理論と実践を融合した教職大学院に向けて(私見) (水落委員提出資料)

1 「理論と実践の融合」には、理論と実践を融合した教員が必要

・教職大学院の量的拡大が一段落し、次は教育の質の向上を図ることが必要。
・教育の質を向上するには、教員の質の向上が一番確か。カリキュラムをいくら縛っても、その教育の質を決めるのは教員だから。ただし、教員の質を保証するためには、外的にハッキリと分かりやすい基準を定めることが必要。
・教職大学院では、高度の専門的な能力及び優れた資質を有する教員に係る実践的な能力を培うことを目的として小学校等その他の関係機関で行う実習に係る十単位以上修得することが求められている。(専門職大学院設置基準第29条)。しかし、現状の教職大学院はアカデミックな大学から移行した組織。それが変わるためには、最終的に到達すべき姿を示すと共に、そこに移行するインセンティブをつけることが必要。
・現在の教職大学院は研究スタッフと実務スタッフに分かれている。前者は理論を教え、後者からは実践を教える。学生は両者を融合し、理論と実践を融合した能力を育てることを期待されている。しかし、それは可能か?例えば、研究スタッフの中で実務と融合した能力を有する教員(具体的には実務の業績を持つ教員)がどれほどいるか?また、実務スタッフの中で研究の業績を持つ人がどれほどいるか?残念ながら多くないのが現状。教える教員さえも難しいことを学生に求めることには無理がある。理論と実践を融合した能力の向上を求めるならば、理論と実践を融合した能力があるスタッフによる理論と実践を融合した講義・演習を受ける必要がある。
・最終的には理論と実践を融合した教員が多くを占める組織になることが必要。具体的に研究の業績と実務の業績の両方を有する教員を採用、養成する必要がある。
※中央教育審議会(平成18年7月11日)「今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申)」

2 実務業績の明確化により、研究者教員の実務業績を評価可能に

・研究の業績に関しては長い歴史の中で一定の評価方法が確立されている。しかし、実務の業績に関しては評価方法が曖昧。結果として、実務経験が概ね20年程度という経験年数が一つの目安になっている。
・教職大学院は学部卒業生を育てると共に、現職経験が10年、20年の現職者を育てる機能を担っている。そのような現職経験者に対して教える側の教員の目安が、単に実務経験20年程度という期間だけの目安は妥当か?
・現在、教員養成系学部の多くを占めている研究スタッフは実務で評価されることはない。そのような現在の研究スタッフが実務の業績で評価されるためには、研究の業績評価に対応した評価方法が必要。
・実務の業績評価にもピアレビューの視点が必要。例えば、現職教員を主な対象とする雑誌、書籍における業績を研究業績に対応させた評価を提案する。
※ 別紙「上越教育大学教職大学院コースにおける教員選考基準」

3 理論と実践を融合した教員が大部分を占める基準に段階的に移行

・教職大学院のスタッフの半数以上は研究と実務の業績を共に持つ教員で占めるとする基準を設定。(単に最低必要人数でその数を定めた場合は効果は限定的。→専任スタッフの中での「割合」にすることが必要。)
・年限を区切って、その割合を「半数以上」を目指して段階的に引き上げる。
・移行期間中は、研究と実践両方の業績を持つ人は、例えば1人を2人と読み替える等の予算措置を設定。

4 教科横断的な内容の導入のインセンティブづくりと大学教員の意識改革

・免許法施行規則に、「臨床教科教育学」等の各教科を横断した学問項目を設定し、物理学等と並列で加筆。
・同じく免許法施行規則の各科教育学の但し書きに(臨床的な手法を含む。)等を加筆。
・科研費の「系・分野・文科・細目表」に、「臨床教科教育学」等の各教科を横断した細目名を設定し、大学教員の意識改革を後押し。
※科学研究費助成事業 系・分野・文科・細目表(※日本学術振興会ホームページにリンク) (PDF)

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総合教育政策局教育人材政策課教員養成企画室

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-- 登録:平成29年03月 --