高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議(第5回) 議事要旨

1.日時

平成30年5月22日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省旧庁舎2階 文化庁特別会議室

3.出席者

委員

三島座長、村田副座長、相川委員、赤井委員、千葉委員、真壁委員代理(佐竹委員の代理)

文部科学省

常盤生涯学習政策局長、義本高等教育局長、伯井文部科学戦略官、村田私学部長、信濃審議官(高等教育局担当)、寺門生涯学習政策局政策課、塩崎学生・留学生課長、萬谷生涯学習推進課長、角田私学行政課長、丸山私学助成課長、森友主任大学改革官、廣野専修学校教育振興室長

オブザーバー

大谷理事(日本学生支援機構)

4.議事要旨

(1)関係団体ヒアリング

<日本私立大学連盟>(三木常務理事(青山学院大学学長・常務理事))

・ 支援対象者の要件については、支給打ち切りの考え方に懸念がある。「1年間に取得が必要な単位数」の概念が不明確。「GPAが下位4分の1」という条件は大学や学部等ごとの制度運用の違いによって大きな差異が生じる。支援が真に必要な学生に対する支給打ち切りは当該学生の退学に繋がりやすい。

・ 実務経験のある教員の要件については、学問分野、学部によって「実務」の考え方が異なること、開設総科目数を母数とした場合多様な科目を置く大学ほど条件が厳しくなり得ることに留意が必要である。

・ 外部理事の要件について、外部と内部の基準が不明確であることのほか、外部人材というだけでは大学の健全な発展に繋がらないこと、大学の事情が分からない人は適切なアドバイスをすることが難しいこと等に留意が必要。他方で、内部の理事だけで良い訳ではなく、当該大学出身者ではない企業経営者や大学学長経験者等が複数人いれば、理事会の運営はきちんとしたものになると思われる。

・ 成績管理の実施・公表は一般論として正しいが、単純にペーパーテストなどで点数評価できない教育も求められていることに留意が必要である。財務・経営情報の公表は、異論はない。

・ 現在、国立大学に入ると初年度約80万円かかるが、私立大学は約130万円かかる。この点、今回の措置により、例えば、国立大学は0、私立大学は約50万円の負担になるとした場合、この差をどう見るか。0:50は決定的な差になるとも考えられ、格差を埋めるような配慮をお願いしたい。

・ 授業料は学部ごとに大きく違うことについて、考慮する必要があるのではないか。

・ 授業料減免や給付型奨学金は、学生個人を支援する「個人補助」としてしっかりと位置付けるべきではないか。

・ 現行の授業料減免制度で授業料の全額免除を受けていた学生が新制度によって新たな個人負担を求められることのないよう、十分な支援額を確保してほしい。

・ 国立との更なる格差、少子化の進展、AIの発展による所得格差拡大という三重苦を私立大学が乗り越えられるか、危惧をしている。国立大学の学生も私立大学の学生もともに日本社会を支える者として平等な支援をしてほしい。

(質疑応答)

○ おっしゃる通りのところも多いが、制度設計となるとなかなか難しい面がある。外部理事の質をどのように客観的に決めればよいのか、成績評価を点数以外でどのように行うのかなど、何かイメージがあれば伺いたい。

→(日本私立大学連盟)外部理事については、過去の実績も踏まえ、委員に叡智を出してもらえればありがたい。成績は客観的基準があるようでないのが実情であり、難しいのであればあまり踏み込まないという方法もあるのではないか。

→(事務局)個人補助のご指摘があるが、現状についてお話しすると、授業料減免措置に係る補助について、設置者負担主義の観点から、授業料減免を大学等の機関がまず行い、当該措置に対する機関への補助として実施する方法が適当であると考えている。大学等における授業料減免は、これまでも機関補助で実施されており、今回も、それと同様の方法で実施することが適当である。大学院生等は、機関補助で実施される。大学の授業料減免措置については、経済政策パッケージにおいて、機関に交付することが想定されている。


<公立大学協会>(中田事務局長)

・ 公立大学の場合、その地方の教育事情や人材育成の要請を踏まえて設置される。大学の自治だけでなく地方自治の論理が混ざり合った状態。

・ そのため、そもそも地域の求める人材要請に基づき、当該地域で働く職業人を育成するということが配慮されている。外部人材の理事という要件についても、自治体関係者を含め、地域の人材がしっかりと入り込んでいる。

・ 公立大学については「政策パッケージ」において言及がなかったので危惧をしている。公立大学の特殊性も踏まえ、しっかりとした制度設計をお願いしたい。

・ 公立大学協会の調査では、回答のあった全74大学で実務経験のある教員を配置。分野では、看護保健医療系、工学系、芸術系で、実務経験のある教員が多数を占めている。そのほか、キャリア教育に係る科目、地域志向の科目等で実務経験のある教員が担当しているケースが多い。

・ 3/4以上の法人で理事の2割以上を、法人の役員又は職員でない者から任命。例えば、大阪府立大学では、理事長及び理事の総数の1/2以上を法人の役員又は職員でない者とする旨を定めている。法人化されていない大学には理事職は無いが、評議会等に自治体職員を加えたり、議会の委員会が外部評価を行い経営に活かすなど、学外者を大学経営に参画させる例がある。また、法人化している大学では、設立団体ごとに設置されている評価委員会がかなり近い距離で法人評価を行い経営について意見を述べている。

・ 財務・経営情報の開示については、地方独立行政法人法で財務諸表の公表が義務づけられているほか、経営に関する情報として業務の内容及び業務方法書、中期目標、中期計画、年度計画、事業報告書等の公表が義務付けられている。法人化されていない大学の予算は自治体会計の一部として、議会のチェックを含め、透明性が高い形で執行される。教育情報については、公立大学協会で教育情報公表ガイドラインを策定しており、一つの基準として活用されている。

・ GPAを活用している大学は87.8%。授業料減免や奨学金の対象者の選考や、成績優秀者の表彰や履修登録単位数の上限緩和、成績不振者への指導等に活用されている。

・ 高等教育の無償化については、大学を設置する主体として、自治体が確実に責任を果たせるように制度設計をしてほしい。

(質疑応答)

○ 学生寮への公的支援はあるか。

→(公立大学協会)1、2年生は全て全寮制であるなど、教育課程の一環として全寮制を取っている一部の大学において、一定の支援がなされていると承知。

○ 非法人化大学は財務・経営情報を自治体会計の一環として公表しているが、大学単独として見た場合に、赤字の状況等は判断できる仕組みになっているのか。

→(公立大学協会)自治体が、独自で企業会計に準じた措置を導入している場合、あるいは特別会計となっている場合など、わかるようになっている場合もある。そうでない場合にはわからない。自治体会計においては、そもそも決算については、なかなか詳細な情報として出てきにくいが、予算の定めるところにより厳格に執行するため、あまり赤字がでるというようなことは想定されていない。

○ 決算が予算とどれほど差があるのかなど、情報公開をもう少しやるべきなのではないか。

→(公立大学協会)地方公会計全体の課題として捉えてほしい。

○ 国際教養大学の場合、1年生は入寮が義務付けられている。必要な経費は学生からとる場合もあるが、施設整備等、必要な経費は設置者が負担。

○ 公立大学は基準財政需要額で見ると、大学への交付額は自治体によってバラエティに富んでいる。自治体の持ち出しで大学に渡している場合、逆に、交付税を受けているより少ない額しか大学に渡していない場合もある。その点についてはどう考えているか。

→(公立大学協会)地方自治の判断なので、一般財源をどのように使うかについて云々というのは法令の定めから言っても難しいが、公立大学を設置する自治体として大学の質を担保していく責任は問われるべき。今回の支援措置についても、オールジャパンとしてやる際に、大学を設置する自治体としての責任を果たさないことはあってはならないと思う。


<日本私立短期大学協会>(坂根副会長(香蘭女子短期大学理事長・学長))

・ 短期大学に通う学生の経済状況は厳しいものがある。負担軽減策は学生、保護者にとって大変ありがたい施策と考えている。

・ 香蘭女子短期大学の場合、5年以上の実務経験を有する専任教員、非専任教員の割合はそれぞれ20%と39%で、教員全体では35%を占め、学科毎の総開講単位数に占める実務経験を有する教員による科目の単位数は16%~28%である。短期大学全単位数のうち22%が実務家教員による授業。短期大学にとって、実務経験のある教員による科目が修得単位数の1割、という要件はさほど高いものではないと思うが、オムニバス形式等を含めたり実務経験の内容と授業科目の内容が合っているかを個別に判断したりする場合、その正確な割合を出すことは難しい。現場を離れた期間によっても、把握の煩雑さは変わってくる。

・ 実務経験を有する教員は自分が現場で得た経験を学生に伝えている。香蘭女子短大では、卒業生の企業家によるオムニバス形式の「企業論」という授業科目は非常に学生に人気だった。

・ 香蘭女子短大では、法人の理事定数7名のうち3名が外部理事で、総合病院院長、弁護士、民間会社経営者。常勤理事は理事長、教学担当、財務担当、総務担当の役割分担をしているが、外部理事については明確な役割分担をしていない。短期大学法人は小規模であり、理事定数5名の場合、2割を超える外部理事を置くことは法人によっては厳しい場合もある。

・ 成績管理について、平成29年度には87.4%がGPAを導入。GPAの活用方法としては「学習の指導」が最も多く、退学勧告への活用も増えている。

・ いずれの短期大学も出席は重視しており、8割以上の短期大学が、試験の受験資格として3分の2以上の出席を求めている。多くの短期大学は授業への出席を重視し、毎回出席を取っている。欠席が増えてきた学生には指導が行われる。単位認定に関し、予習・復習の徹底を組織的に行っている短期大学は84.8%。

・ 多くの私立短期大学は財産目録、貸借対照表、収支計算書、事業報告等をウェブ上に公表している。就職先等は卒業生のメッセージとともに大学案内等に掲載。教育活動やイベントに関しては主にSNSを用いて情報提供している。

・ 香蘭女子短大では、特別奨学金を支給しており、入学後に、主たる学費支弁者が死亡、あるいは事故等で働けなくなるなどの理由で家計の急変があり、修学が困難になった場合に支給。800人程度の学生のうち、この制度での支援は多くとも4,5名、通常2,3名。成績、出席率を勘案しランクを付け、ランクで支給額が異なる仕組み。

(質疑応答)

○ 短期大学や専門学校に目標を設定している子どもたちは多い。2~3年後に現場での即戦力となるよう育ててもらっていると認識。経済的にあまり恵まれていない子どもたちが短大や専門学校に進学する場合が多く、その中で頑張っている子どもをどう育てるか、学校側も苦労される面は多いと思う。是非子どもたちを導いていってもらいたい。  

→(私立短期大学協会)短大は小規模なので先生と学生の距離は近い。呼び出して厳しく指導するものの、一度でアウト、切り捨てる、ということではない。勉学に専念してほしいが、アルバイトをせざるを得ない、貧しい家庭の学生も多い。そのような学生たちにも進学の道が閉ざされないよう手厚い支援をお願いしたい。

○ 外部人材の理事について、要件を満たすことが厳しいとの意見があったが、何か代替案はあるか。

→(私立短期大学協会)法律上外部人材の理事を1名以上置くことになっており、それに抵触する法人は無いが、財政的に厳しい法人も多く、十分な報酬が支払えない場合もあると承知。できれば1名以上のままであれば有難い。


<全国専修学校各種学校総連合会> (菊田事務局長)

・ 本政策の趣旨を踏まえると、具体的制度設計にあたっては高等学校等就学支援金の考え方と同様に、機関への補助の観点よりも学生に対する支援の観点に重点を置くべき。しかし、すべての国民が負担する消費税を原資とすることにかんがみて、とくに授業料減免に関する補助については、一定程度の対象機関に対する要件を付すべきとの考え方には同意。

・ 実務経験のある教員の要件については、教員の実務経験の範囲をどのようにとらえるかが問題と考える。実務経験の具体的内容と担当する授業科目との一定の関連性を求める観点から、ある程度幅をもって実務経験要件を設定することが必要。産業界のニーズを踏まえた教育が担保されることが本要件の趣旨ならば、カリキュラム編成にあたって産業界が関与する体制が構築されていることが肝要。さらに、実務経験のある教員や産業界との連携による研修を受けた教員による授業が行われることが重要。専門学校における具体的な事例は、職業実践専門課程において実践されている。

・ 外部理事の要件については、専門学校の場合、学校法人立以外にも多様な設置形態の学校があるところ、学校法人以外の法人等に関しては、学校法人における外部理事の任命に準じた配慮が必要。学校運営や教育内容に関して外部からのチェックが必要であることが本要件の趣旨であるならば、学校法人以外については、学校関係者評価や外部人材によるカリキュラム編成が客観的に認められる場合は、本要件を満たしているとすることが妥当。なお、これらに関する具体的事例は、職業実践専門課程において実施されている。

・ 厳格な成績管理の実施・公表の要件については、成績評価基準に基づき成績管理を行い、進級・卒業等の判定を行うことは当然であり、その規定等の公表も必要。専門学校は単位制ではなく時間制であることから、出席状況の管理については極めて厳格に運用されている。また、専門学校では多くの場合必修科目を履修・修了しなければ進級・卒業ができないのが実態。つまり、進級判定や卒業判定そのものが厳格な成績管理と言える。一方、たとえば国家資格の合格率が高い学校においては、GPA下位の受給者であっても資格を取得することは十分にあり得ることで、それでもなおGPAによる判定で支給を打ち切られることも想定される。また、ある特定の分野で突出した能力を発揮する学生についても、GPAによって同様に支給を打ち切られる場合も考えられる。GPAを用いた支給の打ち切りには大きな問題があるのではないか。

・ 公的支援を受けることの要件として、財務・経営情報の開示は当然。職業実践専門課程認定申請に当たっては経営情報を含む情報開示についても記載。

・ 職業実践専門課程制度では、企業との連携による教育課程の編成、教員研修の実施、学校関係者評価の実施、情報公開等がその認定要件となっており、今回の機関要件について同様のあるいは同程度の要件を課している。負担軽減方策の具体化にあたっては職業実践専門課程制度の活用にも留意いただきたい。

(質疑応答)

○ 地方出身の学生は、生活費をどのように支弁しているのか。  

→(全国専修学校各種学校総連合会)アルバイトや奨学金。専門学校の場合、自宅でやってくるべき課題が多いので寝る間を惜しんで濃密な2~3年間を過ごしている。専門学校で始めて「学習をする習慣」が身についたという学生がかなり多い。1対1で先生が面倒を見ながら個々人で学習に励んでいる。大学と同様、専門学校にも制度設計に当たって十分配慮いただけるとありがたい。

○ 学校法人立は、成績評価や外部理事の要件など含め、トータルでほぼ今回の要件はクリアできる見込みと考えてよいのか。

→(全国専修学校各種学校総連合会)そうではない。義務化をされている自己点検評価も十分でない学校もある。できるだけ早く要件を提示して、要件を満たすための準備期間をいただけるとありがたい。専門学校の場合はすぐに書類を持ってこいと言われても難しい。初年度目に対象外となってしまうとマイナス面は多いので配慮願いたい。

○ 専門学校は比較的経済的に厳しい層の子どもが進学している。だからこそ、きっちりした対応ができる専門学校でないといけないと思う。

○ 自宅生、下宿生の割合如何。

→(全国専修学校各種学校総連合会)データは持ち合わせていないが、一般的には地元出身者が多く通う傾向。

○ 職業実践専門課程の申請様式はかなり情報が整理されているが、このような情報はHPで公表されているのか。

→(全国専修学校各種学校総連合会)個別の学校のHP、及び文部科学省のHPで見られると承知。

○ 職業実践専門課程の申請様式にあるような情報を一覧性のある形で公表している学校はどの程度あるのか。

→(全国専修学校各種学校総連合会)認定を受けている学校は全体の約1/3。都道府県によっては、専門学校の情報を一覧にして公表している場合もあるが、都道府県の間で差がある。数が多いので、公表の仕方が都道府県レベルで統一できているところとそうでないところがある。

○ 例えば「理美容の専門学校は県内に一つだけ」、という場合もある。その場合学生は他の県まで行かなければいけなくなる。なるべく条件を充足できるように、早めの情報提供が求められる。


<国立大学協会>(山本専務理事)

・ 国立大学協会としては、今回の高等教育の無償化は、経済的に困難な学生にも高等教育を受ける機会を拡充するために経済的支援を拡充するという点では賛同している。

・ 各⼤学において、企業や医療機関、独⽴⾏政法⼈での実務経験、教員経験等を活かした授業科⽬を開講。各⼤学の教員には、企業、官公庁等に従事した後に採⽤となった者が多く存在し、実務経験を活かした多様な授業科⽬を開設している。

・ 国立大学の理事の責任は重くなってきており、「教育研究」「経営」双⽅について学⻑を補佐する優秀な人材を各界から求めている。例えば、お茶の水女子大学では、研究・イノベーション担当理事・副学⻑として外部人材を登⽤し、産学連携の推進及び外部資⾦の獲得を強化したり、UNESCO本部⼈事局⻑の経験を持つ外部理事により、グローバル化を推進したりしている。また、筑波大学では私立大学や国⽴研究開発法⼈での勤務経験のある外部理事から、⼤学運営及び教学に対する助⾔を得ている。この他にも、企業、官公庁等に⻑年従事した後、教員に採⽤され、現在、理事として⼤学運営に参画している例もある。また、外部⼈材の意⾒を⼤学運営に取り⼊れる仕組みの例としては、地元企業や⾦融関係等の有識者を「⼤学経営改⾰室」の客員として配置している筑波大学の例や、研究科の評議会の構成員に外部⼈材を加えている山口大学の例がある。

・ 国立大学には経営協議会や監事の制度があり、経営協議会の委員の過半数は学外委員としているが、学外委員には、産業界、他の国公私⽴⼤学、地⽅⾃治体など各⽅⾯の有識者を選任。全国⽴⼤学の学外委員のうち約42%は産業界出身である。

・ GPAはほぼ全ての大学で導入されており、修学指導や学⻑表彰、成績優秀者奨学⾦、外部奨学⾦等の選考資料に用いられている。

・ いずれの大学でも、出席率を勘案した厳格な成績管理に努めている。出席管理システム、出⽋票、⼩テストの受験状況等により把握しており、⼀定の出席率を単位認定試験の受験資格とする場合もある。

・ 財務・経営情報の開示については、国⽴⼤学法⼈法により開⽰が義務付けられている、組織、業務、財務、評価及び監査等に関する情報をWEB等で公表。法令上の規定に基づく公表のほか、教育理念・方針等様々な情報を公表している。

・ 3月8日に会長名で、真に必要な子供に対する支援は歓迎する旨、協会としての立場を表明している。ただし、学生の意欲と能力に基づいた進路選択が阻害されないよう、また、各大学の多様性が阻害されないよう、留意願いたい。対象となる大学の要件の一つに、外部人材の理事への登用に関するものがあるが、経営層の厚みと多様性を図るためには、国立大学法人法の理事数の規定を緩和すべき。現在も運営費交付金で確保されている授業料減免について、各大学は、大学院生も含めきめ細かな支援を実施している。このような支援が引き続き可能となるよう財源確保に努めてもらいたい。

(質疑応答)

○ 経営協議会への言及があったが、それは、理事に縛ることなく、経営協議会で外部の意見を取り入れていれば足りるとしてほしい、という趣旨か。

→(国立大学協会)理事数の上限が撤廃されるなら理事の立場で外部人材を入れてもよいと思う。経営協議会についての説明は、現在外部の意見を取り入れていないということではない、ということをご説明した次第。学術へのリスペクト、熱意、理解があればどのような人でも良いが、そのような人がどの程度確保できるかは難しい課題。

○ ストレートで卒業する学生の割合がわかれば教えてほしい。卒業に4年以上かかる学生もかなりいるのではないか。

→(国立大学協会)データとしては把握していないが、学部によっても違うと思う。理系は途中段階で留年する学生も多い。人文社会科学では、それほど高くなかったと認識。

○ どのくらいの学生が大学院に進学するのか。

→(国立大学協会)工学系であれば6~7割の学生が院に進学。一方、人文社会科学系はそれほど高くはない。


<全国公立短期大学協会>(鈴木会長(山形県立米沢女子短期大学長))

・ 公立短期大学は全国に15ある地域密着型の大学で、法人化しているのはうち9大学。地元からの入学者が多いこと、地元への就職率が高いことが特徴。初年度の入学料、授業料の平均額は国立大学、私立大学と比較して低い。公立短大を志望した理由についての学生へのアンケート調査では、学費が安いことが最も多い回答。経済的に困難な学生も多い。学生たちは、厳しい経済状況の中でも一生懸命学んで色々な能力を身に付けている。

・ 実務経験のある教員の科目の例としては、例えば産業情報学科・地域福祉学科では、設計事務所勤務経験者が「デザイン計画論」を担当している例、マスコミ関係勤務経験者が「プレゼンテーション」を担当している例、金融関係勤務経験者が「ビジネス実務演習」を担当している例等がある。

・ 短期大学の学科は小規模であり、学科ごとに科目の配置割合の基準を設定されると達成困難、大学全体での基準とすべき。特に人文系学科においては、必ずしも実務経験者のある教員を必用としない学科もある。よって、人文系学科においては一律の基準ではなく、特色に応じた柔軟な対応も可とすべき。学外でのインターンシップ、実習などで、実質的に実務経験者からの指導を受けている場合などは、対象とすることが望ましい。

・ 外部人材の理事については、法人化しているところは、設置者の定めに基づき理事のうち1~3名の外部人材を置いている場合や、理事には外部人材を置いていないが、「経営評議会」や「教育研究評議会」等に外部人材を置いている大学がある。法人化していない大学については、教育長、校長、NPO理事長などで構成される有識者懇話会を年に1~2回開催し、高大連携、就職問題などを話し合ったり、外部アドバイザー委員会で大学運営、業務改善について外部有識者の意見を聴取したりしている。法人化している場合であっても、「理事会」だけではなく「経営評議会」や「教育研究評議会」等に外部人材を置いている場合も対象とすべき。法人化していない大学では、何らかの形で外部有識者の意見を聴取し大学運営や教育に反映させている場合も対象とすべき。特に、法人化していない大学への配慮をお願いしたい。

・ 成績評価について、GPAを導入しているところはまだ少ない。導入しているところは、卒業、進級の際に優秀者を表彰したり、コースの選考基準に用いたり、授業料減免の学力基準として用いたりしている場合がある。GPA以外の方法としては点数によって成績を付けているが、その場合、編入するに当たっての評価、授業料減免の評価、就学指導等に関しての評価に成績を用いている。

・ 財務・経営情報の開示については、法人化している場合設置者(地方公共団体)の定めに基づき、情報開示している。あるいは、設置者(地方公共団体)の定めに基づき大学の定款を定め、これにより情報開示している。法人化していない場合(県市立)、設置者(地方公共団体)の定めに基づき、情報公開することは可能。教育活動情報については、「大学ポートレート」や、「大学独自のホームページ」、各種「ガイド」などにより、3つの方針(アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー)や卒業後の進路(就職状況、進学状況)などについて、学科別に、また、進路の分野別等により積極的に開示している。

・ 公立短期大学を目指す学生には、幼・小・中・高等学校段階からの家庭の経済的な環境もあって、短期大学を選択することとなった者も少なくない。制度設計に当たっては、成績評価に偏ることなく、勉学に対する意欲を評価する制度としていただくとともに、幅広く、意欲ある学生が制度の恩恵を受けられるよう配慮していただきたい。また、恩恵を受ける者とそうでない者の段差をなだらかにするとともに、家庭経済環境を考慮し、減免を受けながらアルバイト等により生活費を獲得することも可としていただきたい。

・ 協会の総会でも今回の無償化措置について、総論部分を含め、活発に議論が行われた。例えば、「高等教育段階だけでなくそれ以前の段階でも負担軽減を考慮すべきである。」「枠組みを作る段階で幅広く意見を踏まえて制度設計してほしい。」等の意見が出た。


(質疑応答)

○ 経済的に厳しい子どもたちが、学費の安い進学先として選択していく場合も多いと認識。学費が安くてもかかるものはかかる。アルバイトしながらでも頑張って学習し目標に向かっていく学生も多い。今は制度の大枠が決まった後で細部のことを議論しているが、枠を決める前の段階から意見を伺って決めていくことができればより良かったと思う。

○ 成績評価に偏ることなく勉学に対する意欲を評価する制度にすべきとのことだが、何か具体的にイメージがあれば教えてほしい。

→(全国公立短期大学協会)成績評価だけでなく、一生懸命単位取得している姿勢も評価してほしい。


(2)事務連絡  

事務局より、次回日程は5月末~6月上旬頃で調整すること等について説明。

お問合せ先

文部科学省高等教育局人生100年時代構想推進プロジェクトチーム

電話番号:03-5253-4111(内線3505)

(文部科学省高等教育局人生100年時代構想推進プロジェクトチーム)