資料2これまでの会議における主な御意見

【法科大学院におけるICTを活用した教育の目的】
○本会議の議論の出発点である昨年6月の法曹養成制度改革推進会議決定の趣旨を明確に記載するべき。
○昨年6月の法曹養成制度改革推進会議決定にもあるとおり、地方在住者や有職社会人の学修機会の確保を主たる目的として据えるべき。
○ICTを活用した教育を普及させる目的で、地方在住者という用語が何を意味するのか。恐らく遠隔地にいて、周囲に法科大学院がない者という意味だと思うが、表現を工夫した方が良い。
○あまり具体的な内容には踏み込まず、「地理的・時間的障害があって法科大学院教育を受けられない者に対する面接授業に匹敵する授業の提供」など、一般的な形としてまとめてはどうか。
○地方に立脚する法科大学院の募集停止校が増え、地方の人材養成の根が失われつつあるという、議論の背景にある現状認識を記載するべき。
○弁護士会等をはじめとする関係者が法科大学院を支えていくためには、地域の法科大学院が法曹養成の拠点として整備されていることが重要。
○ICTを活用した教育の普及により、全国各地の人々に法曹への途が開かれるというメッセージが必要ではないか。
○普及にあたっては質の確保も重要であり、その点も目的に加えた方が良い。
○各法科大学院が有する知的資源を幅広く活用するなど、ICTの活用による新たな可能性も目的に含まれるのではないか。
○遠隔授業を実施する場合の要件(設置基準の考え方)を明確化するだけで本格的な普及につながるのか。


【法科大学院におけるICTを活用したメディア授業に関する法令等に適合する授業の在り方】
専門職大学院設置基準
(教育効果要件の適合性について)
○補助教員の配置を要件化すべきでないか。補助教員を配置することにより、授業中の指導のほか、授業前後のフォローも可能となり、教育効果を高めることができる。
○補助教員を配置すべきかどうかは、各大学において判断すれば良く、授業科目の特性に応じて、配置するというのが望ましいのではないか。
○配慮すべき要件として、法科大学院側のシステムに不具合が発生した時のケアを行う必要がある。
○LMSを活用し、予習・復習の状況を記録として残すことにより、教員もその状況を確認することができる。授業前にどのような準備をしてきたか、準備が授業にどのように活かされているか、授業後何を得たのかが分かるようになる。成績評価が厳格に行われていることの裏付けにもなる。
○現状、新入生はLMSを入学直後から使用することはできない。配慮すべき要件として、LMSの活用を想定するならば、授業が開始される前、法科大学院入学前からも含めて体制を整備する必要性に言及する必要がある。
○新入生に対して、法科大学院入学前からLMSを使用することができるよう、全てを準備することは困難。記載の仕方については、配慮が必要。
○証人尋問等の法廷活動や打合せなどの法曹の実務において、ICTが既に活用されており、対面のコミュニケーションとICTを活用したコミュニケーションでは気を付けなければならないポイントは異なると思うが、法曹になる前に慣れておくことは重要なこと。
○実務教育でも、相談者とのやりとり等についてはEメールなどのICTが利用されている。
○ゼミ形式の授業は少人数で行われることから、大人数で行う講義形式よりも学生に目が届きやすく、よりメディア授業がやりやすいと考えられる。
○画像と音声が不足なく伝われば、人数はあまり関係ない。結局は設備に依存するが、この点がしっかり担保されていることがメディア授業を行う上での条件になるのではないか。
○授業によって特色があるので、どのような授業形式に対してどのような配慮事項を加えるべきか、一覧表にして検討する必要がある。
○教育効果要件について、授業時間外の指導や自修管理も含めて考えると、講義主体か、演習形式か、ローヤリング等なのかによって濃淡はある。また、エクスターンシップ等でも事前学修があり、レクチャーが行われている。それぞれ扱いが変わってくると思うので、何らかの整理が必要ではないか。
○配慮事項を検討するに当たっては、授業科目や人数で区分するのではなく、授業の特性(形式)に応じ、授業中と授業時間外に分けて検討を行うべき。
○配慮事項を抽象化することは可能であり、今後どのように技術が進歩するかは分からないため、システム等のハードの性能と連動しないように工夫する必要がある。
○ICTを活用する場合の授業形態や、単位取得に適合する授業科目の選定、学位取得につなげるための条件などについて、これまでの実績を踏まえつつ、類型的な考察が必要。
○設置基準への適合は外形的に判断される場合が多い。ICTを活用した教育に関する具体的な手法を限られた時間で提案することは困難であるため、これまでの実践事例を活かす形で促進策を考える視点が大事。
○設置基準をクリアするための最低限の基準を明確にすることは良いが、実質的な面に踏み込み過ぎると、画一化を招きかねない。
○ICTを活用した授業はまだまだ新しい試みであり、教育上のあらゆる論点がゼロから試されることになる。これがマイナスに作用しないよう、議論を進めていきたい。

メディア告示
(メディア授業の実施形態及び「面接授業に相当する教育効果」について)
○現在のメディア告示は、「メディア授業は面接授業に最初から劣っている」という前提で書かれているように見えるが、そのような評価があるのかという点は、議論の出発点として明確にしておいた方が良い。その上で、普及促進のためにどのような工夫が必要か考えていく必要がある。
○メディア告示を制定した頃とは前提となっている技術的要件が全く異なる。当時は、教室のような施設でないとリアルタイムでディレイもなく、コミュニケーションができなかった時代である。
○技術の進歩によって多様な形態が可能になっているという議論の流れ。当時の範疇に縛られる必要はない。教育の質の確保のための技術的基準を議論した結果、場所要件を広げていくことも考えられるのではないか。
○授業形態に応じてメリット・デメリットは異なるので、メディア告示について、同時・双方向である場合と、そうでない場合を区別して要件を規定していることは大事だと思う。それぞれの要件を前提にして調査を行い、議論を進めていく必要があると思う。
○メディア告示1号の場所要件については、「授業は学校で行うもの」という法律の基本的な考え方からきているのではないか。そこを乗り越えるためには、+αで面接授業と同等というように、立法時と意味を変える形で解釈しないといけない。
○法科大学院院に特化したメディア告示を制定する方法もあるのではないか。
○面接授業に相当する教育効果については、教育効果要件に実質的に吸収されるのではないか。
○面接授業については、環境整備を持って学生同士の交流・議論や教員との質疑応答が行われているものと推論している。メディア授業を行う場合においても環境を整備できるかが重要。掲示版の作成やEメールでの質問、チャンネンルの確立など、面接授業と同程度の周囲環境を確保すれば十分ではないか。
○教育の質の確保を考慮すれば、システム管理のためだけでなく、学生に指導等が可能な補助教員を配置した方が良いのではないか。
○メディア授業の実施形態によっては、受講生の周囲に教員が配置できない可能性もある。そのため、口頭によるコミュニケーションの機会の確保やネットワークを通じたサポートを配慮事項として加えた方が良いのではないか。
○法科大学院におけるICTを活用したメディア授業を対外的に納得してもらうためには、教育効果の事後検証を法科大学院側に求めるべき。
(a)サテライト方式
○授業全てにおいて、メディア授業による実施を認める方向で良いのではないか。ICTをいかに活用するかということについて、面接授業による学生よりも慣れることができるという点でメリットはある。その代わり、実際に会って話すことができない。そこはトレードオフの問題ではないか。何か制限を加える必要はない。
(b)モバイル方式
○個人の自宅からでも法科大学院の授業を受けることができるという意味では大変意義がある。しかしながら、通信環境に難があるということは長所で埋め合わせることができない、大きな短所であると言わざるを得ない。
○法科大学院に通学して、回数制限を設けてモバイル方式を受講する場合と、全てをモバイル方式によって受講する場合を分けて検討した方が良い。
○モバイル方式を全面的に導入すると、学生間の交流がない、教員との接触がないという状況が起きかねない。現時点において、モバイル方式を全面的に導入することは困難ではないか。ある程度、制限を設けるべき。
○モバイル方式については、自宅や出張先のホテル等、様々な場所で授業を受講することが想定されるが、その場所で何が担保されていなければならないのか、どのような環境が整えば、メディア告示1号の「準ずる場所」として解釈可能なのか、はっきりさせた方が良いのではないか。
○通信が確立さえすれば、外部から1名のみが参加するため、サテライトと異なり教員側の負担は重くない。
(c)オンデマンド方式
○通信環境等によりメディア授業を受講できなかった場合の補助としても、オンデマンド方式による授業を認めないと、学生への不利益が大きく、モバイル方式による授業も普及しないのではないか。
○通信環境等によりメディア授業を受講できなかった場合の補助として、オンデマンド方式を活用するとしても、真に通信環境が悪くてメディア授業を受講できなかったかどうかの確認など、出席管理が非常に困難。
○通信環境の責任は学生側が負うべき。大学としては、遠隔地での受講を施設面でサポートするので、更に踏み込んで個人の通信環境にまで責任を負い、オンデマンド方式による受講環境を用意することは、やりすぎである。
○通信環境がしっかりしたハードを用意するということを、そもそもの前提として普及を図っていかなければならない。
○オンデマンド方式は、授業を欠席した時の補習として受講できるなど、学修フォローとしては推奨すべきだと考えるが、双方向性がなく、正規の授業として認めるのは難しいのはないか。
○世界的にはオンデマンド方式の潮流があるので、出席には変えられないと線引きすることはリスクがあるのではないか。法科大学院について緩める必要はないと思うが、大学教育全体の前例とならないようにする必要がある。
○設置基準等から考えると、オンデマンド方式を授業で採用していくのは困難かと思うが、法科大学院への志願者が減少する中で、様々な形式を幅広く認めて法曹への途を確保していくのもICTを使うことの意味ではないか。オンデマンドについては、より大きな視点で別の機会に検討することも必要。
○大学に行けない、授業を受けられないという時には、オンデマンド方式を例外的に取り扱っても良いではないか。そのような余地を含み得るようなまとめ方はできないか。
○各法科大学院の工夫の仕方次第で、オンデマンドを授業でどのように取り扱うかは発展の余地もある。法科大学院で運用マニュアル等を作成し、認証評価結果に基づいて、足りないところは改善していくということは考えられないか。
○オンデマンドのみの授業をもって単位化することは認めないという方向で良いと思うが、それ以外の部分については、その運用の仕方を例示するなどにより活用を促進することも考えられるのではないか。
○オンデマンド方式に対する原則的な立場は保持しながらも、授業での活用に若干の含みを持たせ、更なる活用の可能性についても言及しておいた方が良いのではないか。
○メディア告示第2号(同時・双方向でない授業)では、様々な要件が付加されているが、実際には面接授業でもここまでやる例は少なく、逆に面接授業が録画に似た授業になることもあると思う。

【メディア授業を用いて教育課程を編成する場合の留意点】
○総取得単位の中で、ICTを活用した授業により取得する単位がどのように位置付けるべきか、ということについては、地方在住者や社会人の学修環境を整えるという観点では、ある程度認める方向で検討した方が良いのではないか。
○メディア授業によりどこまで単位取得が可能となるかについては、サテライト方式やモバイル方式などの授業の実施形態に応じて検討すべき。
○法科大学院入学後、法曹と出会い、コミュニケーションができる状態で勉強できるということは、非常に重要な観点である。メディア授業による単位取得を積極的に認める方向で良いと思うが、メディア授業にはなじまないと考えられる科目に留意が必要である点を言及すべきではないか。

【法科大学院におけるICTを活用したメディア授業の実施に必要なシステム環境について】
○科目等履修によりメディア授業を受講している弁護士からは、現状使用されているシステムについては、コミュニケーションに全く問題がなく、極めえて良好な環境で受講できていると聞いている。
○ある程度の性質、品質を備えていたシステムだとしても、不安定になる時はある。万が一通信が途絶え、学生の受講が困難となった場合に備え、何らかのバックアップを検討しておく必要がある。
○ICTを活用する場合の授業形態に応じたシステム面の最低条件を検討するとともに、学位取得につなげる際のハード面の有効活用(LMSの活用など)を議論していくことが必要ではないか。
○学修フォローとしては、LMSにこだわらなくとも、メーリングリストなどでも対応可能ではないか。
○テレビ会議システムなどは、必ずしも独自システムを構築する必要はなく、比較的安価なテレビ会議システムを利用してもよいのではないか。
○機械の更新費用、保守契約にかかる費用、技術スタッフの雇用等のランニングコストについても、普及にあたっては課題となる。

【法科大学院におけるICTを活用したメディア授業の実施にあたり教職員に求められる能力】
○システム等の機器に関する理解及び操作の習熟を教員に求めるのは困難。教員については、授業に支障がない程度の理解で良いのではないか。
○配信を行う側と配信を受ける側で、共同のSDまで行う必要はないのではないか。
○求められる事項については、教員と職員とで別に整理した方が良い。

【法科大学院認証評価との関係】
○メディア授業を法科大学院において実施するということになれば、評価の在り方として、共通の基準を策定すべき。
○メディア授業については、これから初めて取り組むことが多いので、実質的な改善の取組をしているかどうかという点を、もっと積極的に評価してもらうような方法が望ましいのではないか。
○ICTを活用する場合に配慮しなければならないことを抽出した上で、認証評価基準に落とし込むことは必要かもしれない。
○認証評価基準上、授業の中で双方向・多方向の議論をしなければならないとされており、タブレット端末等を用いた授業やオンデマンド形式による授業の場合、「一方的」な授業となりやすくなると考えられるため、認証評価との関係をどのように考えるか検討する必要があるのではないか。
○認証評価基準がむしろ普及を阻害するのではあれば、ある程度考慮の余地はあるのではないか。

【授業以外へのICTの活用】
○ICTを活用した説明会などによって志願者を掘り起こしていくことも重要なのではないか。
○異なる場所にいる学生同士の交流や、教員間の交流の促進など、新たなメリットを併せて打ち出していった方が良い。
○実際の法科大学院の授業にICTをどのように活用できるか、その普及方策を議論の中心になると思うが、志願者掘り起こしの方法としてのICTの活用も十分に意識したい。

【議論の進め方】
○複数の法科大学院が、これまで遠隔教育や学修支援を実施しているが、その活用頻度に差が生じていると思われる。今後の普及方策を検討する前に、まずはその要因を把握することが重要ではないか。
○法科大学院教育に限らず、これまで大学通信教育で培われてきた蓄積を踏まえた上で議論を行うことが必要。今後論点を詰めていく段階において、設備面を含めた通信教育の有効性や問題点等について、専門家からヒアリングを行うことも必要ではないか。

【その他】
○地方在住者に潜在的な法曹志願者がどの程度いるか調査を行っていくことも重要。

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