高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議(第4回) 議事要旨

1.日時

平成30年5月15日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省旧庁舎2階 第2会議室

3.出席者

委員

三島座長、村田副座長、相川委員、赤井委員、千葉委員、佐竹委員

文部科学省

常盤生涯学習政策局長、義本高等教育局長、伯井文部科学戦略官、村田私学部長、信濃審議官(高等教育局担当)、寺門生涯学習政策局政策課、塩崎学生・留学生課長、萬谷生涯学習推進課長、角田私学行政課長、丸山私学助成課長、森友主任大学改革官、渡邉教育改革調整官、廣野専修学校教育振興室長

オブザーバー

大谷理事(日本学生支援機構)

4.議事要旨

(1)事務局説明  

塩崎学生・留学生課長より、配布資料について説明。


(2)意見交換

次のような意見が出された。

【1.支援対象者の範囲(家計基準)について】

○ 全体の方向性は良い。資産の確認は、生活保護でやっているが、資産を誰がどのように把握していくのか。ルールは決めたとしても、ルールの実効性をどう担保するのか。

○ 既に高等学校段階での支援を延長するのが合理的ではないか。ただし、レアケースについては、公平性担保のための検討が必要。

○ 真に支援が必要かについて、生活保護等では審査をしっかりとやっている。混乱が生じないよう、色々な制度の間でばらつかないようにしてほしい。資産がある世帯、ふるさと納税をしている世帯は、「真に必要」とは言えないと判断してよいのではないか。途中で所得変動があり支援が必要になった場合には、家計急変のケースとして対応するのが適当ではないか。逆のケースもあり、停止もありうる。高校卒業後2年以内までであれば良い。

○ 資料記載の方向性で良いと思うが、実効性や線引きをどうするのか。真に所得がある人は対象外という方向性は良い。   所得基準について、公平性から調整して、適切な額を支給すべき。また、何年かして見直すのは良いと思う。   資産要件は、資産の把握をどうするのか。家計基準についても過去の所得や学生本人の所得をどう判断するか。

○ アルバイトをしなくとも賄える水準ではない、ということでよいか。

○「住民税非課税世帯に準ずる世帯」について、はっきり線引きできるのか。 自助努力を残しておかないといけない。

○ 理想的には、支援の崖は無くす方が良いだろう。一定の率で支援額がなだらかに落ちていく方がわかりやすく、また、敢えて所得を変えようとするインセンティブも無くなるので望ましいのではないか。

○ 支援の崖をフラットにできるかどうかは論点に入っているのか。

→(事務局)「給付額の段差をなだらかにする」ということは閣議決定にも書かれているが、手続的な面も考慮する必要がある。


【2.授業料減免額の考え方について】

○ 方向性としてはパッケージを踏まえるとしても、私立大学に対して加算する「一定額」とはどのくらいにすべきなのかは、難しい問題である。私学としてはたくさん必要と主張するが、一方で財政的事情もある。色々な方の意見を聞いて適切なバランスで決めていくしかない。 入学金についても、資料にある通りの方向性で良いと思うが、現在の授業料減免との関係性をどうするか。既存の授業料減免関係の予算が浮いてくるところ、国として別の財源に回すのか否かで、議論の方向性も変わってくるだろう。

→(事務局)高校無償化の財源に充てることが閣議決定されている。

○ 方向性は大筋では良いと思う。地元では、毎月の資金をどうするかの目処は立っていても入学金の工面に苦労するとの声を聞く。今回、入学金も含めて措置するのは良いと思う。幼少期からの格差があるので、低所得世帯で国立大学に入るような子どもはまだ少ない。そういうところを補ってもらえると助かる。

○ 方向性については概ね賛同。国立高専については、寮費で優遇されている面等、他の学校種との違いを考慮する必要があるのではないか。

○ 参考資料P4の学生納付金のデータについて、国立、公立の専修学校は授業料が年額16.7万円、17.9万円と非常に安いが、これらはレアなケースの学校なので、これらについては標準から外して考えたほうがよい。私立の専修学校の年額平均授業料61.3万円は、恐らく看護学校など病院への就職を前提とした、学費の安い学校も含まれているのではないか。専修学校についても、額の設定に当たっては大学と同様にしてもらいたい。


【3.給付型奨学金給付額の考え方、及びその他円滑かつ確実な実施に際して必要な事項について】

○ 学校納付金については、国立私立で大きな差がある。私立は施設整備を授業料に上乗せせざるを得ない。私立大学は施設整備を入れると平均で年間122万円かかる。本来授業料減免の対象としてほしいが、奨学金で対応して欲しい。 貧困世帯は受験料でも非常に苦労している。数校受ければすぐ10万円程度かかる。予備校の試算では、20~30万かかっているとのデータもある。受験料についても支援できるようにしてほしい。また、英語4技能の試験については、遠方での受検が必要な場合もあり、支援対象に入れてほしい。授業料等の引上げが行われる場合の対応に関する言及があるが、例えば、ST比(学生数/教員数)を改善しながらアクティブラーニング等を推進していくと、授業料の引き上げをせざるを得ない場合もある。そのようなケースまで、いわゆる便乗値上げとは捉えないようにしてもらいたい。

○ 受験料は大きな問題であり、これも対象に含めてもらえるのであれば非常にありがたい。一方で、パッケージの、食費や光熱費等の生活費のすべてを賄うかのような記載はお手盛りのような誤解を招きかねず、目標に向かって自活をしていくという意味合いも残す必要があるのではないか。誤解のないよう、「生活費全てを賄うというわけではない」ということはきちんと説明してほしい。

○ 「学生生活を送るのに必要な生活費」というのは、必要最低限、切り詰めるところは切り詰めて生活が何とかできるということ、生活する額をもらって生活しているということを自覚するレベルであることが、「社会通念上常識的」なラインだと思う。必要最低限という趣旨が込められていることを踏まえて、常識的な範囲にする必要がある。そこをしっかりとしないと歯止めにならない。 支援の崖は重要な課題で、金額が大きくなればなるほど深刻。不公平が多く生まれる。

○ アルバイトを全面的に否定するのかという話もある。アルバイトをしても、しっかりと勉強できる大学もある。一方、例えば国際教養大学ではアルバイトの時間は全くない。世論からいうと、成績の良い子どもはしっかり支援すべきということになろう。成績によって差は設けることを前提にしなければ、国民の反発を買うのではないか。一定の歯止めは必要と考える。

○ 高専の住居光熱費は格段に安い。学校種がある中で、一律で金額を設定してよいかどうか、疑問がある。 例えば新聞奨学生で立派な人間性を築いて卒業していく学生もおり、アルバイトも貴重な経験である。アルバイトを否定してはいけない。最低限の衣食住に必要な経費を給付して、それ以外については個々人の置かれた状況に応じて給付することが良いのではないかと思う。

○ 常識的と世の中で評価してもらえるようにしていかないといけない。

○ 例えば公務員の給与は地方によって差がある。生活費も大きな地域差がある。どのように加味するのか。

○ いずれ自治体とも関係が出てくる。多くの県では個人給付、代理受領の形を希望している。専修学校について、都道府県が判断すると、都道府県間で対応に違いが出てくる。所得の捕捉などは市町村も関係が出てくる。知事会、市長会、町村会と最終的に細かい事務調整を行っていただきたいというのが地方団体の要望である。

→(事務局)今後しっかりと調整させていただきたい。


【4.関係団体ヒアリング】

<日本私立大学協会> (佐藤副会長(桜美林大学理事長・総長))

・ 経済的な理由により、大学進学を断念したり、大学入学後に中退したりすることは国としても大きな損失であり、意欲ある者が高等教育を受ける機会を確保するための環境整備は国の責務と考える。

・ 国立と私立の授業料格差を打破し、意欲ある者の高等教育へのアクセスを確保するためには、国公私間の公的支援の格差是正がまず検討されるべきである。

・ 私立大学生に係る授業料減免措置については、授業料に実験実習費、施設設備費、教育充実費や諸会費等を加えた「学生納付金」を対象とすべきである。

・ 対象校を過度に限定せず、大学進学希望者が希望する大学へ進学可能となるよう最大限の配慮がなされることを期待する。

・ 今後、私立大学が社会から求められる様々な課題解決への期待に応えるとともに、国公私立大学間の授業料格差を是正していくためには、大学進学希望者の大学へのアクセスを確保するための「個人補助」の充実と同時に、私立大学の教育研究環境の一層の充実に向けた「機関補助」の充実、即ち基盤的経費の一層の拡充とがあわせて実現されなければならない。


<独立行政法人国立高等専門学校機構> (谷口理事長)

・ 国立高専では。教員のうち1/3以上が民間企業経験者。そのような人の講義は、学生も社会とのつながりが理解しやすい。

・ 運営に関しても色々な方の協力の下で行っており、日ごろから社会とのつながりがある。成績評価は厳しく熱心にやっており、各学校には原級留置・留年を寧ろ減らすよう依頼しているほど。成績評価の方法は、GPAや100点法など様々。GPAについては課程修了の認定基準や、学科・コースの振り分け、各種奨学金の学力基準、海外留学の成績評価などで活用している。

・ 教育の質保証のため、日常的に生徒の実情をチェックするべく、CBT(Computer-Based Testing)を活用したレベルチェックを今年度より本格実施。

・ 出席については、授業時の担当教員の出席確認、成績の中での出席率の考慮、教員を通じた学校としての一元管理等を実施。

・ 情報公開については、法人として出せる情報は基本的に全て公開している。

(質疑応答)

○ 実務家教員については、教育者としての資格も必要と思うが、教育能力をどのように把握しているのか。

→(国立高専機構)最終的には各校長が判断するが、面接で話をすれば大体能力はわかる。子どもを大事に思うマインドがあるかどうかが、最も重要な観点となる。一方で、話し方など技術的な面は、研修で改善可能。


<全国公立高等専門学校協会> (山﨑会長(神戸市立工業高等専門学校校長))

・ 住民税非課税以外も対象とした広範な制度設計をお願いしたい。

・ 住宅ローン、ふるさと納税などをしている場合、所得が過小評価されるので留意いただきたい。

・ 高専4年次への編入、高専から大学への編入、大学院への編入も減免対象にしてほしい。

・ 現行の給付型奨学金は4年次への編入は給付の対象外になっているが、新制度では対象としてほしい。

・ 成績不振者には支給を打ち切ることを検討しているようだが、成績不振にも様々な事情があるところ、医師の診断書など、情状酌量可能な仕組みを設けてもらいたい。

・ 高専の成績管理は厳格なので、進級できる学力あれば十分社会で活躍可能な水準と考える。進級する者には支給してほしい。

・ 高専は大学と単位付与の在り方が違うので、制度設計に当たっては違いを考慮してほしい。

・ 外部評価委員会で外部からの意見を聞いている。

・ 財務・経営情報の開示については、東京都と大阪府は法人として情報開示、神戸高専は学校教育法に基づいて自己点検・評価し、予算は議会での審議を経ている。


<日本私立高等専門学校協会> (村田理事(近畿大学工業高等専門学校))

・ 高専制度は実験実習を豊富に取り入れた実践的教育を特色とし、1クラス40名程度の少人数クラス編成を維持しており、教育に要する経費は大学工学部と同程度、授業料は私立大学並みにならざるを得ない。結果的に、57高専の内「私立高専」3校だけが高額な授業料となる。こうした大学との違いに配慮し、学生の負担が国公立高専並みになるような授業料減免の支援をしてほしい。

・ 国公立高専54校と比較すると、私立高専の授業料は高額となっている。本科4、5年と専攻科には私立大学工学部と同等、あるいは学納金の1/4以上の給付は必要。

・ 高専は、単位制ではなく、学年制を採用。その年度中に取得すべき授業科目・単位数が決まっており、殆どの科目が必修で、必修科目に1つでも不合格科目があると基本的に留年となる。

・ 単位取得に必要な授業出席率は各学校で異なるが、例えばサレジオ高専では3分の2以上(67%)、近大高専で5分の4以上(80%)。

・ 成績評価は、各科目100点満点で行い、基本的に60点以上を合格としている。また、定期考査の点数に加え、レポート等を総合的に評価し点数化。

・ GPAについては、大学編入学の推薦、学内奨学生の選考、学業成績不振学生のリストアップなどに使用している例がある。100点満点の成績評価とGPAには明確な相関があり、どちらを使用しても大きな問題は無いと思う。基本的に成績評価が60点以上を合格としているため、試験問題の難易度が適切になるように、一定の指標を授業担当教員に示すなどの工夫が必要。

・ 高専も機関別認証評価を受審している。また、専攻科を有する高専の多くは、日本技術者教育認定機構(JABEE)の審査を受審するなどして、一定の基準を満たしている。必要な教育活動情報や財務状況について、HP等で開示している。

・ 高専の場合、教育内容が「工学」「ものづくり」であり、実務経験を有する教員は専門科目を中心に多く配置。 

・ 「私立高専」は高等教育機関であるために、「私立大学等経常費補助金」が交付されているが、後期中等教育(高校)に相当する1~3年の授業料は地域の私立高校並みに減額せざるを得ない一方で、学生一人当たりの補助額は「私立高等学校経常費補助金」の生徒一人当たりの単価に比べると格段に低くなっている。

・ 高専はいわばマイノリティであり、とりわけ「私立高専」は3校しかないため、「私立高専」特有の問題が取り上げられることはこれまで全くなかった。高専は、その教育実績が高く評価されている。私立高専を維持・発展させていくことは、ものづくり立国日本を支えるため、産業界にとっても重要であることを認識いただきたい。


(3)事務連絡  

事務局より、次回は5月22日に開催予定であること等について説明。

お問合せ先

文部科学省高等教育局人生100年時代構想推進プロジェクトチーム

電話番号:03-5253-4111(内線3505)

(文部科学省高等教育局人生100年時代構想推進プロジェクトチーム)