法科大学院教育におけるICT(情報通信技術)の活用に関する調査研究協力者会議(第1回) 議事録

1.日時

平成28年6月10日(金曜日) 17時00分~19時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院教育におけるICT(情報通信技術)の活用に関する調査研究協力者会議の運営について
  2. 法科大学院におけるICT(情報通信技術)を活用した教育の現状について
  3. 法科大学院におけるICT(情報通信技術)を活用した教育の本格的普及に向けた論点について
  4. その他

4.出席者

委員

朝田良作,石井徹哉,宇加治恭子,大石和彦,樫見由美子,土田伸也,恒川隆生,中川丈久,藤本亮,吉崎敦憲,米田憲市の各委員

文部科学省

義本大臣官房審議官(高等教育局担当),北山専門教育課長,塩田専門職大学院室長,川﨑専門職大学院室室長補佐,真保専門教育課専門官

5.議事録

(1)法科大学院教育におけるICT(情報通信技術)の活用に関する調査研究協力者会議の運営について
  事務局から,資料1に基づき,本会議の設置等について説明があり,主査に樫見委員が指名された。

(2)法科大学院教育におけるICT(情報通信技術)の活用に関する調査研究協力者会議の公開に関する事項について
  事務局から,資料2に基づき,本会議の公開について説明があり,原案のとおり決定された。また,公開に関する規定に基づき,この時点から会議が公開された。


【樫見主査】  それでは,会議が公開ということで,傍聴人の方が入られましたので,ここから公開の会議を始めさせていただきます。
  まず,本会議における議論開始に当たりまして,先ほど主査と選任していただきました樫見の方から,一言御挨拶を申し上げます。
  法科大学院教育につきましては,平成16年以降,法曹養成のための唯一の教育機関として,日本全国の地方の要所要所に設置されました。それは弁護士,裁判官,そして検察官という法曹三者が我が国,そして地方の司法制度を支えるいわばライフラインであり,中央の都市に限らず,その人材養成の拠点が地方にも置かれるということを地域の人々が必要としたからにほかなりません。しかし現状では,地域に置かれました法科大学院は,次々と閉鎖に追い込まれ,その結果,地方に生活する法曹志望者,又は働きながら法曹を目指す社会人が法科大学院で学ぶ機会がどんどん失われております。このことは,また地域が組織として自立して活性化するために必要な人材養成が,地方在住者に適切に保障されていないこと。ひいては,地域の魅力を大いに低下させることにもつながっております。
  本会議は,こうした現状を踏まえつつ,地方在住者や働きながら法曹を目指す方々に対して,ICTを活用して適切な法曹教育の機会を構築できないかという意欲的な課題に取り組むことを目的といたしまして,このたび法科大学院教育について,多くの知見をお持ちの先生方にお集まりをいただき,設置されたものでございます。
  既に実施されておりますICT教育に関する調査結果等を参考にしながら,委員の皆様方の忌憚(きたん)のない意見交換と,そして様々な視点からの検討を通じまして,本会議において有意義な提言ができればと考えております。
  主査としましては,未熟ではございますが,どうぞ皆様の御協力を得まして,会議の進行に尽力したいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
  この後につきましては,文部科学省の方から一言御挨拶,よろしくお願いいたします。

【北山専門教育課長】  失礼いたします。専門教育課長の北山でございます。先生方におかれましては,この御多忙な中にも関わらず,この会議の委員をお引き受けいただきましたことに心から御礼を申し上げたいと思います。
  先ほど樫見主査の御挨拶の中にもございましたけれども,法科大学院の志望者はずっと減少を続けているということがあり,志願者数回復のための取組というのが喫緊の課題となっております。私どもとしても,法科大学院教育の質的向上や広報活動の強化といった取組を行っているところではありますが,一方で,誰もが法科大学院で学べる環境を整備するという観点から,ICTを活用して,地方在住者や働きながら法曹を目指す社会人が法科大学院で学ぶ機会を適切に確保することも極めて重要であります。
  このことについては,昨年6月30日の法曹養成制度改革推進会議の,「法曹養成制度改革の更なる推進について」という決定の中で,ICTを活用した法科大学院教育の実施について,平成30年度を目途に本格的な普及を促進するということが決定されているところでございます。この調査研究協力者会議におきましては,遠隔教育の有効性,課題を整理しつつ,法科大学院の特色を踏まえた遠隔教育の在り方や普及のための方策に関し,御議論いただきたいと考えております。委員の先生方には御負担をおかけすることになろうかと思いますが,法曹を志す者の誰もが,その地理的条件の如何に関わらず法科大学院で学ぶことができる環境整備のために,積極的に御審議をいただきますよう,よろしくお願い申し上げます。

【樫見主査】  それでは,早速議事に入りたいと思います。今後,本会議におきまして,法科大学院教育におけるICTの活用に関する検討を開始するに当たりまして,まずは法科大学院におけるICTを活用した教育の現状につきまして,事務局より説明をお願いいたします。

【真保専門教育課専門官】  資料3-1,資料3-2を用いまして,簡単に現状について御説明をさせていただきます。
  まず,資料3-1,「法科大学院におけるICTの活用をした教育の現状等について」を御覧ください。1の検討の背景については,ただいま主査,及び課長の北山から触れましたとおり,政策課題として政府決定文書においても,地方在住者や社会人に対して学習機会の確保をする必要があり,平成30年度を目途として,本格的な普及を促進するということが記載されており,それを引用したものでございます。
  2の現状でございますが,法科大学院制度が創設以来,「法科大学院等専門職大学院形成支援プログラム」,これは当時の補助金でございますが,又は現在においては「公的支援見直し強化・加算プログラム」などにより,各大学の特色ある取組が促進をされている。これはICTを活用した取組を含めて進められてきているところでございます。我々がその中で把握しているもので顕著と思われる事例について,以下簡単に記載をさせていただいたところでございます。
  遠隔教育の事例といたしましては,これは後ほど委員から御報告があるものと思いますけれども,「九州・沖縄法科大学院教育連携」において,遠隔授業が実施されています。これは独自のシステムを開発して双方向授業システムにより,一部の授業が実施されているものと理解しております。
  また,筑波大学におかれましても,「公的支援見直し強化・加算プログラム」で評価をさせていただいておりますが,ICTを活用し,「サテライト形式」の実証研究,又は有職社会人に対して「モバイル方式」とありますが,タブレット端末などを利用して授業に参加するということで,同時性と双方向性・多方向性を確保して,オンライン授業を実施しているものと伺っております。
  次に,中央大学におかれましては,遠隔授業システムを用いて,島根大学や鹿児島大学と連携し,合同で授業を実施されています。またタブレット端末を利用した授業,オンデマンド形式を組み込んだ授業を実験的に実証されているものと理解しております。また本年度からは,琉球大学との連携を新たに開始することも伺っているところでございます。
  次のページでございますが,千葉大学と金沢大学におかれましては,大学間連携の枠組みの中で,一部遠隔授業システムを用いて授業を実施していくということについても伺っているところでございます。
  次に,学習支援ツールとしてのICTの活用でございますが,まず筑波大学におかれましては,創設当初より,授業をデジタル録画し,ストリーミング配信をするといったこと。又は補助教材としてのデジタルコンテンツを作成して,ウェブ上で学生が閲覧する,こういったものを補助的な学習ツールとして活用してきているということを伺っております。
  また,名古屋大学におかれましても,E-Learning用の教育ソフトウェア・ツールの開発ということで,いわゆる「シラバスシステム」に加え,学生が提出した課題レポートを相互評価したり,授業の録画配信,択一問題による自学自修,こういったものをウェブ上で可能とするシステムを運用する。また,法実務教育のための先進的なICTツールを活用するといった取組が行われているものと理解しております。
  このように様々な大学で,今までもICTを活用した取組が行われているものと理解しておりますので,まずはこうしたものをしっかりと我々としても把握をしておく必要があるのではないかと考えております。
  そこで,3でございますが,今後文部科学省におきまして,ICTの活用状況を法科大学院に対して調査をさせていただきまして,次回,又は次々回において結果をこの会議に報告し,その上で,更に議論を深めていただきたいと考えておるところでございます。
  次に,資料の3-2でございます。3-2につきましては,政策文書や法令等の規定についてまとめさせていただいたものでございます。時間もございませんので,2の「遠隔教育に関する現行制度」という部分を説明したいと思います。具体的には,右下にあるページ番号6,「法科大学院における遠隔授業の導入範囲」というページを御覧いただければと思います。
  現状,法科大学院においては,通信制を認可しているということはございませんので,一番左上にある通学制というところのマスを御覧いただければと思います。法科大学院においては,専門職大学院設置基準が適用されることになりますので,「十分な教育効果が得られる専攻分野で,かつ当該効果が認められる授業」については,メディア授業の実施が可能とされているところでございます。93単位以上の修得が修了要件として設置基準に定められておりますが,全ての単位において教育効果が上がるということであれば,メディア授業において修得が可能となっているというのが現状でございます。これに関する規定を,次のページ以降にまとめさせていただいてございます。
  次のページでは,専門職大学院設置基準の,今申し上げた第8条第2項が記載されておりますが,具体的には大学設置基準の第25条第2項の規定によるということとされておりますので,その下に大学設置基準の第25条を抜粋させていただいております。ただし,その第2項には,「文部科学大臣が別に定めるところにより」ということで,更にブレークダウンしているということでございまして,それを記載したのが次のページ,1枚おめくりいただいて8ページになります。
  「大学設置基準第25条第2項の規定に基づき大学が履修させることができる授業について定める件」,いわゆる我々がメディア告示というふうに呼ばせていただいているものでございます。こちらについて,1号,2号のいずれかの要件を満たした場合においては,メディア授業を行うことが可能だという立て付けになっております。ただし,大学において面接授業に相当する教育効果を有すると認めるということが併せて条件として挙げられているところでございます。
  御覧いただくとお分かりになるように,1号については同時双方向に行われるということが条件となっておりまして,2号については,その条件がないものについて要件を規定しているというところでございます。ただし,今一部取組が行われているようなタブレット端末を用いて授業に参加するというようなことについては,1号の同時双方向が満たされていても,次のアンダーラインの部分でございますが,場所の要件が,いわゆる教室類似の場所ということになっており,これには当てはまらない可能性が高いということで,同時双方向が満たされていながら,2号の要件を満たしていただく必要があると。そういうことになってきますと,2号にございますように,授業の終了後速やかにインターネットなどの方法を利用して十分な指導を併せて行っていただくということが,現状においては要件として必要になってくるものと考えられます。こうした部分も,1つ議論の論点になるだろうというふうに思っておるところでございます。
  3ぽつ以降については,政策課題として挙げられております,地方在住者の学習機会の確保,また社会人の学習機会の確保という区分について,関連するデータをお示しさせていただいたものでございます。これを御覧いただきますと,地方の法科大学院を中心に募集停止が進んでいること。また,入学者の減少率についても地方の方が高いこと。社会人の入学者においても,一貫して減少傾向にあることなどがデータとして見て取れるということが言えると思います。
  次に,資料4-1を御覧いただければと思います。後ほど土田委員からも御報告があるものと思いますが,昨年度,文部科学省の委託事業として,ICTの活用に関する調査研究ということで,オンライン授業の実証研究を中央大学に委託して実施をしていただいております。こちらについては,遠隔授業システムを用いたサテライト形式の授業,タブレット端末を利用した受講,オンデマンド形式を組み込んだ授業,これを全15回の授業のうち3回程度実施していただいたということでございます。分析結果については,いわゆる満足度調査というものでございますが,ここに記載のような結果が出てきており,それに応じて課題もしっかりと出てきたということでございます。
  今後の課題というところで,最後にございますが,先ほど説明をさせていただいたような専門職大学院設置基準の第8条第2項に規定される,いわゆる教育効果というものの適合性判断をどうしていくのかという部分が検討課題ではないかということが,委託事業の成果報告書にも記載されているということでございます。
  最後に,資料9を御覧いただければと思います。資料9につきましては,平成30年度を目途に本格的な普及を促進するというような政府決定がございますので,それに向けてどのように進めていくのかということをイメージとしてまとめさせていただいたものでございます。本会議においては,今年度中最大でも7回程度かと思いますが,ICTの活用に当たっての課題や改善策を議論して整理していただくということが主なミッションであろうと思っております。先ほど法令上の課題なども簡単に触れさせていただきましたが,例えば法令上の解釈ですとか,そういったアプローチを進めていくことになると,会議を仕切り直して,中央教育審議会に課題を引き継ぐということも必要であろうと思っております。その意味で,「法科大学院特別委員会」という段に「ワーキング・グループを設置」ということを記載させていただいているところでございます。こういった場で課題をまとめていただきまして,文部科学省に課題をお示しいただくと。その課題を踏まえ,平成29年7月ぐらいまでを目途に,文部科学省の方で普及促進策をしっかりと考え,実施に移していくと。そういったことを踏まえて,各法科大学院において特色のある取組,ICTを含めた取組がやりやすくなるような環境を整備していきたいというふうに考えているところでございます。
  少し長くなりましたが,現状の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【樫見主査】  ありがとうございます。ただいまの事務局からの説明に対しまして,何か御質問や御意見がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
  それでは,次に,法科大学院におけるICTの活用に関する先行事例としまして,鹿児島大学の米田委員,それから筑波大学の大石委員,そして中央大学の土田委員にそれぞれ資料を御作成いただいております。この後時間の関係上,それぞれの委員におかれましては10分から15分程度で御説明をいただきたいと思います。
  それでは,米田委員から御説明をお願いいたします。

【米田委員】  米田でございます。
  鹿児島大学では,先ほど御紹介をいただきましたとおり,法科大学院設置時から,九州・沖縄法科大学院教育連携ということで,当初は沖縄,琉球大が入っていなかったわけですけれども,ICTを活用した法科大学院を作るということを前提として設置審に申請して,法科大学院を設置してきたという経緯がございますので,これまでどのような取組をしてきたかということを御紹介させていただきたいと思います。
  1枚めくっていただいて裏になりますが,この鹿児島大学の取組の沿革について説明をさせていただきます。鹿児島大学がこういったICTを使った教育を行うということに至った経緯というのは,平成8年度というふうに,さかのぼるとそのぐらいまでいくだろうということなんですが,鹿児島大学と大阪大学で学部レベルで,現在のインターネットではなくSCSという,サテライトコラボレーションシステムの略ですが,文部科学省が設置をしておりました通信衛星を使ったテレビ会議システムがございました。これは全国99大学,百何拠点同時放送ができるというもので,イランのハタミ大統領が来られたときは,全拠点に対して配信を行って,双方向のディスカッションを行ったというようなことができる,非常に高度なシステムがございまして,それを活用して,大阪大学の法学部の法情報の科目と鹿児島大学の法情報の科目を,全コマではないんですが数コマ授業の内容を全部一致させて,そこをつないで授業をするということを,平成8年度の段階から行っておりました。当初は当然のことながら,まだウィンドウズ95の時代でございますので,授業の提出物などを全部メールで先生のところに飛ばしてくるので,四十何通のメールがばっさりあって,全部読んでから授業に行くという,大変な苦労をしていたわけですが,そういった実践をもう10年以上していたところで,法科大学院の設置という時期にきたわけです。
  そのときに法科大学院の設置準備過程がございまして,その中でいろいろな様々な経緯があったんですけれども,九州大学と鹿児島大学で教育連携をして法科大学院を設置しましょうという協議に入るということになりました。それまでに九州でいろいろな協議を重ねた結果,具体的に進んだのがこの2つの大学での協議だったということでございます。
  そのときに前提とされていたのは,通信技術を使った授業によって,できる限り旅費を使わずに,場所も動かずに,また両方の学生が同時に参加できる授業を授業科目の中に織り込むということが,当初から前提として決定されておりました。検討の過程の中で,途中で熊本大学が参加をさせてほしいという要望もございまして熊本大学が参加するという,3大学で連携をして,その3大学がそれぞれどういう連携をするのかということを設置審の書類に書き込んだ上で,法科大学院の設置に臨んだということでございます。
  設置審のときには実地調査がございまして,我々は実は当時,まだ機械を一切持っておらず,こういうものを設置するんだということを宣言して設置審の書類に書き込んだわけですが,現物を見せなさいという指導がございまして,実地の調査に至りました。そのときは関係業者等の御協力をいただきまして,全国からデモのマシンをかき集めまして,3大学に光の回線を仮に引いていただいて,授業の実践をして。我々はサテライトコラボレーションシステム(SCS)で授業は慣れておりましたので,それについての授業実践を御覧いただいて,非常に高い評価を頂いて,是非法科大学院設置の折にはこういった技術を使って,また文部科学省の方もこういったものを推進しなさいという発言が実地調査ではあったんですけれども,そういった上で設置認可が認められたということでございます。
  その後,法科大学院形成支援プログラムというのがございまして,そのときに鹿児島大学は3本の形成支援プログラムで御支援を頂きました。1本は,九州大学,鹿児島大学,熊本大学3大学を基盤としたプログラムでございます。もう一つが名古屋大学を中心とする,現在PSIMコンソーシアムというふうになっておりますが,法律の実務教育の教材を中心にして集めて,それを共有していくということを中心とするプログラム。もう一つは,専修大学の知的財産に関する教材を電子化して,インターネット上で共有できるようなプログラムという,この3本に協力をさせていただきまして,参加させていただいたということでございます。このプログラム3本で頂いたものを財源として,我々の現在も使っているシステムを開発したということになります。
  そして,更に形成支援プログラムの後,「法科大学院等専門職大学院教育推進プログラム」というものが行われました。ちょうど法科大学院形成支援プログラムの実施中に,法科大学院ができてから琉球大学とも九州・沖縄でやはり一体となって法曹養成に取り組みたいということで,我々も是非一緒にやりましょうということで,法科大学院の設置の後,琉球大学がこのプログラムに参加をしましたので,形成支援プログラムの財源からは琉球大学に機材を設置することはできませんでしたので,この2番目の平成19年からの方のプログラムの中で,琉球大学を中心に財源を集中的に充てまして,現在琉球大学に置いている遠隔講義システムを設置したという経緯があります。ですから,システム自体は,実は九州,鹿児島,熊本につきましては非常に高度なレベルの授業展開ができるシステムが置かれておりまして,琉球大学には一サテライトとして機能する,単体としても機能するんですが,そういったシステムが置かれているという状況でございます。
  そして,システムの概要なんですが,ちょっとマニアックな話になるのですが,数えたところ,7種類のシステムが同時に稼働しているということになります。1つは,名古屋大学の角田先生が開発をされました授業支援システム,いわゆる今も中央大学とか京都大学でも両者を通じて使われておりますが,シラバスシステムと呼ばれているものでございます。これは我々は最初に説明しました鹿児島,大阪との協働の取組が,教員の異動等によりまして,鹿児島,名古屋,阪大というふうに展開をしまして,そこで角田先生とともにこのシラバスシステムを開発した関係で,提供いただいたものでございます。
  これは非常に重要な機能を有しておりまして,複数の大学における共通のプラットフォームでの授業進行管理と学習支援が可能であると。現在,各大学が導入しているこういった教育支援システムは,各大学の学生にのみID・パスワードを提供するという形のものになっておりまして,各部局で自由にできないんですね。ところが,我々にとってはこういうID・パスワードは非常に自由に発行できて,どの大学の学生も1つのシラバスの中で展開できるという特徴を持っておりますので,はっきりいいましてこのシステムがあって,九州4大学の連携の授業ができたというふうに言うことができます。
  そして,この次が,現在も恐らく世界でも最先端に位置するのではないかと思う,教室間の遠隔講義システムでございます。古くなったので,そろそろ壊れ始めている部分もあるんですが。また,熊本大学は予算の関係で昨年度で廃止をいたしましたので,現在九大と鹿児島だけでこれをつないでいるわけですが,これは3大学間が双方向・多方向で授業ができる。なおかつ1拠点から3大学全て同時に授業展開というか,動かすことができるというシステムでございます。ですから,1拠点から他の教室に先生がいなくてもよいというシステムです。タッチパネルによります非常に簡易な操作が可能でございまして,3大学以外の,先ほど申し上げました琉球大学等,同一規格のテレビ会議システムであれば接続が可能ということでございます。後ほど紹介しますが,今回,中央大学ともこのシステムを使ってセミナーの配信を受ける等のことが可能になっているということでございます。
  それから,PCの画像の送受信は当然できますし,他のビデオメディア等を外部接続で入力をすることが可能でございまして,普通の教室に1個あるのが,できることは大抵何でもできると。なおかつ録画が可能であるということでございます。
  もう一つは,移動式と呼んでおりますが,琉球大学が持っているシステムと同じものでございまして,同一建物内の任意の教室に持っていって,そこを拠点に遠隔講義を展開できるというものでございます。
  それから,ローヤリング技能教育用テレビ会議システムというのは,真ん中の絵なんですが,一番簡単なやつで,法律相談をやる部屋に置いてありまして,その部屋でやっている法律相談を他の部屋で見ることができると。マルチメディア教室という大きな教室で,30人から50人ぐらいで法律相談をやっている画像を外から見ることができるというものでございます。
  次にあるのがパソコン間のテレビ会議システムでございまして,これはスカイプのお化けと思っていただければいいと思います。現在,スカイプはようやく多地点での接続が可能になりましたが,このシステムは128人同時接続が可能でございまして,8人同時発話ができるというものです。普通スカイプですと,現在は1人しゃべるとほかのマイクが切れるシステムになっているので,音が切れたりする感覚がある,トラブルが起こるのはそのためなんですけれども,このシステムは開発した業者の技術によりまして,8人が同時にしゃべっていても聞こえるというものです。なおかつID・パスワードは非常に柔軟に活用できますので,使いたいという人に誰でも使ってもらえるというものです。
  更にこれは幾つかのフェーズがございまして,普通のテレビ会議システムのほかに,ちょっと小さくて分かりにくいんですが,資料の下の方に,これは裁判所の法廷の絵なんですけれども,残念ながら裁判員裁判には対応してないんですが,法廷で裁判官1人という絵であれば対応できるような,右側に原告側で左側に被告が座るような感じで,ログインする画面を選ぶとそこに顔が出て,模擬的な裁判ができて,なおかつ録画ができると。更に資料を提出できますので,模擬的な簡易な裁判であればこれで済むだろうというシステムです。こういったものを持っております。
  更にオンデマンドの映像配信システム。それから,ネットワークカメラといいますのは,要するに防犯カメラでございますが,これが実は非常に大きな威力を発揮するものでございまして,端的に言うと,ここにぽんと置いておけば,外から10人ぐらいであれば同時に見れますので,帰省した学生とかが授業をもう1回見直したいとか,ライブの授業を見直したいとか,又はゼミをやっているのを見たいとかそういったものに,特に双方向でなくてもよければ,このシステムを使えばできるというものを使ってございます。
  次にまいりまして,実際に法科大学院でどんな科目で使われたのかということを御紹介したいと思います。これは思い出した限りというか,本当は資料があったんですが,全部挙げるときりがないので主たるものを挙げております。法律基本科目としては,刑事法総合というものを3年間やりました。これは九州大学と鹿児島大学の学生全員の必修科目でございまして,九州大学,鹿児島大学の刑事法教員全員,オールスター出演という,非常に豪華な授業でございました。これをやりました。その他,下の方にちょっとあるんですが,両方の教室に学生がいるものとしては,法律基本科目はこの刑事法総合が中心でございます。
  それから,基礎法隣接科目と我々は呼んでいるんですが,司法政策論という科目。これは九大,鹿大,熊大,琉大4大学同時に4画面分割で授業を展開したというものでございます。A,Bとか書いてあるのは,その前のページで御紹介したシステムのどれを使ったかということを示しておりますが,後ほどゆっくり見ていただければと思います。その他,法社会学と日本法制史について,それぞれの大学の教員が,鹿児島大学の教員が鹿児島の学生と熊大の学生に対して同時に授業したとか,そういった実践がございます。
  実務基礎科目としては,法情報論というのがありまして,これは平成16年から24年まで,当初,九大の必修にしておりまして,途中から選択になったんですが,これはテレビ会議システム,大きな教室間のシステムでつないだ上に,学生たちにさっき見せたパソコン間で使うテレビ会議システムを使わせて,グループ化して共同作業させるという,アクティブ・ラーニングの最先端をやったような科目でございます。民事模擬裁判,これは模擬裁判を鹿児島,熊本,琉球大学で実施をすると。それぞれチームになりまして,裁判官役,原告側,被告側というふうに分かれて,これをテレビ会議システムでつないで模擬裁判を展開するということを行いました。
  その他,展開・先端科目において,そこに下にあるような科目について,同時双方向の授業を行ったという実績がございます。
他大学への講義の実践例と書いてあるのは,先生は九大にいて,鹿児島に学生がいるという状態で,九大の学生はいないけれども鹿児島大の学生がいるとか,そういった形で授業したものが,こういったものがあるということでございます。
  これだけの科目で,これは例なので実はもっといっぱいあるんですが,そういった科目群について授業を実際にやり,単位を出してきたということでございます。
  更にこの後,現在法科大学院募集停止ということになりまして,今後どうなるのかということもありますし,またこれまで授業以外でもこのシステムを使ってきましたので,その例を御紹介したいと思います。まず,FD活動は非常にパワフルでございました。授業アンケートの公表はシラバスシステムにどんどん公表していってしまうという意味で,内容を,どんな評価を教員が受けているかということを示す。なおかつそれは現在の受講者だけではなくて,翌年の受講者が前の年にその教員がどんな評価を受けたのかということを見るようにできるということで,非常にパワフルでございました。
  それから,授業の収録,映像のオンデマンド配信をするということで,教員間の相互評価をする。授業参加もしますと,結構教員の時間もとりますので,オンデマンドで流してしまえば,流すときは学生の絵と,学生がどんな様子なのかということと,教員のカメラを2台以上設置しまして,それを1枚の絵に編集したものをアップロードしております。ですから,教室全体のイメージはほぼ捉えることができるような形でオンデマンド配信をして,教員間の相互評価をするということを行っておりました。
  それから,更に修了生支援ですね。まず遠隔地の自宅にいる修了生がゼミに参加するということです。これはパソコン間のテレビ会議システムを使うということで実現すると。更に遠隔地の自宅における修了生が,ゼミやセミナーをライブで視聴するということ。それから,遠隔地の自宅における修了生のゼミやセミナーのオンデマンド配信を,オンデマンド授業でやったものを録画したものを更にそれを見るというようなことを修了生支援としてやっておりまして,鹿児島から更に奥地の不便なところに引っ越したような,実家があるような学生でも,それによって大学の示している司法試験に向けたプログラムというか,準備したプログラムに参加できるというようなことを実践しております。
  更にリカレント教育としましては,複数遠隔拠点でのリカレント・セミナーの開催ということで,リーガルリカレント研究会というものを二月に一遍か毎月ぐらいのペースで開催させていただいておりますし,中央大学法科大学院とのセミナーを開催するということで,右側にちょっとポスターを,来週から中央大学のセミナーとか,あと弁護士会を通じてですが,こういったリカレントのセミナーをさせていただくということになっております。
  それから,司法修習生/地域専門職向けセミナーというのは,その上のポスターですが,先ほど言いましたように法律相談の部屋と,それから,それをみんなで見て相互評価をし合うような実務家のリカレントのためのセミナーを開催しているということです。これもこういったICTの技術なくしては実現しないようなものでございます。
  更に連携協議会や研究会の開催ということをしておりまして,九州・沖縄法科大学院教育連携というのは当然これで会議をやってまいりましたし,リカレント研究会,それから遠隔地への学会,鹿児島大学から情報ネットワーク法学会とか,北海学園大学で行われた国際的な,韓国の法科大学院と共同のFD研究会に,鹿児島からパソコンの遠隔講義システムを使って報告をするなどに活用してきたということでございます。
  本学は以上のような取組ですが,実際に多くの法科大学院で様々な取組をしてきました。先日司法試験の当日前後に,読売でしたか,本学を素材に,あたかも文部科学省が億単位のお金を九州沖縄法科大学院連携のシステムに投下して無駄遣いをした,と受け取られるような記事を書いた新聞社がございました。しかしながら,これまでも十分に成果を上げておりますし,地方の法曹志願者を念頭に置いた政府決定にもありますように,こうした資産や取組の成果は今後も法曹養成を考える上で重視されるべきものです。鹿児島大学として,この協力者会議の場を含め
このシステムやノウハウを,九州の各大学との連携はもちろん,更にほかの地域の法科大学院,地域の法曹志願者,また地域でのリカレント教育等に有効に活用されるよう取り組みたいと考えています。以上で,報告をおわりにしたいと思います。ありがとうございました。

【樫見主査】  ありがとうございました。
  この後ですけれども,質問につきましては,全ての委員の御説明が終わりましてから質疑応答させていただきます。
  なので,続きまして,大石委員から御説明をお願いいたします。

【大石委員】  それでは,筑波大学の大石から,筑波大学の取組につきまして,概要を御説明申し上げます。
  まず,本年度に入るまでの筑波大学が従前取り組んできたシステムというか,それについてお話ししますが,今,米田委員のお話の中にも出てきました,平成16年から18年にかけての形成支援プログラムで,筑波大学の場合,授業録画システム,それからリーガルクリニックという科目がありまして,筑波大学の場合は,完全社会人に特化したものでございますので,それに仕事の予定があるものですから,全員どこに集まってということではなくて,完全フレックスタイム制で個々の学生がてんでばらばらに動くものですから,これを担当教員が把握するため,それから各受入れの弁護士事務所が,学生がいつ来るのかということを把握するために,このリーガルクリニックの受講の管理システムを導入しました。以上2つ,これが現在でも動いております。
  以上2システムの運用費用,特にリーガルクリニックシステムにつきましては,壊れなくても毎年相当額がかかっておりまして,現在の当法科大学院の厳しい財政状況の中でこれらを維持するのはかなりの負担になっていることも確かですが,それでもやはり少なくとも今のところ現在でも運用しているということでございます。こういうものを既に昨年度までやってまいっております。
  ちなみに授業録画システムなんですが,使用率でございますけれども,9割以上の科目がこれで見ることができる。これは授業が終わっても2年ぐらいですかね,見ることができると。システム全体のキャパがありますから,どんどん削除していかないと新しいのが入らないんですが,大体2年ぐらいは学生に流し続けているということでございます。
  加算プログラムで,昨年本学がこのICT教育につきまして,皆様の資料,お手元にあるようなテーマで加算を頂きました関係で,本格的には今年度から,モバイル方式と,それからサテライト方式を稼働させるということになっているわけですが,現在,このサテライト方式,筑波と,それから静岡大学の場合は,ポリコム社の機器を通じて,筑波大学の教室と静岡大学の教室をつなぐ計画でいるのですが,静岡大学の方のポリコムの機器の購入がようやく目途がついたところということで,静岡大学側の機器の購入がまだということで,これはスタートしておりません。モバイル方式,真保専門官からお話がありましたが,タブレット端末,あるいはノートパソコン等で,筑波の場合,出張先の学生が授業の教室に入ってくるという方式ですが,これを4月から実践しておるところでございまして,これにつきまして,現在の状況を御説明申し上げます。
  先生方のお手元にお配りしておりますもの,資料6を御覧いただきまして,まず学生への周知方法をリアルな形で御覧いただくために,学生に対する教学上のルールブック,「学修の手引」というのがあります。これはあくまでも一部抜粋でございまして,この学修の手引の今年度版の10ページから11ページに,「インターネットを通じた授業の出席について」というふうに書いてありまして,いわゆるモバイル方式です。これはポリコムを通じたサテライトではなくて,モバイル方式で参加するということに関して,概略的な手続が書いてあります。これが資料6の2ページから3ページです。2ページが手続,3ページが対象科目です。対象科目は,専任教員の持っている科目で,例えば模擬裁判とかロールプレイング型の,ICTで入るというのはちょっとどうなのかという科目以外の科目は,原則として専任教員担当科目は全部ここに上げているということでございます。
  学生に対する細かい指示を与えるために,4ページ,5ページなんですが,筑波大学法科大学院の学内者専用メニューですね。青い部分はクリックすると,6ページ以下の添付ファイルに飛ぶという形になっておりまして,例えば6ページ,7ページにかけて,更にモバイル方式で参加するための手続ルールをイメージ的に学生に伝えるというようなことが書かれております。筑波大学の場合,モバイル方式につきましては,グーグル社のシステムを使っておりまして,グーグルのハングアウトというシステムを学生が各端末にダウンロードして教室に入ってくるということになります。
  それから7ページのところを御覧いただきまして,実はこの7ページのところで,10コマとか20コマというふうに書いてあるんですが,これは恐らく他大学の先生には何のことやらよく分からないんじゃないかと思います。筑波大学は,組織も学部ではなくて学群とか,変わったことをやるのが好きな学校なんですけれども,実は授業の時間数もちょっと変わっておりまして,75分授業を2コマ連続やって,これを5週やりますと1単位,それから10週やりますと2単位というふうに数えます。実は10コマというのは,75分が2コマ連続してやって,これを5週やったということを意味しております。つまり,この10コマというのは1単位科目,それから20コマというのは筑波モジュールの2単位科目のイメージでございます。学生がモバイル方式で教室に入って出席と認められる回数の限界は10コマ授業,つまり1単位物では最大4コマです。それから,2単位科目20コマ授業では最大8コマですから,週に直すと1単位物で最大2週ですね。5週中2週。それから,2単位物では10週中4週まで,このような形でやっております。
  何で全部モバイル方式でやらないのかということなんですが,ポリコム社の機器の場合は,我々も筑波大学の法科大学院が東京にありまして,本部がつくば市にありますので,両者を結んだ遠隔会議をポリコム社の機器を通じてしょっちゅうやっていますけれども,非常に安定感があるし,使用もストレスが非常に少ないんですが,モバイル方式というのは,学生側がどういう回線状況,あるいは機器の種類を用いるかによって,うまくいくかいかないか。例えば,動画がスムーズにいくかいかないか。場合によっては,接続がなかなかできないで終わっちゃうということも,実はないわけではないわけでありまして,これを余り多く認めるところまでは踏み切れないということ。さらにはやはりこのモバイル方式というのが,本当に正当な授業方法として社会的に十分認知されているのか,先ほど文科省の告示が出てきましたが,やはり冒険的な部分もありましたので,このような形に,今年度はとどめたということでございます。
  あと8ページ,9ページも,学生に対する手続的なものでございます。特に時系列な手続,8ページを御覧になっていただくと分かりやすいかと思いますが,実は筑波大学が用いているモバイル方式の機器ですが,教室に同時に外部から入れる数というのは10件が限界でございます。なので,10人以上の学生が外部から入りたいといってきたときに,やはり交通整理をする必要がありますので,そういう場合は先着10名様という形になっております。先着10名様のその10名様を選ぶために,事前に事務室に申請をしてもらうということです。申請先着10名の人に,事務室から招待メールを学生側に出してもらうと。それによって学生が入ると,こんなような形を採用しております。
  4月から現在に至るまで,申請件数ですが,3件にとどまっております。これは「とどまっている」と考えるべきなのか,「(小規模校で最初のわずか2か月間では)それぐらいなのだろう」と考えるのかは,両方のとらえ方がありうるところですが。ちなみに申しますと,筑波大学のロースクールは,入学定員が毎年36名でございますので,それに3掛けプラスアルファ,留年生をプラスアルファぐらいが3学年全体で在籍しています(ただしその中のかなりの数が遠方への転勤などの職務上理由で休学しています。)が,その中で今まで2か月強になりますけれども,申請件数3件ということです。この申請も,原則として出張した場合に出張先から入るというような形が基本でございますので,これを多いと見るのか少ないと見るのか。決して少なくはないのかなという感じはしております。
  この3件ですが,結果を御報告いたしますと,3件中2件は,1週の1科目だけの申請でございました。1件目は出張先のシンガポールから入る予定だったんですが,会議が長引いて,結局モバイル方式で入る暇すらなくて入れなかった。で,これは空振りに終わったということですね。それから,2件目ですが,これは本人の持っていた機器が非常にスペックが低いもので,それだけでは教室に入れなかったので,本人は急遽近くのネットカフェか何かに行ってスペックの十分なノートパソコンで入ろうとしたんですが,それにはカメラがついていなかった。やっぱりカメラがついていないと出席というふうに教員が認定できませんので,出席認定されなかった。これが2件です。
  3件目ですが,3件目の学生は複数科目。先週の民法の必修科目,それから今週の刑法の必修科目,これを昨日やりました。それから,明日土曜日ですが,土曜日は筑波大学の学生が午前から午後までずっといる唯一の曜日ですが,ここで午前民法,それから午後憲法,いずれも必修科目,2科目連続して入る予定でありますが,既に先週の民法と今週の刑法,2科目が終わりました。1週目の民法ですが,教員が当てるまで,受信している学生が音声を切っておかないとハウリングしたり,ちょっと教室側スピーカーがうるさくなるので,切っておけというふうに言っています。で,その学生は言われた通り切ったんですね。切ったら,接続そのものが切れてしまって,そのまま入れなくなってしまったということで,1週目の民法は出席認定されなかった。
  ところが,ちょうど昨日でございますが,今週刑法の授業にその同じ学生が入ったんですが,ようやくそれが成功例第1例目となりまして,モバイル方式で入って,しかも双方の画像,音声とも支障なく授業が行われたという成功例。刑法の1年次の必修科目で,1例目をようやく得た状況でございます。同じ学生が明日の午前と午後に民法と憲法の必修科目の授業で参加しますので,恐らく1回成功しておくと,成功する確率が高いかと思いますので,明日も比較的スムーズに事が進行するのではないかと考えております。
  最後に,筑波大学が提供しました資料の最後のところで,ICT授業についてのアンケート。これは受講した学生にもアンケートを学期末に採ります。なので,それについてはまだペーパーを作ってないんですが,質問項目はもう考えております。急きょ我々としては,授業にICTで入ってこない学生に,何であなた方はICTを利用しないんですかというアンケートを,我々としてもサンプルが欲しいので,利用率アップを目指す意味もございましてアンケートをしました。一応明日を目途に事務室に集計してほしいと言っていますが,現在既に16件回答がございました。
  参考までに申し上げておきますと,3番目のチェックマークのところですが,1番目のICT授業について余り理解していないというのが,16件中8件。それから,2件目。要するに,ICTを使うより,現実にちゃんと教室で授業を受けたいと。そっちを優先したいという者が16件中7件です。意外と学生は保守的ですね。特に筑波の場合は社会人なので,テレビ会議システムとか慣れているんじゃないかと思っていたんですが,意外に保守的でした。それから,さすがに真ん中の,ICT授業を受けるための環境,機器がないといったのは1件にとどまっておりました。それから,4件目。接続できなかったときに学生の不利益になるんですね。要するに,うまく学生が参加できなくて,教室に映っていないと欠席になります。なので,そのリスクが余りにも高過ぎるということで,萎縮して受けられないというものが16件中7件ございました。
  それから,その他のところで自由記載をしたものが7件ございましたが,7件中3件は,いずれ出張したら使いたいという心強い回答を得たんですが,やっぱり回線が不安定な場合があると。特にモバイル方式というのは,中央大学で行われた去年の実験でも,やはり同じようなことがあったんじゃないかというふうに推測しておりますが,やはりモバイル方式というのは回線が不安定な場合があるという点。それから,結局教室に,1回やって10件まで入れるといっても,1科目で入るのは,現在のところ1人いるかいないかなんですね。そうすると,1人の顔が丸映しになるわけでして,それが非常に恥ずかしいということで,回線不安定なところと,恥ずかしいということで,ちょっと使うのを躊躇(ちゅうちょ)すると言っている者が1人おりました。それから,予約手続のハードル。先ほど御覧になっていただいたこの予約手続のハードルが高過ぎて利用しにくいという者が1件。
  それからもう1件が,筑波の場合,授業録画システムがあるから,出張でどうしても授業に出れなければ,しかし1回か2回休んでも期末試験の受験資格は失われないから,授業録画システムの方を見れば十分なので入らないと。つまり,従来授業録画システムを使ってきたということが,ある意味あだになって,ICTを使ってくれないというものが1件ございました。それからもう1件は,実は教室側で音声の操作をするために,1分か2分というふうに教員は言っていたんですが,中断させた。それが非常に許せないというか,ストレスであったと。ちゃんと授業の方を優先してくれと。つまり効果があるのかどうか不明な機器を操作している暇があったら,ちゃんと教室の授業を優先すべきだという者が1件,以上7件ございました。
  今のところこういう状況でございますが,筑波としては,例えば手続的なハードルの高さ,そういったものをちょっと再考しながら,もうちょっとサンプル数を上げていきたいと考えております。以上でございます。

【樫見主査】  大石委員,どうもありがとうございました。
  続きまして,土田委員,御説明お願いいたします。

【土田委員】  それでは私からは,平成27年度の文部科学省先導的大学推進改革委託事業の報告をさせていただくとともに,中央大学法科大学院における本年度の取組についても報告をさせていただきたいと思います。配付資料7を御覧ください。また委託事業については,併せて配付資料4-1も適宜御参照いただきたいと思います。
  まず,委託事業の報告でございます。今回の調査研究では,中央大学法科大学院が配信元となり,また琉球大学,鹿児島大学,島根大学の各法科大学院が基本的には配信先となって,遠隔授業及びオンデマンド授業を実施いたしました。実施に当たっては,科目群及び授業規模に配慮して,様々なタイプの授業を対象にいたしました。授業終了後には参加学生にアンケートを実施いたしました。以下,その結果について簡単に御報告を申し上げたいと思います。
  まず第1に,遠隔授業全体を通じての評価でございますが,遠隔授業は,従来の法科大学院の通常授業と比較しても,概ね遜色ないということが指摘できます。具体的には,通常のこれまでの授業と遠隔授業を比較してどちらも変わらないとの回答及び遠隔授業の方がむしろ教育効果が高いといった回答が,併せて受講者全体の7割程度ございました。
  それから第2に,今回の調査で配信先となった地方の小規模校の学生の遠隔授業に対する評価は概ね良好であったのに対して,配信元となった首都圏の大規模校の学生からの遠隔授業に対する評価は,それほど良好ではなかったということでございます。
  それから第3に,規模別に遠隔授業の評価を見てみますと,40人から50人程度の比較的規模の大きい遠隔授業に対する学生からの評価は概ね良好でしたし,また10人程度の小規模のゼミ形式の遠隔授業についても,学生からの評価は概ね良好でございました。これに対し,20人から30人程度の中規模の遠隔授業に対する学生の評価はそれほどよくはありませんでした。ただしその原因は,授業規模にあるということではなくて,もう少し別のところにあるのではないかというふうに推測をしております。
  それから第4に,サテライト方式の遠隔授業に対する学生からの評価ですが,これは概ね良好でした。しかし,無線による端末を利用した遠隔授業に対する学生からの評価は余りよくありませんでした。この点具体的には,端末を利用した遠隔授業よりも,従来の遠隔授業の方が優れているというふうに評価した学生が半数以上を占めております。こういった結果になった原因はいろいろ考えられるところでございますが,一因としては,遠隔授業の実施方法に問題があったということが考えられます。
  それから第5に,オンデマンド形式の授業に対する学生からの評価でございますが,これは概ね良好でした。具体的には通常授業とオンデマンド授業を比較して,どちらも変わらないとの回答が大体50%程度,また,オンデマンド授業の方が教育効果が高いといった回答が20%程度ございました。したがって,受講者の7割程度の者が,少なくとも従来の授業と同程度以上の教育効果がオンデマンド授業にはあるのだというふうに評価していることになります。ただし,オンデマンド授業については,同時性及び双方向・多方向性が確保されていないことから,受講していても授業に臨んでいるという緊張感がないだとか,あるいは教員から当てられるということがないので,予習・復習を怠ってしまうといった負の面も,アンケートの自由記述欄では指摘されていたことを付言しておきたいと思います。
  では次に,今回の調査研究から,ICTを活用した授業を本格導入する場合の課題が幾つか見えてまいりましたので,その点を指摘するとともに,若干提言めいたこともコメントさせていただきたいと思います。
  まず第1に,ICTを活用した授業の実施の仕方について課題があるというふうに考えております。例えば,オンデマンド授業は,今指摘したようなデメリットがありますので,仮にこれを導入するにしても,一定回数に制限する必要があるのではないかと思います。そうしますと,具体的に何回程度なら許容されることになるのかといった問題が出てまいります。また,ICTを活用した授業には複数のタイプがあり,それぞれメリット・デメリットがありますが,異なる授業形態を相互に組み合わせることで,それらのデメリットを補うということが考えられます。ICTを活用した授業の教育効果を確保していこうという場合には,異なる形態の授業形態を組み合わせることの有効性についても検討していく必要があるだろうというふうに思います。
  それから第2に,ICTを活用した授業を導入する際には,教育上の周辺環境を整備して,受講者をサポートする仕組みを用意しておくということが必要不可欠であると考えられますが,それをどういった形でどの程度行うのかという課題があると思います。特に遠隔授業の受講者が地方在住者である場合,学習環境を整備する方策を検討する際に,近隣の地方大学による支援も視野に入れて検討するべきでありまして,その意味では首都圏の大規模校と地方の小規模校の大学間連携というのは極めて重要であろうというふうに思います。
  それから第3に,コストの課題があると思います。ICTを活用した授業を実施するためには,様々なコストがかかります。具体的には機材の調達に係る費用のほか,通信料,保守点検料等のランニングコストがかかりますし,また遠隔授業用の特別な教務システムの構築費なども考えられるところであります。また,人件費やリスク管理費なども考えられるところです。こういった様々なコストについては,遠隔授業の実施等が地方在住者や社会人の学習環境の整備という社会的意義を有していることに鑑みると,一定の公的援助が検討されてもよいのではないかというふうに思います。
  第4に,ICTを活用した授業に関わる人材の養成という課題があると思います。ICTを活用した授業に関わる教職員及び受講生が,それぞれ当該授業の特性を十分に認識して授業に関わっていかないと,当該授業の教育効果は低下するというふうに考えられます。そこでFD研究集会等を通じて,教員用の研修を実施するとか,遠隔授業用のマニュアルを作成し,整備するといったことが考えられます。こういった教員に対する対応と同様の対応が,受講生及び事務職員についても考えられるところではないかと思います。
  それから第5に,ICTを活用した授業が,現在の法令にそもそも適合するのかという問題があります。この点,特に関係規定では,ICTを活用した授業に十分な教育効果が認められることが求められておりますので,このいわば教育効果要件ともいうべき要件をどういうふうに充足していったらいいのかということは,大きな問題になるであろうと思います。
  それでは,次に本年度における中央大学法科大学院の取組について御報告を申し上げたいと思います。直近の加算プログラムでは,中央大学法科大学院が提案した,ICTを活用した授業の導入に向けた取組が優れた取組として評価されました。そこで,このプログラムで予定されていた取組が,果たしてまたどういった形で実施されているのかという点に主眼を置いて,本学の取組を簡単に御報告申し上げたいと思います。
  まず第1に,法曹リカレント教育において,ICTを活用する取組を新たに開始いたしました。具体的には本年4月から,島根大学に御協力いただき,島根県弁護士会に所属している法曹有資格者に,中央大学の法曹リカレントプログラムをICTを活用して受講していただいております。予定どおり進めば,本年度末には遠隔授業のみで当該プログラムの公共政策コースを修了することになります。また本年9月からは,鹿児島大学の御協力も得て,同様の取組を実施する予定でおります。更に法曹リカレント教育の一環として行う短期セミナーについても,鹿児島大学,それから琉球大学,九州大学の御協力を得てICTを活用し,鹿児島,沖縄,福岡で受講できるようにする予定でおります。
  それから第2に,琉球大学法科大学院の協力を得て,特別プログラムを実施する予定でおります。この特別プログラムでは,琉球大学法科大学院が配信元となり,同法科大学院の特色ある授業を中央大学法科大学院に配信をしてもらい,中央大学の学生が遠隔授業の方式で授業期間中に3回程度受講をいたします。その後,夏期休暇中にスクーリングを実施し,中央大学の受講生が琉球大学で対面授業を受けるということになっております。こういった遠隔授業とスクーリングを掛け合わせる手法及び地方大学が配信元となる遠隔授業は,先の委託事業の調査研究では実施できなかったことでありまして,その意味では発展的な調査研究の意味合いがあろうかと思います。
  第3に,引き続き中央大学法科大学院の授業を対象にして,前年度の委託事業の調査研究では実施しなかった授業形態,すなわち70人を超える大規模授業や,あるいは5人以下の小規模授業を対象にして,琉球大学の協力も得ながら遠隔授業の実証研究を進めております。
  それから第4に,法科大学院教育におけるICTを活用した授業の導入に向けてというタイトルで,先月,教員を対象にしたFD研究集会を実施いたしました。このFD集会では,当該テーマについて意見交換を教員間で行いましたが,この集会を通じて,教員間で共通の認識を得るための土台作りをできたのではないかと思います。
  それから第5に,未修コースの学生を対象にして,オンデマンド授業の有効性について調査を行う予定であります。オンデマンド授業についてはいろいろな利用の仕方が考えられるところでありますが,どういった授業での使い方があるのか,またオンデマンド授業の教育効果等について調査を行う予定でございます。
  以上が,本年度の中央大学の取組です。時間の都合もございますので,これで私からの報告は終わりたいと思います。

【樫見主査】  どうもありがとうございました。
  それでは,質疑に入りたいと思います。ただ,この後事務局から,法科大学院におけるICTを活用した教育の本格的普及に向けた論点については説明をしていただきますので,ここの場では,まずは3人の委員からいただきました御説明に対して,事実確認といった,意見交換は後ほど設けさせていただきますので,こういう点はどうなっているのかというような事実確認のみということで御質問をお受けしたいと思いますが,いかがでしょうか。

【大石委員】  中央大学の取組につきまして,1点だけ確認させていただきたいと思います。去年委託事業で行われたのは,授業全体ではなくて,それには一部に参加するという形で,単位認定を恐らく伴わない形のものだったかと思うんですが,今年度は,リカレント教育というのはもう修了した人ですけれども,ロースクールに在籍している学生で,単位認定を伴う形でそこのところにICTを利用していらっしゃるというのは,2番,琉大との遠隔授業とスクーリングの併用,これだけでしょうか。それともそのほかにもあるのかということを,御教示いただければと思います。

【土田委員】  ただいまの件,まず単位認定との関係でございますが,小規模の5人以下の授業については,単位認定と絡むような形になります。ただ,これは1単位科目の授業を対象にしておりまして,全部で8回分の授業があるわけですが,そのうちの数回,具体的には2回程度を対象にしたものになっております。それから,大規模の70人を超える遠隔授業については,これは琉球大学の学生の方に配信するものですので,単位認定は伴っておりません。以上です。

【大石委員】  ありがとうございました。

【樫見主査】  ほか,いかがでしょうか。

【石井委員】  よろしいですか。幾つかありますけれども,まずは個別の話として。筑波大学では,グーグルハングアウトを使用されているわけですけれども,それを選定された理由は何かあるんでしょうか。

【大石委員】  ほかの選択肢として,例えばスカイプとかもあったじゃないかと,そういうようなことでしょうか。スカイプの場合は,画像の射程範囲が狭いということですね。グーグルハングアウトの場合は,外から参加している者の顔が全員映って,教室での,特に出席確認というところが,出張先から入ってきた者を出席認定するというところがありますので,そういうところもスカイプの場合,先ほど多地点対応のものが出てきたということなんですが,そういったものをちょっと想定していなかったものですから,教室側で教員が出席管理をするということですと,グーグルハングアウトが便利かなということで,特にこだわりがあったわけではなくて,我々の知見の下での選択肢の範囲が狭かったということですね。
  それからあともう一つ,先ほど土田委員から御指摘がありました,機器の値段が非常に高いということがありましたが,グーグルハングアウトを使用する場合には,ハードウェアと,それから中に入れるソフトを含めてもさほどの額にならないので,経済的であるという部分も魅力としてはございました。

【石井委員】  ありがとうございます。出席確認が大事だということですよね。

【大石委員】  はい。

【石井委員】  分かりました。ありがとうございます。もう1点は,土田委員のお話ですけれども,報告書の中においては,回線が不安定で十分できなかったというような場面が幾つか,特にiPadを使用した場合にと書かれていたのですけれども,それは設備として回線が脆弱(ぜいじゃく)だったということで理解してよろしいでしょうか。それとも,システムとしてそういう問題があるのかということでしょうか。

【土田委員】  システムとしてというよりは,回線の問題があったというふうに認識しております。

【石井委員】  としますと,やはりこういうことをやるためには,きちっと大学側として十分な回線容量を確保する必要があるんだという理解でよろしいですか。

【土田委員】  はい。

【石井委員】  ありがとうございます。

【樫見主査】  どうぞ。

【米田委員】  ちょっと付言したいんですけれども。恐らくそれは,受講者側の回線事情が大きくて,大学の方は,大学間でやっているときはほとんどストレスなく,どんなシステムでもほとんどできる環境は整っているんですね。ところが大学の回線の外に出たときに,一挙に環境が不安定になるんですね。どこで受けているかに物すごく大きな差が生まれます。そのあたりが,例えば大学の中でも,大学によっては生協と大学の回線が別になっていて,生協の回線のWi-Fiを使うとすごく速度が落ちていたり,同じ大学の中でも違いが発生したりすることはないではないですが,大学の回線から直でいけば,今恐らく,国立大学を想定していますが,どこの国立大学でもWi-Fiでつないでも,そんなに遜色はない。ただ,一歩大学の外に出たときには,本当に接続環境は全く我々が管理できない状態になるので,そのリスクというのが恐らくあるし,それが不満の原因の一部ではないかと推測します。

【石井委員】  それも分かりますけれども,たしか教室内でiPadを複数台使用した場合に,1台のiPadだったらできたけれども,2台iPad使ったら駄目だというようなことも書かれていましたので,そのあたりも含めてちょっとお話ししたかったというのがあります。

【米田委員】  それは回線の輻輳(ふくそう)の問題ですね。1つのアクセスポイントに複数台いくと,非常に画像だと大きなデータを取ろうとするので起こる現象だろうと思うんですけれども。

【石井委員】  やはり大学としても,きちっと用意しなきゃ,ちゃんとした無線アクセスのポイントを用意しなきゃいけないということになるわけですよね。

【樫見主査】  ほか,いかがでしょうか。
  もしほかに御質問ないようでしたら,一旦ここで切らせていただきまして,問題点の方,先ほど申し上げました今後の議論を行うに当たりまして,やはり論点をきちんとまとめていただいた方がいいということで,既に事務局の方でまとめていただいておりますので,この点について御説明をお願いいたします。

【塩田専門職大学院室長】  それでは,資料8を御覧ください。論点と書いている,まず点々で囲んでおりますけれども,これが昨年6月の関係閣僚会議決定でございまして,文部科学省に対してこのような義務がかかっております。平成30年度を目途に本格的な普及促進をすると。そのために検討を進めていただきたいというものでございます。
  1.については,普及させる目的ということで,意義ということですと,地方在住者とか社会人の制約緩和ということがまず第1になるかと思うんですけれども,それも含めた意義,効果,今後の展開,どういうことが考えられるかということでございます。
  また2.で,遠隔授業等の実施ということで,今まで御説明があったように,テレビ会議システムを使ったサテライト方式ですとかモバイル方式,また同時性がないですが,オンデマンド方式といったのが想定されますが,本格的な普及を促進していくためには,今後どのような形態が考えられるか。また,形態ごとの課題は何かということでございます。
  2点目は,遠隔授業に適する科目,適さない科目,また年次みたいなお話もあると思います。そういったことをどう考えるか。
  また(3)ですと,全ての授業をICT活用授業ではできないような場合は,組み合わせる必要があるだろうと。そういう組み合わせる場合に,どのようなやり方が効果的かということ。
  また(4)は,遠隔授業を行う際の学習評価についてどう考えるか。
  また(5)につきましては,先ほど御説明があったと思いますが,例えば地方大学と連携をして,地方で授業を受ける学生がいる場合は,そういった方に対する学習支援というのをどういうように考えるかということでございます。
  3.については,必要となる要件ということで,(1)のハード面ということで,施設・設備というのは最低限どれぐらい必要なのかと。今後どのような施設設備が必要なのかということでございます。また,それを運営するためのソフト面ということで,ファカルティディベロップメント,スタッフディベロップメントを含めて,教職員にどのような取組が求められるのかというようなことが書いております。
  また,認証評価との関係がございまして,認証評価との関係を,今後考えていく必要があるということと,また法令との関係という御指摘がございまして,法令との関係につきましては次のページを御覧いただければと思います。
  さきにも簡単に御説明させていただいておりますが,関係する規定がこの3つでございます。大学設置基準と専門職大学院設置基準,メディア告示。まず大学設置基準第25条の第1項,第2項ということであると。もともと第1項しかなかったんですけれども,テレビ会議システムというのがだんだんと普及し始めてきた後で第2項が追加されたという経緯でございます。専門職大学院ができるときに,御存じのように専門職大学院というのは,実践的な教育をしっかりやっていくと,そういったような学位でございますので,特に下線部が専門職大学院には求められております。十分な教育効果が得られる専攻分野に関して,効果が認められる授業について行うということで,通常の大学設置基準よりも条件が付されているということでございます。
  メディア告示の方を見ていただきますと,次に掲げる,要するに1号又は2号の要件を満たして,大学において面接授業に相当する教育効果を有すると認められたものだということで書かれていると。もともとこれはテレビ会議システムを想定しておりましたので, 1号だけがございました。同時かつ双方向に行えるものであって,かつ授業を行う教室等以外の,研究室とかスタジオのようなものを想定しているようですけれども,教室等以外の教室,研究室,又はこれらに準ずる場所でやらなければならないという規定でございます。
  更に言うと,括弧書きの中で,大学設置基準第31条云々(うんぬん)とある,これは科目等履修の場合でして,科目等履修の場合は企業の会議室等の職場又は住居に近い場所でやってもいいと。逆に言うと,科目等履修でない場合は,駄目だというふうに法令上は読むのだろうと思います。これは社会人を対象にしたリカレント教育のような科目等履修の場合は,企業の会議室や社会教育施設などでこういったテレビ会議システムを受けることが想定されていたということでございます。
  後ほど2号が追加されました。これはインターネット等の発展に伴って追加されたという経緯でございます。更に細かく言うと,2号も2段階に追加されておりまして,それが5ページを見ていただければと思います。網かけの部分が当初はなかったんです。毎回の授業の実施に当たって設問解答,添削指導,質疑応答等による指導を併せ行うと。かつ学生等の意見の交換の機会が確保されていると,このような規定であったのですけれども,教育の質をもっと保障しなければならないだろうということが問題になりまして,後ほど網かけの部分が追加されて,更に条件付けがされているということであります。この段階になりまして,「指導補助者が対面する,又は授業終了後速やかにインターネットその他の適切な方法を利用することによって」という文言が追記されているということでございます。
  点々で囲っているのは,そのときの施行通知などを書いてございます。例えば,施行通知の下の枠の方ですと,例えばその他適切な方法としては,当該授業の終了後,速やかに指導を行うことを前提として電話,ファックス,電子メールを活用することも想定されるというような当時の解説がございます。下の矢印にありますとおり,この2号における「速やかに」というのはいつなのかとか,適切な方法とは何か,十分な指導とはどこまでかと,こんなような具体的な検討が今後必要になってくるだろうと思われます。
  説明は以上でございます。

【樫見主査】  ありがとうございます。本日の終了時間は7時を予定しております。5分ほど前に終了ということを考えますと,大体20分から25分程度かとは思うのですけれども。以上,先ほど3人の委員の方から御報告を頂いた点,それから今,事務局から御説明をいただいて,そして資料8の最初のところで,特に2番目,それから3番目,これらにつきまして次回以降の議論の参考といいますか,ネタを皆さんから提供していただくということもございますので,この場は順番というのではなくて,2番,3番について御質問,あるいは御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。

【藤本委員】  1つよろしいでしょうか。名古屋大学の藤本でございます。最後の論点のところでございますが,3のハード面ですね。ここに今日お集まりいただいております調査研究協力者のメンバーでハード面の専門家はおりませんので,今後この点について論点を詰めるなり議論をして,一定の見解を示すということになりましたら,私どもで議論をするよりは,やはり外部からゲストの専門家の方に来ていただいて,きちんとレクチャーをしていただくということは,やはり前提になるだろうというふうに考えます。
  もう1点は,やはりソフト面のところに関わるところですけれども,このようなICTを利用した教育は,法科大学院だけではなく,先ほど米田委員からも報告がありましたように,学部,法学部,あるいは他の専攻等でかなりの蓄積があると思います。また,放送大学というのは特殊な形態ではございますが,ここでは双方向ではありませんけれども,やはり通信教育のかなりの蓄積があるわけですので,やはりこういった蓄積であるとかいったようなものをきちんと踏まえた上で議論をすると。既に様々な問題点であるとか,あるいはどのようなノウハウが必要であるか,あるいは施設面の問題,あるいはメンテナンスの問題等については,やはりいろいろな調査研究がされていると思いますので,この辺もやはり外部の方からレクチャーを受けるということは,1つ必要ではないかなというふうに考えております。以上です。

【樫見主査】  ありがとうございます。外部の方の専門家をこの場にお呼びするのか,あるいはどういう形で御意見を生かしていくのかということにつきましては,また事務局と御相談させていただきます。
  ほか,いかがでしょうか。

【石井委員】  今の点ですけれども,専門家というのはどのような方を想定されているのか,ちょっと私は理解できなかったのですけれども。私は今,千葉大学で情報担当をやっていまして,全学の情報システムの納入からセキュリティ全部やっていますが,普通に業者と話をしていろいろやっていくことはできますが,その業者のメリットしか出てこなくて,要は分からないです。だから,私がやるときはいつもいろいろ工夫して公平性という,いろいろなデメリット・メリット見えるような形でやるわけですけれども,こういう場合ですと,特定の業者だけやってしまいますと,その部分しか見えなくなってしまいますので,かなり慎重にやらないといけないんじゃないかと,そう思ったものですから。

【藤本委員】  私が専門家と申しましたのは,業者ではありません。例えば,情報処理じゃなくて,情報教育学会であるだとかいったようなところでは,こういった先進的なものについて一定の開発も含めて蓄積があるわけですので,そういうところの知見をお持ちの方ということであって,専門業者呼んで,どういうことができますかとか,どれぐらい費用がかかりますかということを伺うという趣旨ではございません。

【石井委員】  分かりました。

【米田委員】  鹿児島大学の米田でございます。今の点でいきますと,1つにはこれまで法科大学院自体が,先ほどアンケート調査を行うという話もありましたが,様々な補助金のもとで,かなりの大学が遠隔授業システムを買ったという事実もありますし,それをどう使ってきたか,なぜ使えなかったのかということもあると思うし,本学のように使い倒しているところもあるわけでございまして,その差は何かということを,まず特に法曹養成の場面の中で何が起こっていたのかを把握することが重要かというふうに思います。その上で足りない部分とか,ほかの可能性があるときに他の専門家のお話を聞くことができればと。まずやはり我々としては,平成16年から巨大な実験を行ってきたというふうに認識をしていまして,やっぱりそれがうまくいっているところとそうじゃないところは,それについての原因調査をちゃんとすると。その認識をした上で,じゃあ何が必要だったのか。更にもっと,これまででも僕からすると,すごい成果を上げていると思うんですね,ICTを活用して。それをもっと進めるためにはどういう施策が必要なのかということを検討していくような段階を踏むのがいいのかなと,今の点でいけば思います。

【樫見主査】  ありがとうございます。ほか,いかがでしょうか。

【中川委員】  神戸大学の中川です。2点意見です。1つは,最初の論点1のICTを活用した教育を普及させる目的で,地方在住者という言葉が出てきている点です。何となくイメージは湧くんですけれども,最終的に公表するときにそれは何を意味するのかということは明らかにしなければならないと思います。その反対語は何なのか,首都圏なのかとか,近畿はどうなのかといったことが問われると思います。また,いわゆる首都圏から発信する場合もあれば,逆の発信もあるわけです。ここでいう地方在住者とは,恐らく自分の周りに法科大学院がない人というくらいの意味だとは思いますけれども,何か言葉はもう少し考えた方がいいかなという気がします。
  もう1点は,先ほどのメディア告示がそうかどうかよくわかりませんが,なにか,遠隔授業は面接授業に対して最初から劣っているという前提で書かれているように見えるんです。メディア告示の2号でしょうか,学生に対面しなさいとか,速やかにインターネットの方法を用いて設問解答を添削指導,質疑応答,学生との意見交換をしなさいとありますけれども,正直なところ面接授業でもそんなことやっていないわけですよね。望ましくないとはいえ,面接授業なのにそれがまさに録画みたいな授業というのは,実際によくあるわけです。今までやってこられた先生方に是非教えていただきたいのが,遠隔授業というのはそれ自体,面接授業に劣るものなのかという評価がそもそもあるのかということですね。
  考えられるデメリットは,本当に授業を受けているのかどうかよく分からないということでしょうか。欠席しているかもしれないとか,どこかに行っちゃったとかですね。そういう意味では,出席確認というのは必要なのかもしれませんが,授業の内容としてどうなのかというのは,そこはまず出発点としてはっきりさせておかないと,どういう工夫が必要かというところが出てこないと思うんですけれども。

【樫見主査】  恐らく根本的な問題かと思いますけれども。

【米田委員】  1つのヒントというか,それを議論するときに,2つの目線が複合的に出てきている。1つは,学生からの評価というのと,やっぱり教員の側のパフォーマンスというか,評価って両方あると思うんですね。少し経験値を言うと,先ほど先生もおっしゃいましたが,ICTを使った授業,いい授業をしようというレベルで考えると,やっぱりちょっとコツが要るんですよね。それは普通の授業でもコツが要るのと全く同じだと思うんですけれども,でもちょっと特殊かもしれない。同じように,学生の受け取り方も,例えば本学の場合,最初からICTを使うことが前提で,遠隔システムに端的に慣れているんですよね。ある種の欠点はこういうのがあって,長所はこういうところがあるというのは学生は慣れてしまうと,さっきアンケートでもありました,本学では多分普通なので,すごく高い評価をしていると思いますよね。どのように教育を受けるかという慣れの事情というのもすごく影響している。
  やっぱり初めての人には,恐らく放送大学も当初そうだったと思うんですけれども,抵抗あったと思うんですよね。それは場面が違うし,受ける場所も違うし,授業を一緒に受けている人が周りにいないところで受けるのと,いっぱい人がいるところで受けるのではやっぱり環境が違う。その違いというのを,教える側がどう管理するのかということと,どう理解して評価するのかということと,それから受ける側がどう評価するのかというのが一緒に入ってきてしまう。
  特にICTの場合は新しい取組なので,あらゆる教育上の論点がゼロから試されてしまう。中川委員がおっしゃったように,それが障害になってしまうということになると思うので,その辺我々もちょっと注意をしながら,今後議論ができればと思います。

【樫見主査】  面接授業と,それからICTを活用した教育,使う側のニーズとか違いますし,本当に両者は同一のものでなければいけないのかという根本的なところがございますね。
  ほか,いかがでしょうか。

【宇加治委員】  宇加治です。聞いていて思うことは,多分こちらにいらっしゃっている先生方は比較的ICTを使う教育というものに慣れていらっしゃる,あるいは前向きに取組をされているところですけれども。ただ,今までいろいろな制約もあったと思いますが,必ずしもどこも積極的というわけではない。それはやはり不安もあるだろうと思うんですね。制約があるということもありますけれども,これからやりましょうと言われても不安があるところも大きいと思うので,どんな不安があるかということとかも,ちゃんと現場の大学の方にアンケートのときには聞いてもらいたいなと思います。あと学生の方も,不安なことも含めてヒアリングをするなり,そういったこともやるべきではないかなと思います。
  それから,やっぱり体験することが非常に大事だと思うので,この会議でかどうかは分かりませんけれども,ICTでの打合せなり会議なりをメンバーでやりたいというふうに思います。その中で,この話,うまくいかなかったよねとか,意外とうまくできたねという話が出てくるんじゃないかと思うんです。そうすると共通の体験ができますので,やはり共通の体験がベースにあった上での議論というのは深まるんじゃないかなと思いますので,一応御提案をさせていただきます。

【樫見主査】  ありがとうございます。ほか,いかがでしょうか。先ほど石井委員,手を挙げられたかと思いますが。

【石井委員】  先ほど米田委員のところの続きなんですけれども,あるいは中川委員のところの続きなんですけれども。例えば,メディア告示の話でいきますと,1号,2号と分かれているのはやっぱり大事なわけでして,授業方法が同時双方向である場合はこういう価値があるとか,こういう問題があるとか,あるいはこの辺が障害になるという話と,それから一方的にやるような場合についてはこうだという,授業形態によってやはり違うわけですので,いろいろな調査においても,その2つをきちっとすみ分けをして,それぞれについてきちっと検討なりするということが必要だろう。例えば私は,2号はちょうどぎりぎり19年改正の直前にやったことがありまして,そのときでもいろいろあったわけですけれども,やはり改正が面倒だなと思ったことがあってやめてしまいましたけれども,そういうこともありますので,やはり1号,2号の要するに形態があるということを前提にした上で調査は進めていかないと,まとめてやってしまいますとどんどん混乱するだろうという気がしておりますので,その点を御注意だけと思っております。

【樫見主査】  朝田委員。

【朝田委員】  資料8の論点のところに関わってなんですけれども,1番目,1.のところですけれども,ICTを活用した教育を普及させることの意義ということに関連してですけれども,今日の事務局からの御説明資料等にもございますように,特にこの間の社会人,そして法科大学院入学者が減っている。言い換えると法曹志願者,そして法科大学院入学者志願者が減っているということですけれども。特にこの資料の13ページのところを見ると,本当に首都圏を中心に,入学者は来ているんですけれども,私どもの存在する中四国のところ,本当に入学者が減っている。言い換えると,法曹志願者も減っているだろうというふうに考えられるんですね。
  これは地方に在住する者にとって,近くに法科大学院がなくなったからそうなのか,それをカバーするために遠隔授業でそうはならなくなるということを示すにしても,この意義との関係では,片方,この協力者会議での直接的な調査事項ではないかもしれませんけれども,潜在的な法曹志願者で法科大学院志願者,入学志願者がいるかどうか,これも重要な調査事項になるんじゃないかなと思うんです。
  といいますのは,島根大学のような小規模の大学であれ,確かにこういう全国的な傾向があるものの,傾向的には志願者は減ってはいますけれども,やはりいます。社会人の学び直しという教育プログラムをここ二,三年行っているんですが,そこで社会人の方々が,更に勉強したいということをよく言われるんですね。これはリカレント教育の中で,より法律に関わって専門的な勉強を更に積み重ねる中で,その更に先は,もっと専門的にやっていこうと思えば,企業で働くにしろ,別に狭い意味での法曹にならなくても,いわゆる法科大学院レベルの専門教育を受けたいというふうに思うような人が1人2人やっぱり増えてきているように思うんですね。
  そういうようないろいろな取組の中で,全国的な傾向はありますけれども,我々法律系の学部やら学科やら,それぞれの大学にいる者として,法曹志願者が潜在的にどのぐらいいるかというのも,直接的な調査事項ではないんですが,この意義との関わりでは,ちょっと考えてみる必要性があるのではないかなというふうにも思います。ちょっと長くなりましたけれども。

【樫見主査】  ありがとうございます。今,朝田委員が言われた資料は,資料3-2の地域配置について,3ぽつ目の資料でございますね。
  ほか,いかがでしょうか。どうぞ。

【中川委員】  今,朝田委員おっしゃったのは,例えばこういうこともしてはどうかという御提案かなと思って伺いました。例えば島根大学の学部に対してLSの授業の一部をICTで配信して,は学部生にも伝わるような法科大学院授業のある種エッセンスみたいなところを伝えることで,志望者の掘り起こしをしていくという意味で,このICTを活用することに意義があり,1つの柱にしてはどうかという,そういうお話ですか。

【朝田委員】  今おっしゃったようなところにもつながっていくと思うんです。だから,法曹志願者を掘り起こすようなことも,今後必要になるんじゃないかなと。実際にそれを掘り起こすためにも,現にどれぐらいの法曹志願者がいるかというのも,やっぱり調べてみる必要性があるんじゃないかなと思うんですね。

【中川委員】  非常にうまく働くんじゃないかと思います。我々自身,やろうとしているところなんですけれども,やっぱりいろいろな大学と一緒にローのいいところというのを伝えるためには,説明会では来た先生しか見れないですが,頻繁にLSの様子を映してあちこちの学部で見られるようにしておくというのが有効ではないか。あるいは,ロースクールの学生が,LSとは離れたところにいる学部生に対して話しかけるような。そういう環境を作るというのも,とても重要な,有効なことではないかなと。ですから,先にニーズを調査するというよりも,そうやって掘り起こしていって増やしていくということの方が早いかなと思ったんですけれどもね。

【朝田委員】  島根みたいな片田舎にいると,本当に学生にしろ,社会人にしろ,やっぱり近くにいないからというので諦める人もいるやに聞いています。だから,そこのところも見せつつ,どう掘り起こしながらつなげていくかということも大事でしょうね,先生がおっしゃるように。

【中川委員】  是非それもやるといいんじゃないかなと思いますね。

【樫見主査】  どうぞ。

【米田委員】  今,中川委員がおっしゃったような取組は,もう九州大学と本学の間で協定を結んで,この4月から展開をしております。法職入門という科目がございまして,法科大学院等法曹を目指すという学生のための授業がありまして,その授業に九州大学から15コマ中4コマ,今6コマまでいくのかな,最後は。6コマ,遠隔講義を使ったものが5コマと,あとライブで実際に来ていただいて授業していただくのが1コマといいう形で,そういったICTを使って,ほかの法科大学院でもつないでいただければ,喜んでいくらでも授業のコマを配分しますが,そういった形での取組が既に始まっております。
  まさに我々としては,ここでは実際には授業をどのように,ここだけの制度自体の中でICTを使ってどれだけ広げるかという議論が中心にならざるを得ないと。この会議は設置の理由からするとそこを中心ですけれども,そういった掘り起こしの方法としてのICTの機能ということも十分に意識をしながら議論ができればというふうに思います。

【義本大臣官房審議官】  今,朝田先生,それから中川先生,米田先生のお話に関連するんですけれども,並行して志願者が全体で減っているということに対して,ロースクールの成果とか魅力を発信するとか,あるいは活躍の場なんかも含めて,少し戦略的に情報発信とか広報をやらなければいけないと,私どもも問題意識を持っており,ここはロースクール協会ですとか,あるいは日弁連などと協働しながら,一段の取組をさせていただこうと思っております。そういう話ももう少し詰まった段階で,またこちらにフィードバックさせていただき,あるいは掘り起こし,魅力,関心の点からすると,このICTというのは非常に大きな武器になり得るということについても,併せてそこに介していきながらしていくというようなことも少し考えたいと思っております。

【樫見主査】  ありがとうございます。そろそろ時間もまいりましたけれども,どうぞ。

【恒川委員】  今,社会人で進学難しいというときに,諦める人も多いでしょうけれども,選択肢として現在あるのは予備試験なんですよね。仕事している人たちは,予備試験を狙っていますとおっしゃるんですよ。だから,それが当面このICT教育のライバルなので,これがせっかくできても,予備試験でいいですと,予備試験でやりますという人も相変わらずおられる可能性はある。ですから,やっぱり現在の法科大学院教育のメリット,もともとの司法制度改革の理念の下の教育に,このICT教育が付け加わって,そこで更にいろいろな新しい試みもできる。異なる場所で,異なる地域で勉強している学生が交流できるとか,あるいは複数のローの教員も研究交流なり教育交流できると。そういうところから,今までにはなかったメリットが生まれるというような売りを出していかないと,こういうことをやることにしました,しようがないからやりますというような受け止め方だけされると,結局発展しないんじゃないかというところもあるので,その辺どうやって応援団といいますか,いいところを積み重ねてアピールするかということが重要になってくるんじゃないかというふうには思います。以上です。

【樫見主査】  ありがとうございます。いろいろな御意見をいただきました。マイナスキャンペーンが,とかくどうも一般の方,社会人,あるいはこれからの学生さんにいろいろいっているようでございますけれども,積極的に新しい教育方法を我々が模索しているということを広報して,どんどん学生さんだけではなくて,一般の方にもプラスの面でこういった取組を知っていただきたいというふうに考えております。
  そろそろ締めの時間がまいりました。フリートーキングの中で非常に有意義な御意見をたくさんいただきましたので,今後の会議の進行方法,それから取り上げるべき論点,詰めさせていただきたいと思います。
  それでは,最後に事務局に,次回の会議の予定とその他につきましてお願いをいたします。

【真保専門教育課専門官】  失礼いたします。次回の会議の日程でございますが,現在調整をさせていただいている最中ですので,調整の上,なるべく早めに皆様方にお知らせできるようにしたいと思います。以上でございます。

【樫見主査】  ありがとうございます。この会議には本当に日本全国,かなり遠隔地からもいろいろ御参加いただきました。お忙しい中,この会議に御出席いただきましてありがとうございます。本日の会議はこれにて終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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