月1日までには事務局にご提出いただけたらと思います。事務局からは以上でございます。

【中山座長】 ありがとうございました。それでは、終わりにいたしたいと思います。今日は本当にありがとうございました。

 

お問合せ先

高等教育局医学教育課看護教育係

小山田看護教育専門官

看護教育係 中村 先立 鎌倉
電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2906)、03-6734-2508(直通)

(高等教育局医学教育課看護教育係)