資料4 第5回会議発言要旨

国立教員養成大学・学部,大学院,附属学校の改革に関する有識者会議(第5回) 平成29年2月22日

(主な発言要旨:これまでの課題の洗い出しを踏まえた今後の対応策)

【議論の進め方・整理】
・この会議がまとめとして提案できる領域はどこまでなのか,議論を整理する必要がある。
・国立教員養成学部を規定する制度として、免許法体系と,国立大学としての運営の制度と,大学制度全般の3つに整理できる。
・短期的な実現を目指すことのできる事項と,中・長期的に取り組む制度づくりに分けて考えることが必要。
・大学制度全般に関わる内容と,国立大学として充実させることとは、方向性を分けて整理すべき。教職大学院の「修士課程からの確実な移行」は国立大学の話だが、専門職大学院制度の一つとしての教職大学院の仕組みを変えることは、国立・私立を通じたもの。

【教科専門と教科教育】
・教科の専門家をどのように教員養成教育に取り込むかは最も重要。在り方懇でも指摘され,各教員養成学部では採用の仕方を工夫したり,初任者に附属学校でFDをさせたりなど工夫をしているが,今でもそこが問題との声があり、この会議の焦点になる。
・中・長期的なスパンで考えるべきこととして、「教科専門と教科教育の架橋領域の開発」と,「教員養成独自の研究領域」及び「臨床的研究の不足」に関連する対応がある。
・例えば,生物学の様々な専門家がこれまでに蓄積してきた研究の成果から,どれを選び出して学校教育の中に取り込み体系づけて教えていくか、また、それを効率よく,分かりやすく教えるために,専門的な観点からどのような教材を提示して教えるのがいいのかは、教科専門の教員が考えるべき仕事。
・一方、教えるべき内容を、子供の発達段階に応じてどういう順序で教えるべきかを考え、その配列したものが教育の目的に照らして成果が出ているのかの検証・評価を行うことは、教科教育の教員が担うべき仕事。
・教科教育と教科専門は,それぞれ別な仕事がありつつ重複しながら一緒に仕事すべきもの、という相互理解が教員養成学部の中で共有される必要がある。
・役に立つか立たないか,分かると面白いかつまらないかという,2つの軸で考える場合,面白くて役に立つこと,役に立つがつまらないことは分かりやすいが、役に立たないが面白いというところが抜けてしまうことに対する反発はある。教科専門と教科教育の融合という場合の中身は,融合して一元化することではなく,複眼性・輻輳性を持つという意味合いとして視点を定めないと,現場が持っている現実性が机上の空論で賄われてしまう危険性がある。
・今の職場の教科内容及び教科専門の若い教員の授業の仕方や言動等を見ていると,自分より年配の方々の時代とはかなり変わってきていると感じる。
・既存の教員養成系の博士課程は、修士課程や学部とのつながりが弱い。教科内容を教科教育の観点から学ぶことのできる教職大学院を確立し,学部からのストレートマスターが教職大学院を経て,博士課程で現場での実践的な教育の場に触れながら研究を進められるようにすべき。その過程で若い学生が現職教員と交流できるようなドクターやマスターの改革を進めることで,進みつつある若い先生方の意識改革に勢いがつく。
・教科内容構成について、大学の人たちは「大学らしさ」を発揮して,すぐにカリキュラム学会、教科内容論学会,内容学学会などを作りたがる。学会を作ると,結局、教科と専門系と教職系の間でボールの投げ合いが始まり、国から特別経費等をもらっても,金がなくなるとやらなくなり、これを繰り返してきている。
・単に学問を教えるのではなく、学ぶ側の立場に立った時にどうかが分かることが重要。特に研究者教員は現場をよく見ていただきたいし、そこから学ぶことは多くある。
・免許法施行規則のただし書きに,「臨床的な手法を含む」とか,「教科横断的な教科の指導法を含む」等を加える改正ができると,教科内容構成や教科内容学,若しくは教科横断的なことをする体制づくりにつながる。
・教科専門の教員の問題については、報告書では、例えば大学内部でどうすべきか、教員がどんな研修を受けるべきか,学会についての言及等、次の制度作りにつながることに踏み込んで書くべき。

【教員就職率】
・国立教員養成学部卒業者の教員就職率59%,ないし進学者・保育士を除いた67%は、目的養成大学としては低く、かつそれが下がっていることは問題。

【教職大学院】
・教職大学院を中心とした国立教員養成学部づくりが必要。教職大学院の拡充・振興によって教員養成の高度化を担うのは,主に国立大学しかできない。
・教職系だけで始まった教職大学院に,教科の専門を含んだ教科教育の分野も多様に取り入れていいとなって初めて、従来の教育系の大学や学部の組織を超えた、医者を育てる医学部と同じような、新しい教育学部ができる。
・教職大学院は専門職の大学院であり,学部も専門職の教員養成を担う。少子化で学部が小さくなった時に,学部と教職大学院が別々だと運営ができなくなる。地域に教員養成を残そうと思うなら,学部の教員養成と大学院が一体化しながら,融通のきく形での養成を考えるべき。そのために、教職大学院と学部等との兼担をしやすくすることや、教員養成の修士レベル化を実現するために,国立大学は飛び級を含んだ5年制の教員養成を進めることも考えられる。
・教職大学院の在り方について,徐々に現職教育にシフトすべき。少子化で教員需要が減る中,教職生活30年間をターゲットに教師教育を行い、その核に教職大学院がなるのが一つの方向性。そのためには、育成指標に基づいてきちんと体系化された教員研修を教職大学院が担えることを示すべき。教員研修の中で求められているキャリアラダーに対応した形で,教職大学院も、コース設定を含めて、30年間の教職生活を支える仕組みに作り替える必要がある。
・修士課程から教職大学院への移行について、今のまま教職大学院への移行が安易に増えると、修士課程の時と同じ誤りを繰り返しかねない。一方で、数は増やさないと教職大学院としての機能を果たせない。このため、教職大学院の教員の質を明確に示していくべき。「研究者教員だったら修士課程から教職大学院に移れる」のではなく,研究者教員は修士課程と違ってこういう力が必要なんだということを示す基準や目標を明確に示すことで,これから教科内容や教科専門を取り込んでいくときに,各教員の努力目標にもなる。
・規模の大きい大学では、教職大学院に一本化すると,必要な授業科目数や入学定員から考えても,大学院非担当の教員が出てきてしまう。大学院非担当教員が増えると昔の教育学部に戻ってしまう懸念がある。
・今求められているものを大学で学ぶだけなら,修了する時にはもう過去のものになっている。今まで出会ったことのないものにも対応できる枠組みや理論を自分の中で構築できるようになることが「大学らしさ」。

【附属学校】
・大学は、附属学校が地域のモデル校の立場を確立できるように,教育委員会と関わりながら地域の声が反映できるシステムづくりをリードすべき。
・附属小中学校では教育委員会との人事交流が行われているが、幼稚園、高等学校,特別支援学校では交流の相手が少なく、人事が滞っている。他県の附属学校との交流も視野に入れて多様な形の交流活動を広めるべき。
・大学教員が附属学校の校園長を兼務する例が多いが、附属学校で様々な問題が起こる中で,経験が乏しい校園長が十分に対応できない例がある。附属学校の校長は,大学の教員にとどまらず,経験豊富な人材を広く求めるべき。
・附属学校の役割について、教育実習,研究開発校,地域貢献等が大きな柱になっていく。教員養成から教師教育全般,30年間を見据えた研修の場として大学が位置付いていくことになると、教育実習の学校から教員研修の学校に切り替えていくべき。
・附属学校から教職大学院への入学が容易にできるというインセンティブを明確に位置付けた研修学校としての機能を高めるとともに、附属学校に来れば不足している免許を取得できる機会がある,校種を超えた研修等に参加できる等の仕組みが必要。
・附属学校の地域貢献の観点からは、教育委員会等との人事交流の促進と,地域との連携を強めるためのコミュニティスクールの導入、学校評議員制度を含む多様な意見を受け入れる仕組みの導入についても明記すべき。
・現在,附属学校は大学ごとに複数あるが、現在求められている改革は,それぞれがばらばらのままで取り組める内容ではない。大学の中に独立した附属学校があるのではなく,附属学校全体を統括しながら,附属学校の在り方をも検討していく組織が必要。
・附属学校での教育実習の充実や大学と附属学校との協働にあたり,大学と附属学校が遠いことが問題。大学が希望すれば教育学部と附属学校を地理的に近接させることができるようにすべき。
・附属学校は,地域のモデル校としての役割を果たす宣言を強く発し,教育委員会に附属学校の運営にもっと深く関わってもらえる仕組みを取り入れるべき。

【Ed.D.】
・教員養成独自の研究領域を作り,こういう学問をしているのが教員養成学部なんだというものを作り上げることと,Ph.D.持った人がさらに臨床的な研究をして,専門職としての学位のドクターであるEd.D.を取得して教員養成を担う教員になるというシステムづくりを徹底することが根本的な解決策。
・教員養成4大学によるHATOプロジェクトを展開しており、その中でEd.D.の制度設計についても共通理解を得ながら議論を進めており、頑張ろうという機運は高まっている。
・Ed.D.について、ただ必要というだけでは従来の繰り返しなので、例えば博士レベルの授業法、学生指導法,インターンシップ、フィールドワーク等の具体的なカリキュラム等を例示でよいので書き込み、Ph.D.との違いを鮮明に出したい。国内で様々な研究がされているので,聞き取りや外国の例を調べて、踏み込んだ書き方をすることで次につながる。

【学びのモチベーション】
・教員養成は学生が主体だが,学ぶ側からこの改革がどう見えるのかの議論が少ない。教職大学院に人が集まらず,修士課程に人が集まるのはなぜかと考えると、学ぶことのモチベーションが,役に立つから学ぶというモチベーションと,面白いから学ぶというモチベーションに二分され,ストレートマスターは現場が分からないからこそ,面白いから学ぶというモチベーションを優先する。
・修士課程は面白いから学ぶ,教職大学院は役に立つから学ぶという話があったが、教職大学院では、子供と共に学び,考えることが面白いと思っている学生が多い。なぜ教職大学院に学生が集まらないかというと,そういうことを学部でやってないからであり、今の教育学部の問題そのもの。
・国立教員養成学部や教職大学院は,面白いけど役に立たないことは不可能な時代に入ってきている。役に立つのは当然で,更に面白いことが必要。

【地域連携、地方創生】
・大学をチーム学校として見た場合、教員養成大学は、企業との共同研究や他学部との共同研究が少なく、教育という営みが養成段階で閉じている。教職支援職など教育を担う人材が広がる中,教員養成が従来は手を取り合ってこなかった相手とつながることが必要。
・地方での教員確保のため、地方の教員養成学部の入試に地域枠を作り、教育委員会が協働して地域枠の入学者に奨学金を貸与し、その地域で教員になる場合は返還免除とする。

【課程認定】
・免許法施行規則の改正による大括り化に伴う再課程認定について、既に課程認定を受けた科目をそのまま実施する場合は再課程認定を受ける必要がない一方、大括り化を生かして指導法等と融合した教科内容構成学的なものを新たに作ろうとすると再課程認定を受ける必要があり、教員の業績やシラバスも提出しなければならないとなると,ディスインセンティブになる。国立教員養成学部では,大括り化を生かして教科専門と教科教育の内容を融合した新たな科目の設置を促すことにインセンティブが働く仕掛けを導入すべき。

【組織再編】
・この会議に最も期待したのは大学再編。総合大学の教育学部は、今でも30人~40人の定員を新学部に持っていかれている。それを背景にして,全教科フル装備の養成をやめる手はある。
・やる,やらないは後で考えればいいが,論点の洗い出しの中に,再編について絶対に入れるべき。
・今後,修士課程も全て含めて4,000人ぐらいの規模になる教職大学院で,日本の学校教育のリーダー職を全て養成する,さらにそこで教える教員もEd.D.を作って国立大学で養成するとなると、大改革になる。今の教員養成11単科大学及びその他学部を合わせた44大学の分立した体制では、この大きな改革はできない。
・教科専門の教員が不安に駆られて,縮こまって前向きに改革に乗り出さないことが心配。そうではなくて、自分たちの今までの身分は保障された形で,新しい役割や新しい場所で,日本の教員養成や現職教員の資質向上に国立大学として貢献するんだという方向性を打ち出すための再編論が必要。
・教員養成11単科大学では、人件費等に充てる基盤的経費は毎年0.8~1%ほど減っているが,教職員の数は減らないため、間違いなく立ち行かなくなる。各大学の分立を改め、大きな単位での国立教員養成学部の再編成を行い,そこで減るお金の有効活用を考えるべき。ただ,これは国立大学全体の改革に関わるため,この有識者会議の報告書でどこまで書けるかは,よく考えなければいけない。
・2020年を過ぎると着実に教員採用が減る中,国立教員養成学部の縮小が必ず問題になる。
・在り方懇の提案を踏襲する方法がある。すなわち,いくつかの都道府県を併せた教育学部しか免許が出せなくすること。現実には,在り方懇の問題が,今の方がずっと厳しく問われている時代になっている。
・教員スタッフを集めにくい芸能技能関係について,部分的に大学間で協働し合う方法がある。
・教職大学院との融合・一体化を進めるべき。教員養成学部は専門職の養成のための学部であり、基本的に教職大学院と同じ姿勢であるべき。
・総合大学で,教職センター等を活用して専門の教員が各学部に分属しながら養成に関わる方法がある。ただし,教科専門と教科教育の架橋領域を作る場合に、学部を超えてどうやるか、コアカリキュラム化を進めるときにどうするか等の課題がある。
・48あった国立教員養成学部は44になり、この4校は一般学部化し,フル装備でなくなっている。この変化は今後も続く可能性があり、各学部の多様性が増す。各大学・学部は、どのような形で専門化・個性化していくかを考える必要がある。
・地域的な道州制の導入もあり得る中,都道府県単位という枠を外さないといけなくなる可能性もあり、教員養成学部の地域的な連合や、大学の統廃合も視野に入れる必要がある。
・教員養成の11単科大学が全部統合して機構化すれば,役員の人件費で5~6億浮く。附属学校を全て公立化すれば,200億程度は浮く。これを定数化すると600億円分の効果がある。附属学校のこれまでの研究の蓄積と実績を、例えば一貫教育や特別支援教育のセンターとして本格的に公立に渡せば,県は活用法を考える。
・近隣の大学と連合で取り組むことや、県をまたいだ動きが重要になる。地域への貢献を考えれば,博士課程を隣県の大学と設置する、それを手始めに,教職大学院も連合で設置するということもあり得る。

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-- 登録:平成29年03月 --